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小さな文字の羅列が読みにくいというのであればそちらをご覧ください。
「号外号外~~」
夏の日差しが容赦なく照りつけるある暑い日、
その情報を持ってきた天狗は唐突にやってきた。
唐突…といってもまぁ天狗は呼ばれていなくてもやってくるような存在だから気にする者はあまりいない。
相変わらず音速を思わせる速度で空をかけ抜けて境内に降り立った。
降り立った拍子に一陣の涼しい風…ではなく熱風が巻き送る。
「お~久々だな。自称幻想郷最速天狗の迷惑ブン屋な文」
「自称とはひどいですね、魔理沙さん。私は自他共に認められる幻想郷最速ですよ
それに迷惑なんてかけたことは一度もありません」
そんな文を出迎えたのは神社の顔ではなく、神社へと遊びにきていた普通の魔法使いの魔理沙だ。
だが今はトレードマークであるとんがり帽子はかぶっておらず、変わりにシュノーケル&水中眼鏡が装備されている。
予想はされるが身体装備はもちろんスクール水着で井戸そばの水一杯張ったビニールプールで涼んでいる最中である。
「それで何か用か?」
文が来てもプールから出る気はさらさらないらしく、プールの中から身を乗り出して問いかける。
その様に文は、少し仲間に入れてもらいたいなと思わないことはないが、後で川あたりで行水をすればいい。
その時河童のにとり辺りとばったり会うかもしれないが、あっちはきゅうり三本と一袋の大豆で分かり合える心の友だ。
リスク的に今ここで危険を冒してまでプールに入ることでもないのであっさりとあきらめた。
「あ、はい。貴女達にぴったりのお知らせがあるのですが…霊夢さんはいないのですか?」
「あ~霊夢の奴なら…後1分か2分もすればすぐに会えるぜ」
「なんですか、それは。お茶を濁すようなことをせず正直にお話しください!
記者には全てを知る権利があるのです!!」
魔理沙の意味深な言葉に文は、記者魂というか犯人へ自白を強要する刑事を思わせるかのような物言いでずずいと詰め寄った。
それを見て魔理沙は「せっかちな奴だぜ」と呟きながらプールの中でガシッ!!っと何かを鷲掴みにすると
「おらっ、とっとと観念しやがれ!!」
ざばーっと水中から黒い何かを引きずりあげた。
「おわっ、これは特ダネですね。『神社の恐怖。境内に怪人ワカメちゃんが現れる』
早速次の記事に…」
「ちょっと待て!
どうせ記事にするなら出鱈目でなく真実を書け!!」
「出鱈目とはなんですか。私はいつもしんじ…つ……を……」
っと唐突にプールから現れた黒いナニカを見ると同時にシャッターを切っていたが…落ち着きを取り戻すごとに段々とシャッターを切る手が遅くなる。
「は~な~し~て~~!!」
その黒いナニカ…の正体である濡れた髪の毛をしたらせながら暴れる霊夢を後ろから魔理沙が羽交い締めにしている。
どうやら彼女も魔理沙と同じくプールで涼んでいたのだが文が来たと同時に水中で潜って身を隠していたようだ。
その様は捉え方次第では水着姿を彼氏に見られるのが恥ずかしいとか心の準備ができてないからと見えるが、霊夢の取った行動はそういった『萌えしちゅえーしょん』トップ5に君臨するようなちゃちな理由ではない。
文はその時のことをこう文花帖に記している。
――――――
この記事を書く前に言っておきますッ!
私は今、彼女の趣味をほんのちょっぴりだが体験した。
い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのですが……
あ…ありのまま 今 起こっていた事を話します!
『私は彼女の姿を見たと思ったら、
その瞬間すべてが真っ白になりました』
な… 何を言ってるのか わからないと思いますが
私も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうでした…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃない 断じて違います
もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました…
――――――
「れれれれれれれれれれ………れれれのれ~~ おでかけですか~?
じゃなくって霊夢さん。
その恰好はいったい…」
今までトンでも事件100連発を見てきた強者であるブン屋といえどもこの霊夢の姿は想像できず少しの間、ザ・ワールドをくらっかかのように思考が止まっていたのだが、ようやく我に返った文は凄い速度でシャッターを切り始めた。
というのも、霊夢の姿は上半身さらしで下半身ふんどしという
“THE 外国人が勘違いしている 倭国女子の水着姿”
なのだ。
「うはっ、霊夢さんにそんな趣味があったんですか!!
これはもう幻想郷1のスクープですよ!
特ダネものですよ!!
明日は逆転満塁ホームランですよ!!!」
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
私はあの変態じゃあるまいし、こんな趣味もってなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」
「甘い、どうせならその晴れ姿を幻想郷全てに見てもらえ!
きっとファンも喜ぶに違いないぜ!!」
「ファンって一体どういうファンよぉぉぉぉ!!
とにかくはぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁせぇぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!」
なおも激しく暴れる霊夢だがこんな面白いことを見逃すような魔理沙ではない。
いくら総合的な能力が優れていても『組み合い』という状態では力という能力が優先で処理されてしまう上に『東方サッカー猛襲伝』データでは魔理沙の方が霊夢より力が4高い。
それでも『組み合い』からの脱出は『レベル』+『力ボーナス』+『2D6』の判定なので運が最高値ともいうべき霊夢が圧倒的有利なのだが…
この世の中には面白いことを望む者が多い。
よって俗に言う『サイコロはマスタリング裏でこっそり振って出た目を自由に操作』というG○特権の反則行為で霊夢の脱出判定をことごとく失敗させている裏事情があるのだ。
なお、この判定はスキマが関わっているかどうかは謎だがまぁそういうわけで、
霊夢は逃げることもできずもうパシャパシャと成すすべなく写真を撮られまくっている。目なんか涙が溜まってもう半泣き状態だ…。
ちなみに何故こんなことになったかというと…
魔理沙が毎度おなじみの香霖堂でビニールプールや海セット一式を見つけたことから始まった。
ビニールプールと海セットを見つけた魔理沙は水着と一緒に『借りてくぜ』の一言で強奪。
早速この暑い日を涼むために博麗神社へと来たのだが…
ここである問題が起きた。
強奪した2着のスクール水着のうち、1つの水着が小さすぎたのだ。つまり一つは10代後半の少女なら楽に着れるものだがもう1つはレミリアとか萃香といった幼女組でさえも着れるかどうか怪しいというぐらいのミニサイズである。
なので誰がどちらの水着を着るかで相談というか喧嘩したのだがこの暑さだ。
暑さによるイライラのせいかうっかり売り言葉と買い言葉で喧嘩をエスカレートさせてしまったのだ。
なので、白黒つけるために夏場恒例の萃夢想式スペルカード戦での勝負となり、負けた方が「さらし & ふんどし水着を着用」という本人にとっては裸よりも辛いが見る人にとっては裸よりも嬉しいという屈辱的罰ゲームが付加されたのだ。
そして、近距離格闘弾幕戦でどんぱちを行った結果、隅に追い詰められた魔理沙のカウンターで発動させた零距離マスタースパークが真正面から迫ってきた霊夢を包み込んで勝利を手にした。
負け犬となった霊夢はもちろんこんな「さらし & ふんどし水着」なんか着れるかと断固拒否したが、こんな真夏日で暴れたからというかマスタースパークのせいでウェルダン風にぷすぷすと焦げている…
格闘ゲーム物の法則で服自体は原型をとどめているみたいだが身体中の水分が蒸発して干物寸前だ。
もう、今すぐ水へルパンダイブを決めないと干からびた巫女となりかねないが、魔理沙は飛び込みをブロック。
でもって、自分は悠々とプールを占拠しながら…
「スペルカードルールを定めた本人が約束を守らなければ他に示しがつかないぜ。
それに私も鬼じゃないからな。約束通りに着替えたらちゃんとプールに入れてやるぜ」
と魔理沙に弱点と急所を同時にえぐられた霊夢はしぶしぶというか、幻想郷3大迷惑に見つかりませんように…と心の中で願いながらマッハの速度で「さらし & ふんどし水着」へ着替えてプールに飛び込んで息を吹き返したが
現実は無情であった。
その幻想郷3大迷惑の一人にモロ姿を見られたのだ。
なお、その3大迷惑とは一人は天狗であり、もう一人はスキマであるとされているがもう一人は誰かわからないというか…
一説には3大迷惑どころではなく幻想郷30大迷惑ではないかといわれてるのだがまぁそれもあながちウソではないだろう。
それだけ幻想郷でははた迷惑な連中が多いのだ。
「あぅあぅ……もうお嫁にいけない……」
やがて諦めたのか、ぺたんと力無く座り込んでぐすぐすと泣きながら沈んでいる。
だが、そんな霊夢もまた萌えるということでやはり文は写真を撮り続ける。
「いや~~もうこんなネタを手にすることができたなんて私は幸せものですよ。
やっぱりあれでしょうか。私の日頃の行いがよいからオヤシロ様がプレゼントを用意してくれたのでしょうか」
「きっとそうに違いないぜ。
あ~その写真だがよければ何枚か焼き増ししてくれ。
きっと高く売れるに違いないぜ」
「もちろんかまいませんよ。
このネタは貴女の働きがあってこそですから。
この射命丸文!スプークの協力者には礼を尽くしまくることを忘れません!!!」
「おーさすがだぜ」
っと文も写真を撮る手を止めて魔理沙の方に振り向き、そのまま盛り上がる二人だが…
ふと空気が変わった。
この炎天下の中なのに北極か南極あたりに放り込まれたかのような氷点下の寒さを感じたのだ。
そう、まるでチルノによって一瞬に氷の彫像へと変えられたかのような寒さだ…
そんな空気が二人の後ろから流れている…
「うふ、うふ、うふふふふふふふふふふふ………」
なんだかどこかで聞いたことあるような笑い声だが声のトーンは全く違う…
地獄の底から全てを呪うかのような言霊を持つその笑い声に二人は後ろを振り返るな。
見たらやばいというかその場から逃げろ!と全力で警戒の鐘を鳴らしまくっているのだがその足は動かない。
まだ後ろを振り返っていないのに蛇に睨まれた蛙のごとくその逃げ足を封じられている。
姿を見てないのにこれでは直視なんかしたら蛇睨みを超えるメデューサの石化睨みでも食らって“貴女の人生ゲームオーバー”とか“ジンセイ\(^o^)/オワタ”にされそうだ。
できることならこのまま振り返ることなく終わってくれと願うが
「マリサ…アヤ…こっちムキナサイ」
現実は非情である。
完全恐怖に支配された状態で命令されたら従うしか道がない。
二人はなけなしの勇気を振り絞って後ろを振り返ると……
鬼がいた。
もちろん鬼といっても『ぺったん ぺったん つるぺったん♪』で歌われる鬼ではない。
いや、ある意味ではつるぺったんであってるのかもしれないがそんなことはどうでもいいだろう。
下手な突っ込みを入れたらお札や陰陽弾が画面を突き抜けてこちらに飛んでくる恐れもあるのだ。
なので、これを読んでいる人の中にはすでに何人か被害者が出てるかもしれないが……それこそ関係ないので流しておこう。
とにかく今の彼女は一言で言い表せばこうであろう。
“殺意の波動に目覚めた楽園の素敵な巫女”
と、その殺意の波動に目覚めた楽園の素敵な巫女は手にプールで浮かべて冷やしていた西瓜を持ち、いつのまにか召喚されていた玄爺の上であぐらを組んでどっかりと座り込みながら、見る人全てを恐怖のどん底へ突き落とす深紅の瞳で二人を容赦なく射抜いていた。
「フタリトモ………ナニカイイノコスコトアルカシラ」
『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』
地獄の底から手招きでもするかのようなその声は、もう地獄の閻魔なんか目ではない。まるっきり子供扱いだ…
いや、本当に閻魔は子供であるのだが、とにかく二人は楽園の巫女(仮)の決して踏み入れてはならないレッドゾーンへと足を踏み入れてしまったのだ。
しかもよく目を凝らせばそこにたたずむのは…そう、楽園の巫女の裏側に隠れた狂気の分身体のようなものが見えるし、その分身体を見つめてるとなんとなく
「私は博麗霊夢とは違う。
真の絶望というものを思い知らせてあげましょう!!!」
なんていう空耳とともに漆黒の黒衣を携えた某最狂昂翼天使様の姿がだぶってるような気もしてきたのだ。
と、二人の脳が現実逃避をし続けている間に楽園の巫女(仮)はすでに立ち上がって灼熱のオーラをまとった西瓜を宙に浮かせている。
そう…
この体勢から繰り出されるのは………あれである。
「博麗神拳 最終奥義! 夢 想 天 生!!」
なお、一応突っ込んでおくが『拳』ではない。
でもってこのあと起こる残酷描写を丁寧に書くのはあれなのでお約束的なこの言葉だけで澄ましておこう。
魔理沙くんふっとばされたァ~~!!
