Coolier - 新生・東方創想話

YUYUの奇妙な食卓・@は砕けない

2007/07/25 08:07:16
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この作品は、J○J○の奇妙な冒険の第四部の中の、
「イタリア料理を食べに行こう」を見ていないと訳が解らないと思われます。
後、サブタイトルにそれ程深い意味はありません。
以上の事を了承できる方はお読みください。
出来ない方は、戻る事をお勧めします。





























とある日の午後

冥界の西行寺家のお嬢様である西行寺幽々子は、珍しく冥界から出て来ていた。
「しかし、急にどうしたんですか?突然、散歩に行きたいだなんて」
その傍らには、庭師にして幽々子の従者である魂魄妖夢が付き添っている。
「なんとなくよぉ。それとも何?妖夢は理由がなきゃ散歩しないのかしら?」
「いえ、そんな事はありませんが………」
普段は冥界から殆ど出ない主が、突然外に出ると言い出したのだ。
理由が有ると思うのも無理は無い。
「ちょっと外を見て回りたいと思っただけよ~」
幽々子はいつもどおりの調子でそう言う。
如何せん、妖夢と幽々子では人(?)生経験の差が有りすぎる。
仮に幽々子が何か思う所があって外に出たとしても、今の妖夢にそれを察知する事は出来ない。
それを理解している為、妖夢は、取り敢えず幽々子に付き合う事にした。
「あら~?」
と、幽々子が何かを見つける。
「どうかしましたか?幽々子様………って、何でしょう?あれは」
幽々子の視線の先を追い、妖夢もそれに気付く。
視線の先にあるのは一軒の家。
その家自体もこの幻想郷にある、どの家の造りとも違っていたが、それ以上に変な事がある。
現在、二人が居る場所は森の中である。
その中に家がデンッと構えているのだ。
それも、アリスや魔理沙の様に場所を選んで造ったと言うよりは、突然ここに出てきたような、そんな不自然さが漂う建てられ方だった。
二人は訝しがりながらも、取り敢えず、その家に近づいてみた。
すると、家の前に看板が立っていた。
その看板にはこう書かれていた。

幻想料理 本日のお料理・お客様次第


「な、なんですか?これは」
妖夢は幽々子に尋ねてみる。
「幻想料理屋ね」
幽々子は断言した。
「知ってるんですか?」
「え?だって、ここに書いてあるじゃない」
幽々子は看板に書いてある文字を読んだだけのようだ。
「いえ、そうではなく……その幻想料理と言う物がどんな物か、と言う事です」
「さぁ?」
結局、何も解らないと言う事だ。
「しかし、こんな所に料理店を出して客なんて来るのでしょうか?」
こんな森の中でまともな客が来るとは到底思えない。
店の立地条件としては最悪だろう。
「解ってないわねぇ、妖夢」
が、幽々子は違う見解のようだ。
「この通好みっぽい所が逆にそそるんじゃない♪」
「ま、まさかこの怪しげな店に入るんですか?」
最早確定事項であろうが、一縷の望みを込めて妖夢は尋ねる。
「当たり前じゃない♪」
所詮は一縷。
あっけなく一蹴された。
「解りましたよ。こんな事もあろうかとお金を持ってきて置いて良かったですよ………」
妖夢は溜息を吐きながら、ルンルン気分で店に入っていく幽々子に続く。

カランカラン……

ドアに付いていた鈴が控えめに響く。
室内は外の世界で言う所の洋風な内装だった。
「あらぁ……雰囲気良いじゃない♪」
幽々子は気に入ったようだ。
「しかし、何故机が二つしかないのでしょうか?」
妖夢の言うとおり、室内にはテーブル1つと椅子3つのセットが2つあるだけだった。
「それは私が一人でやってるからよ」
店内の奥から店員と思わしき女性が現れた。
長い金髪に白い服にエプロン、そしてコック帽と、如何にも料理人という姿の女性が。
「………………」
「………………」
二人はその姿を見て絶句していた。
何故なら、その姿は誰が見ようとも八雲紫だったのだから。
「一人でウェイトレスも兼ねているから、テーブル2個で精一杯なのよ。さ、お席へどうぞ」
呆然としつつも、言われるままに席に着く二人。
「貴女……」
幽々子が紫を見ながら口を開く。
「外の世界の人かしら?」

ガタタンッ!!

