この作品は、下の方にある『蟲と花のたぶん甘い関係』の設定を含んでいます。
だけど読まなくても大丈夫です。
リグル×幽香です。苦手だったらご注意下さい。
ふわり、と風に流されてきた小さな花弁。
見つけた彼女は、空に手を伸ばして、それを優しく捕まえる。
綺麗なそれは、途端に彼女の手の平をうっすらと切り裂いて、赤い滴を浮かび上がらせる。
「………はぁ」
その玉になった血を見つめながら、彼女はその場に座り込んだ。
淡い藍色の花弁。
恐ろしく薄いその花弁は、触れるモノを容赦なく傷つける。
気がついたら、肌の何処かが薄く切り裂かれて血を流している。
そんな、美しくて恐ろしい花。
ふわり、と。
また藍色の小さな、小指の爪くらいしかない本当に小さな花弁が一つ二つ降ってくる。
その光景はとても綺麗で、そして藍色の雪が降る様な、少し悲しげな光景だった。
そして博麗霊夢は頭痛を堪える様に彼女を見る。
「……ごめん。もう一回言って」
「だから、喧嘩したんだよ……三日前に」
闇色のマントで、小さな身体を隠すように体育座りしながら、リグル・ナイトバグはどんよりとした声で言った。
話しかけるなと、全身で訴える小さな蟲の王様。
大きな木の下でいじいじと落ち込んで、涙目でぐすぐすと鼻を鳴らしている。
「……えっと、それってどういう意味で」
「幽香の馬鹿……幽香の苛めっ子……」
聞いていなかった。
もう、何を言っても無駄らしい蟲の妖怪に、霊夢は口元を怒りと気だるさで引きつらせて、ひらりとひたすらに降ってくる藍色の花弁を目で追う。
三日前に喧嘩。
成程、丁度この花弁が降り出してきた日時と、あまり大きな誤差はなかった。
ひらひらと、昨日より確実に多く、大きく、藍色の花は風に流されてくる。
藍色の、綺麗だけど痛い、この花弁。
ひらりと舞ってさくりと肌を切り裂き、赤い血を流させる。
すでに霊夢の肌の所々は血が滲んでいて、お風呂に入ると染みること間違いない。先程から意識しないだけで血の玉がぽとりと何粒か落ちているのだ。
この異変らしき現象の原因は分かっている。
こんな事が出来るのは、幻想郷広といえど限定され、その内容が花であるなら、もうあいつだけしかいない。
だから霊夢は面倒くさいと思いつつも、あの花の大妖怪の所へ飛んでいこうとして、木の下で落ち込むリグルを発見したのだ。途中で妙な勘が働いて嫌な予感はしていたけど……
「…………マジ?」
霊夢は、両手で頭を掲げて天を仰いだ。藍色の花弁がきらきらと日に照らされて降っている。
これは、本当に面倒臭い事になってしまったと、霊夢は嘆いた。
博麗神社の境内にシートを轢いてその上に座ってお茶を用意する。勿論危険な花弁避けの結界を張って、これ以上玉の肌に傷をつけないように用心して。
「……まあ、という訳で今回の異変?って、どうやらあいつらの仲違いが原因らしいのよ」
「はぁん。成程な」
「それは、面倒ねぇ」
お茶を飲みながら答える霊夢に、それは面倒な事になったと相槌を打つ、白黒の普通の魔法使い。霧雨魔理沙に、隙間の大妖怪。八雲紫の両名。
「……意味不明ね」
「えっと?」
そしていまだ事態を把握しきれていない、この異変を解決しようと積極的に協力を申し出てくれた、紅魔館代表の十六夜咲夜と白玉楼代表の魂魄妖夢の両名。
「………」
それを無言で見つめて、藍色の花弁をその白い指先で摘んでいる里の守護者で代表の上白沢慧音。
彼女は花弁を暫く調べていたが、興味を失くしたのか、ゆっくりと風に乗せて結界の外へと流していく。
そうやって、ただ静かに傍観する慧音に、数名が訝しげな顔をするが、気にしていてもしょうがないと話を続ける。
「貴方達だけで納得していないで、きちんと説明してくれないかしら?私達には意味が分からないわ」
「同じくです」
眉を潜めてお手上げのポーズをする咲夜と、控えめに挙手をする妖夢に、霊夢は「ああ」と頬を指で掻いてどこから説明しようか迷う。
よく見ても見なくても、彼女達の顔や腕に足と、あらゆる剥き出しの肌に絆創膏が大量に貼ってあって、少しだけ痛々しかった。
今回の異変?らしき切れる花弁が、幻想郷中を気ままに風の向くまま舞うこれは。
実は数々の場で大小あらゆる被害を起こしていた。
まず、博麗神社は掃除が大変だし肌が切れるし、このままではこの衣装を急遽変更しなくてはいけなくなる。
それは由々しき事態だと、霊夢と、そして霊夢以上に魔理沙が慌てて拒否して困っている。
紅魔館は特に目立った被害はないが、門番が痛がって涙目だし、中庭の花が花弁で切り裂かれて可哀想だと門番が悲しげに訴えるしで、咲夜が心を痛めて非常に困っている。
そして、咲夜にそんな事を報告されれば、咲夜を甘やかす傾向にあるレミリアが面白くなく。即刻この花を止ませるようにと、咲夜が命じられた。咲夜の仕事量が増えて困っている。
白玉楼は、この花弁でほとんど外で仕事をする妖夢が、控えめに大量に小さな傷をつくるのを、妖夢ではなくその主の幽々子が許せないと静かに怒り、すぐにこの花を止めてきなさい。だけど怪我はしないように、との命令を妖夢が受けた。
つまり妖夢が大変だ。
マヨイガは、橙が怪我をすると藍がおろおろで、その心配の分、実は橙より生傷が耐えていない藍。
何気に妖怪の肌すら切る花に、紫は藍と橙が心配で、ついでに幽香の事も気になるしで、心安らかにお昼寝ができなくて迷惑だし。
特にこの花の迷惑を相当に被っている里は、もう滅茶苦茶である。
人の肌は弱いし、家畜も作物もさくさくと切れていって暴れるわ傷つくは散々である。
こんな危険な花が、風の気まぐれ具合でそこかしらに降られると、里の人々は生傷だらけで仕事はできないわ気ままに外も歩けない。傘を差しても破れて意味がないし、それはもうあらゆる意味で迷惑していた。家畜も畑も、被害は相当に出ている。
おかげで里の守護者で相談役でもある慧音は、あちこちを駆けずり回ってほとんど不眠不休。つまり相当に疲労している。
その溜まった疲れを顔には出さないし態度にすら出さないが、この藍色の切れる花に、もし一番迷惑をしているのは誰かと聞かれれば、それは彼女だともっぱらの噂だ。
つまりここにいるのは、この切れる花に我慢できないぐらい迷惑をしている。積極的にこの異変?を解決しようと乗り出した代表者なのである。
