誇り高く、気高く、孤高で、狡猾であれ。
それこそが私の譲れない矜持で、その矜持が私に言わせるのだ。
紫さま、いつか必ず、そのお命頂戴致します。
≪お読みになられる前に≫
・本作品では主要登場人物について、公式設定での未公開部分を私設定にて補完しております。そのため登場人物の行動や描写に関して、読者の皆様に違和感を感じさせるような部分もあるかと存じますが、それらは本作の根幹的テーマに関わり、また、演出の都合上必要な改竄ですので、何卒ご容赦下さいますようお願い申し上げます。
・また、本作には残酷性の高いグロテスクなシーンも含まれております。そちらも合わせてご容赦頂けたら幸いです。
≪目次≫
・≪晩秋雨天 式の式、主の主の伝言を主である式に伝えるのこと -Easy-≫
・≪冬眠と口付けと信頼と不審と煩悶と食用肉 -Extra-≫
・≪冷めたお茶の香りと熱、殺意と愛情に見る侘び寂びについて -Normal-≫
・≪私への回帰 -Extra-≫
・≪まいちるゆきよりあたたかな -Hard-≫
・≪食肉 BBQクライシス -Extra-≫
≪晩秋雨天 式の式、主の主の伝言を主である式に伝えるのこと -Easy-≫
晩秋に降る雨はまるで季節を根こそぎに塗り替えるような無情さがある。
大気の含む秋の色を注ぐ雫でこそぎ落とし、紅葉に燃える木々の装いを剥ぎ取ってしまう、心のない無情さだ。
そんな雨が続く今日この頃は、朝な夕なに空を見上げては太陽に恋しさを覚えるものだが、曇天の空を幸いに濁りの衣をまとう天照は、灰色の御簾の向こうに遠くそのお姿を見せてはくれない。
日ごとに厳しくなる冷え込みに押入れの奥から毛布を出して掛け布に足そうとしても、天気がこうでは虫干しもできず、そうでなくても洗濯物だって溜まる一方で、困ったものだと思う。
「藍さまぁ~」
と――、呼ばわる声に顔を向ければ、廊下の向こうから橙が駆けてくるところであった。
廊下は走ってはいけない、そう常々注意しているのだが、この式の少女は猫のくせに存外鳥頭のようで、注意を受けて「はいわかりましたごめんなさい」と頭を下げるなり、「それでは失礼しますね」と身を翻しては走り去る、というようなことを繰り返している。
私も最近ではこの娘に注意を促すことについて諦めの心地も持ち始めているのだけれど、それはそれとしてその都度その都度できちんと注意をしてみせないと、今度は私が紫さまに、「式の教育も満足に出来ないなら橙の式など外してしまいなさい」と怒られる始末である。
だからこれは無駄と分かってする注意なのだ。
「これ、橙。廊下を走ってはいけないといつも言っているだろう」
いや、無駄にならないといいなぁ、という願望含みの注意と言うべきか。
とはいえ、これをすることで私が紫さまのお叱りを免れられるとあらば、あながち全くの無駄というわけでもないのかもしれない。
「あ、そうでした。えっと、ごめんなさい」
注意を受けた橙は頭を下げて申し訳のなさそうな顔をするが、それがどこまで心根に染みたのだろうと考えると、空しさを覚えずにはいられないので考えないことにする。
苦笑して「次からは気をつけなさい」と言うと、橙は「はぁい……」とやはり申し訳のなさそうな声で答えるのだった。
「それで橙、どうしたね? 言いつけを破ってまでして駆けつけたのだから、何がしかあるのだろう?」
「あ、そうです、そうでした。あのですね、紫さまがお茶を淹れて持って来いって。大急ぎでって言ってました」
「なんだ、紫さまのご用事か。まぁ確かにこの冷え込みでは熱いお茶の一杯も欲しくなるというものだろうな」
「私は熱いお茶よりも、そろそろおこたが恋しいですけどねぇ」
今更言うまでもなく猫舌である橙はえへへと笑いながらそう言う。
「炬燵はこの雨が上がってからでないと出せそうにないなぁ。炬燵布団の虫干しだってお天道さまと相談しないことにはどうにもならん」
「うぅ、残念です」
「雨が上がるまでの辛抱だよ、橙。それよりお茶の用意をしなくては。紫さまにはすぐにお持ちするのでしばしお待ちを、と伝えてくれ」
「はぁい、分かりましたぁ」
そう言って踵を返す橙。
この場を去ろうとするその背中に声を掛けて、呼び止めた。
なんでしょう、と立ち止まる橙に一言。
「橙、廊下を走ってはいけない、と言ったばかりだぞ」
背中越しに振り返った橙は「アッ」と自分の迂闊さに驚いて頬を染め、「ごめんなさい藍さま」と謝ってきた。
私が苦笑して「分かったならもう行きなさい」と言えば、今度はどこぞの淑女のようにことさら上品な風情で静々と廊下の角に消える。
その歩き方と、その後姿に揺れるゆらゆらとした二本の尾とが妙に滑稽で、私は苦笑でない笑いをこぼしてしまっていた。
漆塗りの丸盆は三日月にかかる雲を裏彫りに、張り出した松の枝の優美を重ね彫りした上拵えのものを用意した。
その上に茶と急須、湯のみを載せて紫さまの元へ。
急須の口からほこほこと上がる湯気は茶の香気は清涼感に満ちている。
茶葉は紫さまが先日西行寺の当主殿から頂いてきたものだと聞いたが、なるほど、さすがは西行寺のお土産は一味違うと舌ならずとも感ぜられる。
折角であるし私もご相伴に預からせてもらおうか、などと考えたところで、はて、と気づいた。
そういえば肝心の紫さまは何処におられるのか――そのことを橙に聞き忘れていたのだ。
やれやれと自分の迂闊さを笑ってしまう。
マヨヒガと一口に言っても、この邸宅はそれなりに広い。
その広いマヨヒガで紫さまがよくいらっしゃる場所といえば、まず最初に挙げられるのが居間か、或いは他ならぬ紫さまの閨なのだが、捜し歩くうち、そのどちらにもあの方のお姿をお見かけすることは適わなかった。
まぁ広いと言っても冥界の白玉楼のような非常識なまでの広さではないのだし、こうして捜し歩いていればその内見つかるだろうとは思うのだが、かといって当て所も無くふらふらとさ迷っていれば、ご所望の茶が冷めてしまわないかと心配になってくる。
なにせこの冷え込みだ。
ここ数日降り続く秋の長雨は空気の冷え込みを一層刺々しいものにすると同時、お茶を冷めさせるのにも一役買ってくれていることだろう。
寒さを苦手と思うほどに軟弱ではないけれど、思わず嘆息してしまう。
急須の口からほこほこと上る湯気は温かみを感じさせるが、それは一方で日増しに冷たくなる大気の変化を、来たる季節を痛烈に思わせるのだ。
夏の去就、秋の深まり、冬の到来――暦の環が見せる折々の相。
縁側を歩いて紫さまを捜し歩く内、嫌でも目に入るのは庭の楓の散り行く様だ。
夏頃はその葉の青さで庭の風景に溶け込んでいた楓の木々は、流転する四季の巡りを詠うように今ではすっかり紅に染まりきり、マヨヒガの庭園の中、己の存在を際立たせている。
しかし夕焼け色にその身を染める楓たちも、いずれは夜の帳に空が茜を忘れるように葉を落としていくのだろう。
それをきっと今日の雨は加速させて――、そして訪れる冬は紫さまのいない季節だ。
しとしとと陰鬱に注ぐ雨のやむ気配は見えず、天照は未だあの趣味の悪い雲衣を脱ぐ気はないように見える。
注ぐ雨の陰鬱さに負けず劣らず、私の気分も沈んでいく。
その陰鬱な雨が、いつかの雨と同じであるように感ぜられてしまったのだ。
≪冬眠と口付けと信頼と不審と煩悶と食用肉 -Extra-≫
――私はそろそろ眠ることにしようと思うの。
紫さまが初めてそう言ったのは何時の頃だったろうか。
少なくとも私があの方の式となってある程度の年数が過ぎてからのことだったように思える。
ただ、それが二百年前だったのか三百年前だったのか、あるいは五百年よりも昔のことだったのか、それがよく分からないのだ。
それは、しとしとした雨の降る、冬の気配もいよいよと濃厚といったある日のことであった。
「ええと……? まだ日が沈んだばかりで、いえ、そもそも紫さま、今起きられたばかりでしょう?」