妖夢は盛大にずっこけた。
「あら?どうしたの?妖夢」
幽々子は盛大にずっこけた妖夢に驚いて声を掛ける。
「な、な、な………何を言ってるんですか!幽々子様!!思いっきり紫様じゃないですか!!!」
妖夢は立ち上がりながら突っ込んだ。
「いいえ、そちらのお嬢様の言うとおり、私は外の世界の人間で、ユカリ・トラサルディと言うわ。ユカリンって呼んでも良いわよ♪」
「思いっきりユカリって言ってるじゃないですか!!!」
再度突っ込む妖夢。
「板前さんに失礼よ、妖夢」
幽々子が厳しい顔つきで妖夢に言う。
「いえ、しかし………」
「私の従者が失礼したわね」
「気にしてないわ」
「そう?それにしても本場物の外の世界の料理が食べれるなんて、幸運だわぁ」
「いやいやいやいやいや、何で外の世界の人が幻想郷の料理なんて作れるんですか」
妖夢がまたまた突っ込む。
「あら?幻想料理、とは書いてあるけど、幻想郷の料理、とは書いてなかった筈よ?」
紫、もとい、ユカリはそう返す。
「別物……なんですか?」
「ええ、勿論」
ユカリは自信たっぷりに妖夢に返した。
「それじゃあ、何食べようかしら…?さっそく献立を見せていただけるかしら?」
幽々子はユカリに献立を催促した。
「献立?そんなものウチには無いわ。」
「どういう事かしら?献立が無いと言うのは」
「私がお客様を見て料理を決めると言う事よ」
「このお店ではお客の好きな物を食べさせないと言うのかしら?」
幽々子の雰囲気が剣呑なものになる。
こと、食に関しては人が変わるのだ。
「ふぅ~ん……貴女、夏バテになってるわね」
「え!?」
幽々子の顔をジ~ッと見た後、ユカリはそう発言し、幽々子はその発言に驚いた。
「それに睡眠不足のようね。3時間くらいしか寝てないわね?」
「!?」
「幽霊に睡眠不足ってあるんですか?」
妖夢が素朴な疑問を口にした。
「ふむふむ……昨晩、深爪をしたわね?左肩も凝ってるはずよ。それにカリスマも低下しているわ」
「そ、そんな………」
「ゆ、幽々子様?まさか………」
「そ、その通りよ!全部あってるわ!!!(腹ペコキャラと言われなかったのは嬉しいわ)」
「いや、カリスマ低下は否定しておきましょうよ」
突っ込んでばかりの妖夢だった。
「私は快適な気分になる為の料理を作る為に様々な知識と経験を取り入れたわ。そして、その快適な気分になれる料理を貴女達に出す事が出来る。あっと、解説する暇があったら料理を出さなきゃいけないわね。そちらの女の子はどうするのかしら?」
水を注ぎながらユカリは妖夢に尋ねた。
「あ、私はあまりお腹が減っていないので紅茶で良いです」
こんな洋風な店に緑茶は無いだろうと思い、妖夢は紅茶を頼んだ。
「解ったわ」
そう言ってユカリは厨房へと入っていった。
「さて、私の症状を見抜いたのは見事だけど、料理の腕のほうはどうかしらねぇ?」
そう呟きながら幽々子は水を飲む。
「!?」
そして、一口飲んだ途端、表情を変えた。
「どうしました?」
「妖夢、この水、飲んで見なさい」
「え?あ、はい」
言われるまま、妖夢は自分の分の水に口をつける。
「!?こ、これは!?」
「こんな美味しい水……今まで飲んだ事が無いわ!!」
幽々子が感動している通り、その水は信じられないほどの美味だった。
妖夢自身もそれを実感している。
「た、確かに……しかし、この水は何処で汲んで来た物なんでしょうか?」
妖夢が、そう幽々子に尋ねた時。
「あ、あら?おかしいわね……あんまり美味しかった所為か、涙が出てきたわ」
幽々子の目から涙が流れていた。
「幾らなんでも大袈裟ですよ、幽々子様」
呆れ混じりに笑いながら妖夢は言う。
「妖夢、貴女手拭い持ってたかしら?ちょっと涙が止まらないのよ」
「はいはい、少々お待ち…を……!?」
妖夢は手拭いを差し出そうとして固まる。
幽々子の目から尋常じゃないほどの涙が流れていたからだ。
「な、なに!?この涙の量は!?全然止まらないわ!!」
「ゆ、幽々子様!!」
妖夢が幽々子に駆け寄ろうとしたその時、
「待ちなさい」
厨房から姿を現したユカリに止められた。
「紫様!幽々子様に何を飲ませたんですか!?」
妖夢が今にも抜刀しそうな剣幕でユカリに尋ねる。
「だから私はユカリだと…まぁいいわ。取り敢えず、落ち着きなさい、その涙は眼球内の汚れを洗い出すと共に睡眠不足を解消している所なのよ」
「そ、そんな馬鹿な………」
妖夢がそう呟くと、
「妖夢!」
幽々子に呼ばれた。
「眠気が完全に吹き飛んだわ!36時間熟睡して目覚めたような清々しい気分だわ!!」
「どんだけ寝る気なんですか、幽々子様は」
それでも突っ込む事は忘れない妖夢だった。
「さ、料理を続けましょう。まずは前菜のモッツァレッラチーズとトマトのサラダよ」
手に持っていた料理を幽々子の前に差し出すユカリ。
「幽々子様、本当に目はなんとも無いんですか?」
妖夢が心配そうに尋ねる。
「ええ、なんとも無いどころか、誇張なしで爽やかな気分だわ」
幽々子は清々しい表情で返す。
「し、しかし、今出た涙の量は明らかに異常でしたよ………」
ユカリをチラリと覗き見ながら妖夢は言う。
(まぁ、でも確かに私も飲んだけど、本当に美味しい水だったし……)
「それで、ユカリン。この野菜とチーズは……」
「モッツァレッラチーズとトマトのサラダよ。モッツァレッラチーズとは脂肪抜きした柔らかくて新鮮なチーズの事よ」
「なるほどね~」
「まぁ、まずは食べてみてくれるかしら?」
「ええ、そうさせてもらうわ」
そう言って幽々子はチーズを口に運ぶ。
「…………」
そして、微妙な表情になる。
「う~ん……なんか良く解らない味ねぇ………」
「違うわよ。チーズだけ食べるんじゃないの、チーズとトマトを一緒に食べるのよ」
ユカリが幽々子に食べ方を教える。
「へぇ……そんな食べ方は初めてねぇ………」
そんな事で味が変わるのか?と、疑いつつも、幽々子はチーズとトマトを一緒に口に入れる。
そして

