・この作品は作品集43「着せ替え中国人形」の続編です。先に前作を読んで頂けますとより楽しめるかと思います
・若干細かすぎて伝わらない部分があるかと思いますが、仕様です。ご了承ください。
『着せ替え中国人形 - Lunatic -』
紅魔館の主、レミリア・スカーレットは悩んでいた。
悩みの種は何かというと、
「さぁ美鈴!次はこの服を着るのよ!!」
「もう勘弁してくださいー!!」
窓の外から聞こえてくる声の主である二人が原因だった。
瀟洒なメイド長・十六夜咲夜。頼れる門番長・紅美鈴。
あの二人がほぼ恋仲同然だというのは紅魔館の中では有名な話だ。
しかし、最近になって変化が訪れた。
早い話、咲夜のタガが外れたのだ。
「まさか咲夜があんな風になってしまうなんて――私はどうしたらいいのかしら……」
「随分と根が深そうな問題について考えてたのね、レミィ」
レミリアの私室に呼び出された紅魔館の知識人、パチュリー・ノーレッジ。
親友からの悩み相談の内容が想像の右斜め上だった為か引き攣ったような笑みを浮かべている。
相変わらず窓の外からは二人の声が聞こえてくる。
「つまり…咲夜の美鈴熱が高まった結果、仕事に影響が出てる……とか、そういう事なの?」
パチュリーの問いにレミリアは静かに首を横に振った。テーブルに両肘を突いたまま頭を抱える。
そして、静かに真実を語る。
「仕事については問題ないわ……それどころか咲夜の仕事っぷりは以前にも増してパーフェクトよ。
きっと……きっと咲夜は、美鈴とイチャつく時間を作る為に新たなステージへと上がってしまったのよ…」
「ねぇレミィ、咲夜はアホなの?」
もしここにオネェキャラが居たら「ちょっと咲夜さんどんだけぇ~!?(↑)」と叫ぶであろう事実だった。
仕事のモチベーションが上がるのは悪い事では無い。だが理由が理由なのだ。
そんな彼女の姿は知識人にはアホに見えたようだった。馬鹿では無い辺り、微妙なニュアンスの違いがあるのだろう。
確かに瀟洒でパーフェクトな彼女が“ピンクのフリル付きドレス”を持って美鈴を追いまわす姿は実にアレだったが。
「仕事に影響が出てないならそれでいいじゃない」
「そうなんだけど、下の者に示しがつかないわ。咲夜はメイド長なのよ?」
「注意はしたんでしょ?」
「したわ。そうしたら――」
『咲夜、仕事を頑張るのはいいけど…その、脚フェチとコスプレフェチはなんとかならないかしら?』
『お嬢様、お言葉ですが―――私は脚フェチでもコスプレフェチでもありませんわ』
『……?じゃあ何だと言うの?』
『美鈴フェチです』
『………』
「――という訳なの……」
「断言するわ。咲夜はアホね」
完全に諦めた知識人と頭を抱えて溜め息を溢す館主。
止めても無駄だ、という共通認識を抱いた二人は窓の外を駆け回っている二人を見ていた。
お互いに引き釣った笑みを浮かべながら。
※
次の日。
「……これ、永遠亭の鈴仙さんの服に似てますね」
色々と妥協した結果、美鈴は『上半身の露出が少ない服』という条件で咲夜の持ってくる服を着る事にした。
元々スリットの深い服を着ていた為か、脚よりも胸や背中を露出する方が抵抗があるようだった。
(余談だが妥協案を出された咲夜が“下半身裸エプロン”という服を指定した為に強烈なハイキックでKOされた)
そして、美鈴が着ているのは所謂セーラー服だ。白と青色。見た目にも爽やかである。
「まぁ、学生服だからね。大元は水兵の服らしいけど」
「ところでこのハチマキに意味はあるのでしょうか?」
「最重要なファクターよ」
「そ、そうなんですか?」
セーラー服+ハチマキ=ストリートファイト娘である。
「ねぇ美鈴。“しょーおーけーん!”って叫んでみて?そうね、走りながらジャンピングアッパーを放ちつつ」
「?? …しょーおーけーん!!」
「……Σ!!ダメよ咲夜、一日に二回もKOされるなんて失態は避けなさい!!」
自分に気合を入れる咲夜と、きょとーんとした顔の美鈴。
通りすがりの氷精が訝しげな視線を送っているが、二人は気付かなかった。
※
次の日。
『ふもっ…!ふもももっ!!ふもー!!』(訳:暑っ…!咲夜さん!!出してー!!)
「夏場に持ってきたのは失敗だったかしら」
かの有名な汎用着ぐるみ式パワードスーツである。
ボイチェンジャーが故障しているのは仕様だ。
『ふももー!ふもっふ!!』(訳:無理!!もう無理っ!!)
