「いよう霊夢、今日も粗茶を頂きに来たぜ」
「あんたが粗茶って言うな」
縁側に座る私の目の前にいきなり着地してきた魔理沙が、開口一番失礼な事を言う。まあ、魔理沙が突然現れるのも失礼な言動をするのも、いつもの事なのだけれど。
いつもと違うのは、今が夜である事と、魔理沙がその手に笹を持っている事か。
「今日は昼間には来なかったけど、体調でも悪かったの? また変なキノコでも食べたとか」
「何を言ってる、今日は七夕だからわざわざ夜に来たんだよ。って言うかまたって何だまたって」
「はいはい、冗談よ冗談」
軽口を叩き合うのはいつも通りだけどね。
「はい、粗茶」
「おう、頂くぜ粗茶」
本当は粗末なものなどではないお茶を、縁側に座る魔理沙に差し出す。粗茶とか言わないで、少しはありがたがって欲しいものだと思う。
私がお茶を淹れている間に、魔理沙は持参した笹を勝手に庭先に立てていた。ご丁寧な事に、五色の短冊やら吹き流しやら星飾りやら、色んな七夕飾りが笹いっぱいにくくり付けられている。主な飾りはしっかりと網羅されていた。恐らく、日中ずっとかかりっきりで作ったのだろう。魔理沙も大した暇人である。私も日がな一日お茶を飲んでばっかりの暇人なので、人の事は言えないけれど。
私も魔理沙の隣に腰掛け、粗茶を啜る。
色とりどりの七夕飾りに飾られた笹は、色彩に乏しい夜の庭先にささやかな華やかさを提供してくれていた。
意外と悪くない、と思った。
「ほれ、霊夢も何か書くんだ」
押し付ける様にして、魔理沙が私に短冊を渡す。しかも何故か束である。一体いくつ願い事をしろと言うのか。
「魔理沙はどんなお願い事をしたの?」
「そりゃあもちろん、もっとパワフルな魔法が使える様になります様に、ってな。弾幕ごっこで誰にも負けない様に」
うん、聞くまでも無かった。
いつかの流星祈願会の時もそんな願い事をしてたし。
「他にも、良いキノコが採れます様にとか」
良いキノコって一体どんなキノコかしらね。
ドーピングでもしたいのか。もしくは幻覚作用でキモチ良くなれるやつとか。
「部屋が片付きます様にとか」
それは自分で何とかしなさい。願う事じゃないでしょうに。
「もう少し背が伸びます様にとか」
あら、割と気にしてるのかしら。魔理沙の身長は年齢相応だと思うのだけれど。
魔理沙の短冊を漁れば、「もう少し胸が大きくなります様に」なんて書かれたものがあるかも知れない。
まあ、下手にそんなのを見つけてしまえば弾幕ごっこと言う名の喧嘩が開演する事必定なので、探したりはしないけど。
「後は……」
「ちょっとちょっと、あんた一体いくつ願い事をしたのよ」
「短冊の数だけだぜ」
「……あっそ」
とりあえず、呆れておいた。
目の前の綺麗な七夕の笹が、現実には魔理沙の願い事が書かれた短冊だらけなのかと思うと、何かこう、俗っぽくなってしまい、夢が無くなる。魔理沙にとっては夢いっぱいな笹である訳だけれども。
まあ、流星祈願会の際には100以上の願い事を用意して来た魔理沙の事だ。これは想定の範囲内とも言える。
良くも悪くも図々しいところが、いかにも魔理沙らしいと言うべきなのだろう。
「でもさぁ、魔理沙」
「何だ」
私は座ったまま、天を仰ぐ。
するとそこには、七夕の夜を彩る、星空の中を流れる壮大な天の川が――――無かった。
「この天気じゃねぇ……」
「そうなんだよなー……」
折角の七夕の日なのに、今日は生憎の曇り空。
二人して空を見上げても、雲が身を引いてくれるはずも無く。折角かわいい女の子達がそろって星空を切望しているのに、雲とは何と無粋な存在なのか。