「お、美味しいぃぃ!!!」

と叫んだ。
「こ、これは!この味は!!」
思わずガタッ!と席を立つ幽々子。
「チーズがトマトを、トマトがチーズをお互いに引き立たせる!味の調和とでも言えば良いのかしら!?」
「そ、そんなに美味しいんですか?私にも一口食べさせて下さいよ」
「いやよ、欲しければ貴女も頼めば良いじゃないの。もう3切れしかないんだから」
幽々子は妖夢の願いを却下した。
「もう、相変わらず食べ物の事になると厳しいですね……仕方ありません、私にも同じのを頂けますか?」
あの幽々子が感動するほどの物に興味を惹かれ、妖夢はユカリにそう頼んだ。
「構わないけど…肩こりが治るのは肩こりを持つそちらのお嬢様だけよ?貧乳の貴女には効果が無いと思うけど………」
「な!?」
あんまりな事を言われて、思わず顔を真っ赤にする妖夢。
「肩こり……?そう言えば、何か首の付け根の辺りが熱いわ………」
幽々子は肩の辺りを手で触る。
「お嬢様……上着を脱ぐ事をお勧めするわ」
とユカリは言うが。
「いやいやいやいや!幽々子様はこの上着脱いだら、下何も着てないんですよ!?」
まぁ、正確には白い衣を下に一枚着てはいるが。
「な、何か……痒くなってきたわ!!」
幽々子は上着をまくり、左肩の辺りを掻く。
「ちょっ!?幽々子様!はしたないですよ!!」
下に衣は着ていたが、肩を直接掻くにはそれすらも脱がないといけない。
当然、豊かな胸が思いっきり露になっている。
「そ、それどころじゃないわ、妖夢……!!」

ズルリッ!