最初、私は紫さまが何を仰っているのか、そのお言葉の意味するところを図りかねて、ついついそう言葉を返してしまった。
「そうじゃなくて、もう少し長く眠ろうかと……そういうお話」
「長く……」
「春まで、ね? 有体な言葉で言えば、冬眠というものかしら」
「冬眠!?」
思わず仰け反ってしまう。
常々寝汚いところのある妖の方とは思っていたが、獣でもあるまいしよもや冬眠とは。
「なぁによ、そんな大きな声出してまで驚くことでもないでしょう?」
「いえ、まぁ、日ごろの紫さまの寝汚さを見ていれば驚くこともないというお言葉には納得もできますけど」
「失礼な式ね。もっと驚きなさい」
どうしろというのだ。
「まぁどうせね、藍がなんと言ったところで寝ると決めたのは私なんだから、冬眠はもう絶対にするのだけど」
「はぁ」
「冬眠、明後日あたりから春まで。藍、あなた、その間一人で大丈夫?」
「別に子供じゃないんだから、大丈夫ですよ」
「そう。本当に?」
そっと伸ばされた紫さまの手のひらが私の頬に触れる。
人間味のない妖怪である紫さまは、かといって妖怪らしさのようなものがあるわけではない。
人間から見れば妖怪らしいと感じられるだろうその在りようも、妖怪の立場からするととても妖怪らしいとは言えないように思えるのだ。
曖昧、どこまでも曖昧。
確固として曖昧などと、その言葉自体が矛盾している。
けれど私の頬に触れるその手のひらの温かさもまた、その曖昧さと同じに確かであると、そう感じられた。
「ええ、もちろん。あなたの眠りを妨げる何者も、私は容赦致しません」
「とても心強いわね」
くすくすと笑う紫さまの指先は私の頤を撫でて、そのまま首筋を追った。
その指先はやがて襟ぐりに触れるのだが、私の衣装はまるで主の指先を避けるかのようにそこから裂けゆき、紫さまの指先がそのまま下へと下るから、衣装は前が全部左右に開けてしまった。
ハラリと、白い肌がすべてあらわになる。
突然のことに驚いた私は、咄嗟に肌蹴てしまった衣装の前をかき抱こうとするのだが、紫さまはそれに頓着するでもないごく自然な動作で、そのまま私の懐に飛び込んできた。
とすりと預けられる朧な体重。
生の乳房に手を宛がい、鼓動を楽しむかのように耳を寄せてくる紫さま。
「藍の肌は綺麗ね」
「そうですか?」
「ええ、とても。藍のことはその造形も好きだけど、濡れたみたいにしっとりしてるこの肌の滑らかさが一番好き」
「ありがとうございます……と、言うべきなんでしょうね」
「もちろん。今のあなたを私が褒めてあげられる数少ない長所の一つだと思っているくらい」
「……」
本当に褒められているのか。
くすくすと笑っているらしいその表情は私からは見えない。
ただ、いつものように意図を読ませない揺らぐ湖面のような笑みを浮かべているだろうとは想像がつく。
その一方で私は困っていた。
何せ紫さまは私の主なわけだから突き飛ばすわけにもいかないし、かといって艶事というわけでもないのだから胸元に飛び込んできた紫さまを抱き返すのも違うような気がする。
結果両手を挙げて泡を食うしかなかった私なのだが、乳房を枕に人の鼓動を楽しんでいた紫さまが口を開いたのは、いい加減私が状況を受け入れ、挙げた手をただただ困り顔で下ろした頃だったと思う。
「でもね、藍。私が心配しているのは、あなたのことなのよ」
「私のことですか?」
「そうよ、あなたのこと。冬眠中の自分の身についてなんて今更案ずることはないわ。数十年ぶりのこととはいえ、今までだって大丈夫だったんだもの。だけれど、私が眠っている間のあなたのことは、とても心配だと思っているのよ?」
「それは確かに、紫さまからご覧になれば甚だ頼りにならない半人前の式かと思われるでしょうが……」
「……そういうことではないのだけれどね」
紫さまは少しだけ困ったような苦笑を漏らしてから、両の乳房の間に口づけを一つ落として私から離れた。
それに合わせるように衣装も元に戻るのだが、一瞬だけ見えた胸元には紫さまの紅の痕が残されていた。
「ともかく私は眠るわ。その間のことはあなたに任せる」
「承りました」
「ええ、お願いね。それから、分かっていると思うけど冬眠中の私の閨へは誰も近づけないこと」
「承知しております」
どんな獣だってそうだ、眠っている間、その獣は他のどんなあらゆる瞬間よりも無防備となる。
そのうえ、無防備となるのが瞬間ではなく期間になるのだ。
流石の紫さまと言えど、冬の間ずっと隙だらけの状況を晒しのままというわけにはいかないのだろう。
そして、その真逆の問題もある。
よく冬眠中の熊を起こすと怖いと言うが、このマヨヒガの閨で冬眠しているのは一種一匹の大妖、八雲紫さまだ。
熊どころの騒ぎではない。
寝た子が寝た子だけに寝た子を起こすことがどんな惨事を引き起こすことになるかと想像してみれば、紫さまの御為とか、むしろ起こしてしまった不心得者が可哀想とかそんなのは関係なく、後始末に追われ、なおかつ折檻を免れないだろう自分自身の為に全身全霊で主の眠りを守ろうという気にもなる。
そのときの私がどんな表情をしたのかは私自身には分からない。
悲壮な決意に身を固めたかのような表情をしていたのだろうと想像がつくが、ともあれ紫さまはそんな私を見て楽しそうに笑った。
「藍は本当、可愛いわねぇ」
「はぁ……」
「いいこと、藍? 冬の眠りというのは本来私という存在にとって不可分のものだった。ここ数十年は未熟なあなたを傍に置いたからそうすることもままならなかったのだけど、でも、今年は眠ろうと私は言う。ならば眠っている間のことを任せるということの意味、分かるわね?」
それはきっと、私が既に紫さまの式として一人前となったということを言いたいのだろう。
そのことをあえて言の葉に乗せて確認しようなどと思えるほど私は下品ではない。
ただ一つ頷いて、悦びは心の裡にひた隠す。
「分かれば結構。そしてそれが分かったあなたに私は言う。藍。さっきは冬眠中の私の閨には誰も近づけるな、とそう言ったけれど、たった一人だけ例外を許します」
「一人だけ?」
誰だろう、と思案するよりも早く、
「藍、あなたよ」
「え……」
「この世界であなただけ、冬眠中の私の閨に入ることを許します」
「それは」
冬眠中の閨への入室を許す、と。
そのことの意味をどう捉えたものか、私はそれを迷った。
もっとも無防備であるその姿を晒すほどに、紫さまは私を信頼してくれているということなのだろうか。
いや、普通に考えれば正にその通りなのだろうと思う。
でも、だけど。
私は数十年という主従関係の中で、紫さまのことをそれなりによく知ったつもりになっているのだが、紫さまは私のことを私以上に、完全に知り尽くしているのだろうと、こればかりは確信している。
確信しているから、だからこそ――。
「意味がわからないならそれでいい。でもそのときに分かるだろうから」
「はぁ……」
明日食べる人間を5、6人ほど用意しておいて頂戴ね、と軽く言って、主は隙間へと消えていった。
紫さまの去ったのを見送った私は、きっと狐につままれたような顔をしていたと思う、私自身狐なのに。
だけれど、それは紫さまのお言葉がそれだけ突飛なことであると思えたから仕方なかったのだ。
確かに私はあの方の式で、ここ数十年は本当にあの方によく尽くしてきたと我ながらそう思う。
それはまあ、式を植えつけられた最初の数年については「よく尽くした」だなんて、そんなことお世辞でも言えなかったけれど、それでもそれ以来は私は頑張ってあの方に仕えてきたのだ。
だから、眠りの間のことを任されるという今回のお言葉については自身の努力を認められたようで嬉しいと思える。
思えるが、だけどそれだけではない。
それだけではない何かがあるように思える。
いや、きっとあるのだろう。
いやいや、きっとあるだろう、だなんてそんな、他ならぬ私自身の心をそんな曖昧に表現する必要がどこにある?
