「最近紅魔館の警備が厳しいんだ。何でだろうな?」
よく晴れたお昼ちょっと前。
縁側で寝そべりながら煎餅を齧りつつ、魔理沙は愚痴を漏らす。
室内でちゃぶ台を囲んでいる霊夢と紫は顔を見合わせ、苦笑した。
その姿があまりにも子供っぽいというのもあるが、魔理沙には自覚が足りない。
「あんたがいっつもあそこで何をしてると思ってるのよ」
「侵入者撃退の仕組みは常に進化するものよ。ホウ酸団子からゴキブリホイホイへ。これが時代の流れですわ」
「そんな事言っても、現時点で良質の魔導書が効率よく手に入るのはあそこだけだからなぁ」
手元に蓄えていた煎餅が切れたのか、魔理沙はのそのそと起き上がってちゃぶ台に戻ってきた。
もっともちゃぶ台にも煎餅はない。魔理沙が蓄えていたものが最後だったのだ。
やれやれ、と呟きながら魔理沙は台所に入っていった。流しの上の扉を開けて新しい煎餅の包みを広げる。
ついでに乾かしてあった急須に茶葉を入れてお湯を注ぐ。もちろん用意する湯呑みは一つだけだ。
そして急須と一緒に置いてあった盆に載せて再び縁側へ戻っていった。
勝手知ったる何とやら。こと幻想郷においてジャイアニズムは魔理沙の特権だ。
「色々と言いたい事はあるんだけど、取りあえず今のが原因よ。煎餅返せ」
「最近紅魔館の警備が厳しいんだ」
聞く耳など持たず、調達したばかりの煎餅を手に真剣な面持ちで再度繰り返す。
「何かいい方法はないか? 博麗の御巫女ともなれば秘蔵の術とかさ、何かあるだろ?」
「あるか。それはいいから煎餅返せ」
「何だよ、使えないダメ巫女だな。
じゃあ紫、何かないか? ゆかえモンともなれば外の道具とかさ、何かあるだろ?」
「ふふ、そうねぇ。あるにはあるわよ。でもタダじゃあ、ねぇ?」
紫は扇子で口元を隠しながら微笑んだ。
助力を見込めると知った魔理沙は気付いてないが、その笑みは明らかに遊び道具を見つけたいたずらっ子のそれだ。
「報酬か……んー、霊夢が香霖から強奪したこの煎餅でどうだ?」
「さて、効率よく手に入る大量の魔導書とたった十枚のお煎餅。もう少し色を付けてくれてもいいんじゃないかしら?」
「そこは成功報酬だ。で、どんな道具なんだ?」
「それは現地で説明しますわ。早速試してみたら?」
「よし、行くぜ!」
答えるが早いか、魔理沙は壁に立てかけてあった箒を手に取りトップギアで疾走した。
社殿内は台風の直撃を受けたかの如き有様だったが、暴風を巻き起こした本人は既に豆粒ほど小さくなっている。
そしてもう一人も、今まさに消えようとしているところだった。
「あらあら魔理沙ったら、私が運んで差し上げましたのに。うふふ」
そのままストン、と。社殿の床に出来たスキマは紫を飲み込んで消えた。
後に残されたのは部分的に髪が逆立った霊夢と凄惨な茶の間。
今日の午後一杯はこの片付けに追われるだろう。
「ってか……煎餅返せ」
紅魔館正面門は南を向いている。
悪魔の棲家の癖に風水を気にしているようだ。
だが「玄関は南向き」という事しか知らないようで、花も鍵も置いていない。
もっとも紅魔館の中では花は映えないし、常時人が居るから鍵を置く必要もないのだ。
その紅魔館において、正面以外は新しい堅牢な壁によって外と遮られていた。
見た目はただの壁。だがその実態は石を手にした魔女でお馴染み、年齢不詳のノーレッジさんちのパチュリーさん謹製の魔法障壁によって物理的衝撃はおろか、魔法衝撃にも耐性がついている優れものなのである。
普通の壁が存在するのは高さ3mほど。しかし魔法障壁の効果は上空300mに及ぶらしい。
別に普通の壁は要らないのだが、そこは気分を出したいと言う当主の我がままによるものだ。
「で、この壁を壊すってのか?」
魔理沙は軽く握った拳でコツコツと壁を叩きながら聞いた。
一度マスタースパークで突破を試みた事があったが、ヒビ一つ入らなかった壁だ。
これを壊せる程となると侵入云々は置いておいても興味が湧く。
「そこで使うのがこの道具よ。ちゃらららん……あら? えーと……何だったかしら? 何とか抜けフープ~」
胡散臭い曲を口ずさみつつスキマに手を突っ込んで引っ張り出す。
「それ」は、人が辛うじて潜り抜けられそうなほどの大きさの輪っかだった。
見た感じ変なボタンやスイッチが付いている風でもなく、何の変哲もない輪っかだ。
太さも片手で握れる程度、材質は何かよく分からないが、恐らく外の世界のものなのだろう。
敢えて言うなら、その明るすぎる蛍光ピンクは特徴と言えるかもしれない。
「名前を思い出せない時点でどうにも信憑性がないんだがな。使えるのか、それ?」
「安心なさいな。これを使えばあなたも充実の魔導書ライフよ。個人差はありますけれど」
「胡散臭過ぎて咽そうだぜ。しかし、何の魔術処理も施されてないようだが、どう使うんだ?
何とか抜けって言うからには、やっぱり壁に貼り付けたらその輪っかの中を通る事が出来るようになる、とかか?」
「うふふ、まぁ見てなさい」
そう言うと紫は壁にフープをあてがい、その内側に沿ってマジックで円を、更にその中に「目標」と書いた。
文字の横に添えられたハートマークが何とも年齢にそぐわない。
直径1mほどのその円は今なお普通の壁であり、何かが変わった様子は見られない。
そのレンガ造りの赤い壁を眺めながら、魔理沙は予想通りだと言わんばかりに浅くため息をついた。
「なぁ紫、出来ないなら出来ないって最初から素直に……」
その時だった。
魔理沙は目の前で起こった衝撃映像を恐らく暫くは忘れないだろう。
スローモーション再生される映像のトップバッターは、上体を右向きに半回転ともう少し捻った紫の姿だった。
「チィエエストォォォーッ!!」
そのまま手に持ったフープを、遠心力に体重を乗せて思い切り振り抜く。
大した質量もない癖に「ヴォン!」などと重い風切り音を立てるそのフープは、既に音速すらも超越しているのではなかろうか。
捻りを正す時に発揮される力は中々馬鹿に出来ないものらしい。
そうして力いっぱい打ち付けられたそれは、轟音と共に見事に紅い障壁を打ち破ったのである。
未だ粉塵立ち込めパラパラとガレキが落ちるその中で、大きく目と口を開けて茫然としている魔理沙の目の前で。
紫は傷一つ付いていない何とか抜けフープを器用に指先で回しながら、クスクスと微笑んだ。
「ね? 簡単でしょう?」
「待て待て待て待て、ちょっと待て。どこが何とか抜けフープだ、滅茶苦茶力押しじゃないか!」
「あぁ、名前も思い出したわ。殴り抜けフープだったかしら」
「何その装いもしない直球ストレートな名前! ってかこれって単に使用者の腕力頼みじゃないか!」
「そうでもないわ。『あの憎い門ともこれでおさらば』が売り文句ですけれど、これを持つと門に限らず不思議と何でも殴り抜けられそうな気がしますのよ?