その頼もしい代表者に、霊夢は言葉を選ぶように少しだけ黙考して。
「幽香はね。……いろんな意味で一筋縄ではいかないし苛めっ子なんだけど、話が分からない馬鹿な奴ではないのよ」
霊夢のその言葉に、咲夜と妖夢は怪訝そうな顔になる。言葉が足りず、探るような視線になる二人に、霊夢は考えながらゆっくりと話す。
「……ええ、いつもの、これが普通の幽香だったら、気まぐれとか、面白そうだからとか、そういったふざけた事でこんな事を起こすんだろうけど……その場合は、弾幕勝負の一回や二回でこの異変?は終わっていたのよ……だけどね。今度の原因は、むしろ幽香じゃなくてこいつ」
びしっと、霊夢が指差すその先、そこには実は霊夢に無理矢理引っ張られて体育座りをしていた、リグル・ナイトバグの姿があった。
「……幽香の意地っ張り……幽香の怒りんぼ……」
等と、ぶつぶつと呟いて、他の人妖の会話など聞いていない。一同に背中を向けて、まるで周りの命が消えていきそうなぐらいの勢いで落ち込んでいる。
「………まあ、予想はしていたけど」
「何というか、凄い負の波動ですね……」
あえて目を逸らして、見なかった事にしていた咲夜と妖夢は、少しだけ微妙な顔になる。
「つまり、この蟲がどうしたのよ?原因って……」
「ええ、原因よ。そしてだからこそ問題なのよ」
霊夢は「ふぅ…」と息を吐いて、喉を潤すようにお茶を一口飲む。それを見た魔理沙が「まあ、もっと分かりやすく言うとだ」と引き継ぐように言葉を発する。
「幽香はさ。色々問題も噂も多いが、そこまで話が通じない奴でも傲慢な奴でもない。弾幕勝負で負けたら潔く身を引いてくれるだけの分別と理性も持ち合わせている。だが、だ」
「困った事にね、どうやらこれ、幽香が意識して降らせている訳じゃない、まあつまり無意識の産物っぽいのよ」
ひらり、と風に乗って降る、結界の外の藍色の花を指差して、紫は隙間から上半身だけを出して微笑しながら言う。
「無意識、ですって?」
「ええ」
目を細める咲夜に、本当だと頷く紫。
「こ、これがですか?!」
「そうなのよ~」
妖夢の驚きの声に、紫は少しおどけて、だけどやれやれと肩を竦める。
人はともかく妖怪の肌すら切り裂く花が無意識とは、何とも恐ろしいものだと内心苦笑しながら。
「まあね。私も最初おかしいと思ったのよ。もし幽香が積極的に異変を起こすつもりでこの花を降らせているなら、もっと派手に、もっと大量に、もっと禍々しく、とにかく盛大に華々しくするはずなのに」
ひらり、とまた一つ降ってくる藍色の花弁。
ふわりひらりとそれは確かに多いが、大量という程の量はなく、それは確かに肌を切るが、それほど深く切るわけでもなく、花弁の色も薄い藍色の一色だけと、それは何もかもが中途半端な、異変と呼ぶのも大げさな異変。
「……そう」
「む」
成程と。
咲夜と妖夢はそれぞれ納得する。
無意識では、弾幕勝負して勝っても負けても、あんまり意味はない。
霊夢は新しくお茶を入れ直しながら「本当にね」と呟く。
「これって、弾幕勝負してすっきりすれば、即解決って問題でもないみたいで……」
紫は霊夢に入れてもらったお茶を片手に苦笑して、肩をすくめる。
「私も、さっき幽香の花畑に一度行ってみたんだけど、幽香ったら『ほっといて構わないでさっさと消えろ』って全然相手にしてくれないのよ」
霊夢と紫は揃って「ふぅ」と溜息。
この中途半端な異変?らしきものを解決しなくてはいけない立場の二人にしてみれば、本当にいい迷惑である。紫はこんなの霊夢に任せて自分はゆっくりしていたいなとも思うが、幽香の事はやっぱり気になるしと、先程から悩みまくりだ。
「……ふむ」
と、そこで、ずっと沈黙を守っていた慧音が頷いた。
「つまり、纏めるなら、原因の二人を仲直りさせてしまえば、この花は止むという事なのだろう?」
舞う花弁を目を細めて見つめながら、慧音は霊夢を見る。
「喧嘩の無意識のショックが原因で花が止まないなら、仲直りさえすればこの花が舞う道理はない」
纏める慧音に、霊夢はその通りだと頷く。
「ええ、だけどそう簡単にはいかないのよ……」
喧嘩をした二人を仲直りさせる。言葉だけなら簡単だが、それはその喧嘩中の二人が、幽香と、そしてこのいじけまくりの蟲以外ならの話だ。
意地っ張りで負けず嫌いの苛めっ子。そして幻想郷最強の力を自負する、花の大妖怪。風見幽香。
活発で社交性があり面倒見もある、実力はないが心優しい蟲の王。蛍の妖怪。リグル・ナイトバグ。
異色といえば異色の組み合わせ。
そしてどう考えても、この二人の場合、謝って仲良くなるという役割は、リグルの方なのだ。
だが、
「……どうせ、どうせ私なんか……」
只今ネガティブに沈み込んでいるこいつに、それは期待できない。
「……な、成程。やっと本当の意味で理解したわ」
「確かに、これは大変そうです」
うわぁ、と思わず呻く咲夜と妖夢に、霊夢達はうんうんと頷く。
もう何処から手をつけるべきか、考えるだけで面倒な状態なのだ今は。
喧嘩の原因すらも分からない。
リグルに聞いても教えてくれない答えない。色々と脅しても無意味だったし、何より今のリグルは「何だよ……殺すなら殺せば……けっ」といった具合に腐っていた。
紫に聞いた所、幽香も似たようなものなので、喧嘩の原因はいまだ不明。処置無しな八方塞だった。
「困ったわね」
溜息をついて霊夢。
「困ったぜ」
帽子を深く被って魔理沙。
「……困るわね」
頬に手をあてて咲夜。
「困りました」
腕を組んで妖夢。
「せめて原因が分かればねぇ」
隙間から顔だけ出して紫。
「ああ、その原因なら歴史を覗いたから私が把握している」
お茶を飲みながら慧音。
「そうよね。原因は歴史を覗けば簡単に分かるわよね………ん?」
「ああ、歴史を覗けば分かるに決まってるよな………って」
「ふぅ……歴史を覗くしか手はないって事ね、拷問してもあれじゃあ無意味でってちょっと……」
「ですよね。あれだけ落ち込んでいるのに、わざわざその口から原因を言わせるよりは歴史を………あれ?」
「隙間で弄って喋らせるのも、後で何を言われるか分からないしねぇ…………あらん?」
それで、霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、紫の一同は沈黙する。
今、なんて言ったこの半獣?
