「もうこんな時期か―」
なんとは無しに呟いた独り言。それを聞きとがめる者はいない。
今、幻想郷は咲きに咲き乱れる花で溢れ返っている。何かがおかしいと巫女や魔法使いが勘を頼りに飛び回る中、竹林ではいつも通りの顔で藤原妹紅が空を見上げていた。
無論、竹林が花で一杯になることはないのだが、それでも匂いと花びらはそんなところまで辿り着くのである。否が応にもわかるというものだ。
「この前は……何があったっけ?」
妹紅にとって、この異変は時の便りである。六十年に一度。この異変を感じることで彼女は時を知るのだ。
「思い出せないなあ……何かあったと思うんだけど……」
千年単位で生きる者、否、永遠を生きる者にとって時という概念ほど無用なものはない。彼女たちは鈍くなっていく。朝を迎えれば迎えるほど。夜を越えれば越えるほど。時間というものを忘れていく。そんな彼女たちにとって、この一定の周期で起こる異変は時を感じ取れる稀有な存在なのだ。
妹紅は歩く。もはや自分の庭に等しい竹林を思索しながら歩く。歩く。歩く。六十年前に何があったのか。記憶を辿るように歩く。歩く。歩いて―
「六十年ぶりですね」
清らかな声を聞いて、一気に記憶が蘇った。
「あんたは……閻魔様ね」
「そうです。名は四季映姫だと名乗ったはずですが」
「いいじゃない。閻魔様は閻魔様でしょ?」
「それはそうですが……」
そう。彼女は六十年前にこの閻魔に会ったのだ。まだ少女のような面影を残す幻想郷の最高裁判長。わざわざこんなところにまで説教に現れるなんてよっぽど暇なのか、それともただのお節介なのだろうと思ったものだ。もっとも、
「私が言ったことをまったく理解していないのはどういうことでしょうか?」
説教の内容はまったく覚えていないのだが。
「あーあれだっけ? あまり竹林を焼くな……とか?」
「違います」
「んー……焚き火の後始末はきちんとしなさい?」
「違います」
「夜雀を食べようとしてはいけません?」
「違います。ていうかそれは違う人の説教なんですけど……」
妹紅は少し焦った。思い出せないと自分の身が危ないと感じたのだ。いくら不死とはいえ、この裁判長が本気になれば永劫の苦しみを与えることができるだろう。死なない
者に対してそのようなことが可能なのかは不明だが。
「ごめんなさい。忘れちゃったみたい」
「……」
「あ、怒らないでね? 私ってあんまり長く生きてるもんだからなかなか覚えていられなくて……」
「つまり私の話は覚えておく価値がないということですか」
「いや、そういうことじゃなくて……その……」
「……今日は絶好のビーム日和ですね」
「ごめんなさい」
映姫は腰に手を当てて拗ねたような表情をした。あどけなさの残るその表情は、普段ならば微笑ましくも感じただろう。だが今の彼女はかなり機嫌が悪い。とてもではないが、妹紅にそんなことを考える精神的余裕はなかった。
沈黙が、重い。映姫はまだ怒ったような表情で妹紅を見据えてくるものだから妹紅にとっては居心地が悪いことこの上ない。
「はあ……わかりました。同じことを繰り返すのは好きではありませんが、これも私の務め。もう一度言いましょう」
「ちょっといい?」
「なんですか?」
「拒否権はないの?」
「……あると思ってるんですか? あなたに? 拒否権が?」
「うわあ、ぜひ聞きたいなあ!」
やけになったかのように諸手を挙げて喜ぶ妹紅。そんな彼女を尻目に映姫はお得意の説教を始めた。
「さて。藤原妹紅。あなたはまだ復讐に生きる気ですか?」
「何……?」
「蓬莱山輝夜及び八意永琳。この二名に対する復讐は未だあなたの最終目標なんですか?」
「な……当たり前でしょう!? あいつらを殺さないと私の気が済まないわ!」