やってご覧なさいな」
「気がするつったな? いま気がするつったな?」
「コラーッ、そこで何してるのーッ!」
轟音を聞きつけたのか、けたたましい笛の音と共に門番が走ってくる。
お付のメイド隊は全部で二十人。警備体制が磐石になったのも侵入を困難にした一因だ。
「ほら、練習におあつらえ向きなのが有象無象」
「……まぁいいけどさ、これ、人体に影響はないのか」
「『あの憎い門ともこれでおさらば』ですわ。アレも門の役割をするものでしょう?」
なるほど、と何度か素振りを始める魔理沙。
振ってみても、特別な何かは感じない。ただの輪っかだ。
すると対象物と接触した瞬間に発動する魔法なのだろうか。
取りあえずは試してみる他ないだろう。
しっかり腰を捻って、
「またこの黒白か! 最近懲りたと思っ」
「ふぅぅんもっっふっ!!」
「たぎゃふー!」
大きく振り抜く。
角度30°くらいをきりもみ状態で勢いよく飛んでいく美鈴は、きっと着弾したら地中に5mは埋まるに違いない。
ジャストミートの手応えを十分に感じながら魔理沙は勝利を確信した。
大将を失ったメイド隊はと言えば、元々職務熱心ではないのだろう、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
どうやら今度から正面突破する時は頭さえ倒せばいいようだ。
「じゃあな、中国。お前に恨みはないが、敢えて言うならお前が門番だったのが諸悪の根源なんだ。
私はお前の事を忘れないぜ、中国……いやさ、二階級特進して紅美鈴かな」
遠く飛んでいった美鈴を潤んだ目で見つめ、魔理沙は呟いた。
彼女もいつかきっと気付くだろう。
霧雨魔理沙、遮るべからず、と。
「初めてにしてはお上手ですわね。それでは成功報酬、楽しみにしてますわ」
そう言うと紫は相変わらずクスクスと笑いながらスキマの中に消えていった。
もっとも魔理沙としては、道具さえ貰えればそれでいいのだ。
潜入には多人数より一人の方が向いている。
「よっし、それじゃお宝探検ツアーにお呼ばれするかな」
紅魔館のロビーはメイドのパート妖精でごった返していた。
パート妖精のここ最近の職務怠慢を嘆いたメイド長が、スライド映写機を使って説教兼お嬢様の素晴らしさを熱弁しているのだ。
後で各自反省文を書かされるとあっては長い話も真面目に聞かざるを得ない。
約百人の妖精達は直立してロビー北側の壁に左右二台配置されているモニターに見入っていた。
向いている方向が真ん中からキレイに左右に分かれているのはある種芸術にも近い。
結果として全員が南側の玄関から入ってきた魔理沙に背中を向けている状態になったのは、魔理沙にとって僥倖と言えるだろう。
(……メイド長の演説か。メイド業も楽じゃないな)
そそくさと通り抜けようとした魔理沙の目に止まるのは一台の映写機。
無論メイド長の演説を映し出しているものだ。
――確かに、今は気付かれないように魔導書を取るのが目的だ。
だが、こう、スイッチのたくさん付いた機械を見ると無性に弄りたくなるのは人のサガではないだろうか。
投影機の上部には多分に漏れず幾つかのスイッチが付いていた。
いやいや、待て待て霧雨魔理沙。
折角屋敷の警備が手薄で、更にバレずに侵入出来たんだ。
ここは大人しく可及的速やかに目的を遂行する事こそ魔法使いとして正しい在り方なんじゃないか?
こんな所で危険に身を晒してまで油を売っている場合じゃない。
だからこのスイッチにかけた手は今すぐ引っ込めるべきなんだ、さぁ放せ、放すんだ霧雨魔理沙。
「えいっ☆」
気付いた時にはもう遅かった。
無常にもスイッチは切り替わってしまった。
何たる浅慮、何たる無計画。
呪うべくはこのお茶目な右手だ。
恐る恐るモニターの方を見てみると、何の事はない、左側のモニターが消えただけだった。
右側のモニターでは相変わらず咲夜が右手を振り上げて熱弁している。
おつむの弱い妖精群はと言えば、「左が切れたら右を見ればいいじゃない」という何とも柔軟な発想に従って一斉に右を見るのみであった。
安堵の息を漏らしつつ、じゃあこの横のスイッチはどうなるのかと考えてしまうのもやはり人のサガなのだろう。
しかしさっきこそ何とかバレなかったものの、今度も上手くいくという保証はない。
スイッチを押すデメリットは何ら変わっていないのだ。
「てりゃっ☆」
一応は研究職にある魔法使いとは厄介な仕事で、検証可能な状況なら検証してみざるを得ない。
だから今スイッチを押したのも魔法使いとしての性分なのだ。
……お茶目な右手に次いで、ワンパクな左手も呪っておかねばならないようだ。
固く瞑った目を、右目だけ徐々に開ける。
妖精達は……まだ背中が見えている。
ゆっくりと視線を上げていくと……今度は右のモニターが切れて左のモニターだけが点いている状態だった。
妖精達も再びその柔軟な思考を生かして左を向いている。
今日は運命の女神が笑顔のタイムサービスを行っているらしい。
(しかし、意外と楽しいな、コイツらの反応は)
人間、二度も上手く行くと慢心してしまいがちであるが、それは魔理沙とて例外ではなかった。
目の前にある残り四つのスイッチは未知の変化を魅力として魔理沙を魅了している。
しかも目の前に居るのはおつむの弱い妖精。大抵の事では気付くまい。
(よし、端からやってみるか)
ためらう事なく魔理沙は三つ目のスイッチを押した。
パッと画面が切り替わり、右側に咲夜、左側はアニメを映し出した。ツギハギだらけの豚のような瓢箪のような、妙な生き物が映っている。
単純な妖精にとっては退屈なメイド長の話などよりよほど魅力的だったのだろう、一斉にアニメを見出した。
次いで四つ目のスイッチに手を伸ばす。
今度は左右のモニターが切り替わり、右にアニメ、左に咲夜が映った。
当然ながら妖精達は90°右へ向き、咲夜になど目もくれない。
面白いので三つ目と四つ目のスイッチを交互に入替えてみる。
妖精達はその都度、素直に右へ左へと方向転換をしていた。
メイド長の威厳が心底疑われる光景である。
そして五つ目のスイッチを押す。
今度は両方の画面にアニメが映った。
気になる妖精達の行動はと言うと、最初と同じく真ん中からキレイに分かれて左右の画面を注視しだした。
こうまで素直に反応してくれるとやっている方は爽快だ。
魔理沙の気分は上々だった。
だから、この流れから最後のスイッチを押した時に起こるであろう事にすら、気が回らなかったのだ。
六つ目のスイッチ、最後のスイッチ。
勘違いしてはいけない。タイムサービスには「タイム」という制限があるのであって、永遠ではない。