そんな疑問を含んだ戸惑いの視線の先には、温くなったお茶を飲む半獣の姿。
「ん?どうしたんだ」
首を傾げて、慧音は本気で不思議そうな顔をしていた。
そんな慧音の様子に、一同は微妙な、だけど少しだけ切ない気持ちになる。
「……あぁ、そういえばそうよね。蓬莱人をハーレムにしてる自覚無し最強苦労人で里の守護者って、それだけじゃなかったわね。この半獣」
「……ああ、そうだな。こいつの前ではプライバシーとか全然意味なかったよな」
「かなり嫌な能力よね。すっかり忘却していたとはいえ……」
「私も、何故か本気で慧音さんの能力を忘れていました……」
「……むしろ『蓬莱人に愛される程度の能力』じゃなかったのかしらと、今不思議に思う私がいるわねぇ」
一度彼女と戦った事のある一同でさえ、本気で忘却するほどに、彼女の周りの蓬莱人達は濃いらしい。
おかしいな。
歴史を隠す程度の能力って、かなりレアであれなのに……と、一同慧音から視線を逸らしたりしていたが、そこで魔理沙がポンッと手を叩いた。
「おお!そうだよそれならさ!お前がリグルと幽香が喧嘩した歴史を食べちまえばいいんだよ!」
名案とばかりに顔を輝かせる魔理沙に、慧音はその通りだと「うむ」と力強く頷く。
「だが、見るからに不味そうなので食べたくない!絶対に断る」
一言で全く躊躇なしに拒否された。
勢いに乗っていた魔理沙は顔面からずっこけて煙を巻き上げる。
「おーい!里の守護者ー!歴史の半獣ー!」
「拒否する」
きっぱりだった。べちべちと魔理沙に叩かれても平気そうだ。
「………えっと、駄目だって」
「そうみたいねぇ」
ちょっと期待していた霊夢と紫は、本人が嫌なら無理強いできないなぁと、ちょっと残念だった。
「というか、歴史に味ってあるの?」
「……あるんじゃないでしょうか?そういえば幽々子様もそれを気にしてましたけど……」
咲夜と妖夢はそう言って、少しだけ会話してから同時に顔を見合わせる。
彼女達は、霊夢達と違い仕えるべき主がいる。そして主達からの直々の命とはいえ、この件にあまり時間をかけたくない。早めに事態を解決できるなら、それに越した事はないのだ。
他の面々より少しだけ余裕がなくなってきた二人は、お互いそれに気づいて、頷く。
「あの、慧音さん」
「む?」
「食べないなら食べないで、あの二人の喧嘩の原因を教えて欲しいんだけど?」
早期解決を目標に立てた二人は、ずいっと慧音に身を乗り出す。
その様子に慧音は、少しだけ逡巡して、
「……別にいいが」
と、目を細める。
そしてじっと二人を見つめる。
「だが、後悔しないか?」
それは、思わずぴくりと指先が動いてしまうような、そんな質問。
「……当然よ」
「はい」
それがどういう意味の、どういう警告かは分からないが、この半獣が言うのだから、それ相応の意味を含んでいるのだろう。
だがそれを理解しながらも、構わないと覚悟を決めた二人の顔に、慧音も「分かった」と頷く。
そんな、異変を真面目に解決しようとする咲夜と妖夢の後ろで「あらあの二人が異変?を解決してくれるみたいよ」とか「おお、それは楽しみだぜ!お手並み拝見だな!」とか「ああ、それは良かったわ」な会話をする紅白と黒白と隙間がいたが、慧音は気にしない。
「では、説明するとしよう」
どうせ、後方の三人は、不真面目を装っているが、その実きちんと聞いているのだから、注意をしてもしなくても同じなのだ。
慧音は目を閉じて、三日前のそれを、言葉に変えて唇から流していった。
それは、三日前の夕焼けが赤々と綺麗な、多彩な花降る丘での事。
幽香はぼんやりと、自分の右手を柔らかく握って眠るリグルを見下ろしていた。
少しだけ遊び疲れていた彼女は、猫みたいに丸くなって、黒いマントを毛布代わりにきゅっと抱きしめて眠っていた。
その寝姿は愛らしく、幽香の表情は少しだけ優しげなものになるが、そのすぐ後で、どこか不機嫌そうに変わる。
そう、不機嫌そうもなにも、彼女は本当に不機嫌だったのだ。
「……ふん」
気に入らない
ここにきてはっきりとそう思ったらしく、彼女は更にそれが気に入らなくなってくる。
くるくると日傘を回す。
リグルはすやすやと、幽香の右の手を握って、丸くなって寝ている。
そう、右の手だけを握ってマントに包まって眠るリグル。
青々としたここの草原は、彼女にとって居心地のいい寝床になるらしく、本当にぐっすりと熟睡している。
「…………」
気に入らない。
気に入るわけがない。
幽香は回していた日傘を大事そうに草原へと置くと、ゆっくりと空いた手をリグルに伸ばす。
向かう先はリグルの、
闇色をした毛布代わりのマント。
ぐいっと引っ張る。気に入らないと思っていたので、余計に力が篭っていた。
「―――ぐえっ?!」
ぎゅうぅぅぅ、とばかりに急激に首が絞まって、リグルは急激に覚醒する。
それに気づいた幽香もマントを離すが、リグルはげほごほと暫く咳き込んで、慌てて涙目で起き上がる。
「ち、ちょっと急に何するんだよ幽香?!うわ、これ絶対首に締めた様な跡がついてるよ!」
「ええ、気に入らないのよ」
「いきなりっ?!」
わけがわからないと、リグルは目を白黒させる。
寝ていたらマントを引っ張られて起こされて、不機嫌な顔で気に入らないと文句を言われた。謝罪は一切なしでだ。理不尽すぎる。
「……いや、何の話だよ一体?」
「それよそれ」
「はい?」
それ。
幽香が憎々しげに見つめるその先には、闇色の風に流されるマント。
「……え?」
更に訳がわからなくなって、リグルは混乱する。しっかりと目も頭も冴えたけど、意味が分からないのは仕方ない。
「……幽香?」
「リグル、どうして私という存在が隣にいてあげているのに、マントを抱きしめて寝ているのよ?」
「はぁ?!」
不機嫌そうな幽香の顔は、冗談でも意地悪を言っているわけでないとリグルに伝わらせて、リグルは自分のマントを両手で広げる。
幽香はそれが気に入らなかった。
私は右手だけで、マントが全身。
気に入るわけがない。というか、物に、しかも本来は雨風をしのいだりするマントにやきもちを焼くなどある意味で信じられない。幽香の気持ちに気づいたリグルは、少しだけ嬉しいような、だけど困ったような気持ちになる。
「……えっと、いやほら、マントに包まると気持ちいいし」
「私の方が気持ちいいわ!」
「いやそれは、って色々と凄い事を言わないでよ!今自然に答えそうになったじゃないか!」
「うるさいわね!だからとっととマントを捨てなさい!」
「無茶言うなー!」
愛用のマントを捨てろと言われて、流石にリグルもちょっとむっとして、びっしと幽香の隣に置かれた日傘を指さす。
「なら私も言うけど、幽香の日傘だってどうなのさ!?」
「……何ですって?」
意外な反撃に、ちょっと虚をつかれた幽香。それにリグルは畳み掛けるように続ける。
