「また輝夜とやっちゃってさー。夕飯食べさせてよ」
そう言ってやって来たのは藤原妹紅だった。
出迎えた上白沢慧音は呆れた表情で答える。
「…前にも言った筈だが、お前はもう少し殺す事に躊躇いを持て…と」
妹紅は頬を膨らませた。
「…だってさ、父親の敵だよ?不老不死だよ?」
「向こうは反省したと言っていた」
妹紅は今度は溜息をついた。
分かってないねぇ…という手振りをする。
「だって、他にやる事無いし…ねぇ?」
同意を求める口調だった。
慧音はその言葉に激怒した。
「お前は命というものを何だと思っている?殺すという事を何だと思っている?」
いきなり説教を始めた慧音に妹紅は困ってしまった。
自分は蓬莱人だ。命など考える事もなかった。
輝夜だって死ぬ事はない。殺したところで満足は出来なかった。
また復活する事は誰だって知っている事だったから。
「お前にその答えが見つかるまで、ご飯は抜きだな」
「えぇっ!?ちょっと待ってよ慧音!」
慌てる妹紅。しかし慧音はその言葉をなかった事にする気はないようだ。
「人里で色々学んで来い。最近不作が多くてな」
不作が多い、と付け加えた慧音の意図を理解するのは大分後の話だった。
妹紅はまず自分の食料を得るために働く事にした。
人里では花屋やお茶屋、カフェに人員募集の張り紙があった。
薬屋にもあったが、鈴仙や永琳がやっているので行く気は毛頭なかった。
寺子屋、という選択肢もあったが多分慧音に駄目だと言われそうなので行かなかった。
他にも色々探してみたが、自分にしっくり来る仕事がなかった為、一日中ブラブラしているだけだった。
明日やろうと妹紅は思い、帰路に着いた。
半月と無数の星が地表を明るく照らす。
ぐーぎゅるるるる!
お腹が勢いよく鳴る。
「うー、お腹減ったなぁ」
蓬莱人と言えど空腹は感じる。
栄養失調でかなり辛いが不老不死のせいで死ねない。
これは拷問にも等しい事になる。
慧音と会うまでは森で茸取りをしていた。
倒れて気付いたら彼女の家で寝ていて、その時食べた魚の味は今でも何となく覚えている。
妹紅は気付く、あぁ、また茸でも採って食べればいいか…と。
帰路を少し外れた寂れた森、妹紅は一人入っていく。
月は殆ど雲に隠れ、森は黒く染まる。
光源は右手から出された炎だった。
左手には二つ三つの茸があった。
ポケットの中にもいくつか入っていた。
ぐーぎゅるるるるるる!
「ひぃっ!?」
突然、きき慣れない悲鳴が聞こえる。
「だ、誰?」
その悲鳴は一人の少女のもののようだ。
妹紅は首を傾げる。
こんな時間にこの少女は何をしているのだろう…と。
「藤原妹紅、人間だよ。お嬢ちゃん」
ほっ、という声が聞こえた。
「人間ね。人間なのね?」
「そうそう人間だよ」
少女は妹紅に走って近づいてきた。
そして抱きつく。
「わわっ!?」
勢い余って妹紅は転倒してしまう。
運悪く後にあった木に頭をぶつけてしまう。
「がふっ!?」
「だ、大丈夫?」
少女が駆け寄ってくる。
ガサゴソ…と木の葉を踏む音のペースが早くなる。
気付いたら右手の炎は消えていた。
「あ、あれ?どこ?どこなのー?」
暗くて見えないようだ。
妹紅は右手に力を込める。
ボォッっと炎が出てくる。
「凄いね!お姉ちゃん」
「ふふっ?凄いだろ?さぁ、人里まで届けてやるよ」
「あっ…その事なんだけど…」
少女の話で分かった事がいくつかあった。
彼女の名前は佳代(かよ)という事。
母親は既に病死し、父親は母を見捨てて逃げた事。
そして妹紅と同じで食用に茸を採りに来た事。
「なぁ、もうこの時間で危ない。私の採った茸をやるから町に帰ろう」
「お姉ちゃんだってお腹すいてるでしょ?凄かったもん」
「村人だって心配しているし、私は大丈夫だ」
佳代は最後まで心配そうな顔をしていた。
妹紅は頑張ってここが危険だと言い聞かせ、無理矢理人里まで帰らせた。