運命の女神による笑顔のタイムサービス、その時間はとても短かった。
スイッチを押した瞬間にアニメの映像は消え、両方ともがメイド長の演説シーンになった。
元々興味もなかった上に娯楽を見せ付けられた後とあっては、反省文があっても演説を見る気にはならないのだろう。
ヤバイ、と思う間もなく、妖精達が一斉に後ろを向く。
するとそこに居るのは映写機を弄っている侵入者の姿だ。
一瞬の間。
「し、侵入者よー!」
「黒白魔法使いだわ! どーろーぼー!」
「やだ、今朝新刊買ってきたばっかなのに!」
「あぁっ、私もロッカーにお財布置きっぱなしー!」
「みんな! 自分の持ち物は自分で守るのよ!」
紅魔館が誇る約百人のパートメイド部隊は侵入者を見るや否や、一目散に自分達のロッカールームへ駆け出していった。
紅魔館のパートは時給666円と聞く。多少賃金を上げてでももう少しまともなメイドを雇うべきではないだろうか。
メイド達のあまりの喧騒に驚いて不覚にも尻餅をついた魔理沙は、スカートについた埃を払うと映写機に立てかけておいた箒を手に取った。
「失礼な、私は泥棒なんて一度もした事がないぜ」
「さて、ラスボスとご対面な訳だが」
「誰がラスボスよ。私なんて所詮4ボス……エキストラでも妹様の前にちょっと出るだけ。
フン……私はどうせ要らない子よ」
「まぁそう言うなって。お前は立派な引き立て役だよ。料理ってのは食材を引き立てる為のスパイスがいる。お前は十分必要とされてるんだぜ」
「魔理沙……」
「言葉を変えると噛ませ犬だけどな!」
「OK、自殺願望は受け取ったわよ」
ここまで二人は目も合わせていなければ指の一本も動かしていない。
強いて言うならば、目は熱心に紙面に踊る文字を追っていた。
机の上には小悪魔の入れた紅茶。ひんやりとした室内で、透明な氷がカラン、と音を立てる。
図書館内は穏やかに午後の一時を刻んでいた。
「で、今日は何? 本を読みに来たの?」
「あぁ、忘れていた。珍しい道具を手に入れてな、ここの蔵書を頂きに来たんだった。じゃあな」
言うが早いか、魔理沙は帽子から風呂敷を出すと手近にあった本を手当たり次第詰め込んでいった。
足も速ければ手も早いらしい。もちろん、性的ではない意味で。
見事な手捌きに思わず見とれていたパチュリーも、見る見る減っていく蔵書量にようやく我に返った。
「ちょ、ちょっと、何をして……と言うか、そんなたかだか一メートル四方の風呂敷にどうやったらそんなに!」
「なぁに、ちょいとコツがあってな。ホイ、ホイ、ホイっと、これくらいかな」
「コツって、そのちょっとしたコツって物理法則を無視できるほどのものなの!?」
四隅を縛った風呂敷はサッカーボール程度。だがその中には棚二つ分、約五千冊の本が入っているのだ。
何をどう頑張ったって入るはずがない。
だが現実問題として本は風呂敷に収納されているし、蔵書は減っている。
落ち着くんだ、魔法使いはこんな事じゃあうろたえない。
「さてさて、取り出したるはもう一枚の風呂敷。今ならなんとセットでこの収納量!」
「まだ持っていくの!?」
駄目でした。落ち着けませんでした。
どこの世界にたった二枚の風呂敷で一万冊も持って行く馬鹿がいるのか。
あぁ、これが効用の最大化って事かしら。風呂敷で見る経済学ってのも悪くないわね。
でもこうも再々持って行かれたのではここが図書館ではなくなってしまうわ。
「人形遣いの手を借りて秘密裏に開発した甲斐があったわね……魔理沙! あなたの悪行もここまでよ! 出でよ、先行量産型紅美鈴!」
声高に叫び懐に隠したスイッチを深く押し込む。
途端に爆発音と共に粉塵が舞い上がる。小悪魔め、掃除サボったな。
そう、図書棚は量産型紅美鈴の収納庫となっているのだ。
棚の総量は数知れず。今や図書館内の警備は正面玄関に勝るとも劣らない。
『一つ暇人紅美鈴!』
「さぁ、あなたの相手はこの子達よ、魔理沙!」
「達って、一体しか出てきてないぜ」
「あ、あら? 設計ミスかしら?」
試しにもう一回押してみる。
『二つ不思議な紅美鈴!』
爆発音は一つ。出てきた紅美鈴も一体。
どうやら連結回路に不具合があるようだ。
パチュリーの眉の両端が急降下した。繋げ合わせたらきっとy=-2x2くらいだ。
「あー……二体でいいのか?」
「えぇい、こうなったら連射してやるわよ!」
スイッチを左手で持ち直し、右手の人差し指を立てて一心不乱に左右に擦る。
名人もビックリなその連射姿は、ある種もう一つのポケモンショックとすら言えるのかもしれない。
しかしその効果は絶大で、次々と量産型紅美鈴が誕生していったのである。
『三つ見えざる紅美鈴!』
『四つヨロシク紅美鈴!』
『五ついつでも紅美鈴!』
『六つ無邪気な紅美鈴!』
『七つなまえは紅美鈴!』
『八つやっぱり紅美鈴!』
『九つこっそり紅美鈴!』
『十でとうとう紅美鈴!』
「フフフ、どう? これでもその風呂敷を持ち出せるかしら?」
『いつも隣りに紅美鈴!』
「一体なら大したこともないんだが……こうも数が多いとなぁ……」
『貴方のお傍に紅美鈴!』
「さぁ、大人しく本を戻しなさい」
『六神合体紅美鈴!』
『甘さ控えめ紅美鈴!』
『旋毛は右巻き紅美鈴!』
『大きなお世話だ紅美鈴!』
『呼ばれて飛び出て紅美鈴!』
その瞬間、プツッと何かが切れるのが確かに聞こえた。
堪忍袋の緒だったのか理性だったのかハッキリは分からないが、確かなのはそれが魔理沙のだという事だ。
「うぅぅるぅぅせぇぇぇーッ!!」
サッと一振り、お掃除簡単。
新しい売り文句を考えてみるのも一興だ。
一撃で三体を撃破したエースパイロット魔理沙。ちゃっかりとパチュリーの持つスイッチを巻き添えにするのも忘れない。
だが、それは火に油をバケツで注ぐ行為だったのである。
『指令スイッチの故障を確認』
『エマージェンシーモードに移行』
『全機、緊急排出装置、作動』
『みんな仲良く紅美鈴!』
『生体反応を確認、排除開始』
不気味な合成音声は聞けば聞くほど不吉な情報を流してくる。
当初の設計通りなのか、それとも設計ミスなのか、数え切れないほどの紅美鈴はスムーズに『敵』の排除に着手しだした。
「何だこの数! このままじゃ図書館が持たないぜ! 一体どこにこんなに……!」
「そこはちょっとしたコツがあって……」
「言ってる場合か! とにかく逃げるぞ!」
魔理沙はパチュリーの手を掴むと箒に乗って図書室を飛び出した。
図書館から外へ逃げるには窓か玄関のどちらかしかない。
美鈴達に窓側への道が押さえられている以上、多少遠回りだが玄関から逃げるしかなかった。
館の中ではスピードを落とさざるを得ないものの、足の速さには自信がある。そうそう追いつかれはしない。しないのだが。