「ずっとずーっと幽香に持たれて回されてるその日傘!私が隣にいてもいなくても、この日傘だけは大事にしててさ!私のマントより幽香の日傘の方が、私は気に入らないよ!」
「何ですって?リグルこそ、そのマントを毎日片時も欠かさずに、大事に使っているじゃない!」
「マントなんだから当たり前でしょうが!幽香こそ私より日傘ばっかり大事にしてて、私より日傘が大事なのかよ?!」
「っ!!リグルこそ、私よりマントが大事だというの?!」
ぶわぶわと、二人の周りに、いつの間にか現れた花や蝶がくるくると舞い始める。
「ふざけないでよ!そんなの幽香の方が大事に決まってるじゃないか!そんな事を疑うくらいに、幽香は私が信用できないわけ?!」
「リグルこそふざけないで!私だってこの日傘は手放したくない大事な物だけど、リグルほどじゃないわ!そう言うリグルこそ、私の想いを見くびらないで!」
二人はお互い、怒りの表情で睨み合う。
ぶんぶん、ふわふわと、二人の周りが先程よりも騒がしくなる。
「幽香こそ見くびらないでよ!幽香より私の方がもっとずっと幽香を好きって気持ちは大きいんだからね!」
「何を言っているのよ貴方はっ?!とうとう頭がいかれたのかしら?そんなの私の方が上に決まっているでしょう!」
ごうごうと、花弁と虫が二人の間を舞っている。二人の昂ぶった感情に興奮したように、二人の周りは盛大に騒がしかった。
リグルはむっかーとした顔で、真っ赤になる。
「私の方が、ずっと幽香が好きって気持ちは強いし大きいよ!それこそ幽香に負けるもんか!」
「いいえ、私の方がリグルを好きという気持ちが強くて大きいわ!潔く認めなさい!」
「私だよ!」
「いいえ私よ!」
これは、
これだけは譲れないし譲らない。
譲られない両者は、とうとう爆発して。ぷいっと顔を逸らしてそっぽを向いてしまう。
「何だよ幽香の馬鹿!もう知らないよ!ふん!」
「こ、こっちこそもう知らないわよ!リグルの分からず屋!」
そして喧嘩別れ。
二人はずかずかと正反対の方向へとそれぞれ歩いて、そして勢いよく飛んでいった。
そして藍色の切れる花は、その日の夜から降り始めた。
「と、こういう事があったらしい。って、ああほら。だから後悔するなと言っただろう?」
全てを話し終えた慧音の視線の先。
そこには、がっくりと地面に両手をついて項垂れる咲夜と妖夢の従者の姿があった。
そして、その後方で地面にべったりと倒れ付している魔理沙と、さらさらと口から砂を吐いている霊夢。そして隙間から痙攣する手だけを出す紫だった。
「な……」
「……ぐっ」
「っ!」
な、なんだそれはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
霊夢と魔理沙と紫は、がばりと我に返ると、心中で叫ぶ。
後悔するとかいうから、どんな内容かと思えば、後悔の意味合いが違うわ!!
なにその痴話喧嘩?!惚気、というか自慢というかもう砂を吐くわ、アホらしい!!
というか、この世にそんな『私の方が貴方を好きだ!』などう考えてもイチャついてる本気の喧嘩があったこと事態に驚きだよ畜生!羨ましい!
魔理沙は霊夢を、霊夢は紫を、紫はただ頭を抱えて、深く呻く。
「……くぅ」
「………っ」
そして、がっくりと項垂れていた咲夜と妖夢は、ゆっくりと顔を上げると、その頬を流れる涙をそっと拭う。
「感動だわ……」
「……なんて素晴らしい」
はいっ?!
予想外の二人の反応に驚愕の三人。
従者の二人は、溢れる涙を止められずにくいっと目元を拭う。
「なら、仕方ありませんね……」
「ええ、これは私達にどうにかできる問題ではないわ」
「いやいやいや?!」
「ちょっとなに言ってんのよあんた達?!」
魔理沙と霊夢の突っ込みに、咲夜と妖夢はふっと、どこか大人な感じで微笑む。
「分かってないわね」
「この件は、部外者がおいそれと立ち入ってはいけない、そんな問題なんです」
咲夜と妖夢は、そう力強く宣言すると、それぞれ空を見上げる。
藍色の花が、ひらひらと降り注いでいる。
その瞳には、すでにこの花に対する敵意も嫌悪感もなかった。
「そう、私も美鈴とそれぐらい、いえそれ以上に……というか、美鈴だってきっと私の事を」
「幽々子様……私は、私は!ずっと貴方の事を、蜂蜜だって水飴だって……!」
そしてぽっと頬を赤らめて、突然えへへとばかりに笑いだす従者の二人。
どうやら、リグル達と似たような経験をすでに迎えているらしい。
………ああ、幻想郷は、ある意味でもう駄目なのかもしれないと、この時三人はちょっと思った。
「じゃあ帰るわ」
「失礼しました」
そしてくるりと振り向いた時、そこには真面目な顔をしているメイドと庭師がいた。先程のえへへな顔が微塵もなかった。
「はやっ?!」
その豹変振りに、思わず魔理沙が突っ込む。
「いや、ここで帰るってあんたら本当に何しに来たのよ?!」
霊夢も思わず怒鳴ってしまう。だが、咲夜と妖夢はまたしてもふっと、大人の余裕を滲ませて笑い、霊夢の怒声をただの風として受け止め受け流した。
「いいこと霊夢。これは二人の愛の問題なのよ。私達に出来る事などないわ。それに、私はとっとと紅魔館に帰ってこの花で傷だらけだろう美鈴の手当てをしなくちゃいけないのよ」
「はい。これはあの二人の乗り越えるべき、愛の試練なんです!そして私は幽々子様のおやつの時間ですし、幽々子様になるべく早く帰ってきてねと可愛くお願いされているので、即行で帰らせて貰います!」
咲夜と妖夢は、
じゃあそういう事で!とばかりにびしっと片手をあげると、そのままふわりと空に浮く。
「おいこら待てお前らぁぁぁぁ!」
「意味分からないわよちょっとぉぉぉぉ!ていうか本気で何しに来やがったぁぁぁぁ!」
そんな二人に怒鳴る霊夢と魔理沙。
紫は既に隙間に沈んでいた。
「ふっ。そうね、いつか分かるわよ貴方にも、この意味がね」
「大人の余裕で笑うなむかつく!というか解決しなくていいのかよ?!この花にはお前らだって困ってたんだろうが!」
「別に構わないわ。美鈴の手当てをすればその分、いつもより美鈴と触れ合えると気づいたし。たった今」
「今かよっ?!」
「私も構いません。その時は室内の仕事を片付けますから。それに、その方が幽々子様の近くに控えられると気づきましたし。つい今しがた」
「ふざけんなぁぁぁぁ!」
怒鳴っても、二人は既に愛しき人?の元へと向けて、こちらに背を向けて飛んでいった。
「くぅ……何か色々負けてる気がして悔しいぜ」
「ええ、何かしら?この胸を襲う切なくて抑えられないこの衝動は……!」
「……ええ、もういいから、放っときなさい」
再度隙間に沈み込んでいた紫は、何とか復活してぐったりと首を振る。
普段相手を翻弄しまくる隙間妖怪は、翻弄される事には馴れていなかった。
