竹林を歩く、一羽の月兎。彼女の名は鈴仙・優曇華院・イナバ。正確には本名はレイセンであるが、
彼女の師匠・八意永琳と、主人である蓬莱山輝夜のつけた愛称のために名前が長くなった。
もうじき日が暮れるという薄暗い竹林の中を、疲れきった表情でとぼとぼと歩いている。
「はぁ・・流石にこの距離はこたえるなぁ・・」
私は師匠のお使いで遠方の町へ薬を届けに行ったのだが、てゐの悪戯で地図を泥だらけにしてしまい、
図面が読めなくなってしまった。今思えば、あんな道の真ん中にニンジンが落ちているコト自体を疑うべきだった。
兎としての本能が揺さぶられるまま、私はニンジンを拾おうと歩いていったその矢先、てゐの仕掛けた落とし穴にずぼっとはまり、
師匠に描いてもらった近道の地図を泥だらけに汚してしまった。落とし穴の上から覗いたてゐ曰く、
「誰が引っ掛かっても良かったから、別にれーせんを狙ったわけじゃないよー。」
というのだが、どう考えても兎向けの罠だし、それもこんな永遠亭を出たすぐ正面にある道に罠を仕掛けるあたり、絶対に私を狙ったものだ。
本当ならてゐをとっ捕まえて師匠に突き出したい所だったが、師匠のお使いは急ぎの用だったことを思い出して、
泥だらけの身体からざっと泥を払うと、薬が無事なのを確認して全速力で飛んで行くことにした。
お陰で帰り道は飛ぶだけの力が残っておらず、今に至るのだ。
「てゐ・・帰ったら覚えてなさいよ~・・。」
独り言でてゐへの恨みをぶつぶつ呟きながら竹林をひたすら歩く。師匠にもらった地図は読めなくなったが、
月の目を持つ私は竹林を普通に歩いても永遠亭に辿りつくのに迷うことはない。
そんなことを考えていると、日が落ちてきたせいか、段々と妖怪達のざわめきが聞こえ始める。
まずい。早く永遠亭に帰らないと――
そう思って足を速めた途端、3匹の妖怪が私の首を狙って飛びかかってきた。
月兎である私も(一応妖怪ではあるが)、こんな下級妖怪に引けを取るほど落ちぶれてはいない。
すぐさま後ろに大きく飛びのき、弾幕をお見舞いして一蹴してやる。
妖怪はあっさりと退散し、私は何事も無かったかのように歩き出した。
その後も何度か下級妖怪に襲われたが、特に大した事も無く、私はその度に返り討ちにしてやった。
自慢じゃないけど、私だって師匠の弟子である手前、こんな雑魚に負けることなんてできるわけがないのだ。
私、ちょっとカッコイイかも・・
そんなことを考えてニヤけていると、どうも感覚が鈍るのか、いつの間にか私は、強く、濃い妖気にあてられていた。
背筋が凍りつくような感覚に、おもむろに背後を振り返る。
巨大な毒蜘蛛が両顎のハサミをガチガチ鳴らしながら私に迫っていた。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
レイセンはどうする?
だんまく
ぼうぎょ
きょうきのひとみ
ざやく
⇒にげる
レイセンは逃げ出した!
しかしまわりこまれてしまった!