人里まで送り届けるとここで大丈夫といって一人で帰っていった。
最後まで見送ってから妹紅は自分の分の茸を採りに再び森へ戻った。
次の日、妹紅は再び茸を採りにいった。
午前中に茸採りを済ませ、午後に人里で仕事を探すつもりだった。
しかし、そこでまた佳代に出会った。
「おいおい、昼間といえど妖怪は出る。危険だぞ?」
「またお姉ちゃんに会えると思ってね」
佳代は嬉しそうに近づいてくる。
暖かい温もりが妹紅には懐かしく思える。
前に感じた温もりはいつのものだったか…と思い出そうとしても思い出せない。
「ふふっ、お姉ちゃん暖かい」
前のように抱きついてくる佳代。
美しい黒髪がさらさらと風に流される。
「…恥ずかしいぞ。これ」
「いいのいいの。…また一緒に茸採ろうよ」
「私は今までで一緒に茸を採った記憶はないけどな」
佳代は頬をぷくぅと膨らませる。
「気にしないの…ね?」
妹紅ははいはいと言って一緒に茸を採りはじめた。
午後、茸を採り終えた二人はカフェにいた。
自分で行くのは恥ずかしいと慧音に頼み込み、薬用の茸を永琳に売ってもらったのだ。
収入は八千円程度と少ないものだが、二人でカフェに行くには充分な金額だった。
「私はコーヒーで」
「じゃあ私はココアにするよ」
笑顔で言う佳代。久しぶりに人の笑顔を見たな…と思う妹紅。
この子が大人になったらたいそう綺麗だろうと思って想像してみたら輝夜みたいになった。
「…ねぇ、お姉ちゃんは私といて楽しい?」
「あぁ、楽しいよ。久しぶりに笑った気がする」
「…ありがとう」
何故そこで礼を言うのか。
分かるのは少し後の事になる。
夜、慧音に少しは勉強してそうだと言われ、家に招かれた。
妹紅は慧音の家で二日分ぐらいの食事をした。
「なぁ妹紅。この魚だって生き物だ。私たちはそれを食べている。少しは命の大切さが分かったか?」
「うん分かったよ」
慧音は嬉しそうに、そうかと言った。
妹紅は複雑な心境だった。
命の大切さは分かった。
でも輝夜を殺すのにそれは関係ないだろうと。
慧音が何を言いたいのか、妹紅にはまだ分かっていなかった。
次の日の夕方、今までの疲労を睡眠によって一気に回復した妹紅は慧音に叩き起こされた。
「おい妹紅、いつまで寝ているつもりだ?」
「うぅ…後五分だけだから」
このままでは二度寝になってしまうと判断した慧音は妹紅をもう一度殴った。
「痛いっ!痛いって慧音。何だよもう…」
「佳代が死にそうだ」
妹紅は口を開けたままはぁ?と発音した。
そして嘘でしょ?と訊いたが慧音の顔は嘘を言っているようには見えなかった。
「…とにかく見舞いに来てくれ。佳代が会いたいと言っている」
佳代の家、村の外れにぽつりと建った古い家。
廃材と見間違えるほど穴の開いた木材。
見事なほど貧乏そうな家だった。
「…妹紅、最近不作が続いてな。彼女に食べさせる食事など無かった。村人も自分の事で精一杯だった」
布団の上で苦しそうに横たわる佳代。
ぜぇぜぇと呻き、妹紅のほうをちらりと見てくる。
「あっ、お姉ちゃん…」
「佳代、なぜ私に言わなかった?もっと茸をたくさん持ってきてやったのに」
涙を流す妹紅。
えっぐ、ひっぐと声を上げる。
しかし慧音は首を横にふる。
「妹紅、お前が持ってきた茸の半分は毒茸だった。…私が見つけてなければ彼女はとっくに死んでいた」
妹紅は絶句する。
蓬莱人だから何を食べても死なない。
蓬莱人だから毒茸でも充分食用になる。
「…慧音。何で私が慧音のところに茸を持っていった時に言わなかった?」
「言えなかったんだ。…後で佳代が言うなという顔をしていたからな」
「お姉ちゃんが悪いんじゃ無いよ…?」
カフェでもっと奢ってあげれば良かった。
後悔してももう遅い。
「…薬師に頼んで何とかできないか?」
「…私もそれを聞いてみた。栄養失調は栄養剤を与えるしか方法が無いようだ。…ただもう手遅れとの事だがな」
先はもう無い。
