この話は、東方妖怪小町in紅魔館の別視点です。
本編の方を先に呼んでから読む事をお勧めします
料理対決のあった日の晩
「紫~紫~」
そろそろ寝ようかと思っていた紫は、突然呼び付けられる。
無論、そんじょそこらの奴らの呼び声になら紫は応えない。
だが、この声の主は彼女の親友、西行寺幽々子の物だった。
「何か用かしら?幽々子。私そろそろ寝るんだけど」
隙間を抜けて白玉楼の幽々子の前に姿を現す紫。
「あ、ごめんね~。ちょっと頼みたい事があってね~」
「頼みたい事?何かしら?」
なんだかんだと言うが、基本的に紫は親友である幽々子の頼みを断らない。
余程無茶な頼みや、下らないのは断るのだろうが。
案外、義理堅い性格なのかもしれない。
まぁ、その対象はごく一部に限られるのだが。
「さっきね~妖夢に明日から紅魔館に行くように命じたのよ~」
「さしずめ、今日の結果の罰と言ったところかしら?」
「そうなのよ~」
「酷い話ねぇ・・・・・・」
「あら?何が~?」
「別段、妖夢の配慮はそこまで悪くは無かったでしょうに。度が外れて貴女贔屓にしてたんじゃないんだから」
「やっぱりバレてた~?」
「バレバレよ。大方ちょっとしたミスに言いがかり付けて、後で妖夢をいじめようって魂胆だったんでしょう?」
「流石紫ね~、その通りよ~」
本当に酷い話である。
「それで?頼みと言うのは?」
「そうそう、それで妖夢が紅魔館に行くんだけど・・・・・・・・・あそこって従者って言うより、メイドじゃない?」
その一言で紫はピーンと来る。
「なるほどね・・・・・・妖夢にメイド服を着せたいのね?」
「流石ね~、頼めるかしら?」
「メイド妖夢・・・・・・・・・ね」
紫はメイド服を着た妖夢を思い浮かべる。
「・・・・・・・・・イイわね」
「でしょ~?」
紫も幽々子もニヤリとした口元を扇子で隠す。
「でも、どうやって着て貰おうか悩んでたのよ~。持って行かせても着ないでしょうしね~」
「そう言う事なら任せなさい」
「あら~?妙案でもあるの~?」
「ええ、あるわ。それじゃ、さっそく準備に取り掛からないとね」
「お願いね~」
「任せなさい。それにしても、幽々子。良く報せてくれたわね」
「ふふふ~、こう言うのは一緒に楽しまないと~♪」
「ふふふ・・・貴女が親友でよかったわ」
「あらあら、私もよ~♪」
そして紫は隙間を開けて出て行った。
数時間後
「ただいま、幽々子」
「あら~、お帰りなさい、紫。どうだった?」
「勿論、上手く行ったわ。ついでだから明日から一緒に来るうどん娘のも用意してあげたわ」
「あら?あの娘も?それは良いわね~」
「所で幽々子。妖夢が居ない間どうするのよ?」
「あ、それなんだけど、紫の所にお世話になろうかな~って」
「私は構わないけど、白玉楼がそれじゃまずいでしょ。良いわ、私達がこっちに来てあげるわ」
「そう~?わるいわね~」
「あら?別に良いのよ。白玉楼って割と好きだしね、私も」
「それは良かったわ~」
「じゃあ、明日になったら藍と橙を連れてくるわね」
「橙も?」
「本当は藍だけで十分なんだけど・・・・・・橙をマヨヒガに一人残すわけにも行かないし、かと言って式神剥がしたら大変な事になるのよねぇ・・・・・・」
大変な事とは、橙は式神から妖怪に戻ってしまうと野生の方が強く表に出てしまうので、野良妖怪の如く暴れるのだ。
元々、そんなに力は強い訳ではないが、その所為で人の里に迷惑をかけると後々面倒になる。藍が。
「なるほどね~」
「ま、そう言う事だから明日からよろしくね、幽々子」
「こちらこそお願いね~」
幽々子の「お願い」とは面倒を見てもらう事でなく、別の事である。
そして、それは当然紫も承知している。
「任せておきなさい。妖夢にうどん娘。隙間妖怪の恐怖、とくと味わうが良いわ。」
カメラを何処からとも無く取り出してそう言う紫。
確かに、恐怖だ。
