この作品は作品集43にある「真実の竹取物語 月の姫の物語~プロローグ~」の続きとなっております。
退屈なものほど恐ろしいものはないわ
だから、壊そうと思ったの
だって、退屈だもの
月では、千や万を生きるのは珍しいことではない。
月の民にとって、寿命など有って無きに等しい。
遥か昔から月の発達した技術のおかげで、肉体の老化などを遺伝子的レベルから、限りなく遅らせることが出来るようになっているからだ。
月の都は非常に文明が発達した星だ。
その中でも医学、そしてさらに薬学においては、宇宙一を謳ってもいいだろう。
中でも代表的なのが、「不老長寿薬」と呼ばれる薬を服用し続けることで、一定の期間歳を取らなくなり大抵の病に罹らなくなるだ。
そうした文明の中心となり、導いていかなければならない王族の一人として私は存在した。
ー蓬莱山。
月で、この名を知らぬ者は居ない。
高名な貴族だ。
蓬莱山は、王直属の月の使者の一軍を任されている。
今は、お爺様が月の使者として、王に仕えているが、いずれ一人息子である父が、王となる母に仕えるはずだった。
王族であり、第一王位継承者であった母は、王位より父との結婚を選ばれた。
父でさえなければ、今頃母が玉座に座っていただろう。
否、父が蓬莱山の一人息子でさえなけれ、ば王位継承権を捨てる必要はなかっただろう。
王位継承者である母と結婚すれば、父は王族となり王宮で母の補佐として働く事になる。
そうなれば、蓬莱山の跡継ぎがいなくなり、王も信頼できる月の使者を任せられる者がいなくなってしまう。
王と婚姻関係にある者は月の使者になれない規則がある。
婚姻した以上は、次の王位継承者を王との間に儲けてもらわなくてはいけない。
月の使者は死がつきまとう役目。
子を儲ける前に、死なれては困るのだ。
父を愛してしまった母は、王位継承権を放棄し従姉弟であった現王に、その座を譲ることで結婚を許されたのだ。
そして蓬莱山へと嫁いだ。
その時点で、子が出来ても、その子に王位継承権など与えられるはずはなかった。
しかし先代の王は、自分の血を引いていない者が玉座に就く事を嫌い、母の子にも王位継承権を与えたのだ。
そうして与えられたのが第四王位継承権。
私は、王位継承権を持ち、蓬莱山の長女として生まれた。
物心ついた頃から、王位継承者である以上、下賎な輩が命を狙ってもおかしくないと、屋敷と王宮以外は出歩く事が出来なかった。
その為七つになる頃には、王宮にも屋敷にも飽きていた。
ただ、勉強は楽しかった。
駄々を云って、お爺様に色んな話を聞き、自分の知らない事を教わる事は非常に興味をそそられた。
その知的好奇心から、お爺様の話される一部の話題に、異様に興味を持ったのが全ての始まりだったのかも知れない。
お爺様の聞いた話では、王族の中でも王と第一王位継承者しか入れない場所に、王族の歴史書や宝具などがしまわれているらしい。
その場所には、決して語られる事の無い歴史書などもあるという話だ。
中でも、「不老長寿薬」の話については、非常に興味をそそられた。
「不老長寿薬」はかつての王が月の滅亡を恐れて作らせたもので、私が生まれるよりはるか昔の事、月で子供が生まれなくなる事態が起こった。
その事に気付いた王は、直ぐに医学や薬学の権威などを集め問題の解決に挑んだ。
その結果、「不老長寿薬」が作られた。
その名の通り、人の寿命を延ばすことにより人口の減少を抑えたのだ。
この事は、月の歴史の教科書や参考書にも載っている事。
故に、「不老長寿薬」は、人々にとってなくてはならない大切な薬だ。
「不老長寿薬」に関する法律もあるほど。
しかしお爺様はこの「不老長寿薬」を「悪魔の薬」「人類の毒」などと言い、私の好奇心を煽った。
その理由を知る為に、お爺様の書斎や屋敷の隠し部屋などを調べ、その結果、得られた答えは子供が生れなくなったのは「不老長寿薬」の所為だという事だった。
残念な事に、その理由が真実である決定的な証拠なく、証拠がない以上お爺様が言っている事は嘘であると言うことだろう。
だがこの事に関しては、何かが引っかかっていた。
その正体が今は分からなかった。
ただその正体を知る方法として王と、王となる者以外が入る事のできないそこに、それがあると考えた。
この時、永琳がそばにいたなら、私の未来も違うものだったかも知れない。
今思えば、これは偶然であり必然であり、避けられない運命だったのだろう。
全ての事柄が、重なりあい悲劇の幕開けとなった。
その悲劇の引き金を引いたのは、まぎれもない私だった。
この頃王宮では、大臣や貴族達による王位継承者の事で揉めていた。