「ふぅ……言っていることが六十年前と変わりませんね。否、それでも覇気は大分薄れましたか……この六十年の間に何かあったみたいですが」
何か。当然、妹紅には心当たりがある。それは慧音との出会いだったり巫女や魔法使いやメイドが千客万来した夜だったり。
今まで生きてきた中でなかなか変な意味で密度が来い六十年間だったと妹紅は認識していた。
「ですが貴女の憎しみ。千年という時でも癒せませんか」
「くどいわね。その程度で収まるとでも思う? 父上の無念、私の苦しみ。それがたかが千年でどうにかなると思っているの?」
妹紅は歩き出す。竹の林を、先ほどより気持ち速めに歩いていく。竹は輝夜を思い出すようで嫌だった。ゆえにこの竹林は彼女への憎悪を培うのに相応しい。千年の時を超えて尚強く顕現するその憎しみのバイタリティは目を瞠るものがある。
「それだけの憎悪を維持し続ける精神力があるのなら、その力を別のベクトルに向けることが可能ではないのですか?」
早足で竹林を進む妹紅を追いかけながら映姫は説得を続ける。乱立した竹林を往くことは慣れぬ映姫にとってはかなりの難事業であった。おまけに歩幅が違う。
「何を言ってるの?」
「ですからっ! それだけ何かを思う力があるのなら……憎しみとは別のものにその力を注げばいいのではないですか!」
「何が言いたいのかわからない!」
「お父上の無念だとか、不死への怒りだとか、永遠の生のすべてを費やしてたとえ晴らしたとしても! それではあなた自身は何を救われない!」
「救いなんかいらないわ―ところで私がどこへ向かっているかわかる?」
そう言われて映姫は初めて現在位置を把握しようと思い立った。前方を見遣れば、少し先には永遠亭が見えている。
「貴女、まさか……」
「まさかも何も。それ以外選択肢はないわよ。ねえ、永琳」
永遠亭までの直線上に佇むは月の頭脳にして最強の護衛。永遠を往く不死の天才、八意永琳その人である。
「今までなんの障害も無かったけれど、どういうつもり?」
「貴女ほどの人が相手ならば、警備を差し向けたところで彼らの身を危うくするだけだから」
「どうだか……策士で狡猾なあんたが、突破されればはい終わりという最後の一線で私と殺り合おうというのが腑に落ちないんだけど」
その言葉を受けて永琳は一本の矢を黙って番える。口元に浮かぶ静かな笑みは、人なのに人にあらざる者のようで。それでもやはり美しかった。
「忘れたの? 私たちは不死なのよ。例えここを突破されても―あなたが姫を倒すことは未来永劫無い」
「開き直ったわね。いいわよ。どうせリザレクションされるけれど……『殺した』ことに変わりは無い。その時、その一瞬に私は確実にあいつを『殺した』。胸がすくことには変わりは無いわ」
きりきりと。引き絞られる弓。ほんの僅かな指の動きで、その矢は妹紅の額を容赦なく射抜くために疾駆するだろう。
一方で妹紅も右手に炎を纏い低く構えを取る。肉食獣のしなやかさと強靭さを思わせる姿勢は芸術的でもある。
永琳の目は妹紅の重力移動を見極めんとし、妹紅の目は永琳の手元の動きを見逃さないと睨み付ける。
今、まさに交錯せんというその刹那に、
「審判『十王裁判』」
十王召喚のスペルカード宣言が竹林に静かに響き渡った。
「なっ!」
「くっ……」
こうなれば決闘どころではない。即座に二人とも閻魔に向き直るが先制して宣言されてしまった以上、アドバンテージは向こうにある。
「双方、武装を解きなさい。これは命令です。逆らえば執行妨害として裁くことも可能ですよ?」
「……わかった」
「仕方ないわね。閻魔様のご命令とあらば。不死の身でも冥府の拷問は御免願いたいわ」
