「だからそれではだめだ!!」
美しくモサモサした9本の尻尾を立てて怒鳴る式神
「そっちのほうが問題じゃないの?こっちが安全よ」
それを押しのけるように言葉を放つ巫女
「2人の案もいいかもしれないけど、やっぱ私の案が1番よね」
腕を組んでカリスマ駄々漏れの幼い容姿の吸血鬼
「そのとおりですわ」
それを肯定するメイド長
「あにゃーん」
いまだマタタビと戯れている式の式
時はもうすぐ日の入り、夕方になる
彼女達は一生懸命討論をしていた
小さくなってしまった
もとい
破壊力満点の笑みを撒き散らすスキマ妖怪の八雲紫を
誰の家に引き取るかを
「だぁーからー!!紫様はいつもどおりマヨヒガにお連れします!また明日にでもつれてきますから!」
「だめよ、もうすぐで夕方よ?危険すぎるわ。だから神社で泊まっていくといいわ」
「霊夢・・・私をなめているのか?八雲の最強の式神だぞ?!」
「その式の主人がこんな・・・うはぁ・・・・かわぃぃ・・・・じゃない、かわいそうな状態だからこそ神社で泊まるべきといっているのよ」
一瞬、幼女紫のほうを向いた霊夢の顔がかなり崩れたがすぐに真顔で反論する
「魂胆丸見えだぞ・・・結局、解決方法がわからず、この時間だ。また明日にでもと私は言っている。」
「いまからマヨヒガに向かう時間がもったいないわ。今日は泊まりなさいって」
「なんなら皆で紅魔館に泊まりに来ればイイじゃない」
「それは余計な手間だと思うぞ」
「同感」
「ぐ・・・」
こんな討論をすでに3時間近くしている
と、そこに声が割り込む
「みなさま、お静かに」
瀟洒なメイド十六夜 咲夜が口に人差し指をかざしシーッという合図をみなに送る
その合図をみて3人は静かに咲夜の膝上を見る
そこには膝枕をしてもらいスヤスヤと眠る紫がいた
まさに天使のような寝顔
純粋な子供の寝顔である
「いまさっきですわ。かわいらしい顔しちゃって・・・うふふふ」
「咲夜、顔が乱れているわよ」
「あら、すみませんお嬢様」
「しかし、何度も思うけどあのスキマ妖怪とは思えないわね」
「レミリアに同感」
「本当、かわいらしい・・・ふふふふ」
「咲夜、顔」
「あらいけない」
「まぁ無理も無いわよね・・・うふふふ」
「そうね・・・フフフフ」
「お前達、ものすごい犯罪者の顔になってるぞ」
3人の顔の乱れっぷりに藍がツッコミを入れる
「しかし困ったな、寝てしまったのなら動けないな・・・」
「じゃあ今日は神社で泊まりね。はい決定」
「しょうがない・・・」
霊夢が強引に決定稿を出す
藍もしょうがないという顔でため息をついて承諾した
「お嬢様、見てのとおり私は膝枕中なので動けませんわ。申し訳ございませんがお先にお屋敷に・・・」
「なに言っているのかしら?私もここに泊まるわよ」
「え、なに言ってるのよ」
「だって元々神社に遊びに来たわけだし、泊まっていっても問題ないでしょ?」
「なら私も今日はこちらにお世話になりますわ」
「ということでヨロシクね霊夢」
強引に宣言をするレミリア
「はぁ・・・わかったわよ」
霊夢が大きくため息をつきシブシブ承諾する
「なら私が夕飯をつくるとしよう。霊夢、台所を借りるぞ」
そういうと藍は立ち上がり台所に向かった
そんなやり取りの中でも紫はスヤスヤと眠っている
「・・・こんなことなら私が膝枕すれば良かったわ」
霊夢がうらめしそうに咲夜を睨む
「膝枕もメイドの務め(?)ですわ、おまかせください」
「く・・・職権乱用とはこの事ね」
「なんとでも・・・・ふふふふ」
「咲夜、顔顔」
「コホン失礼」
「スー・・・スー・・・」
「かわいい顔で寝ちゃってもう!」
「まさに天使ですわ・・・ふふふ」
「咲夜、しつこいようだけど顔」
「失礼しましたお嬢様」
「スー・・・んっ」
紫がピクッと体を振るわせる
それにドキッとした3人だが
「スー・・・スー・・・」
もとの寝息に戻りホッと安心した
「・・・あの式神は元に戻そうとしてるけど・・・」
「正直、このままのほうがいいわよね・・・」
「同感ですわ・・・」
「・・・」
「・・・あの式神・・・邪魔よね?」
「・・・そうね」
「そうですね」
3人の間に沈黙が走り
次の瞬間3人同時に目を光らせ
「「「殺るか」」」
すでに悪人面
