Coolier - 新生・東方創想話

フリーダム上海

2007/09/04 10:59:17
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「やあアリス。今日は何をお求めで?」
香霖堂に、客が来た。店主の森近霖之助は、珍しく営業スマイルを見せている。
「こんにちは。ちょっと綿を切らしてしまって、買いに来たのだけど。あるかしら?」
客は七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドだ。人形を使った魔法を得意としており、香霖堂にはよく材料を買いに来る。

「ああ、あるよ。木綿と、合成綿と、石綿と、海綿がある。どれがいい?」
「え、えと、人形に詰めるんだけど・・・。合成綿下さい。500gで。」
「はい。じゃあこの袋だね。お得意様だから勉強させてもらうよ。えーっと、これくらいでどうかな」

カタカタと叩いた電卓には、2割引の値段が表示されていた。相当上機嫌なようだ。
「あら、香霖さんから値引きしてくれるなんて初めてだわ。じゃあ、これがお代ね」
「毎度。ところでアリス、ちょっとゲームをしてみないかい?外の世界の遊びで面白そうなものがあったんだ」
霖之助は笑顔を作って話しかける。


その顔は、アリスにいやな予感を感じさせた。
「ゲーム?そんなに時間がかからないならいいけど・・・」
キラーンと、霖之助の目が光ったように見えた。

「あっさり終わるゲームだよ。ルールも簡単。ただ勝負するというのもつまらないな。もし僕に勝ったら、レアアイテム福袋をあげよう!」
「帰りますさようなら」
「ま、待ってくれ!たとえばこういうアイテムもあるんだぞ!」
出て行こうとしたアリスを慌てて引き止める霖之助。彼の右手には、青色の水晶玉みたいなものが握られていた。左手には巨大な麻袋。
「これは?・・・結構強い魔力を感じるわね。」
アリスは微妙に興味を持ってしまった。蒐集家の悪い癖だ。

「詳細を知りたい場合は、僕と簡単なゲームをしてみよう!1分とかからない、簡単なゲームだから安心してほしい。嘘はつかない」
「まあ、ちょっとだけなら・・・いいわよ。で、私が負けた場合はどうなるのかしら?」
アリスがそう言ったとたん、霖之助が机の下から何かを引き出す。


「君が負けたら、僕の夕食を君に作ってもらおうかな」
「まあそれくらいなら。使うのはそれ?」
「そうだよ。使うのはこのポッキーさ。これはスティック状の菓子でね、今僕が持っているものはスナック菓子の上にチョコレートがかかっている」
「お菓子ということは早食い?」
問いかけに、霖之助は首を振った。

「そんなことはしないさ。まず一本取り出して」
「取り出して?」
「僕が一方を口にくわえて、反対側を君がくわえる。そしてお互いがどんどんポッキーを食べあう。先に口を離したほうが負けさ。どちらも最後まで口を離さなかったら僕の負けでいいよ。はっはっは」


アリスは目の前の男が何を話しているのか、理解できなかった。
もっとも、下心丸見えなのはわかった。
七色の脳みそが再起動したのち、事態を把握する。かろうじて言葉をつむぎ出した。

「やっぱり帰る」
「おっと、それじゃあこの福袋は魔理沙にあげようかな。もしゲームで勝てば、タダで全部君のものだ」
なんだこれ。脅してるつもりなのか。
正直、目の前の福袋には興味がないでもなかった。袋自体から結構強い魔力が感じられたからだ。
だが、アリスにはそこまでのリスクを背負う価値を見出せなかった。

(欲しくない訳ではないけど、かけるリスクが大きすぎる・・・いや、待ちなさいアリス。こうすればいいんじゃない!)
何か名案を思いつかれたようです。


「いいじゃない。私も覚悟を決める。遊んであげるわ、褌男」
「そうかそうか、よっしそれじゃあ早速やってみよう!」
無駄にハイテンションな霖之助は、嬉々としてポッキーを口にくわえる。


(・・・今だ!)
この作戦は、速さが鍵だ。

アリスは。


そっと。


ポッキーに近づいて。


勢いよく。


押し込んだ。

とどめに、ローキック。二連打で。

地面に倒れ伏した霖之助の口から、ポッキーが零れ落ちる。声にならない悲鳴が漏れる。
「私の勝ちね。私が口をつける前に、香霖さんが離してしまったんだもの。上海、蓬莱。香霖さんを縛り上げて」
アリスは容赦無かった。さすが魔女。
さっそく福袋の物色に入った。