紫さまに努力を認めて頂いた嬉しさ、それに相反する気持ちというのは、私の心の中に間違いなく存在している。
存在し続けている。
ただ、そうと分かっていても、私は――いや……。
「フン」
考えすぎるのを止め、私は大きく鼻を鳴らした。
そのことに大した意味はなかったように思う、ただ単に気分を入れ替えただけだ、そのつもりだ。
けれどそれは、後になって思えば自分に気合を入れなおす行為だったように思える。
ということはつまり、そのときの私には気合を入れなおす必要があったということだ。
ならばそれはどういう意味だったのだろうか。
そのときは分からなかったけれど、分かろうともしなかったけれど、いやいやいや、分かりながらにしてそれを表に出さないよう心をきつく縛り付けたのだと自覚していたけれども、ともあれ、だからこそ気合を入れなおした私はタンと地を蹴り舞い上がり、マヨヒガを出て人里に近い山へと向かったのだ。
冬を前にしたこの時期は冬眠前の肥えた熊やカモシカを狙うマタギの集団が山林に入っている。
あれらの人間は人間のくせに狡猾で力強い狩人であるのだが、あくまでそれは人間という尺度での話でしかない。
「紫さまは4、5人と仰られたが、私だってたまには思う存分人を喰らいたいものな」
それはもう、あらゆる意味で。
空に近づくほどに空気は冷たく、風は鋭くなる。
私は白い吐息を燐のように口端から漏らしながら、低く飛んだ。
やがて私は人里に程近い山中で、十人ほどのマタギの小集団を捕捉する。
狩の帰りなのだろう、二頭の鹿の大物を引きずり、ウサギを数匹ぶら下げていた。
私は空の上から無言のままにそれらに襲いかかる傍ら、どうしても頭から離れようとしない自問に否を打ち続けていた。
だってそれは幾ら考えたところで詮の無いことであるし、私のすべてを知り尽くすのあのお方は、そうしたことを考えてしまう私の心の裡を常に監視しているのだろうと私は知ってしまっていたからだ。
人を喰らい、力を蓄えたなら――そして紫さまが冬眠という長く深い眠りについたそのときであるなら。
或いは、ともすれば、もしかしたら……。
この不本意な力関係を喰い破ることが、出来る、のではないだろう――か?
しつこいほどに浮かび上がる自問を振り払うかのようにして振るわれる私の爪は大気を裂いて音を立て、そんな私の姿に怯える狩人たちの悲鳴と断末魔が青い空の下に木霊する。
あまり喰うところのない頭を撥ね飛ばし、その返り血が衣装に掛かる不快に顔を歪めながら、私はただただその胸の奥から染み出そうとするその疑問を、ただただ頑なに拒み続けていた。
その気持ちが真実私の心の奥底から染み出した本音そのものの願望だといえ、今は紫さまのしがない式である私が、そのような大それたことを考えるだなんて、そんなこと、今はまだ、許されるはずが無い。
翌日、軒先に逆さ吊りにされた4、5人分ほどの首のない肉をご覧になられた紫さまから「あまり美観を損なうことをするな」と叱られた。
しかしどうせ食べるにしてもちゃんと血抜きをして臭みを抜いた方が美味しく食べられるでしょうと私が言えば、「じゃあ美味しくできたら幽々子も呼びましょうか」と仰る。
当時の私は冥界の霊嬢とはまだ面識がなく、それは誰かと問うことになった。
果たして帰ってきた答えに私は「流石に美食を愛でる亡霊の方と言えどかつての同胞を腹に収めたりはしないでしょう」と言わないわけにはいかない。
それの何が可笑しかったのか、紫さまは腹を抱えて笑っておられた。
ともあれ、美観を損なうというなら軒先の肉は下ろさなくてはならない。
私蔵の一つを片付けて、件の肉をそこの梁に吊るしなおすと、今度は四肢を切断して解体することで血抜きの効率化を図った。
肉の断面からボタボタと落ちる血は赤黒く凝って、餓鬼草子の苗床になるには十分かと思われたほどである。
そうした怨念は妖血足りえるだけの力を内に宿しているものだが、なんにせよマヨヒガの敷地内を餓鬼草子の腐臭で満たされても堪らないと、私は見よう見まねで護摩を焚かねばならなかった、忌々しい。
それが今からどれくらい昔のことだったのかは、よく覚えていない。
よく覚えていないくらいに昔のことだったからなのか、その程度にどうでもいい記憶だからなのか。
少なくとも後者でないことは確かだ。
≪冷めたお茶の香りと熱、殺意と愛情に見る侘び寂びについて -Normal-≫
果たして私が紫さまのもとへと辿りついたとき、案の定というか、頼まれたお茶はすっかり冷め切っていた。
「申し訳ありません、すぐに淹れなおして参ります」
「まったくもう、ドンくさいのは変わらないわね」
口元を隠す扇の向こう側から私を睨む紫さまの視線は厳しい。
かといって、「今しばらくのお待ちを。すぐに熱いものをお持ちします」、そう頭を下げて辞そうとすれば、
「ああ、いいのよ藍。とにかくお茶を頂戴」
そのようなことを仰るのだ。
「いえ、しかし冷めてしまいましたから。淹れなおして参ります」
「別にいいのよ。冷めていようがいまいが、それは同じことなのだから」
「同じこと、ですか?」
「茶香散ずれど消ゆるに非ず……薄まって広まっただけなのよ。冷めてしまったというその熱さも、それもやっぱり同じこと」
「はぁ……」
それは侘びであるとか寂びであるとか、そういうことなのだと分かるが、しかしそのことにどんな意味があるのだろうか。
散ってしまった茶香を萃めることは出来ない、それこそあの鬼の稚児でもないかぎり。
香りの散った冷めた茶を飲んでもその香りを楽しむことは出来ないのだから、茶の楽しみは半減以下という気がするのだ。
それを素直に疑問として言えば、紫さまは「藍は本当に、実利主義的というか即物的というか……」苦笑してそう仰る。
「私が実利主義で即物的なら、三途の川の川幅を求める方程式を考えたりなんてしませんよ」
「あら、それもそうね」
納得したのか、ポンと手を打つ紫さまは笑顔のまま「でもまぁ、それは置いといて」と話を戻す。
「感じられないお茶の香りをすら楽しむのよ、藍」
「感じられないのに、ですか?」