「何であいつら背中にブースター付いてるんだぁぁぁ!!!」
「フフン、私の技術力を甘く見てもらっては困るわね。火力、機動性、耐久力、お肌のきめ細かさ。どれをとっても貴女に引けをとらない設計よ!」
「それはそれで凄いな! ――で、パチュリー?」
「何よ?」
「後で反省会な」
「はい」
何とかロビーに辿り着いたものの、既に四方は美鈴達に囲まれている。
最初の方に出てきたのは外見もちゃんと作られていたというのに、後になればなるほど顔がロボちっくになっているのは材料不足だろうか。
見ろ、今到着したヤツの顔を組織してるパーツなんてボルトとナットだけだぞ。
そして何より勘弁して頂きたいのが、全員が両手をワキワキとさせている事だ。捕まったらどうなるのか、想像するだに恐ろしい。
こんな事ならもっと八目鰻食っとくんだったな。あぁ、神社には栗羊羹もまだ残ったままだ。待てよ、永遠亭で兎肉パーティーもしてないぞ。
あぁ、でも幽霊になってもたらふく食ってるヤツもいるし、まぁ死んでもいっか。
なんて現実逃避気味に黄昏ているところに、救いの女神は紅い悪魔と一緒に瀟洒にやってきたのだ。
「何を騒いで……って本当に何の騒ぎよ、これは」
「つまり、魔理沙撃退用のロボットが暴走した、と。そういう事で宜しいですか?」
腕組みをしたまま咲夜は眼前の美鈴軍団を睨んだ。
事情を説明している間に動かなかった彼女らはCPUがボロいのか確信犯なのか、どちらにせよ魔理沙達にとってはありがたい話だった。
「えぇ、そういう事よ。対歩兵用兵器搭載、対艦ミサイル完備、ついでに3000までのダメージを無効化するバリアも装備。
フフフ、石すらも手にしたこのパチュリー=ノーレッジに不可能はないわ!」
「なるほど。――時に、パチュリー様?」
「何かしら?」
「後で反省会ですね」
「はい」
悠長にしている暇はなかった。
話が終わったと判断したのか、美鈴達が一斉に飛び掛ってきたのだ。
それはもう、雲霞という言葉の成り立ちを理解するほどに大量の美鈴達だ。
お空に雲が浮いていると思ったら美鈴でした、なんて事態も目の前の現実では大いに有り得るのだ。
「とにかく咲夜! 時間を止めてこいつらをどうにかしてくれ!」
「嫌よ。時間は止まってても私の時間は経過するのよ? ただでさえお嬢様といる時間が限られてるってのに、これ以上無駄にする気はないわ」
「あら咲夜、前に眷属にしてあげようかと聞いたら断ったじゃない? 二人でお互いの血を飲み続ければ、それこそ共に永遠に生きられるのに」
「いやまぁ、さっきのは建前で、本音は私だけ時間進んじゃったら小皺とか気になりますんで」
「血ぃ吸って干からびさせてやろうか」
などと言いつつもさすがは幻想郷の最上位に位置する生物。
群がる美鈴達を片手で薙ぎ払っていく。
咲夜は咲夜で、どこにそんなにしまっているのか無数のナイフを的確に投擲している。
気のせいか、投擲量に比例して女性の象徴たる二つの膨らみが小さくなっている気がしないでもない。
「咲夜、お前もしかして……パッドに加えてナイフで……?」
「パッドじゃないわよ、大胸筋矯正サポーターよ!」
ナイフを否定しない辺りが何とも慎ましい。
やはりメイドは慎ましくなくては務まらないのだ。色々と。
だが、そんな慎ましい攻撃では美鈴達は一向に減る様子がなかった。
「何とか食い止めてはいるけど……この量では……」
「こうなったら合体技よ、魔理沙!」
「なんだ? マスタースパークとノンディレクショナルレーザーでも撃つのか?」
「そんな事したら館が壊れちゃうじゃない。
いい? どこかの本で魔方陣の中を飛行形態で潜り抜けたら、炎の鳥を纏って体当たりする技が使えると読んだ事があるわ。
私が補助用にアグニシャインを魔理沙に撃つから、貴女は箒でその手に持ってる輪を潜り抜けなさい!」
「どさくさに紛れて私を始末しようってハラじゃないだろうな!?」
「私を信じて!」
「……分かったぜ! えぇい、ままよ!」
この殴り抜けフープは紫が外の世界から持ってきたものだ。
なら、幻想郷の中では考えられない事も可能なのかもしれない。
元々常識外れな道具だ、賭けてみる価値はある。
魔理沙はフープを大きく上に投げると、箒で空を翔けた。
天井近くまで一気に登り詰め、そこから反転して急降下する。
目前には、大きな孔を開けて待っているフープ。
「行けぇぇぇぇぇぇ!!!」
ギリギリ人が通れるかというほどの孔を最高のタイミングで翔け抜ける。
孔を抜けると、一面の紅。
全身が炎の鳥に包まれているのだ。
四神の一つにも数えられるその姿はあまりに神々しく、長き時を生きてきたパチュリーすらも目を見張った。
「これで……終わりにしてやるぜッ!」
標的を美鈴達のど真ん中に定め、魔理沙は一層勢いを増す。
この技なら全滅とまでは言わなくとも、壊滅的なダメージは期待できるだろう。
パチュリーは館が壊れる事を気にしてダブルレーザーを却下したが、これでも十分壊れるんじゃないだろうか。
ふと、魔理沙はそう思ったが、深く考えない事にした。今は目の前の問題を解決する方が先だ。
今一度箒の柄を握り直す。敵は眼前だ。
そして今まさに突撃するという瞬間。魔理沙の姿は鼻のデカいオッサンの顔に変わった。
「うおぉぉぉ……ぉぉぉおお!?」
箒の柄の長さがそのまま鼻の長さに相当するという超ド級の鼻の持ち主の顔。
その顔もやがて広大な宇宙に変わっていった。
魔理沙はと言うと、百面相ならぬ百変化をしながら単騎で美鈴達に突っ込んでいったのである。
「何? どういう事? 確かにアカシックバスターは完成していたはず……私のアグニシャインが余計だったのでも言うの!?」
有り得ない、何もかもが有り得ない。
苦悩に満ちたパチュリーは右手で顔を覆い、荒々しく首を左右に振った。
――いま、へやのすみに、なにか、みえたような――
部屋の隅、南側の壁。
そこに居るのは、嬉しそうに映写機を振り回すお嬢様の姿。
……首を180°回頭させる。
北の壁にはあちこちに動き回る「火の鳥」の文字。
「お前のせいかッ!!」
「という状況になった時、魔理沙は人を轢いちゃったから対人保険……あぁ、この場合は門番さんがロボットだから対物保険かな。
魔理沙の一方的な過失だから全額負担。このとき、対物保険を無制限で入ってても保険で支払われるのは時価額までだから気をつけるんだよ」
「それが保険というものなのね――ところで、霖之助さん?」
「何だい?」
「後で反省会ね」
「はい」
(了)
よく晴れたお昼ちょっと前。
縁側で寝そべりながら煎餅を齧りつつ、魔理沙は愚痴を漏らす。