後妹紅に出来る事は彼女の側で彼女の死を見守る事だけだった。
「なぁ、慧音。命の大切さってモノが分かったよ」
「…お前は蓬莱人だ。もっと人と関わりあう事だってあるだろう。…でも必ず相手が先に死ぬ。その悲しみに耐えていけるか?」
妹紅は出来ないと答えた。
慧音は少し何かを考えた後口を開いた。
「蓬莱山輝夜は死なない。そういう友達を持っても悪くは無いだろう?憎しみからは何も生まれないぞ」
妹紅は頑張ってみると答えた。
慧音は少し不満そうだったがそうかと言った。先はもう無い。
後妹紅に出来る事は彼女の側で彼女の死を見守る事だけだった。
場所は永遠亭。妹紅が頑張るといってから三日後ぐらいの事だ。
「今までごめん」
妹紅は輝夜に会うと最初にそう言った。
「…はい?」
輝夜は全く分かってなさそうだったが、慧音の説明のおかげで大分理解できたようだ。
輝夜も私こそと謝って二人は和解した。
これからが大変だった。
永琳は嬉しさのあまりに泣き叫び因幡全員にこのことを知らせた。
そしてパーティを開くと言い出し因幡に買出しや仕度を命じた。
てゐはもう襲撃者がいないと喜びつつも一時間以内に買ってこいという命令に不満を感じた。
そして二時間後、パーティの仕度は整い、会場には幻想郷でおなじみの人々が呼ばれた。
僅かに欠けた月と少しの星が一つの家を照らす。
そこは慧音の家で、中には慧音と妹紅がいた。
「…輝夜と仲直りが出来てよかったな」
「でももう佳代は戻ってこない…」
慧音はその事なんだが…といい難そうに話を始めた。
「えぇぇぇぇぇ!?」
というのは慧音の話を聴き終わった後の反応だった。
話というのはこういうものだった。
輝夜と妹紅の喧嘩を終わらせようと永琳と慧音は手を組んだ。
そして永琳は人を幼女化できる薬を開発した。
これを輝夜に飲ませたのが佳代だという。
慧音は影に隠れてずっと妹紅を観察。そして偶然を装って佳代と会わせた。
栄養失調で倒れたのは本当だが(食事を五日抜いた)死んだというのはただのフリだった。
…というもの。
「というわけで妹紅と輝夜が仲直りしてめでたしめでたしという訳だ」
「…全然めでたくないよ!」
妹紅は凄く複雑な心境だった。
そう言ってやって来たのは藤原妹紅だった。
出迎えた上白沢慧音は呆れた表情で答える。
「…前にも言った筈だが、お前はもう少し殺す事に躊躇いを持て…と」
妹紅は頬を膨らませた。
「…だってさ、父親の敵だよ?不老不死だよ?」
「向こうは反省したと言っていた」
妹紅は今度は溜息をついた。
分かってないねぇ…という手振りをする。
「だって、他にやる事無いし…ねぇ?」
同意を求める口調だった。
慧音はその言葉に激怒した。
「お前は命というものを何だと思っている?殺すという事を何だと思っている?」
いきなり説教を始めた慧音に妹紅は困ってしまった。
自分は蓬莱人だ。命など考える事もなかった。
輝夜だって死ぬ事はない。殺したところで満足は出来なかった。
また復活する事は誰だって知っている事だったから。
「お前にその答えが見つかるまで、ご飯は抜きだな」
「えぇっ!?ちょっと待ってよ慧音!」
慌てる妹紅。しかし慧音はその言葉をなかった事にする気はないようだ。
「人里で色々学んで来い。最近不作が多くてな」
不作が多い、と付け加えた慧音の意図を理解するのは大分後の話だった。
妹紅はまず自分の食料を得るために働く事にした。
人里では花屋やお茶屋、カフェに人員募集の張り紙があった。
薬屋にもあったが、鈴仙や永琳がやっているので行く気は毛頭なかった。
寺子屋、という選択肢もあったが多分慧音に駄目だと言われそうなので行かなかった。
他にも色々探してみたが、自分にしっくり来る仕事がなかった為、一日中ブラブラしているだけだった。
明日やろうと妹紅は思い、帰路に着いた。
半月と無数の星が地表を明るく照らす。
ぐーぎゅるるるる!