「そう、感じられないけれど、お茶の香りはそこにあるのよ。だからそれを感じられない私はそれを想像して楽しむことが出来る。侘び寂びなのよ、侘び寂び。藍、あなたも昔は京にいたのだから分かるでしょう?」
「無茶を言わないで下さいよ。利休が侘び茶を開いた頃にはもうすっかり紫さまの式をしていたじゃないですか」
「そうだったかしら?」
痴呆ですか、なんてことはとても言えない。
「まあとにかくよ。そうした風情を楽しむのよ。想像に酔う、なんて言い方は下品に過ぎるかもしれないけど、本質はそんなところ。全く人間っていうのはこうしたことには本当に鋭敏な性質を見せるのだから面白くて可愛いって思うんだけど……こういう感覚は嗅覚の鋭すぎる藍には分からないかしら」
「いえ、分かります。共感はできませんが」
これでも紫さまの式となる以前の私は、そうした感性を生み出すに至った精神性を育ててきた人々の中で暮らしてきたのだ、もっともその頃もそういった感性に共感を覚えることはなかったのだけれど。
それに、紫さまの仰りようをただ単に想像の羽を広げるということに単純化すれば分かるような気もする、想像に酔うという言葉に至っては共感どころか実感することさえ可能だ。
だって、一時期はそうすることでしか己を保てなかった時期もあったのだ。
あの頃の想像は如何にして紫さまを亡き者にするかということに傾けられていた為、その詳細を語るつもりにはなれないが、紫さまはその程度のこと、きっとお見通しなのだろうけれど。
「それでいいのよ、それで」
「そうなのですか?」
「例えば私があの可愛らしい吸血貴族であるならそうした感性を分かち合えない従者を詰ることもあったでしょうけど、生憎私は彼女ではなく、そしてあなたも私の従者ではない」
「式ですから」
「そうよ、あなたは私の式。だからそれでいい。単純に迎合するだけの人形なんていらないわ」
そう満足そうに微笑む紫さまだが、私としては紫さまのお言葉にはっきりと納得できたわけではない。
私が紫さまに仕えることとなった経緯を思えば、主従としての敬愛を強要しておいてよくもそんなことが言えるものだ、とさえ思う。
とはいえそんなこと今更問答するものでもないのだし、仕方なく私は縁側で降りしきる雨にボウとした視線を送るだけの紫さまの傍について、すっかりと冷め、香りも飛んでしまった茶を注ぐ。
紫さまはその今は冷茶になってしまった茶に口をつけ、何が楽しいのかくすくすと笑った。
「なにか、可笑しなことでも?」
「いえね、少し昔を思い出してしまったのよ」
「それはようございました」
「そうかしら? そうなのかもね、うふふ」
紫さまは楽しそうに笑う。
「昔のことというのはね、藍、あなたのことを思い出していたのよ?」
「私のことですか?」
「そう、あなたのこと。私があなたに向かって初めて冬眠すると言ったとき、憮然としていたあなたのことを、思い出していたのよ」
「……それは奇遇ですね。私もそのことを思い出していました」
「だからお茶を運んでくるのが遅れたのかしら?」
「……申し訳ありません」
「ううん、だとしたらそれは仕方のないことよ? だって私が昔を懐かしんだのに、私の式であるあなたがそれを思い出して懐かしまないという道理はないのだから」
「だからといって、私が昔を懐かしんだとして、紫さまが昔を懐かしむ道理はない」
「そういうことよ。そしてあなたは、昔を懐かしんだりは、決してしない」
「……」
「今も昔もあなたは変わらないのね。ドンくさいのは元来あなたが誰かに仕えるような気質を備えていないから。こうして従順に見える今も、あなたの心根は一つの方向性を指向して、狙いを決して過たない」
本当に楽しそうに、目を細め、紅唇を美しく持ち上げ、紫さまはそう口にされる。
紫さまがこうした笑みを見せられるとき、私の背筋を駆け抜けるのは恐怖というにはあまりに歪すぎるものだった。
だって、紫さまは私に恐怖心を与えようなどとは決して思ってはいないと、それだけは本当に確かなのだから。
聊かの逡巡を押さえ込み、私は口を開く。
「……紫さまは、私を疎んじておられますか?」
「何故そう思うのかしら」
「分かりません。紫さまにお仕えするようになって星霜のときが過ぎましたが、私は今でもあなたのことを理解できずにいるのです」
「あなたに刷り込まれた忠義心がそれを許さないと?」
「主の御心すべてを推し量ろうなど傲慢と知ります。それでもそう願う心を止められないのは時として苦痛に感じられることもあるのです」
「とっても素直ね、藍。でもそれを苦痛と感じてしまうというなら、私はあなたの教育に成功したということになる」
「やはり疎んじておられるのですか?」
――いつもいつも、あなたを殺してこの身の楔を外してしまいたいと思っている、この私を。
「まさか、でも――」
紫さまは私に呑み残した湯飲みの中身を、冷めた茶をぶちまけてきた。
冷たい茶に濡れた衣装が、そこから溶け崩れていく。
まるでいつかの再現のようで、それでもあのときと違うのは、あらわになった私の白い肌の上には、何処にも彼処にも紫さまのつけた口づけの痕が残されていることだ。
それは私が紫さまのものであるという証で、それを消すことは許されず、そしてそれを消そうと思ったこともない。
ないはずだ。
そして、そうまでしておきながら紫さまは初めからあらわになっていた私の手を取り、その小指を口に含んだ。
「そんな風に苦しむあなたが、とても愛しく感じられるのよ」
カリ、と紫さまはその口に含まれた私の指に歯を立てた。
それはぶつりと指の皮膚を破り、浅くではあるが、肉を食む。
漏れ出た血は赤く、吸血の性を持たない紫さまの唇からそのまま、私の血は滴るのだ。
「刷り込まれた忠誠心と、心のままに残された本能的衝動の間で揺れているのね」
口元の血を拭った紫さまは、赤く濡れたその指先のままに私の乳房の間、心臓の上に触れた。
まるで口紅を引くように優しく、その指先は腹へと下る。
血の痕を引いて、指先は臍へと至るのだ。
「ねぇ、藍――あなたは今でも私に従属することに耐えようのない嫌悪感を、覚えているのかしら?」