あんな化け物とやりあって、無事で済むはずがないと判断して、私は一目散に逃げ出した。
大蜘蛛を撒くことだけを考えて竹林の合間を縫うように跳躍するが、相手は大きな図体に似合わず素早く、竹をなぎ倒しながら
私に迫ってくる。冗談じゃない、あんなのに追いつかれたら一発で噛み砕かれてしまう。
しかしここで、私は重要な事を思い出した。
――この竹林の奥には、永遠亭が――
師匠や姫を巻き込むわけには行かない。ならば。
逃げ切ることを諦めて、蜘蛛の攻撃を紙一重でかわしながら弾幕を展開する。
しかし相手も中々にしぶとく、弾幕は当たってこそいるものの、未だに倒すほどに至っていない。
それでも鈴仙は弾幕を張り続ける。先ほどまでの戦闘の疲れもあって、腕がしびれてきたが、そんなことで弱音を吐いてはいられない。
戦闘が始まって、早10分が経過した。大蜘蛛は鈴仙の弾幕の前に敗れ去り、そして鈴仙も大蜘蛛を倒したものの、
毒を受けてその場から動けなくなってしまった。
「解毒剤くらい、持ってくるんだったなぁ・・やっぱり師匠の言うとおり、まだまだ未熟だなぁ、私。」
幸いに毒は致死性のものではなかったらしく、時間が経てば治りそうだがこのままここに留まるのは危険だということは分かっている。
それなのに、身体は言うことを聞かずついて行かない。
――あぁ、もうここで、妖怪に食べられちゃうのかなぁ――
それを考えると、鈴仙は急に恐ろしくなってきた。
「えぐっ、ひっく、ししょぉ・・・」
永琳の顔が走馬灯のように鈴仙の脳裏に浮かび、鈴仙はしゃくり上げた。
日常を失うのが、永琳や輝夜、てゐ達に会えなくなるのが怖い。
「動いて、よぉ・・お願いだから・・ぅぅ・・」
誰も居ない、真っ暗な竹林の中で鈴仙は独り呻くように懇願するが、誰もその願いを聞き入れる者は、ない。
万事休す。
急に襲ってきた睡魔に、泣き疲れた鈴仙は意識を手放した。
意識を手放す寸前、僅かに人影が目に映った事に、鈴仙は気が付かなかった。
暖かい。
鈴仙は夢を見ていた。懐かしい、月での生活が、平穏だった頃の夢。ソレが崩壊する夢。
そして、行き場を無くして途方に暮れていた自分に差し伸べられた、暖かい救いの手。
自分の身体を抱き寄せる心地よさに、身を委ねていた。時折優しく揺れ、サクサクと何かが葉を踏みしめる音が鈴仙の耳にも届いた。
・・・え?
ハッと目を覚ます。状況を整理する。私は、大蜘蛛と戦闘して、痛手を負って、そしてそのまま――
倒れたはずだった。しかし私は今、「誰か」に揺られて運ばれている。
「お目覚めか。」
「誰か」が語りかけてくる。しかし、その「誰か」が誰であるか、私には全く分からなかった。
黒髪だが、てゐではない。第一、男の人のようだし妖怪じゃない――人間!?
大変だ。このままでは私は今夜の食卓の鍋の具にされてしまう。
「あの、降ろしてもらえませんか・・。」
ダメ元で懇願してみる。交渉する時は、先ず下手に出るのは基本だ。上から見下ろすようでは何も始まらない。
「ん、もういいのか?」
そういうと、彼はあっさり私を降ろした。
背中から滑り降りるようにして両足で踏ん張ってみたが、まだ毒が回ったままらしく、バランスを崩して尻餅をついた。
「あぅ・・。」
自分の情けなさに、思わず声が漏れた。
「ホラ、無理するなって。運んでやるから大人しくしてな。」
彼は呆れたように言って、自身の背中を差し出した。
「運ぶって、何処へですか?」
この人は私をどうする気なのか、半信半疑で訊いてみた。
すると、彼は後ろを向いたまま答えた。
「弱ってるみたいだからな、とりあえず、俺の知ってる名医の所へ行くとしよう。」
「そんな事言って、私を食べたりしませんよね?」
助けてもらっておいてそんな事を言うと、彼は可笑しそうに笑って言った。
「安心しな。兎鍋よりはボタン鍋派なんだ、俺はね。」
さっきの質問にも、波長の乱れは無かったし、一応信用できそうだ。
私は彼の首に手を回し、彼は私を負ぶって再び竹林を歩き出した。