むしろ目的のためには手段を選ばないという極悪人の顔をしている
「すー・・・ん・・・ん~・・・」
と、ここで紫が起きた
「むにゃ・・・」
「あら、起きてしまわれたのですね」
「少し騒がしかったのかしら」
「紫ちゃーん、おめざめですかー?」
さっきまでの悪人面はどこへ
3人とも顔がヤバイほど崩れている
「ん~・・・おなかすいた」
「おなかすいちゃったんだー。まっててねー今狐さんが夕飯作っているからねー」
「ごはん?やったー」
両手を上げて喜びを表す紫
もちろんその姿を見て無事なわけが無い3人
必死にハンカチなどで鼻を隠すが徐々に赤くにじむ
「・・・咲夜」
「なんでしょうお嬢様」
「私の考え・・・察しがつくわよね?」
「もちろんですわ」
「そう・・・ならやりなさい」
「おおせのままに」
そうすると咲夜は紫を抱きかかえたまま立ち上がった
「ん?どうしたの?」
「霊夢、悪いけどこの子はいただいたいくわ」
「な!レミリアあなた!」
「そういうことですので、ごきげんよう」
「また明日ね霊夢」
そうするとレミリアと咲夜は紫を抱きかかえたまま姿を消した
残されたのはジョーカーのトランプ1枚
咲夜お得意の時間を止めての移動である
「な!やられた!!!」
霊夢は頭を抱えすごい剣幕で悔しがっている
「なにがやられたーのー?」
「なにってあなたが連れて行かれたのよ?・・・・ってあれ?」
「なーに?」
声がする方向に霊夢は顔を向ける
そこにはたしかに咲夜に連れて行かれた紫がいた
「あれ?どうやってここに?」
「んとねーまだご飯食べて無いから~これで戻ってきたの~」
紫が指差す方向に視線を向けると見慣れたスキマが浮いていた
それをみて霊夢は納得した顔で
「ああそうか。あなたスキマで移動できるもんねー。えらいわー」
「えっへへへ~」
霊夢が紫の頭をなでていると
「さすがスキマ妖怪ね」
「子供でも侮れないですわね」
「うわっあんたたちいつのまに・・・」
そこには誘拐犯の2名が何食わぬ顔で座っている
おそらく紫が居なくなったのを見てあわてて戻ってきたのだろう
「ま、まぁまだ私達も夕飯食べて無いし、ね咲夜」
「ええ、そうですわ」
「・・・2度目は無いと思いなさい」
霊夢が殺気をだし2人を睨み付ける
「「はい」」
「れいむ~お顔こわいよー?」
「ん~?だいじょうぶよー」
修羅の顔をしていた霊夢の表情が一気に崩れる
そんなやり取りをしていると台所から藍が料理を持ってきた
「お前達さっきからさわがしいぞ。ほら夕飯できたから座ってくれ」
藍はもってきた料理をテキパキとちゃぶ台に並べていく
「っわーごっはーん」
「ほらほら紫様、お行儀が悪いですよ」
「だいじょうぶだよーらんー」
その光景は母と子のやり取りである
もちろんその光景をみて3人が平然としていられるわけが無い
「くはぁ・・・」
「なんという・・・」
「破壊力ですわ・・・」
幸せそうな表情をして見入っている3人に
「お前達、鼻から赤い筋でてるぞ」
藍はもう慣れたという顔でツッコミを入れる
「さて橙はどこ・・・に・・・」
「あにゃーん」
「・・・」
「にゃーん」
「・・・霊夢、お前が橙に投げたマタタビさ」
「ん?凝縮30年分ってやつよ?」
「・・・」
霊夢の無慈悲な発言に
藍の顔に諦めの表情が写る
「さぁ料理が冷めてしまうわ、いただきましょう」
「そうだな」
「和食もたまにはいいわね」
「ご要望とあればいつでも御作りいたしますわ」
「いっただきま~す」
5人が手を合わせ合唱した瞬間
夜の空から何か音が近づいてきた
「・・・ぁぁあああああ!お邪魔するぜー!!」
「げぇ魔理沙!」
「げぇ、ってどこの策士だよ。てことでコンバンワだ」
ものすごい急ブレーキで庭先に降り立ったのは白黒の魔法使い
霧雨 魔理沙だった
「なんでここに・・・」
「いやぁたまたま通りかかったらいい匂いしてなー寄ってみたわけさ」
「狙ってきたんじゃないでしょうね?」
「まっさか、そこまで私は器用じゃないぜ。まぁ人が多い方が賑やかだろう?私も混ぜてくれよ」
ニヒヒという表情で笑う魔理沙
「まぁ言ってもムダでしょうし、勝手にしなさい」
「さんきゅー霊夢!」
そういうと靴を脱ぎ帽子を取り紫の隣に座った
「あー白黒~」