文くんふっとばされたァ~~!!
・・・少女蘇生中
「う~ん。何故か頭が痛い上に何かとんでもないスクープを目撃したような気がしたのですが…
思い出せません」
「私もだぜ。何かこうすごい面白いネタを見たような気がしたんだがな…」
どうやらあの一撃は二人の数時間前までの記憶をはるか彼方に吹っ飛ばしたらしい。
文は神社の縁側、魔理沙はプールの中で、思ったよりぴんぴんとした状態で西瓜の欠片を齧っている。
「ちょっとした記憶喪失でしょ。全く二人ともスペルカード戦でダブルノックアウトするなんて浮かれすぎでしょうに」
奥からお茶を運んできた霊夢は呆れ気味につぶやく。
ちなみに「さらし & ふんどし の水着」は解除していつもの腋丸出し巫女装束に着替えている。
「ですよね。いくら新作に出られるからって私もちょっと浮かれすぎていました」
どうやら気絶の原因は「萃夢想ルール」をベースとしてさらに新しく発展させた「緋想天ルール」の模擬戦闘を行った結果、二人同時KOの結末を迎えたということにされたらしい。
ついでに魔理沙と文はその新しい「緋想天ルール」でのモニター役として抜擢されており、近年正式発表まじかで確かに興奮してた節がある。
おまけに周辺では格闘を交えた近距離弾幕戦闘を行った形跡もある。
もっともその形跡は霊夢vs魔理沙による萃夢想式弾幕戦の痕跡と夢想天生の一撃によるものであるのだが…
知らなければ、自分たちが暴れた痕跡とも取れるため、二人は本当にダブルノックKOをやらかした結果だと思いこんでいる。
さらにいえばカメラをネガごと吹っ飛ばされた上に自分のメモには奇妙奇天烈摩訶不思議な怪奇文面があるだけであり、それが何を示しているのかわからない。
一応文のことだからそれを記事にするだろうが、直接見た二人が「さらし & ふんどし の水着」な霊夢を思い出さない限り『幻想郷108不思議の一つ』として処理されるであろう。
後、関係ないが蹴られた西瓜は「サッカーボールはどんな衝撃を受けても破壊されることがない」というわけわからない不思議法則によって、似たような形状だった西瓜もちょっとひび割れる程度で済んだらしい。
「それで今日は何の用できたわけ?
別に魔理沙と弾幕戦に来たわけじゃないでしょ
あっ、ちなみに素敵なお賽銭箱はそこよ」
と、霊夢は持ってきた湯飲みにお茶…はいくらなんでも夏だと出しそうにないから冷たい麦茶を注ぎながらもさりげなく賽銭を要求しながら文に問いかける。
「あっ、うっかり忘れるとこでした。
実は今朝方うちの妖○ポストにこんな手紙が入っていたんですよ」
文は麦茶を受取りつつも賽銭については軽く受け流しながら懐から手紙を取り出した。
「何よその幻想郷にありそうでないようなうさんくさいポストは」
「何を言ってるんですか!
幻想郷には普通に妖○カメラなんてものもあるじゃないですか」
よほど喉が渇いていたのか、ごくごくと一息で麦茶を飲みほしつつさらにお代わりを要求。
その様にやっぱり熱いお茶を出せばよかったと思いつつ、やはり麦茶を注ぎ足す。
「あ~そういえばあったわね」
つい数週間前に稗田阿求がそんなものを手に入れて売りにだそうとしていたのを思い出した。
その後、文はまたまた空の湯飲みを差し出したが、さすがに3杯目のお代わりは聞き入れなかったようだ。
霊夢は自分用の麦茶を注いで一息を付きながら手紙の中を確かめる。
そこにはこう書かれていた。
『東方サッカーオールスター
「偶然カップファイナル~」開催のお知らせ』
「…何これ」
「見ての通り、サッカー大会のお知らせですよ」
それはわかるが『~』で略されている無駄に長いサブタイトルの方が何これである。
しかも半分以上が開催者の愚痴というか駄文みたいなので埋まってるし…
何より真赤な紙に黒インクで書かれている分『文々。新聞』より3倍はうさんくさい。
「ふふ、ようやくここにも知らせが届いたみたいね」
相変わらずいつの間に現れたのやら。
霊夢が注いでいた麦茶を飲み干したスキマ妖怪こと紫が答える。
「ええ、ようやく“この幻想郷”も出場資格を得たってことなんですよ」
「一体何の話よ」
全く話がわからない霊夢だが
「それについては、皆を呼んでから話すわ。
大丈夫、隙間を使って一瞬で呼び寄せるし」
そういって紫が指パッチンすると同時に
「うわっ」
「きゃぁ」
「ぐえっ」
「むぎゅ」
「うあー」
「まちぎゃん」
「へるぷ みぎゃーー!!」
どさどさどさどさっと魔理沙の頭上に現われた隙間から悲鳴とともに滝のごとく人が落ちてきた。
その人種は多分おそらく普通の人間もいれば妖怪もいるし、蓬莱人や妖精等も混ざった実に多種多様で統率のないメンバーが小さなプール一杯に詰め込まれてイモ洗い状態だ。
この小さなプールで蠢く節操のないメンバーを見て霊夢はしばらく混乱してたがふと気づいた
「あっ、この面子って」
「えぇ、そうよ。先月のサッカーで走破モードを制したメンバーよ」
サッカー。
それは、幻想郷が外の影響を受けて一時的に流行ったスポーツだ。
もっともサッカー自体は外の世界でも全く廃れてはいないもので幻想になるなんて程遠いものなのだが…
とある事情で幻となった特殊なサッカーが、この幻想郷に流れてきたらしい。
いや、あれをサッカーというべきものかどうかすら怪しいが、まぁ稗田家の東方求聞史紀でも「サッカーが流行った」という記述がある以上、サッカーが流行ったことだけは事実である。
そして、今召喚されたチームは、幻想郷すべてを巻き込んだサッカー大会「走破モード」
を制したチームメンバーなのだ。
「一体なんなの。せっかくこれからお嬢様と一緒に行水をしてスキンシップを図ろうとしてたのに」
「私もせっかくこれから水虫の薬の調合を始めようと思っていたのに」
「私もせっかくこれからレイセンちゃんから逃げようと思ってたのにウサ」
「私もせっかくこれから夜雀の丸焼きを楽しもうとしていたのに」
「そこのニンゲン達とウサギぃぃぃぃぃ!!
だずけでぇぇぇぇぇぇ!!!」
「・・・・・・(返事がない。ただの⑨と屍のようだ)」
だが、いきなり隙間に放り込まれて呼び出されたのだ。
台詞だけで誰が誰だかわかるほどの個性的なセリフで次々と怒りを叩きつける。
もっとも怒りでないようなものもあれば危機的状況な台詞もあるし、一言も発さないというか発せられないようなのもいるが…
「と、とにかく説明を強く求めるぜ。スキマ妖怪…」
イモ洗いイモの一番下で潰されたせいで威厳も何もないが、
一応その時のキャプテンとしてチームを率いていた魔理沙が声をかける。
ついでにいきなり人の頭上に皆を召喚されたせいで、水の中へと沈められたものだから不機嫌だ。
返答次第によっては「私の雷獣シュートで蹴り殺してやる!!」とでも言い出しかねない空気が漂っていたが、紫はいたって涼しい顔だ。
「あら、あんな大会なんて本のお遊びよ
大体あの褌も最後に言ってたじゃない。第2第3の褌が…」
「つ、付け加えると星の数ほど存在する平行世界での幻想郷が集まって真の頂点を目指すサッカー大会だ」
最後まで言わせたら本当に雷獣シュートで自分の主である紫が蹴り殺されかねない。
だが、心の中でちょっぴり一回蹴られた方がいいのではと思いつつも、やはりそれはまずいので式神である藍が紫を遮って付け加えた。
召喚されたわけではないが一応彼女も走破メンバーの一人だ。
「あ~そういえば終わり際にブン屋と褌がそんなこと言ってたな」
もっともその後は褌達を皆でぼこって逆さ蓑虫として吊り下げた後「ストレス解消、蓑虫サンドバック!1回100円!!」とか言って商売したからそんなこと忘れていたのだが…
「とにかく、ここの幻想郷もようやく走破を制して出場資格を得たわけなんですよ。
なので受けてもらえますね。もうあの頃のサッカーのネタがなくなって記事が書けなくなってるんですよ。
人助けと思って受けてください!」
おぃ、お前はあの時の終わり際「数ヶ月はネタに困らない」とか言ってなかったか?
まだ数週間しか経ってないのにもう使い切ったのかよ…
と誰かが突っ込みを入れようとしたが…
「賞金は?」
「強い敵がいるのか?」
突っ込みを入れる前に食らいついたのがいた。
当然霊夢と魔理沙である。
「一応出るそうよ。敵も貴女達以上にサッカーを極めた分身ともいえる連中が集ってくるから苦戦必須。
サッカーやり始めて間がない上に飽きてさぼっているこのチームじゃ全敗で泣きべそかいて撤退するのがいいとこかしらね」
「それは聞き捨てならないわね…」
「えぇ、天才の力を持ってすれば軽く優勝ぐらいには持ってけるわよ」
その言葉にぴくりときたのか。
滴る銀髪と薄着であるために薄らと透ける濡れた胸元でお色気を強化し、
さらにはスカートを絞って見事な脚線美をさらけだすという戦闘スキル『挑発Lv8』を発動させている咲夜と永琳がにらむ。
なお、二人の脚線美はともかく胸元…特にメイド長の胸元は見ない方がいいだろう。
理由については、もちろん命が惜しいからである。
まかり間違ってもパ…なんていえばその瞬間、周囲に無数のナイフが現れて串刺しの運命が待っているだろう。
「そんな様で? 特に後ろ」
とかいう誰かの解説はさておき、紫は二人の後ろを見てクスリと笑う。
というのも後ろは、泣き叫ぶミスティアを捕獲してる幽々子と、プールで一息付いているてゐ。
そして暑さのため…に見えるが実際は大ガマに飲み込まれて消化寸前だったところを隙間で引っ張り出されて⑨死に一生を得たという半分溶けたチルノと夏眠中いきなり炎天下に放り込まれたせいで緊急的に活動停止状態となった瀕死のレティが浮かんでいる。
そんなカオスとも言うべき状況となっているのだ。
「「それはそれよ」」
だが、そんなカオスを二人は見なかったことにして受け流した。
ついでに泣き叫ぶミスティアがうっとぉしいから黙らせようとナイフと矢を乱打させたら幽々子から逃げるきっかけとなったらしく解放と同時に脱兎のごとく逃げた。
もちろん幽々子は追いかけようと思ったが逃げ際に落としたらしい大量の鰻を見て「夏バテ予防に鰻もいいわね」ということで見逃すことにしたようだ。
「とりあえず出場するならまず手紙同封のコスト表に沿ってメンバーを編成する必要があるの。
ちなみにコストは各幻想郷全てで統一されてるから私にも関与できないルールね」
プールの中で泳いでいる鰻の踊り食いを楽しむ幽々子を無視しながら、
紫は隙間を通して縁側に置きっぱなしの手紙を掴み、中から同封されていたらしいルール表とコスト一覧表が取り出される。
特にこのコスト表は、今までの走破モードや過去の大会での活躍を元にして作られたもの。
いわば選手の核を示すものだ。
強者には高いコストがかけられているが、弱者には低いコストがかけられているというある意味差別物であり、
こんなゲーム感覚でなければいろいろな団体から文句言われること間違いないだろう。
「これはまた、厄介だぜ」
ルールを覗いた魔理沙は見てゲッてうめいた。それもそのはずだ。
登録時には控えを入れてもいいが全試合を通してレギュラーの交代禁止。
装備品や陣形は全試合共通という今まで戦ってきた試合とは明様に違う形式だ。
今までは強敵とはいえ交代要員やら陣形といった作戦でそれなりの対策ができたのだが、
今回の戦いにはそれができない。
ついでにいえば敵もアイテムで強化してくるので強さがわからない。
わかるものは敵がそのコストに沿って編成されるメンバーであることだけ。
「力押しでは通じない同条件での試合。
勝負を決めるのは戦略、そしてチームワーク…
それを制する物こそが真の“スーパーシューティングプレイヤー”なのよ
果たしてそんな強者に貴方達の力が通用するかしら、魔理沙」
紫は扇で口元を隠しながらくすりと笑う…が
「何を言っているんだ。
サッカーは強いチームが勝つんじゃない
勝ったチームが強いんだ!」
「そのとおりよね、魔理沙!