しぶしぶながら構えを解く二人。もともと輝夜、永琳と妹紅の間の私闘である。第三者が介入した時点でボルテージは急降下だ。そんな二人も見ても映姫は十の王を顕現させたままである。
「不毛な争いは認めるわけにはいきませんね」
「不毛……?」
「ええ。不死である貴女方が戦ったところで結果は同じです」
その言葉を聞いて妹紅の周囲で轟っと炎が猛る。
「妹紅! 何を考えて……」
さすがの永琳も妹紅の暴走に焦ったようだ。同時に、映姫の挑発にも取れる発言に不快感を抱いた。
「私の千年を不毛と言うか!」
「怒りましたか? 不思議ですね。不毛と知って尚、貴女は戦うのではないのですか? ならば貴女の千年が不毛であったことは事実です」
「うるさいっ!」
妹紅の体が爆ぜる。純粋な戦闘では映姫に勝機は無い。だが、彼女はすでにスペルカードを発動している。
迫る妹紅。しかし冥府の王が展開する弾幕が容易に接近を許さない。
十王裁判一の王『秦広王』。不動明王の冥府での姿たる王による始まりの裁き。苛烈にして熾烈な弾幕が容赦なく妹紅の体力を奪う。
「くそっ!」
次々と迫り来る弾幕を避けながら接近し続ける。かすり避けるだけでもかなりの体力が消耗される中、弾幕の隙間を縫って彼女は叫ぶ。
「奔れっ!不死『火の鳥 -鳳翼天翔-』っ!」
彼女の想いを代弁するかのように突き抉るように無数の紅き弾とともに火の鳥が映姫に襲い掛かる。
映姫はとっさに回避できぬと判断。即座にスペルを対応させる。その判断から実行まで。まさに一瞬。
「五の王『閻魔王』。冥府の慈悲を与えましょう」
其は地蔵菩薩の化身。冥府の流儀で慈悲を貫く第五の王。天国か地獄か。すべてはこの王の導きによって。
全方位発射の高速レーザーがあらゆる弾幕を相殺する。消えては現れ、消えては現れる火の鳥も、このレーザーによって悉く殲滅されていく。
周りの竹を薙ぎ払い地を抉るレーザーは、頼りなげに浮かぶ月明かりの何百倍もの光を以って漆黒の竹林を照らし出す。
いつでも、弾幕による決闘というものは第三者から見れば絶景なのだ。
「あぐっ!」
不意にスペルブレイクが起こる。敗れたのは妹紅のスペル。無数のレーザーの数本が彼女の足を貫いていた。
衝撃で地に堕ちる妹紅。その気を逃すはずもなく、発散していたレーザーは妹紅を照準に収束する。
「蓬莱の不死。試してみましょうか」
だがしかし。裁きを下すかのように手を下ろそうとする映姫の周りを突如大量の弾幕が取り囲む。
「踊りなさい。薬符『壺中の大銀河』」
永琳の宣言を合図に円状の弾が収束を始める。先ほどまでなんのアクションも見せなかった第三者による奇襲に、映姫は慌てて収束させたレーザーを発散することで相殺を試みる。
「永琳、何のつもりだ!」
「勘違いしないで。私が倒すはずだったあなたを、横取りされるのが嫌なだけよ。それにしても―」
宙に浮かぶ閻魔を見上げ苦々しく彼女は呟いた。
「完全に不意を突いたと思ったけど。ほぼ無傷とはね」
その言葉の通り、映姫はほぼ無傷であった。さすがに彼女自身を象徴する第五の王。そう簡単には崩れない。
すでに辺り一面は焼け野原の状態となっている。打ち倒れた無数の竹が、先の攻防の激しさを物語っていた。
「八意永琳。どういうつもりですか」
「さっき言った通りよ。私の獲物を、横から掠め取らないでもらえないかしら。閻魔様が泥棒だなんて、笑えないわ」
「なるほど。どうやら貴女にも説法が必要ですか」
「いらないわ。語りたいなら――」
月の天才は新たに矢を番えて宣言する。
「弾幕で語りなさい。爆ぜろ。秘薬『仙香玉兎』」
放たれた矢は一直線に映姫の許へ。まるでこれを狼煙とするかのように辺りをレーザーが埋め尽くす。