室内でちゃぶ台を囲んでいる霊夢と紫は顔を見合わせ、苦笑した。
その姿があまりにも子供っぽいというのもあるが、魔理沙には自覚が足りない。
「あんたがいっつもあそこで何をしてると思ってるのよ」
「侵入者撃退の仕組みは常に進化するものよ。ホウ酸団子からゴキブリホイホイへ。これが時代の流れですわ」
「そんな事言っても、現時点で良質の魔導書が効率よく手に入るのはあそこだけだからなぁ」
手元に蓄えていた煎餅が切れたのか、魔理沙はのそのそと起き上がってちゃぶ台に戻ってきた。
もっともちゃぶ台にも煎餅はない。魔理沙が蓄えていたものが最後だったのだ。
やれやれ、と呟きながら魔理沙は台所に入っていった。流しの上の扉を開けて新しい煎餅の包みを広げる。
ついでに乾かしてあった急須に茶葉を入れてお湯を注ぐ。もちろん用意する湯呑みは一つだけだ。
そして急須と一緒に置いてあった盆に載せて再び縁側へ戻っていった。
勝手知ったる何とやら。こと幻想郷においてジャイアニズムは魔理沙の特権だ。
「色々と言いたい事はあるんだけど、取りあえず今のが原因よ。煎餅返せ」
「最近紅魔館の警備が厳しいんだ」
聞く耳など持たず、調達したばかりの煎餅を手に真剣な面持ちで再度繰り返す。
「何かいい方法はないか? 博麗の御巫女ともなれば秘蔵の術とかさ、何かあるだろ?」
「あるか。それはいいから煎餅返せ」
「何だよ、使えないダメ巫女だな。
じゃあ紫、何かないか? ゆかえモンともなれば外の道具とかさ、何かあるだろ?」
「ふふ、そうねぇ。あるにはあるわよ。でもタダじゃあ、ねぇ?」
紫は扇子で口元を隠しながら微笑んだ。
助力を見込めると知った魔理沙は気付いてないが、その笑みは明らかに遊び道具を見つけたいたずらっ子のそれだ。
「報酬か……んー、霊夢が香霖から強奪したこの煎餅でどうだ?」
「さて、効率よく手に入る大量の魔導書とたった十枚のお煎餅。もう少し色を付けてくれてもいいんじゃないかしら?」
「そこは成功報酬だ。で、どんな道具なんだ?」
「それは現地で説明しますわ。早速試してみたら?」
「よし、行くぜ!」
答えるが早いか、魔理沙は壁に立てかけてあった箒を手に取りトップギアで疾走した。
社殿内は台風の直撃を受けたかの如き有様だったが、暴風を巻き起こした本人は既に豆粒ほど小さくなっている。
そしてもう一人も、今まさに消えようとしているところだった。
「あらあら魔理沙ったら、私が運んで差し上げましたのに。うふふ」
そのままストン、と。社殿の床に出来たスキマは紫を飲み込んで消えた。
後に残されたのは部分的に髪が逆立った霊夢と凄惨な茶の間。
今日の午後一杯はこの片付けに追われるだろう。
「ってか……煎餅返せ」
紅魔館正面門は南を向いている。
悪魔の棲家の癖に風水を気にしているようだ。
だが「玄関は南向き」という事しか知らないようで、花も鍵も置いていない。
もっとも紅魔館の中では花は映えないし、常時人が居るから鍵を置く必要もないのだ。
その紅魔館において、正面以外は新しい堅牢な壁によって外と遮られていた。
見た目はただの壁。だがその実態は石を手にした魔女でお馴染み、年齢不詳のノーレッジさんちのパチュリーさん謹製の魔法障壁によって物理的衝撃はおろか、魔法衝撃にも耐性がついている優れものなのである。
普通の壁が存在するのは高さ3mほど。しかし魔法障壁の効果は上空300mに及ぶらしい。
別に普通の壁は要らないのだが、そこは気分を出したいと言う当主の我がままによるものだ。
「で、この壁を壊すってのか?」
魔理沙は軽く握った拳でコツコツと壁を叩きながら聞いた。
一度マスタースパークで突破を試みた事があったが、ヒビ一つ入らなかった壁だ。
これを壊せる程となると侵入云々は置いておいても興味が湧く。
「そこで使うのがこの道具よ。ちゃらららん……あら? えーと……何だったかしら? 何とか抜けフープ~」
胡散臭い曲を口ずさみつつスキマに手を突っ込んで引っ張り出す。
「それ」は、人が辛うじて潜り抜けられそうなほどの大きさの輪っかだった。
見た感じ変なボタンやスイッチが付いている風でもなく、何の変哲もない輪っかだ。
太さも片手で握れる程度、材質は何かよく分からないが、恐らく外の世界のものなのだろう。
敢えて言うなら、その明るすぎる蛍光ピンクは特徴と言えるかもしれない。
「名前を思い出せない時点でどうにも信憑性がないんだがな。使えるのか、それ?」
「安心なさいな。これを使えばあなたも充実の魔導書ライフよ。個人差はありますけれど」
「胡散臭過ぎて咽そうだぜ。しかし、何の魔術処理も施されてないようだが、どう使うんだ?
何とか抜けって言うからには、やっぱり壁に貼り付けたらその輪っかの中を通る事が出来るようになる、とかか?」
「うふふ、まぁ見てなさい」
そう言うと紫は壁にフープをあてがい、その内側に沿ってマジックで円を、更にその中に「目標」と書いた。
文字の横に添えられたハートマークが何とも年齢にそぐわない。
直径1mほどのその円は今なお普通の壁であり、何かが変わった様子は見られない。
そのレンガ造りの赤い壁を眺めながら、魔理沙は予想通りだと言わんばかりに浅くため息をついた。
「なぁ紫、出来ないなら出来ないって最初から素直に……」
その時だった。
魔理沙は目の前で起こった衝撃映像を恐らく暫くは忘れないだろう。
スローモーション再生される映像のトップバッターは、上体を右向きに半回転ともう少し捻った紫の姿だった。
「チィエエストォォォーッ!!」
そのまま手に持ったフープを、遠心力に体重を乗せて思い切り振り抜く。
大した質量もない癖に「ヴォン!」などと重い風切り音を立てるそのフープは、既に音速すらも超越しているのではなかろうか。
捻りを正す時に発揮される力は中々馬鹿に出来ないものらしい。
そうして力いっぱい打ち付けられたそれは、轟音と共に見事に紅い障壁を打ち破ったのである。
未だ粉塵立ち込めパラパラとガレキが落ちるその中で、大きく目と口を開けて茫然としている魔理沙の目の前で。
紫は傷一つ付いていない何とか抜けフープを器用に指先で回しながら、クスクスと微笑んだ。
「ね? 簡単でしょう?」
「待て待て待て待て、ちょっと待て。どこが何とか抜けフープだ、滅茶苦茶力押しじゃないか!」
「あぁ、名前も思い出したわ。殴り抜けフープだったかしら」
「何その装いもしない直球ストレートな名前! ってかこれって単に使用者の腕力頼みじゃないか!」
「そうでもないわ。『あの憎い門ともこれでおさらば』が売り文句ですけれど、これを持つと門に限らず不思議と何でも殴り抜けられそうな気がしますのよ?