面白いじゃないのよ!!
絶対に勝って賞金を持って帰るわよ!!!」
せっかくの魔理沙の決め台詞を霊夢が台無しにしてるような気がするのだが…
それこそ貧乏巫女たる由縁を知らしめる霊夢である。
しかし藍はふと思った。
「あの大会に賞金なんてあったか?」
だが、金の亡者と化した霊夢に今更そんなこと伝える勇気はない。
伝えたら最後、主である紫を守るために怒り狂った霊夢と対峙するはめになる。
となれば霊夢から
『ずっと私のターン!』とか『君が泣くまで撃つのをやめない!』とか『10回死んじゃえ!!』でボコボコにされそうである。
で、逃げたら逃げたで紫から傘で『ずっと私のターン!』か『君が泣くまで殴るのをやめない!』か『10回死んじゃえ!!』でボコボコに叩かれそうなので、
どうあがいてもたどりつく先は同じだ。
もちろん何も言わず黙っててもいずれバレることになるから、その後は逃げ道なしの理不尽な袋小路に追い詰められる運命だ。
こうなれば自腹を切って賞金を出してごまかすしかない…
やっぱりあの時魔理沙の雷獣シュートで紫様を蹴り殺してもらった方が良かったかもしれない。
いや、他力本願に頼らずいっそ自分で『式神天降神』という名の真空かかと落としを脳天に振り下ろすべきなんて物騒なことを考えはじめたが、
その後に傘で『煩悩解放108回猛連打』を繰り出す紫の姿を想像してやめた。
まともに相談できる面子が集まってコストと睨めっこしながらメンバーを選出するのを眺めながら、
藍は心の中で「橙。お前に1杯のかけそばすら満足に食べさせてやれないようなふがいない私を許してくれ」と謝りながらこっそりと涙を流していた。
それほど紫の傘殴打は痛くて怖いらしい…
という藍の心情はおいといて、話し合いの中で決まったことは
・魔理沙はキャプテン。霊夢は副キャプテンだから即決。
・控えだった中国にGK任せたら不安なので紫&幽々子の西行コンビが受け持つ
・溶けかかったチルノと瀕死のレティはとても動ける状態でないため戦力外
・ミスティアは逃げた上、大会ではメガヘタレ呼ばわりされるような選手なので外すべき
「となると…」
一部が脱落したとはいえ、決定した4人だけでもう半分近くのコストを消費している上に残りのメンバーもこれまたコストが高い面子ばかりだ。
それだけ世間では格上と認められている証であるが今は迷惑この上ない。
誰が居残り組になるか!
っと、まだ決まってないメンバーはお互いを見合わせバチバチと火花を散らせると思いきや…
「なら私は残らせてもらうわ。
よく考えればお嬢様のいないチームに加わる必要性……」
「私も抜けさせてもらう。
紫様や霊夢が不在中にもし結界に不都合があったら大変だ」
咲夜にしてみれば確かにこの大会に出場するメリットがない。
まぁお嬢様ことレミリアが出場するのであれば話は別なのだが、あいにくこの世界でのレミリアはサッカーにそれほど入れ込んでないのだ。
さらに藍は結界どうこうは確かに事実であるが、それ以上にこの大会の偽賞金を用意するための金策が目的である。
とにかく穏便に事を済ませるために、急いで霊夢の怒りを鎮めるような額を用意しなければならない。
というか用意できなければ自分がぼこられてしばらく行動不能にさせられるどころかマヨヒガの家具一切を差し押さえられ、某図書館での『もらってくぜ』 → 『もってかないで~』と同じ状況が生まれてしまう。
そうなったら八雲家の家計が火達磨となり明日の油揚げどころか橙の養育費すら危なくなる。
いや、あの貧乏巫女が黒いのと同じ程度で済むわけがない。
きっと
『これっぽっちじゃ足りないわね、娘ももらってくわよ』→『おとっつぁ~~~ん、たすけて~~』
「ちぇ、橙…
ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!」
想像だけなのだが、その“時代劇でのお約束”で霊夢に連れて行かれる橙の姿に思わず叫びだしてしまう藍。
いきなり自分の式神の名を叫びだしたので『一体何事?!』と後ずさる一同だったが、その間にも藍の頭の中では“荷馬車でごとごと市場に連れて行かれる橙”から
“小汚い格好で意地悪3人義母姉にこき使われる橙”
“獣と化したきもけーねに襲われる橙(規制物)”
“首輪を付けられて上目使いの不安そうな瞳で見つめてくる橙”
といった類の妄想が駆け巡っていた。
ついでにいえば咲夜の方も台詞の途中に魔理沙が借りて(奪って)きていたもう一つの水着、幼女でさえも着れるか怪しいミニサイズのスクール水着が目に入ったらしく…
『ねぇ~咲夜~~これ小さくない~~?』 → 『いえいえそんなことありません。きっとお似合…ぶふっ?!』 →『な、何?何かおかしいの…?』→『い、いぇ…そんなことは…で、ですが……くぁwせdrftgyふじこlp』
「「ああ~~~~(橙)(お嬢様) なんてはしたない格好を…………」」
片方は両手で頭を抱えながら上下左右に激しく揺らし、
もう片方は幸せ一杯な表情で地面に横たわって鼻血の海を生成中。
「………何やってんだ、あいつらは?」
魔理沙の言うとおり、本当に何やってんだ?である。
だがまぁこの暑さだ。
きっと脳をやられたのだろうということで、今なお妄想を続ける二人に憐みの視線を送りながら無視することにした。
もちろん文は予備のインスタントカメラを使って写真を収めることは忘れていない。
きっとこのことは号外としてすぐに広まるだろう。
といったいろいろな意味で頭をやられた変人達は置いといて、メンバー選出の話に戻ろう。
メンバー選出で最後に残ったのは永琳とてゐの永遠亭コンビ…
コスト的には別にいけないこともないのだが、二人はというかてゐが一方的にじっと永琳を見つめてる。
別に何かをしゃべるわけでもなく無言だ。
鈴仙の狂気の瞳で狂わせようとでもいうかのような空気はまるで
(紅魔館組と八雲組も争うことなく身を引いて株を上げたウサ。
ならここも永琳様が自ら身を引いて永遠亭の株を上げるウサ!)
と無言の圧力をかけているようで永琳に冷や汗が流れる。
一応二人抜けてコストが浮いているとはいえ、永琳とてゐがいればやはりコスト高になってしまいチームを圧迫してしまう。
こんな状況で二人とも残るのは好ましくないどころか、下手すれば永遠亭の株を下げることになりかねない。
「な、なら私も…製作中の薬が気になるし抜けるわ。
この暑さでアレみたいな急患が現れないとも限らないし」
もちろんアレというのは藍と咲夜のことだ。
未練がないというわけではないが、そもそもこのチームは魔理沙が中心になって結成されたチームであり永遠亭を含めた自分は部外者だ。
その部外者が自分のくだらないプライドのために永遠亭の株を下げるわけにもいかない。
チャンスはまた来る…と思いながら、永琳は夏の甲子園でベンチ入りすら果たせず号泣する少年達とシンクロしつつも身を引いた。
“こうなったら絶対水虫の特効薬を開発して私の名を知らしめてやる!!”
志はでかいようで微妙に小さいような気もするが、水虫は当事者にとってはかなり辛いのだろう。
もしかしたら永琳自身が水虫なのかもしれないが、とにかくレギュラーから外れた鬱憤を晴らすかのように燃えはじめた…が
「暑いわぁ!!」
バキッ!!
こんな暑い中で燃えられたら迷惑というもの。
霊夢の放ったミコサマーソルトが永琳の顎を見事にとらえた。
永琳は月面宙返りを決めながら後方にいた藍を巻き込みつつふっとび、咲夜にボディブレスを仕掛ける形で激突して沈黙した。
もちろん、永琳のムーンサルトを食らった藍と咲夜も沈黙だ。
「これで3人が抜けたな」
そんな光景を全く動揺することなく会話を進める魔理沙。
他に何か言うことあるのではと思うが、まぁここは幻想郷だ。
ちょっとした非日常的なことは日常茶飯事なのでもう慣れているのかもしれない。
そうしてその一部始終をプールの中で見ていたてゐはというと、鰻のぬるぬるとした感触を受けながらしてやったりという笑みとともに「うさうさ♪」と呟いている。
何せ、永琳は天才と称するだけに単純な鈴仙と違ってそう簡単にうろたえない。
心臓に毛が生えたかのような図太い神経は伊達に長生きしてるわけではないわけだが、
それだけになんとかして永琳を陥し入れたいと常日頃から考えていた。
そうして、やってきたこのチャンスに牽制的で左ジャブ的な視線での揺さぶりをかけてみたら、なんと超クリティカルヒット!!
打撃ロールをクルクル回しに回しまくって、紙上最高物理ダメージでもってラスボスを落としたどこぞの賢者風貧弱草妖精こと○ックのようだ。
とにかく、永琳は動揺したどころか失態までも見せて最後には自滅する始末。
これにはもう笑いが止まらない…がいい加減止めないと危ない兎にされるので程々でやめる。
もっともやめたところでてゐの裏の顔が幻想郷上に知れ渡っている以上、今さらであるのだが
「永琳様は退いたけど私は残るウサ。中盤の繋ぎは任せるウサ!」
こうしててゐは、コスト上位陣の自滅的な潰し合いの中でしたたかに生き残り、漁夫の利でレギュラーの座を勝ち取った。
「これでコストはずいぶん浮いたが…FWとDFの駒が足りないぜ。
とりあえずストライカーには控えだったユキとマイを入れてみるか?」
「その二人だと実力的かなり厳しくない。もっと強いのを入れないと」
「かといってあまり強すぎるとコスト圧迫するわよ」
紫の突っ込みどおり、そこが問題だ。
弱ければストライカーとして力不足であり、強ければコストオーバーになる。
何かこう二つのバランスが取れたいい人材が…
「幽々子様ぁぁぁ!!見つけました!!!