「さて、この中身について教えてもらうわ。まずこの水晶玉はなんなの?」
もうこの魔女に逆らっても無駄だ。命が危ない。霖之助は瞬時に悟る。
「うごご・・・仕方ない、教えるよ。それはだな、マテリアといって、穴にはめることで効果を発揮する道具だ」
「上海、蓬莱。ロープきつくしなさい、できるところまで」
「ま、待ってくれ!いた、痛い痛い!嘘じゃない、たとえば武器に開いてる装着口に入れることで効果を発揮するんだ、ちょっと緩めて!締まってるから!」

これまでの行いのせいで誤解されてしまったようだ。
人形にロープを緩めるよう指示したアリスの顔は多少赤くなっていた。
「じゃあ、どれに装着したらいいの?」
「はあ、はあ・・・すまない、その袋にはモップと釘バットしか入ってないから装着することはできない。あと、それは『ぜんたいか』という種類のものなので、単体では役に立たない」


ゆらり、とアリスが動いた。釘バットを持って。
「そんなものを景品に。そうかあ。私の価値ってそんなものかあ」
「頼む、落ち着いてくれ。頑張れば価値が高くなる品なんだぞ、それにまだ袋の中身がいっぱい入っているんだぞ、解説できなくなったらまずいだろう?」
「・・・残りのもの次第ね。じゃあ、さくっと進めるから用途をどんどん教えていって。まずこれは?」
「それはフェイズシフト装甲だな。一定の魔力を流すことで、最高の防御力を発揮するものだ。大気圏に突入しても耐え切れる。人形にちょうどいいと思う」
「すごいじゃない」
ちょっと感動するアリス。
「といっても、衝撃は中身にしっかりと来る。あとそのビームライフルはおまけだ」

「なにそれ・・・あら、これはグリモワールじゃない」
「それは蛙化する魔法について書いてある本だな」
「へぇ。蛙かー」
「どうしたんだいアリス、さっきからたびたび君の目がちょっと怖いよ」
「最近暑いし、ちょっと湖まで遊びに行ってみない?」
「何を言っているんだい君は。遠慮させて え、ちょ、話せばわかる、やめろおおおおぉぉぉ!」





「チルノちゃん、蛙と遊ぶのもほどほどにしないと。かわいそうだよ」
「いいじゃない、面白いんだし。あ、変な蛙はっけーん!」
チルノの目の前には、なぜか頭部に銀髪の生えた蛙がいた。
「こんな蛙はじめて見たよ。突然変異?」
大妖精は変わった蛙を不思議に思った。どこかで見たような髪だなぁ。
「凍らせればわかるよ!あたいの新記録も目の前ね!」

何がわかるんだろう。大妖精は、氷付けにされた蛙を見てそんなことを思うのであった。
本日のチルノの戦績は、2匹凍らせて2匹とも蘇生。これまでは、3回に1回失敗している。
新記録、成るか。





「いやあ、まさかあのアリスさんが香霖堂の店主さんとこんなことをしてたなんて・・・すごい特ダネをつかんでしまいました」
幻想郷の新聞記者、射命丸文の手元には写真が1枚。
アリスと、ロープに縛られた霖之助が写っていた。
「しかも白昼堂々こんな・・・。これは号外ものですね」
誤解なのか、知っててやっているのか。
それは本人にしかわからない。



その後、紅白の巫女と白黒の魔法使いが人形師を襲撃したり、フリーダム上海が妖怪の山を襲撃したりとひと悶着あった。
スキマ妖怪は不貞寝したとかなんとか。

「争いは、憎しみしか生まないのね・・・」
夕日に向かうアリスの顔は、どこか満足げだった。

香霖ファンの方、アリスファンの方ごめんなさい。
touat
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コメント



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7.70名前が無い程度の能力削除
「ぜんたいか」……。
最大まで成長させて売れば、良い金になるぞ?
単品で役立たずなんかじゃないやい!
12.無評価卯月由羽削除
よし、ちょっと蛙化したこーりん氷割ってくるわ
13.60卯月由羽削除
すみません、得点忘れました……
14.70名前が無い程度の能力削除
懐かしいネタ多いなw
18.70名前が無い程度の能力削除
タイトルからは想像できない内容だったw
19.50名前が無い程度の能力削除
石綿はだめえええ!