「仕方ないわね…ほら、出なさ……ちょっと体重掛けないで!!」
べしゃっ。
着ぐるみに潰されるメイド長は果たして瀟洒なのか否か。判断に迷うところだった。
※
さらに次の日。
「我らのファイター、怒りの獣神ライガー♪…うん、かなり強そうね」
「咲夜さん、咲夜さん。暑いです。息苦しいです。あと、マント外していいですか?肩が重いです」
何か夢中で歌っている咲夜。某素敵な巫女もビックリな紅白のコスチュームに身を包んだ美鈴。
否、今の彼女は獣神メーリンライガーである。紅美鈴は幻想郷の風になりました。
「何を言っているのかしら、ライガーは」
「ライガーじゃないです!」
「ところで部外者の私まで何でマスクを着けなきゃいけないんだ?」
抗議の声を上げるのは藤原妹紅。美鈴と手合わせに来たところ咲夜によって巻き込まれた形である。
彼女のマスクは武者の兜を模したものだ。ぶっちゃけエル・サムライである。
エル・サムライ。それは煙草を吸うと骨折が治る伝説の男。ある意味、不死身の蓬莱人である妹紅にピッタリなマスクではあったが。
「この調子で幻想郷の皆を着せ替えするのも面白いかしらね……」
困惑するメーリンライガーと妹紅を尻目に、ケンドー・カシンのマスクを被った咲夜が楽しそうに微笑んでいた。
※
懲りずに次の日。
「これは…凄くいい感じです!動きやすいし、デザインもカッコいいし!」
珍しく上機嫌の美鈴。昨日の山d……ライガーの衣装は動きにくくて仕方なかった。
一転、本日用意された衣装は運動のために作られたかのように動き易い。
デザイン的には男性用である事は間違いないが、タンクトップにハーフパンツなら女性が着ても問題ない。
赤い髪をポニーテールにして、コスチューム…というより、ユニフォームに身を包んだ美鈴の姿はお手本のようなスポーツ少女だった。
「紺色が似合うかどうかちょっと不安だったけど、今までで一番似合ってるわね」
「でも咲夜さんも似合ってますよ?赤い服着てる咲夜さんって、何か新鮮です!!」
咲夜も美鈴と同様の服を着用していた。色は赤で、文字が黒である。美鈴は紺色に薄い青色の文字だ。
「ところでこの“陵南”って何ですか?あと、何で5番なんです?」
「門番は守備が重要だからよ」
ディフェンスに定評のある門番になって欲しい、という咲夜の親心だった。
……当の咲夜のユニフォームの文字は“SHOHOKU”“11”だった。いいとこ取りだった。
※
そんな彼女達の様子を見ていた知識人は完全に呆れ顔だった。
昨日は部外者を巻き込んだり、咲夜までマスクをしたり……パチュリーとしても手の施しようがなかった。
「……まぁ、咲夜もアレが息抜きになっているならいいわよね」
何かと責任のあるメイド長という立場。ストレスや心労も半端では無いはずだ。
それを美鈴とのじゃれあいやコスプレごっこで紛らわせる事ができるなら、止める理由は特に無い。
見たところ、美鈴自身も最近では嫌がっている様子も無くむしろ楽しんでいるようだ。
「でも私は見るだけで十分ね……」
「ねぇパチェ」
呼びかけられて、パチュリー・ノーレッジは振り返る。
そして。
「これ咲夜が私にって持って来たんだけど……似合うかしら?」
彼女は神を見た。
「れ、れ、レミィ……そ、そそそれは?!」
「だから、咲夜が持ってきてくれたの」
体操服、ブルマー、赤いランドセル、黄色いゴム紐付きの帽子―――
まさに“四種の神器”である。
「レミィ……とても、とても似合うわ……!!うっ……!」
「きゃああ?!パチェ!!どうしたの!?白目を向いて鼻血とか洒落になって無いわよ!?」
神の衣は、病弱な知識人を全治2日の貧血に陥らせるには十分過ぎる破壊力だった。
※
数日後。
『パチュリー・ノーレッジ鼻血で臨死体験』事件をきっかけに、コスプレ騒動は一段落を迎えた。
とは言っても、美鈴と咲夜は時折変わった服を着る事をやめなかったし、それを目当てに来客も少し増えた。
唯一、レミリアが着用しパチュリーを瀕死に追いやった“四種の神器”は紅魔館の奥深くに封印される事となった―――
―――が、歴史は繰り返す。いい意味でも、悪い意味でも、である。
「小悪魔ー、小悪魔ー」
「はい、なんですか妹様」
「あのね、さっき倉庫の中探検してたらこんなのがあったのー」
To be continue??
No!!You can't continue!!