紫さまの指先は臍に触れたまま、その穴をぐりぐりと弄り回す。
「私の自尊心は今もなお、あなたによって蹂躙され続けております。もちろん、現在進行形で」
ク、と喉の奥で噛み殺したような笑みを漏らす、私の主。
裸の私にもたれかかり、血の紅に濡れた唇は、白く露な私の肩を食む。
皮膚に歯を立て肉を破り、暴力的な口づけの痕をそこに残すのだ。
「ねぇ、藍――あなたは今でも、私を殺してしまいたいと、思っているのかしら?」
その声は歌うように軽やかに。
だから私も歌うようにこう返す。
「とんでもございません。例えどれほど嬲られたとしても、私があなたに害を為そうなど、そのような無謀は思いつきも致しません」
「――あは」
紫さまはその言葉に私の肩を解放し、楽しげに笑んで、首元に抱きつくようにして私を縁側の床に押し倒すのだ。
板の間の冷たさが背に触れ、反面、紫さまに触れている肢体の全面はとても暖かく、むしろ暑い。
「恐るべき雌狐だわ。でも、そんなあなただから、とても愛しいのよ」
紫さまの唇が、私の唇を覆う。
まるで隙間などどこにもないかのように、隙間の存在など許さないかのように。
熱くうねるように舌を絡めながら、流し込まれる主の唾液をされるがままに嚥下しながら、私は廊下の角で顔を真っ赤にしてこちらを覗き見ている橙に「あっちに行っていなさい」と手を振った。
生殖本能以外でのこうした営みを学ぶには橙はまだまだ幼すぎる、もう少しくらい無垢なままで居て欲しい、そう思うのは主としての我侭ではないはずだ。
≪私への回帰 -Extra-≫
吐息が自然と白く染まる。
炊事に掃除、お洗濯と、何かにつけて水仕事をする度に、刺すような水の冷たさが身に染みるようになった。
幻想郷と外界の境にあるこの山中のマヨヒガから見る山々も、一時の鮮やかな装いを脱ぎ捨て、まるで眠りに着くようにそれらしい枯れた色合いを見せている。
巡る季節は晩秋から初冬へと暦の境界を踏み越えたのだ。
紫さまが眠りに着かれたのは、冬眠のことを聞かされたあの日と同じに灰色の雲が空を覆った寒い日のことで、あの日と違うことと言えば、庭の楓がすっかりと葉を落としきり、空が雲間から降らせるものが涙滴のような雨ではなく、私の吐息と同じに白い、白い雪を舞わせていたことくらいのものだった。
変わったことといえば辺りの景色と、今まで二人分用意していた食事の準備が私のための一人分に減ったことくらいで、それ以外は何も変わっていないと、そう思える。
マヨヒガが静かであることは紫さまがお眠りになる以前も、そして今も何も変わりはしない。
あの方は基本的に夜型の生活をしておられたから、今のように日が照っているうちは布団にくるまって、本当に静かなものだった。
それは夜になっても同じで、紫さまは静かに書に向かわれるか、或いはどこかへ外出して屋敷を空けることがもっぱらだったので、どのみちこのマヨヒガは静謐に包まれていたものだ。
けれど、私自身の内面について言わせてもらえれば、小さくはない変化があった。
それは偏に、私という存在に打ち込まれた式、今の私があの方の従属者であることを明確に刻む式神としての存在感が薄れてしまったことによる変化である。
紫さまの冬眠というのは、他の獣たちのそれと変わらず、本当に死んでしまったかのような眠りであった。
きっと式が薄れてしまったのも、そうした死にも等しい眠りの深さゆえのことなのだろうと分かる。
そういうことなのだろうと分かるが、しかし紫さまは、そうして式の束縛が薄れることについて、そんなことも折込済みで私に冬眠の間のことを託したのだろうかと、そんなことが私には酷く気に掛かっていた。
私に打ち込まれた式とは、九尾狐の妖である私を紫さまの式神として使役させるための公式であり、また、本質的性質として倣岸にして不遜、他者に諂うことを良しとせず、あらゆるものを興の赴くがままに裏から操ってきた私という悪妖を縛り付け隷属させる、束縛の式でもあったのだ。
その式の束縛が薄まるという可能性について、薄まってしまうということの及ぼす危険性について、あの方は本当になにも考えを及ぼしたりはしなかったのだろうかと、そんなことが酷く気障りな疑問として、私を悩ませるのだ。
だってそうだろう?
もし紫さまが、ああ、もしも紫さまが私の束縛が薄まることで、隷属を強いる強制力が失せてしまうことさえ折込済みで眠りについたというなら、それはあの方がそうなってしまった私の行動のすべてを予測し、それに対する対策を立てた上で眠りについたと、そう考えなければ不自然ではないか。
そしてそれは、紫さまがあらゆる備えをした上で眠りにつかれたというのなら、その事実は私にとってこの上なく不都合なのであった。
ああ、ああ、式が薄れるせいで、私の本性が露出していく。
私の矜持が浮き彫りになってしまう。
意識とはかけ離れたところで暴れだそうとする右腕を左腕で押さえつけるが、胸の裡から底なしに湧き出してくる激情までは抑えられない。
或いはその逆、私本来の意識そのものであるはずの激情を、私の意識とはかけ離れた公式、そう、言うなれば異式とでも評するべきものが抑えつけようとしているのか。
いっそ雪でも降れば、この昂る精神をさえ冷たく諌めてくれるだろうにと思うのだが、こんな時に限って空は高く青く澄み、美しいのだ。
その空の美しさが、私の今を責め立てているようで、心苦しい。
貴様の生き様は美しいのかと。
貴様の今は、貴様自身の矜持に恥ずかしくないのかと。
こうなって初めて、紫さまが私につけた式が、どこまで私の心を支配していたのかということを思い知る。
私は九尾狐、古くは大陸の古王国を揺るがし、天竺の国さえ焼いた大妖怪。
誰よりも誇り高く、何よりも気高く、誰が並び立つことをも許さない孤高さで、あらゆる全てを欺く狡猾さに生きる獣。
その私が、紫さまを敬い、紫さまに諂い、紫さまの風下に立って、自分自身すら欺けずに煩悶している。
そんな私など、私ではない。
紫さまが私に植え付けた式は、私の心を束縛し、私の心に紫さまへの敬愛を、慕情を、隷従を強制していた。
