――人は人として、倫理道徳に反する事無く生きる事こそが善行でしょう。人に迷惑をかけてはいけません。人に媚
びてはなりません。嘘を吐いてはなりません。窃盗強盗殺人などもっての他。自殺なんて絶対にいけません。輪廻する
前の魂に、家族に友人に申し訳が立ちませんよ。神様から仏様まで揃っている幻想郷、その誰が許しても、この私が許
しません。
けれど積み重なった悪行は定期的に償わせてあげましょう。
アナタはもう彼岸に現れることもないですしね、黒いものを背負うと辛いでしょうから。
それに、アナタですし。閻魔は公平に白黒つけますが、鬼ではない。贔屓ぐらいは、してあげられます。
三、八意永琳が最も大切とするもの。
八意永琳が稗田の存在を知ったのは、永遠亭が明るみになる現代幻想郷よりもっと前の時代。月の使者を鏖殺にして
美しい姫君と逃げた、あの時代にまで遡る。八意家からすれば久々の地上であっただろう。最初は地上人の土地と蔑ん
では居たが、誰から干渉を受けることも無く、竹林に家を建てひっそり棲む暮らしは、天津神であった時代を彷彿とさ
せて八意永琳の郷愁を誘った。
「……永琳、寝た?」
「……起きてるわ」
ケモノを取り、花を摘み、清水を汲み取るだけの生活ではあったが、長い間月の文明に慣れてしまっていた永琳から
すれば、それは新鮮なものであったし、不自由ではあったが嫌ではなかった。何より、今は全てから解放されている。
姫の戯れで蓬莱の薬を作った結果、その姫は処断され自分は御咎めなし。確かに姫は愚かだっただろうが、全ては自
分の失敗から来るものであった。永琳は、自分の家系に傷をつけた事が、許せなかった。
だがもう違う。地上に転生した姫に許しを請い、月の使者を鏖殺にするという咎をもってして、家系に傷をつけた己
の罪を洗い流した。長きに渡って抱いて来た罪悪感から解放されたのだ。
「寝れないの?」
「昔を、思い出して……」
そんな幸せな生活を続ける最中、風の便りで不思議な事を耳にする。
朝廷が、歴史の編纂に取り掛かったというのだ。著者は太安万侶、口伝を紡ぐ者として稗田阿礼、監修は……今とな
っては馴染みが浅からぬ藤原不比等だと言う。
永琳も流石に地上人の一国家の政策に口を出そうなどと、当然思いもしなかったが……内容を聞いて呆れた。稗田阿
礼と云う女は、一度見たこと聞いた事を忘れない能力を持っていて、各地方に散らばる伝承をさも歴史的事実のように
して語るものであると言われた。それは単に国家の歴史のみならず……話は神代にまで及んでいると云う。
「どこの昔よ。あ、布団入っていい?」
「姫……幾つよまったく……まぁ……はい、どうぞ」
「んー」
己の家系……八意家は、造化三神の一柱、高木神の血統を有したやんごとなきものだ。その血統の歴史を、適当に口
伝で歴史書になどされたら……堪らない。一時は力ずくでも止めさせようと考えたが、それを姫に止められる。
手から離れた歴史は一人歩きするものだから、誰も覚えていない神代の歴史を正そうとする事に意味はない。貴女に
とって歴史は大事かもしれないけれど、今は今を見つめましょう。
永琳からすると納得出来る諭しなどではなかったが、卑しき地上人を見限り月へと旅立った時代を思い出せば、今更
過ぎる事だと思わなくもなかった。
「永遠亭が、永遠で姿を消す前の事」
「これまた懐かしい時代を思い出すものね。稗田阿求に薬を飲ませた事と関係あるのかしら」
「……ちょっぴりよ」
家系の歴史に傷はつけたくない。自分もまたその傷を癒す為に地上への使者となって降り、姫に許しを請う為月の使
者を鏖殺にしたのだ。咎よりも罪悪感。月の使者の命より、家系の純潔。
それから一年もせずに、その『歴史書』は完成する。
名を『古事記』と言い、それは地上人の政治に利用されるものとあいなった。
純潔は穢されたのだ。
「後悔はしてないわ。恨みを持っていたのは事実であるし」
「はた迷惑ねぇ」
「……姫の為でもあったのよ」
「家族愛が重たいわ、永琳」
「……でも、これだけなら別に蓬莱を与えずともよかったのよ……あの子の、発言が悪かったの」
「よっぽどな毒舌を吐いたのね。ちょっと稗田阿求に同情するわ。敵が悪くて」
「あ、ちょっと、姫、あんまりくっつかないで」
「いけずーいけずー」
「はぁ……阿呆は私だったかしら……」
姫の言葉もあった。自制心もあった。だが、やはり許せないものがあった。
何時しか必ず、純潔を穢した罪を償わせなければならない……そう考えていた矢先に、一番怖れていたものが永遠亭
に訪れる。
「……結果どうだったかしらね」
「長年抱きつづけたものを晴らせた……それと、侮辱に制裁を加えた。それだけ」
月の使者からの交信。
その頃より……永遠亭は永遠へと隔離される事となった。永琳の気持ちは完全に閉ざされ、一生晴らされる事もなく
なったと、思われた。
「きっと来るわよ、稗田阿求」
「その時は温かく迎えてあげればいいわ。何せもう、仲間なのだから。姫は妹紅と、私は阿求と。ぴったりな取り合
わせじゃない」
「永琳、もしかして稗田阿求を意外と気に入っているのね」
「だって気になるもの。あれは、一度見たものを忘れない能力を有した天才。その天才が永遠を手に入れたならば、
一体どうなるのか。私でさえ解らない事って、興味ないかしら?」
「マッドサイエンティストみたい」
「どうとでも」
そして、幾星霜を経てその恨みは晴らされた。時の巡りと因果に感謝した永琳に、新しい生活が始まる。
「もう寝るわ。おやすみ、姫」
「あ、寝てしまうの? つまらないわねぇ」
「……布団の中で何するっていうの」
「さぁ、なんでしょうねぇ」
「解ったわよ」
確かに、そんな理由もあった。
稗田阿求への恨みは、確かにそんな理由もあった。
だが、それはやはり間接的な純潔への侵害。天才八意永琳がもっともっと許せないものを、稗田阿求が口にしたのが
全ての原因だ。
人とは何処で恨みを買うか解らない。口は災いの元と説いた先人は、きっと自分の法螺話で相当痛い目にあったのだ
ろうなと、永琳は思いながら――輝夜の頬を
「ひたぃひたぃ」
「自分の布団で寝なさい」
おもいっきり抓った。
・
・
・
・
・
「永琳先生は、酔っ払いの戯言も本気にするんですね」
「そうだよ。馬鹿と天才紙一重って言うだろ。ありゃどちらかといえば馬鹿で天才なんだよ」
稗田阿求は、藤原妹紅に対して億面無く永琳は阿呆だと遠回しに言った。
上白沢慧音から頭突きを食らいながらも食い下がり、終いには押し倒して馬乗りになった挙句胸倉を掴んで知ってい
る歴史を吐けと迫った翌日の事だ。
ハクタクを押し倒す程の力まで有し始めた稗田阿求に驚いた慧音は、溜まった仕事に横目をやりながら、己の命の危
機に立ち向かったのだ。もはや慧音には同情すべき点しかないが、阿求は阿求で必死だった。
「それにしても……お前、慧音押し倒したって? 慧音、泣いてたぞ」
「いえその、すんごく必死だったんです。ハクタク時にしか全ての歴史を把握していないし、少し強く迫らないと慧
音先生は自分の仕事にかかるだろうし」
寄越された『死なせておくれよ』をグビグビとやり、阿求は溜息を吐く。妹紅も妹紅で面白そうな顔をしてそんな阿
求を見つめていた。別に咎める気は無いらしい。
「……どんな力が働いたかしらないけれど……阿求、やっぱり天才って言うのは違うものなのかな」
「はぁ、つまり?」
「私は長い事生きているから、力だってちょっと強すぎるくらいだし、術だって気持ち悪がられるくらいアレだけど、
阿求、お前が蓬莱人になったの、何時?」
「ふ、二日前、ですかね」
「製作者の恨みとか、そんなのが詰まってたのかな。いや、別に他の蓬莱人をそんなにそんなに知っている訳じゃな
いから断言は出来ないけれど、阿求……お前、強すぎないか?」
「え、えぇ?」
妹紅は慧音から聞いた話もあわせて、疑問をぶつけてみる事とした。
妹紅が疑問に思うのも当然で、ついこの前まで人間だった阿求がハクタクを力で押しのけるような真似が出来るのは
不思議でならないものだ。妹紅の力は長い間の歴史の積み重ねと、幻想郷の恩恵があるからこそだが、阿求は些か強す
ぎる。
「阿求、ちょっと表に出ろ」
「え、えぇ!? そんな、愛するものが押し倒された事に対しての報復か何かですか!?」
「ばっ、ちょっ……ど、どこからそんな話になる。慧音には良くしてもらってるけど……ああもう、違うから外に」
「は、はぁ」
阿求は妹紅の家に来たタイミングが悪かったのだろうかと多少後悔しながら、促されるまま外へ出る。
妹紅の家に来たのは他でもない。慧音から自分の覚えていない記憶を聞き出して、いざ永遠亭に行こうと思ったがへ
ッピリ腰になってしまい、結局竹林を迷っている所で妹紅に発見されたのだ。
……竹林は昼間でもかなり薄暗い。高い高い竹が地上と空を隔離している。
そんな竹の足元に二人は正面にして立ち並び、互いを見据える。自分から死んだり傷つけたりはする癖に、相手が目
