-----少女空腹中-----
毎度のことながら絶賛饑餓状態にあるのは幻想郷の素敵な巫女さん、わたしこと博霊靈夢だったりする。
なんというか空腹で妙に天井が遠く感じるのでちゃぶ台の下で平らになっている。
ぶっちゃけ栄養が足らずに視力が落ちてる。
昨日までは押し入れに入っていたのだけど、体育座りでミイラになって発見される自分の姿を幻視してしまったのでちゃぶ台の下で平たくなっていることにした。
ああもうなんというか、乙女として以前に人間として終わっている感が無いでも無い。
しばらく相当ずいぶんな時間そうしていたら、素敵な巫女の素敵なカンに頼らずとも「時」が来たのがわかった---
今宵は保存食であり非常食である玄爺を鍋に・・・
「一寸マテ、それは巫女として以前に人としてどうかと思うぜ」
魔理沙、いい夜中に床下から出てきて人倫を説くのは人としてどうなのよ。
「暗闇で刺身包丁を構えてる巫女さんには言われたかないぜ、サスペンスか」
そのやれやれだぜってポーズがむかつくわ、暗いのは行燈の油は舐めて存在しないからでサスペンスは想定外よ。ところで出てきた床って私が寝てたあたりじゃない、なにしてたのよ。
「乙女の秘密だぜ」
神社裏の森でわら人形相手にしてなさいよこの変態金髪。
「いやちょっとマテ押し通るな陰陽玉を出すなその金髪からの差し入れだぜうぁ包丁を向けんないつも神社を使わせてもらっているからとだから落ち着けぇ」
落ち着くのは魔理沙の方よ
あとで聞くと頬がこけきり目だけが闇に光る髑髏は肝試しの恐怖を超えたみたいね。
まぁこれ以上問答している時間もおしかったし、正直玄爺なんかより魔理沙のほうが美味しそうだったし。
もちろん性的な意味で。
-----少女爆食中-----
カコン、と皿に骨が落ちる。アリスが作りすぎたと称した巨大なオムレツとローストチキンは瞬く間に軽い骨だけになってゆく。先に少々アリスと食ったが一割も食えなかったのだが・・・さすがは靈夢。
鳥はドードー鳥と言ってた、これは血が出るほど美味かったぜ。オムレツは卵っぽくない仕上がりの珍味で「アリス特製、ハンプティ・ダンプティのオムレツ」とか言うらしい。なんでも塀から落ちたから作ってみたとか。
靈夢が満ち足りた笑顔で茶を入れはじめた。
すでに骸骨から復帰してふっくらつやつや、なんだそのエネルギー転換効率の良さは、さては靈夢貴様クリオネだろう。
考えてみれば普段愛らしくもほやふやの無重力が、捕食となると触手でんでろでんな処までよく似てる。
触手かぁ~今夜から靈夢を見る目が変わりそうだぜ、もちろん性的な意味で。
「なーなー、靈夢~」
「なによ、触手ならもう出さないわよ」
なんで考えてる事がわかるんだろう、まぁ靈夢だからなぁ。
「いや、触手はあとでいいんだ。実は今朝魅魔様からベルが届いてんだが」
魅魔様がいうに名称「ぽけベル」用途は離れた相手に短文を送れる。ただ結界に穴を開けないと結局外とは交信できないからそう簡単に使えるものじゃ無い、あとまだ完全に幻想になってないので存在が不安定らしい。とりあえず靈夢にメッセージを示す。
『レイムキトクヨウチョウサ』
「という訳で脱衣場から箪笥の中まで調査してみたぜ、いやぁ実に有意義な調査結果だったな」
もちろん性的な意味で。
「はぁ、私はいつもの栄養失調よ。結果が分かっているんだから調査もなにも無いわよ」
「いや、魅魔様のことだから神社を永く留守にするに当たって、なんらかの対策を立てていたハズなんだ」
魅魔様、種族祟り神。得意分野祟り全般。そのせいか神社の参拝客はわら人形にごっすんしか来ない。
「食い物の恨みが最もシャレにならないことを知っているはずなんだ、それがなんにも手を打ってないのは考えてみれば変だぜ」
魅魔様は昔の歴史を思い出すためと言って出て行った…ことになっている。けどアイオワ級が退役して戦艦全てが幻想になったとかつぶやいていたから、たぶん凄い事になるんじゃないかな。
具体的には博麗神社が大和ミュージアムに(大和+陸奥長門武蔵、おまけに周防付きオール実物)
ああ想像だけで胸が熱い、なんというか燃えるぜ。もちろん性的な意味で。
「魅魔の残していったものって…御札ぐらいしか無いわね。でも何の魔力も通って無かったわよ」
「じゃあその御札がキモだな。どんなもんだか見せてもらおうか」
「庫裏から出してないわよ、多量にあるしなにか軽くヤバイ名前だったし」
「ヤバイ名前の御札ってなんだ、どんな名前だ」
「⑨と言っていたわ」
……………………………………………………⑨?
惚けていてもしょうがない、お茶の時間を中断して現物を拝みにゆくことにした。
明かりの無い鎮守の森は実に暗い、聞こえるものといえばわら人形に釘をうつコーンという音のみだ。
「なぁなぁ、御札について他にはなにか聞いてないのか」
「うーーーーん、なにか落雁がどうとか言っていたわ」
落雁とは米粉に水飴を混ぜて固めた御菓子の事だ、御札が食えるのだろうか。
「食べられなかったわ、魅魔は土井とかいう落雁がどうのと言ってたけど」
ますます分からん。
そうこうしているウチに庫裏についた。そういえば博麗神社は御輿や山車を繰り出した覚えが無いな。気になって聞いてみたら不思議な笑いをされた。正直包丁構えた髑髏より怖い。
「注意して、御札が多量に積まれて雪崩れるわよ」
ますます御札とやらがキモだ、そこまで多量に残された⑨御札とやらはなんだんだ。
とりあえず靈夢は右扉を、私は左扉をあける。せーーーのっと。
正直想像をぶち超える光景に目を丸くした。猫に小判というレベルじゃないぜコレ。
たぶん魅魔さまは靈夢を心配して、幻想になった端からありったけ雪崩れ込ませたと見た。
なるほど魅魔さまが神社の困窮を不思議がるのが分かった。靈夢がどんな浪費をしたかと思って調査を命じたのだろう。
「靈夢、これってお札(おふだ)じゃなくてお札(おさつ)だ。あと⑨じゃなくてマルクというんだ」
…あと「どいってらくがん」じゃなくてたぶん「どいっつぇらんど」なんだろうな。
「で、結局食べられるの?」
…靈夢が⑨っぽい。ああもうやれやれだぜ。
・視点が第三者だったり霊夢だったり魔理沙だったりと分かりづらい
たまらず吹き出しました。アリスよ、それはあんまりだ…
なんかミリネタ多すぎ(誉め言葉)ww
こいつは燃えるぜ、興奮するぜ!
性的どころか色々な意味で。