――両手一杯の愛おしさとちょっぴりの悪戯心が肝心です。
●
夜の竹林には化生が出るというが人間も出るらしい。
「何よ」
藤原妹紅。
曰く、不死の人間。
白い長髪の所々には札がリボンとして巻かれており、妙な雰囲気を醸し出す少女だ。
少女という呼称が適切なのかどうかは別として取り敢えず変人なのは確かである。
「というかあんたは誰なのよ」
「あら、名乗り忘れごめんなさい」
ふと思考の海から帰ってきて見れば目の前には怪訝な顔をした妹紅が立っていた。
取り敢えず名乗るにしても近すぎるので彼女の胸を両手で押して距離を離す。
「中々に大きい」
「やかまし、燃やすぞ」
どうやら彼女は結構な短気のようだ。
それもまた人の性というもので見ていて楽しいのは魔界人の性なのだろうか。
創造主曰く、あまり人間も魔界人も差は無いとの事だが。
「というわけで、紹介させてもらうわ」
長く待たせると本当に燃やされそうなので距離を取ったまま礼を一つ。
魔界人は何時いかなる時であろうと礼を尽くす。これ本当。
……たまに全く逆の思想のが居るけど。
己の片割れの事を思い出して一瞬頭が痛くなるが今は思い出に耽っている時ではない。
「わたしはユキ。魔界人のユキよ」
「……まかいじん?」
予想はしていたがやはり魔界人という単語が聞きなれないのか眉を顰める妹紅。
妹分から聞いた時はもっと陽気だという話だったのに、意外と細かい事を気にする性格らしい。
まぁ、長く生きていたという事もあって人を疑ったり物事を深く考える癖でもついているのだろう。
「そう。魔界から来たから魔界人。こんな竹林の中で何をしているの藤原妹紅さん?」
「……なんで私の名前を……」
「なかなかに有名人よ、あなた。死なない人間、蓬莱人、輪から離れた人形とかとか」
人形と言った途端に妹紅の眉が少しばかり強く顰められた。
「そう怒らないでよ。私は別に喧嘩を売りにきたわけじゃないのよ?」
「怒ってない」
「えー、嘘だ。顔が般若みたいになってるわよ。もしくはレッサーデーモン」
「前者はともかく、後者がどんなのだか思いつかないんだけど」
「恐いわよー。どれくらい恐いかっていうとフィッシュ竹中さんくらい」
「日本語と横文字を混ぜるな」
「あららー、エイゴは苦手?それとも知らないのかしら、うふふふ」
「……で、その魔界人とやらが何の用。まさか何の用も無いのに私を呼び止めたのかしら」
妹紅の目が細くなる。
同時に聞えるのは何かが擦れる音。
次の瞬間、
「っと、あぶなっ!?」
先程まで竹林だったものが炎の海と化した。
「うっわー、あなたも無茶するわね。私も炎使うけど、ここまではやらないわよ」
「五月蝿い子ども。用件を言いなさい、でないと――」
燃やすわよ、と言わんが如く彼女は掌に炎と霊力を集めていく。
集った炎はまるでそれ自体が意思を持っているかのように蠢き、悶え、断末魔の叫びを上げる。
だが断末魔の後には新たな炎が生まれ、また断末魔を上げては消えていく。
その繰り返し。
「なるほどねぇ……あ、はいはい。解かったから投擲ポーズに入らないで。燃えちゃうー」
「……ふざけた娘ね」
「これでも魔界では真面目な方なんだけどなぁ……ルイズさんとかと比べたら凄まじくまともよ」
「それじゃあそのルイズとかいう奴がよっぽど不真面目なのね」
「いえ、結構真面目です、ひぃ!?」
真面目に答えたつもりが真横を火球が高速で通り過ぎていった。なぜゆえ。
「……次は当てる」
しかも目が本気だ。本気と書いてマジ。
危険度マックス。生存確率零パーセント。君は生き残れるか。
「いや、おつかい中なのですけど、道に迷ってしまったのであります、ハイ!」
「……はい?おつかい?」