お腹が勢いよく鳴る。
「うー、お腹減ったなぁ」
蓬莱人と言えど空腹は感じる。
栄養失調でかなり辛いが不老不死のせいで死ねない。
これは拷問にも等しい事になる。
慧音と会うまでは森で茸取りをしていた。
倒れて気付いたら彼女の家で寝ていて、その時食べた魚の味は今でも何となく覚えている。
妹紅は気付く、あぁ、また茸でも採って食べればいいか…と。
帰路を少し外れた寂れた森、妹紅は一人入っていく。
月は殆ど雲に隠れ、森は黒く染まる。
光源は右手から出された炎だった。
左手には二つ三つの茸があった。
ポケットの中にもいくつか入っていた。
ぐーぎゅるるるるるる!
「ひぃっ!?」
突然、きき慣れない悲鳴が聞こえる。
「だ、誰?」
その悲鳴は一人の少女のもののようだ。
妹紅は首を傾げる。
こんな時間にこの少女は何をしているのだろう…と。
「藤原妹紅、人間だよ。お嬢ちゃん」
ほっ、という声が聞こえた。
「人間ね。人間なのね?」
「そうそう人間だよ」
少女は妹紅に走って近づいてきた。
そして抱きつく。
「わわっ!?」
勢い余って妹紅は転倒してしまう。
運悪く後にあった木に頭をぶつけてしまう。
「がふっ!?」
「だ、大丈夫?」
少女が駆け寄ってくる。
ガサゴソ…と木の葉を踏む音のペースが早くなる。
気付いたら右手の炎は消えていた。
「あ、あれ?どこ?どこなのー?」
暗くて見えないようだ。
妹紅は右手に力を込める。
ボォッっと炎が出てくる。
「凄いね!お姉ちゃん」
「ふふっ?凄いだろ?さぁ、人里まで届けてやるよ」
「あっ…その事なんだけど…」
少女の話で分かった事がいくつかあった。
彼女の名前は佳代(かよ)という事。
母親は既に病死し、父親は母を見捨てて逃げた事。
そして妹紅と同じで食用に茸を採りに来た事。
「なぁ、もうこの時間で危ない。私の採った茸をやるから町に帰ろう」
「お姉ちゃんだってお腹すいてるでしょ?凄かったもん」
「村人だって心配しているし、私は大丈夫だ」
佳代は最後まで心配そうな顔をしていた。
妹紅は頑張ってここが危険だと言い聞かせ、無理矢理人里まで帰らせた。
人里まで送り届けるとここで大丈夫といって一人で帰っていった。
最後まで見送ってから妹紅は自分の分の茸を採りに再び森へ戻った。
次の日、妹紅は再び茸を採りにいった。
午前中に茸採りを済ませ、午後に人里で仕事を探すつもりだった。
しかし、そこでまた佳代に出会った。
「おいおい、昼間といえど妖怪は出る。危険だぞ?」
「またお姉ちゃんに会えると思ってね」
佳代は嬉しそうに近づいてくる。
暖かい温もりが妹紅には懐かしく思える。
前に感じた温もりはいつのものだったか…と思い出そうとしても思い出せない。
「ふふっ、お姉ちゃん暖かい」
前のように抱きついてくる佳代。
美しい黒髪がさらさらと風に流される。
「…恥ずかしいぞ。これ」
「いいのいいの。…また一緒に茸採ろうよ」
「私は今までで一緒に茸を採った記憶はないけどな」
佳代は頬をぷくぅと膨らませる。
「気にしないの…ね?」
妹紅ははいはいと言って一緒に茸を採りはじめた。
午後、茸を採り終えた二人はカフェにいた。
自分で行くのは恥ずかしいと慧音に頼み込み、薬用の茸を永琳に売ってもらったのだ。
収入は八千円程度と少ないものだが、二人でカフェに行くには充分な金額だった。
「私はコーヒーで」
「じゃあ私はココアにするよ」