変な書置きを残して下界に遊びにいかないでくださぁぁい!!」
「こらぁぁぁてゐぃぃぃぃーー!!お使いの途中で逃げるなぁぁぁーーーー!!」
「霊夢さぁぁぁん!沼で遊んでいたチルノちゃんが変な帽子をかぶった妖怪に襲われて捕まった揚句、大ガマへの餌にされて大変なことにっ!!」
「おっ、丁度いい候補が向こうから飛んできたぜ」
お互い別々の方向からすっ飛んできた二人と一匹。
妖夢と鈴仙と大妖精を見上げながら魔理沙がにやりと笑った。
・・・少女勧誘中
「えっと、つまり私達にこの『偶然カップファイナル~』のサッカー大会に出場してほしいと」
冷たい麦茶で一息をつき、まだ余っていた西瓜の欠片をもらいながら改めて事情を聞いた妖夢はうなった。
自分としてはただ幽々子様を連れ戻しにきただけなのだが…
と横目で見ると、鰻の踊り食いが飽きたらしくてゐが焼いたらしい鰻のかば焼きを頬張っている幽々子の姿が見える。
てゐのことだ。後でぼったくり請求書が送られそうで怖いが、まぁ隣には一部始終を見てる鈴仙もいる。
自分で調理しなくても済んだから後で詐欺分のお金を回収してもらったらいいかいうことで放置した。
で、その鈴仙はというと
「私なんかがレギュラーでいいんですか?!
本当にいいんですか!!」
「チルノちゃんを助けてくれた恩返しとして精一杯頑張らせてもらいます」
一緒に飛んできた大妖精もそうだが、結構というかかなり受ける気満々だ
まぁ、サッカーに関しては散々な扱いを受けていた鈴仙(名簿ではてゐの策略によりうどんげにされている)と純粋にチルノを(結果的に)助けてくれたという恩のある大妖精は断る理由がない。
となれば流れ的に自分も引き受けるのが普通だろう。
それに魔理沙もストライカーというポストを用意してくれているし幽々子様も修行と思ってがんばりなさいというが…
どこかしっくりとしない。
しっくりこないのだが…
「妖夢も参戦するのよ!!
でないと私と一緒のコンビ技が使えないじゃないの!!
私が活躍できないじゃないの!!!」
殺気走った眼をした鈴仙が、どこぞの人形とボールだけしか友達のいない岬君が無理やり『コンビ組め』と強要してくるかのような、必死の形相で勧誘を迫ってくる。
というのも鈴仙は、妖夢がいるといないとでは活躍度が天と地程の差が開いてしまうのだ。
さらに具体的にいえば『ジャック』と『中国』の差でこの二人の隔てられた差を考えたら必死なのも頷けるだろう。
なにせ、中国が玄人好みのB級GKに対してジャックがイロモノかマゾにしか好まれないボンクラGKなのだ。
そんな、鈴仙の有無を言わさないかのようの説得に押されてつい承諾してしまった。
そう、基本真面目な妖夢にはやる気に燃える人の気勢を削ぐような真似はできなかったのだ。
「よし、ストライカーは決まった。残りのメンバーは…」
「………あつい =■●_~~」
「私の宝貝は世界いちぃぃぃぃぃ!!
私だってえーりんになんか頼らずとも強いのよぉぉぉぉ!!」
「私だって頑張ればできるのよぉぉぉぉ!!
だから私を無視するなぁぁぁ!!」
台詞の端々でわかるが上から順番にリリーBと輝夜とカナである。
リリーBは元々控えであるのと、今回後釜を継いでもらうということで咲夜が彼岸まで飛んで閻魔のとこから
(一応言っておくが死んではいない。ただ、リリーBが閻魔の管理下にいることが多いからだ)
輝夜は永遠亭に戻った永琳が自室でゴロゴロしていたところに煽りをいれて
カナは幽々子からの依頼として白玉露の留守番に加えて、収入のあてとしてコンサート開催を頼むために虹河姉妹が住まう洋館へと出向いた藍が、丁度喧嘩中だったところを
それぞれ捕まえてきてもらったのだが…
「不安ありまくりだぜ」
ちなみに魔理沙はキャプテンがいつまでもスクール水着では締まるものも締まらないのでいつもの黒い服に着替えたのだが…
DF陣のカオスっぷりの前には意味がなかったかもしれない。
ただでさえコストという問題でメンバーの半数を入れ替えざるを得ない状態。
戦力とチームワークに不安があるのに、これでは不安が倍増だ。
しかも時間的に今から別のを探すわけにはいかないのが現実。
世の中理想だけで成り立たないとはよくいったものだ。
その様に紫はくすりと笑う。
「まぁいいんじゃないの。
最初に言ったとおりこの大会は今までと勝手が違うもの
どうせ予選も勝てっこn…」
と続きを言おうとしたその紫の口元目がけて一筋の閃光が走った。
魔理沙が放ったマジックミサイルの弾丸は紫に当たることなく、口元に持ってきていた扇子だけを弾き飛ばした。
「あいにく私のサッカーに“負けるサッカー”なんてないぜ
私のサッカーは“勝つサッカー”だ!
例えメンバーが名無しだけだろうと、常に全力で正面から戦い、力で破る!!
今も…そしてこれからもな!!」
煙を吐く右手を前に突き出したまま睨む魔理沙だが紫はいたって涼しい顔だ。
新しく取り出した扇子で再び口元に持っていく。
「ふふ、若いわね」
その発言は自分がおばさんですと認めているようなものなのだが幻想郷のメンバーは紫がいい年こいたおばさんであることは百も承知。
なのでそれに関しては誰も突っ込まなかった。
「とにかく魔理沙の言うとおりやるからには勝つわよ!
勝って賞金を手に入れるわよ!!」
「動機が不純だがその通りだぜ。合言葉は“サッカーはパワー”
どうせ敵がわからないなら小細工なんて弄しても無駄だ。
なら何も考えず最初は正面からぶつかる。
壁にぶつかればその時に突破口を見つければいい!!
それでだめなら…当たって砕けろだぜ!!」
「単純ですが…確かにそのとおりですね。
正直、未熟な私は正面からぶつかるしかありません」
というか妖夢にとって、変に作戦を立てられたらうまく動けるかわからない。
なら、最初から作戦を立ててなければその分目の前でただ純粋にゴールを奪うことに専念できる。それに今回は
「妖夢。私がサイドから最大限にバックアップするから敵のゴールを奪うことだけ考えて」
「そうウサ。ストライカーらしくゴール前でただシュートを撃つだけに専念するウサ」
鈴仙はともかくとして、てゐからはびみょんに馬鹿にされてるような気もしたが気のせいにしたらしい。
というか、「決めろ」ではなく「撃て」と言ってる時点で⑨にされてるのだが、そこに気付かないところはやはりみょんである。
とまぁ、てゐの本心に気付かない妖夢は、期待に応えるためにも頑張らねばと、ぎゅっと楼観剣と白楼剣を握り絞めて気合いを入れる。
だが、そんな妖夢の決意も
「私も、チルノちゃんのように“顔面ブロック”は無理でもまわってボールをカットするぐらいなら…」
(チルノの顔面ブロックが強力過ぎるせいか、なんとなく頼りにならないのは失礼なんでしょうか?)
失礼です。
「……暑い…が任された以上全力を尽くす。
メイド長に負けるつもりはない…が暑すぎる………… =■●_~~~」
(暑いのはそんな黒い服きてるからですよ。
服をはぎとるか、袖とスカートの丈を斬り裂くべきでしょうか?)
確かに言うとおりだが、解決法として後者はともかく前者はやめろ。規制がかかる。
「私だってこの大会で一人でできるってこと知らしめるわよ!!」
(所詮ニートには無理ですよ)
否定の余地なしの断言。
「私を無視してきた連中に、私の恐ろしさをこの大会で思い知らせてやる!!」
(………………主旨、間違ってませんか?)
ボール越しなら人を殺しても許されそうなルールだ。
ある意味ではあってるだろう。
っと、残りの面子に妖夢は心の中で突っ込みを入れつつも少しくじけそうになった。
さらに、とどめとして
「本当に燃えてるわね…あ~私はボールが飛んできたらちゃんっと対処してあげるわ
だから妖夢、お弁当は特盛りでよろしく」
(ピクニック気分ですかぁぁぁ~~~~?!)
言うまでもなくそうであろう。フィールドは芝生だし
「私も飛んできたら対処はするけど、あまりボールが飛んでくるようだったらGKを放棄するから頑張りなさい」
(守るなら最後まで責任もって守ってくださいよぉぉぉ~~~~!!)
だが断る。
それがSGGK(スーパー・グータラ・ゴール・キーパー)クオリティ。
ゴール前を守る二人の発言。
妖夢はもう泣きそうになったが魔理沙はその肩をぽんと叩く。
「とにかく妖夢。お前はこのチームのストライカーなんだ
バックアップは最大限にしてやるからいつもどおり頼むぞ」
この辺はさすがは腐ってもキャプテンである。
迷いなく言い切る、その言葉に妖夢の迷いは吹っ切れた。
「わかりました。全力で頑張らせてもらいます!」
再び意気込む妖夢だが
「あぁ、いつもどおりその剣でもって高速で斬り付けにかかって敵を潰してくれ。
交代ができないなら敵を潰せたら後は楽になるからな。その後ゆっくりとシュートを決めたら楽に勝てるぜ」
逆に奈落の底へと蹴り飛ばした。
何せ、その発言は得点源としては期待してないからデストロイヤーというかレ○ィン君…
いや、潰し合いならさらに格上である勝○マンのごとく敵を潰しにかかれとも取れる言葉なのだ。
だが確かに『勝つサッカー』には反則を犯してでも敵を潰して勝ちを取りに行く姿勢が問われているし、正面から激突すれば相手も無傷では済まされないので理にはかなっている。
さらにいえば、潰し合いのない東方サッカーなんて東方サッカーではないという意見もあるが…
「どの道、私の扱いがひどいのは変わりません………orz」
所詮、みょんは低コスト帯のFWだ。まともに運用するには難しい存在なのである。
ていうか、ここの魔理沙はルール的に可能だったらガッツが切れた後は敵GKに取り付いて自分モロとも敵GKの腹を切る富○の喧嘩殺法を強要される。
もしくは、霊ガンを背中に受けて瞬間加速した後にト○ロ弟を串刺しにした桑○のごとく、
後ろから魔理沙がマスタースパークを撃ってきて敵と自分を粉砕させながらボールをゴールへと押し込まれるかもしれない…
敵は前ではなく後ろにいる……
やはり参戦するのではなかったと激しく後悔したがすでに遅かった。
「とにかく行くぜ!『黒赤マジック』!!
勝利のマジックでもって目指すは大会優勝だぜ!!」
「おぉぉぉぉーーーー!!」
落ち込む妖夢を尻目に、残りの面子で円陣を組んで士気を高めはじめる。
それらをのほほんと見つめる西行コンビ
「本当に若いわね~」
「でもやる気ないよりあった方が断然面白いというものよ。
とくに落ち込み具合なんかもう最高」
「私としては、勝ってほしいものなんですが、とりあえずチーム名は『黒赤マジック』。
略して『黒赤』として大会本部へメンバー表を提出させてもらいますよ。
開催地は幻想郷とも外界とも違う完全異空間なので、私は同行できませんが、いい朗報を期待しています」
「それについては賛同できないから善処だけはする…とだけにしておくわ」
「では、ご武運をお祈りしてますよ」
そう言い残すと文はバサッと背中の黒い翼を羽ばたかせ、空を斬り裂くように飛び去った。
その手にはしっかりと大会本部宛への大会参加通知とメンバー表が握られている。
とにかく、星の数ほど存在するという幻想郷の一つから『偶然カップファイナル~』への参加が決まった。
なお、登録時に書類で不備があったらしく少し登録に手間取ったのは余談話らしいが、
とにかく走破を制した「黒赤マジック」はまた新しい戦いの渦中へと挑むこととなった。
目指すものは野望に欲望、金や名誉と様々であるが確実にわかることが一つある。
それは大会ではまだ見ぬ強敵が潜み、「黒赤」にとって未だかつてない激戦が待っていることである。
それぞれの幻想郷から選抜された選手達が集う、弾幕よりアツイ大会…
後に過去最高規模をほこることとなるサッカー大会。
「偶然カップファイナル~』が始まろうとしていた。
後半へ続く
小さな文字の羅列が読みにくいというのであればそちらをご覧ください。
「号外号外~~」
夏の日差しが容赦なく照りつけるある暑い日、
その情報を持ってきた天狗は唐突にやってきた。
唐突…といってもまぁ天狗は呼ばれていなくてもやってくるような存在だから気にする者はあまりいない。
相変わらず音速を思わせる速度で空をかけ抜けて境内に降り立った。
降り立った拍子に一陣の涼しい風…ではなく熱風が巻き送る。
「お~久々だな。自称幻想郷最速天狗の迷惑ブン屋な文」
「自称とはひどいですね、魔理沙さん。私は自他共に認められる幻想郷最速ですよ
それに迷惑なんてかけたことは一度もありません」
そんな文を出迎えたのは神社の顔ではなく、神社へと遊びにきていた普通の魔法使いの魔理沙だ。
だが今はトレードマークであるとんがり帽子はかぶっておらず、変わりにシュノーケル&水中眼鏡が装備されている。
予想はされるが身体装備はもちろんスクール水着で井戸そばの水一杯張ったビニールプールで涼んでいる最中である。
「それで何か用か?」
文が来てもプールから出る気はさらさらないらしく、プールの中から身を乗り出して問いかける。
その様に文は、少し仲間に入れてもらいたいなと思わないことはないが、後で川あたりで行水をすればいい。
その時河童のにとり辺りとばったり会うかもしれないが、あっちはきゅうり三本と一袋の大豆で分かり合える心の友だ。
リスク的に今ここで危険を冒してまでプールに入ることでもないのであっさりとあきらめた。
「あ、はい。貴女達にぴったりのお知らせがあるのですが…霊夢さんはいないのですか?」
「あ~霊夢の奴なら…後1分か2分もすればすぐに会えるぜ」
「なんですか、それは。お茶を濁すようなことをせず正直にお話しください!