やってご覧なさいな」
「気がするつったな? いま気がするつったな?」
「コラーッ、そこで何してるのーッ!」
轟音を聞きつけたのか、けたたましい笛の音と共に門番が走ってくる。
お付のメイド隊は全部で二十人。警備体制が磐石になったのも侵入を困難にした一因だ。
「ほら、練習におあつらえ向きなのが有象無象」
「……まぁいいけどさ、これ、人体に影響はないのか」
「『あの憎い門ともこれでおさらば』ですわ。アレも門の役割をするものでしょう?」
なるほど、と何度か素振りを始める魔理沙。
振ってみても、特別な何かは感じない。ただの輪っかだ。
すると対象物と接触した瞬間に発動する魔法なのだろうか。
取りあえずは試してみる他ないだろう。
しっかり腰を捻って、
「またこの黒白か! 最近懲りたと思っ」
「ふぅぅんもっっふっ!!」
「たぎゃふー!」
大きく振り抜く。
角度30°くらいをきりもみ状態で勢いよく飛んでいく美鈴は、きっと着弾したら地中に5mは埋まるに違いない。
ジャストミートの手応えを十分に感じながら魔理沙は勝利を確信した。
大将を失ったメイド隊はと言えば、元々職務熱心ではないのだろう、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
どうやら今度から正面突破する時は頭さえ倒せばいいようだ。
「じゃあな、中国。お前に恨みはないが、敢えて言うならお前が門番だったのが諸悪の根源なんだ。
私はお前の事を忘れないぜ、中国……いやさ、二階級特進して紅美鈴かな」
遠く飛んでいった美鈴を潤んだ目で見つめ、魔理沙は呟いた。
彼女もいつかきっと気付くだろう。
霧雨魔理沙、遮るべからず、と。
「初めてにしてはお上手ですわね。それでは成功報酬、楽しみにしてますわ」
そう言うと紫は相変わらずクスクスと笑いながらスキマの中に消えていった。
もっとも魔理沙としては、道具さえ貰えればそれでいいのだ。
潜入には多人数より一人の方が向いている。
「よっし、それじゃお宝探検ツアーにお呼ばれするかな」
紅魔館のロビーはメイドのパート妖精でごった返していた。
パート妖精のここ最近の職務怠慢を嘆いたメイド長が、スライド映写機を使って説教兼お嬢様の素晴らしさを熱弁しているのだ。
後で各自反省文を書かされるとあっては長い話も真面目に聞かざるを得ない。
約百人の妖精達は直立してロビー北側の壁に左右二台配置されているモニターに見入っていた。
向いている方向が真ん中からキレイに左右に分かれているのはある種芸術にも近い。
結果として全員が南側の玄関から入ってきた魔理沙に背中を向けている状態になったのは、魔理沙にとって僥倖と言えるだろう。
(……メイド長の演説か。メイド業も楽じゃないな)
そそくさと通り抜けようとした魔理沙の目に止まるのは一台の映写機。
無論メイド長の演説を映し出しているものだ。
――確かに、今は気付かれないように魔導書を取るのが目的だ。
だが、こう、スイッチのたくさん付いた機械を見ると無性に弄りたくなるのは人のサガではないだろうか。
投影機の上部には多分に漏れず幾つかのスイッチが付いていた。
いやいや、待て待て霧雨魔理沙。
折角屋敷の警備が手薄で、更にバレずに侵入出来たんだ。
ここは大人しく可及的速やかに目的を遂行する事こそ魔法使いとして正しい在り方なんじゃないか?
こんな所で危険に身を晒してまで油を売っている場合じゃない。
だからこのスイッチにかけた手は今すぐ引っ込めるべきなんだ、さぁ放せ、放すんだ霧雨魔理沙。
「えいっ☆」
気付いた時にはもう遅かった。
無常にもスイッチは切り替わってしまった。
何たる浅慮、何たる無計画。
呪うべくはこのお茶目な右手だ。
恐る恐るモニターの方を見てみると、何の事はない、左側のモニターが消えただけだった。
右側のモニターでは相変わらず咲夜が右手を振り上げて熱弁している。
おつむの弱い妖精群はと言えば、「左が切れたら右を見ればいいじゃない」という何とも柔軟な発想に従って一斉に右を見るのみであった。
安堵の息を漏らしつつ、じゃあこの横のスイッチはどうなるのかと考えてしまうのもやはり人のサガなのだろう。
しかしさっきこそ何とかバレなかったものの、今度も上手くいくという保証はない。
スイッチを押すデメリットは何ら変わっていないのだ。
「てりゃっ☆」
一応は研究職にある魔法使いとは厄介な仕事で、検証可能な状況なら検証してみざるを得ない。
だから今スイッチを押したのも魔法使いとしての性分なのだ。
……お茶目な右手に次いで、ワンパクな左手も呪っておかねばならないようだ。
固く瞑った目を、右目だけ徐々に開ける。
妖精達は……まだ背中が見えている。
ゆっくりと視線を上げていくと……今度は右のモニターが切れて左のモニターだけが点いている状態だった。
妖精達も再びその柔軟な思考を生かして左を向いている。
今日は運命の女神が笑顔のタイムサービスを行っているらしい。
(しかし、意外と楽しいな、コイツらの反応は)
人間、二度も上手く行くと慢心してしまいがちであるが、それは魔理沙とて例外ではなかった。
目の前にある残り四つのスイッチは未知の変化を魅力として魔理沙を魅了している。
しかも目の前に居るのはおつむの弱い妖精。大抵の事では気付くまい。
(よし、端からやってみるか)
ためらう事なく魔理沙は三つ目のスイッチを押した。
パッと画面が切り替わり、右側に咲夜、左側はアニメを映し出した。ツギハギだらけの豚のような瓢箪のような、妙な生き物が映っている。
単純な妖精にとっては退屈なメイド長の話などよりよほど魅力的だったのだろう、一斉にアニメを見出した。
次いで四つ目のスイッチに手を伸ばす。
今度は左右のモニターが切り替わり、右にアニメ、左に咲夜が映った。
当然ながら妖精達は90°右へ向き、咲夜になど目もくれない。
面白いので三つ目と四つ目のスイッチを交互に入替えてみる。
妖精達はその都度、素直に右へ左へと方向転換をしていた。
メイド長の威厳が心底疑われる光景である。
そして五つ目のスイッチを押す。
今度は両方の画面にアニメが映った。
気になる妖精達の行動はと言うと、最初と同じく真ん中からキレイに分かれて左右の画面を注視しだした。
こうまで素直に反応してくれるとやっている方は爽快だ。
魔理沙の気分は上々だった。
だから、この流れから最後のスイッチを押した時に起こるであろう事にすら、気が回らなかったのだ。
六つ目のスイッチ、最後のスイッチ。
勘違いしてはいけない。タイムサービスには「タイム」という制限があるのであって、永遠ではない。
運命の女神による笑顔のタイムサービス、その時間はとても短かった。
スイッチを押した瞬間にアニメの映像は消え、両方ともがメイド長の演説シーンになった。