上だったり蓬莱人にした張本人だったりすると、傷つけられるのは嫌だった。故に、今もヘッピリ腰である。
「そんなに脅えずとも。昨日は堂々と竹林迷ってたじゃないか。達観した顔で殺せなんて言うし」
「心境の変化というか……実際あんな理由で蓬莱人にされたと思うと、納得いかなくて、人間である事を否定したく
なくなったんです。私、人間ですよね」
「いいや?」
冷たい一言と同時に、無数の弾が阿求へと襲い掛かる。
「あ、ぶ、ないっ」
弾は地面に落ちる枯れた笹の葉と竹を数本なぎ倒し消滅する。阿求自身は、驚く事に無事だ。
「げ、避けた」
「妹紅さん……一体何を」
「自覚させるんだ。自覚しておいた方が良い。後で『私はやっぱり人間』なんて葛藤してもしょうがないよ。でも今
ので少しは解っただろう? 一体どんな速度で弾飛ばしたと思ってるんだ。火縄銃だってびっくりの速度だよ」
「そんな。相当遅くかんじまし……ぶっ」
「ほう、言ってくれるね」
妹紅の頬が吊りあがる。同時に飛び上がり、薄暗い竹林を不死の炎で照らし始めた。
「不死鳥……」
初見ではない。阿求の記憶の中には、蓬莱山輝夜と藤原妹紅が争った写真が収められている。だが、こんな近くで、
しかも自分に殺意が向けられた状態は初めてだ。
純粋に何もかも焼き尽くさんばかりの炎の羽を美しく思い、同時に恐怖を感じた。
熱で空気が踊る。気圧が変化して密閉された竹林に風が巻き起こり、竹をしならせた。
「ほら、飛びなよ。飛べるだろう?」
妹紅が挑発するように真っ赤な弾を地上へと降らせる。その弾を阿求はしっかりと見定めて、軌道を読んでからかわ
す。当然、軌道を読めたぐらいでかわせる速度の弾ではないが、阿求の身体能力はそれを可能にしていた。
「なるほど……」
「と、飛びましたよ……もう止めませんか。私、妹紅さんに何の恨みもありません。寧ろ、これからお友達になれる
んじゃないかと、思ってたりするんですけれど……」
「違うよ阿求」
「な、なんですか?」
「幻想郷の人妖はね、友達同士仲が良ければ良い程、弾飛ばしあうんだ」
「あ、それなら妹紅さんと輝夜さんは相当に仲が……ぶっ」
「あきゅぅぅぅ……お前は素面でも失言が、多すぎる!!!」
なにやら阿求の失言で火がついたらしい妹紅が憤怒を弾で表す。阿求はまだ飛び方が安定していないのか、ふらふら
と覚束ない様子であるが……不死鳥はお構いなし。
正面に弾幕の壁が何層にもなって現れる。更にはどこから取り出したかも解らない御符がばら撒まかれ、それが籠の
ようになって阿求の周囲を取り囲む。もはや逃げ場といえばそのスキマを縫った場所のみだ。
「もしこれがかわせたとしたならば、阿求、お前はきっと人間じゃない。まぁ、魔女と巫女とメイドは除外するけど」
「あの人達の方がよっぽど、人間じゃ……うわっ……ないですよっ」
「じゃあお前もこっち側って訳だっ」
停滞していた弾が不死鳥の指示を受け、成り立ての新米目掛けて飛んでくる。正面から直進してくる弾の弾道を『覚
えて』避けきり、後ろから迫る符弾を紙一重とは程遠い余裕さでかわしきり……追い討ちとばかりに混ぜられた高速弾
を、阿求は素手で弾き飛ばす。
「冗談にしては、出来すぎだなぁ……」
流石の藤原妹紅も、これには驚き唖然とした。
「はぁ……はぁ……ふぅ……そうですか……私は、人間じゃありませんか」
「……幻想度の違いかな……」
ボソリと呟いてから広げられた深紅の羽をしまい、再び地面に降り立って阿求を手招きする。
「納得いかないけど、納得しよう。同じ蓬莱人でも、恐らく私とお前じゃ格が違うんだな」
「ああ、またそういう意味深な事を言って謎を増やさないでください。私は永琳先生の事で頭一杯がです」
「そのうち解るさ」
「む、うぅん……」
「言っただろう。あの薬は服用したものの力を引き上げる。切欠が蓬莱の薬である事は間違いない。その他は持って
生まれたものだよ。誇って良いんじゃないかな」
「人間、ではなくなりましたけど」
「幻想郷でそんな事気にする奴、お前ぐらいなものさ。その言葉、負けず嫌いに聞かせてみな。発狂されるよ」
阿求は……蓬莱人になって始めて会った三人の事を思い出す。あの反応の軽さといったら無かった。
蓬莱人である事を悩む意味は、殆ど無いのかもしれない。幻想郷で生命の倫理を語る事ほど不毛な事はないのかもし
れない。
そんなハッキリとした記憶達が、阿求の思考を説得する。
「早めに永琳にあって、話をつけたら良い。そしたら、後は適当に生きよう。老いる事も朽ちる事もない。私や輝夜
や永琳も老いる事も朽ちる事もない。他の妖怪だってそうそう死んだりはしない。少なくとも寂しい思いはしないさ。
私はお前が羨ましいよ、阿求。蓬莱人になったのが、幻想の中だったって事がさ」
「……」
「送ってあげるよ。こんな問題、引き摺っても禍根を残すだけさ。それだったら最初から開き直って、ムカツク奴の
顔面に弾幕でもお見舞いしてやればいいんだ。毎日ね」
「物凄い説得力に、私驚いてます」
「伊達に千数百年生きてないさ」
そういって、妹紅が先を歩き出す。阿求もそれに続き足を進める。
犯人に対して、一体どんな顔で会えば良いのか。正直な所、死ななくなったとはいえ、あの底知れぬものを持つ八意
永琳は、恐怖の対象だ。
むしろ死なない事こそが最大の恐怖かもしれない。永琳なれば、死なぬ者に永遠の責め苦を与える術ぐらい、持って
いそうだと予測したからだ。
あの、何を考えているか解らぬ顔がフラッシュバックする。恐ろしい。底知れない。何を隠しもっているかも想像が
つかない……だが、逃げても仕方が無い。
「……八意永琳」
……自分の手を握っては開き、握っては開き。
数分の戦闘で垣間見た己の能力を、自覚する。二日前とは最早別人だった。この何の変哲も無い竹林も、意識すれば
また別のものとして感じ取れる。
蓬莱の薬は身体能力を引き上げる為、五感も鋭ければ六感も芽生える。
何も無い空間にはゆらゆらと揺れる人影が見え、どこからとも無く漂う腐臭が鼻につき、今まで聞こえなかった兎達
の呟きも届く。
目を見開き、妹紅が進む先を見つめる。
人間だったならば絶対に見えない距離にある筈の永遠亭が、阿求の目にはしっかりと映っていた。
「妹紅さん」
「何?」
「永遠亭、見えちゃいました」
「この短期間でそのスペックとは、恐れ入るよ。じゃ、私はこれで」
「妹紅さん」
「ん?」
「有難う御座います。実際最悪ですけど、その最悪の中に、何か見つけた気がします」
「そいつぁ良かった。早めに諦観が板に付く事を祈ってるよ」
「はい」
妹紅はニヤリと笑いかけて、去り際に阿求の肩をポンと叩き竹林の奥へと消えていった。
「真っ当な会話が出来れば良いけれど……」
軽快になった筈の体が妙に重い。妖怪は精神的ダメージの方が肉体より重症になりえると云う事実を思い出し、多少
億劫になるが、足を止める訳にもいかない。
「『永遠に生きていて飽きませんか。その生に意味はありますか。私にはわかりませんね』……我ながら、最悪の毒
を吐いたものですね」
上白沢慧音から聞いた、己の失言集を口にしてみる。思い出せば思い出すほど後悔する言葉ばかりだ。何ゆえこのよ
うな言葉を口から吐き出したのか、素面の阿求では理解しかねる。
「まぁ……それは良かったにしても……『生に固執するような事を言い始めたら、是非蓬莱人にでもなってみたいも
のです』って……蓬莱の薬肯定してるし……」
「後悔しているの?」
「そりゃあするでしょう……思ってもいない事、口にしたんですから」
「どうかしらね。お酒で酔っ払うと、ある事ない事言うけれど、そういうのって本心なんじゃないかしら」
「それを本心と断言出来る理由は」
「ないわ。でも、頭に来たのだもの」
「幻想郷らしい」
……人外も楽じゃない。立て続けに降り注ぐ厄災を被りながら、阿求は目を瞑ってそれを受け入れる。人の外となっ
た者には、超越存在の恩恵などない。例え神が居ようとも、その神の法に背いているのは自分だ。
稗田阿求は、己を蓬莱人にした張本人に改めて顔を向け、人外らしく狂気の笑みをプレゼントしてやる。
大方兎達から阿求が居る事を知らされて来たのだろう。彼女は普段見せないような、楽しそうな顔をしている。
一番遭遇したく無い、けれど一番会って理由を聞きたかった人物。
神の名を冠した永遠の薬師が稗田阿求の前に立ちはだかった。
「犯人は解っていたのだし、死なない体になったのだから、何も臆する事なく直接私に理由を聞きにくればよかった
のに、随分と遠回りが好きなのね」
「私、急がば回れって言葉好きですよ、実現できない分。それに、いきなりどんな顔をして貴女に会えば良いかなん
て、解らないじゃないですか。蓬莱人にしやがってーこのこのぉ、なんてノリで来るとでも、思ったんですか」
「違った? 私は貴女の望み通りに蓬莱人にしてあげただけよ。生に固執するようになったら蓬莱人にしてくれって
言ったのは、貴女」