記者には全てを知る権利があるのです!!」
魔理沙の意味深な言葉に文は、記者魂というか犯人へ自白を強要する刑事を思わせるかのような物言いでずずいと詰め寄った。
それを見て魔理沙は「せっかちな奴だぜ」と呟きながらプールの中でガシッ!!っと何かを鷲掴みにすると
「おらっ、とっとと観念しやがれ!!」
ざばーっと水中から黒い何かを引きずりあげた。
「おわっ、これは特ダネですね。『神社の恐怖。境内に怪人ワカメちゃんが現れる』
早速次の記事に…」
「ちょっと待て!
どうせ記事にするなら出鱈目でなく真実を書け!!」
「出鱈目とはなんですか。私はいつもしんじ…つ……を……」
っと唐突にプールから現れた黒いナニカを見ると同時にシャッターを切っていたが…落ち着きを取り戻すごとに段々とシャッターを切る手が遅くなる。
「は~な~し~て~~!!」
その黒いナニカ…の正体である濡れた髪の毛をしたらせながら暴れる霊夢を後ろから魔理沙が羽交い締めにしている。
どうやら彼女も魔理沙と同じくプールで涼んでいたのだが文が来たと同時に水中で潜って身を隠していたようだ。
その様は捉え方次第では水着姿を彼氏に見られるのが恥ずかしいとか心の準備ができてないからと見えるが、霊夢の取った行動はそういった『萌えしちゅえーしょん』トップ5に君臨するようなちゃちな理由ではない。
文はその時のことをこう文花帖に記している。
――――――
この記事を書く前に言っておきますッ!
私は今、彼女の趣味をほんのちょっぴりだが体験した。
い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのですが……
あ…ありのまま 今 起こっていた事を話します!
『私は彼女の姿を見たと思ったら、
その瞬間すべてが真っ白になりました』
な… 何を言ってるのか わからないと思いますが
私も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうでした…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃない 断じて違います
もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました…
――――――
「れれれれれれれれれれ………れれれのれ~~ おでかけですか~?
じゃなくって霊夢さん。
その恰好はいったい…」
今までトンでも事件100連発を見てきた強者であるブン屋といえどもこの霊夢の姿は想像できず少しの間、ザ・ワールドをくらっかかのように思考が止まっていたのだが、ようやく我に返った文は凄い速度でシャッターを切り始めた。
というのも、霊夢の姿は上半身さらしで下半身ふんどしという
“THE 外国人が勘違いしている 倭国女子の水着姿”
なのだ。
「うはっ、霊夢さんにそんな趣味があったんですか!!
これはもう幻想郷1のスクープですよ!
特ダネものですよ!!
明日は逆転満塁ホームランですよ!!!」
「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
私はあの変態じゃあるまいし、こんな趣味もってなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」
「甘い、どうせならその晴れ姿を幻想郷全てに見てもらえ!
きっとファンも喜ぶに違いないぜ!!」
「ファンって一体どういうファンよぉぉぉぉ!!
とにかくはぁぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁせぇぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!」
なおも激しく暴れる霊夢だがこんな面白いことを見逃すような魔理沙ではない。
いくら総合的な能力が優れていても『組み合い』という状態では力という能力が優先で処理されてしまう上に『東方サッカー猛襲伝』データでは魔理沙の方が霊夢より力が4高い。
それでも『組み合い』からの脱出は『レベル』+『力ボーナス』+『2D6』の判定なので運が最高値ともいうべき霊夢が圧倒的有利なのだが…
この世の中には面白いことを望む者が多い。
よって俗に言う『サイコロはマスタリング裏でこっそり振って出た目を自由に操作』というG○特権の反則行為で霊夢の脱出判定をことごとく失敗させている裏事情があるのだ。
なお、この判定はスキマが関わっているかどうかは謎だがまぁそういうわけで、
霊夢は逃げることもできずもうパシャパシャと成すすべなく写真を撮られまくっている。目なんか涙が溜まってもう半泣き状態だ…。
ちなみに何故こんなことになったかというと…
魔理沙が毎度おなじみの香霖堂でビニールプールや海セット一式を見つけたことから始まった。
ビニールプールと海セットを見つけた魔理沙は水着と一緒に『借りてくぜ』の一言で強奪。
早速この暑い日を涼むために博麗神社へと来たのだが…
ここである問題が起きた。
強奪した2着のスクール水着のうち、1つの水着が小さすぎたのだ。つまり一つは10代後半の少女なら楽に着れるものだがもう1つはレミリアとか萃香といった幼女組でさえも着れるかどうか怪しいというぐらいのミニサイズである。
なので誰がどちらの水着を着るかで相談というか喧嘩したのだがこの暑さだ。
暑さによるイライラのせいかうっかり売り言葉と買い言葉で喧嘩をエスカレートさせてしまったのだ。
なので、白黒つけるために夏場恒例の萃夢想式スペルカード戦での勝負となり、負けた方が「さらし & ふんどし水着を着用」という本人にとっては裸よりも辛いが見る人にとっては裸よりも嬉しいという屈辱的罰ゲームが付加されたのだ。
そして、近距離格闘弾幕戦でどんぱちを行った結果、隅に追い詰められた魔理沙のカウンターで発動させた零距離マスタースパークが真正面から迫ってきた霊夢を包み込んで勝利を手にした。
負け犬となった霊夢はもちろんこんな「さらし & ふんどし水着」なんか着れるかと断固拒否したが、こんな真夏日で暴れたからというかマスタースパークのせいでウェルダン風にぷすぷすと焦げている…
格闘ゲーム物の法則で服自体は原型をとどめているみたいだが身体中の水分が蒸発して干物寸前だ。
もう、今すぐ水へルパンダイブを決めないと干からびた巫女となりかねないが、魔理沙は飛び込みをブロック。
でもって、自分は悠々とプールを占拠しながら…
「スペルカードルールを定めた本人が約束を守らなければ他に示しがつかないぜ。
それに私も鬼じゃないからな。約束通りに着替えたらちゃんとプールに入れてやるぜ」
と魔理沙に弱点と急所を同時にえぐられた霊夢はしぶしぶというか、幻想郷3大迷惑に見つかりませんように…と心の中で願いながらマッハの速度で「さらし & ふんどし水着」へ着替えてプールに飛び込んで息を吹き返したが
現実は無情であった。
その幻想郷3大迷惑の一人にモロ姿を見られたのだ。
なお、その3大迷惑とは一人は天狗であり、もう一人はスキマであるとされているがもう一人は誰かわからないというか…
一説には3大迷惑どころではなく幻想郷30大迷惑ではないかといわれてるのだがまぁそれもあながちウソではないだろう。
それだけ幻想郷でははた迷惑な連中が多いのだ。
「あぅあぅ……もうお嫁にいけない……」
やがて諦めたのか、ぺたんと力無く座り込んでぐすぐすと泣きながら沈んでいる。
だが、そんな霊夢もまた萌えるということでやはり文は写真を撮り続ける。
「いや~~もうこんなネタを手にすることができたなんて私は幸せものですよ。
やっぱりあれでしょうか。私の日頃の行いがよいからオヤシロ様がプレゼントを用意してくれたのでしょうか」
「きっとそうに違いないぜ。
あ~その写真だがよければ何枚か焼き増ししてくれ。
きっと高く売れるに違いないぜ」
「もちろんかまいませんよ。
このネタは貴女の働きがあってこそですから。
この射命丸文!スプークの協力者には礼を尽くしまくることを忘れません!!!」
「おーさすがだぜ」
っと文も写真を撮る手を止めて魔理沙の方に振り向き、そのまま盛り上がる二人だが…
ふと空気が変わった。
この炎天下の中なのに北極か南極あたりに放り込まれたかのような氷点下の寒さを感じたのだ。
そう、まるでチルノによって一瞬に氷の彫像へと変えられたかのような寒さだ…
そんな空気が二人の後ろから流れている…
「うふ、うふ、うふふふふふふふふふふふ………」
なんだかどこかで聞いたことあるような笑い声だが声のトーンは全く違う…
地獄の底から全てを呪うかのような言霊を持つその笑い声に二人は後ろを振り返るな。
見たらやばいというかその場から逃げろ!と全力で警戒の鐘を鳴らしまくっているのだがその足は動かない。
まだ後ろを振り返っていないのに蛇に睨まれた蛙のごとくその逃げ足を封じられている。
姿を見てないのにこれでは直視なんかしたら蛇睨みを超えるメデューサの石化睨みでも食らって“貴女の人生ゲームオーバー”とか“ジンセイ\(^o^)/オワタ”にされそうだ。
できることならこのまま振り返ることなく終わってくれと願うが
「マリサ…アヤ…こっちムキナサイ」
現実は非情である。
完全恐怖に支配された状態で命令されたら従うしか道がない。
二人はなけなしの勇気を振り絞って後ろを振り返ると……
鬼がいた。
もちろん鬼といっても『ぺったん ぺったん つるぺったん♪』で歌われる鬼ではない。
いや、ある意味ではつるぺったんであってるのかもしれないがそんなことはどうでもいいだろう。
下手な突っ込みを入れたらお札や陰陽弾が画面を突き抜けてこちらに飛んでくる恐れもあるのだ。
なので、これを読んでいる人の中にはすでに何人か被害者が出てるかもしれないが……それこそ関係ないので流しておこう。
とにかく今の彼女は一言で言い表せばこうであろう。
“殺意の波動に目覚めた楽園の素敵な巫女”
と、その殺意の波動に目覚めた楽園の素敵な巫女は手にプールで浮かべて冷やしていた西瓜を持ち、いつのまにか召喚されていた玄爺の上であぐらを組んでどっかりと座り込みながら、見る人全てを恐怖のどん底へ突き落とす深紅の瞳で二人を容赦なく射抜いていた。
「フタリトモ………ナニカイイノコスコトアルカシラ」
『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』
地獄の底から手招きでもするかのようなその声は、もう地獄の閻魔なんか目ではない。まるっきり子供扱いだ…
いや、本当に閻魔は子供であるのだが、とにかく二人は楽園の巫女(仮)の決して踏み入れてはならないレッドゾーンへと足を踏み入れてしまったのだ。
しかもよく目を凝らせばそこにたたずむのは…そう、楽園の巫女の裏側に隠れた狂気の分身体のようなものが見えるし、その分身体を見つめてるとなんとなく
「私は博麗霊夢とは違う。
真の絶望というものを思い知らせてあげましょう!!!」
なんていう空耳とともに漆黒の黒衣を携えた某最狂昂翼天使様の姿がだぶってるような気もしてきたのだ。
と、二人の脳が現実逃避をし続けている間に楽園の巫女(仮)はすでに立ち上がって灼熱のオーラをまとった西瓜を宙に浮かせている。
そう…
この体勢から繰り出されるのは………あれである。
「博麗神拳 最終奥義! 夢 想 天 生!!」
なお、一応突っ込んでおくが『拳』ではない。
でもってこのあと起こる残酷描写を丁寧に書くのはあれなのでお約束的なこの言葉だけで澄ましておこう。
魔理沙くんふっとばされたァ~~!!