・若干細かすぎて伝わらない部分があるかと思いますが、仕様です。ご了承ください。
『着せ替え中国人形 - Lunatic -』
紅魔館の主、レミリア・スカーレットは悩んでいた。
悩みの種は何かというと、
「さぁ美鈴!次はこの服を着るのよ!!」
「もう勘弁してくださいー!!」
窓の外から聞こえてくる声の主である二人が原因だった。
瀟洒なメイド長・十六夜咲夜。頼れる門番長・紅美鈴。
あの二人がほぼ恋仲同然だというのは紅魔館の中では有名な話だ。
しかし、最近になって変化が訪れた。
早い話、咲夜のタガが外れたのだ。
「まさか咲夜があんな風になってしまうなんて――私はどうしたらいいのかしら……」
「随分と根が深そうな問題について考えてたのね、レミィ」
レミリアの私室に呼び出された紅魔館の知識人、パチュリー・ノーレッジ。
親友からの悩み相談の内容が想像の右斜め上だった為か引き攣ったような笑みを浮かべている。
相変わらず窓の外からは二人の声が聞こえてくる。
「つまり…咲夜の美鈴熱が高まった結果、仕事に影響が出てる……とか、そういう事なの?」
パチュリーの問いにレミリアは静かに首を横に振った。テーブルに両肘を突いたまま頭を抱える。
そして、静かに真実を語る。
「仕事については問題ないわ……それどころか咲夜の仕事っぷりは以前にも増してパーフェクトよ。
きっと……きっと咲夜は、美鈴とイチャつく時間を作る為に新たなステージへと上がってしまったのよ…」
「ねぇレミィ、咲夜はアホなの?」
もしここにオネェキャラが居たら「ちょっと咲夜さんどんだけぇ~!?(↑)」と叫ぶであろう事実だった。
仕事のモチベーションが上がるのは悪い事では無い。だが理由が理由なのだ。
そんな彼女の姿は知識人にはアホに見えたようだった。馬鹿では無い辺り、微妙なニュアンスの違いがあるのだろう。
確かに瀟洒でパーフェクトな彼女が“ピンクのフリル付きドレス”を持って美鈴を追いまわす姿は実にアレだったが。
「仕事に影響が出てないならそれでいいじゃない」
「そうなんだけど、下の者に示しがつかないわ。咲夜はメイド長なのよ?」
「注意はしたんでしょ?」
「したわ。そうしたら――」
『咲夜、仕事を頑張るのはいいけど…その、脚フェチとコスプレフェチはなんとかならないかしら?』
『お嬢様、お言葉ですが―――私は脚フェチでもコスプレフェチでもありませんわ』
『……?じゃあ何だと言うの?』
『美鈴フェチです』
『………』
「――という訳なの……」
「断言するわ。咲夜はアホね」
完全に諦めた知識人と頭を抱えて溜め息を溢す館主。
止めても無駄だ、という共通認識を抱いた二人は窓の外を駆け回っている二人を見ていた。
お互いに引き釣った笑みを浮かべながら。
※
次の日。
「……これ、永遠亭の鈴仙さんの服に似てますね」
色々と妥協した結果、美鈴は『上半身の露出が少ない服』という条件で咲夜の持ってくる服を着る事にした。
元々スリットの深い服を着ていた為か、脚よりも胸や背中を露出する方が抵抗があるようだった。
(余談だが妥協案を出された咲夜が“下半身裸エプロン”という服を指定した為に強烈なハイキックでKOされた)
そして、美鈴が着ているのは所謂セーラー服だ。白と青色。見た目にも爽やかである。
「まぁ、学生服だからね。大元は水兵の服らしいけど」
「ところでこのハチマキに意味はあるのでしょうか?」
「最重要なファクターよ」
「そ、そうなんですか?」
セーラー服+ハチマキ=ストリートファイト娘である。
「ねぇ美鈴。“しょーおーけーん!”って叫んでみて?そうね、走りながらジャンピングアッパーを放ちつつ」
「?? …しょーおーけーん!!」
「……Σ!!ダメよ咲夜、一日に二回もKOされるなんて失態は避けなさい!!」
自分に気合を入れる咲夜と、きょとーんとした顔の美鈴。
通りすがりの氷精が訝しげな視線を送っているが、二人は気付かなかった。
※
次の日。
『ふもっ…!ふもももっ!!ふもー!!』(訳:暑っ…!咲夜さん!!出してー!!)
「夏場に持ってきたのは失敗だったかしら」
かの有名な汎用着ぐるみ式パワードスーツである。
ボイチェンジャーが故障しているのは仕様だ。
『ふももー!ふもっふ!!』(訳:無理!!もう無理っ!!)