「お酒の席の!!! 戯言でしょうに!!!」
脳の血管が一瞬で弾け飛ぶ。
淑女とは程遠い絶叫と同時に、辺りの枯葉が中空へと舞い上がった。咆哮は空気を伝って永琳の耳朶を揺るがすが、
永琳の表情は何一つ変わらない。阿求からすればとんでもない事態だが、永琳からすれば何でもない、ただ恨みを晴ら
しただけの事。
「――ふふ」
それに伴って本人が復讐に襲来する事も必定。全て予測の範囲内だ。
「そう喚かないで。私はもう何の恨みも持っていないわ。だからこうして無防備にしているし、スペルカードの一枚
も持っていないの。ようこそ永遠の世界へ。永遠亭は貴女を歓迎するわ」
「歓迎などされたくありません」
「竹林サバイバルの時も歓迎したじゃない。貴女も喜んでいたわ」
「くっ……馬鹿にしているんですか。今と過去、状況も何もかも違う状態を比べるなんて」
「私からしたら同じよ。楽しい事が、増えたのだもの」
永琳は、阿求の手を握ろうと足を前に出す。その行動に過剰反応した阿求は思い切り飛びのいた。
「相当嫌われたわね」
「好きにでもなったと、思っていましたか。月人の考えは理解不能です」
「私はね、本当に貴女のことが嫌いだったわ。阿礼の時代から大嫌いだった。運悪く恨みも晴らせない状況に陥って
しまってね、一生復讐の機会は訪れる事もないと思っていたの。でも幻想郷に顔を出してみたら貴女がひょっこり現れ
た。思っていた以上に小さくて、殺す気にもなれなかったけれど……それで済めばよかった。よかったのに。でもね、
貴女は私に、いえ、私達に対して最悪の暴言を吐いたわ」
「永遠に生きるて飽きませんか、その生に意味はありませんか。私には理解出来ません。ですか。えぇ、理解出来ま
せんよ。永遠の命を手に入れた今でさえ!!」
「貴女に、そう簡単に解られてたまるもんですか……理解などされてたまりますか……」
二人の距離およそ六間の間に、言葉では表現し様の意識の渦が具現化し始める。恨み辛み妬み嫉み、醜悪な感情の集
合体は幻想郷の秩序に則り、弾となった。一つ二つ三つ四つと光弾がフツフツと空中に湧き上がり、行き場を無くして
周囲に散らばる。その気迫を形にしたモノは、阿求の頬を掠り腕を抉る。
「そうそう理解出来る訳がない!! 転生する度に新しい風景に出会え、新しい思い出に触れられて!! 新しい感覚と
新しい仲間の中で生きて死んで転生を繰り返す貴女に!!! 永遠の苦しみなど、理解出来るものか!! あの侮辱は私だ
けじゃない、姫すら侮辱する下劣なものよ!! どこの誰が私達を蔑もうとも、貴女だけには言われたくなかったわよ!!
稗田阿礼!!!!」
(この、この感覚だ……この、祟りに触れたような……嫌悪感……)
薬を無理矢理飲まされた時、八意永琳に腕をつかまれた時。稗田阿求を襲ったのは記憶にある筈がない過去の思念。
魂に刻み込まれた罪悪感を一気に呼び覚まされるような苦痛。
「八意思兼……本物の天津神の血統……? 幻想郷もここまで来ると、幻想を通り越して神の国になりそうですね」
――阿求はやっと、何と対峙しているのか漸く理解した。
阿求はまさしく、地上人に愛想をつかせ、月へと旅立った神と対峙している。自分が編纂に携わった、古事記の中の
神の一柱。人々の智慧への渇望を糧にして成った、知識の神。その子孫。
島国の神話とは概念的に異なる体系である己を形成する一要素たる求聞持の力とて、ひょっとすればこの神から別た
れた能力の一つかもしれない。その逆かも解らない。憶測は憶測へ、しかしその憶測こそが真実であるように直感させ
られるのは、まさしく眼前に構える永琳から漏れる人外のプレッシャーが齎すものなのだろう。
「『何故こうなったのかしら。どうしてこんな事になったのかしら。頭脳明晰な貴女なら、覚えていると思ったのだ
けれど。答えはお預けのようね』こんな事言ったかしら。確か。ねぇ稗田阿礼。思い出した?」
「歴史に相違を出した事に、怒っていたんですか。別に……冒涜しようと思って語った訳ではありません……。国の
方針を決めるのに、どうしても必要だった。だから私は各地で聞いて回った口伝を、そのまま話しただけです」
「その軽率な行いが、歴史を穢される事を最も嫌うモノを傷つける」
「……謝りは、しませんよ。私は相応以上の罰を受けた」
阿求は顔を伏せ、己の行ないを肯定する。そんな事で怒る者がこの世に存在しているなど、誰が予想出来ようか。
「私はっ!! ……くっ……!!」
続きを紡ごうとする阿求の口が、永琳の飛ばした弾によって閉じられる。
「そうね、相応以上かもしれないわね。でも儀式は終らないわ。口答えしないなら、大人しく迎え入れてあげようと
思っていたけれど、どうやら永遠亭に入るには、身が汚すぎるわね」
「また……勝手な事を」
「禊祓よ。その軽薄な思想、弾幕の禊をもってして洗い流す。さぁ、そこから生まれる神は何かしらね」
神話に準えた嫌味。その言葉一つ一つが、阿求の神経を逆撫でする。人は人らしく。永遠に固執する事などしないで
逝くのが自然だ。身奇麗なまま死ぬはずであった。また次も楽しい生を歩めますようにと云う希望もあった。
なのにこの八意永琳は有無を言わさず、口は災いの元を体現した。謝罪の機会も与えてくれずに。
どれだけ阿求が、阿礼が悪かろうと、そんな事――
「勝手な事ばかり……勝手な事ばかり言って……勝手な事ばかり言って……!!!」
「勝手な事をやった挙句私の誇りを穢して、追い討ちをかけるように勝手な事を言ったのは、誰よ」
「幻想郷が幾ら理不尽でも、閻魔様だって贖罪の機会くらい、与えてくれます」
「残念ね。私は完璧が好きなの。一度間違えたら、手ひどいしっぺ返しを受けて当然。それを必死に取り返すのもま
た、完璧を埋め合わせる為の業」
「もう、対話なんていりません。飽きましたし、ずっと平行線です」
「でしょうね。阿求さん。だったら、どうするのかしら」
「どうって……決まっていますよ」
――許される筈がない。
もう我慢ならない。例え相手が天津神の血統だろうとどうでも良い。畏怖など恐怖など投げて捨ててしまえ。
こんなもの、理解も糞もあったものではない。阿求は怒り心頭し、その爆発力をエネルギーに替える。思い切り地面
を蹴飛ばし、蓬莱によって齎された瞬発力を最悪だと吐き捨てて永琳へと突撃する。六間の間など、今の阿求からすれ
ば一歩で余る。
「言葉が通じないなら!!!!」
髪を振り乱して美しい顔を激怒に塗らせたその姿は、まさに鬼女以外の何者でもなかった。
「な、何!?」
「――ぶん殴って謝らせるまでです!!!!」
来ると予測していて構えていた永琳が、その予測を上回る速さに驚きながら咄嗟にかわすも、突進で生まれた運動エ
ネルギーを強制的に肉体で却下した阿求が韋駄天の如き切り替えしで迫る。体を撓らせて次の一撃を避けきろうとする
が間に合わず、拳をアウェイする形になってしまう。
「――うそっ」
「ふっ……」
空気の壁を突き破る勢いで放たれた正拳は射られた矢となりて、いなそうとした永琳の腕を弾き飛ばす。
「歴史編纂ばかりに追われていた貴女が、どこでそんな技覚えたのよ……」
「寝たきりになってからは、読める本は読み尽くしてしまいまして。戯れに、こんな動きが出来たらと格闘教本ばか
り読んでいました」
「だ、だとしてもこんな動き……蓬莱の薬を得たってありえない!!」
「永琳先生に解らないもの、私が解る訳、ないじゃないです……かっ!!」
踏み込み、打ち込み、かわされ、その先に次の攻撃を持ってくる。これだけの仕打ちを受けたのだ、拳の一撃でもお
見舞いしてやらねば腹の虫が収まらない。
永琳は久々の『焦り』を感じながら迫り来る下段足払いを飛び越えてかわすと、そのまま中空に飛び上がる。阿求が
空を飛べる筈はない。蓬莱人になってたった二日だ。そんな常人、永琳とて観たことがない。月へと飛んだ者とて、あ
れは類稀なるものを持っていたからこそ――
「飛べないとでも思いましたか」
「――信じられない」
永琳は、そのおぞましいまでの才能に嫉妬し、生唾を飲み込んだ。正面には阿求。四方八方は竹林。弾幕で止めるに
も、一間もない距離では己が自爆する。まるでスローモーションをかけたかのように、正しく握られた拳が目に飛び込
んで来る。
見えるならばかわせる、かわせるはず……が、かわせない。
「ぐぅ……!!」
「いっつぅ……ッッ」
反射神経が命令を下すよりも速くに阿求の拳が永琳に到達し、空中に血液を撒き散らす。それによって生まれる衝撃
は永琳を貫くと同時に、肉体限界を突破した阿求の腕をへし折る。
「な、何よ……これ」
「はぁ……はぁ……は――はぁ……ぐ……はぁ……はぁ……ああ、もう……痛いだけって……何なんですか……もう」
「この力は……何? ……私が……傷ついた……?」
「そんな驚き……蓬莱人にさせられた驚きの方が……大きいですよ……ああもう……痛い……」
永琳は完全に吹き飛ばされた己の肩を見つめて呟く。