「そう。おつかい、ひぃ!?」
「……」
「おつかいであります、ハイ!」
もはやタメ口すら許されないらしい。力で己を示すだなんて虚しい事だと思いませんか。
あ、また火球が真横を。どうやら口に出ていたらしい。
「で、迷ったってあんた一応まかいじんとかいうのなんでしょ、なんとかならないの?」
「魔界人にだって……解からない事はある……」
「……ふざけてる?」
「滅相も御座いません」
お気に入りの白いリボンが付いた黒い帽子の庇を指で摘みつつ一礼。
流石に妹紅の方も飽きたのか溜息を吐いてコチラを半目で見る。
「ついてきな」
「おぉ、連れて行ってくれるの?」
「あんたに居座られると厄介そうだからね……つか、鬱陶しい」
随分と率直に自分の心を表す人だ。
「長く生きてるとね、愚図ってる分が無駄だと思うようになってくるわけよ」
「そういうものなの?」
「そういうもの」
消し炭気味になった竹林を歩く。
気味、というのは表面上は焦げていても、実際は焼けていないからだ。
表面は真っ黒だが、竹自体は原型をしっかりと残している。どうやら先程のは威嚇だったらしい。
なんとも器用なものだ。
「さて、ついたよ」
「ハヤッ!?」
「一番人が迷いやすいのは入り口。なにしろ一番帰りやすい場所だからね」
「……どういう事で?」
「潜在的に奥に進むのを拒むって事よ。恐いのが色々と居るのよ奥には」
今度はユキに対してではなく、竹林の奥を見据えて妹紅の目が細められる。
ユキも目を凝らして奥を見てみようと試みるが見えるのはやはり竹だけだった。
どうやら不死身の体になると視力なんかも上がるらしい。今度神綺様に相談してみようか。
「じゃ、私はこれで」
「あ、待って」
背を向けて去ろうとする妹紅を呼び止め、懐に手を突っ込む。
「……何?今更何か勝負でも挑もうっていうの?」
「そうそう。これは小さくても必殺の……って、そうじゃなくて」
懐から取り出すのは魔界産の小さなチョコレート板だ。
己の片割れと分けようと思っていたのだが、この場合はお礼の方を優先すべきだろう。
何かをされたらちゃんと仕返しはしなさいって神綺様も言ってた。
「なにこれ?」
「チョコレート。本当はマイと分けるつもりだったんだけど、あなたにあげるわ」
「いや、というか――ねぇ、そのマイって子は家族?」
「へ?あー、うん……一応家族。というか双子。同一人物とも言えるかなぁ。黒いけど」
「?あんたも十分黒いじゃない」
「あ、いや、外見じゃなくて中身が」
「ふぅん……でも良いわよ。家族と分けるってんならそっちを優先しなさい」
「いや、私もお礼出来ないと困るのよ。魔界の教訓でね。お礼はしっかりとってね」
「随分教育が進んでるのね、魔界って」
「わたしたちの住んでる世界だからねぇ……」
「そう」
相槌を打つなり妹紅は地面を蹴って空を舞う。
「あ、ちょっと、待ちなさい!チョコレートー!」
「いらないわ。それと――」
拒絶の言葉と反して妹紅は振り返る。
真紅の燃える翼を背にして彼女は妙に荘厳な雰囲気を放っており、神々しかった。
「……?」
「家族は大切にしなさいよ」
それだけだった。
それだけ告げた後、彼女は消えていた。
後に残るのは二つの痕跡。
片方は闇の中に散らばる炎の色を宿した羽根達。
そしてもう一つは――、
「……なんで笑ってたのかしら、あの人間」
まるで子どもを見る母親のような優しげな笑みの記憶。
問いに応える者は居ない。
ただ羽根が降る。
深深とまるで雪が降る様に深深と雪が舞う様に。
「さてと……アリスの家はどこだったかしら。全く出た先が竹林なんてついてないわよ、全く」
気にしていても仕方が無い。
魔界人は即決即行動。