「なっ!?」
「これは!?」
幽々子の肩から何かが抉られ、ベットリと指に付いてた。
「それは垢よ」
「垢!?」
「幽霊に垢ってあるんですか?」
ここでも突っ込む妖夢。
「貴女の肩の悪い細胞が垢となっているのよ。もっともっと擦って垢を出しなさい」
「な、なんかまずいんじゃないかしら!?止まらないわよ!?」
幽々子の肩からは止め処なく垢が抉られる。
「幽々子様!お止めください!!蹴鞠くらい溜まってますよ!?肩が抉れてしまいます!!」
妖夢は幽々子から抜き出された垢を空のテーブルの上に纏めている。
「い、いえ、妖夢……」
「え?」
見ると、幽々子の肩は何ともなってなかった。
「か、軽いわ!肩がとても軽いわ!!あれほど頑固だった肩こりが治ったのよ!!」
「そ、そんな馬鹿な………」
妖夢は唖然とするしかなかった。
「それでは少しの間失礼するわ。パスタの茹で加減を見なきゃいけないから」
ユカリはそう言うと、垢の溜まった皿を持って厨房へと戻っていった。
「凄いわ、このお店………彼女は天才よ!ユカリンと言う板前は!!」
(いえ…異常です。異常過ぎです、この料理は………大体、あれ紫様だし)
とてつもなく説得力のある結論を基に、妖夢は警戒を強めた。

暫くして、再びユカリが料理を持って現れた。
「待たせたわね、次はこれよ」
その皿には赤いスパゲッティが乗っていた。
「少し辛目のスパゲティ……名づけて、娼婦風スパゲティ」
「へぇ、これはまた美味しそうね」
幽々子はまったく警戒などせずにその料理に目が行く。
余談だが、幽々子はとっくに服を着なおしている。
「さて、私は今の内にメインディッシュを作ってくるわ」
ユカリはそう言うと、再び厨房に戻った。
そして、幽々子がスパゲティに手を付けようとした時、
「お待ちください、幽々子様」
妖夢が止めた。
「何?妖夢」
「幽々子様はさっきから料理や水が怪しいとは思わないんですか?」
「怪しいって……何が?」
「蹴鞠ぐらいの垢が出たり、涙が異常に流れたり、どう見てもおかしいじゃないですか」
「別に悪影響が出るどころか、悪い所が治ってるんだから良いじゃない。あむっ」
「あっ!?」
妖夢の制止も虚しく、幽々子はスパゲッティを食べてしまった。
「う~ん……ちょっと辛いけど、それがまた良いわ~」
モグモグと咀嚼しながら幽々子は感想を述べる。
「ゆ、幽々子様!食べるのを止めて下さい!!」
「こんな美味しいの、止められる訳ないじゃない~」
やはり、妖夢の制止は届かない。
「あ、あら?」
すると、幽々子に再び異変が起きていた。
「幽々子様!?今度は一体何が!?」
幽々子はジッと自分の手を見ていた。
すると、昨晩深爪した場所の爪が伸び始めていた。
「こ、これは……!?」
「やっぱり……爪がこんなに一気に伸びるなんて有り得ない!!」
幽々子のその様子を見た妖夢は、鞘に入ったまま刀を振り上げ、そして

ガシャァァンッ!!

スパゲッティの皿を砕いた。
「ああ!?何するのよ妖夢!!」
幽々子が批難の声を上げる。
「そのスパゲッティを治して材料別にまで戻します!!」
妖夢はそう叫んだ。
「……………」
「……………」
二人の間に沈黙が走る。
「貴女、そんな事出来たのかしら?」
「そういえば、そんな事出来ませんね」
「スパゲッティ、どうしてくれるのかしら?」
「ついカッとなってやってしまいました。今は反省しています」
「そんな事で許されると思ってるのかしら?」
「というか、こんな料理、絶対変です!有り得ませんよ!!」
「誤魔化したわね……」
叫びながら厨房に向かう妖夢の背中に幽々子は呟いた。
(絶対何か仕込んでる筈だ………)
妖夢は慎重に厨房を覗き込む。
すると