文くんふっとばされたァ~~!!
・・・少女蘇生中
「う~ん。何故か頭が痛い上に何かとんでもないスクープを目撃したような気がしたのですが…
思い出せません」
「私もだぜ。何かこうすごい面白いネタを見たような気がしたんだがな…」
どうやらあの一撃は二人の数時間前までの記憶をはるか彼方に吹っ飛ばしたらしい。
文は神社の縁側、魔理沙はプールの中で、思ったよりぴんぴんとした状態で西瓜の欠片を齧っている。
「ちょっとした記憶喪失でしょ。全く二人ともスペルカード戦でダブルノックアウトするなんて浮かれすぎでしょうに」
奥からお茶を運んできた霊夢は呆れ気味につぶやく。
ちなみに「さらし & ふんどし の水着」は解除していつもの腋丸出し巫女装束に着替えている。
「ですよね。いくら新作に出られるからって私もちょっと浮かれすぎていました」
どうやら気絶の原因は「萃夢想ルール」をベースとしてさらに新しく発展させた「緋想天ルール」の模擬戦闘を行った結果、二人同時KOの結末を迎えたということにされたらしい。
ついでに魔理沙と文はその新しい「緋想天ルール」でのモニター役として抜擢されており、近年正式発表まじかで確かに興奮してた節がある。
おまけに周辺では格闘を交えた近距離弾幕戦闘を行った形跡もある。
もっともその形跡は霊夢vs魔理沙による萃夢想式弾幕戦の痕跡と夢想天生の一撃によるものであるのだが…
知らなければ、自分たちが暴れた痕跡とも取れるため、二人は本当にダブルノックKOをやらかした結果だと思いこんでいる。
さらにいえばカメラをネガごと吹っ飛ばされた上に自分のメモには奇妙奇天烈摩訶不思議な怪奇文面があるだけであり、それが何を示しているのかわからない。
一応文のことだからそれを記事にするだろうが、直接見た二人が「さらし & ふんどし の水着」な霊夢を思い出さない限り『幻想郷108不思議の一つ』として処理されるであろう。
後、関係ないが蹴られた西瓜は「サッカーボールはどんな衝撃を受けても破壊されることがない」というわけわからない不思議法則によって、似たような形状だった西瓜もちょっとひび割れる程度で済んだらしい。
「それで今日は何の用できたわけ?
別に魔理沙と弾幕戦に来たわけじゃないでしょ
あっ、ちなみに素敵なお賽銭箱はそこよ」
と、霊夢は持ってきた湯飲みにお茶…はいくらなんでも夏だと出しそうにないから冷たい麦茶を注ぎながらもさりげなく賽銭を要求しながら文に問いかける。
「あっ、うっかり忘れるとこでした。
実は今朝方うちの妖○ポストにこんな手紙が入っていたんですよ」
文は麦茶を受取りつつも賽銭については軽く受け流しながら懐から手紙を取り出した。
「何よその幻想郷にありそうでないようなうさんくさいポストは」
「何を言ってるんですか!
幻想郷には普通に妖○カメラなんてものもあるじゃないですか」
よほど喉が渇いていたのか、ごくごくと一息で麦茶を飲みほしつつさらにお代わりを要求。
その様にやっぱり熱いお茶を出せばよかったと思いつつ、やはり麦茶を注ぎ足す。
「あ~そういえばあったわね」
つい数週間前に稗田阿求がそんなものを手に入れて売りにだそうとしていたのを思い出した。
その後、文はまたまた空の湯飲みを差し出したが、さすがに3杯目のお代わりは聞き入れなかったようだ。
霊夢は自分用の麦茶を注いで一息を付きながら手紙の中を確かめる。
そこにはこう書かれていた。
『東方サッカーオールスター
「偶然カップファイナル~」開催のお知らせ』
「…何これ」
「見ての通り、サッカー大会のお知らせですよ」
それはわかるが『~』で略されている無駄に長いサブタイトルの方が何これである。
しかも半分以上が開催者の愚痴というか駄文みたいなので埋まってるし…
何より真赤な紙に黒インクで書かれている分『文々。新聞』より3倍はうさんくさい。
「ふふ、ようやくここにも知らせが届いたみたいね」
相変わらずいつの間に現れたのやら。
霊夢が注いでいた麦茶を飲み干したスキマ妖怪こと紫が答える。
「ええ、ようやく“この幻想郷”も出場資格を得たってことなんですよ」
「一体何の話よ」
全く話がわからない霊夢だが
「それについては、皆を呼んでから話すわ。
大丈夫、隙間を使って一瞬で呼び寄せるし」
そういって紫が指パッチンすると同時に
「うわっ」
「きゃぁ」
「ぐえっ」
「むぎゅ」
「うあー」
「まちぎゃん」
「へるぷ みぎゃーー!!」
どさどさどさどさっと魔理沙の頭上に現われた隙間から悲鳴とともに滝のごとく人が落ちてきた。
その人種は多分おそらく普通の人間もいれば妖怪もいるし、蓬莱人や妖精等も混ざった実に多種多様で統率のないメンバーが小さなプール一杯に詰め込まれてイモ洗い状態だ。
この小さなプールで蠢く節操のないメンバーを見て霊夢はしばらく混乱してたがふと気づいた
「あっ、この面子って」
「えぇ、そうよ。先月のサッカーで走破モードを制したメンバーよ」
サッカー。
それは、幻想郷が外の影響を受けて一時的に流行ったスポーツだ。
もっともサッカー自体は外の世界でも全く廃れてはいないもので幻想になるなんて程遠いものなのだが…
とある事情で幻となった特殊なサッカーが、この幻想郷に流れてきたらしい。
いや、あれをサッカーというべきものかどうかすら怪しいが、まぁ稗田家の東方求聞史紀でも「サッカーが流行った」という記述がある以上、サッカーが流行ったことだけは事実である。
そして、今召喚されたチームは、幻想郷すべてを巻き込んだサッカー大会「走破モード」
を制したチームメンバーなのだ。
「一体なんなの。せっかくこれからお嬢様と一緒に行水をしてスキンシップを図ろうとしてたのに」
「私もせっかくこれから水虫の薬の調合を始めようと思っていたのに」
「私もせっかくこれからレイセンちゃんから逃げようと思ってたのにウサ」
「私もせっかくこれから夜雀の丸焼きを楽しもうとしていたのに」
「そこのニンゲン達とウサギぃぃぃぃぃ!!
だずけでぇぇぇぇぇぇ!!!」
「・・・・・・(返事がない。ただの⑨と屍のようだ)」
だが、いきなり隙間に放り込まれて呼び出されたのだ。
台詞だけで誰が誰だかわかるほどの個性的なセリフで次々と怒りを叩きつける。
もっとも怒りでないようなものもあれば危機的状況な台詞もあるし、一言も発さないというか発せられないようなのもいるが…
「と、とにかく説明を強く求めるぜ。スキマ妖怪…」
イモ洗いイモの一番下で潰されたせいで威厳も何もないが、
一応その時のキャプテンとしてチームを率いていた魔理沙が声をかける。
ついでにいきなり人の頭上に皆を召喚されたせいで、水の中へと沈められたものだから不機嫌だ。
返答次第によっては「私の雷獣シュートで蹴り殺してやる!!」とでも言い出しかねない空気が漂っていたが、紫はいたって涼しい顔だ。
「あら、あんな大会なんて本のお遊びよ
大体あの褌も最後に言ってたじゃない。第2第3の褌が…」
「つ、付け加えると星の数ほど存在する平行世界での幻想郷が集まって真の頂点を目指すサッカー大会だ」
最後まで言わせたら本当に雷獣シュートで自分の主である紫が蹴り殺されかねない。
だが、心の中でちょっぴり一回蹴られた方がいいのではと思いつつも、やはりそれはまずいので式神である藍が紫を遮って付け加えた。
召喚されたわけではないが一応彼女も走破メンバーの一人だ。
「あ~そういえば終わり際にブン屋と褌がそんなこと言ってたな」
もっともその後は褌達を皆でぼこって逆さ蓑虫として吊り下げた後「ストレス解消、蓑虫サンドバック!1回100円!!」とか言って商売したからそんなこと忘れていたのだが…
「とにかく、ここの幻想郷もようやく走破を制して出場資格を得たわけなんですよ。
なので受けてもらえますね。もうあの頃のサッカーのネタがなくなって記事が書けなくなってるんですよ。
人助けと思って受けてください!」
おぃ、お前はあの時の終わり際「数ヶ月はネタに困らない」とか言ってなかったか?
まだ数週間しか経ってないのにもう使い切ったのかよ…
と誰かが突っ込みを入れようとしたが…
「賞金は?」
「強い敵がいるのか?」
突っ込みを入れる前に食らいついたのがいた。
当然霊夢と魔理沙である。
「一応出るそうよ。敵も貴女達以上にサッカーを極めた分身ともいえる連中が集ってくるから苦戦必須。
サッカーやり始めて間がない上に飽きてさぼっているこのチームじゃ全敗で泣きべそかいて撤退するのがいいとこかしらね」
「それは聞き捨てならないわね…」
「えぇ、天才の力を持ってすれば軽く優勝ぐらいには持ってけるわよ」
その言葉にぴくりときたのか。
滴る銀髪と薄着であるために薄らと透ける濡れた胸元でお色気を強化し、
さらにはスカートを絞って見事な脚線美をさらけだすという戦闘スキル『挑発Lv8』を発動させている咲夜と永琳がにらむ。
なお、二人の脚線美はともかく胸元…特にメイド長の胸元は見ない方がいいだろう。
理由については、もちろん命が惜しいからである。
まかり間違ってもパ…なんていえばその瞬間、周囲に無数のナイフが現れて串刺しの運命が待っているだろう。
「そんな様で? 特に後ろ」
とかいう誰かの解説はさておき、紫は二人の後ろを見てクスリと笑う。
というのも後ろは、泣き叫ぶミスティアを捕獲してる幽々子と、プールで一息付いているてゐ。
そして暑さのため…に見えるが実際は大ガマに飲み込まれて消化寸前だったところを隙間で引っ張り出されて⑨死に一生を得たという半分溶けたチルノと夏眠中いきなり炎天下に放り込まれたせいで緊急的に活動停止状態となった瀕死のレティが浮かんでいる。
そんなカオスとも言うべき状況となっているのだ。
「「それはそれよ」」
だが、そんなカオスを二人は見なかったことにして受け流した。
ついでに泣き叫ぶミスティアがうっとぉしいから黙らせようとナイフと矢を乱打させたら幽々子から逃げるきっかけとなったらしく解放と同時に脱兎のごとく逃げた。
もちろん幽々子は追いかけようと思ったが逃げ際に落としたらしい大量の鰻を見て「夏バテ予防に鰻もいいわね」ということで見逃すことにしたようだ。
「とりあえず出場するならまず手紙同封のコスト表に沿ってメンバーを編成する必要があるの。
ちなみにコストは各幻想郷全てで統一されてるから私にも関与できないルールね」
プールの中で泳いでいる鰻の踊り食いを楽しむ幽々子を無視しながら、
紫は隙間を通して縁側に置きっぱなしの手紙を掴み、中から同封されていたらしいルール表とコスト一覧表が取り出される。
特にこのコスト表は、今までの走破モードや過去の大会での活躍を元にして作られたもの。
いわば選手の核を示すものだ。
強者には高いコストがかけられているが、弱者には低いコストがかけられているというある意味差別物であり、
こんなゲーム感覚でなければいろいろな団体から文句言われること間違いないだろう。
「これはまた、厄介だぜ」
ルールを覗いた魔理沙は見てゲッてうめいた。それもそのはずだ。
登録時には控えを入れてもいいが全試合を通してレギュラーの交代禁止。
装備品や陣形は全試合共通という今まで戦ってきた試合とは明様に違う形式だ。
今までは強敵とはいえ交代要員やら陣形といった作戦でそれなりの対策ができたのだが、
今回の戦いにはそれができない。
ついでにいえば敵もアイテムで強化してくるので強さがわからない。
わかるものは敵がそのコストに沿って編成されるメンバーであることだけ。
「力押しでは通じない同条件での試合。
勝負を決めるのは戦略、そしてチームワーク…
それを制する物こそが真の“スーパーシューティングプレイヤー”なのよ
果たしてそんな強者に貴方達の力が通用するかしら、魔理沙」
紫は扇で口元を隠しながらくすりと笑う…が
「何を言っているんだ。
サッカーは強いチームが勝つんじゃない
勝ったチームが強いんだ!」
「そのとおりよね、魔理沙!