帽子の庇を摘んで整えると前を向く。
夜だと言うのに炎の羽根のせいか行き先は明るく、楽しいものに思える。
実際は暗く、行き先も良く解かってはいないが――何故か、何故か無性にお礼を言いたくなった。
●
「神綺様」
「ん、どうしたのかしら夢子ちゃん?」
魔界某城には二人の女性が居た。
一人は侍女服姿の金髪の美女。
もう一人は銀の長髪と赤いローブの様な服装が特徴の母性的な雰囲気を放つ女性だ。
神綺と呼ばれた赤いローブに身を包んだ女性は椅子に座りながら目の前に居る夢子へと視線を向ける。
すると彼女はやや眉尻を下げた表情で、
「漸く魔界と幻想郷の交通を封印したというのに何故ユキにおつかいなど行かせたのですか?」
「あら、気になる?」
「えぇ、とても気になります。それならばルイズやわたしに言って下されば……」
「ふふ、夢子ちゃんは心配性ね……大丈夫よ。あの子はやれる子だから」
「やれる子?」
「そう。やれる子……きっと今頃楽しんでいるわよ、幻想郷を。そして学んでいるでしょうね、色んなものを」
そこまで言うと夢子は神綺の言いたい事が解かったのか溜息を一つ。
「成る程……確かにあの子も大きくなってきましたし、視野を広める事は大切だと思いますが……」
「それだけじゃないわよ?」
「え?」
「それだけだったらマイちゃんも一緒に行かせたわ。さて、何でわたしは一人で行かせたのかしら?」
「……また神綺様の気紛れでは?」
「あらあら、確かに神様は気紛れだけど。魔界神はそうそう気紛れなんて起こさないわよ」
「真面目ですしね」
「真面目ですもの」
神綺は困り顔の夢子に思わず苦笑。
「出会いという点ではあそこ程優れた場所はないのよ」
「幻想郷ですか」
「えぇ、様々なものが混濁して出来上がった世界……だから色んな一期一会がある」
「はぁ……」
もはやこちらの意図が読めないのか夢子の返答はちょっとばかり投槍だ。
少し苛め過ぎただろうか。
「まぁ、詰まるところ……成長期には旅が一番なのよ」
「……確かに最近はユキの胸も大きく……」
「そっちじゃなくて、ここの」
神綺は夢子の言葉を遮り、笑顔で自分の胸を軽く叩く。
「……心の臓ですか」
「惜しいけど、心よ。心」
神綺は笑う。
今頃愛娘はどんな一期一会をしているだろうかと、そんな事を思いながら。
●
所は変わって博麗神社である。
「で、アリスの家は何処」
「……眠い」
やはり幻想郷の事を聞くならば幻想郷の守護者に聞くのが一番。
というわけで幻想郷に関しては殆ど無知でもあるユキでも知っている博麗神社へと足を運んだのだが、
「……おかあさぁーん……」
「うわ、寝ぼけるな博麗の!?」
部屋へと乗り込んだ瞬間寝ぼけた博麗の巫女――博麗霊夢に抱きつかれるという有り様。
「おかあさんのお胸おっきい~……ムニャムニャ……」
「……」
思わぬ寝言にユキはなんとも言えない表情で閉口。
相変わらず掴み所のない少女だが、それでもやはり母親は恋しいものらしい。
見れば神社の中には誰も居なかったようだし、恐らく一人暮らしなのだろう。
「暖かい……ムニャー」
淋しいのかもしれないと、今は抱きついて来ている少女を見て思う。
ユキは生まれた時からマイという家族が居たし、魔界の住民は言わば全員が兄弟姉妹だ。
その上ユキには神綺という母親まで居る。
対して霊夢はたった一人。
昔一人で魔界に突っ込んできた時は強い人間だとしか思わなかったが、
……案外弱いのかもしれないわね、人としては。
抱きついていた霊夢の頭を撫でてやる。
なにやらタンスの隙間から絶叫と悲鳴が聞えて来たが、気にしない。
悪霊とかそういう類はユキの専門外だ。