「ちょっとー!あたいをここから出しなさいよ~!!」
牢屋の中に入れられている氷精、チルノが居た。
「まぁまぁ、そう怒らないで。これを食べてくれるかしら?」
そう言ってユカリはチルノに何かが乗った皿を差し出す。
(あれは……もしや、メインディッシュと言う物では?)
妖夢の推測は当たっていた。
チルノに出されたのは、この後メインディッシュとして出てくる予定の、子羊背肉のリンゴソースかけだった。
「ふ、ふふん!しょうがないから食べてあげようじゃないの!」
美味しそうな匂いに釣られたチルノは、その料理を食べ始める。
すると、
「う…くぅ……あ、頭がぁぁぁ………!!!」
チルノは頭を抑えて蹲り、そしてそのまま痙攣し始めた。
(な…ぁ!?)
妖夢は驚きのあまり、一瞬気配を断つのを怠ってしまった。
「そこで何をしているの!?見たわね!!!」

ヒュォンッ!!

ドガッ!!

「わわっ!!」
妖夢が顔を出していた扉の柱に包丁が突き刺さる。
「貴女!覗き見に入って来たというわけね!?タダじゃ置かないわよ!!覚悟なさい!!!」
そう言いながらユカリは近づいてくる。
妖夢も部屋に入り込んで抜刀し、身構える。
「それはこっちの台詞です!その料理で幽々子様に何をしようって言うんですか!?例え紫様でも許しません!!!」

ムシャムシャバクバク………

ふと、妖夢の背後から何か音が聞こえて来た。
妖夢が振り向くと、そこには既に幽々子用に完成していたメインディッシュを摘み食いしている幽々子が居た。
「ゆ、幽々子様!?何食べてるんですか!!!」
「匂いに釣られて来てしまったわ……店内で非常識とは思うのだけれど…手が止まらないわ!!」
妖夢の制止を聞かずに幽々子は食べ続ける。
「その肉を食べてはいけません!幽々子様!!!」
「美味しいぃぃぃ!!!」
幽々子は叫んだ。
が、次の瞬間
「え…?あ、あら……?頭が…う…うぅぅぅ………!!!」
チルノと同じように頭を抑えて蹲り、そして痙攣を始めてしまった。
「ゆ、幽々子様ぁぁぁぁ!!!」
慌てて幽々子に駆け寄る妖夢。
しかし、その背後にユカリが迫る。
「タダじゃあ置かないわ!!!」
「紫様!貴女と言う人はぁぁぁ!!!」
ユカリは何かを大きく振りかぶり、そしてそれを妖夢に振り下ろして










「ここではメイド服に着替えなさい!!!」






そう叫んだ。
「えぇぇぇぇぇぇ~!?!?」
そう、ユカリが振り下ろしたのは何故かメイド服だった。
「え?着替えろ……と言ったんですか?」
「許さないわ!貴女、断りなく厨房に入ったわね!?ここに入る前に貴女は着替えなさい!!!」
ユカリは妖夢にそう叫ぶ。
「あ、あの、何で着替えを?」
「貴女のその服!掃除をした時の服でしょう!?調理場は清潔でなければならないのよ!直ちにこの殺菌処理を施してあるメイド服に着替えなさい!!」
「メイド服?着替えろって………」
妖夢が呆けていると、
「何しているのかしら?妖夢」
後ろから幽々子の声が聞こえて来た。
「ゆ、幽々子様!ご無事だったんですね!!」
妖夢の顔がパァッと明るくなる。
「見ての通りよ。それより、貴女は何をしているのかしら?」
「え?え~っと………」
妖夢は返答に困っていた。
一つは何をしているのか?と問われ、まさか殴り込みしてましたとも言えず。
もう一つは、何か、幽々子の雰囲気が変わっていたからだ。
「貴女の従者は事もあろうに清潔とはいえない服のままこの厨房に踏み込んだのよ。それで、今この殺菌処理を施したメイド服を着てもらうところよ」
ユカリが妖夢に変わって幽々子に説明する。
「そうなの?それは私の従者が失礼したわね。妖夢、彼女に従って速やかに着替えなさい」
幽々子は妖夢にそう命じる。
「え?いや、しかし………」
妖夢は反論しようとした。
だが、
「聞こえなかったのかしら?」
口元を扇子で隠しながら、冷めた声で言う幽々子に抗えず、素直に従った。