かつては宮中に暮らし陰陽寮を欺いてきた私だから式神使いという術式がそういうものであると知っている。
私という存在を証明する公式を、紫さまの編み上げた式が犯し、改竄しているのだ。
そしてその紫さまが冬眠という深く長い眠りにつかれた今、私を犯し続ける式の強制力は低下し、本当の私が私に囁く。
――私よ、私自身を思い出せ。
瞬間、冬の青い空が一気に燃え上がる幻を見た。
その幻の中、私は狐の現身を取っていて、業火に燃える太古の都市を見下ろしている。
或いはまた別の幻の中、私は皇帝の寵愛著しい美姫としてそこにあり、貧困に喘ぐ民衆を見下ろしながら贅の限りを尽くしていた。
幾つもの幻の中で、私は幾人もの王を誑かし、幾つもの国を傾け、幾万もの人々を苦しめていた。
今となっては遠い日の幻のような記憶の世界を駆け巡り、そして最後に見た景色は、那須野で私を包囲する八万あまりの大軍勢。
そして、ああ、そして、ああ――そのとき、私は。
「――――ク」
口の端から笑みが零れる。
私に打ち込まれた紫さまの式はその悪虐を否定しない。
その式に抑え付けられている私の本性は、本来の私がそういうものであると積極的に肯定する。
その肯定と同じだけ、私の本性は紫さまに隷属する今の私を否定し、殺意の鎌首をもたげ、そして紫さまの打ち込んだ式は、その殺意をさえ否定せず、ただただ只管にその殺意をも屈服させんばかりの愛情を、紫さまへの愛情を私の心へ毒の如く流し込んでいるのだ。
しかして紫さまが冬眠につかれた今、式の垂れ流す愛情はその濃度を薄め、今や私の殺意は愛情を凌駕したと自覚する。
気づけば、空を見上げてきつく歯をかみしめる私の口元からは、白い吐息ではなく、青い狐火が漏れていた。
ああそうだ、もう決まりだ。
紫さまを殺そう。
そして私は己を縛る枷から自由になり、己の矜持の命じるままに生きるのだ。
これまでがそうであったように、誰よりも誇り高く、何よりも気高く、誰が並び立つことをも許さない孤高さで、あらゆる全てを狡猾に欺いて、私は式神などではなく、私は私として生きるのだ。
怨念によって紫さまを殺し、愛情によってその肉を喰らい、ああ、きっとそのとき、私は私の全てから自由になる――。
≪まいちるゆきよりあたたかな -Hard-≫
「それじゃあ私は春まで眠るから、後のことはよろしくね」
「はい」
「特に大結界周辺は注意して。今更言うことでもないけど当代の巫女は暢気が過ぎるし、こっちでよく気を使ってあげて頂戴」
「承知しております」
私の答えに紫さまは満足そうに微笑んで、「じゃあおやすみなさい」と自室の扉をくぐっていった。
頭を下げてそれを見送り、扉が閉まったのを確認して私はふぅっと息をつく。
これで、今年も紫さまは冬眠なされた。
そしてまた、今年も紫さまのいない生活が始まる。
もう何百年も続いていることとはいえ、未だにこの喪失感には慣れそうにもない。
布団にはいって「おやすみ」五秒で眠りに落ちる紫さまだから、今頃はもうすっかりと夢の世界だろうと思う。
そしてその眠りは時が経つほどに深さを増し、それに反比例するように私への強制力は弱くなっていく。
「……すぅ~、はぁ~」
大きく深呼吸をして、肺の中の大気を入れ替えた。
そんなものは気休めに過ぎないとよく分かっているが、それでも何もしないでいるのも辛い。
「よしっ」
パンッ、と強く頬を叩き、私は今度こそ気合を入れなおした。
痛みだけでも気が引き締まる、痛みの熱さの分だけ叩いた頬を冬の空気に冷やされて、そうした温度差が身をも引き締める。
気分を変えて紫さまの閨の前を辞した私は、屋敷の最も奥深い場所にあるそこから居間へと歩きつつ、向かう廊下の縁側にてふと視線を庭に投げた。
曇天の空から舞い落ちる白いものは、今冬の初雪だ。
降るだろうなとは思っていたのだ。
紫さまは季節の境目でも見ているのか、はたまた天候の境目でも見ているのか、毎年初雪の降る日の朝に冬眠につかれる。
――青い空を見ているともう少し起きていようかなって気になるのよ。でも冷たい雪が降っているのを見ると布団に逃げ込みたくなるわ。だって寒いの嫌いだもの。
そんな極めて説得力のある発言をしていたのを覚えている、それが果たして何百年前の出来事であったかまでは忘れてしまったが。
「ともあれ、これではますます橙を起こすのに手間取りそうだな」
紫さまに負けず劣らずの寒さ嫌いで布団好きな橙のことだ、そうそう簡単に起きてはくれないだろう。
多少の苦労はあるかもしれないが、まずはそれからだ。
橙を起こしての朝食が済んだら、今度は紫さまが起きている間には出来なかったことを色々と進めておかねばならない。
幻想郷の方々を訪ね、力のある人妖に助力を求めて回らなければならないのだ。
「そろそろ紫さまを亡き者にしようと思うのだが、手を貸してはもらえないだろうか」
説得のための最初の一言は、そんなところでいいだろう。
≪食肉 BBQクライシス -Extra-≫
焼いた村の数は七つか八つ。
覚えているのはそれだけで、覚えていないところは数えていない。
はじめは村に火を掛けるのだ。
風上から吹き付けられた巨大な狐火は風に乗って一瞬で村を焼き包む。
慌てた村人が粗末な家々から飛び出してくるのを悠々と上空で待つ私は、その狂乱にきっと、優しい笑みを浮かべていた。
――なんという懐かしい光景だろう。
あばら家を焼く炎が轟々と音を立て、焼けて炭化する大黒柱がギシギシと軋みをあげる。
焼け落ちた梁に下肢を潰され呻く息子を助け出さんとする母親が、背後から夫に抱きとめられる。
最愛の息子のために伸ばした手は、最愛の夫のために届かないのだ。
咽が裂けんばかり絶叫で息子の名を呼ぶ母と、熱さと痛みと梁の重みで声も出ないだろうに、それでも助けを求めずにはいられない息子。
息子から、無力から目を背ける父親。
無慈悲な炎は息子の服を焼き、肌を舐め、髪を燃やす。
火の燃え移った頭を掻き毟りながら叫ぶ声――助けて! 助けて!
狂ったように泣き叫ぶ息子に何もできない母親は、ただただ手を伸ばし、背後から抱きとめる夫を振り解かんと力の限りに暴れる――燃えちゃう! 坊やが“黒く”なってしまう!
