注意書き
救いはないです。
Phantasmをミサマリでさっぱりクリアできない腹いせに書きました。お察しください。
……瞼が重い。二時間は寝たりない証拠だ、これは。それでも起きようとする自分はちょっといじらしいな、と外の世界出版の小説みたいなことを考えて、八雲紫は起床した。
次の瞬間、彼女は豊かな金髪をざんばとふとんに散らしていた。
二度寝である。二時間は寝たりないと思ったからには二時間は寝る。
再び起きるとまだ夜だった。我ながらすごい。本当二時間くらいしか寝ていない。これで藍に晩ごはんが無駄になったと怒られずに済む。
そう思ったのに寝間着のまま居間に向かうと式は白面の者みたいな顔で紫を睨みつけた。
「紫様、いくらなんでも寝すぎですよ!」
「ええ~。今日はちゃんと夜中のうちに起きたじゃない~」
「夜が明けて陽が沈んで夜になったのを夜中の内に起きたとは言いません」
「あらホント。36時間は寝てたみたいね。また永夜返しされたのかしら」
日めくりカレンダーが一日すっ飛ばされている。
規定された通りの行動を繰り返す式が一枚多くめくったというようなミスをするわけがなく、つまるところ紫の寝過ぎということで決定らしい。
まあこんな日も割とある。人生長いと一日寝潰すのもそう悪くはない。
睡眠は素晴らしい娯楽だ。コストもかからないのだし。
そういうわけで、紫は夕飯を食べ終えるともう一度寝床についた。
さすがに日めくりカレンダーを二枚すっ飛ばすような事態にもなると、式にふとんを引っぺがされて起こされるという結果に至った。
ふとんがカビると彼女は言う。
そんな細かいこと式として入力したか思い出そうとしたが、どうでもよくなったのでやめた。
数日ぶりに巫女や亡霊の所に遊びに行き、お茶をいただく。
外の世界をうろついていると拾ったiPodに男たちの熱烈な鼻歌と浄土宗を称える歌が入っていた。
とりあえず罪袋を量産して色々と満足したので帰宅。寝床につく。
起きるとふとんが変わっていた。
「……紫様、体調はいかがですか?」
「すこぶる問題ないわ」
「ならよろしいのですが」
「私、そんなに顔色悪いかしら」
「紫様、あれを」
藍がすっと指差す方向には、日めくりカレンダー。
なんと四枚もすっ飛んでいた。さすがに驚く。冬眠するにはまだ早い。
「ふとんを干すために起こそうとしたのですが、どうしても起きないので他のふとんに移させていただきました。乱暴な方向で」
「あらぁ、寝込みを襲っちゃあいやぁよ」
「ともかく、今日は永遠亭に参りましょう。診察を受けていただきます」
真面目な表情で藍はうんうんとうなずく。
しかし紫はあの薬師に診られるのはちょっと気がすすまなかった。
わかっていて苦いお薬を出しそうだからだ。
「嫌よ。すこぶる快調って言ったでしょう」
「もうお年なんですから……」
「藍、今日はきつねうどんが食べたいわ」
ため息。
勝利である。
戦勝祝いに今宵は紅魔館のパーティーに向かう。瀟洒な従者が少し羨ましい。式を貼り付けて八雲家のメイドにならないかと誘ったがやんわりと一刀両断される。もちろん、刃物的な意味で。
夜が明けるとパーティーは終わったので、帰宅。そのまま寝る。
次に起床して居間に向かうと、永遠亭の薬師がいた。
起きるタイミングを読んで呼んでいたらしい。
なんという嫌らしい式だ。あとでお仕置きしてやる。
「お目覚めのようね。気分はいかがかしら」
「少し悪いわ」
「まあ気分なんてどうでもいいんだけど、藍に頼まれたから勝手に診させてもらったわ。昨日」
「ホントに寝込み襲われるなんて……もうお嫁に行けないわ」
「傷物にした分、仕事はきちんと済ませたわよ」
にこりと笑う。
対照的に藍の表情は暗い。暗くなりたいのはこちらだ。
そう思って恨みがましく睨んでいると、悲しそうに藍はまたもやカレンダーを指差した。
恒例になっているな、と思いながら見ると、目を疑った。一週間以上過ぎている。
永琳がカバンの中から怪しげな薬壜を次々取り出す。
「寿命ね」
「寿命?」
「妖怪なんだもの。寿命くらい来るわ、私たちと違って。けれど妖怪以前に生物としての生存本能が、寿命を遠ざけようとしているみたい」
「私って案外生き意地が汚いのねぇ」
「まあ地上の民はそんなもんよ。症状を言うとね、あなたはこれから生存期間を延ばすためにどんどん冬眠期間が増えるのよ」