「おー白黒の魔理沙だぜー、ってこの子誰だ?」
「紫よ、原因不明で小さくなったんだって」
「へぇ~」
「へぇ~ってそれだけ?」
「ん?他になにかいわないといけないのか?」
「かわいいーとか」
「かわいいぜ?」
「私達とえらく反応が違うのね」
「ん~まぁ実験のたびにアリスが小さくなるときがあるからな、同じくらいかわいいから慣れてるんだと思うぜ」
「・・・アリスも災難ね」
「もちろん対策用意してあるから大丈夫だぜ」
その言葉を聞いて霊夢、藍、レミリア、咲夜が硬直する
藍は希望に満ちた表情
残り3人はなんだってー!という表情をしている
そして藍が身を乗り出し魔理沙にたずねた
「魔理沙、その対策っていったなんだ?!」
「らぁん~おかずとって~」
「はいはい、少しお待ちください~」
藍は紫からお皿を受け取ると
テキパキとおかずを盛り付け紫に渡す
「はいどうぞ。で、その対策とは!」
「おまえ顔がコロコロ変わっておもしろいな」
「そんなことより対策とは!!」
「そうあせるなって・・・これだよこれ」
魔理沙はゴソゴソと持ってきたバッグからある物を取り出した
「・・・きのこ?」
「そうキノコなんだぜ」
「赤くて白い斑点のキノコ・・・毒じゃないのか?」
「いや問題なくたべれるぜ」
「よしならばそれを紫様に・・・!」
藍がキノコを取ろうとした瞬間、目の前にレーザーが飛びキノコを蒸発させた
「な?!」
「ごめんなさい、手が滑ったわ」
「レミリア!貴様!」
「咲夜、おかわり」
「はい」
「く・・・魔理沙!キノコはあれだけなのか?!」
「いや、まだあるぜ?」
「よかった、ならいただきたい!」
「いいぜ、ほら」
魔理沙はまたバッグをあさり同じキノコを取り出す
「あ、手が滑った」
その瞬間霊夢が陰陽アミュレットをキノコに放ちキノコを消し飛ばした
そのときレミリアと霊夢は見えないように親指をグッと立てた
「巫女ー!おまえまで!」
「手が滑っただけよ」
「く・・・」
「なんだぁ?このキノコそんなにキライなのか?」
魔理沙が不思議な表情をして回りを見渡す
「いや必要なものだ!あるだけ全部くれ!」
「む、まぁそこまで言うなら・・・」
「魔理沙、わたしちゃダメよ」
「へ?」
「そうよ魔理沙、その狐はキノコを使って世界スッパテンコーするつもりよ」
「誰がそんなことするか!!」
「あ~?なに争っているんだ?」
「魔理沙には関係ないことよ」
「そうね」
「おおありだ!」
「ん~?どういうことだ?」
魔理沙は首をかしげる
「そのキノコがあれば紫様を元に戻せるかもしれないのだ!」
「得体も知れないキノコを食べさせるなんて危険よ」
「そうよ、残機が増える緑色のやつならともかくね」
「レミリア、それ禁句」
「ゴホン、まぁ危険だから私も反対よ」
「お嬢様の言うとおりですわ」
「おまえらー!紫様がこのままでもいいのか!!」
「べつに」
「むしろオーケー」
「関係ないね」
「くー!!こうなれば強行手段だ!魔理沙!キノコを全部渡せ!!」
「な、なんだよいきなり!!」
「ちょっと式神!乱暴はダメじゃない!」
「うるさい!紫様をもどすんだ!」
「咲夜、全力で阻止しなさい」
「おおせのままに」
「昼間の契約はどうしたー!!」
「そんなもん破棄よ破棄」
「みこおおおおお!!!」
「なにがどうなっているんだぁ?」
もう少しで弾幕試合が始まりそうな空気のが漂う
「もぐもぐ」
「ん?」
「へ?」
「あら」
「あ」
「お?」
何かを食べる音がして全員がそちらを振り向く
全員の視線の先には口をもごもごしている紫が居た
「うぇ~まりさぁーこのキノコまずぃー」
「ありゃ食っちまったのか」
「にがいよー」
「まぁそのまま食うからだぜ」
他の4人は固まっている
少しの静寂
そして
「ん?おや、紫の様子が・・・」
紫の体が白く光り、じょじょに大きくなっていく
そして
「・・・ふぅやっともどれた」
大きくなった紫の第一声が響く
その口調は
胡散臭い
そして次の瞬間、周りから声が上がる
「うわああああああああああああああああああ!!!!!」
「お、おわった・・・私達のドリームゥが・・・・」
「く・・・咲夜、一生の不覚ですわ!!」
「だからおまえらなー!!」
霊夢は頭を抱え
レミリアは膝をつき