面白いじゃないのよ!!
絶対に勝って賞金を持って帰るわよ!!!」
せっかくの魔理沙の決め台詞を霊夢が台無しにしてるような気がするのだが…
それこそ貧乏巫女たる由縁を知らしめる霊夢である。
しかし藍はふと思った。
「あの大会に賞金なんてあったか?」
だが、金の亡者と化した霊夢に今更そんなこと伝える勇気はない。
伝えたら最後、主である紫を守るために怒り狂った霊夢と対峙するはめになる。
となれば霊夢から
『ずっと私のターン!』とか『君が泣くまで撃つのをやめない!』とか『10回死んじゃえ!!』でボコボコにされそうである。
で、逃げたら逃げたで紫から傘で『ずっと私のターン!』か『君が泣くまで殴るのをやめない!』か『10回死んじゃえ!!』でボコボコに叩かれそうなので、
どうあがいてもたどりつく先は同じだ。
もちろん何も言わず黙っててもいずれバレることになるから、その後は逃げ道なしの理不尽な袋小路に追い詰められる運命だ。
こうなれば自腹を切って賞金を出してごまかすしかない…
やっぱりあの時魔理沙の雷獣シュートで紫様を蹴り殺してもらった方が良かったかもしれない。
いや、他力本願に頼らずいっそ自分で『式神天降神』という名の真空かかと落としを脳天に振り下ろすべきなんて物騒なことを考えはじめたが、
その後に傘で『煩悩解放108回猛連打』を繰り出す紫の姿を想像してやめた。
まともに相談できる面子が集まってコストと睨めっこしながらメンバーを選出するのを眺めながら、
藍は心の中で「橙。お前に1杯のかけそばすら満足に食べさせてやれないようなふがいない私を許してくれ」と謝りながらこっそりと涙を流していた。
それほど紫の傘殴打は痛くて怖いらしい…
という藍の心情はおいといて、話し合いの中で決まったことは
・魔理沙はキャプテン。霊夢は副キャプテンだから即決。
・控えだった中国にGK任せたら不安なので紫&幽々子の西行コンビが受け持つ
・溶けかかったチルノと瀕死のレティはとても動ける状態でないため戦力外
・ミスティアは逃げた上、大会ではメガヘタレ呼ばわりされるような選手なので外すべき
「となると…」
一部が脱落したとはいえ、決定した4人だけでもう半分近くのコストを消費している上に残りのメンバーもこれまたコストが高い面子ばかりだ。
それだけ世間では格上と認められている証であるが今は迷惑この上ない。
誰が居残り組になるか!
っと、まだ決まってないメンバーはお互いを見合わせバチバチと火花を散らせると思いきや…
「なら私は残らせてもらうわ。
よく考えればお嬢様のいないチームに加わる必要性……」
「私も抜けさせてもらう。
紫様や霊夢が不在中にもし結界に不都合があったら大変だ」
咲夜にしてみれば確かにこの大会に出場するメリットがない。
まぁお嬢様ことレミリアが出場するのであれば話は別なのだが、あいにくこの世界でのレミリアはサッカーにそれほど入れ込んでないのだ。
さらに藍は結界どうこうは確かに事実であるが、それ以上にこの大会の偽賞金を用意するための金策が目的である。
とにかく穏便に事を済ませるために、急いで霊夢の怒りを鎮めるような額を用意しなければならない。
というか用意できなければ自分がぼこられてしばらく行動不能にさせられるどころかマヨヒガの家具一切を差し押さえられ、某図書館での『もらってくぜ』 → 『もってかないで~』と同じ状況が生まれてしまう。
そうなったら八雲家の家計が火達磨となり明日の油揚げどころか橙の養育費すら危なくなる。
いや、あの貧乏巫女が黒いのと同じ程度で済むわけがない。
きっと
『これっぽっちじゃ足りないわね、娘ももらってくわよ』→『おとっつぁ~~~ん、たすけて~~』
「ちぇ、橙…
ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!」
想像だけなのだが、その“時代劇でのお約束”で霊夢に連れて行かれる橙の姿に思わず叫びだしてしまう藍。
いきなり自分の式神の名を叫びだしたので『一体何事?!』と後ずさる一同だったが、その間にも藍の頭の中では“荷馬車でごとごと市場に連れて行かれる橙”から
“小汚い格好で意地悪3人義母姉にこき使われる橙”
“獣と化したきもけーねに襲われる橙(規制物)”
“首輪を付けられて上目使いの不安そうな瞳で見つめてくる橙”
といった類の妄想が駆け巡っていた。
ついでにいえば咲夜の方も台詞の途中に魔理沙が借りて(奪って)きていたもう一つの水着、幼女でさえも着れるか怪しいミニサイズのスクール水着が目に入ったらしく…
『ねぇ~咲夜~~これ小さくない~~?』 → 『いえいえそんなことありません。きっとお似合…ぶふっ?!』 →『な、何?何かおかしいの…?』→『い、いぇ…そんなことは…で、ですが……くぁwせdrftgyふじこlp』
「「ああ~~~~(橙)(お嬢様) なんてはしたない格好を…………」」
片方は両手で頭を抱えながら上下左右に激しく揺らし、
もう片方は幸せ一杯な表情で地面に横たわって鼻血の海を生成中。
「………何やってんだ、あいつらは?」
魔理沙の言うとおり、本当に何やってんだ?である。
だがまぁこの暑さだ。
きっと脳をやられたのだろうということで、今なお妄想を続ける二人に憐みの視線を送りながら無視することにした。
もちろん文は予備のインスタントカメラを使って写真を収めることは忘れていない。
きっとこのことは号外としてすぐに広まるだろう。
といったいろいろな意味で頭をやられた変人達は置いといて、メンバー選出の話に戻ろう。
メンバー選出で最後に残ったのは永琳とてゐの永遠亭コンビ…
コスト的には別にいけないこともないのだが、二人はというかてゐが一方的にじっと永琳を見つめてる。
別に何かをしゃべるわけでもなく無言だ。
鈴仙の狂気の瞳で狂わせようとでもいうかのような空気はまるで
(紅魔館組と八雲組も争うことなく身を引いて株を上げたウサ。
ならここも永琳様が自ら身を引いて永遠亭の株を上げるウサ!)
と無言の圧力をかけているようで永琳に冷や汗が流れる。
一応二人抜けてコストが浮いているとはいえ、永琳とてゐがいればやはりコスト高になってしまいチームを圧迫してしまう。
こんな状況で二人とも残るのは好ましくないどころか、下手すれば永遠亭の株を下げることになりかねない。
「な、なら私も…製作中の薬が気になるし抜けるわ。
この暑さでアレみたいな急患が現れないとも限らないし」
もちろんアレというのは藍と咲夜のことだ。
未練がないというわけではないが、そもそもこのチームは魔理沙が中心になって結成されたチームであり永遠亭を含めた自分は部外者だ。
その部外者が自分のくだらないプライドのために永遠亭の株を下げるわけにもいかない。
チャンスはまた来る…と思いながら、永琳は夏の甲子園でベンチ入りすら果たせず号泣する少年達とシンクロしつつも身を引いた。
“こうなったら絶対水虫の特効薬を開発して私の名を知らしめてやる!!”
志はでかいようで微妙に小さいような気もするが、水虫は当事者にとってはかなり辛いのだろう。
もしかしたら永琳自身が水虫なのかもしれないが、とにかくレギュラーから外れた鬱憤を晴らすかのように燃えはじめた…が
「暑いわぁ!!」
バキッ!!
こんな暑い中で燃えられたら迷惑というもの。
霊夢の放ったミコサマーソルトが永琳の顎を見事にとらえた。
永琳は月面宙返りを決めながら後方にいた藍を巻き込みつつふっとび、咲夜にボディブレスを仕掛ける形で激突して沈黙した。
もちろん、永琳のムーンサルトを食らった藍と咲夜も沈黙だ。
「これで3人が抜けたな」
そんな光景を全く動揺することなく会話を進める魔理沙。
他に何か言うことあるのではと思うが、まぁここは幻想郷だ。
ちょっとした非日常的なことは日常茶飯事なのでもう慣れているのかもしれない。
そうしてその一部始終をプールの中で見ていたてゐはというと、鰻のぬるぬるとした感触を受けながらしてやったりという笑みとともに「うさうさ♪」と呟いている。
何せ、永琳は天才と称するだけに単純な鈴仙と違ってそう簡単にうろたえない。
心臓に毛が生えたかのような図太い神経は伊達に長生きしてるわけではないわけだが、
それだけになんとかして永琳を陥し入れたいと常日頃から考えていた。
そうして、やってきたこのチャンスに牽制的で左ジャブ的な視線での揺さぶりをかけてみたら、なんと超クリティカルヒット!!
打撃ロールをクルクル回しに回しまくって、紙上最高物理ダメージでもってラスボスを落としたどこぞの賢者風貧弱草妖精こと○ックのようだ。
とにかく、永琳は動揺したどころか失態までも見せて最後には自滅する始末。
これにはもう笑いが止まらない…がいい加減止めないと危ない兎にされるので程々でやめる。
もっともやめたところでてゐの裏の顔が幻想郷上に知れ渡っている以上、今さらであるのだが
「永琳様は退いたけど私は残るウサ。中盤の繋ぎは任せるウサ!」
こうしててゐは、コスト上位陣の自滅的な潰し合いの中でしたたかに生き残り、漁夫の利でレギュラーの座を勝ち取った。
「これでコストはずいぶん浮いたが…FWとDFの駒が足りないぜ。
とりあえずストライカーには控えだったユキとマイを入れてみるか?」
「その二人だと実力的かなり厳しくない。もっと強いのを入れないと」
「かといってあまり強すぎるとコスト圧迫するわよ」
紫の突っ込みどおり、そこが問題だ。
弱ければストライカーとして力不足であり、強ければコストオーバーになる。
何かこう二つのバランスが取れたいい人材が…
「幽々子様ぁぁぁ!!見つけました!!!