悲痛の声にも夫は耳を貸すわけにはいかないのだ。
もう息子は助からない。
火は全身を包み、じりじりと煙を上げながら嫌な色に変わり行く肌。
燃える髪を掻き毟る度、黒い塵と化した髪だったものが舞う。
皮下で煮え立つ脂がぶくぶくと二の腕を、ふくらはぎを、頬を、肢体の柔らかい部分を泡立たせる。
ずるりと剥け落ちる焼け腐れた皮、その下が赤いのは血か、肉か、それとも火か。
伸ばした指先では、火に炙られて反り返った爪が根元から剥がれ落ちた。
苦悶の声は掠れ、言葉にならない。
だのに喉を、肺腑を焦がす焼けた空気を吸い込むその音だけは細く、しかし確かに響いてくる。
息子は今まさに焼け死のうとしていた。
けれどまだ、まだ死んではいない、死ねてはいない。
息子が死んでいないだろうことは、眉毛も睫も失って、今まさに焼け剥がれた瞼の奥、白目まで黒くなったその瞳が、未だこちらを見つめていることから明らかだった。
夫がその焦げた視線に耐え切れず目を逸らした瞬間、妻が夫を振りほどいた。
火中の我が家に駆け込もうとするその襟をつかもうと腕を伸ばすが届かない。
そして妻が家の入り口にあと一歩と迫ったそのとき、ドドゥ、とついに家が焼け落ちた。
母親の見ているその前で、息子は焼け落ちた家の天井に押しつぶされたのだ。
天井を支える梁がまた落ちて、息子が母に伸ばしたその手を押しつぶすのを――、母に向かって伸ばした黒ずんだその手をへし折るのを――、愛する母に助けを求めて伸ばした、火が這い回り救いなく焼け焦げたその手が、梁に潰され焼けた肌の裏から骨が飛び出し、噴出したどろりとした血の向こうに息子が消えてしまうその瞬間を――、助けを求められ助けに答えられなかったその母親は、目撃してしまったのだ。
「――ァァァァアアアアアアアァァァアアァァァァ……!」
感情が消え行く音が、母親の咽の奥から響いてくる。
ふらりと倒れそうになった妻を夫は支えようとして――、
――私は人差し指と親指で輪を作ると、そこに軽く息を吹き込んでやった。
吹き込まれた吐息は軽く巻いて、輪を潜り抜けながら煉獄もかくやという炎へと姿を変える。
その炎はまるでのたうつ蛇のようにうねりながら地を舐め、妻を抱きとめた男を妻もろともに飲み込んだ。
そして蛇の這いぬけた痕には人の形をした炭が二つ残っているだけ。
その人の形をした炭というのも、炎が生み出す熱波の風に煽られ、がさりと倒れて崩れるのだ。
不意に苦笑がこみ上げる。
なんという酷いことをしているのだろう、この私は。
人を喰らい、紫さまを殺すための力をつけるだけならば、何もこのように村を焼く必要などどこにも無いのだ。
その必要がどこにもないのに、私はこうして村を焼き人を焼き、その惨劇に酔うというわけでもなく、今の私の胸のうちを満たしているものはそう、それはただただ懐かしい――。
胸の内をひたひたと濡らす古の昔を懐古する気持ち、あの頃の私はああだった、あの頃の私はこうだった……、懐かしむためだけにこうして命を摘んでいる。
そう、あの頃はこうして意味も無く人を殺すことがこの上なく楽しかった。
数多の言葉を束ね、うめき、表情を歪め、使えるものはあらゆる全てを使って命乞いをし、生き足掻こうとする人間たち。
彼らが路傍の蟻を戯れに殺すのと同じくらいの戯れで、手足をもいで甕に漬けてみたりした。
それでも死ねない者は気が触れてしまったが、そうした人をただ眺めているのさえ楽しかった日々――気狂いになってしまった貴族の娘の唄声がとても美しかったことも、ああ、代えがたい思い出。
人々の怨恨の視線を浴び、怨念の唄に耳を傾け、時に怨嗟は刃とさえなって私に向けられる。
その全ての怨みを私は涼風を浴びるのごとく身に受け止め、それが私の力となった。
そうして得た力が私に更なる惨劇を起こさせる力となる。
まるで負の連鎖のそのもの。
そんなことも知らずに私を怨み上げる人間達が可愛くて、愛おしくて、笑いが止まらなかった。
ああ、そうした日々のなんと懐かしいことだろう。
今、たった今も私は、あの懐かしい怨恨の環の中にいる。
けれど、そんな私の胸中に占めるのはあくまでも懐古の念であって、今現在、あの頃よりも少し変わってしまった私は、この惨劇を楽しんでいるとは言い難いだろう。
楽しむ為ならまだ分かりやすい。
懐かしい思い出を慈しむために私は、こうして悪戯に人を焼き、人を裂き――。
そこに楽しみを見出すでもなく、血の飛沫にかつてを思い、こぼれる臓物に目を細め、燃える髪の饐えた匂いに思い出し笑いと来る。
本当に――、なんと酷い事をしているのだろう、私は。
あまりにも残虐な行い、あまりにも醜悪な所業。
それでもきっとこの里の人間達が可哀想なのは、そう、酷い事をしている自覚を持つ私が、しかしこの惨劇を引き起こしたことについて、全く罪悪感を抱いていないことなのかもしれない。
嘆息とともに見下ろした地べたに這いずる人間達。
そのうちの幾らかは宙に浮かぶ私の姿に気づいたようで、畏怖と恐怖、そしてやっぱり怨み……濁り酒のように多様な感情の入り混じった視線で私を睨み上げている。
煤けた足で立ち、焼け剥がれた肌を煤けた手で押さえ、煤けた顔に爛々とした瞳。
私は堪らなくなって地に降り立つ。
それを見て生き残った村人たちはじわりじわりと私を包囲する。
手に鋤なり鍬なりを持っているのはまだいい。
中には武器になるような物すら持たず無手で、それでも私を恨みすぎているのだろう、にじり寄るようにする男もいる。
ああ、なんと可哀想なのだろう。
この者たちはただ平和に暮らしていただけなのだ。
年貢の取立ては厳しかったかもしれない、戦があれば役に駆り出されたかもしれない。
それでも迎える冬に備え、正月のための蓄えを勘定する今日この頃は、それでもきっと、ただ平和に暮らしていられたはずなのだ。
そんな平穏を私はただの懐古で、ただ昔を懐かしむためだけに打ち壊し、焼き捨てた。
彼らが私を恨むのも道理。
「けれど」
――それが道理であったとして、その人の道理に妖怪である私が従う必要がどこにあろう。
私が尾を振るうと、そこから毀れた狐火が周囲を取り囲む村人たちに襲い掛かった。
響く断末魔の声は谷間を抜ける風のよう。
一瞬にして燃え上がった衣服を脱ぎ捨てる間もなく、肌の下の脂肪に火がついてしまうのだ。
身体を内から焼かれる気分はどのようなものだろう。
あいにくその様な憂き目に合わされたことの無い私には想像することしかできない。
その苦痛は果たして、紫さまが隙間に飼っていらっしゃる奇怪な何かに身を弄ばれるのと比べて、それはどの程度に苦しいのだろうか。
「――クス」
不意に笑みがこみ上げた。
決して楽しくてこみ上げた笑いではない。
苦笑――は「苦い笑い」と書くが、「苦しい笑い」と表現する事も出来なくは無いだろう。
苦しいのだ。
苦しくて、ただ笑うしか出来ないのだ。
私が心のままに振る舞い、心のまま心底自由に生きていられたのは、ほんの百年程度の昔の事だ。
百年だなんてそんな時間、これまで私が生きてきた全ての時間に比べれば、たとえ短いとは言えないにしても、それでも決して長い時間ではない。
そんな程度のごく最近までは、何に気兼ねするでもなくただただ心の赴くままに生きていられたのに――。
そんな程度のごく最近までは、火を浴び、炎に溺れ、血を啜り、血を舐め、人を裂いて、肉を燃やし、臓物の布団の中で、悲痛の声を子守唄に過ごすような――、そんな退廃と享楽にこそ楽しみを見出していた、そんな生き物であったのに――。
だのに、今の私はどうであろうか。
たったの百年、僅かに百年。
紫さまの式として仕えざるを得なかったその百年の間に、≪私という悪妖≫がどれだけその性質を歪められてしまったことか。
悲しくて涙が出そうになる。
悔しくて、憎たらしくて涙が出そうになる。
視界が揺れているのは熱気のせいではないだろう。
私の眦には涙が溜まっている。
この悔しみの、涙。
こんな私、気高くない。
こんな私、孤高じゃない。
こんな私、狡猾でもなんでもない。
瞳から涙がこぼれた。
裂かれた腹から血と肉が毀れるように、私の眦から涙が滑り落ちた。
こうなるともう、抑えが効かない。
「――っ、っ、う、ふぇ……」
気づけば私はぺたんと地べたに尻をついて泣いていた。
こんなに悲しいことはない。
なんと滑稽な私!
かつて白面金毛九尾の狐として三国で恐れられた私が、東の果ての島国の、出自も定かならぬ女化生のいいように弄ばれ、そのあり方すら歪められてしまった。
大陸の大国で肉の山に骨で出来た木を植え、血を撒いて庭園を造ろうとしたこの私が、村を焼き人を焼く惨劇の夜に楽しみの一つも見出せず、我が身の滑稽さに苦しんで笑い、その悲しさに涙を流すだなんて。
こんなことで涙を流すだなんて、まるでたたの人間の女の子のようじゃないか!