「お母さんとかそういうのはまだ早いだろうけど……」
母親の幻想を夢見る少女を抱いたままユキは少女が来たであろう道を数歩。
先にあるのは和室の中、二つに分けられて吹き飛ばされた布団と毛布だ。
ユキは霊夢を布団へと寝かせ、毛布を被せる。
春先とは言え、まだまだ寒い季節。しっかりかけておかねば風邪をひいてしまう。
「……って、あり?」
「おかぁさん……ぐぅ」
「うわ、この子握って離さないよ、というかどんな握力してんのよ」
掴まれた腕が全く動かない。
「はぁ……仕方ないわね。パジャマ持ってきてないんだけどなぁ……」
言葉の割りに気分は悪くなさそうな声でユキは帽子を布団の隣に置き、毛布に入る。
「ん……」
「うわ、いきなりですかっ」
途端、霊夢はユキへと密着。離さないとばかりにしがみついてきた。
「……動けない」
半目で眠る少女を見るが彼女は全く動く気配を見せないばかりか安らかな寝息を立てている。
「ったく……おつかいの途中だっていうのに……しかたないなぁ」
「おかあさん……」
「はいはい、今日は一緒に居て上げるから」
寝言を呟く少女の頭を再度撫でて抱き締めてやる。
何だかその感触が気持ち良くて――眠りが訪れるのは、案外早かった。
●
【博麗の巫女が謎の金髪の女性と添い寝!?幻想郷に風雲急を告げる黒と金!】
●
「何これ……?」
博麗霊夢は境内に落ちていた天狗の新聞を読みながら首を傾げていた。
頭はまだ寝ぼけ気味で良く働いていないが、黒と金と言えば某白黒魔法使いしか思いつかない。
どうやらヤツは人が寝ている間に布団に侵入していたらしい。
今度とっちめてやろう。
「でも……良い夢見たような気もするなぁ……」
そういえば妙な温もりがまだ体を包んでいる様な気もする。
白黒魔法使いにこんな温もりは感じた事がなかった筈だが。
……なんか、暖かいわね。
まるで包まれている様な感覚。
もしかしたら一緒に寝てくれていたのは白黒魔法使いではなくて、もっと違う誰か。
「まぁ、そうね……」
白黒魔法使いだとしても、今回ぐらいは許してあげよう。
そう結論付けると博麗の巫女は自由気まま、ご機嫌な様子で境内の掃除を始めるのであった。
春先だというのに神社は暖かく、幻想郷の天気も晴れやかである。
●
「神綺様」
「なにかしら、夢子ちゃん?」
魔界某城には相変わらず二人の女性が居た。
二人しか居ないのではと言われればそこまでだが、そこは魔界神の城なのだから仕方がない。
それほど神聖な場所なのだ、魔界の神が住まう場所とは。
「なにやら幻想郷から妙な新聞が飛んできたのですが」
「あら、ユキちゃんね」
「えぇ、何故か博麗の巫女と一緒に寝ています」
「母性にでも目覚めたのかしら。とっても幸せそう」
そう言う神綺の表情はとても嬉しそうで、同時に何かを懐かしんでいる様にも見えた。
「神綺様、何やら事態がややこしい方向へ向かっている気がしてならないのですが」
敢えて眉を顰めて言うが、目の前の魔界神は椅子に座り楽しげに新聞を見るだけだ。
「知ってる、夢子ちゃん?」
「何をですか?」
神綺の楽しそうな表情を浮かべた顔がコチラへと向く。
「女性が一番綺麗になるのは母性本能が働いた時だそうよ?」
「……まぁ、神綺様を見れば解かりますが」
「あら、褒め言葉?」
「昔はそうだったと付け加えますか?」
「あらあら、失礼ね。わたしはまだ現役よ?」
疑問文の応酬になりそうだったので適当に頷いて打ち切る。
それから夢子は改めて新聞を見て眉尻を下げた。
「……大丈夫でしょうか、ユキは」
「夢子ちゃんも綺麗ね」
「は?」
「母親みたいよ、今の貴女」
魔界神はクスクスと本当に何時でも楽しそうに笑う。
嗚呼、こういう人なのだ、この人は。