咲夜は涙がこぼれないように上を向いていた
まさにその3人は絶望にひれ伏したかのような負のオーラをまとっていた
「まぁなんだ、とりあえず紫復活おめでとう?」
「ありがとう魔理沙、あなたのおかげよ」
「ん?そうか?」
「ええ」
「なんか照れるぜ」
「ふふふ・・・さて」
紫は扇子で口元を隠し霊夢たちの方向を向いた
「あ、あはぁ紫・・・復活・・・おめでとう・・・ぐすん」
「そこまで悲しまなくてもいいじゃない」
「ぐす・・・だいじょうぶ悲しんでなんか・・・ぐすん」
「あらあら・・・で吸血鬼さんは?」
視線を向けた先には暗い雰囲気で横になっている吸血鬼と
膝をついて床を叩くメイドの姿が映った
「そこまで落胆しなくてもいいじゃない」
「うるさぁぁいい・・・ドリームゥがぁ・・・妹がもう1人増えるフラグがぁぁ」
「かわいい子が・・・かわいい子がぁああああ」
「落ち着きなさいって」
「小さい方がよかったのにー・・・」
「そう?じゃあ・・・」
「へ?」
「あなたに習ったことやればかわいく見えるかしら?」
「ま、まさか・・・!」
紫の表情がまさに悪魔に等しい万遍な笑顔
その表情を見てレミリアの顔が青ざめる
「や、やめろぉぉスキマ妖怪~!!」
「レミリア☆うー」
「ぎゃああああああああああああ」
その瞬間レミリアは真っ白に燃え尽きたようにそこに倒れた
「あら?かわいくなかったかしら?」
「そうかぁ?めずらしくかわいいことするんだなぁとおもったぜ?」
「ふふふ」
まさに外道
咲夜のほうに視線を向けるが
すでに咲夜は燃え尽きていた
「ん~やっぱこの体の方が落ち着くわねぇ」
ぐぃーと体を伸ばす
「紫様、お体は大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
「そうですか!よかった」
「よくないわよ?」
「へ?」
藍が首をかしげる
「原因はあなたよ、藍」
その言葉に燃え尽きた3人と藍が同時に声を上げる
「な、なんだってー?!?!」
「ど、どういうことですか?!」
「どうもこうもあなたが原因だといっているのよ」
「し、しかし私は紫様に何もしていませんよ?」
「じゃあこれはなぁに?」
紫がピッと手から1枚の写真を取り出す
「そ、それは!!」
「なんだ?・・・ぬはぁ!!」
魔理沙が鮮血を噴出しそこへ倒れた
これで写真に撃墜されたのが3人目
写真強し
「この写真が原因なのよ」
「えええ?!」
「まぁ写真じゃなくてこれね・・・」
紫が隙間を開きゴソゴソとあさり1つのカメラを取り出した
それは藍が今朝使った物と同じ物だった
「このカメラはね撮られた者の姿と性格を幼くしてしまう呪いがかけられているのよ」
「な、なんだってー!」
「ソレを知らずに藍が私を撮るから今回のような事が起きたわけ。本来は写真を破れば呪いが解けるんだけどね」
「そうだったんですか・・・」
「藍」
「は、はぃ!」
「なぁーんで私がこのカメラ持っているか・・・もうわかるわよねぇ?」
紫の笑顔がまぶしい
ものすごい邪悪すぎて
手には呪いのカメラ
今にもシャッターボタンを押しそうに人差し指をトントンとしている
「ゆ、紫様!お、落ち着いてください!まままだいいいまままならまにああああいます!!」
「ん~?きこえなーい☆」
「ひぃぃい」
「あとそこの3人」
くるりと視線を霊夢、レミリア、咲夜に向ける
「んーふふふ」
「あ、ゆ、紫?はやまっちゃだめよ?私達関係ないんだから!ね!」
「そ、そうよ!ほら私元々幼いし!ね!」
「わ、わたしみたいなメイドがカメラに収まるなんてもったいないからおやめください!!」
「ん~?ゆかりんきこえなーい☆」
紫の笑顔がとまらない
まさに幻想郷最強の妖怪といった笑み
そして
「ゆかりん☆うー」
神社に一筋の閃光が走った
後日『文々。新聞』より
「『博麗神社が幼稚園に?』
昨日、記者が神社を訪れたところ見た事あるような子供が5人いた。
全員元気よく遊んでおり服装も・・・あえて書かないでおく。
すぐそばにスキマ妖怪こと八雲紫氏がいたので理由を尋ねたところ
”かわいい子っていいわよね、うふふふ”と答え万遍な笑みで子供達を見守っていた。
記者は身の危険を感じて、これ以上の取材を止めた。」