「えっと・・あなたの名前は?」
「志貴。七夜志貴だ。あんたは?」
「私はレイセンと言います。」
「レイセンか。変わった名前だな、アンタ。いや、人語を操る兎に変わってるもクソもないんだが。」
「私は月兎なんです。」
今更隠すことも無いと思い、身分を話すことにした。
「ゲット?月の兎ってことか。驚いたな。月に兎が住んでるなんてのは、空想の産物だと思ってたよ。で、その月兎が何故ここに?」
「色々と事情があって、今は地上に住んでるんです。あなたこそ何故こんな竹林に?それに、得体の知れない私を助けるなんて・・。」
奇妙極まりない、と続けたかったが、それを言っては助けてもらっておいて失礼だと思い、踏みとどまる。
「あぁ、この竹林の裏に、かつて俺の一族が住んでいた里があってね。散策してたら、アンタを見つけたんだよ。」
「訊かないんですか?何があったのか。」
「大方想像はつくからね。化け物と殺り合ったんだろう?」
「えぇ・・。」
ふと、気づいた。さっきの会話で彼が自分の里を指差していた方とは、反対の方角だ。
「あの。」
「なんだ?」
「里は、あっちじゃなかったんですか?」
「あぁ、そうだよ。だが俺の知る名医の「隠れ家」はこっちにある。」
彼は方角を顎でしゃくってみせた。この方向は・・・。
思い当たる節があったが、黙っていることにした。会話が途切れると、入れ違いに気まずさが漂ってくるので慌てて話題を振る。
「あなたの一族は、何をしているんですか?」
「かつて、退魔を生業としていたんだが・・死んだよ。その「魔」の襲撃で、俺を除く、全員がね。」
「それは・・ご愁傷様です・・。」
触れてはいけないことに触れてしまった。罪悪感が私の顔を俯かせる。
「なに、気にする事はない。十年以上も昔の話だよ。
最も、これから連れて行こうとしてる名医の隠れ家も、最後に訪れたのは十年以上昔だがね。」
「私が言うのもアレなんですけど、この竹林、はっきりいって夜は危険ですよ。ここは化け物がよく出るから・・。」
「言ったろ?俺の一族は退魔を生業にしていた、って。経験がないわけじゃないから、問題ないさ。」
口では軽くそんな事を言っているが、この人の気配遮断は大したものだ、と感心する。
目を閉じていると、まるでそこに実体がなく、声だけが聞こえてくるかのようだ。
「私も妖怪ですよ?退魔の対象に入るんじゃないですか?」
「あぁ、そう言われるとそれまでなんだが・・別に死にたいわけじゃないだろう?」
「イヤですよ、もちろん。」
「俺も別に、化け物に喧嘩を売る趣味はないからね。犬死にはごめんだよ。おっと、着いた着いた。」
言われて、目を開けて顔を上げる。
途端に、背筋が凍りついた。なぜならそこは。
永遠亭だったから。
「永琳ー、いるか?」
師匠が出てきた後の大混乱を勝手に想像して、私は再び意識を手放した。
彼女の師匠・八意永琳と、主人である蓬莱山輝夜のつけた愛称のために名前が長くなった。
もうじき日が暮れるという薄暗い竹林の中を、疲れきった表情でとぼとぼと歩いている。
「はぁ・・流石にこの距離はこたえるなぁ・・」
私は師匠のお使いで遠方の町へ薬を届けに行ったのだが、てゐの悪戯で地図を泥だらけにしてしまい、
図面が読めなくなってしまった。今思えば、あんな道の真ん中にニンジンが落ちているコト自体を疑うべきだった。
兎としての本能が揺さぶられるまま、私はニンジンを拾おうと歩いていったその矢先、てゐの仕掛けた落とし穴にずぼっとはまり、
師匠に描いてもらった近道の地図を泥だらけに汚してしまった。落とし穴の上から覗いたてゐ曰く、
「誰が引っ掛かっても良かったから、別にれーせんを狙ったわけじゃないよー。」
というのだが、どう考えても兎向けの罠だし、それもこんな永遠亭を出たすぐ正面にある道に罠を仕掛けるあたり、絶対に私を狙ったものだ。
本当ならてゐをとっ捕まえて師匠に突き出したい所だったが、師匠のお使いは急ぎの用だったことを思い出して、