「これまでと一緒な気もしますけど」
「際限がなくなったと思えばいいわ。今までの傾向から見るに、どんどん倍加されているみたいね。二日が四日、四日が八日になったのだから。どこかで間隔が止まるかもしれないけれど、どうなるかは今後診続けなくてはわからないわね」
はっきりと断言されたのだが、いまいち実感がわかない。
そも妖怪と人間の時間感覚は歴然とした違いがあり、健康体であっても一度寝床につくと十年単位寝ている奴も不思議ではないのだから。
数日や数十日、どうということはない。
「これを置いていくわ」
お札が貼られた薬壜を、永琳はすっと差し出す。
「蓬莱の薬じゃないの。スペルカードじゃなくって、ちゃんと実在したのね」
「これを飲めばもしかすると睡眠時間は改善されるかもしれないわ。寿命が無限になるのだから」
「割と藪ねぇ」
「竹薮暮らしなもので」
上手いこと言ったつもりか、永琳は満足したように畳から立ち上がり、去っていった。
紫は永琳が置いていった薬壜を眺める。そしてぽいっと藍に投げ渡した。
彼女はそれを慌てて受け取り、不安の混じった瞳を主人に向ける。
紫はあくびをかました。
「それの処分はあなたに任せるわ」
「使わないんですか……?」
「永遠の命に興味はないの。果てる時は果てるのが美しいのよ。幽々子みたいにね」
「ああフツーに食っちゃ寝して現存されていると、果てて美しいのかどうか疑問を持ちますが」
「そういえば藍は幽々子の死に様は見てなかったわね」
さすがにああまで古い話になると、長い付き合いの式にすら通じなくなるらしい。
少しだけ不満を覚えたが、それだけの話であった。
その時は。
その日から四度目の起床であった。
寝る前はまだまだ寒くて凍えていたというのに、起きてみれば青葉が覆い茂り草木萌える季節になっていた。
毛虫が嫌な季節である。
初夏らしい涼しげな服装に着替えて白玉楼に向かった。
「あ、紫様、お久しぶりです」
「この前会ったばかりな気もするけど」
二百由旬(自称)のお庭を任されている庭師は、紫の目にはまだまだつたない手つきで桜の剪定をしていた。
先代の庭師は紫が来ても挨拶一つ寄越すことはなかったが、そのかわり庭に対する目の行き届きには感心するものがあった。
彼の行動パターンを式として反映し、藍に組み込んでみようかと一瞬考えたが、口うるささが十乗くらいされそうだったのでやめた。
ともあれ、半人前の庭師は紫の言葉に苦笑する。
「今回の冬眠は随分長かったようですね。
幽々子様が今年の花見に紫様が来てくれなかったと、御立腹でしたよ」
「あぁ……今年の桜、見逃したのね」
とは言っても紫の感覚では半年ほど前に白玉楼に呼ばれたので、どうにも惜しいという実感が沸かない。
ただ、少し気づいたことがある。
「しばらくは花見をできそうにないわ」
「はぁ」
「今度の花見を楽しみにしてるわ」
上手く紫が起きている時期に桜が咲く頃と重なるのは十年近く先になると、すぐにわかった。
ただ、紫にしてみれば一週間も過ぎていないのだが。
四季の楽しみが順番に味わえないというのも中々不便だ。
それから数度寝床についた紫は、約束通り白玉楼の花見に出席した。
妖夢や幽々子はすっかりその約束を忘れていたらしく、紫が顔を出すと今年も来ないもんだと思っていたなどと、薄情なことを言ったのでとりあえず泣いてみた。
白玉楼の花見は紫が出席した年と、全く変わらない。
幽霊どもは騒々しいし、騒霊姉妹が煽り立て、幽々子は天衣無縫で、妖夢は片付けに追われている。
けれど何か足りない気がした。
「ああ、紅白がいないわ。霊夢はどうしたの?」
その何気ない質問に、半人半霊の庭師は目を丸くした。
「紫様、知らな――」
「妖夢、お酒」
「はいはい」
幽々子の差し出した杯に押され、妖夢は口を閉ざされた。
さらに亡霊嬢は北東の倉に押し込んでいる、二百年ものの梅干が欲しいから取ってこいと妖夢相手に言いつける。
不平を漏らしながら飛んでいく妖夢の背を、紫は見送った。
「気を遣わせてごめんなさいね」
「妖夢だから仕方ないわね。霊夢のことだけど、あの娘は去年、巫女を引退したわよ」
「あら? じゃあ博麗の巫女は代替わりしたのしかしら」
「まだどこのどんな娘かは聞いていないし見てもいないけれど、そうらしいわ」
紅白じゃない霊夢など少し想像がつかない。