「あにゃーん」
美しくモサモサした9本の尻尾を立てて怒鳴る式神
「そっちのほうが問題じゃないの?こっちが安全よ」
それを押しのけるように言葉を放つ巫女
「2人の案もいいかもしれないけど、やっぱ私の案が1番よね」
腕を組んでカリスマ駄々漏れの幼い容姿の吸血鬼
「そのとおりですわ」
それを肯定するメイド長
「あにゃーん」
いまだマタタビと戯れている式の式
時はもうすぐ日の入り、夕方になる
彼女達は一生懸命討論をしていた
小さくなってしまった
もとい
破壊力満点の笑みを撒き散らすスキマ妖怪の八雲紫を
誰の家に引き取るかを
「だぁーからー!!紫様はいつもどおりマヨヒガにお連れします!また明日にでもつれてきますから!」
「だめよ、もうすぐで夕方よ?危険すぎるわ。だから神社で泊まっていくといいわ」
「霊夢・・・私をなめているのか?八雲の最強の式神だぞ?!」
「その式の主人がこんな・・・うはぁ・・・・かわぃぃ・・・・じゃない、かわいそうな状態だからこそ神社で泊まるべきといっているのよ」
一瞬、幼女紫のほうを向いた霊夢の顔がかなり崩れたがすぐに真顔で反論する
「魂胆丸見えだぞ・・・結局、解決方法がわからず、この時間だ。また明日にでもと私は言っている。」
「いまからマヨヒガに向かう時間がもったいないわ。今日は泊まりなさいって」
「なんなら皆で紅魔館に泊まりに来ればイイじゃない」
「それは余計な手間だと思うぞ」
「同感」
「ぐ・・・」
こんな討論をすでに3時間近くしている
と、そこに声が割り込む
「みなさま、お静かに」
瀟洒なメイド十六夜 咲夜が口に人差し指をかざしシーッという合図をみなに送る
その合図をみて3人は静かに咲夜の膝上を見る
そこには膝枕をしてもらいスヤスヤと眠る紫がいた
まさに天使のような寝顔
純粋な子供の寝顔である
「いまさっきですわ。かわいらしい顔しちゃって・・・うふふふ」
「咲夜、顔が乱れているわよ」
「あら、すみませんお嬢様」
「しかし、何度も思うけどあのスキマ妖怪とは思えないわね」
「レミリアに同感」
「本当、かわいらしい・・・ふふふふ」
「咲夜、顔」
「あらいけない」
「まぁ無理も無いわよね・・・うふふふ」
「そうね・・・フフフフ」
「お前達、ものすごい犯罪者の顔になってるぞ」
3人の顔の乱れっぷりに藍がツッコミを入れる
「しかし困ったな、寝てしまったのなら動けないな・・・」
「じゃあ今日は神社で泊まりね。はい決定」
「しょうがない・・・」
霊夢が強引に決定稿を出す
藍もしょうがないという顔でため息をついて承諾した
「お嬢様、見てのとおり私は膝枕中なので動けませんわ。申し訳ございませんがお先にお屋敷に・・・」
「なに言っているのかしら?私もここに泊まるわよ」
「え、なに言ってるのよ」
「だって元々神社に遊びに来たわけだし、泊まっていっても問題ないでしょ?」
「なら私も今日はこちらにお世話になりますわ」
「ということでヨロシクね霊夢」
強引に宣言をするレミリア
「はぁ・・・わかったわよ」
霊夢が大きくため息をつきシブシブ承諾する
「なら私が夕飯をつくるとしよう。霊夢、台所を借りるぞ」
そういうと藍は立ち上がり台所に向かった
そんなやり取りの中でも紫はスヤスヤと眠っている
「・・・こんなことなら私が膝枕すれば良かったわ」
霊夢がうらめしそうに咲夜を睨む
「膝枕もメイドの務め(?)ですわ、おまかせください」
「く・・・職権乱用とはこの事ね」
「なんとでも・・・・ふふふふ」
「咲夜、顔顔」
「コホン失礼」
「スー・・・スー・・・」
「かわいい顔で寝ちゃってもう!」
「まさに天使ですわ・・・ふふふ」
「咲夜、しつこいようだけど顔」
「失礼しましたお嬢様」
「スー・・・んっ」
紫がピクッと体を振るわせる
それにドキッとした3人だが
「スー・・・スー・・・」
もとの寝息に戻りホッと安心した
「・・・あの式神は元に戻そうとしてるけど・・・」
「正直、このままのほうがいいわよね・・・」
「同感ですわ・・・」
「・・・」
「・・・あの式神・・・邪魔よね?」
「・・・そうね」
「そうですね」
3人の間に沈黙が走り
次の瞬間3人同時に目を光らせ
「「「殺るか」」」
すでに悪人面