今が梅雨時である事を考えれば、雨が降らなかっただけマシではあるのだけれど。
時折、雲間から少しだけ星がのぞく事もあるから、その内晴れて来るかも知れない。それを期待するしか無かった。
「今の暦の方が便利らしいけど、七夕が梅雨の時期と重なっちゃうのは難点よねぇ」
「ま、今の暦と旧暦とで2回七夕の願い事が出来ると考えれば、お得かもな」
何と都合のいい考え方なのだろう。まさに魔理沙。
こんなプラス思考な晴れ女の力を以ってしても曇りなのか。
「何とかならない? マスタースパークを有効活用して」
「何とかならなかったぜ」
「やったのね……」
「ノンディレクショナルレーザーも駄目だった」
わざわざそこまで言うのなら、恐らく冗談ではなく本当にやって見たのだろう。
火力自慢の魔理沙の魔法でも無理なら、これ以上は何をやっても無駄か。
そもそも、限りない広がりを見せる雲に対して、こんなちっぽけな人間がどうにかしようと言うのが無謀だけれども。
「でもまあ、私にゃ奥の手がある」
魔理沙はここぞとばかりにニヤリと笑って、懐から一枚のスペルカードを取り出す。
常日頃、魔理沙との弾幕ごっこに明け暮れている私は、それが何のスペルカードなのかがすぐに分かった。
「ああ、そう言えば魔理沙はそんなスペルカードを持ってたわね」
「ま、ちょっと待っててくれ」
魔理沙はそう言って箒を手に取り、スカートをなびかせて空へと舞い上がる。どうやら、ここ母屋の屋根の上に乗ったらしい。
私も庭に出て、魔理沙が作り出す天体ショーを見物する事にする。
「よし、いくぞ霊夢」
そう言って魔理沙は屋根の上で胸を張り、ミニ八卦炉を空へと掲げる。そして、
――魔符「ミルキーウェイ」
魔理沙がそうスペルカードの宣言をすると、星々をちりばめた光が、夜空に向かって一条の帯となって溢れ出す。
星々の帯は周囲に星屑と光を散らせながら、暗闇一色の空を切り裂く様にして、遠くへ遠くへと伸びてゆく。それは空に架かる橋の様に、上天に大きな弧を描いている。
まさに、魔理沙版「天の川」。幻想郷にふさわしい、幻想的な光景だった。
先頭を行く星は、一体どこまで光をもたらしているのだろう。幻想郷の隅っこにまで届いているのだろうか。
「へへ、どうだい、私の『天の川』」
地上に戻って来た魔理沙が得意気に言う。実際、そうして得意になるだけのものではあるだろう。
「中々ね。っていうかあのミニ八卦炉、魔砲を撃つだけじゃなかったのね」
「ああでもしないと、私自身が天の川を愉しめないじゃないか」
それはそうか。
魔理沙が撃ち出したミルキーウェイは、屋根の上に置かれたミニ八卦炉を射出源として、今も夜空へと星と光をもたらし続けている。
「ありったけの魔力を注ぎ込んだが、せいぜいもって10分程度だろうな」
「それだけ持つのなら結構なものだと思うんだけど」
「いやいや、どうせやるなら一晩中持たせたいじゃないか。もっと魔力が欲しいんだよ」
「なるほど、それでドーピング用に良いキノコが欲しい訳ね」
「その通りだぜ」
「……個人的に、そこは否定して欲しかったわ」
ドーピングはともかく、折角の天の川なのだ。愉しまなければもったいない。
私達はまた縁側に腰掛けて、魔理沙版天の川の観賞と洒落込む事にする。
風に吹かれると、沢山の七夕飾りで彩られた笹がさらさらと鳴る。
静かな夜。
涼しげな夜風。
空には素敵な星の架け橋。
それが本物の天の川ではなくても、七夕の雰囲気を愉しむには十分過ぎるものだった。
「そう言えば霊夢、まだ願い事を書いてないんじゃないか?」
「そう言えばそうだったわね。でも私は別に、願い事なんて無いのよねぇ」