泥だらけの身体からざっと泥を払うと、薬が無事なのを確認して全速力で飛んで行くことにした。
お陰で帰り道は飛ぶだけの力が残っておらず、今に至るのだ。
「てゐ・・帰ったら覚えてなさいよ~・・。」
独り言でてゐへの恨みをぶつぶつ呟きながら竹林をひたすら歩く。師匠にもらった地図は読めなくなったが、
月の目を持つ私は竹林を普通に歩いても永遠亭に辿りつくのに迷うことはない。
そんなことを考えていると、日が落ちてきたせいか、段々と妖怪達のざわめきが聞こえ始める。
まずい。早く永遠亭に帰らないと――
そう思って足を速めた途端、3匹の妖怪が私の首を狙って飛びかかってきた。
月兎である私も(一応妖怪ではあるが)、こんな下級妖怪に引けを取るほど落ちぶれてはいない。
すぐさま後ろに大きく飛びのき、弾幕をお見舞いして一蹴してやる。
妖怪はあっさりと退散し、私は何事も無かったかのように歩き出した。
その後も何度か下級妖怪に襲われたが、特に大した事も無く、私はその度に返り討ちにしてやった。
自慢じゃないけど、私だって師匠の弟子である手前、こんな雑魚に負けることなんてできるわけがないのだ。
私、ちょっとカッコイイかも・・
そんなことを考えてニヤけていると、どうも感覚が鈍るのか、いつの間にか私は、強く、濃い妖気にあてられていた。
背筋が凍りつくような感覚に、おもむろに背後を振り返る。
巨大な毒蜘蛛が両顎のハサミをガチガチ鳴らしながら私に迫っていた。
「うわぁぁぁぁぁ!?」
レイセンはどうする?
だんまく
ぼうぎょ
きょうきのひとみ
ざやく
⇒にげる
レイセンは逃げ出した!
しかしまわりこまれてしまった!
あんな化け物とやりあって、無事で済むはずがないと判断して、私は一目散に逃げ出した。
大蜘蛛を撒くことだけを考えて竹林の合間を縫うように跳躍するが、相手は大きな図体に似合わず素早く、竹をなぎ倒しながら
私に迫ってくる。冗談じゃない、あんなのに追いつかれたら一発で噛み砕かれてしまう。
しかしここで、私は重要な事を思い出した。
――この竹林の奥には、永遠亭が――
師匠や姫を巻き込むわけには行かない。ならば。
逃げ切ることを諦めて、蜘蛛の攻撃を紙一重でかわしながら弾幕を展開する。
しかし相手も中々にしぶとく、弾幕は当たってこそいるものの、未だに倒すほどに至っていない。
それでも鈴仙は弾幕を張り続ける。先ほどまでの戦闘の疲れもあって、腕がしびれてきたが、そんなことで弱音を吐いてはいられない。
戦闘が始まって、早10分が経過した。大蜘蛛は鈴仙の弾幕の前に敗れ去り、そして鈴仙も大蜘蛛を倒したものの、
毒を受けてその場から動けなくなってしまった。
「解毒剤くらい、持ってくるんだったなぁ・・やっぱり師匠の言うとおり、まだまだ未熟だなぁ、私。」
幸いに毒は致死性のものではなかったらしく、時間が経てば治りそうだがこのままここに留まるのは危険だということは分かっている。
それなのに、身体は言うことを聞かずついて行かない。
――あぁ、もうここで、妖怪に食べられちゃうのかなぁ――
それを考えると、鈴仙は急に恐ろしくなってきた。
「えぐっ、ひっく、ししょぉ・・・」
永琳の顔が走馬灯のように鈴仙の脳裏に浮かび、鈴仙はしゃくり上げた。
日常を失うのが、永琳や輝夜、てゐ達に会えなくなるのが怖い。
「動いて、よぉ・・お願いだから・・ぅぅ・・」
誰も居ない、真っ暗な竹林の中で鈴仙は独り呻くように懇願するが、誰もその願いを聞き入れる者は、ない。
万事休す。
急に襲ってきた睡魔に、泣き疲れた鈴仙は意識を手放した。
意識を手放す寸前、僅かに人影が目に映った事に、鈴仙は気が付かなかった。
暖かい。
鈴仙は夢を見ていた。懐かしい、月での生活が、平穏だった頃の夢。ソレが崩壊する夢。
そして、行き場を無くして途方に暮れていた自分に差し伸べられた、暖かい救いの手。
自分の身体を抱き寄せる心地よさに、身を委ねていた。時折優しく揺れ、サクサクと何かが葉を踏みしめる音が鈴仙の耳にも届いた。
・・・え?