笑顔で言う佳代。久しぶりに人の笑顔を見たな…と思う妹紅。
この子が大人になったらたいそう綺麗だろうと思って想像してみたら輝夜みたいになった。
「…ねぇ、お姉ちゃんは私といて楽しい?」
「あぁ、楽しいよ。久しぶりに笑った気がする」
「…ありがとう」
何故そこで礼を言うのか。
分かるのは少し後の事になる。
夜、慧音に少しは勉強してそうだと言われ、家に招かれた。
妹紅は慧音の家で二日分ぐらいの食事をした。
「なぁ妹紅。この魚だって生き物だ。私たちはそれを食べている。少しは命の大切さが分かったか?」
「うん分かったよ」
慧音は嬉しそうに、そうかと言った。
妹紅は複雑な心境だった。
命の大切さは分かった。
でも輝夜を殺すのにそれは関係ないだろうと。
慧音が何を言いたいのか、妹紅にはまだ分かっていなかった。
次の日の夕方、今までの疲労を睡眠によって一気に回復した妹紅は慧音に叩き起こされた。
「おい妹紅、いつまで寝ているつもりだ?」
「うぅ…後五分だけだから」
このままでは二度寝になってしまうと判断した慧音は妹紅をもう一度殴った。
「痛いっ!痛いって慧音。何だよもう…」
「佳代が死にそうだ」
妹紅は口を開けたままはぁ?と発音した。
そして嘘でしょ?と訊いたが慧音の顔は嘘を言っているようには見えなかった。
「…とにかく見舞いに来てくれ。佳代が会いたいと言っている」
佳代の家、村の外れにぽつりと建った古い家。
廃材と見間違えるほど穴の開いた木材。
見事なほど貧乏そうな家だった。
「…妹紅、最近不作が続いてな。彼女に食べさせる食事など無かった。村人も自分の事で精一杯だった」
布団の上で苦しそうに横たわる佳代。
ぜぇぜぇと呻き、妹紅のほうをちらりと見てくる。
「あっ、お姉ちゃん…」
「佳代、なぜ私に言わなかった?もっと茸をたくさん持ってきてやったのに」
涙を流す妹紅。
えっぐ、ひっぐと声を上げる。
しかし慧音は首を横にふる。
「妹紅、お前が持ってきた茸の半分は毒茸だった。…私が見つけてなければ彼女はとっくに死んでいた」
妹紅は絶句する。
蓬莱人だから何を食べても死なない。
蓬莱人だから毒茸でも充分食用になる。
「…慧音。何で私が慧音のところに茸を持っていった時に言わなかった?」
「言えなかったんだ。…後で佳代が言うなという顔をしていたからな」
「お姉ちゃんが悪いんじゃ無いよ…?」
カフェでもっと奢ってあげれば良かった。
後悔してももう遅い。
「…薬師に頼んで何とかできないか?」
「…私もそれを聞いてみた。栄養失調は栄養剤を与えるしか方法が無いようだ。…ただもう手遅れとの事だがな」
先はもう無い。
後妹紅に出来る事は彼女の側で彼女の死を見守る事だけだった。
「なぁ、慧音。命の大切さってモノが分かったよ」
「…お前は蓬莱人だ。もっと人と関わりあう事だってあるだろう。…でも必ず相手が先に死ぬ。その悲しみに耐えていけるか?」
妹紅は出来ないと答えた。
慧音は少し何かを考えた後口を開いた。
「蓬莱山輝夜は死なない。そういう友達を持っても悪くは無いだろう?憎しみからは何も生まれないぞ」
妹紅は頑張ってみると答えた。
慧音は少し不満そうだったがそうかと言った。先はもう無い。
後妹紅に出来る事は彼女の側で彼女の死を見守る事だけだった。
場所は永遠亭。妹紅が頑張るといってから三日後ぐらいの事だ。
「今までごめん」
妹紅は輝夜に会うと最初にそう言った。
「…はい?」