元々興味もなかった上に娯楽を見せ付けられた後とあっては、反省文があっても演説を見る気にはならないのだろう。
ヤバイ、と思う間もなく、妖精達が一斉に後ろを向く。
するとそこに居るのは映写機を弄っている侵入者の姿だ。
一瞬の間。
「し、侵入者よー!」
「黒白魔法使いだわ! どーろーぼー!」
「やだ、今朝新刊買ってきたばっかなのに!」
「あぁっ、私もロッカーにお財布置きっぱなしー!」
「みんな! 自分の持ち物は自分で守るのよ!」
紅魔館が誇る約百人のパートメイド部隊は侵入者を見るや否や、一目散に自分達のロッカールームへ駆け出していった。
紅魔館のパートは時給666円と聞く。多少賃金を上げてでももう少しまともなメイドを雇うべきではないだろうか。
メイド達のあまりの喧騒に驚いて不覚にも尻餅をついた魔理沙は、スカートについた埃を払うと映写機に立てかけておいた箒を手に取った。
「失礼な、私は泥棒なんて一度もした事がないぜ」
「さて、ラスボスとご対面な訳だが」
「誰がラスボスよ。私なんて所詮4ボス……エキストラでも妹様の前にちょっと出るだけ。
フン……私はどうせ要らない子よ」
「まぁそう言うなって。お前は立派な引き立て役だよ。料理ってのは食材を引き立てる為のスパイスがいる。お前は十分必要とされてるんだぜ」
「魔理沙……」
「言葉を変えると噛ませ犬だけどな!」
「OK、自殺願望は受け取ったわよ」
ここまで二人は目も合わせていなければ指の一本も動かしていない。
強いて言うならば、目は熱心に紙面に踊る文字を追っていた。
机の上には小悪魔の入れた紅茶。ひんやりとした室内で、透明な氷がカラン、と音を立てる。
図書館内は穏やかに午後の一時を刻んでいた。
「で、今日は何? 本を読みに来たの?」
「あぁ、忘れていた。珍しい道具を手に入れてな、ここの蔵書を頂きに来たんだった。じゃあな」
言うが早いか、魔理沙は帽子から風呂敷を出すと手近にあった本を手当たり次第詰め込んでいった。
足も速ければ手も早いらしい。もちろん、性的ではない意味で。
見事な手捌きに思わず見とれていたパチュリーも、見る見る減っていく蔵書量にようやく我に返った。
「ちょ、ちょっと、何をして……と言うか、そんなたかだか一メートル四方の風呂敷にどうやったらそんなに!」
「なぁに、ちょいとコツがあってな。ホイ、ホイ、ホイっと、これくらいかな」
「コツって、そのちょっとしたコツって物理法則を無視できるほどのものなの!?」
四隅を縛った風呂敷はサッカーボール程度。だがその中には棚二つ分、約五千冊の本が入っているのだ。
何をどう頑張ったって入るはずがない。
だが現実問題として本は風呂敷に収納されているし、蔵書は減っている。
落ち着くんだ、魔法使いはこんな事じゃあうろたえない。
「さてさて、取り出したるはもう一枚の風呂敷。今ならなんとセットでこの収納量!」
「まだ持っていくの!?」
駄目でした。落ち着けませんでした。
どこの世界にたった二枚の風呂敷で一万冊も持って行く馬鹿がいるのか。
あぁ、これが効用の最大化って事かしら。風呂敷で見る経済学ってのも悪くないわね。
でもこうも再々持って行かれたのではここが図書館ではなくなってしまうわ。
「人形遣いの手を借りて秘密裏に開発した甲斐があったわね……魔理沙! あなたの悪行もここまでよ! 出でよ、先行量産型紅美鈴!」
声高に叫び懐に隠したスイッチを深く押し込む。
途端に爆発音と共に粉塵が舞い上がる。小悪魔め、掃除サボったな。
そう、図書棚は量産型紅美鈴の収納庫となっているのだ。
棚の総量は数知れず。今や図書館内の警備は正面玄関に勝るとも劣らない。
『一つ暇人紅美鈴!』
「さぁ、あなたの相手はこの子達よ、魔理沙!」
「達って、一体しか出てきてないぜ」
「あ、あら? 設計ミスかしら?」
試しにもう一回押してみる。
『二つ不思議な紅美鈴!』
爆発音は一つ。出てきた紅美鈴も一体。
どうやら連結回路に不具合があるようだ。
パチュリーの眉の両端が急降下した。繋げ合わせたらきっとy=-2x2くらいだ。
「あー……二体でいいのか?」
「えぇい、こうなったら連射してやるわよ!」
スイッチを左手で持ち直し、右手の人差し指を立てて一心不乱に左右に擦る。
名人もビックリなその連射姿は、ある種もう一つのポケモンショックとすら言えるのかもしれない。
しかしその効果は絶大で、次々と量産型紅美鈴が誕生していったのである。
『三つ見えざる紅美鈴!』
『四つヨロシク紅美鈴!』
『五ついつでも紅美鈴!』
『六つ無邪気な紅美鈴!』
『七つなまえは紅美鈴!』
『八つやっぱり紅美鈴!』
『九つこっそり紅美鈴!』
『十でとうとう紅美鈴!』
「フフフ、どう? これでもその風呂敷を持ち出せるかしら?」
『いつも隣りに紅美鈴!』
「一体なら大したこともないんだが……こうも数が多いとなぁ……」
『貴方のお傍に紅美鈴!』
「さぁ、大人しく本を戻しなさい」
『六神合体紅美鈴!』
『甘さ控えめ紅美鈴!』
『旋毛は右巻き紅美鈴!』
『大きなお世話だ紅美鈴!』
『呼ばれて飛び出て紅美鈴!』
その瞬間、プツッと何かが切れるのが確かに聞こえた。
堪忍袋の緒だったのか理性だったのかハッキリは分からないが、確かなのはそれが魔理沙のだという事だ。
「うぅぅるぅぅせぇぇぇーッ!!」
サッと一振り、お掃除簡単。
新しい売り文句を考えてみるのも一興だ。
一撃で三体を撃破したエースパイロット魔理沙。ちゃっかりとパチュリーの持つスイッチを巻き添えにするのも忘れない。
だが、それは火に油をバケツで注ぐ行為だったのである。
『指令スイッチの故障を確認』
『エマージェンシーモードに移行』
『全機、緊急排出装置、作動』
『みんな仲良く紅美鈴!』
『生体反応を確認、排除開始』
不気味な合成音声は聞けば聞くほど不吉な情報を流してくる。
当初の設計通りなのか、それとも設計ミスなのか、数え切れないほどの紅美鈴はスムーズに『敵』の排除に着手しだした。
「何だこの数! このままじゃ図書館が持たないぜ! 一体どこにこんなに……!」
「そこはちょっとしたコツがあって……」
「言ってる場合か! とにかく逃げるぞ!」
魔理沙はパチュリーの手を掴むと箒に乗って図書室を飛び出した。
図書館から外へ逃げるには窓か玄関のどちらかしかない。
美鈴達に窓側への道が押さえられている以上、多少遠回りだが玄関から逃げるしかなかった。
館の中ではスピードを落とさざるを得ないものの、足の速さには自信がある。そうそう追いつかれはしない。しないのだが。
「何であいつら背中にブースター付いてるんだぁぁぁ!!!」
「フフン、私の技術力を甘く見てもらっては困るわね。火力、機動性、耐久力、お肌のきめ細かさ。どれをとっても貴女に引けをとらない設計よ!」