こんな酷い怪我を負ったのは、一体何時が最後だったか。巫女やスキマと弾幕を張った時とて、もっともっと軽症で
あったのに……たった二日前まで人間だった女性に、体の一部を持っていかれた。
一体何がそうさせたのか。薬を調合した自分の想像を遥か上を行く事態に天才は驚く。
「帰ります……永琳先生。もう、あまり顔は合わせたく、ありません」
「そう……果てしなく、残念よ。お友達が増えると思っていたのに」
「散々言っておいてそれですか……天才の思考は……理解……不能……」
「……阿求さん?」
「ぐっ……ひくっ……痛い……死なないのに……痛い……」
「やっぱり、上がって行って頂戴。治療と、ご飯くらい頂いて行ってよ」
「ぐず……嫌ですよ……大馬鹿女郎……」
「――そう」
「……痛い……うっ……うっ……」
地面に降りた阿求は、潰れるようにへしゃげた腕を抱え、その場に泣き崩れる。このような複雑な感情を理解しえる
存在は……恐らく世界でも数人だろう。共感しようにも、共感しえる経験が無い。驚くにも、どこを驚けば良いか解ら
ない。死にたいのに死ねないなどと、もはや妄言の類だ。
だがしかし、ここには現実に存在する。それに思い悩む乙女がいる。
「諦めなさいよ。諦観の先は幸せよ」
その言葉に阿求はただ一言……死なせておくれよと呟いた。
四、幻想蓬莱人 稗田
もし、今自分を殺してくれる者が居たとするならば、この身を幾らでも捧げようと思う。最終的に殺してくれるなら
ば、どのような責め苦にも堪えれると思う。何せ死なないのだから。生きとし生ける全存在の森羅万象の秩序を乱す己
に嫌悪する。吐き気がする。自分が生きている事が許せなくて傷つける。もう腕は肉を抉るような爪痕で一杯だった。
けれどそれも暫くすれば治ってしまう。自分が嫌いだといった痕跡すらも残せない。食事も取らず水も取らずしてい
ればその内衰弱するのではないかと思い、独りで山の中の穴倉に隠れた。
腹は減る。喉も渇く。けれど、気絶して目を醒ませばまだ生きている。何度と繰り返せど、また次の日には目を醒ま
す。一体何処から生命エネルギーが提供されているのかと考えて、三日たって止めた。
どうせ永琳の作る薬だ。世界から死ぬ事を拒絶される呪術でもかかっているのかもしれない。己の体は、森羅万象に
は従えない。輪廻転生の環から完全に外されている。成仏する事も、神人合一する事もない。
ここで始めて、万能の神など存在しないのだと理解に至った。あの八意永琳は天才だが、蓬莱の薬の呪縛を解く薬は
作れないのだから。智慧の神が出来ぬものを、一体何処の神が出来るものか。
「死にたい」
無駄だと知りつつ呟いてみる。穴倉で膝を抱え、餓えと乾きに悶えてみる。
「誰か殺して……」
それでも、阿求は万能の神がおわす事を願う。己が罪穢の類なれば、祓戸の神は何故海へと攫ってはくれぬのか。瀬
織津姫は仕事をサボっているのか。ならば不動明王は何処へ消えた。ノウマクサンマンダと唱えてみても苦しくもなん
ともない。自分は魔ですらないらしい。
では自分は何か。人で無く神でなく穢でなく仏でなく、何なのか。哲学的な命題を越えた難題だった。
それも当然、答えを見つけたところで何一つ意味はないのだが。
「……」
久しぶりに外に出てみる。空は晴天。春真っ只中のほの白い蒼さを湛えた空。人は障害にぶち当たると、酷く感傷的
になってしまうらしく、それを自己に置き換えてみても相違なかった。この蒼さが憎い。批難されても揶揄されても蒼
く黒く暗く紅く表情をコロコロ変えてあり続ける空が憎かった。今ならば空気すら憎めるなと思い、阿求は己の頬をひ
っぱたいた。
「痛い」
母の平手が思い浮かぶ。自分より先に死なないと嬉しがった生涯の母の顔。驚いて腰を抜かす父の顔。たった五日程
度昔の事が懐かしい。たった六日前まで人間だった自分が懐かしい。
「諦めろ、か」
人生の大先輩はまず諦めろと言い、弾幕を飛ばした。永遠の薬師は諦めてしまえと言い、ずっと自分が消えて行く後
ろ姿を見つめていた。生きながらに死んでいる事を肯定せよ。意味など考えても意味がない。全てはあるがままにすれ
ば楽なのだろうか。
「カムナガラ(あるままに)ねぇ。八百万の一柱になるには……まだ早い……はやい……?」
口にして、何かが崩れる音がした。物質でなく思想でなく記憶でなく、もっともっと根底にあるもの。『現視』する
のは一つの鳥居。立ち並ぶ、どことも解らぬ神社。見覚えのある祭神名。
それを参拝するのは、外の世界の服を着た――
「稗田……阿礼命……? 私は何時から……神に……菅原道真じゃあるまいに……」
頭を振り、記憶を辿る。勿論そんなものは存在しない。少なくとも、この幻想郷には。
「悩んでも、仕方ありませんよ稗田阿求。現視は現視。今更です。何故御阿礼の子たる貴女がそれを理解出来ていな
かったのか、の方が私は疑問でなりませんね。いやはや」
阿求の耳朶に、久しぶりのヒトの声が響く。振り向いた先に見えたのは、ごてごての制服を着た少女が一人。
「閻魔様……」
「近々死ぬ予定であった貴女がなかなか彼岸にこないものだったので、様子を見にきたんですが、稗田の家人には居
ないと言われ、ついでに説教していた妖怪にも知らないと言われ、探す事約三日。隠れるのが得意なのですね」
四季映姫ヤマザナドゥは疲れた声色で話してから阿求に近寄ると、思い切り息を吸い込んで。
「この虚け!!!! 何故蓬莱人などになった!!!!」
摘み上げた耳に直接叫ぶ。耳が裂ける痛みに、阿求は痛いながらも笑うしかなかった。
「永琳先生に言ってください。私が好んでなったとでも思いますか」
「良く考えればそうですね。それでは何の為に長い間私に許しを請うたのか」
「閻魔様、良く考えてからお願いします。耳が痛いです」
「蓬莱人になったのだから、それくらい大丈夫でしょう」
「常習ですか」
「藤原妹紅も喜んでいます」
「白黒つけたい割に、閻魔様はなかなかに御心が灰色でいらっしゃいますね」
「聞き捨てなりませんね。それに、閻魔に対してその口の利き方はなんです。随分と偉くなったものですね」
「気持ちも大きくなりますよ。最悪です、蓬莱人」
「そうでしょう、そうでしょう。まぁ、諦めるのが良い。私とて殺せませんから」
なんなんですか、もう。そういって映姫を突き放し、阿求はまた穴倉に戻って行く。映姫もそれを気にする風もなく
見守り、姿が見えなくなったところで何処かへと飛んでいった。
暗い穴倉の中は湿っぽく、美しかった着物ももう薄黒く汚れていて、とても歳相応の女性が着るものではなくなって
いる。自分を傷つけたお陰で血にも塗れ、所々が破れていて非常に見るに堪えない。
考えが纏まるまでここで暮らそう。食べる事もせず飲む事も拒み、殺すつもりで生きてみようと考える。早々に死ね
ば全て解決。薄汚れてゴミになろうとそれも良し。どうせ甦るのだ。
「……ん?」
映姫が去って一刻程度。なにやら外から香ばしい匂いがした。空腹であった為に思わずその煙の出所を確認しようと
外に出ると、映姫は一人で魚を焼いていた。
「ああ、偶然ですね、稗田阿求。実は有給休暇はアウトドアで過ごそうと思いましてね。ほら、ここは川も近いし、
春ですからイキモノも沢山いるでしょう。自給自足生活も楽しいじゃありませんか」
「巫山戯てます?」
「何と言う物言い。これだから蓬莱人はぶつぶつぶつぶつ。ああ、山女は美味しいですね。要りますか?」
なにやら無邪気な表情で、映姫は塩焼きにした山女を阿求に突きつける。
「ほかでやってください」
うまうまと魚を頬張る映姫を見下すような目で睨みつけてやってから、また穴の中へと消える。穴の中は……魚の匂
いで一杯だった。何の嫌がらせだ。巫山戯やがって。閻魔が有給なんて取るな、仕事しろ。
そう思い、阿求は腹を鳴らしながら匂いのしない場所で蹲る。
『ほら、ここの桜は見事でしょう。一本桜ですが、景色に溶け込んで非常に風情があります』
『そうね、たまにはこう言うのも良いわ。魔理沙、お酒は?』
『天狗から借りてきた白百合があるぜ』
『飲んだらどうやって返すのよ。しっかし、毎度思うけど如何わしい名前よね』
『アリス、そりゃお前の脳内が如何わしいんだぜ』
『ば、馬鹿いわないでよ。なな、何が如何わしいものですか』
『あんた等、若いわねぇ』
『お、霊夢が老け込んだぜ。年上好き垂涎の巫女さんが台無しだ』
『年上? 序列で行けばこの四季映姫でしょうが、ここは博麗霊夢に譲りましょう』
『な、なんでよ』
『そんなに老け込んだ振りするからよ。さ、飲みましょ』
……。
外でなにやらドンチャン騒ぎが始まる。耳を塞いで見るも、蓬莱によって得た超五感がそれを無効化してしまう。
『おおお、おいおい。閻魔様よ、脱ぐのは不味いんじゃないのか』
『ぶれーこーですぶれーこー。それに女性しかいないじゃありませんか』
『アリスが鼻血出してるんだぜ』
『だだ、出してないわよ!!』
『……アリスマーガトロイド。貴女は些か、業が深すぎる。償いなさい』