輝夜は全く分かってなさそうだったが、慧音の説明のおかげで大分理解できたようだ。
輝夜も私こそと謝って二人は和解した。
これからが大変だった。
永琳は嬉しさのあまりに泣き叫び因幡全員にこのことを知らせた。
そしてパーティを開くと言い出し因幡に買出しや仕度を命じた。
てゐはもう襲撃者がいないと喜びつつも一時間以内に買ってこいという命令に不満を感じた。
そして二時間後、パーティの仕度は整い、会場には幻想郷でおなじみの人々が呼ばれた。
僅かに欠けた月と少しの星が一つの家を照らす。
そこは慧音の家で、中には慧音と妹紅がいた。
「…輝夜と仲直りが出来てよかったな」
「でももう佳代は戻ってこない…」
慧音はその事なんだが…といい難そうに話を始めた。
「えぇぇぇぇぇ!?」
というのは慧音の話を聴き終わった後の反応だった。
話というのはこういうものだった。
輝夜と妹紅の喧嘩を終わらせようと永琳と慧音は手を組んだ。
そして永琳は人を幼女化できる薬を開発した。
これを輝夜に飲ませたのが佳代だという。
慧音は影に隠れてずっと妹紅を観察。そして偶然を装って佳代と会わせた。
栄養失調で倒れたのは本当だが(食事を五日抜いた)死んだというのはただのフリだった。
…というもの。
「というわけで妹紅と輝夜が仲直りしてめでたしめでたしという訳だ」
「…全然めでたくないよ!」
妹紅は凄く複雑な心境だった。
・あらゆる薬や毒を無効化するようになる
ってのもあったと思いましたが。
オチには笑わせてもらいました。
畜生、これはやられたw
ここでなんとなくオチが読めてしまいましたが面白かったです。
・・・ところでこれは設定として、
輝夜は仲直りしたがっていたということですよね? となると、
>輝夜は全く分かってなかったが、慧音の説明のおかげで大分理解できた。
ここで佳代として事情を知っているはずだから少し矛盾している気が・・・
違っていたらすみません。SSなど書いたこともない素人の意見ですので、
村の羊飼いさんの意図を汲み取れていないだけかも・・・
慧音の話かと
読点の打ち方とか、下で指摘されてるように『た』で終わる文章が異様に多いとか、細かい突っ込みどころは色々ありますが……
でもオチにはやられましたwてっきりけーねの歴史操作で死んだと見せかけて……とか思ってたら……
他の作品を読んで参考しますか…
>>22:55:07様
なるほど、そういう設定もありましたか。
二次創作にあわせて万能に使えるという事で便利な薬ですね
>>00:27:50様
オチは最初に浮かんだのでそれをベースに。
>>浜村ゆのつ様
実は生きてて…ってのは意外に難しい設定だと思います
>>BBL様
指摘ありがとうございます。
微妙にぼかしてみました。
しかし輝夜みたいな~はフラグだったのですよ
>>09:36:43様
修正しておきました
>>18:34:46様
読み返す…うわぁ『た』多すぎだよorz
精進したいと思います。
>>卯月由羽様
指摘ありがとうございます。
読点の打ち方…ふむ、勉強しておきます。
そんな歴史操作が出来たら凄い能力ですな。
…死のバランスが崩れるとかなんとか言われて閻魔にぼこぼこに…
ところで佳代って名前の由来なんですが、
『輝夜』→『輝く夜』→『かがやく よる』→『(か)がやく (よ)る』
という事なんですよ。
…まぁ他に何も思い浮かばなかったのもありますけど…