何も無い訳ではないけれど、願い事にするほどのものがあまり思いつかない。
ただ、折角こうして七夕飾りや短冊を用意してくれた上に、綺麗な天の川まで披露してくれたのだから、願い事のひとつくらいはしておきたかった。
「そうねぇ……」
私は短冊を手に取り、筆を進める。
何か一つだけ願い事をするのだったら、これが良いと思う。
「どれ、私が笹に付けて来てやるよ」
「ん、よろしく」
別に隠し立てする様な願い事でもないので、書き上がった短冊をそのまま魔理沙に手渡す。
私の願い事を見た魔理沙は、思った通り、ちょっと不満そうな顔つきでこちらを見返して来た。
「明日も美味しいお茶が飲める一日であります様に、か。何か、相変わらずと言うか、もっと他に願い事は無いのか?」
「無くはないけど……、やっぱりこれが一番かなって思って」
「別に願うまでも無いんじゃないか? どうせ昨日も今日も何もせずにお茶飲んで一日過ごしてたくせに」
「今日までがそうだったからと言って、それが明日をも保障してくれる訳ではないのよ」
「そりゃそうだけどな」
納得がいったのか、それとも諦めたのか。魔理沙は私の説得をやめて、短冊を笹にくくり付けてくれた。
変わらぬ日常を望む私と、常に変化し続ける事を求める魔理沙。願い事の方向性が正反対なのが、面白いと思う。そんな私達だからこそ、何だかんだでこうして付き合いが続いているのかも知れない。
あの笹は魔理沙の願い事だらけなのだけれども、織姫星はちゃんと私の願い事も見てくれるだろうか。
「そう言えば、この天の川には織姫星と彦星が無いわね」
「おお、それもそうだな」
そう言って魔理沙は、良い事を思い付いた様に手の平を叩いた。
魔理沙は目を閉じ、二言三言何かを呟く。するとそれぞれの手の上に大きな星の弾が現れ、魔理沙はその2つの星を天の川めがけて夜空へと飛ばす。この2つの星はミニ八卦炉が放つ星々よりも一際大きく作られている様で、ミルキーウェイが流れる中でも十分目立つ光を放つ事だろう。
便利な魔法だなぁと思いながら、私は天の川の両側に配置されるであろうその行く先を目で追う。しかしその2つの星は、天の川の上で寄り添ったまま、動きを止めてしまった。
「ちょっと魔理沙、これじゃあ配置が違うじゃない」
「いや、これでいいんだよ。今日は織姫星と彦星が年に一度の逢瀬を楽しむ日だろう? そうさせてやらないと」
「……なるほどね」
性格は無遠慮だったり図々しかったりするくせに、変なところで気を利かせるから困る。
でも、自分のスペルカードに「恋」なんて文字を入れたり、こうして星々を模した魔法を使ったりと、何だかんだ魔理沙には乙女ちっくな面が多々ある。だからこそ、彦星に逢いたいという織姫の願いを解し、叶えさせてあげているのだろう。
普段は男言葉を使っていたり、泥棒稼業に勤しんでいたりするけれど、魔理沙だって女の子なのだ。
ただ、悲しいかな、普段が普段なだけに、そういう見方をしてくれる人は殆どいなさそうだ。
余計なお世話だと知りつつも、もう少し大人しくしていれば可愛らしく見えるのに、とか思ってしまう。
「どうした? ぼーっとして」
「何でもないわ」
でも、そんな事を思うのは無粋か。
魔理沙は自分の考えで、そう振る舞っているのだろうから。
魔理沙のそういう面を、少なくとも私は知っている。それだけでもう十分なのかも知れない。
自分勝手で遠慮知らずでひねくれている。そう在ってこそ、霧雨魔理沙なのだから。
「あー……、もう出力が弱まって来てるな」
「……ホントね」
見上げると、先ほどまで威勢良く溢れ出ていた星と光の奔流が、徐々に勢いを失っているのが分かった。さっきまではマスタースパークほどの太さがあった天の川が、少しずつ細まって来ているのだ。