今ここに、幻想郷最強にとどまらず、最凶の妖怪が誕生しようとしていた。
色んな意味で。
翌日
「おはよう、幽々子」
「あら、おはよう紫」
紫は昨晩の言葉どおり、藍と橙を連れてきた。
「主ともども、10日間お世話になります」
「なります~」
藍が礼をし、橙がそれに倣う。
「ええ、こちらこそよろしくね~」
「さて、それじゃ藍には妖夢と同じ仕事をして貰うわよ。まずは朝ご飯作ってきて」
「はい」
紫にそう言われ、藍は朝食の準備に向かった。
朝食を終え、藍は紫に呼ばれた。
「じゃあ、藍。私から仕事の方を説明するわ」
「はい」
「今日は貴女には一人で庭掃除をして貰うわ」
「庭掃除・・・・・・ですか」
普通なら、なんだその程度か、と思うが、それは甘い考えである。
何故なら白玉楼の庭はとんでもなく広い。
どれくらいかというと、向こう側が見えないくらい。
広さの幅の単位がメートルでなくキロで表される広さだ。
「あの・・・・・・どの辺りまでですか?」
「何寝ぼけたこと言ってるの?庭掃除といったら庭掃除。全部よ」
「えぇぇ!?」
驚くのは当然だ。
こんな文字通り果てが見えない庭を一人でなんて無理がある。
「え~っと・・・・・・今日はどの辺りまでやれれば良いんでしょうか?」
取り敢えず、今日分のノルマを尋ねてみる藍。
「何度も同じ事言わせないで頂戴。全部よ」
「いや、あの・・・・・・」
「あら?出来ないの?」
「普通に無理かと・・・・・・・・・」
「藍・・・貴女には失望したわ」
ふぅ、と溜め息を吐きながら紫は言う。
「いや、しかし、この距離は・・・・・・・・・」
「妖夢はこの程度、普通にこなしていると言うのにねぇ・・・・・・貴女、妖夢以下だったのね」
藍は頭をハンマーでガンッ!!と殴られた様な衝撃を受けた。
(私が・・・・・・妖夢以下!?)
別段、藍も妖夢の能力が低いと思っているわけではない。
だが、それでも妖夢よりも自分の方が長く生き、その上、地力や己を使っている主の能力も自分の方が上だ。
その妖夢より下と見られるのは正直プライドが許さない。
「解かりました・・・・・・・・・八雲紫が式、八雲藍。その力をお見せいたしましょう」
怒っている様な目つきになって藍はそう言う。
「ふふふ・・・・・・それじゃあ、見せて貰おうかしら」
「ええ、存分に」
そう言って藍は庭掃除に取り掛かった。
「ああ、そうそう。お昼ご飯と晩御飯はちゃんと作りなさいね」
「承知!」
勢い良くそう返答して、藍は掃除をする。
「さて、私も「お仕事」しに行きましょうかね~。もう、折角今日からグータラしようと思ってたのに♪」
そう言う紫の顔は、何処までも楽しそうだった。
その日の夕方
「ただいま~」
紫は「お仕事」から帰還した。
「お・・・おかえりなさいませ、紫様」
息をゼィゼィ切らせながら藍が出迎えた。
「あら?藍。掃除は終わったの?」
「さ、先程終わらせました・・・・・・・・・・・・・」
「良く頑張ったわね。それじゃ、晩御飯の準備もよろしくね」
「ぎょ、御意・・・・・・」
ぐったりしながらも返答し、晩御飯の準備に取り掛かる藍。
当然、その晩は藍は食事に箸を付けるどころか、作り終えた瞬間、布団に入って泥のように眠った。
翌日
思いっきり寝たお陰で、藍も大分回復している。
しかし、寝なくても平気なはずの妖怪をここまで疲弊させるとは・・・・・・
白玉楼の庭掃除とはかくも大変な物なのか。
「じゃあ、藍。今日の仕事を言い渡すわ」
朝食後、再び紫は藍を呼び寄せてそう告げる。
「はい」
「今日はこの屋敷の掃除よ。無論、一人で全部」
「は・・・はい・・・・・・」
反論したかったが、どうせまた同じ事を言われるのだろう。
それに、恐らくは妖夢が一人で出来ている仕事。
自分に出来ない訳は無い。
そう言い聞かせて藍は今日も働く。
5日目
藍の仕事は庭掃除と屋敷掃除を一日おきに交互にやっていた。
因みに橙は気ままに遊んでいた。