紙一重で矢を交わし、現れたレーザーをかすりながら映姫も同じくレーザーで迎え撃つ。秘薬『仙香玉兎』のレーザーは固定起動ゆえにかわすことは容易である。
「その程度のスペルでどうにかできるとでも思っているのですか」
「どうにかするのは私じゃないわ」
映姫の視界を掠めたのは赤き炎。すなわち、不死鳥の猛り火。すでに傷を回復した彼女は再び炎の翼を纏っている。
「『パゼストバイフェニックス』! 逃げ場は無いわよ!」
永琳と妹紅によるスペル連携。レーザーに囲まれた映姫は可動範囲が相当に制限されてしまっている。そんな彼女を、絶妙なタイミングで手綱を放された不死鳥はその燃え
盛る嘴で貫かんと空高く飛翔した。
「しまった……!」
如何にレーザーを掻き集めてもこの猛りは相殺しきれるものではない。三重に起こったスペルブレイクの閃光が、漆黒の空を真昼のように染め上げた。
「これで終わるほど柔じゃないわよね。妹紅」
「押しつぶしてあげるわ。蓬莱『瑞江浦嶋子と五色の瑞亀』」
まだ視界が回復しないうちになされた宣言は正に最後通告。隙間などないかのように空間に敷き詰められし弾幕たちは、容赦なく映姫に襲い掛かる。先の連携で無傷なわけが無い。手負いの状態でこの密度の弾幕を避けきれるとは思えない。永琳の読みは的確で、映姫の動きはあまりにも鈍かった。
それでもなお、映姫の声に焦りは無い。
「まだまだですね……審判『浄頗梨審判 -八意永琳-』。鏡と戯れなさい」
「無駄なことを……展開しきる前に落とされるわよ」
「心配は無用です、なぜなら」
スペルカード宣言と同時に突風が吹き荒れる。その風で薙ぎ倒された無数の竹が宙に舞い上がった。
当然、辺りを埋め尽くしていた弾幕は竹によって妨害を受け、宙でスペルを展開していた妹紅にも竹はあちこちから飛んでくる。
「馬鹿な……!」
永琳が悪態をついている間にも薄くなった弾幕を抜け、映姫のスペルが展開される。
生前の罪を映す断罪の鏡。自らを狙うは自らの幻影。永遠を生きる永琳にとって、犯した罪はいかほどか。重ければ重いほど。多ければ多いほど。自らを苦しめる枷となり刃となる。
「詰めが甘いですね。あなたは暫く自分の罪と向き合っていなさい。さて、」
残った妹紅に向き直る。だがしかし彼女は永琳に大してスペルを使ってしまっている。妹紅と戦うのならば、スペル無しだということになる。『パゼストバイフェニックス』によるダメージを考えれば絶望的であった。
「さて、気は晴れましたか?」
もっとも、映姫にはもう戦闘の意思はなかったのだが。
「何を……輝夜と永琳を殺せないのなら、この念が晴れることは無いわ」
「それは承服できません。幻想郷の法の番人として、殺人を看過するわけには行きませんので」
「輝夜は死なない。永琳は死なない。そして私も死なない。そこに何か不都合があるの?」
その言葉を聞いて映姫は大きくため息をついた。
嘆かわしいことだと。本当に嘆かわしいことだと彼女は感じた。
「貴女たちは死なないのではありません。『何回でも死ぬことが出来るだけ』です。貴女、今まで何回彼女たちを殺しましたか?」
映姫はそう、哀しげな瞳をして不死の少女を否定した。そのことに妹紅は驚きを見せたものの、反論することは出来なかった。そう、不死とはそういう見方も可能なのだと感じたのだ。
「そんなこと、覚えているわけ無いでしょう?」
「覚えてないほど殺しましたか。しかし困りましたね。魂を束縛できない貴女たちは地獄で罪を償うことが出来ない。ゆえに、私が責任を持って更正させるしかないと判断しました」
「それが、わざわざ私に説教しに来た理由?」