「あの、貴女の目的は、本当に幽々子様に美味しい料理を食べてもらう。それだけなんですか?」
メイド服に着替え終えた妖夢はユカリに尋ねた。
「料理人にとってそれが全てよ。それ以外に何があると?」
呆けた顔で返されてしまった。
「ちょっと、何時まであたいをこんな所に閉じ込めておくつもり?」
今度は違う所から声が聞こえて来た。
牢屋に入れられていたチルノだった。
「あら、ごめんなさい。今開けるわ」
そう言って、ユカリは牢屋を開けた。
「ふん、こんな狭い所にあたいを閉じ込めてくれて……まぁ、美味しい物を食べさせてくれたから許してあげるわ」
チルノはユカリにそう言う。
「な、なんか……貴女も雰囲気変わってませんか?」
妖夢はチルノに尋ねた。
「何?ああ、冥界の半人前じゃない」
「な、誰が半人前ですか!!」
チルノの言葉に妖夢は憤る。
「それが半人前なのよ。貴女、一人前のつもりでいたの?なるほど、だから何時まで経っても半人前のはずね」
「い、言わせておけば!!」
「正論を返せなければ力ずく?冥界のお姫様の従者って野蛮なのね?」
チルノは幽々子を見ながら言う。
「まったくね。みっともないわよ、妖夢」
「ゆ、幽々子様………」
幽々子にそう言われては、引き下がるしかない妖夢だった。
「さて、こんな所にいても退屈だし、あたいはもう帰るわよ」
確認を取るようにチルノはユカリに言う。
「ええ、ご協力ありがとう」
「ああ言うのは、協力じゃなくて強要って言うのよ」
ニッコリ笑うユカリにそう吐き捨てて、チルノは去って行った。
「ま、まさか………」
妖夢はそこで漸く思い当たる。
最初は睡眠不足。
次は肩こり。
そして、その次は深爪。
幽々子が最初に診断されていた症状の内、残っているのは二つ。
「そう、さっきの料理はカリスマを引き出す物だったのよ」
「そ、そんな…馬鹿な……そんな物が…!?」
信じろと言うのが無理であろう、そんな料理の存在を。
しかし、先程から幽々子から発せられるオーラは、まるで春雪異変の時の幽々子のようだ。
今の幽々子には、確かにあの時のカリスマを感じられる。
それに、さっきのチルノも妙な威圧感があった。
「さて、それじゃあ貴女はこの厨房の掃除をしてもらうわよ」
「えぇ!?何でですか!?」
「何でじゃないでしょう?貴女、さっきあの服で動き回ったじゃないの。お陰で厨房が汚れたわ。しかも無断侵入。何か文句あるかしら?」
「う………」
ユカリの料理が怪しかったとは言え、厨房に無断で侵入したのは事実。
それを言われては最早反抗できない妖夢だった。
「さ、それじゃあ私はお嬢様に夏バテを治して帰っていただこうかしら。」
「それじゃあ私は席に戻ってるわ。しっかり掃除するのよ、妖夢」
「あ、はい」
自分に殆ど見向きもせずに戻っていく幽々子を見て妖夢は思う。
(普段の幽々子様なら、今の私の格好を見たら抱き付いてほお擦りしてくるのに……やはり、カリスマを身にまとっている時は違うんだな………)
そして、同時に、何か寂しさのような物も感じていた。
「と言うか……付き合わされて、料理を食べた訳でもないのにこんな事している私って一体………」


因みに、それから数日で幽々子のカリスマ状態は解けた。
その時、偶々メイド服を着ていた妖夢に飛びついて頬擦りをする幽々子を見て、嬉しいような悲しいような、微妙な心境の妖夢だったと言う。