王や王位継承権を持つ王子や姫は、特に興味を示してはいなかった。
王位に就くのは、第一王位継承権を持つ王子だと納得していたからだ。
ところが、第一王子が何者かに殺されかける事件が起きたのだ。
その犯人は捕らえられが、牢獄で自害したため、誰の差し金かは分からなかった。
ただこの事件をきっかけに、王や王子達の間には疑心暗鬼が起こったのは確かだった。
疑心暗鬼に掛かっていてくれれば、簡単に私の策は実行できる。
王子達に会いに来たと言えば、簡単に私室にまで通してくれる。
私が小さい子供だからこそ、警戒の必要がないと思ったのだろう。
もちろん、私も何も知らない子供を演じていたのだから当然だった。
計画の上で最初にした事は、第一と第二王位継承権を持つ姫に脅迫状を送ることだった。
これはすんなり成功した。
それぞれの部屋を訪ね、王子達と庭に行くなど口実を作り、部屋を出る際にこっそりと机の上に置いていく。
その時、第三王位継承権を持つ王子が身につけている装飾品を落としておくのも忘れない。
そうして、王子達の目は、第三王子に向けさせる。
その間に、第三王子が用意してくれた飲み物に毒物を入れ、第一王子と一緒にいる時に自身でも口にした。
もちろん死なない程度にだが。
この事により、第一王子は第三王子が自分を殺そうとしていると疑った。
もちろん私がした事なので、第三王子から証拠などはでない。
そして第三王子は、お世辞にも賢いとは云えず、政にはからきし。
第一王子が、私を殺そうとした罪を押し付けて、消そうとしていると。
王子にも分かるように、しかし策略は悟られないように話してやった。
ここからは簡単だった。
第三王子は、私の予想通りに動いてくれた。
自分を消そうとするなら、他の王子達を殺して自身の安全を確保しようとしたのだ。
それだけでなく協力者も得ていた。
政に参加する貴族や大臣達にとって、馬鹿な第三王子の方が政を都合のいいように動かせる。
こうした協力者ができる事も予想していた。
そして大臣達の手によって、第一王子はパーティー会場の庭で殺された。
この事件が、第二王位継承権を持つ姫に第三王子への感情が、疑心暗鬼から確信へと変わった。
第一王子を殺したのだ。何時自分が殺されてもおかしくない。
思惑通り、私がそれとなく用意した毒を以って、躊躇いもなく第三王子を毒殺。
ここまで策通り完璧に進んでいる。
後は姫だけだ。
自分で殺そうかとも思ったが、万が一疑われたら、王位継承権を失う事になりかねない。
しかし、今ひとつ足りなかった駒は簡単なところにあった。
第一王子には婚約者がいた。
王子自ら見初めた娘だと聞いている。
これを利用しない手はなかった。
婚約者は、王子が殺されてから部屋に閉じこもって、会おうとはしてくれなかった。
三回目に訪れた時、漸く会う事ができた。
会ってしまえばこっちのものだ。
婚約者に慰みの言葉をかけ、心を開かせる。
そうして何度か訪ねるうちに、私の事を随分可愛がってくれる様になっていた。
頃合を見計らい、私はアルバムを持って訪ねた。
アルバムに一枚の写真を挟んで。
懐かしい思い出話などに耽っていく。
時間だと、アルバムを持って去る時、自然を装って写真を落とす。
その写真に気付かぬふりをし、部屋を出て行こうとする私を呼び止める。
婚約者が写真を拾い見た瞬間、大きく目を見開いた。
全て、計画通り。
私の考える婚約者の性格が間違っていなければ、後一月もせずに第一王位継承者として王宮に迎えられるだろう。
写真を慌てて婚約者から奪う。
婚約者は、その写真は何かと問いただす。
婚約者が見た写真は、第一王子と姫がキスをしている写真だったからだ。
困った顔をしながら、言い訳になっていない言い訳をする。
婚約者がそれで納得するはずもなく、私に掴み掛からんばかりの勢いでなお問いただす。
その予想通りの態度に、うんざりしながら婚約者の下を去った。
次の日も婚約者の下を訪ね、昨日の一件を謝ってきた。
気にしてないと言って、表情を曇らせてから婚約者に告げる。
第一王子と姫が恋仲だったと、そして婚約者の事は二人の関係を隠す為のカムフラージュだったと。
婚約者は最初信じられないという顔をしたが、思い当たることでもあったのか、「あの時も・・・」などと怒りに震えている。
後はあることない事を吹き込んでおいた。
明日また来ると告げて、その日は屋敷へと帰った。
次の日も婚約者の下に向かおうとすると、月の使者が一人屋敷に駆け込むようにやって来た。
使者の話によれば、姫が今朝、殺されたそうだ。