人の心境の変化を見て自分の事が如く嬉しそうに、本当に楽しそうに。
……付き合わされる身にもなって貰いたいものですが。
まぁ、悪い気はしない。
●
「あ」
「ん?」
魔法の森。
ちょっと茸の胞子が多いというだけで魔法の名を冠する不思議な森。
その少し手前で二人の少女は再び出会った。
「藤原妹紅さん」
「妹紅で良い……ユキだっけ?」
森の入り口にあるぼろくさい店の前に立っていた彼女がコチラを向く。
表情は出会った時と同じ不機嫌そうな顔だ。
「どうかしたの?」
「……最近、この店の主人との交渉勝負に凝っててね」
「負けたんだ?」
「五月蝿い。アイツが卑怯すぎるんだ。何が『実はこの商品は二つあってね』だ、詐欺師め」
「交渉というよりも騙しあいに聞こえるけど……」
「そんなもんさ」
「そうなんだ」
頷いておく。
長生きしている彼女が言うのだ。きっとそうなのだろう。
少なくとも彼女にとってはそれが本当の事なのだろうから。
「で、どうしたんだ、あんたはこんなところで」
「あぁ、わたしはまだおつかいの途中。この森にアリスが居るって人里の人に聞いてね」
「……?あんたあの人形遣いの知り合い?」
妹紅の眉が顰められる。
対するユキはそこに嫌な思い出でもあるのかと思いつつ笑みを作る。
「まぁ、あの子もわたしの家族。妹みたいなものでね」
「……そう。それにしては、妹の方が数倍強そうだけど」
「……あの子は例外なのよ。反則なのよ、というか強くなり過ぎ。昔はもっと凶悪だったけど」
「今でもそこそこは強いと思うけど?」
「昔はもっともっと極悪な強さだったのよ。まぁ、あれはアリスの強さじゃなかったけど」
「ふぅん……そうなんだ」
「そうなのよ」
今度は妹紅が頷くと彼女は踵を返しながら一歩ユキの方へと近づき、
「まぁ、せっかく家族に会いに来たんだし邪魔したら悪いでしょ。それじゃあね」
歩みを止めない妹紅とすれ違う。
……あれ?
不意に妙な違和感に襲われる。
ユキはこの感覚を知っている。
そう。妹紅の声は何かを求める子どもの声――何だか昨日の霊夢と似ているのだ。
「ねぇ、妹紅」
「ん」
だから、ユキはお互いに背を向けたまま声をかける。
「おつかいが終わったらあなたのところに行っても良いかしら」
「……良いけど来ても何も出ないわよ」
「良いわよ」
ユキは言いながら魔法の森へと足を進め始める。
「その時は泊まらせて貰うだけだから」
「勝手だな」
「えぇ、勝手。だけど代償はキチンと用意するわ、魔界人だもの」
「?」
随分と声が離れてしまったけれどまだこの距離なら聞えるだろう。
「その時はその時だけあなたのお母さんになって上げるわ。ママって呼んでも良いわよ」
「~~~ッ!?」
一歩前へ。
距離が離れすぎて後ろから聞える叫び声はもう聞えない。
ユキは後ろを振り向かずにただ悪戯っぽい笑みを浮かべて森の奥を目指す。
森の中だというのに陽の光が暖かかった。
●
「お邪魔するわよ、アリスー」
「あら……って、ユキさん」
森の奥にあった洋館の如き建物。
そのドアを開けると広めのリビングの中央で椅子に座っている人影が居た。
金のショートヘアにフリルが付いた赤いカチューシャを乗せた少女、アリス・マーガトロイド。
ユキの目標の人物であり、妹分でもある存在だ。
「久しぶりね……って、何か良い事でもあったの?えらくご機嫌そうだけど」
「あら、解かる?」
「顔に書いてあるもの。それだけ楽しそうにしてれば誰だって解かるわよ」
「えへへ~」
「……何でかしら、今ユキさんに対して止め処ない黒い感情が」
「ふふ、それは嫉妬ね。母性本能溢れるユキさんへの嫉妬よ」
「母性本能?って、きゃ」