そんな士気が下がった三人を、傍観という形で見守っていた慧音が口を開く。
「ほら元気を出せ。あの二人の喧嘩の原因はともかく。喧嘩の結果でこんな異変紛いな事が起こってしまったんだ。ここで腐っているより解決の糸口を探った方が、よっぽど建設的だし心にも優しいぞ?」
流石に、慧音先生と呼ばれるだけあった。
諭すように、宥めるように、励ます口調でそう言って、苛立って短絡的だった霊夢と魔理沙をいい感じに落ち着かせる。
紫も、もう帰ろうかなぁとかマジで考えていたけど、とりあえずは帰っても藍が「ちゃんと仕事して下さい!」とか言って、寝かせてくれないし煩いだけだと考え直して、やれやれと項垂れる。
「……はぁ」
「それもそうね」
そうだな。霊夢の素敵巫女服の為に頑張ろう。
掃除大変だしね……
魔理沙も霊夢も、自分達の目的を思い出して、冷静になる。
「うむ」
それに慧音は満足そうに頷く。
こうして、蟲と花を仲直りさせようと、おかしな異変?を解決するメンバーは決まったのだ。
霊夢と魔理沙は、弾幕勝負で終わらせられればいいのになぁとか、乙女心と仲違いするカップルは面倒だなぁとか、ちょっとだけ思った。
まずは仲直りする為の情報を集める。
悲しい事に、ここの一同は人付き合いとか恋愛とか、そういう方面に弱いというか、価値観がずれていたりして、参考にならない事がほんの少しの話し合いで判明してしまったのだ。
魔理沙が、慧音が歴史を覗いて、これと似たような事例を探って、仲直り方法を調べるという案もでたが、慧音があんまり誰かのプライベートな歴史は見たくないと、困ったように言うので、無理強いはできないとそれは最終手段として却下に、なので全員で飛び回って、知人から情報を集める事になった。
霧雨魔理沙の場合。
「という事なんで、ここの本の中にそういった喧嘩の仲直り方法とか書かれてるのないか?」
「…………」
紅魔館内にある、ヴワル図書館の主パチュリー・ノーレッジは、またしても騒々しく図書館内に入ってきた白黒鼠に眉を潜めて、そして魔理沙の事情とその内容を聞いて、本を持ったまま机に額を押し付けて、ぐったりと力尽きていた。
「………うん。その気持ちは分かる」
魔理沙が遠い目になって、そんなパチュリーを見守る。
「……くっ。砂どころか、砂糖を吐きたくなったわ……」
口元を拭って、馬鹿じゃないのと呟く知識人。
「ああ、本気でその気持ちはよっく分かる。盗み聞きしてるそこの小悪魔もショックでのびてるしな」
「……悪魔にとっては刺激が強すぎたみたいね。甘さの」
パチュリーはやれやれと本を持ち直すと「そうね……」と呟く。
そんなパチュリーに期待するような目を向ける魔理沙に、彼女は内心溜息をつきたくなりながら、素直に答える。
「悪いんだけど、確かにそういった内容の本はこの図書館内に実在するのだけど、これは持って行かせるわけにはいかないわ」
「はぁ?おいおい、何だよそれは?というかそんな言葉で私が止められるとでも―――」
「流石にそれを持ってったら、その歴史の半獣に貴方の今までの悪行を報告して、貴方のプライベートでプラトニックな歴史を教えて貰う事にするわ。あの半獣はフェアだからね。それなら仕方ないかと素直に教えてくれそうよ」
「よし仕方ないな。理由を聞いて納得したら今回だけは手を引いてやろう」
魔理沙は青い顔でフッと笑う。パチュリーは内心、この手が使えるのは今回だけだろうなぁ、次はどうやって持って行かせない様にしようかなーと、ちょっと考えながら答える。
「簡単よ。紅魔館にも、そんなアホな喧嘩をしそうなのがいるでしょう?」
「……………」
魔理沙。考える。
門番の前で、妖怪の肌すらさっくりと切る花に感謝してるんじゃないかというぐらい、嬉しそうだったメイド長と、手当てされてそれだけで嬉しそうな中国の姿を。
「……ああ、それじゃあ仕方ないな」
「ええ、絶対に確実に似たような事が起こるわ。というかちょっと起こった事もあるし、そういう本は手放せないわ」
うん。それじゃあ本当に仕方ないと、魔理沙らしからぬ理解と広い心で頷く。
ああもう嫌だなぁバカップルって。と魔理沙とパチュリーは似たような顔でうんうんと頷く。
「ところで魔理沙?……本を持っていかないなら、そうね、お茶くらいなら出してあげるわよ?」
「ああ悪いなパチュリー。この異変は地味だけど放っとくと色々面倒そうなんで、早期解決が望ましいんだ。また今度誘ってくれ」
「……………そう」
「ああ」
じゃあなと魔理沙は手を振って、今回だけは本当に本を一冊も持っていかずに図書館を去っていく。まるで台風のような彼女に、パチュリーは少しだけ本を握る手に力を込める。
「……鈍感」
「まあ、白黒ですから」
やれやれと、いつの間にか復活した小悪魔は、パチュリーにお茶を用意しながら「まあ、私はその方が都合いいですしね」と、聞こえない声で呟いて、不機嫌そうな我が主に優しく微笑んだ。
博麗霊夢の場合。
「というわけで、一応は長生きしてるあんただし、何かない?」
「………ねぇ霊夢。私も寝ている所を陰陽玉で乱暴に起こされて、しかもここまで我が物顔でベッドに座られたりすると、いくら相手が霊夢でも怒ったりするのよ?」
ぴきぴきと寝起きの悪い吸血鬼、紅魔館の主レミリア・スカーレットは青筋を立てる。
「そうね。悪かったわごめんなさい。それで何かある?」
「あのね霊夢。いくら私でもそこまで棒読みで心が篭ってないと、例え霊夢でも許す気になれないのよ?」
もういまにも運命砕いたろかという勢いのお嬢様に、霊夢は「短気ねぇ」と呆れて、しかし一応は私も悪いかもしれないと殊勝にも反省する。
「分かったわレミリア」
ぽんっと霊夢は微笑み、両手を広げる。
「抱っこしたげるからこっちに来なさい」
「あのね霊夢。いくら私でも抱っことか子供扱いされて嬉しがるわけがないでしょう?強く抱きしめなさい。いえ抱きしめて下さい」
吸血鬼は非常にちょろかった。
一瞬で機嫌が直って、今は霊夢の腕の中のびのびとしている。
ああ、吸血鬼がこんなんでいいのかしらとちょっと考えて、まあいいか便利だしと頷く。
「それで?」
「そうね。咲夜と美鈴が似たような喧嘩をした事はあるわ」
「ああ、やっぱり?」
してると思ったわ、と霊夢は嫌そうな顔で頷く。あの顔はそんな顔だったよ、と博麗神社から飛び立った咲夜の顔を思い返す。
「ええ、フランが美鈴にじゃれていたんだけどね」
レミリアは霊夢の首に腕をまわしてごろごろしながら「確か…」と唇に指をあてる。
「それを咲夜が見つけて『やっぱり幼女がいいというの?!』と殺人ドールよ」
「待てなにその脈略のない怒り方?」
「フランは無傷で美鈴が重症だったわ」
「……そう」
「フランがとっても機嫌よく楽しそうに笑っていたからお咎めなしで」