すると一応は幻想郷の結界を管理するものとして、今代の博麗の巫女にちゃんと会っておくべきなのだろうが、霊夢の時も結構経ってからようやく面を合わせたのだ。どうでもいいかもしれない。
「あら、お久しぶりです」
随分と瀟洒な口調で話しかけられ、振り向いた先には意外な人物がいた。
相も変わらず黒白い格好の魔法使いであるが、彼女はまるで別人になっていた。
白色系人種の血が本格的に目覚めたのか、背は紫並みに高くなり薄っぺらかった胸が魔法使いの衣装を押し出すほどにまで成長していた。
二十代の人間で普通の魔法使い、霧雨魔理沙はにこりと微笑んで紫の傍に座る。
「まま一杯」
「あらありがとう。あなたもどう?」
「これはまた見事な酌で」
杯で酒を受け取る魔理沙の口も、相変わらずであった。
見かけだけしか変わっていないあたり、なんともはやである。
ただ、年齢的に許されなくなってきたのはわかっているのか、以前見たように酒盛りで酔っ払ったので足を投げ出したり、身体が火照ってきたから下着姿になるなどということは、しなくなっていた。
人間というものは、本当にあっという間に変わっていってしまう。
紫は散り始めた桜を仰ぎ、少しため息をついた。
それから、『紫の主観で』十日後。
紅魔館から自宅に帰ってきた紫を出迎えた藍は、崩れ落ちそうになった主人の身体を抱えて支えた。
「紫様、御自愛ください」
「醒と睡の境界をいじってるから大丈夫よぉ」
「だからこそ、お体が持ちません」
紫はここ一週間『起き』続けていた。
だから一週間、夜が明ければ当然朝がやって来て、一日しか時間がたっていない世界に紫はいる。
ただ、元から睡眠時間が多いうえ、寿命を延ばすために、冬眠――つまりは仮死状態期間をどんどん延ばし続けているこの身体にガタが来始めているのは確かだった。
今、ヘタな妖怪に襲われては手加減できずに幻想郷ごとぶっ壊すか、紫が死ぬかしかないんじゃなかろうかと思える。
「紫様、もうお眠りください。次に目覚めた時も、この藍は必ずやお傍であなたにお仕えしております故」
「わかってるわよ。うん。妖怪は、全くあれから変化がないものね」
ただ、人間だ。
今日出会った十六夜咲夜は、瀟洒な姿勢にさらなる磨きすらかけていたものの、肉体はかつての瑞々しさから衰えが目に見えて出てきていた。
銀髪が白髪に変わり始め、肌は乾燥し、小皺が見え始めている。
それでいてなお美しく瀟洒な彼女には頭が下がるが、やはり彼女も人間だと痛感させられた。
魔理沙も老魔女としての風格が出始めてきているし、霊夢に至っては人里に溶け込みすぎていて言われなければわからないほど、ただのおばさんと化している。
それでも彼女たちは紫の友人である人間たちだった。
「人はああいうものだと、わかっているじゃないですか」
「当然よ」
残念ながら藍は紫の気持ちを理解しきっていない。
今までの紫にない異常事態に、式である彼女は対応しきることができていないのだ。
ましてや藍の式を調整する期間はどんどん長くなっている。
はっきり言うと、精度と性能が少しずつだが悪くなっている。
けれどそれが深刻な問題となるのは、紫の主観ですら結構な期間が必要だ。
問題は、人間だ。
妖怪は寿命が長いから、人間と友になったとしても、必ずやその死を目の当たりにしなければならない。
それ自体は構わない。妖怪やって長いのだから慣れている。
ただ、慣れている理由は一人の人間だけを友にしないからだ。
出会った頃は若くてやがて年老いたとしても、その間にまた違う若い人間と友になり、死を見送ったとしても、いわば代替わりがいるので苦痛も幾分か和らぐ。
ただ、今の紫に若い人間の友などいなかった。
あの三人が死ねば、人間の友は誰もいなくなる。
それが『はじまり』だと、紫にはわかっていた。
「……わかりました紫様。お眠りにならないというのであれば、よろしいです。ただ、少しお体はお休みになってください」
「そうね。ここ一週間、ずっと外出してばかりだったから」
藍ももう少しきちんと見てあげよう。
何十年も寝たきりの紫をかいがいしく世話してくれているのは、この可愛い狐なのだから。
お茶を入れてくると言って去った藍を見送る。
彼女の式を頭に浮かべ、改良すべき箇所をピックアップするという作業を、時間潰しに始めてみた。
気がつけば、ふとんの中にいた。