むしろ目的のためには手段を選ばないという極悪人の顔をしている
「すー・・・ん・・・ん~・・・」
と、ここで紫が起きた
「むにゃ・・・」
「あら、起きてしまわれたのですね」
「少し騒がしかったのかしら」
「紫ちゃーん、おめざめですかー?」
さっきまでの悪人面はどこへ
3人とも顔がヤバイほど崩れている
「ん~・・・おなかすいた」
「おなかすいちゃったんだー。まっててねー今狐さんが夕飯作っているからねー」
「ごはん?やったー」
両手を上げて喜びを表す紫
もちろんその姿を見て無事なわけが無い3人
必死にハンカチなどで鼻を隠すが徐々に赤くにじむ
「・・・咲夜」
「なんでしょうお嬢様」
「私の考え・・・察しがつくわよね?」
「もちろんですわ」
「そう・・・ならやりなさい」
「おおせのままに」
そうすると咲夜は紫を抱きかかえたまま立ち上がった
「ん?どうしたの?」
「霊夢、悪いけどこの子はいただいたいくわ」
「な!レミリアあなた!」
「そういうことですので、ごきげんよう」
「また明日ね霊夢」
そうするとレミリアと咲夜は紫を抱きかかえたまま姿を消した
残されたのはジョーカーのトランプ1枚
咲夜お得意の時間を止めての移動である
「な!やられた!!!」
霊夢は頭を抱えすごい剣幕で悔しがっている
「なにがやられたーのー?」
「なにってあなたが連れて行かれたのよ?・・・・ってあれ?」
「なーに?」
声がする方向に霊夢は顔を向ける
そこにはたしかに咲夜に連れて行かれた紫がいた
「あれ?どうやってここに?」
「んとねーまだご飯食べて無いから~これで戻ってきたの~」
紫が指差す方向に視線を向けると見慣れたスキマが浮いていた
それをみて霊夢は納得した顔で
「ああそうか。あなたスキマで移動できるもんねー。えらいわー」
「えっへへへ~」
霊夢が紫の頭をなでていると
「さすがスキマ妖怪ね」
「子供でも侮れないですわね」
「うわっあんたたちいつのまに・・・」
そこには誘拐犯の2名が何食わぬ顔で座っている
おそらく紫が居なくなったのを見てあわてて戻ってきたのだろう
「ま、まぁまだ私達も夕飯食べて無いし、ね咲夜」
「ええ、そうですわ」
「・・・2度目は無いと思いなさい」
霊夢が殺気をだし2人を睨み付ける
「「はい」」
「れいむ~お顔こわいよー?」
「ん~?だいじょうぶよー」
修羅の顔をしていた霊夢の表情が一気に崩れる
そんなやり取りをしていると台所から藍が料理を持ってきた
「お前達さっきからさわがしいぞ。ほら夕飯できたから座ってくれ」
藍はもってきた料理をテキパキとちゃぶ台に並べていく
「っわーごっはーん」
「ほらほら紫様、お行儀が悪いですよ」
「だいじょうぶだよーらんー」
その光景は母と子のやり取りである
もちろんその光景をみて3人が平然としていられるわけが無い
「くはぁ・・・」
「なんという・・・」
「破壊力ですわ・・・」
幸せそうな表情をして見入っている3人に
「お前達、鼻から赤い筋でてるぞ」
藍はもう慣れたという顔でツッコミを入れる
「さて橙はどこ・・・に・・・」
「あにゃーん」
「・・・」
「にゃーん」
「・・・霊夢、お前が橙に投げたマタタビさ」
「ん?凝縮30年分ってやつよ?」
「・・・」
霊夢の無慈悲な発言に
藍の顔に諦めの表情が写る
「さぁ料理が冷めてしまうわ、いただきましょう」
「そうだな」
「和食もたまにはいいわね」
「ご要望とあればいつでも御作りいたしますわ」
「いっただきま~す」
5人が手を合わせ合唱した瞬間
夜の空から何か音が近づいてきた
「・・・ぁぁあああああ!お邪魔するぜー!!」
「げぇ魔理沙!」
「げぇ、ってどこの策士だよ。てことでコンバンワだ」
ものすごい急ブレーキで庭先に降り立ったのは白黒の魔法使い
霧雨 魔理沙だった
「なんでここに・・・」
「いやぁたまたま通りかかったらいい匂いしてなー寄ってみたわけさ」
「狙ってきたんじゃないでしょうね?」
「まっさか、そこまで私は器用じゃないぜ。まぁ人が多い方が賑やかだろう?私も混ぜてくれよ」
ニヒヒという表情で笑う魔理沙
「まぁ言ってもムダでしょうし、勝手にしなさい」
「さんきゅー霊夢!」
そういうと靴を脱ぎ帽子を取り紫の隣に座った
「あー白黒~」