『え、ちょ、裸でこっちこないで……』
『ふふ……予想だにしない組み合わせにきっとどこかの誰かも驚いている事でしょう』
『や、やめ、あ、ちょ、おま』
『楽しそうねぇ……ああ、なんなのその少女体型。喧嘩売ってるの?』
『うお、霊夢が愚痴り始めたぜ。ところで説明口調なのはなんでだ私』
『そりゃあんた、ひえだぅむぐぅぅぅぅぅ』
『黙りなさい、博麗霊夢』
……。
『ヒック……魔理沙、なんかやれ』
『霊夢……お前はどこの無責任監督だ……』
『あたい……あたい汚されちゃった……』
『なかなかでした。アリスマーガトロイド。しかし、些か胸が無さ過ぎる』
『閻魔様、素っ裸でそんな事言っても説得力ないんだぜ』
『ああ、私そろそろ帰る。あの子も帰ってくる頃だろうし』
『弟子を山ん中に置いてくるなんて、鬼畜極まるな』
『才能無いのよ。荒行ぐらい要るわ』
『十歳のチビに行き成り負かされたアリスの身にもなって発言しようぜ、霊夢……』
『あ、あたい……』
……。
およそ十時間に及ぶ宴会はそこでお開きとなった。霊夢、魔理沙、アリスの三人はひらひらと棲家へと飛んで行き、
映姫はキチンと後片付けをして、その場にテントを張り始める。こっそり覗いていた阿求に気がついた映姫がそちらへ
と目を向けると、あの閻魔らしからず、ニヤリと笑う。
天地がそろそろひっくり返るのかと思い、その日は世界滅亡を願った故にドキドキして眠れなかった。
あくる日。まだあの馬鹿者は居るのかと思い穴倉から外へと出てみる。
「こりゃまた偶然ですね、稗田阿求。ここは随分と住み良いですから、暫くは居ようと思いましてね。何せ溜めてい
たごひゃ……げほ、五年分繰り越し有りの有給休暇を全部つぎ込んだもので。庵でも建てましょうかね。人も呼んで」
「……四季映姫。何がしたいんですか」
「おっと。敬称も無くなりましたか。人とは荒むと何処までも堕ちて行くものですね」
「そんな事は良いんです。何がしたいんですか」
「休暇です。それとも、ここは貴女の私有地でしたか」
「終いには……たたき出しますよ」
「……八意永琳から聞き及んではいます。恐らく、私でも勝てないのでしょうね、貴女は」
「……何故」
「このままの流れで行くと禅問答になりかねません。苦手でしょう。私の説法やら説教は」
「ふん……」
己の荒みようときたら、ハンパではなかった。お腹が空いているからかもしれないし、体が汚れているからかもしれ
ない。兎に角、この何がしたいか解らない四季映姫がむしょうに気に入らない。何故そんなにニコニコしているのか。
何故そこまで自分に関わろうとしているのか。そんなに優秀な書記が降りてこなくなった事が憎らしいのか。
「好きにしてください」
「好きにしますよ。私の休暇ですから」
阿求は……穴倉には戻らず、川を目指す。まだ雪解けの水が混ざる川は酷く冷たいが、何もかもぼやけた頭をスッキ
リさせるには丁度良いとして、阿求は着物を脱いで水に浸かった。
身を切るような水温に震えるが、何日も体を洗わずに居た為それ以上に体が綺麗になる感覚が気持ち良い。所詮、腐
りかけた華に水をやるようなものだ、と自虐しながら体を水で濯ぐ。
「ああ、水浴びですか。適当でトテモ『妖怪らしい』ですね」
「……」
「どうです。『妖怪らしく』適当に気紛れに、お食事もご一緒に」
阿求は水辺からしゃがみこんで此方を伺う映姫を無視して、一人水浴びを続ける。
「そうですか。水浴び気分なんですね。お付き合いしますよ」
そういって、映姫は服を脱ぎ出した。真っ白な肢体が照り返す太陽に映える。一瞬、十代の自分を重ね、阿求は自己
嫌悪した。今更懐かしんでも……。
「何してるんです。寒いですよ」
「心頭滅却すれば水もまた温し」
「どんな格言です……」
「頭を適当にして考えなければ、人生面白く過ごせると言う意味です」
「『諦めろ』ですか」
「私とて半永久を生きる身。当然、職務がありますから苦でもなんでも無いですがね」
「人間と妖怪の頭脳の構造は違います」
「そうでしょうそうでしょう。諦めろとはつまり、妖怪になりきれって事です」
「……」
「何に固執しているんです。稗田阿礼。貴女は――」
「聞きたくありません」
「貴女は、元より」
「聞きたくありません!!!!」
稗田阿礼は、元より幻想でしょうに―――
己の中で蟠っていた、思い出せない、直視できない、直視したくない現実。何故そこまで人間である事に拘るのか。
人間である事にそれほどまでの価値があるのか。稗田とは。稗田猿女とは……。
「……戻ります」
「そうですか。服、洗いましょうか」
「好きにしてください」
「そうします。今は代わりに私の寝巻きを着てください。小さいでしょうけど」
「……」
小さく頷き、自分の居場所へと戻る。映姫もまた、着物を洗い終えてから戻り、直ぐに食事の準備を始める。
「山女もなかなかに賢い。私如きの素人罠には、数がかかってくれませんね」
「また魚ですか」
「昨日はイワナでした。ニジマスは美味しかったですよ。ああ、今日は沢蟹も捕れましたから、味噌汁が良い」
「はぁ……」
「明日は山菜も採りましょうか。如何せん知識がありませんから、毒見をお願いします。特にキノコ」
「構いませんよ、ええ。妖怪ですもんね」
「自虐的ですね」
「くっ……解って言ってますよね、閻魔様」
「ああ、敬称がつきました。禊祓は偉大ですね。毒も落とします」
「……はぁぁ……」
阿求は呆れて、ゴザの敷かれた場所にねっころがる。今日も天気が良い。最近はずっと晴れているらしい。空の機嫌
は今晴れを望んでいるのか。晴れやかですね、憎たらしい。
そんな事を思いながら空を見上げる者もそういないだろう。つくづく腐っていると自覚する。可憐な御阿礼の子はど
こへ言ったのか――そんな発想が、映姫の発言に絡む。
自分が人間である事に固執する訳。実際のところは……死にたいから、などではない。それはずっと仕舞い込んで、
見ない振りをしていた。自分が、稗田阿求が、稗田の子が、転生を繰り返そうとも人間である事に拘る理由。
「……閻魔様……私はやっぱり、幻想なんですね」
「転生の契りを交わした時から、そんな事は知っていたじゃないですか。何を今更。貴女は、元より人間じゃない。
太安万侶、藤原不比等等に想像された、幻想の産物です」
現実ではなく、何故幻想郷の歴史を編纂しているか。そんなモノは当然、最初から自分が幻想だからに決まっている。
稗田家は、それそのものが幻想。
「何故、想像したんでしょうか」
「政治的な意図があったのでしょう。もしくは、本当に求聞持の力を有した存在を隠したかった」
「私、妹紅さんを見ていると、他人のような気がしないんです」
「ではきっと、藤原不比等が想像したのでしょう。貴女達は姉妹ですね。千数百年越しの再会ですか」
「それ一つで、娯楽小説が書けそうです」
「いやまったく。楽しみです。書くんですよね?」
「暇なら」
「一生暇でしょうに」
「そうでした……」
現実は現実の人間が歴史を編纂し、幻想は幻想の人間が歴史を編纂する。古事記とは現実と幻想の合間に存在する、
昔は政治、今は娯楽として楽しまれるモノ。それを『編纂したといわれる稗田阿礼』
フィクションとノンフィクションの境界地。
現実にして幻想。幻想にいながら現実の人間である事を望む、そんな曖昧なモノこそが、本質。
「そういえば、私が強いのも、何か関係ありますか」
「当然です。ここは幻想郷ですよ。幻想度が高ければ高いほど強い。神隠し然り、月人然り、吸血鬼然り、閻魔然り、
絶滅危惧種の巫女然り、魔法使い然り、メイド然り。幻想そのものたる稗田が、弱いはずがない」
「でも……私は、人間として生きていました」
「人間でありたいと思ったからでしょう。あ、ミソ取ってください」
「はい……あの、それはどういう……」
「……思ったより理解力がありませんね。ですから、その昔は外の世界で歴史上の人物として見られ、天細女と猿田
彦の血族として扱われていましたが、しかし歴史書を漁っても一向に発見出来ない貴女の記述のお陰で、今は存在その
ものが疑われています。そんな曖昧な扱いに、貴女自身が反発したのでしょう。幻想でなく現実で居たい。何の変哲も
ない人間でありたいと」
「では蓬莱の薬は」
「それが切欠でしょう。薬は貴女の幻想度を高めた。そして貴女は人間として生きた歴史と幻想である事を否定した
歴史の境界を失い、ネクロファンタジアを手に入れた。断言しても良いですが、貴女が一暴れしたものなら、巫女から
何から皆ひっくるめて退治しに来ますよ」
「それは楽しみですね」
「ああ、悪い事を教えてしまいましたね。でも一つ、その前にやらねばならない事があります」
「え……?」
「稗田阿求。貴女は閻魔との契約を違えた。その罪、贖ってもらいます。ああ、更にその前に」
「……」
「ご飯、食べましょう。お腹空きましたでしょう。今日はお米もありますから」
「閻魔様……」
「ね?」