「……へぇ」
「どうやら、その前日に美鈴に私の添い寝を頼んだのが原因らしいわ」
お前のせいかよ。というかいい年して何してやがる吸血鬼。
霊夢はべちっとレミリアを落とした。
「い、痛いわ霊夢」
「ええ、それでどうやって仲直りしたわけ?あの二人」
「鼻がひりひりするわ。……ええ、簡単よ。運命をちょちょいっと―――」
「ズルすんなそこっ!!」
「あ!ごめん冗談よ霊夢!流石にあの二人の運命を動かすわけがないじゃないの!私は自然な形が好きなのよ!」
ぱたぱたと羽を動かして巫女から回避運動しながら、レミリアはちょっとふざけすぎたなと内心ちょっとだけ舌をだす。
「つまりね。二人に休暇を与えてきちんと話し合わせたのよ」
「………へえ?」
成程。それは中々にいい方法だ。確かにまずは話し合って、お互いの気持ちと意見を確認しあわなければ意味がないと、あんまり人付き合いも喧嘩もしない巫女は頷く。
少しだけ目の色を変えた霊夢に、レミリアはそうそうと、完璧に思いだした顔で霊夢の傍に降り立つ。
「二人の様子を水晶に映して、それをパチェ達と眺めてお茶を飲んでいたわ」
「従者の喧嘩を見世物にお茶って……」
「凄まじかったわ。主に咲夜が」
ナイフと血の嵐よ、とレミリアは懐かしそうに頷く。
「……まあ、いいわ。参考にはなったしね」
納得はいかないけど。
そんな霊夢に、レミリアはうふふとまさに悪魔な感じで微笑む。
「それでね霊夢。そろそろあの隙間妖怪の事は諦めて、私と一緒に―――」
「ありがとう失礼したわ」
「あん、つれないわ霊夢~」
ぱたぱたうるさいお嬢様をベットに投げ込んで、霊夢はさっさかと部屋をでる。
「もう!」
お嬢様はちょっと面白くなさそうな顔をするが、未だに眠気は取れないし、だるいので、しょうがないからまた今度にでも霊夢を口説こうと、少しだけ霊夢の香りが移った自分の身体を抱いて、ベットに潜り込んでゆっくりと瞼を閉じた。
八雲紫の場合。
「という訳なのよぉ」
「へー。そうだったのぉ」
のほほんと驚く幽霊のお嬢様に、紫は深刻そうにうんうんと頷いてみせる。
「無意識レベルの力を隙間で抑えることはできるけど、ちょっと反動が怖いのよねぇ」
「そうね~」
「ああ、それにしても痴話喧嘩とか、勘弁して欲しいものだわ」
「あら~?」
そこで幽々子は少しだけ意地悪そうに笑うと、にこにこと紫に近付いた。
「貴方が言うの?それ」
「は?」
憮然として意味が分からないという顔をする紫に、幽々子はクスクスと笑う。
「またまた~貴方も、貴方の式とよくこういった喧嘩をむぐ」
「幽々子ぉぉぉぉ!!」
慌てて口を塞いで、紫は妖夢に聞かれなかったかと首を左右に振る。
「もう、苦しいわねぇ。妖夢が、貴方が本気で頭を抱えてて珍しかったって言ってたから、やっと自分達のあれが恥かしい痴話喧嘩だったって気づいたと思ったのに」
「気づいたわよほっといて!」
紫のそれに、幽々子は満足げに「うふふ」と笑う。
昔から、そう、本当に昔から紫と藍の痴話喧嘩に巻き込まれてうんざりしていた幽々子の、ささやかで心満たされる、小さな復讐劇だった。
「確か~、一緒にお風呂に入らなくなったとか、構ってくれないとか、料理を作らせてくれないとか、最近甘えてくれないとか~」
「ああ!?そ、それ以上はやめて本当!」
耳を押さえる紫に、幽々子は心底楽しそうないい笑顔で近付いて、逃げられない様に後ろからぎゅうっと抱きしめる。
「うふふ~。他にもあったわよねぇ、一番傑作なのは」
「いーやー!自覚した後に聞かされるのは嫌ー!古傷をフォークで抉られてる気分なのよぉぉぉぉ!」
「や~ん。紫を苛めるのは久しぶりね~」
「くっ!!いつか絶対に苛め返す!!」
ぎゃあぎゃあきゃあきゃあと、騒がしいその一室を、妖夢は離れた所から眺めて、にこにこしていた。
「そっかー。藍さんも紫様と痴話げんかしてたのか」
何だか仲間が出来たみたいで、妖夢は今度藍さんとゆっくり話しをしてみようと、おやつの準備を再開するのだった。
慧音の場合。
「突然だが、恋仲と仲違いを(リグルが)してしまったんだ。……どうすればいいだろう?」
真剣な顔で、少しだけ寝不足で鈍った頭を無理に動かして我が家に帰ってきた上白沢慧音は、寛いでいた蓬莱人達にそう聞いた。
「は?」
「へ?」
「あら、やるわね慧音」
嵐の前の静けさ。
輝夜はむしろ楽しそうに手を鳴らしたが、妹紅と永琳は硬直していた。
「……ああ、私も今回の事は経験がないので分からないんだ。それで三人の力を借りたくてな。どうすれば、私は(あの二人の間に)愛を取り戻せるのだろう?」
まさに爆弾。
そして最高の火薬の山に素敵に引火。
ここでの詳しい話は割愛するが、とりあえず家が全壊しかけてぼろぼろになったが、里の若い者達がここぞとばかりに名乗りをあげて、この花の雨の中。夜までに完璧に直してくれた。
慧音は、里の人間達のその想いと行動力に感動のあまり涙し、蓬莱人達はいまだ混乱していたりと、いい話なのかアホな話なのか分からない展開が続き。やっと誤解が解けた時にはすでに集合時間だった。
「………おや?あっという間だったな」
「ご、ごめんけーね」
「私とした事が、取り乱してしまって……」
「本当よ二人とも。冷静な私がばらばらに巻かれる弾幕を消さなかったらどうなっていたか」
ふぅ、と溜息をついて慧音の腕にしがみ付く輝夜に、悔しげに歯軋りする妹紅と永琳。
まさに輝夜の言葉通りだからこそ、反論もその行動への文句も言えなかった。
「いや、主語を抜いて質問してしまった私も悪い。二人ともすまなかったな。そして輝夜殿には感謝してもしきれない」
「あら、慧音の為だもの。気にしなくてもいいわ」
「輝夜殿……」
じーん、と輝夜のそれに感動する慧音に、危ないものを感じた妹紅と永琳は、目を見合わせて一気に二人に詰め寄る。
「そ、そうだよけーね!それで蟲と花の妖怪を仲直りさせるんでしょう?!」
「むぐっ?」
「そ、そういったケースの場合は早めに処置した方がいいわ!お互い意地を張ってもいい事なんてないもの!」
「うぬっ?」
輝夜が慧音の右腕に、妹紅が慧音の左腕に、永琳が慧音の背中に回って首に、それぞれ手をまわして引っ張る。
「……お?」
何故にこの体勢に、と流石の慧音も思った。
「そうねぇ。それは私も永琳の言うとおりだと思うわ。このままだと自然消滅とかになりかねないし」
「そうだな、やっぱりさ、こういうのは早めに謝って仲直りして、さっさと笑い話にした方がいいよ?」
「ええ、話を聞いた限りでは、どちらかが謝罪すれば、それだけで解決してしまう異変のようだし」
……成程。
つまりは、とりあえず早めに謝るのが一番いいと、そういうわけだ。
頼もしい蓬莱人達のそれに、慧音は感動と息苦しさと体中にあたる柔らかな感触に、ちょっと意識が遠くなりかける。