紫は愕然とし、次の瞬間にはため息をついた。
すきまを開いて霧雨邸に向かおうとしたが、そのすきまの向こうを見て紫はもう一度ふとんを被り直した。
魔法の森は生きている。
主を失い死した邸宅は喰われていた。
紫ほどではないが、だからこそ数字にうるさい藍は主人が目覚める日が今日だと、きちんと気づいていた。
けれど起こしにやってきた彼女を無視し、紫はふとんの中でたぬき寝入りを決め込んでいた。
年甲斐もなく流した涙を、可愛い式には見られたくない。
それからは、少し前の日々が戻ってきたような錯覚に捉われた。
何せ知り合いが御長寿な連中しかいない。既知の場所に行けば知人がいる。それだけである。
変わることのない顔ぶれに、紫はいっそ安心感を覚えた。
ただ、半人半霊の庭師は、出逢うたびに少しずつ一人前になり、大人の美しさへと近づいていた。
それ故、白玉楼に向かった時、あの西行妖が跡形もなくなっていたことに心底驚かされた。
うろたえる紫を出迎えたのは見知らぬ半人半霊の少年だった。
連れてこられたのは、銀の髪を長く伸ばした初老の女性の下。
彼女はあいもかわらず半霊を傍にしているものの、そこに浮かぶ笑みは充分に一人前であった。
すっと、三つ指をついて彼女は頭を下げる。
「お久しゅうございます」
「やめてもらえないかしら、みょん」
「そう呼んでいただける方はあなたくらいです、紫様」
妖夢は先ほどの少年を息子と紹介した。
まだまだ未熟の半人前ですが、と笑う姿に紫も微笑を返す。
そうして少し場を和ませてから、妖夢は紫の疑問を自ら察し、切り出した。
「幽々子様は成仏なされました」
「……そう」
「ある春、いつものように花見の準備を息子としていたのですが……西行妖が満開になりまして」
「あの桜が」
「はい。――懐かしい。あの春を集めた春。それでも満開になることはなかった西行妖という存在――それが未熟であれど、今の私には理解できます。故、西行妖の下を掘り起こし、その下で眠る亡骸を葬りました」
それは美しいお方でありました――
妖夢は晴れ晴れとした声で、紫に告げた。
幽々子は現世に未練があった。それ故、長い年月を経ようと亡霊という存在を保ち続けていた。
未練が断ち切られた彼女は幸せだったのだろうか。
転生を拒んだ彼女は、もう一度得た生で幸せになれたのであろうか。
「西行妖はどうなったのかしら」
「満開になるだけなった後、足を生やして好きな所に行きましたよ。幽々子様のように天衣無縫な存在でした」
「それで、ここの主はみょんが?」
「はい。不安でございましたが、閻魔様にも御命令されては。幽々子様のサボリ癖が、今となってはありがたく思います」
それから、妖夢は息子のことを語り出した。
どれだけ彼が頼りないか、剣術の腕前が下手か、白玉楼をあれに任せていいものか、そんな愚痴の中に混じる嬉しさを見出しつつ、紫は苦笑しながら受け答えした。
早く、帰りたい。
藍と一緒にいたい。
「紫様、ごはんですよ~」
毎度毎度、あえていつまでも変わらない言葉で、式は起こしてくれる。
世界の時間は果てしなく回り続けているのに、決められたパターンを繰り返すことにだけは専門家である式は、本当に変わらぬ調子で起こしてくれるのだ。
それは紫が心から安心できるものであった。
だからこそ、目覚めた時に映るものが黄金の耳ではなく、黒の耳であった時、何事かと思ったのであった。
「紫様、どうなさったんです?」
ふとんをかぶったまま部屋の隅までぶっ飛んだ紫に、黒耳で細い尻尾を九本生やした妖獣は首を傾げる。
――記憶が戻ってきた。
「橙?」
「はい」
「なんであなたが起こしにきてるのよ」
「ああ……そ、それはですね……」
しどろもどろに彼女は手を振り回す。
紫は気づいた。そして、何も言わず、橙を抱き寄せた。
反射的に逃げようとする黒猫は、察したように紫へと身体を預ける。
橙に憑依した式は、紫の組成したものと比べても遜色はなかった。
猫としての特性をきちんと理解して紫の組成式からアレンジし、数多くの目的をこなせるよう整然と膨大な式を並べ立て、組んでいる。
藍の苦労と愛が、橙には注ぎ込まれていた。
「藍……っ」
「ゆ、ゆかりさま、くるしいです……」
聞いていても、放さなかった。
紫はこの症状が出て、ようやく、始めて、その感情を抱いたのだ。