手渡された味噌汁のお椀に塩辛いものが落ちる。塩分濃度を高めてどうするんだと言う映姫の言葉が、今は酷く優し
く聞こえた。先ほどまでの阿求ならば、怒りに任せて殴りかかる所だっただろう。
山の中でも動きやすい軽装をして、杓も持たず制服も着ていない映姫はまるで威厳はなかったが、言葉一つ一つが自
分の中へと染みてくる。自覚せよ。諦めろ。現実の人間に齎す助言としたら最悪かもしれない。だが、稗田阿求には今
まさに、その言葉が必要だった。
目を背けても、何も変わらない。元より人ではないのだから、無理に人でいる必要は無い。永遠に生きるならば生き
ればいい。適当に、様々な事を誤魔化しながら、繕いながら生きてみれば良い。
その一つ一つの経験が、慣れを生む。諦めを慣れてしまえばもう悩む事も無い。生を惰性に任せ、時折思い立ったよ
うに行動し、暇を潰す。男に手を出してみても良い、女に手を出してみても良い、適当こそが蓬莱人の生き様だ。
「私……適当に生きられますかね……何せ、一分一秒無駄にしたくないと思いながら、生きてきましたから」
「さぁどうでしょう。ただの人ならどうでも良かったんですが、貴女は私の大事な書記でしたからね。肩入れしたく
はなりますが、この先ばかりは解らない」
「公平じゃないんですね」
「そんな事はありません。私の規準なりに、皆すべて平等で公平ですよ」
次第に空は暮れ、太陽は月へと場所を譲る。蓬莱の地は新たなる蓬莱人の経緯を見守るだけ。
尊き神はもうこの世にはいないのだ。高天原にかむずまる神々は地上人を見限ったのだから。己のお陰で更に増えた
のかもしれない。永琳と同じように、怒りを抱えているモノもいるかもしれない。
阿求は、だからどうしたと思う。見限って消えた癖に、今更見下すな。
しかも自分は歴史改竄と云う事実を押し付けられただけの人物なのに。お門違いだ。
それを考えれば、永琳がどれだけ理不尽だか解る。
稗田阿求は、何も、何一つも悪くない。ただ少し、酒の席での口が上品ではなかっただけだ。
・
・
・
・
・
翌日の目覚めは、蓬莱人になってから一番心地の良いものだった。腹を出して寝ている映姫に毛布をかけてやり、外
へと出てみる。今日も今日とて晴天。しかしそれを見ても昨日まで憎らしく思っていた気持ちは何処にもない。
天は常にあるがまま。なれば自分もそれと同様に生きていけば良い。もう思い悩まない。自分は幻想に立ち戻っただ
けで、元より人間などでは、ないのだから。
春の朝のまだ冷たい空気を肺に溜め込み、思い切り吐き出す。その動作一つ一つが新鮮で真新しい。転生人稗田阿求
は今日より、蓬莱人稗田阿求として生きる。
「おはよう御座います稗田阿求。昨日はお楽しみでしたね」
「意味が解りません。閻魔様、そんな事よりお仕事は大丈夫ですか」
「映姫って、呼んで……」
「もじもじしないでください。何もしてません私。で、お答えは」
「大丈夫です。月末に処理する他の閻魔の事務を全部引き受けた分休暇を取っていますから」
「す、すみません……」
「構いません。けれど、契約を違えた罪は償ってもらいます。異存ありませんね」
「仕方ありません」
「長く生きる罪に対しては、またそのうち伺います。では、ちょっと着替えてきますね」
映姫はそういって穴倉の中まで戻ると、大きめの服をもたもたと被りながら現れる。阿求は着替えを手伝い、無用な
事をと怒る映姫に笑いかける。
記憶は無いが、この人物にも相当お世話になった筈だ。記憶にはあらずとも、稗田の魂がそう語る。小難しくて説教
が好きで口うるさいが、これほどまでに人の身を案じてくれる妖怪もいない。
最初からこの人物に相談すればよかったとも思ったが、もう過去を振り返る意味もないので止める。それに、これか
らもずっと、恐らくは映姫にお世話になるのだ。定期的に溜まる穢を祓う為に。
「それでは行きましょう。少し飛びますが」
「今なら、天狗顔負けの速さで飛べそうですよ」
「いやはや、恐ろしい蓬莱人が現れたものです。罪が溜まった暁には、全力でお相手しましょう」
「閻魔様。意外と弾幕がお好きですよね」
「食事と弾幕以外、どんな娯楽がありますか」
「ご尤も」
空に飛び上がる映姫に付き添い、その行き先を予想する。最初は映姫自身が直々に裁くのかとも思っていたが、どう
やらそうではないらしい。山を越え人里を飛び越えて、やがて見えてくるのは竹林。
もう見たくないと言い放ってやった顔が思い出される。
竹林の中へ入ると、間も無くして一人の蓬莱人が現れた。
「諦めはついたかい、稗田阿求」
「お陰さまで」
「ここだけの話ですが、稗田阿求。藤原妹紅は相当心配していましたよ。あいつ何処に行ったんだ、閻魔様は知らな
いのか、あの馬鹿永琳ふざけやがって、折角の蓬莱仲間に引き篭られたらどーする、などと」
「閻魔様は口が軽いなぁ」
「も、妹紅さん……私が蓬莱人になったの、そんなに嬉しかったんですか」
「え、あいや、はは。共感できる友は多い方がいいじゃないか。何せ戦力は永遠亭が上だしほら」
「やっぱりタッグ組みたかったんだ……」
「そんな事より妹紅。もう皆は呼んでありますか」
「ああ、永遠亭に送りつけておいたよ。それより阿求」
「はい」
「改めて宜しく。お前ってなんだか他人の気がしないから、たぶん仲良くやれると思うな」
そんな言葉をかけられ、阿求は映姫と顔を見合わせ笑う。何事だと憚った妹紅には『そのうちわかる』とだけ告げて
謎を残し、報復は完了した。
ねーねーと疑問をぶつける妹紅を無視しながら永遠亭を目指す。視界には入っているが、歩くとなかなかに遠い。途
中で見つけた竹の花の珍しさを延々と映姫に聞かされ始めた頃に、漸くたどり着いた。
周りでは兎達がヒソヒソと何やら噂話をしている。裏に回って庭から入ると、そこには縁側で数人が茶を啜る光景が
広がっている。女性ばかりで華を咲かせたような可憐さ、とはほど遠いその状況は、まさに幻想郷だ。
「お、ご本人のご到着だぜ」
「あ、魔理沙、あんた私のお茶菓子……」
「霊夢師匠、お茶菓子、私もー」
「えぇえぇ、魔理沙が幾らでもくれるって。奪ってらっしゃい」
「おぉぉ……霊夢、お前弟子を使い魔か何かと勘違いしてるんじゃないのか……」
「品性の欠片もない人達ね。もっと優雅になれないのかしら」
「だからアリスは脳内が優雅じゃないんだぜ」
「五月蝿いわよ!! ああもう、なんで私がこんな扱い……」
博麗神社組が何やらやいのやいのとやりだし、霊夢の弟子が魔理沙に陰陽玉をぶち込んだところで終結した。阿求は
喧しいにも程があるだろうと映姫に問い掛けるが、これで良いのですと言い切られる。
「で、皆さん。八意永琳は何処へ行きましたか」
「ああ、輝夜と準備してるぜ。なんか『通常装備じゃ勝てそうにない、科学に頼るか』とかなんとか」
「八意永琳ともあろうものが、なかなかに狡いですね」
「あの、閻魔様……何故、八意永琳と戦わなきゃいけないんでしょう」
「お二方の問題でしょう。さっさと決着つけて、白黒ハッキリしてください。薬を与えた永琳も、契約を違えた貴女
も、正直な所私が説教しても意味がない。お二方で罪と罪、毒と毒を制しあってください」
「……」
結局の所映姫は、別に二人を説教する為に彼岸からわざわざ出てきた訳ではない。長い間保たれていた方向性がズレ
たので、その軌道を正しに来ただけだ。
阿求に諭したのは他でもない。これは、閻魔ではなく四季映姫としての贔屓。白黒ハッキリつけるのは好きだが、心
を失うほど映姫も閻魔をしてはいない。ここで更に攻め立てては、阿求があまりにも不遇すぎる。
故にバランス調整、軌道修正。
軌道は、新たな方向に定められて行く。
「穴倉の前で宴会をしてみたらどうだなんて言いだしたのは、まぁ八意永琳ですが。天岩戸開きのパクりですかね」
「智慧を出したのは、八意思兼ですし、伝統なんでしょう。歴史、好きだそうですから」
「成る程」
「お待たせ」
やがて姿を現したのは、弓矢で武装し、矢筒とカードフォルダーまで完備した八意永琳。隣では蓬莱山輝夜が面白そ
うに笑っていた。後ろでは鈴仙が心配そうに見守っている。
「あの時こうも言ったわ。『どれくらい長い間生きているか知りませんが、家族ごっこは惨めじゃありませんか』
って。これ、実際言われたら貴女でも怒らない?」
「早速恨み言ですか。酒の席の戯言だと言ってるでしょうに」
「貴女は転生する度に新しい人生を歩む。私や姫はずっと変わらずに同じ顔を見続ける。貴女の血統は高尚だろうけ
れど、その高尚でご立派な人とて、長年連れ添ってきた家族を蔑む事なんて出来ない。永遠亭は、私と姫が作った城な
の。私と姫が許容する限りは、そこに住む者すべて家族なの。決して、ごっこなんかじゃないわ」
「ああ……そうですか。本当の所、歴史への恨みより私の失言のほうが、むかっ腹が立つと」
「貴女が幻想である事なんて知ってたわ。さ、力ずくでも謝らせるから、覚悟して」
「蓬莱の薬まで飲ませて良く言うものですね――此方こそ。私のあんまりの強さに驚いて、ほえずらかかないでくだ