「だから、ね、慧音」
輝夜は怪しく微笑むと、慧音の腕に更に限界まで縋りつく。
「もし慧音が浮気しても私は許してあげるわ。喧嘩をしない仲良し夫婦になりましょうね」
「って、ふざけんなぁぁぁぁ!!」
「ひ、姫!流石にその発言は私も許容できませんよ!」
ぎゅうぎゅうでむにゅむにゅ。
慧音はかなり苦しくなる。
もしかしたら、地獄とはこういうものなのかもしれないと、無意識に思った。
ちなみに、慧音を見る若い男達の視線は、すっごく羨ましそうで嫉妬が混じってたりした。
中には男泣きをしているものもいる。
里の守護者は、とりあえず、他人の恋の仲より、自分の方を解決すべきなのかもしれない。
三日前のような、赤々した夕焼けの下。
リグル・ナイトバグは、目の前に立って微笑む少女達の前で、自信なさ気にのろのろと立ち上がった。
彼女にも分かっている。
虫達が知らせてくれた。
彼女達が自分達の為に飛び回ってくれた事も、このままだといけないと。この胸が掻き毟られるような、今すぐに走り出して、自分を傷つけたくなる様な感情を消す方法を。
「……だけど。私は」
自信なく俯くリグル。
あんな事で取り乱して怒鳴って、こんな矮小でつまらない自分を、幽香は許してくれるんだろうかと、不安で一杯だった。
そんなリグルに霊夢が近付く。
「馬鹿ね。レミリアが言ってたけど、まずは話し合いが大事なのよ?まずはじっくりと話し合いなさい」
逃げてないでね。と付け足して、霊夢はリグルにお饅頭の入った袋を差し出す。
幽香と一緒に食べろとの事らしい。
「……」
それを受け取って、だけどいまだ涙で濡れた瞳をあげると、今度は慧音が近寄ってきて、優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫だ。彼女達から教わったのだがな、早めにきちんと謝って、そして仲直りをした方が絶対にいいらしい。だから頑張れ」
慧音は、そういって懐から何かを取り出すと、それをリグルに渡す。
「……これ」
「うむ。里の近くの泉の水だ。これを持って、長話をする勢いで頑張るんだ」
「……ん」
こくりと、少しだけ前向きに頷いたリグルに、慧音は優しく満足そうに微笑んで、また頭をくしゃりと撫でる。
そして一歩だけ離れて、並んで立つ魔理沙と紫に場を譲る。
魔理沙はやれやれと肩を竦めて、こつんとリグルの頭を小突く。
「おいリグル。知ってるか?」
「……え?」
「お前らみたいなちょっと派手で馬鹿な喧嘩を、実はここに来てた咲夜と妖夢の二人は、とっくの昔に経験してたんだとよ」
「え?」
目を見開いて驚くリグル。
それに、魔理沙はにかっと笑い「事実だぜ」と付け足す。
「それはもうすっごい喧嘩でさ。中国の奴重症だったってよ」
「幽々子の所も凄かったわよ『幽々子様は私より蜂蜜は水飴や食事が好きなんだー』ですって」
紫もクスクス笑って、だけど胡散臭くない、いつもと違った不思議な微笑を浮かべる。
「つまりはそういう事なのよ。蟲の王様。咲夜も妖夢も、喧嘩して仲直りして、あんなに嬉しそうに彼女達の所へと帰っていった」
「……」
朝の光景が、リグルの頭の中で蘇る。
二人は、嬉しそうに、大好きな人が待っているからと、飛んでいった。
落ち込んでいたリグルでも、眩しいと思えたその背中。
リグルの瞳に、久しぶりに、少しだけ光がともった。
紫は、不思議な微笑を浮かべたまま、不思議な声色で、楽しそうに優しそうに、笑って続ける。
「つまり、まだまだ大丈夫。貴方達は全然大丈夫。後は貴方が勇気を出して行動すれば、貴方達はすぐにでも元に戻れる。幽香も、こんな悲しい雨を降らせなくてすむ。だから行動しなさい蟲の王。閉じこもったお姫様を目覚めさせるのは、貴方の役目なのよ?」
ひらりと、すでに慣れてしまった、あるのが当たり前の様になってきた、凶器の花。
触れると痛い。幽香の花。
リグルの目に、完璧で強い光がともる。
そうだ。彼女はずっと、こんな悲しい雨を降らせている。
ただの一瞬も、これは止まない。
その花が、まるで幽香が泣いている。まるで幽香の涙のように、リグルには見えて。
とん!!
彼女は、蟲の王様はまるで駆け出すような勢いで飛び立つと、魔理沙が思わず口笛を吹くような速さで、マントを翻して飛んでいった。
「人騒がせな蟲と花ね」
「ああ、本当だ」
「はっはっは。次の宴会は罰としてあいつらに隠し芸でもさせるか!」
「ふふっ。それは楽しみね」
日は沈んで、三日月が浮ぶ夜空の下。彼女達はリグルの飛んでいった花畑を、それぞれがそれぞれの表情で見つめて、ゆっくりと背を向けた。
悲しい花の発生地は、近付いただけで傷だらけになるぐらいに、その花で一杯だった。
ざあざあと、花が生まれて止まない。
「………」
生んでいるつもりはない。操っているつもりもない。ただ、暴走しているだけ。
ぽっかりと心に穴が開いたような、そんな錯覚を幽香は胸に生んで、それが苦しくて、それを放出しようと無意識に花が生まれて、止んでくれないだけ。
ああ、もう。
幽香は気だるげに三日月を見上げる。
綺麗だった。
彼女は日傘を手に持って、だけど差さずにただ持って、立ち尽くす。
ずっとずっと思い出して思い返すのは、あの時のこと。
何で、あんな事を言ったのか、幽香にも分からなかった。
喧嘩の原因は、リグルのマントが、気に入らなかったから。
彼女をずっと包む、あの黒い布が気に入らなかった。
馬鹿馬鹿しいと、幽香は首を振る。だっておかしい。着ている服に嫉妬するなんて、どうだというのだろう?そんなの頭がおかしい。
いつから、私はここまで馬鹿になったのか……
ざあざあと、花がどんどん生まれていく。
月と星が照らすだけの暗い花畑は、賑やかで寂しかった。
「リグル」
貴方は、今どうしているのだろうかと。
そんな感傷的な、弱い事を考えた。そんな時に、花の流れが不規則に変わった。
ざあっ、
「いったたたたたたたた!!!!」
ごろごろと、目の前を黒い物体が通り過ぎていった。
「………え?」
黒い物体。そんなの、それが何で誰なのか、幽香がわからぬ筈がない。ごろごろと転がって、それは「い、痛いしこれ!というか何で花がこんな危険なんだよ!理不尽だよ!」とマントを翻して、彼女はふらふらと立ち上がる。
おかしいな。
幽香は、ぼんやりと信じられない気持ちでそう思う。
そこに、すぐ傍に彼女がいる。何故かここにいる。ここに立っている。
それだけで、あれだけコントロールできなかった花が、少しだけ弱くなって、量が減ったのが分かった。
「さて、と」
ぱんぱんと埃を落とすように、リグルは身体をはたくと、こほんと咳払いして、幽香に向き直る。
三日月の下、悲しい花散る花の園で、蟲の王は薄く光りながら、少し照れた顔で手を、幽香に差し出した。