「仕方ないわね…ほら、出なさ……ちょっと体重掛けないで!!」
べしゃっ。
着ぐるみに潰されるメイド長は果たして瀟洒なのか否か。判断に迷うところだった。
※
さらに次の日。
「我らのファイター、怒りの獣神ライガー♪…うん、かなり強そうね」
「咲夜さん、咲夜さん。暑いです。息苦しいです。あと、マント外していいですか?肩が重いです」
何か夢中で歌っている咲夜。某素敵な巫女もビックリな紅白のコスチュームに身を包んだ美鈴。
否、今の彼女は獣神メーリンライガーである。紅美鈴は幻想郷の風になりました。
「何を言っているのかしら、ライガーは」
「ライガーじゃないです!」
「ところで部外者の私まで何でマスクを着けなきゃいけないんだ?」
抗議の声を上げるのは藤原妹紅。美鈴と手合わせに来たところ咲夜によって巻き込まれた形である。
彼女のマスクは武者の兜を模したものだ。ぶっちゃけエル・サムライである。
エル・サムライ。それは煙草を吸うと骨折が治る伝説の男。ある意味、不死身の蓬莱人である妹紅にピッタリなマスクではあったが。
「この調子で幻想郷の皆を着せ替えするのも面白いかしらね……」
困惑するメーリンライガーと妹紅を尻目に、ケンドー・カシンのマスクを被った咲夜が楽しそうに微笑んでいた。
※
懲りずに次の日。
「これは…凄くいい感じです!動きやすいし、デザインもカッコいいし!」
珍しく上機嫌の美鈴。昨日の山d……ライガーの衣装は動きにくくて仕方なかった。
一転、本日用意された衣装は運動のために作られたかのように動き易い。
デザイン的には男性用である事は間違いないが、タンクトップにハーフパンツなら女性が着ても問題ない。
赤い髪をポニーテールにして、コスチューム…というより、ユニフォームに身を包んだ美鈴の姿はお手本のようなスポーツ少女だった。
「紺色が似合うかどうかちょっと不安だったけど、今までで一番似合ってるわね」
「でも咲夜さんも似合ってますよ?赤い服着てる咲夜さんって、何か新鮮です!!」
咲夜も美鈴と同様の服を着用していた。色は赤で、文字が黒である。美鈴は紺色に薄い青色の文字だ。
「ところでこの“陵南”って何ですか?あと、何で5番なんです?」
「門番は守備が重要だからよ」
ディフェンスに定評のある門番になって欲しい、という咲夜の親心だった。
……当の咲夜のユニフォームの文字は“SHOHOKU”“11”だった。いいとこ取りだった。
※
そんな彼女達の様子を見ていた知識人は完全に呆れ顔だった。
昨日は部外者を巻き込んだり、咲夜までマスクをしたり……パチュリーとしても手の施しようがなかった。
「……まぁ、咲夜もアレが息抜きになっているならいいわよね」
何かと責任のあるメイド長という立場。ストレスや心労も半端では無いはずだ。
それを美鈴とのじゃれあいやコスプレごっこで紛らわせる事ができるなら、止める理由は特に無い。
見たところ、美鈴自身も最近では嫌がっている様子も無くむしろ楽しんでいるようだ。
「でも私は見るだけで十分ね……」
「ねぇパチェ」
呼びかけられて、パチュリー・ノーレッジは振り返る。
そして。
「これ咲夜が私にって持って来たんだけど……似合うかしら?」
彼女は神を見た。
「れ、れ、レミィ……そ、そそそれは?!」
「だから、咲夜が持ってきてくれたの」
体操服、ブルマー、赤いランドセル、黄色いゴム紐付きの帽子―――
まさに“四種の神器”である。
「レミィ……とても、とても似合うわ……!!うっ……!」
「きゃああ?!パチェ!!どうしたの!?白目を向いて鼻血とか洒落になって無いわよ!?」
神の衣は、病弱な知識人を全治2日の貧血に陥らせるには十分過ぎる破壊力だった。
※
数日後。
『パチュリー・ノーレッジ鼻血で臨死体験』事件をきっかけに、コスプレ騒動は一段落を迎えた。
とは言っても、美鈴と咲夜は時折変わった服を着る事をやめなかったし、それを目当てに来客も少し増えた。
唯一、レミリアが着用しパチュリーを瀕死に追いやった“四種の神器”は紅魔館の奥深くに封印される事となった―――
―――が、歴史は繰り返す。いい意味でも、悪い意味でも、である。
「小悪魔ー、小悪魔ー」
「はい、なんですか妹様」
「あのね、さっき倉庫の中探検してたらこんなのがあったのー」
To be continue??
No!!You can't continue!!
フランちゃんの四種の神器(*´д`;)…
あなたは何て瀟洒なメイド長でしょう~~
尊敬の意を申し上げます。
ところでブルマはまだ幻想郷入りしてないですか?
たしかに新たなステージに上がってらっしゃるw
レミリアとフランの神器姿みたいわぁ