変な書置きを残して下界に遊びにいかないでくださぁぁい!!」
「こらぁぁぁてゐぃぃぃぃーー!!お使いの途中で逃げるなぁぁぁーーーー!!」
「霊夢さぁぁぁん!沼で遊んでいたチルノちゃんが変な帽子をかぶった妖怪に襲われて捕まった揚句、大ガマへの餌にされて大変なことにっ!!」
「おっ、丁度いい候補が向こうから飛んできたぜ」
お互い別々の方向からすっ飛んできた二人と一匹。
妖夢と鈴仙と大妖精を見上げながら魔理沙がにやりと笑った。
・・・少女勧誘中
「えっと、つまり私達にこの『偶然カップファイナル~』のサッカー大会に出場してほしいと」
冷たい麦茶で一息をつき、まだ余っていた西瓜の欠片をもらいながら改めて事情を聞いた妖夢はうなった。
自分としてはただ幽々子様を連れ戻しにきただけなのだが…
と横目で見ると、鰻の踊り食いが飽きたらしくてゐが焼いたらしい鰻のかば焼きを頬張っている幽々子の姿が見える。
てゐのことだ。後でぼったくり請求書が送られそうで怖いが、まぁ隣には一部始終を見てる鈴仙もいる。
自分で調理しなくても済んだから後で詐欺分のお金を回収してもらったらいいかいうことで放置した。
で、その鈴仙はというと
「私なんかがレギュラーでいいんですか?!
本当にいいんですか!!」
「チルノちゃんを助けてくれた恩返しとして精一杯頑張らせてもらいます」
一緒に飛んできた大妖精もそうだが、結構というかかなり受ける気満々だ
まぁ、サッカーに関しては散々な扱いを受けていた鈴仙(名簿ではてゐの策略によりうどんげにされている)と純粋にチルノを(結果的に)助けてくれたという恩のある大妖精は断る理由がない。
となれば流れ的に自分も引き受けるのが普通だろう。
それに魔理沙もストライカーというポストを用意してくれているし幽々子様も修行と思ってがんばりなさいというが…
どこかしっくりとしない。
しっくりこないのだが…
「妖夢も参戦するのよ!!
でないと私と一緒のコンビ技が使えないじゃないの!!
私が活躍できないじゃないの!!!」
殺気走った眼をした鈴仙が、どこぞの人形とボールだけしか友達のいない岬君が無理やり『コンビ組め』と強要してくるかのような、必死の形相で勧誘を迫ってくる。
というのも鈴仙は、妖夢がいるといないとでは活躍度が天と地程の差が開いてしまうのだ。
さらに具体的にいえば『ジャック』と『中国』の差でこの二人の隔てられた差を考えたら必死なのも頷けるだろう。
なにせ、中国が玄人好みのB級GKに対してジャックがイロモノかマゾにしか好まれないボンクラGKなのだ。
そんな、鈴仙の有無を言わさないかのようの説得に押されてつい承諾してしまった。
そう、基本真面目な妖夢にはやる気に燃える人の気勢を削ぐような真似はできなかったのだ。
「よし、ストライカーは決まった。残りのメンバーは…」
「………あつい =■●_~~」
「私の宝貝は世界いちぃぃぃぃぃ!!
私だってえーりんになんか頼らずとも強いのよぉぉぉぉ!!」
「私だって頑張ればできるのよぉぉぉぉ!!
だから私を無視するなぁぁぁ!!」
台詞の端々でわかるが上から順番にリリーBと輝夜とカナである。
リリーBは元々控えであるのと、今回後釜を継いでもらうということで咲夜が彼岸まで飛んで閻魔のとこから
(一応言っておくが死んではいない。ただ、リリーBが閻魔の管理下にいることが多いからだ)
輝夜は永遠亭に戻った永琳が自室でゴロゴロしていたところに煽りをいれて
カナは幽々子からの依頼として白玉露の留守番に加えて、収入のあてとしてコンサート開催を頼むために虹河姉妹が住まう洋館へと出向いた藍が、丁度喧嘩中だったところを
それぞれ捕まえてきてもらったのだが…
「不安ありまくりだぜ」
ちなみに魔理沙はキャプテンがいつまでもスクール水着では締まるものも締まらないのでいつもの黒い服に着替えたのだが…
DF陣のカオスっぷりの前には意味がなかったかもしれない。
ただでさえコストという問題でメンバーの半数を入れ替えざるを得ない状態。
戦力とチームワークに不安があるのに、これでは不安が倍増だ。
しかも時間的に今から別のを探すわけにはいかないのが現実。
世の中理想だけで成り立たないとはよくいったものだ。
その様に紫はくすりと笑う。
「まぁいいんじゃないの。
最初に言ったとおりこの大会は今までと勝手が違うもの
どうせ予選も勝てっこn…」
と続きを言おうとしたその紫の口元目がけて一筋の閃光が走った。
魔理沙が放ったマジックミサイルの弾丸は紫に当たることなく、口元に持ってきていた扇子だけを弾き飛ばした。
「あいにく私のサッカーに“負けるサッカー”なんてないぜ
私のサッカーは“勝つサッカー”だ!
例えメンバーが名無しだけだろうと、常に全力で正面から戦い、力で破る!!
今も…そしてこれからもな!!」
煙を吐く右手を前に突き出したまま睨む魔理沙だが紫はいたって涼しい顔だ。
新しく取り出した扇子で再び口元に持っていく。
「ふふ、若いわね」
その発言は自分がおばさんですと認めているようなものなのだが幻想郷のメンバーは紫がいい年こいたおばさんであることは百も承知。
なのでそれに関しては誰も突っ込まなかった。
「とにかく魔理沙の言うとおりやるからには勝つわよ!
勝って賞金を手に入れるわよ!!」
「動機が不純だがその通りだぜ。合言葉は“サッカーはパワー”
どうせ敵がわからないなら小細工なんて弄しても無駄だ。
なら何も考えず最初は正面からぶつかる。
壁にぶつかればその時に突破口を見つければいい!!
それでだめなら…当たって砕けろだぜ!!」
「単純ですが…確かにそのとおりですね。
正直、未熟な私は正面からぶつかるしかありません」
というか妖夢にとって、変に作戦を立てられたらうまく動けるかわからない。
なら、最初から作戦を立ててなければその分目の前でただ純粋にゴールを奪うことに専念できる。それに今回は
「妖夢。私がサイドから最大限にバックアップするから敵のゴールを奪うことだけ考えて」
「そうウサ。ストライカーらしくゴール前でただシュートを撃つだけに専念するウサ」
鈴仙はともかくとして、てゐからはびみょんに馬鹿にされてるような気もしたが気のせいにしたらしい。
というか、「決めろ」ではなく「撃て」と言ってる時点で⑨にされてるのだが、そこに気付かないところはやはりみょんである。
とまぁ、てゐの本心に気付かない妖夢は、期待に応えるためにも頑張らねばと、ぎゅっと楼観剣と白楼剣を握り絞めて気合いを入れる。
だが、そんな妖夢の決意も
「私も、チルノちゃんのように“顔面ブロック”は無理でもまわってボールをカットするぐらいなら…」
(チルノの顔面ブロックが強力過ぎるせいか、なんとなく頼りにならないのは失礼なんでしょうか?)
失礼です。
「……暑い…が任された以上全力を尽くす。
メイド長に負けるつもりはない…が暑すぎる………… =■●_~~~」
(暑いのはそんな黒い服きてるからですよ。
服をはぎとるか、袖とスカートの丈を斬り裂くべきでしょうか?)
確かに言うとおりだが、解決法として後者はともかく前者はやめろ。規制がかかる。
「私だってこの大会で一人でできるってこと知らしめるわよ!!」
(所詮ニートには無理ですよ)
否定の余地なしの断言。
「私を無視してきた連中に、私の恐ろしさをこの大会で思い知らせてやる!!」
(………………主旨、間違ってませんか?)
ボール越しなら人を殺しても許されそうなルールだ。
ある意味ではあってるだろう。
っと、残りの面子に妖夢は心の中で突っ込みを入れつつも少しくじけそうになった。
さらに、とどめとして
「本当に燃えてるわね…あ~私はボールが飛んできたらちゃんっと対処してあげるわ
だから妖夢、お弁当は特盛りでよろしく」
(ピクニック気分ですかぁぁぁ~~~~?!)
言うまでもなくそうであろう。フィールドは芝生だし
「私も飛んできたら対処はするけど、あまりボールが飛んでくるようだったらGKを放棄するから頑張りなさい」
(守るなら最後まで責任もって守ってくださいよぉぉぉ~~~~!!)
だが断る。
それがSGGK(スーパー・グータラ・ゴール・キーパー)クオリティ。
ゴール前を守る二人の発言。
妖夢はもう泣きそうになったが魔理沙はその肩をぽんと叩く。
「とにかく妖夢。お前はこのチームのストライカーなんだ
バックアップは最大限にしてやるからいつもどおり頼むぞ」
この辺はさすがは腐ってもキャプテンである。
迷いなく言い切る、その言葉に妖夢の迷いは吹っ切れた。
「わかりました。全力で頑張らせてもらいます!」
再び意気込む妖夢だが
「あぁ、いつもどおりその剣でもって高速で斬り付けにかかって敵を潰してくれ。
交代ができないなら敵を潰せたら後は楽になるからな。その後ゆっくりとシュートを決めたら楽に勝てるぜ」
逆に奈落の底へと蹴り飛ばした。
何せ、その発言は得点源としては期待してないからデストロイヤーというかレ○ィン君…
いや、潰し合いならさらに格上である勝○マンのごとく敵を潰しにかかれとも取れる言葉なのだ。
だが確かに『勝つサッカー』には反則を犯してでも敵を潰して勝ちを取りに行く姿勢が問われているし、正面から激突すれば相手も無傷では済まされないので理にはかなっている。
さらにいえば、潰し合いのない東方サッカーなんて東方サッカーではないという意見もあるが…
「どの道、私の扱いがひどいのは変わりません………orz」
所詮、みょんは低コスト帯のFWだ。まともに運用するには難しい存在なのである。
ていうか、ここの魔理沙はルール的に可能だったらガッツが切れた後は敵GKに取り付いて自分モロとも敵GKの腹を切る富○の喧嘩殺法を強要される。
もしくは、霊ガンを背中に受けて瞬間加速した後にト○ロ弟を串刺しにした桑○のごとく、
後ろから魔理沙がマスタースパークを撃ってきて敵と自分を粉砕させながらボールをゴールへと押し込まれるかもしれない…
敵は前ではなく後ろにいる……
やはり参戦するのではなかったと激しく後悔したがすでに遅かった。
「とにかく行くぜ!『黒赤マジック』!!
勝利のマジックでもって目指すは大会優勝だぜ!!」
「おぉぉぉぉーーーー!!」
落ち込む妖夢を尻目に、残りの面子で円陣を組んで士気を高めはじめる。
それらをのほほんと見つめる西行コンビ
「本当に若いわね~」
「でもやる気ないよりあった方が断然面白いというものよ。
とくに落ち込み具合なんかもう最高」
「私としては、勝ってほしいものなんですが、とりあえずチーム名は『黒赤マジック』。
略して『黒赤』として大会本部へメンバー表を提出させてもらいますよ。
開催地は幻想郷とも外界とも違う完全異空間なので、私は同行できませんが、いい朗報を期待しています」
「それについては賛同できないから善処だけはする…とだけにしておくわ」
「では、ご武運をお祈りしてますよ」
そう言い残すと文はバサッと背中の黒い翼を羽ばたかせ、空を斬り裂くように飛び去った。
その手にはしっかりと大会本部宛への大会参加通知とメンバー表が握られている。
とにかく、星の数ほど存在するという幻想郷の一つから『偶然カップファイナル~』への参加が決まった。
なお、登録時に書類で不備があったらしく少し登録に手間取ったのは余談話らしいが、
とにかく走破を制した「黒赤マジック」はまた新しい戦いの渦中へと挑むこととなった。
目指すものは野望に欲望、金や名誉と様々であるが確実にわかることが一つある。
それは大会ではまだ見ぬ強敵が潜み、「黒赤」にとって未だかつてない激戦が待っていることである。
それぞれの幻想郷から選抜された選手達が集う、弾幕よりアツイ大会…
後に過去最高規模をほこることとなるサッカー大会。
「偶然カップファイナル~』が始まろうとしていた。
後半へ続く
二番煎じはいただけねえってことで
スノーモービルは何かの間違いではないでしょうか。
点数は後半読後に付けさせて頂きます。
シュノーケルの間違いでは?