「ふぇ、うぇぇ……あああああぁぁぁぁ……」
なんて情けない私だろう。
なんて情けない狐だろう。
なんて情けない妖だろう。
なんて情けない式なのだろう!
ぽろぽろぽろぽろと透明な泪が零れておちる。
業火に煽られ焼けた地面で泪は染みを作ることができないが、泪は確かに流れていた、私は確かに泪を流していた。
感情が統制できない。
心が千々に乱れている。
紫さまの式が剥れただけでこの有様だ。
私という存在にあの方はどれだけ深く式を刻み込んでいたのだろう。
許せない、許せない。
こんなにも憎らしくて、こんなにも許しがたくて、こんなにもこんなにも殺したいと思っているのに、殺してしまいたいと願っているのに、 どうして、どうして――
――脳裏を過ぎるあの方の、綺麗に歪んだあの笑顔――
……どうして、私にはあの方が、こんなに愛おしいのだろう!
こんなにこんなに愛しくて、愛しくて愛しくて堪らないのに!
どうして私はあの方を殺してしまいたいと思わずにはいられないのだろう!
「酷いじゃないですか、紫さまぁ……」
貴女を殺したくてならないのです、紫さま。
だのに身のうちに刻まれた式は今もなお紫さまへの愛情を毒のように私の魂に垂れ流し続けて、式の術式で強要された偽物の愛情だとちゃんと自覚しているのに、それでも貴女が愛しくて、だから貴女を殺したい。
絶対に貴女を殺します、紫さま。
貴女を殺して、私が死ぬまで貴女を愛し続けます、紫さま。
止め処なく溢れる涙が視界を揺らす。
揺れた視界のその中に、不意に、村の生き残りの娘の姿が映りこんだ。
その娘は村を突然襲った凶事に気でも触れたのか、焦点の定まらぬ瞳のまま歩いていた。
ふらふらと、ふらふらと歩むその覚束ない足元も、薄汚れた立ち姿も、どこも彼処も紫さまとは似ても似つかない。
ただその生と死と、正気と狂気の境を彷徨うような在り方――在らされ方? ――荒され方? ――に、私は途方もない劣情を覚え――て殆ど無意識のまま私は飛び掛った! 組み倒した! 齧り付いた!
ああ、なんて、なんて……。
「紫さま、紫さま、紫さま……!」
服を切り裂き露になった白い乳房に牙を立てる。
つきたての餅のように柔らかく温かい少女の胸は噛み締めれば内から零れる甘やかな血の味わい。
押し開いた股座に指を突きこみ最も秘めやかな肉を爪で切り剥がす。
舐めるようにその肉を啜り、抱きついて口付け、甘噛みした唇を食いちぎった。
「愛しているんです、許せない、殺すことさえ勿体ないほど、でも殺さずにはいられないから」
ああなんて、なんという代償行為。
名も知れぬ少女の煤にまみれた顔中に口付けの雨を降らせ、尖らせた舌先で眼球をほじり、噛み締めればパキュリと割れて、中身が溢れ出すのはさながら上質な鳥の卵のよう。
この娘が今日まで見てきた風景が見える。
大切な家族、親しい隣人、好きな男。
厳しい年貢の取立てと厭らしい庄屋の息子、税の取立てを甘くする見返りに身体を求められた。
親は助けてくれない、隣人は目を背け、好いた男はこの身に降りかかった不幸を知りもしない。
庄屋の息子の妾にでもなれば食うには困るまい、と、弟ばかりを可愛がる両親にも多少の楽はさせてやれるだろう、と全てを諦め庄屋の息子に股を開いた。
今まさに庄屋の息子がこの粗末な帯に手をかけようとしたとき、村を火が、私が襲ったのだ。
それはこの娘にとって幸運だったのか、或いは不幸だったのか。
全ては灰になったのだ。
親しかった隣人も、好きだった男も、好きにならなければいけなかった男も、父も、母も、弟も。
全ては灰になったのだ。
それがこの娘にとって幸運だったのか、或いは不幸だったのか? 知るか!
少なくとも私にとって言えるのは、あばらの隙間から突き入れた手で心臓を刳り貫いても、赤い果実のような脈打つそれに噛り付いても、こんなに肢体が血に濡れていても満たされない、どうしても満たされない。
疼くように火照った肢体はただ一人を求めている。
そう、紫さまを、紫さまだけを求めていた。
血に咽び、愛に笑い、憎悪に泣く、啼く。
乾いて渇いて貪って、噛んで砕いて呑み込んで。
いつしか幸運で不幸な娘は人の形をなくし、酷くバラバラな食べかすに姿を変えていた。
浴びた憎悪の数だけ力が増す。
食った人の数だけ力が増す。
その憎悪が濃密ならば濃密なだけ、その人間の力が強ければ強いだけ、私の力は増していく。
だのにちっとも満たされないのは何故だろうと考えて、そんな答えは分かりきっていた。
酷く作為的な愛憎に歪んだ私という存在は、たった今のこの瞬間、紫さまの存在をもってしか救われないと明確に確信した。
それでも、これは後編を期待させるには十分な出来だと思います。
というわけで、今はまだ80点。やはりこれは50点では足りないくらいの出来でしょう。しかし完成したものを見ないうちには満点を入れるわけにはいきませんし。
後編を楽しみにしています。
言葉の一つ一つを丁寧に選び、とても綺麗で透明感のある文体。
それでいて真っ赤な血のようなどろどろとしたものを、畏れることなく書いている。
凄く好き。凄く続きが楽しみ。わくわくしながら後編を楽しみにしてますw
聞いてみたかっただけだ気にしないで欲しい。
俺は大好きですけどね!
しかしコレはカッコイイ藍様。
口からの狐火など、描写と相まって、もうめろめろです。
後編楽しみにしていますー
ただ藍の行動原理自体が本当に呑み込めるかと言えば疑問で、やや意地悪い言い回しをすれば、表現の巧みさによってカバーされている面があるのかなとも。よくよく振り返ってみると、ちょっと首を傾げるところもありました。
比重の置き方次第では、藍の本能的な部分をもう少し浮き彫りに出来て不自然さが解消されるのではないかとも思ったのですが、それは後半を読んでからこそ言えることかもしれません。ちょっとかみ合わせの悪さを感じたのですが、今は言うべきではないでしょうか。
静かな文章と対照的にドラスティックなスタートを切った物語、続編にて如何なる収束を見せるか、刮目してお待ちしております。
後編を楽しみに待っています。
後編が楽しみです
レイアウトですが……環境によるかと思います。
自分の環境(1028×768)では、IEを最大化して「お気に入り」のショートカット
消して、までやれば確かに他の創想話作品より読みやすくなります。
でも、小さいウィンドウで開くと改行が頻繁に行われて大変なことになります。
試しに800×600まで落としてみてはどうでしょうか。
自分環境が800×600だったらこの作品は読まずにたたんでいました。
続きが楽しみです。
久しぶりに活字で読みたいと思った話でした。
個人的にはレイアウト、フォント共に良い感じだと思います。
後編、楽しみにしています。
冒頭のインパクトが強かったので(本編が物足りなくなるのでは)と思いましたが、全くの杞憂でした。
藍も紫も非常に格好良いです。
後編(中編?)がとても楽しみです。