ハッと目を覚ます。状況を整理する。私は、大蜘蛛と戦闘して、痛手を負って、そしてそのまま――
倒れたはずだった。しかし私は今、「誰か」に揺られて運ばれている。
「お目覚めか。」
「誰か」が語りかけてくる。しかし、その「誰か」が誰であるか、私には全く分からなかった。
黒髪だが、てゐではない。第一、男の人のようだし妖怪じゃない――人間!?
大変だ。このままでは私は今夜の食卓の鍋の具にされてしまう。
「あの、降ろしてもらえませんか・・。」
ダメ元で懇願してみる。交渉する時は、先ず下手に出るのは基本だ。上から見下ろすようでは何も始まらない。
「ん、もういいのか?」
そういうと、彼はあっさり私を降ろした。
背中から滑り降りるようにして両足で踏ん張ってみたが、まだ毒が回ったままらしく、バランスを崩して尻餅をついた。
「あぅ・・。」
自分の情けなさに、思わず声が漏れた。
「ホラ、無理するなって。運んでやるから大人しくしてな。」
彼は呆れたように言って、自身の背中を差し出した。
「運ぶって、何処へですか?」
この人は私をどうする気なのか、半信半疑で訊いてみた。
すると、彼は後ろを向いたまま答えた。
「弱ってるみたいだからな、とりあえず、俺の知ってる名医の所へ行くとしよう。」
「そんな事言って、私を食べたりしませんよね?」
助けてもらっておいてそんな事を言うと、彼は可笑しそうに笑って言った。
「安心しな。兎鍋よりはボタン鍋派なんだ、俺はね。」
さっきの質問にも、波長の乱れは無かったし、一応信用できそうだ。
私は彼の首に手を回し、彼は私を負ぶって再び竹林を歩き出した。
「えっと・・あなたの名前は?」
「志貴。七夜志貴だ。あんたは?」
「私はレイセンと言います。」
「レイセンか。変わった名前だな、アンタ。いや、人語を操る兎に変わってるもクソもないんだが。」
「私は月兎なんです。」
今更隠すことも無いと思い、身分を話すことにした。
「ゲット?月の兎ってことか。驚いたな。月に兎が住んでるなんてのは、空想の産物だと思ってたよ。で、その月兎が何故ここに?」
「色々と事情があって、今は地上に住んでるんです。あなたこそ何故こんな竹林に?それに、得体の知れない私を助けるなんて・・。」
奇妙極まりない、と続けたかったが、それを言っては助けてもらっておいて失礼だと思い、踏みとどまる。
「あぁ、この竹林の裏に、かつて俺の一族が住んでいた里があってね。散策してたら、アンタを見つけたんだよ。」
「訊かないんですか?何があったのか。」
「大方想像はつくからね。化け物と殺り合ったんだろう?」
「えぇ・・。」
ふと、気づいた。さっきの会話で彼が自分の里を指差していた方とは、反対の方角だ。
「あの。」
「なんだ?」
「里は、あっちじゃなかったんですか?」
「あぁ、そうだよ。だが俺の知る名医の「隠れ家」はこっちにある。」
彼は方角を顎でしゃくってみせた。この方向は・・・。
思い当たる節があったが、黙っていることにした。会話が途切れると、入れ違いに気まずさが漂ってくるので慌てて話題を振る。
「あなたの一族は、何をしているんですか?」
「かつて、退魔を生業としていたんだが・・死んだよ。その「魔」の襲撃で、俺を除く、全員がね。」