殺した相手は云わずとも知れた。計画通りだった。
ただ一つ、問題がある。
婚約者の存在だ。
婚約者が予定通りに姫を殺してくれても、殺させる動機を作ったのが私だと知れると色々面倒だ。
婚約者は、姫を殺した後自害するように仕向けるつもりだったのだが、こんなに早く実行に移されるのは予定外だった。
どうするかと思案していたが、その必要もなくなった。
使者の話では、婚約者は姫を殺して直ぐテラスから飛び降り死んだそうだ。
どうやら、私が思っていた以上に婚約者を追い詰めていたようだ。
写真は角度的に、キスしているように見えるが、実際は王子と姫の間には何もない。
全てがでっちあげだ。
ともあれ、全て私の計画通りにことは済んだ。
私を疑う者もいないだろう。
七つの私に、こんな事を考えつくなんて誰も思わない。
後は、王宮からの使者が来るのを待つだけだ。
第三王位継承者までが死んだのだから、第四王位継承者の私が次の王となるのは当然。
だが理由はそれだけではない。
私以外に、王族の正当な血を引いた王位継承権を持てるものがいないのだ。
他にいない以上、私を殺そうとする輩はそうそういないはずだ。
数日後、王宮から王の使者として大臣が私を迎えに来た。
最初、両親達は反対したが王が決めた以上、貴族に過ぎない父達では逆らう事が出来なかった。
そんな両親を見て特に何も思わなかった。
両親達は好きだしお爺様も大好きだ。でもそれだけだ。
王宮に入ってから直ぐに、計画の目的だった王達のみが入れた場所に行った。
特に変わった事は見当たらず、歴史書や昔の宝具が置いてあったが、お爺様が言っていた「不老長寿薬」については私が知るのと同じ事が書いてあっただけだった。
正直期待はずれ。
まあ量だけはあったので、時間潰しには使えたが。
また直ぐに退屈な日常に戻ってしまった。
色々無理難題を言っては、周りを試してみたが私の退屈を無くしてくれそうな人物はいなかった。
両親やお爺様でさえ私にはどうでもよくなっていった。
こんなふうに、家族の事を考えるようになっていた時点で、私が“あんな事”をしてまで手に入れようとしたのは、変えられない運命だったのだろう。
それとも「月の頭脳」の噂を聞かなければ私はもっと別の運命を歩んだのだろうか?
八意永琳。
全ては彼女が原因だったのだと思う。
そうすれば、私の罪は王族殺しだけだったのだから・・・・
続く
まぁ、この月の物語を本気で書こうとするととんでもない文量が必要になるし、それでいて読者を飽きさせずというのは至難の業ですが。
最近明かされた設定を自分なりに咀嚼し、真正面から月時代の輝夜を描こうという試みは素晴らしいと思いますし、話そのものも好みではあるのですが、もっと物語としての演出を心がけては如何でしょうか?
それを為せるだけの技術は持ってらしゃると思います。頑張ってください。
とりあえず設定や物語進行等については、まだ始まったばかりですので置いておくとして……。
文章の方がとても読み難いです。
改行の少なさ、句読点の使い方の甘さ、言葉選びの拙さが合わさって本当に読み難いと感じました。これは台詞の有無や、携帯で見るという事に関係のない事です。
失礼ながら、完成後読み返す等の行為はしているでしょうか。一度ならず、二度三度としっかり読めば、このような読み難い文章にはならないのではと思いました。
しかし、なんか手抜きなんじゃないかなぁ?と。
物語として、この設定を書くとしたらその作業は本当に大変で、自分にはとても気が長いと思います。それを省略したくなる気持ちは自分はよくあります。
あくまで自分の話なので、秘月さんに当てはまるわけじゃないですが。
小説を書くのは、読むより数倍も疲れるけれど、手間暇惜しまない作品は絶対に何かが、違います。
と、偉そうに言ってみました。はい。
まぁ、でも本当に惜しいとは思ってます。
次作品を、心から期待して待っています。
とりあえず気になるところとして、日本語として文法がおかしい箇所がありました。もっと推敲に時間をかけてはいかがでしょう。
また、読み難いのは読点が少ないのと、似たような文章が続くためだと思いました。少し考えて表現にバリエーションをつければもっと良いものになると思います。
誤字報告:興味をそそれた→興味をそそられた
なにはともあれ、この話がどのように展開するかは興味があります。がんばってください。
王子たちを殺した理由が退屈しのぎで、しかも結果手に入れたのが大したものじゃないのも凄くいい。
描写をすっ飛ばしまくってる感じはするけど、輝夜の底知れなさを描くと言う意味では
上手くいってると思う。