「……遅くなって、ごめんなさい。幽香」
王様はそう言って、頭を下げた。
「っ」
まるで許しを請うように、王様は手を差し出したまま動かず、頭を下げたまま。
王様の頬は大きく切れて血が流れている。あの花の塊に全身で突っ込んできたのだ。
むき出しの肌は所々血だらけで、差し出す手から、ぽたりと血の玉が落ちた。
さあさあと、
狂気の雨はゆっくりと止んでいく。
「……本当に、遅かったわねリグル」
「うん」
「……レディを待たせるなんて、紳士失格よ?」
「私は、王様だからいいの」
「……どんな理屈よ」
「だから、私は幽香の王様だから、少しだけ、遅れてもいいって、自分で決めたの」
「……そう」
音が消えた静かな花の園で、日傘がふわりと風に乗る。
日傘が舞って、彼女の顔に、向日葵みたいな綺麗な笑顔と涙が浮んで。
「それなら仕方ないわね!」
幽香が、王様の差し出す手を取らないなんて事は、ありえない。
自分より背の高い彼女を、リグルは笑顔で受け止め、受け入れた。
花の園に、歓喜の雨が降り注ぐ。花という名の多彩な雨が。
「えっと、ご迷惑おかけしました」
「……ふん」
博麗神社の境内で、昨日の様にシートを敷いてその上に座る、今回の小さな異変の関係者達。
咲夜と妖夢は欠席。
彼女達はそれぞれ、大好きな人の傍にいる。
二人がいない。だけどそれに納得するリグルはぺこりと大きく頭を下げる。そして腕を組んで鼻を鳴らす、偉そうな幽香。
だが、そんな幽香の態度を気にするものはここには誰もおらず、皆それぞれの顔で微笑んでいる。
「幽香も可愛い所があるのね」
「うるさいわよ霊夢」
「やるなリグル」
「えへへ」
「頑張ったな二人とも」
「……ありがと」
「うん!」
「やーん。幽香可愛い~」
「殺すわ」
「いきなり物騒にならないでよ!」
笑いが零れるその中で、霊夢は「それはそうと……」とこほんと咳払い。
「ちょっと幽香。それで何で花がまだ止まないわけ?」
ふわふわひらひら。
藍色の狂気の花ではない。色取り取りの多彩な花弁が舞うのを、霊夢は迷惑そうに眺めてたずねる。
そう、花の雨は止まず、むしろ量を増して、その多種多様なそれは目を楽しませてくれる。
「………う」
「……ははは」
だが、幽香は霊夢の質問に答えようとはせずに、何故か視線をそらして、こそりとリグルの後ろに下がる。
それに、リグルもちょっと照れたような顔になって苦笑する。
「?」
不思議そうな顔になる一同に、リグルは「えっと」と呟いて、口を開く。幽香は背中を向けているが、僅かに見える耳が赤い
「幽香の感情がさ。その、昨日爆発しちゃったみたいで、暫く止みそうにないんだ、これ」
ぼそぼそと、そう言うリグルに、幽香はますます背中を見せて動かなくなる。
「……感情が爆発って」
「……む?つまりこれも無意識なのか?凄いな」
霊夢と慧音の疑問と感嘆の眼差しに、リグルは赤い顔で目を逸らす。何故か照れたように頭を掻いている。
「へー」
「ほー」
そして紫と魔理沙はにやにやと、それはもうにやにやと笑って「やるわね蟲っ子」とか「意外と手が早いんだな」とか話している。
「って、ちょっと!それじゃあ結局これ止まらないんじゃないのよ!」
掃除が大変だと、霊夢が叫ぶ。
「まあ、痛くないし綺麗だからいいけどな」
暢気に、魔理沙が降ってくる花の一つを手に取り、見つめる。
「この季節に花見もいいわね」
紫は「お酒が飲みたいわ~」とご機嫌に。
「そうだな。掃除は大変そうだが、こんなに綺麗な景色なんだ、ほんの暫くぐらいは我慢できるさ」
慧音も納得したらしく頷いて、風に乗って運ばれてくる花達を眺めて微笑む。
幽香とリグルは少しだけ顔を見せ合い、少しだけ照れたように微笑みあう。
こうして、幻想郷を巻き込んだ小さな喧嘩は終わって、二人は手を繋いで花を見ていた。
幽香は、小さく、リグルにだけ聞こえるように囁いた。
「ちゃんと、責任とってよ王様?」
リグルの触覚がびんっと反応して、だけどリグルはすぐに胸を張ってマントを翻して答える。
「勿論だよ!」
蟲と花の関係は、切っても切れない。
彼女達は花降る神社の境内で、少しだけ見せ付けるようにダンスを踊ってみた。
良い話でしたし笑えました。
今度の話は誰がヒロインに・・・
あなたのリグ幽はいつもすばらしい
すねてる幽香がかわいすぎです。
だがそれがいい!(゜∀゜)
といった私の嗜好は置いといて・・・・
実にこころ温まるお話でした、夏星さんの幻想郷は本当に素晴らしいですね
100点!
いやすばらしい作品でした。
貴方の蟲と花の物語はいつも素敵です
だけど素晴らしいカップル。今度のお話も楽しみですw
ハナから水飴出てくるくらい甘い( ´Д`)
右見ても左見ても幻想郷は色ボケ揃いということでよろしいでしょうか!
グレート
彼女に不味そうで食べたくないと言わしめた歴史すげえええ
小悪魔の言葉に出さない想いもまた
なんとも甘甘で素敵お話でした。
あなたの作品はどれも和みますね。これからも期待しています。
こいつはラブラブしてる味だぜェッ!
クハッ!キャハッ!ケヘァ!カハァ!
甘いわぁ・・・太っちゃいそうです
それにしても頭の中にお花畑な面々だ
良い話でした。とても面白かったです。リグ幽最高w
カツラ屋さんが儲かりそうな異変だなぁ。
特に家無し妖怪達は深刻だ。
甘い!甘すぎるよ!夏星さん!!
ちゃらむ~さんのイラストがトッピングされる位甘いよ~~~!w
(ちゃらむ~さんゴメンナサイw」)
砂糖以上の匂いがぷんぷんするぜ!
・・・最高っ!
でも何だかこの二人らしい、そんなお話…
いや、ホントご馳走様です。
A.砂どころか、砂糖を吐きたくなったわ……
>子悪魔
小悪魔では?
この話は性格や人妖関係上、幽香じゃなきゃ通用しなくて、幽香の魅力をこれでもか!と引き出されていたのが嬉しかった。
脇役も配役良いし、それぞれが良い味出してて違和感もない。
貴方のリグ幽がもっと読みたい…。霊夢→紫の今後も気になるとこだ。
ちっちゃな異変。されど異変。素晴らしかったです。GJ!
目から砂糖水があああああああああ
メインが幽香リグルなのでこの点数で。
何気にゆゆ様に古傷えぐられるゆかりんがかわいかったり。
個人的にリグルの話し方に少々違和感を感じたりもしたのですが、
いいお話です!ありがとうございました。
この珍しいカップルにニヤニヤが止まりませんw
あなたのSSのおかげで私の食卓は砂糖要らずですよwww
何かもう脳内が春色に染まって大変なことになってるんだがどうしてくれる?
こあ→パチュ→マリ→レイ→ゆかりん
なんという片想い連鎖
これなんてハチ(ry
点数は糖度だと思う。
そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。