今までは、寂しさと悲しさだけだった。
ただ、今日は、今日からは、おそらく、恐怖が紫を襲うことになるだろう。
親しいものがいなくなる。
紫の存在が忘れられていく。
藍は紫の世話を橙に託してくれたが、藍ほどの忠誠と愛情を橙は紫に向けてくれるだろうか。
怖い。
紫はやっと、誰かの前で泣いた。
ただ、橙はその涙の前でうろたえるだけだった。
それから、何度目の目覚めだったか。
紫は誰にも起こされなくなった。
結界を張られて保護された屋敷に、一人で放置されていた。
幻想郷は、見も知らぬ幻想存在に埋め尽くされ、見る影もなくなっていた。
不貞寝をした。
次に目覚めると、幻想郷がなくなっていた。
永遠亭があった場所へ向かうと、彼女たちは当然のように煙の如く消えていた。
ただ、永遠に生きるだけ気の利いた連中で
『飽きてきたから別の星に行く』という旨のメッセージを暗号として置いていった分、少しは救われた。
またもや不貞寝をする。最近何も食べてない。本当に身体に悪い。
目覚めて、地上に誰もいなくなっているのを確認して、紫は微笑みを浮かべるしかなかった。
すきまを開いて、そこに安置した薬壜を取り出す。
「……後悔はしないわ」
ただ生きてこの光景を眺めるか、永遠に生きてこの光景を眺めるか。
おそらく、紫にはこの二つしか道はなかったのだから。
「だから、藍、もう、そっちに行くわね」
あの世や閻魔すら残っていないだろうけれど。
それでも、その幻想に、紫はすがった。
だから、紫は”紫”という境界をいじった。
身体の内部から開いた隙間に、金髪の一本すら残さず呑み込まれる。
閉じられた隙間を結ぶリボンが解かれたあと、そこにはもう、誰も、何もいなくなっていた。
途中でいなくなってしまった幽々子、そして藍。
この二人が居なくなった時の描写は、本当に寂しく、読んでいたこちらも胸が苦しくなりました。
ただ、私はあとがきも作品の一部と私は考えております。
正直、あとがきで台無しにした感じで、本当に勿体無いです。
幾ら察してくれと言われても、流石に見過ごせないものがありました。
寂しい作品を読んだ後に、すっかり気分が良くなった。と言われると腹立たしいものがあります。
よってあとがきの分で-30。
長文と、厳しい物言い失礼いたしました。
でも、作品自体は本当に素晴らしかったです。だからこそ、あとがきもきちんと〆て欲しかったと思いました。
それだけにあとがきが微妙
まぁ後書きは作者個人の気持ちを吐露する場、それを点数に加えるのはあくまで「私」個人の矜持が特例を除けばそれを許せない
故に私はこの点数です
でも、あとがきはもうちょっといいかもにょろよー
まぁ実に救いがない話でした
予告がなければ、耐えられなかったかもしれません
久しぶりに、とてもらしい紫を見たような気がします。
ご馳走様でしたw
一番残酷なのは、置き去りにする時の流れですよね。誰もいなくなった世界で紫が何を思ったのか、どれだけの絶望を抱いたのか……
時が経つにつれて変遷する幻想郷の姿が、妙にリアルで共感を持てます。
すげぇなあ、と思いながら読み終わり、読了感に浸っています。
ちなみに、私は後書き不要論者なので、別にそれについて云々云うつもりはないです。
胸が押し潰されそうになり、一瞬「あっ、自分もしかしたら泣くかな?」とも思いました。
す、救いが無いが、胸を締め付けられ、いつかある未来のように恐怖を感じました
紫さま…
合計100点!
いやはや、なかなか楽しめましたよ。感動をありがとう。
私は紫が好きで、紫関連の話を延々と巡っているのですが、この話には胸を締め付けられる思いでした。
悲しすぎるよ…
でも、切ないのと同時に綺麗な話だな、とも感じました。映像化したものを見てみたいです。
ところで、あとがきの件で色々突っ込まれているようですが…一体何書いたんですか?w
とにかく悲しい話だけど面白いし
ところで外の世界の小説というと空の境界あたりでしょうか?
素敵な終焉を有難うございます
リプライ(? のURLが途切れていて電子情報も幻想入りするのか....と
追記:簡易でポイントを入れてしまいました故無評価にて
素敵な終焉を有難うございます
リプライ(? のURLが途切れていて電子情報も幻想入りするのか....と
追記:簡易でポイントを入れてしまいました故無評価にて