「おー白黒の魔理沙だぜー、ってこの子誰だ?」
「紫よ、原因不明で小さくなったんだって」
「へぇ~」
「へぇ~ってそれだけ?」
「ん?他になにかいわないといけないのか?」
「かわいいーとか」
「かわいいぜ?」
「私達とえらく反応が違うのね」
「ん~まぁ実験のたびにアリスが小さくなるときがあるからな、同じくらいかわいいから慣れてるんだと思うぜ」
「・・・アリスも災難ね」
「もちろん対策用意してあるから大丈夫だぜ」
その言葉を聞いて霊夢、藍、レミリア、咲夜が硬直する
藍は希望に満ちた表情
残り3人はなんだってー!という表情をしている
そして藍が身を乗り出し魔理沙にたずねた
「魔理沙、その対策っていったなんだ?!」
「らぁん~おかずとって~」
「はいはい、少しお待ちください~」
藍は紫からお皿を受け取ると
テキパキとおかずを盛り付け紫に渡す
「はいどうぞ。で、その対策とは!」
「おまえ顔がコロコロ変わっておもしろいな」
「そんなことより対策とは!!」
「そうあせるなって・・・これだよこれ」
魔理沙はゴソゴソと持ってきたバッグからある物を取り出した
「・・・きのこ?」
「そうキノコなんだぜ」
「赤くて白い斑点のキノコ・・・毒じゃないのか?」
「いや問題なくたべれるぜ」
「よしならばそれを紫様に・・・!」
藍がキノコを取ろうとした瞬間、目の前にレーザーが飛びキノコを蒸発させた
「な?!」
「ごめんなさい、手が滑ったわ」
「レミリア!貴様!」
「咲夜、おかわり」
「はい」
「く・・・魔理沙!キノコはあれだけなのか?!」
「いや、まだあるぜ?」
「よかった、ならいただきたい!」
「いいぜ、ほら」
魔理沙はまたバッグをあさり同じキノコを取り出す
「あ、手が滑った」
その瞬間霊夢が陰陽アミュレットをキノコに放ちキノコを消し飛ばした
そのときレミリアと霊夢は見えないように親指をグッと立てた
「巫女ー!おまえまで!」
「手が滑っただけよ」
「く・・・」
「なんだぁ?このキノコそんなにキライなのか?」
魔理沙が不思議な表情をして回りを見渡す
「いや必要なものだ!あるだけ全部くれ!」
「む、まぁそこまで言うなら・・・」
「魔理沙、わたしちゃダメよ」
「へ?」
「そうよ魔理沙、その狐はキノコを使って世界スッパテンコーするつもりよ」
「誰がそんなことするか!!」
「あ~?なに争っているんだ?」
「魔理沙には関係ないことよ」
「そうね」
「おおありだ!」
「ん~?どういうことだ?」
魔理沙は首をかしげる
「そのキノコがあれば紫様を元に戻せるかもしれないのだ!」
「得体も知れないキノコを食べさせるなんて危険よ」
「そうよ、残機が増える緑色のやつならともかくね」
「レミリア、それ禁句」
「ゴホン、まぁ危険だから私も反対よ」
「お嬢様の言うとおりですわ」
「おまえらー!紫様がこのままでもいいのか!!」
「べつに」
「むしろオーケー」
「関係ないね」
「くー!!こうなれば強行手段だ!魔理沙!キノコを全部渡せ!!」
「な、なんだよいきなり!!」
「ちょっと式神!乱暴はダメじゃない!」
「うるさい!紫様をもどすんだ!」
「咲夜、全力で阻止しなさい」
「おおせのままに」
「昼間の契約はどうしたー!!」
「そんなもん破棄よ破棄」
「みこおおおおお!!!」
「なにがどうなっているんだぁ?」
もう少しで弾幕試合が始まりそうな空気のが漂う
「もぐもぐ」
「ん?」
「へ?」
「あら」
「あ」
「お?」
何かを食べる音がして全員がそちらを振り向く
全員の視線の先には口をもごもごしている紫が居た
「うぇ~まりさぁーこのキノコまずぃー」
「ありゃ食っちまったのか」
「にがいよー」
「まぁそのまま食うからだぜ」
他の4人は固まっている
少しの静寂
そして
「ん?おや、紫の様子が・・・」
紫の体が白く光り、じょじょに大きくなっていく
そして
「・・・ふぅやっともどれた」
大きくなった紫の第一声が響く
その口調は
胡散臭い
そして次の瞬間、周りから声が上がる
「うわああああああああああああああああああ!!!!!」
「お、おわった・・・私達のドリームゥが・・・・」
「く・・・咲夜、一生の不覚ですわ!!」
「だからおまえらなー!!」
霊夢は頭を抱え
レミリアは膝をつき