さいね、永琳先生」
「おっ、始まった始まった」
皆が庭の端へと下がり、見物の場所取りを始める。この場には、誰も悲痛な顔の者は居ない。実際、誰が蓬莱人にな
ろうと、誰が恨みを持っていようと、関係ない。
「さぁ張った」
「私、稗田さんに三十銭」
「永琳に五十銭だぜ」
「輝夜、お前は永琳に一円な」
「じゃもこたんは阿求に一円ね」
「ちょ、ちょっと。閻魔様。賭け事は良いの?」
「白黒ハッキリついて解りやすい。ああ、でも相打ちは私の総取ですがね」
物事は幻想郷のあるままに。幻想郷で秩序が循環し、幻想郷で終焉を迎える。稗田阿求と云う一要素もまた、様々な
可能性の一を担う者。そこに現れる様々な選択肢に、様々な者と本人は泣き、笑い、悩んで行く。
阿求は思う。
これはこれで良かったのではないのかと。絡み合った世界に一つ生まれた可能性の結果がこれならば、きっと理不尽
でもなんでも無い。実際に起こり、今こうして生きているのだから。
後悔しても仕方ない。全てはあるがままに。抗うのも良いだろう。諦めるのも良いだろう。それもまた、一つのある
ままだ。それを受け入れ、暮らしていこう。
もう稗田は子孫を残す事も無い。自分が全てを書き作り、後世に伝えていけば良い。幻想郷が無くなるその日まで。
「一回オーバーフォールした方が良いわ、稗田阿求。粉微塵にしてあげる」
「はは。出来るものならどうぞ――」
稗田阿求は、人間の頃には絶対に見せなかった狂気の笑みを永琳にぶつける。新しい楽しみを見つけた子供を邪悪に
したような顔は、久々の恐怖を感じる永琳に――本当の笑顔をプレゼントしてやれた。
「永琳先生、ぶっ殺しますからね!!!」
「アンタこそ、バラバラにして宇宙空間にばら撒いてやる、この飲んだくれ!!!」
幾百の弾幕を縫い突撃するその姿は、新たなる蓬莱人の誕生を歓迎する花火のようだと、四季映姫は思った。
※ 世界の偏狭で我幸せ者也と叫ぶ
その人は見たものを全て記憶する力を持った賢者だそうだ。様々な智慧を用いて人々や妖怪を助け、誰からも尊われ
る素晴らしき賢者だと。見た事ないけど。今は目を隠してモノを見ずして生活してるらしい。覚えが良すぎるが故に、
長く生きていると脳が故障するのだとか。けど目を隠そうとも他の器官が発達しているから、難なく生活出来ているん
だと。賢者ってのはそういうものらしい。
その賢者がどこに棲んでいるか。どうやら人里離れた場所に庵を構えているらしい。辿り付くまでは難儀だが、相談
さえ出来れば、悩み事はたちどころに解決するとか。それに、無償なんだとさ。
何でももう百年は生きているとか。名前?
名前は――稗田阿求命。生き神様だってさ。
ああ、それと、大層美人らしい。幻想郷ってとんでもない奴ほど美人だよな、なぁ。
「ち、ちかれた……」
ひっきりなしに訪れる訪問者に、性分柄的確なアドバイスをしている阿求は庵の外へ出るとそのまま倒れた。最近は
噂が広まり、リピーターまで現れる始末。大体適当な悩みを伝えて行くのだが、阿求はそれにすら真面目に答える。
その悩む顔が妙に良い、という噂が広まっている事は、本人も知らない。
「阿求、一息入れよう。そろそろ日が暮れるから客も落ち着くだろうし」
「ああ、妹紅さん。すみませんね」
「だから妹紅で良いってば。何十年言い続けてるんだ」
「ああ、お姉様が良かったですか」
「……ありかもわからん」
「ほぅ」
庵を構えてもう数十年になるが、流行ったのは最近だ。常々人里を離れようと画策していたのだが、折角の知識人が
いなくなるのは困る、と人々に縋られた為になかなか里を離れる事が出来なかった。己の身辺の者が天寿を全うした事
を切欠にやっとの事で独り立ち。酷く悲しい思いもしたが、蓬莱人として諦めのついている阿求の適応は早かった。
今はこうして変化は無いが、落ち着いた暮らしをしている。
どこのだれぞが口コミしたお陰で博麗神社より初穂料が増えているので、どうも博麗家から睨まれているらしい。そ
の内退治に来るかもしれないが、阿求はそれはそれで楽しみだった。
「神様も大変だ」
「無償で良いと言っているのですが、ほら、蔵の中はお酒で一杯ですし」
「飲むには困らないなぁ」
「……ふふ」
「ん?」
伸び上がった体を起こし、二人で縁側に腰掛け、桜の木を正面に据える。人間でありたいとダダを捏ねたあの日が懐
かしいが、今は過去。しかし、記憶は鮮明であり、これは誰にも汚される事のない蓬莱人人生の第一歩だ。
今は目を隠している為に見る事もない桜はきっと満開なのであろうと、阿求は想像する。
「阿求、どうしたのさ」
「妹紅さん。桜は咲いていますよね」
「ああ、満開だよ。毎年聞くよなぁ、お前。鼻で解るだろうに」
「いいじゃないですか。妹紅さんの口から事実を聞いても」
「人から齎される情報は、その時点で曲がっているかもしれない」
「いいえ、妹紅さんは嘘を吐きませんし、私は疑いません」
「む……」
「閻魔様に諭してもらった事もそうですが、やっぱり妹紅さんにもらった助言が、一番最初の切欠ですから。だから
嘘なんてつかないって、思ってます。貴女の言葉は、私にとって――」
「な、なんか恥ずかしいから止めなよ」
「ああ、妹紅さん。なんだか体温が上昇しましたね」
「さ、さり気無く手を掴むな」
「じゃ大胆に掴めばいいんですか」
「いやだから、ああ、ああっ」
「妹紅……阿求に手を掴まれてそんなに嬉しいのか……そうか」
「ああ慧音先生。ごきげんよう。居たんですか」
「知ってたくせに……知ってたくせに……ああ、蓬莱人は歳を取るたびに傲慢になる」
「阿求はなして、はなして……」
「離しませんよ。折角大事なお姉様に逃げられたら困るじゃないですか。特に誰かに取られたり」
「はん……蓬莱人同士でやってるがいいさ………いいさ……ああ、どうしてこんなことに」
慧音はいそいそと動き出し、蔵からお酒を持ってくるとぐびぐびラッパ飲みし始める。
「そう。全部は阿求に薬を飲ませた永琳が悪い!!!」
二人は一発で酔っ払った慧音を落ち着くよう宥めるが、どうやら収まらないらしいので、阿求は妹紅をひっぱって慧
音に投げつける。ぐしゃりと妹紅が嫌な音を立てて撃沈するが、ぶつけられた本人は満足であったらしく子供をあやす
ようにして撫で始めた。
「ふふ」
見えはしないが、その光景はきっと面白いものなのだろうと想像する。
阿求が目を隠したのは三十になってから。モノを見るたびに頭痛が酷くなったのが切欠だった。光は失われたものの、
生活に不自由はない。
当然、出来る事ならば直接目で見てみたい。嗅ぐ触れる聞く悟る以外の、自分がもっとも大切にしてきた部分で、こ
の幸せな光景を目の当たりにして、記憶に留めて見たい。
目隠しに触れるが――そのまま手を下ろした。蓬莱人の自分がこれ以上の幸せを望む事は、過ぎていると思ったから。
死にたい死にたいと喚く事も無くこの歳まで生きてこられたのは、姿形も声も変わらない、藤原妹紅が傍にいたからだ。
これ以上、望める訳がない。
「む。阿求、お客だぞ……うわ」
「ああこの気配……忘れもしない」
近づいてくる足音に、類稀な気配。まるで空気が表情を語るような、不思議でおぞましいオーラ。
「ごきげんよう稗田阿求。今日も殺しに来たわ」
「そろそろだと思っていました。本当に永琳先生は、私のことが好きですね」
「ええ、愛してさえいるわ。日課というのは、欠かすと不安定になるのよ」
「私もです。ああ、新しいスペルカードを考えたんですよ。受けてくれますかね」
「望む所よ。さぁ、今日こそバラバラにしてあげる」
「今日こそ謝らせます。貴女からきく『ごめんなさい』は、きっと気が触れるほど気持ちが良い響きなんでしょうね」
「まぁ、汚い言葉を使えるようになったものね。ゾクッとしちゃうわ」
「ふふ。さ、始めましょうか、大馬鹿者」
「えぇ、殺りましょうとも」
二人は笑いあい、茜色の空へと昇って行く。春の風を受けながら漂う二人の異様さは、まさに幻想。
「あいつら、幸せそうだね、慧音」
「そうだな。お前も、輝夜も、永琳も、阿求も、私も。皆幸せさ。行く川の流れは絶えずあって何一つ原型を留め続
けるものなんてないのさ。お前達が不変だろうと、私が長生きだろうと。諦めの先にだって幸せはある。自分が気がつ
かないだけで、諦められるって事は外界から受ける変化をありのまま受け入れるって、ことだから」
「それが不幸せな変化でもかい」
「不幸せすら娯楽にするのが、お前達蓬莱人だろう」
「そうだった」
「くたばれ阿呆薬師イィィッ!!!」
「アンタこそ、くたばりあそばしなさい!!!」
蓬莱人稗田阿求は、幸せだった。きっと、こんな幸せがずっと続くのだろうと思うと、もっと幸せだった。
目は見えないけれど、死なないけれど。
――諦めの先にあるものは、幻想として最上級の幸せだった。
end
なんか先手を越された気がします
いつかリベンジしたいな
これは非常に良い阿求と永琳でした!