おまけ


マヨヒガ

「ぐ……はぁ…はぁ…はぁ………」
「ら、藍様、大丈夫ですか?」
縁側で大の字に倒れている藍を見ながら橙は尋ねる。
「あ、ああ……大丈夫だよ、橙」
そうは言うが、とてもそうは見えなかった。
藍は件の料理屋の家を作る為に、紫に強制労働を強いられていた。
藍の頑張りと紫の鞭により、驚くべき速さで店は完成された。
現在は紫が幻想郷へと隙間を開けて強制的に移転させて使っている。
そして、その紫がたった今帰ってきた。
「あ、お帰りなさいませ、紫様」
「お、お帰りなさいませ、紫様」
橙は普通に、藍は何とか起き上がりながら挨拶をする。
「ええ、ただいま」
「如何でしたか?あの店は」
藍が紫に問いかける。
「ええ、良かったわ。流石に良い仕事するわね」
その一言だけで藍は救われる思いだった。





その後の余計な言葉がなければ。


「でも、あれもう使わないと思うから、処分しておいてね」


紫のその言葉に藍は固まった。
「ふ…ふふふ………」
藍は突然笑い出した。
流石に橙も驚いて間合いを離す。
「八雲藍……任務の中で主(の性格)を忘れる…か」
そんな事を呟いていた。
「橙」
次に、自分の式神の名を呼んだ。
「な、なんですか?」
怯え気味に返す橙。
「覚えておきなさい………主に弄ばれるという事は、こういう事だぁぁぁぁぁ!!!!」

ゴフゥ!!!

盛大に血を吹いて、藍は仰向けにぶっ倒れた。
「ら、藍さまぁぁぁぁ!?紫様!!藍様が!!藍様がぁぁぁ!!!」
橙は己の主の主に助けを求める。
「ああ、放って置きなさい。どうせ、いつもみたいに何事もなく復活するわよ」
が、主の主の対応は何処までも冷たかった。
「紫様ぁぁぁぁ!?」
橙は悲痛な声を上げる。
「主は…鬼子です………」
そう呟き、藍の意識はフェードアウトしていった。

後日、本当に何事なく復活し、複雑な心境の藍であった。




おしまい
結構ノリと勢いだけで作っちゃった作品です。
少しでも笑っていただければ幸いです^^

ともあれ、好評不評問わず待ってます。

あと、本作品とは関係ありませんが、「彷徨い人の物語」は場違いだとの指摘を受けましたので、削除いたしました。
ご了承ください。
華月
簡易評価

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コメント



0.490簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
元ネタの方をはっきりと覚えている訳ではないのですが、
水で涙、サラダで垢と元ネタそのままではく、何らかのアレンジが欲しかったです。
4.70名前が無い程度の能力削除
やべぇ・・・ネタがよくわかんなかった俺は・・・やべぇ。
ちょっと立ち読みしてきます。

あと、華月さん。彷徨い人の物語 が消えたのにはなにか理由が?
結構好きだったもので・・・気になります。
6.60名前が無い程度の能力削除
トニーが警戒されまくっていたのは杜王町にスタンド使いが引かれ合ってどんどん集まってきていて次々に仗助たちと戦っていた最中に出会ったからという面が大きく、それが全体の緊張感と最終的なオチのバランスと際立たせていると思うのですが、この作品では平和な日常の中で突如としてこの事件が起こっているのでそこの良さが全く失われてしまっているのが残念です。

ただ、妖夢がひたすらツッコみ続けるなどの独自性があったのは良かったです。

文章の点では、最初の方の地の文が、会話の店舗を殺してしまっていて勿体ないと感じました。後の方では会話文と地の文が巧く調和していると思うのですが……。

後、最後だけアルテイシアな所にウケましたw
8.無評価華月削除
>何らかのアレンジが欲しかったです
そうですねー。勢いとは言え、次からはもう少し考えて書きます。
ご指摘ありがとうございます。

>彷徨い人の物語 が消えたのにはなにか理由が?
後書きでも書いてありますとおり、複数の方から場違いの指摘を受けたからです。
強行して書き続けて荒れるのも嫌ですしね。

>三人目の名前が無い程度の能力さん
ふぅむ……ノリで書くにももう少し背景を考えた方がよさそうですね。
ご指摘ありがとうございます。
9.70名前が無い程度の能力削除
凄い懐かしい…ジョジョではこの話が一番好きだったなw
妖夢のツッコみが激しくて良かったです。
15.100名前が無い程度の能力削除
これはよいものだw
16.80名前が無い程度の能力削除
いいね~
19.70名前が無い程度の能力削除
なつかしい