咲夜は涙がこぼれないように上を向いていた
まさにその3人は絶望にひれ伏したかのような負のオーラをまとっていた
「まぁなんだ、とりあえず紫復活おめでとう?」
「ありがとう魔理沙、あなたのおかげよ」
「ん?そうか?」
「ええ」
「なんか照れるぜ」
「ふふふ・・・さて」
紫は扇子で口元を隠し霊夢たちの方向を向いた
「あ、あはぁ紫・・・復活・・・おめでとう・・・ぐすん」
「そこまで悲しまなくてもいいじゃない」
「ぐす・・・だいじょうぶ悲しんでなんか・・・ぐすん」
「あらあら・・・で吸血鬼さんは?」
視線を向けた先には暗い雰囲気で横になっている吸血鬼と
膝をついて床を叩くメイドの姿が映った
「そこまで落胆しなくてもいいじゃない」
「うるさぁぁいい・・・ドリームゥがぁ・・・妹がもう1人増えるフラグがぁぁ」
「かわいい子が・・・かわいい子がぁああああ」
「落ち着きなさいって」
「小さい方がよかったのにー・・・」
「そう?じゃあ・・・」
「へ?」
「あなたに習ったことやればかわいく見えるかしら?」
「ま、まさか・・・!」
紫の表情がまさに悪魔に等しい万遍な笑顔
その表情を見てレミリアの顔が青ざめる
「や、やめろぉぉスキマ妖怪~!!」
「レミリア☆うー」
「ぎゃああああああああああああ」
その瞬間レミリアは真っ白に燃え尽きたようにそこに倒れた
「あら?かわいくなかったかしら?」
「そうかぁ?めずらしくかわいいことするんだなぁとおもったぜ?」
「ふふふ」
まさに外道
咲夜のほうに視線を向けるが
すでに咲夜は燃え尽きていた
「ん~やっぱこの体の方が落ち着くわねぇ」
ぐぃーと体を伸ばす
「紫様、お体は大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
「そうですか!よかった」
「よくないわよ?」
「へ?」
藍が首をかしげる
「原因はあなたよ、藍」
その言葉に燃え尽きた3人と藍が同時に声を上げる
「な、なんだってー?!?!」
「ど、どういうことですか?!」
「どうもこうもあなたが原因だといっているのよ」
「し、しかし私は紫様に何もしていませんよ?」
「じゃあこれはなぁに?」
紫がピッと手から1枚の写真を取り出す
「そ、それは!!」
「なんだ?・・・ぬはぁ!!」
魔理沙が鮮血を噴出しそこへ倒れた
これで写真に撃墜されたのが3人目
写真強し
「この写真が原因なのよ」
「えええ?!」
「まぁ写真じゃなくてこれね・・・」
紫が隙間を開きゴソゴソとあさり1つのカメラを取り出した
それは藍が今朝使った物と同じ物だった
「このカメラはね撮られた者の姿と性格を幼くしてしまう呪いがかけられているのよ」
「な、なんだってー!」
「ソレを知らずに藍が私を撮るから今回のような事が起きたわけ。本来は写真を破れば呪いが解けるんだけどね」
「そうだったんですか・・・」
「藍」
「は、はぃ!」
「なぁーんで私がこのカメラ持っているか・・・もうわかるわよねぇ?」
紫の笑顔がまぶしい
ものすごい邪悪すぎて
手には呪いのカメラ
今にもシャッターボタンを押しそうに人差し指をトントンとしている
「ゆ、紫様!お、落ち着いてください!まままだいいいまままならまにああああいます!!」
「ん~?きこえなーい☆」
「ひぃぃい」
「あとそこの3人」
くるりと視線を霊夢、レミリア、咲夜に向ける
「んーふふふ」
「あ、ゆ、紫?はやまっちゃだめよ?私達関係ないんだから!ね!」
「そ、そうよ!ほら私元々幼いし!ね!」
「わ、わたしみたいなメイドがカメラに収まるなんてもったいないからおやめください!!」
「ん~?ゆかりんきこえなーい☆」
紫の笑顔がとまらない
まさに幻想郷最強の妖怪といった笑み
そして
「ゆかりん☆うー」
神社に一筋の閃光が走った
後日『文々。新聞』より
「『博麗神社が幼稚園に?』
昨日、記者が神社を訪れたところ見た事あるような子供が5人いた。
全員元気よく遊んでおり服装も・・・あえて書かないでおく。
すぐそばにスキマ妖怪こと八雲紫氏がいたので理由を尋ねたところ
”かわいい子っていいわよね、うふふふ”と答え万遍な笑みで子供達を見守っていた。
記者は身の危険を感じて、これ以上の取材を止めた。」
「あにゃーん」