ご馳走様。
えーきさま大好きなので非常に楽しめました。
あっきゅんは、二次設定くらいしか知らんけど、だからこそこんなに愉快に読めたのでしょう。
毎回毎回楽しんで読んでいます。
御見事!!
久しぶりに創想話で名作に出会えた
蓬莱人になったときの心境はまったく想像ができない、
私は答えが出せないことだったのであなたの考えに触れれてよかったです。
素晴らしい作品をありがとうございます。
下にもあるがホント久しぶりだよこういう名作は
この組み合わせが来るとは思っていなかった、中身もスゴイ。
あとがき含めて100点満点文句なし。
作者様に感謝、いいもの読ませてもらいました。
ごちになりました
「そりゃあ随分と、贅沢で幸せな悩み恨みだね」
そう言ってしまう自分は、悩み恨むほどの事が無い人間なのでしょう。
今昔どうなるかは知りませんが、今はこの馬鹿騒ぎを見て我が身の有り難さを――
>>ああん(びくんびくん)
……いやほんと、コレだけは問答無用で有り難いと思える。
つーか楽しそうだな君達。
良い物をありがとうございました!
これはもう名作でしょう……ありがとうございました。
ご馳走様でした。
ごちそうさまです
アクセントに笑いと少しの艶っぽさを加えて最初から最後まで
楽しませて貰いました。
作者の才能に敬服すると共に幻想郷の懐深さに魅了されました。
永遠というテーマについて力のある語りが展開され、その上で永琳と阿求の血の通ったやりとりが描かれていて好印象でした。
軽はずみには描くことのできないテーマを、相応に大きなスケールを楽しむことが出来ました。よく構想を練られたものと思われます。
大作お疲れ様でした。
蓬莱人となった事による葛藤と暴走する登場人物達、あっきゅんの毒舌。
ところどころでお馬鹿な所が溢れ返っているのに、それでもあっきゅんは答えにたどり着き、物語は完結している。
なんとも素敵としか言いようがない作品でした。
ギャグを挟みながらも、全体に流れる幻想郷らしさがとても良かったです。
いい意味で掟破りの作品だと思います
俄雨さんの中に神を感じました
なんか能力的に一度受けたパターン系弾幕は・・・
様を幻視しながらスイスイ読めた文章力に感服です。
あっきゅんが30歳位までしか生きられない理由も、なるほど! と思わせる解釈で、鬱になりがちな話ですが愉快痛快に楽しませていただきました。
ご馳走様です。
本当に素晴らしい作品です。久方ぶりに、この作品を読めて良かった、という気分になれました。
魅力的なテーマを魅力的な解釈してる、と思う
幻想郷は全てを受け入れるのよ。
それはそれは残酷な話ですわ。
今後も初心を忘れず、皆様に楽しんでいただけるような作品を書いて行きたいと思う次第であります。
本当に本当に、ご評価ありがとうございました。
私にとっては今まで見てきたあっきゅんのSSの中でも間違いなく、一番の面白さだと思います
このような素晴らしい物語を読ませていただき、本当にありがとうございました!
あとがきで吹いた
心地よさど真ん中でした
それと阿求って正直よく知らないんだが興味が沸いた
脳内にキャラの心情、動作、世界観が浮かんできてのめり込みました。
個人的に、今まで読んだSSでトップ3に入りました。
ありがとうございました!!
名作だって事は確かななんだけど……
>稗田阿礼は、元より幻想でしょうに―――
の所が衝撃的なサウンドノベルみたいに感じました。
きっと、空白を使ったタメはもちろん、構成展開がきちんとしていたから、読んでいてこんなに威力を感じたのでしょうね。
…あと、あとがきのオチぐあいが絶妙でw
切なさからくる息苦しさが、あれで元に戻りましたw
以前に書かれたスカーレット姉妹の作品といい…
またも作品世界に引き込まれました。
最高です♪
それにしても素敵なお人だ。酒飲むし毒吐くしすごく幻想。
テーマがいい。シリアスになりそうでなりすぎないのが絶妙だった
あとキャラが適度に不真面目なのも話の緩和剤としていい具合に働いていたと思います。
でも一番笑ったのが作者コメの阿求www
永琳って色々理由つけてるけど実は輝夜に対する妹紅のように殺しあう相手が欲しかったんじゃ無いかなと思ったり
そう知ったおれの、そのときの高揚感をどう現したものでしょうか……
じわりじわりと酒と一緒に染み込ませるような阿求のこころもちの変化がたまらない
これは、これはおもしろい 不死に焦がれてしまうほどに
というか後書きのギャップにやられたw
創想話で最も感動したかもしれません。
後書きから読んでる人がいたら、是非長いからと言って敬遠せず読んで欲しいです。
(いや私が長いから後でじっくり読もうと後回しにしてたもので…orz)
何はともあれ最高の作品でした!貴方の作品にはいつも考えさせられ、読んでいる間は笑い、涙し、落ち着けることが無いというのに、最後の爽快感は何なのでしょうね。なんかもう大好きです!
とても面白かったです。ありがとうございました。
藤原家との絡みや八意家との因縁もよく描かれていて
非常に味のある作品であったと思います。
って後書きのあっきゅんはもうダメだwwww
文章構成が良くて読みやすいのだけれど、少しキャラや世界観を壊している感じがする
きっと二次創作の限界なんだろうな
神話や史実を利用した阿求の真実などキャラクターや世界背景が素晴らしかったです。
しかしあとがきのこれはwwww
面白かったですよ
映姫さまには痺れました。
あとがきは吹いたw
あっきゅんの変わりようにびっくりしつつも楽しく読ませてもらいました。
素晴らしい作品をありがとうございました
良い作品をありがとうございました。
いい言葉を教えていただきました。ご馳走様です。
今後もここ、創想話で、ジャンルにとらわれないものから、趣味丸出しのものまで、様々書いて行きたいと思う次第です。
頑張ります。超頑張ります。
シリアスとコメディの境界を自由気ままに漂っている、そんな文章だと思います。話の中身が重くても、登場人物たちは東方らしい軽さを忘れていない。そんな彼女たちのスタンスが本当に最高です。
いつまでも読んでいたい。読み終わるのが残念だ。そう思ってしまう一作でした。この一作を読まさせていただいたことに感謝。ありがとうございました。
面白かった!!!
内容自体は物凄く重いのに、この乗りの軽さ!
自分が書いていたら、思いっきり暗い話になっていたと思います。
それを、このように軽く仕上げる手法に感激でした。
あと、恍けた映姫様素敵!吹っ切れたあっきゅんも素敵!
とにかく、感動と笑いをありがとうございました。
僕がいくら正しい文法で小説を書いても、これより面白いものはできませんから。くやしいけど、完敗です。
そして後書きwww
並列していて見てた小説に気を取られていて忘れてたんですが
一目見て10000点越えRate14代だったので
「ちょwwww得点自重wwwww」と脳内に再生された私は映姫様に裁かれた方がいいですね
量より質と言いながらも両立を求めてきた私にとっても
あまり長いと思わなかった小説106KBは歴代3位に入りますね
稗田阿礼と思兼を結びつけちゃうところがグー。
宴会のシーンが天岩戸のもじりと気づいたときはニヤリとしました。
ワイルドな映姫様もいいなぁうふふ
キャラが立っているし、物語に破綻は無いし、
独自の設定も話の中に上手く盛り込まれているし、で
もう言うことがありません。感服いたしました。
あと後書きのあっきゅんはもうダメだと思うんだ
(゚∀゚)o彡゜あっきゅん!あっきゅん!
華麗なドリフト走行で駆けていくようなスリルとテクニックとセンスに
完全に魅せられてしまいました。
あまりの感動に賞賛の言葉すら思い浮かびません。
あ、明日もテストなのにこんな時間まで読ませるなんて…責任とってよねっ
本当にこうガツンと来る作品に合えるからたまんねぇ・・・
あぁん(びくんびくん
点数を入れていきます。
創想話の中でもこれだけ面白く、感動した作品は見たことがありません。
作者さん本当にありがとう。
そのくせ限りなく個性的だ。
……えーき様良すぎるw
コレは自分の中で一番の名作だと感じる事ができました。
閻魔様のキャラが最後までつかめんかったww
自分もあっきゅんのSS書こうとおもって読ませていただいたんですが…。
これ超えるとなるとそれこそ蓬莱人にでも成らないといけないですね。
とても面白かったです。最後のあっきゅんwwwww大好きw
求聞史紀から窺える阿求の黒さが、このSSで結晶化されました。
もっと早く読めば良かったもっと早く気付きたかった
非常に面白かったです。
最高です。
長編ですが一気に読めてしまう面白さでした。
そして、誰か蓬莱グラマラスあっきゅんを描いてくれ!
しかし作者さんは日本神話好きですね(笑)。設定のつなげ方がまた巧い。
この作品にたどり着いたのは本当に偶然だった。
その偶然を導いた”蓬莱人”に幸あれ!
蓬莱人はやっぱ偶数でペア組んで仲良く喧嘩すべきだと思うんだ
あっきゅんも妹紅も良いキャラでしたが、ノリノリの四季様がすごく良かった。
何かこんな幻想郷もアリだなっていう風に読んでて思わされるんですよね。
何というかすごく面白かったです。