「それは・・ご愁傷様です・・。」
触れてはいけないことに触れてしまった。罪悪感が私の顔を俯かせる。
「なに、気にする事はない。十年以上も昔の話だよ。
最も、これから連れて行こうとしてる名医の隠れ家も、最後に訪れたのは十年以上昔だがね。」
「私が言うのもアレなんですけど、この竹林、はっきりいって夜は危険ですよ。ここは化け物がよく出るから・・。」
「言ったろ?俺の一族は退魔を生業にしていた、って。経験がないわけじゃないから、問題ないさ。」
口では軽くそんな事を言っているが、この人の気配遮断は大したものだ、と感心する。
目を閉じていると、まるでそこに実体がなく、声だけが聞こえてくるかのようだ。
「私も妖怪ですよ?退魔の対象に入るんじゃないですか?」
「あぁ、そう言われるとそれまでなんだが・・別に死にたいわけじゃないだろう?」
「イヤですよ、もちろん。」
「俺も別に、化け物に喧嘩を売る趣味はないからね。犬死にはごめんだよ。おっと、着いた着いた。」
言われて、目を開けて顔を上げる。
途端に、背筋が凍りついた。なぜならそこは。
永遠亭だったから。
「永琳ー、いるか?」
師匠が出てきた後の大混乱を勝手に想像して、私は再び意識を手放した。
どっちの作品もも好きだから今後には期待してます。
しかしまぁ、弱っていたとはいえうどんげの弾幕を10分間耐え切る大蜘蛛ってどんな蜘蛛なんだか。
型月作品のファンは設定を重視する傾向があるから設定には気をつけて下さい
……イカレた七夜のままだと展開が殺伐方面に限定されることは判りますが、
イカレてない七夜なんて正義の味方を目指していない衛宮士郎みたいなもんじゃねえの。
とか思います。つーか別人?
これで知っている相手を納得させるのは難しいんじゃなかろうか。
この時点での点数はこんなもので。完結を楽しみにしています。
実際に両方の作品が好きな自分でも多少の抵抗感はありますから。
なのでこの点数ですが、頑張ってください。
といっている鈴仙に共感。
ついつい、
調子がいいと自分のことそう思っちゃうんですよね。
おれって素敵じゃね? とかって。(笑)
今後の展開が気になります。
点数は、後編を読んでから評価させていただきます。
クロスオーバー自体は別にいいんです。面白ければ。
両方の作品の良さを引き出す、それが出来るなら最高ですね。
ただ少なくともこの一話目を見る限り、それを為すのは厳しい気がします。
表現、構成、展開……どれもある意味目新しさがなく、悪い意味でのテンプレ通りです。そしてそれを彩るための文章や台詞にも魅力がない。今のままではただの台本に過ぎません。
つまらないと思ったらスルーすればいいですし、今までもそうしていましたが、今回は苦言を呈させて頂きました。
自分の中の書きたいもの、それを伝えようとする行為には、同じ書き手として全面的に応援致します。ただその気持ちを伝える為には伝える為の手段が必要であり、垂れ流すだけでは人の心を動かせません。単に続きを書く前にもう一度考えてみては如何でしょうか?
身の程も弁えず、失礼なことを言ってしまい申し訳ありません。
今後のご活躍を期待しております。
あとは、あとがきで設定を語るよりは作品中で語って欲しいかな……と