椅子に座ったままのキョトンとした顔のアリスへユキは笑顔で近づき、彼女の頭に手を乗せる。
「ま、そういう事。深く気にしちゃ駄目」
「も、もう、子ども扱いしないで。私だってもう大人よ?」
「わたしにとっては何時までも子どもよ、子ども。とっても可愛い妹」
「……むぅ」
顔を真赤にして俯くアリス。
「可愛いなぁもう」
「う、うるさいわよぉ」
抱き締めてやるとジタバタと暴れたがその抵抗も弱い。
嫌がっているわけではないのだろう。なのでもっと抱き締める。
「うわ、キツッ!胸デカッ!?少し寄越しなさいよ!?」
「胸デカ!?え、そこまでデカくなってないわよ!?」
「嘘つけ、なによこの嫌味っぽい押し付けかた!こんなものこうしてやる!」
「あだだだ!?握るな潰すな痛い痛い痛い!」
「うりゃー!」
「ぎゃぁあああー!?」
ユキの絶叫が森の奥の洋館に響き渡る。
しかしそれさえも楽しそうで、森の中の草木達もつられるようにして揺れ、踊っていた。
●
「ところでユキさん、お母さんは一体何を送ってきたの?」
「あ、そうそうこれなんだけどね」
騒ぎも一段落したところでテーブル周りに設置された席に座りながらユキは懐に手を突っ込む。
そうして取り出すのは一つの小さな箱だ。
「……どこに入ってたの、それ……?」
「そこは魔界マジック。種を教えたらマジックにならないでしょ?」
「……まぁ、良いけど。はいお茶」
「あ、ありがとう」
席を立ってお茶を汲みに行ってくれていたアリスからカップを受け取り息を吹きかける。
こういう熱過ぎるものは苦手なのである。適度な温度がやはり一番良い。
適度になったので一口。
「……うん、美味しいわ。特別製?」
「まあ貰い物だけどね……ところでその箱開けていいのかしら?」
「え?あぁ、良いと思う。神綺様も特に開けちゃいけないとか言ってなかったし」
「お母さんの考えは良く解からないけどね……まぁ、それじゃあ開けちゃいましょう」
「おー」
香りの良いお茶を飲みながら箱についていた紐を解くアリスを見る。
随分と成長したな、と思う己も随分と歳をとったのだろうか、と今更ながらに思う。
……わたしも歳かしら?
母性本能に目覚めたりと、少しだがそんな片鱗が見えているのかもしれない。
「よしっと、魔術反応なし。じゃ、開けるわよ」
「はいはい」
カップをテーブルに置いてから身を乗り出して箱の中身を覗くべく構える。
そんなユキの様子にアリスは苦笑し、手をかけていた箱の蓋を上へと引き、
「それっ!」
という掛け声と共に開封した。
これ連作だったら続きが読みたいなーと思いつつ
残り行数が少なくなっていくのを惜しみながら
吟味するように読んでいったのに、最後にこのオチかよw
文章読んでいたときの気分を返せw
行間の隅から隅まで読ませるような作品を書きおって!
そして笑顔で押し込むのだ
あともこたん。
「日本語と横文字を混ぜるな」
フジヤマをヴォルケイノさせるあなたが言っても説得力無い。
あと、満月に角が生える友人にも言ってあげよう。
VENI畑みたいな事すんじゃねぇぇぇ!!ww
(VENIさんゴメンナサイ)
作者ナイスバカwwwwwww
もこたん可愛すぎる!
しかし、ナイスなほのぼの作品ですね。母性本能に目覚めるユキが微笑ましく、手ごろな長さでゆったりと読むことが出来ました。
まったくもう・・w
霊夢も妹紅もアリスも可愛かった。和んだ。
けど、雰囲気は最高でした
まさかこのオチの為に書いていたとはw
最後のオチ
何かが違うぞwww
予想外すぎてクソ吹いたwwwwwww
なにこの撃ちっぱなしアッパーwwwwwwww
しかし
このオチはない
だから最高と最低の間で50とさせてください