「それはそれで凄いな! ――で、パチュリー?」
「何よ?」
「後で反省会な」
「はい」
何とかロビーに辿り着いたものの、既に四方は美鈴達に囲まれている。
最初の方に出てきたのは外見もちゃんと作られていたというのに、後になればなるほど顔がロボちっくになっているのは材料不足だろうか。
見ろ、今到着したヤツの顔を組織してるパーツなんてボルトとナットだけだぞ。
そして何より勘弁して頂きたいのが、全員が両手をワキワキとさせている事だ。捕まったらどうなるのか、想像するだに恐ろしい。
こんな事ならもっと八目鰻食っとくんだったな。あぁ、神社には栗羊羹もまだ残ったままだ。待てよ、永遠亭で兎肉パーティーもしてないぞ。
あぁ、でも幽霊になってもたらふく食ってるヤツもいるし、まぁ死んでもいっか。
なんて現実逃避気味に黄昏ているところに、救いの女神は紅い悪魔と一緒に瀟洒にやってきたのだ。
「何を騒いで……って本当に何の騒ぎよ、これは」
「つまり、魔理沙撃退用のロボットが暴走した、と。そういう事で宜しいですか?」
腕組みをしたまま咲夜は眼前の美鈴軍団を睨んだ。
事情を説明している間に動かなかった彼女らはCPUがボロいのか確信犯なのか、どちらにせよ魔理沙達にとってはありがたい話だった。
「えぇ、そういう事よ。対歩兵用兵器搭載、対艦ミサイル完備、ついでに3000までのダメージを無効化するバリアも装備。
フフフ、石すらも手にしたこのパチュリー=ノーレッジに不可能はないわ!」
「なるほど。――時に、パチュリー様?」
「何かしら?」
「後で反省会ですね」
「はい」
悠長にしている暇はなかった。
話が終わったと判断したのか、美鈴達が一斉に飛び掛ってきたのだ。
それはもう、雲霞という言葉の成り立ちを理解するほどに大量の美鈴達だ。
お空に雲が浮いていると思ったら美鈴でした、なんて事態も目の前の現実では大いに有り得るのだ。
「とにかく咲夜! 時間を止めてこいつらをどうにかしてくれ!」
「嫌よ。時間は止まってても私の時間は経過するのよ? ただでさえお嬢様といる時間が限られてるってのに、これ以上無駄にする気はないわ」
「あら咲夜、前に眷属にしてあげようかと聞いたら断ったじゃない? 二人でお互いの血を飲み続ければ、それこそ共に永遠に生きられるのに」
「いやまぁ、さっきのは建前で、本音は私だけ時間進んじゃったら小皺とか気になりますんで」
「血ぃ吸って干からびさせてやろうか」
などと言いつつもさすがは幻想郷の最上位に位置する生物。
群がる美鈴達を片手で薙ぎ払っていく。
咲夜は咲夜で、どこにそんなにしまっているのか無数のナイフを的確に投擲している。
気のせいか、投擲量に比例して女性の象徴たる二つの膨らみが小さくなっている気がしないでもない。
「咲夜、お前もしかして……パッドに加えてナイフで……?」
「パッドじゃないわよ、大胸筋矯正サポーターよ!」
ナイフを否定しない辺りが何とも慎ましい。
やはりメイドは慎ましくなくては務まらないのだ。色々と。
だが、そんな慎ましい攻撃では美鈴達は一向に減る様子がなかった。
「何とか食い止めてはいるけど……この量では……」
「こうなったら合体技よ、魔理沙!」
「なんだ? マスタースパークとノンディレクショナルレーザーでも撃つのか?」
「そんな事したら館が壊れちゃうじゃない。
いい? どこかの本で魔方陣の中を飛行形態で潜り抜けたら、炎の鳥を纏って体当たりする技が使えると読んだ事があるわ。
私が補助用にアグニシャインを魔理沙に撃つから、貴女は箒でその手に持ってる輪を潜り抜けなさい!」
「どさくさに紛れて私を始末しようってハラじゃないだろうな!?」
「私を信じて!」
「……分かったぜ! えぇい、ままよ!」
この殴り抜けフープは紫が外の世界から持ってきたものだ。
なら、幻想郷の中では考えられない事も可能なのかもしれない。
元々常識外れな道具だ、賭けてみる価値はある。
魔理沙はフープを大きく上に投げると、箒で空を翔けた。
天井近くまで一気に登り詰め、そこから反転して急降下する。
目前には、大きな孔を開けて待っているフープ。
「行けぇぇぇぇぇぇ!!!」
ギリギリ人が通れるかというほどの孔を最高のタイミングで翔け抜ける。
孔を抜けると、一面の紅。
全身が炎の鳥に包まれているのだ。
四神の一つにも数えられるその姿はあまりに神々しく、長き時を生きてきたパチュリーすらも目を見張った。
「これで……終わりにしてやるぜッ!」
標的を美鈴達のど真ん中に定め、魔理沙は一層勢いを増す。
この技なら全滅とまでは言わなくとも、壊滅的なダメージは期待できるだろう。
パチュリーは館が壊れる事を気にしてダブルレーザーを却下したが、これでも十分壊れるんじゃないだろうか。
ふと、魔理沙はそう思ったが、深く考えない事にした。今は目の前の問題を解決する方が先だ。
今一度箒の柄を握り直す。敵は眼前だ。
そして今まさに突撃するという瞬間。魔理沙の姿は鼻のデカいオッサンの顔に変わった。
「うおぉぉぉ……ぉぉぉおお!?」
箒の柄の長さがそのまま鼻の長さに相当するという超ド級の鼻の持ち主の顔。
その顔もやがて広大な宇宙に変わっていった。
魔理沙はと言うと、百面相ならぬ百変化をしながら単騎で美鈴達に突っ込んでいったのである。
「何? どういう事? 確かにアカシックバスターは完成していたはず……私のアグニシャインが余計だったのでも言うの!?」
有り得ない、何もかもが有り得ない。
苦悩に満ちたパチュリーは右手で顔を覆い、荒々しく首を左右に振った。
――いま、へやのすみに、なにか、みえたような――
部屋の隅、南側の壁。
そこに居るのは、嬉しそうに映写機を振り回すお嬢様の姿。
……首を180°回頭させる。
北の壁にはあちこちに動き回る「火の鳥」の文字。
「お前のせいかッ!!」
「という状況になった時、魔理沙は人を轢いちゃったから対人保険……あぁ、この場合は門番さんがロボットだから対物保険かな。
魔理沙の一方的な過失だから全額負担。このとき、対物保険を無制限で入ってても保険で支払われるのは時価額までだから気をつけるんだよ」
「それが保険というものなのね――ところで、霖之助さん?」
「何だい?」
「後で反省会ね」
「はい」
(了)
と思ってたらこーりんかよ!
映写機の件はMGS2?
コメントありがとうございます。
>こーりんかよ!
彼は黒幕たる資質を秘めていると思うのです!
オチ担当とも言うかもしれません。
>映写機の件はMGS2?
ご名答でございます。
あそこが楽しすぎて何度もやった記憶があります。
>中国の扱いがwwww
嘘みたいだろ……作者、中国割と好きなんだぜ……。
いや、ホントです。「ほんと」を変換すると真っ先に「紅と」が来るくらい真面目です。
でも一番は映姫様なんですけどね!