魔力が尽きつつあるミニ八卦炉は次第に出力を失い、光の色が弱まってゆく。
星々は星屑へ、光はうつろな幻へ。
そうして魔理沙の作り出した天の川はゆっくりと実体を失ってゆき、暗闇の中へと溶け消えていった。
最後まで残っていた織姫星と彦星も、いつしか輝きを失い、消えていった。まるで、ろうそくが燃え尽きたかの様に。
そして完全に光を喪失した庭には、元の闇夜が舞い降りたのだった。
いや、ほんのちょっと前まで溢れんばかりの光の洪水を目にしていたからか、今は尚更暗く見える。
何故だろう、元の状態に戻っただけなのに、祭りを終えた後の様な、最後の打ち上げ花火が咲き散ってしまった後の様な寂しさを覚えるのは。
「10分、持たなかったなぁ」
冗談でも言う様に喋っているけれども、その軽い口調の裏側には、やはり寂しさが感じ取れた。同時に、幾ばくかの悔しさも。
私が感じるのは寂しさだけだけれども、魔法を撃ち出した魔理沙にとっては、自身の魔法が思ったより持たなかった事が不本意だったのだろう。
けれど私にとっては、十分過ぎるほどの七夕の演出なのだった。
「……あら?」
私は、先程の魔理沙の天の川を今一度思い描こうとして、空を仰ぎ見た。すると、
「少しずつ、晴れて来たみたいね」
「……お、ホントだ」
先程まで全天を覆う様に広がっていた雲が、いつの間にかかなり取り払われているのに気が付いた。まだまだ雲の量が多いけれど、沢山の星々も、天の川の一部も確認する事が出来た。織姫星と、彦星も。
もう少し待っていれば、徐々に晴れて来るのかも知れなかった。
「もしかしたら、魔理沙のミルキーウェイが雲を追っ払ってくれたのかもね」
それは、別に慰めようと思ってではなく、自然と口をついて出た言葉だった。
魔理沙は私の言葉には答えず、ただ一心に、天の川を見つめ続けていた。
魔理沙が作り出した、光溢れる天の川ももちろん綺麗だったが、宝石箱を引っくり返した様にそれぞれの星が気ままにきらめく天の川も、思わず見とれてしまうくらい綺麗だった。
そうして、互いに無言のままどれほどの時間が過ぎただろう。ある時、魔理沙が噛み締める様に言葉を紡いだ。
「……でも、やっぱり本物には敵わないなー」
「本物って、天の川の事?」
「ああ。スケールも、繊細さも、美しさも」
魔理沙はいつか、この星空をも凌駕する魔法を使おうと考えているのだろうか。
それにしても、相手が何であれ、負ける事をとにかく嫌う魔理沙が自身の負けを認めるのは、極めて珍しい事だった。けれど一方で、その言葉尻にはやはり、ほんの僅かな卑屈さが滲んでいる気もした。
夜空を飾る無数の星々は、魔理沙にとってどういう存在なのだろうかと、ふと思う。何を思って、魔法を使う際のモチーフにしているのだろうか。
超えるべき目標であり、羨望する対象であり、時には嫉妬すら覚える存在であり。
これでは、まるで――。
「今は敵わないけどな、いつか絶対に超えてやるんだ」
これは、天の川の事を言っているのか、それとも。
……いや、余計な事を考えるのはよそう。きっとお節介な詮索だ。
「……願い事、叶うといいわね」
だから私には、こうやってお茶を濁すのがせいぜいだった。
「もちろんだぜ」
そう答える魔理沙の表情は、いつも通りの笑顔だった。
そんな魔理沙を見て、思う。魔理沙が七夕に託した願い事が、いつか本当に叶います様に、と。
七夕の日というのはそもそも、女性が技芸の上達を願うとそれが叶うと言われている日である。魔法の腕を技芸と言っていいかは分からないけれど、魔理沙の願い事は、七夕の願い事としては極めてまともなものなのだ。魔理沙がそれを知っていて願い事をしているのかは、分からないけれど。