「そうとも言えます。復讐のために永遠を生きることの哀しさをあなたに説きに来たのですが」
またそれか、と妹紅はうんざりしたように首を振る。
「どうせ復讐なんてくだらないわよ、とか言うんでしょう? ただの人間だった私の気持ちなんかわかるはずも無いのに簡単に否定しないでくれる?」
「ええ、わかりませんよ。私は嘘は言えません。他人の気持ちを軽々しくわかるなどと傲慢なことは言えません。できることは痛みを、気持ちを想像することだけです」
きっぱりとした映姫の言い方に妹紅はしばし面食らったようだった。
「ず、随分はっきり言うのね」
「それが私ですから。私に出来ることは幻想郷の最高裁判長として責務を果たすことです。その責務とは貴女を更正させることになりますが」
「……」
「復讐という過去を殺す所業はとても哀しいものです。それではいつか貴女は今このときを失ってしまうでしょう」
ざわざわと、風を竹林が通り抜ける。少し冷たい風は、妹紅や映姫の頬をひんやりと冷やしていった。
「……まあ、個人的に貴女にはそのような生を歩んでは欲しくないという気持ちもありますが」
「なによ、それ。変なの」
「変で結構です。貴女にはこれより六十年の猶予を与えます。その間に如何に過去を見つめ、如何に未来を見据え、如何に永遠を生きるべきか。行いをただし、見出しなさい」
「……また、忘れてるかもしれないわよ?」
「それならまた、お説教してあげますよ。六十年後に」
映姫の背後でスペルブレイクの閃光が奔った。永琳がついにスペルを破ったようだ。
「はあ……はあ……」
「幾千年分の罪はどうでしたか?」
「どうもなにも……あなたこそ何をしてるの?」
「別に何も。私の用事は終わりましたのでそろそろ戻ろうかと思います。彼女がサボってないか見ないといけませんし」
ふわっと更に高く浮き上がり竹林を眼下に見下ろす映姫に向かって、永琳は不満げな顔をしていたが、引くというならばわざわざ追うことも無い。自分自身、もうスペルを起動できるほど体力が残っていないのだ。暫く経てば回復するが、妹紅のこともある。永遠亭の側からは離れたくは無い。
「さて。邪魔が入ったけれど―」
「帰る」
「え?」
急に背を向けて帰ろうとする妹紅に戸惑う永琳。最初はあんなにやる気だったのになぜこうもあっさり引き下がるのか。まったくもって理解できないという感じの顔をしていた。
「いいでしょ、別に。今日は疲れたの。それに、」
耳を澄ませば竹林に彼女を呼ぶ声がかすかに響く。
「妹紅ー? どこいったんだ? 妹紅ー」
「慧音が探してるし、ね。こんなところ見つかったら面倒なことになるわよ」
「そう……なら早く行きなさい。姫が起きてきたらそれこそ面倒だから」
「そうね」
挨拶などする必要もなく、妹紅は元来た道を引き返す。だんだん自分を呼ぶ声が大きくなってくる。どうやら、慧音に近づいているようだ。
復讐のために生きることを慧音はどう思っているのだろうか。先ほど映姫に言われた言葉をそのまま鵜呑みにするほど彼女の憎悪は安くはない。だが、それでも何かしらの
影響を与えたことは事実だった。
さて。次に花咲き乱れる六十年後。人にとっては長く、彼女たちにとっては短い六十年。彼女がどのような再会を果たすのか。それは、まだまだ咲き誇り続ける花たちにも、天に向かって迷いなく伸びる竹たちにもわからないのだ。
この六十年では変わらないのかもしれない。六十年で変わるにはあまりにも根が深すぎるのかもしれない。それでも。彼女には無限の六十年がある。ならば可能性は、チャンスは、無限にあるのと同義ではないか。
願わくは、彼女が笑顔で閻魔様と再会できる日が訪れんことを……
あ、あと一箇所更正が構成になってるところがあります