そして魔理沙は、こうして願い事をするだけでなく、腕を上げる為に、裏ではちゃんと努力をしている。
こうした努力に裏打ちされた願い事こそ、叶って欲しいと思う。
魔理沙は、目標を達成する為の努力を決して怠る事は無いのだろうから。
そんな魔理沙が、今日はいつもよりちょっとだけ愛おしく見えた。
魔理沙の友人として、今の私に出来る事と言えば、
「でも、あの綺麗な天の川に対抗するなら、魔理沙はもうちょっとおしとやかさを身に付けた方がいいんじゃないの? 私みたいに」
いつも通りに茶化してやる事くらいだろう。
「へっ、どの口がそんな事を言ってるんだか。鏡を見た事無いのか?」
「いやいや魔理沙、巫女というものは『立てば芍薬坐れば牡丹、歩く姿は百合の花』なんて言われる様に、一つ一つの立ち居振る舞いが常に美しく華麗に……って全く聞いてないわね」
「聞いてないぜ」
まあいいわ。どうせ誰もそんな事思ってくれやしないだろうし。
こうやって、どうでもいい事で茶化し合う。それだけでいいのだ。
「でだ、霊夢。一つ頼みがあるんだが」
「何かしら? あらたまって」
「今日はここに泊めてくれないか?」
「はぁ? どうしてよ?」
突然何を言い出すのだ。こいつは。
「いや、さっきのミルキーウェイですっかり魔力を使い果たしてしまってな。もう自分の家まで飛んでいく力も無いんだ」
「全くもう……、勝手になさい」
そんな事を言われたら、泊めない訳にはいかないじゃない。
「さて、床の確保も出来たし、今宵は神社で星空観賞だぜ」
そう言って魔理沙は、縁側にゴロンと横になってしまった。遠慮の無い態度は相変わらずである。
でもまあ、そんな魔理沙がどうにも憎めず、何だかんだで私はかなり魔理沙には甘い。
こう、年下のきょうだいを相手にしている様な気になってしまうのだ。わんぱくな弟というか、かわいい妹というか。
結局のところ、私はけっこう魔理沙の事が好きなのだろう。
「そうやって横になってたら、10分後には寝入ってたりして」
「いやいや、いつかの流星祈願会の時みたいに、途中で寝たりはしないぜ」
「そうならいいけど」
そうは言うが、恐らく1時間もすれば寝てしまうだろう。流れ星が落ちて来ない星空は、変化に乏しい。それに、いつもならもう寝る時間だ。
というか、個人的には早く寝て欲しいと思っている。
今、私の手には、先程魔理沙に渡された短冊が1枚だけ握られている。
魔理沙が寝てしまってから、私は短冊に「魔理沙の願い事がいつか叶います様に」と書くつもりでいる。
私がこんな願い事をしているのを魔理沙が知ったら、もしかしたら怒るかも知れない。
けれど、さして望むものなど無い今の私にとっては、それは確かに、星々に託したい願い事なのだった。
そんな風にあれこれと物思いに耽りながら、ふと横を見ると、
「…………すぅ、すぅ」
「…………」
……なんかこの子、既に寝ちゃってるんですけど。気持ち良さそうな寝顔さえ浮かべて。
まあ、分からないでもない。先程のミルキーウェイで、魔理沙は本当に魔力を使い切ってしまったのだろう。魔法使いにとっての魔力は、一般人における体力と同じ様なものだ。要するに、スタミナが切れるまで体を動かしていたに等しい。そりゃあ寝たくもなる。
「全く、世話が焼けるわねぇ」
そう言いつつ、世話を焼くのが嫌ではなかったりする。
私はひとまず、短冊を脇に置く。
願い事を書くよりも、とりあえずは魔理沙を寝床に運んでやるのが先の様だった。
ますますの発展を期待しています。