まぁ、紫に藍の手伝いはするなと言われているのだが。
そしてその晩
「藍も頑張るわね~」
既に布団の中でばたんきゅ~してる藍の事を褒める幽々子
「まぁ、私の式だもの」
「そうね~」
「それより、幽々子。ちょっと妖夢がまずそうよ」
「まずい?」
「失敗がかさんだ所為ね。結構落ち込んでたわ」
「しょうがない娘ね~。紫、私を連れてってくれる?」
「ええ、そのつもりだわ」
そう言って紫は隙間を広げる。
そして、幽々子と一緒にその中へと入って言った。
紅魔館・妖夢の借り部屋
「うぅ・・・・・・死ぬほど恥ずかしかった・・・・・・・・・」
妖夢は頭を抱えていた。
「いくら何でもこんな短いスカートで・・・いや、でも、だからこそ・・・・・・いや、しかし・・・・・・・・・」
「妖夢~頑張ってる~?」
幽々子は隙間から抜け出て妖夢に声を掛けた。
「幽々子様!?」
妖夢は驚いて幽々子の方を振り向く。
(ああ・・・・・・メイドな妖夢・・・凄くイイわ。想像してたよりずっとイイわ・・・・・・・・)
幽々子は妖夢を見てそんな事を考えていた。
「あら~?どうしたの妖夢~。元気が無いわよ~?」
幽々子がそう言うと
「う・・・・・・幽々子様・・・・・・・・・ゆゆござまぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢は泣きながら幽々子の胸に飛び込んできた。
「あらあら、どうしたの~?妖夢」
(ああ、ダメよ、妖夢。今の貴女は可愛すぎるわ・・・・・・)
が、当の幽々子の頭の中はこうだった。
「うぅぅ・・・・・・メイド長が・・・スカートが・・・・・・ナイフが・・・スカートが・・・・・・黒い悪魔が・・・スカートがぁぁぁ・・・・・・・・・」
(とっても似合ってるのに、その短いスカート)
妖夢の心、幽々子知らず。
「あらあらあら、顔を上げなさい妖夢」
「ゆゆござまぁぁぁぁ・・・・・・」
言われて妖夢は顔を上げた。
「あらあら、ダメよ妖夢。そんな顔しちゃ」
(凄くイジメたくなっちゃうでしょう・・・・・ああ、凄いわこの娘。可愛すぎるわ・・・・・・もうお持ち帰りしたいくらい)
幽々子の頭は半分以上暴走しかかっていた。
と言うか、お持ち帰りしなくても5日後には帰ってくるだろうに。
「私は信じてるわよ~妖夢。貴女が成長して帰ってきてくれる事を」
(もっと可愛く成長してくる事をね~♪だから、今はお持ち帰りを我慢するわ)
誰か止めた方が良いのではなかろうか?
「ぐずっ・・・・・・すみません、みっともない所を・・・・・・・・・」
「良いのよ~、偶には甘えても~」
(と言うより、もっと甘えなさい。それはもう愛で回したくなる位に)
幽々子の目が怪しくなりつつあるが、妖夢は気付いていない。
「いえ、もう大丈夫です。」
(あら~?残念ね~)
「そぉ~?じゃあ、そろそろ私は帰るわね~」
(あまり居すぎると、歯止めが利かなくなりそうだしね~)
一応、自分でセーブは出来ていたようである。
現状は、であるが。
そして幽々子は隙間へと入り、帰って行った。
白玉楼
「お帰りなさい、幽々子」
「ただいま、紫」
「どうだった?」
「よかったわ~。あそこまで良いとは思わなかったわ~」
「そう?でもこれを見るともっとイイわよ?」
「どれどれ~?」
そう言って紫が差し出したのは、その日に魔理沙が来てスカートが捲れ上がった二人の写真。
横から、下着も懸命な顔でスカートを抑えている妖夢の表情も見える角度で撮ってある。
因みに鈴仙Verもある。
天狗よりも遥かに凄い撮影技術を持っているのではなかろうか?
それにしても、境界を操る能力を無駄な方面に使い過ぎである。
「ああ・・・・・・やっぱり妖夢はイイわ~」
その写真を見ながらうっとりする幽々子。
「それなんだけど、幽々子」
「何~?」
「今度こんなの着せて見ない?」
そう言って紫が出したのはメイド服のカタログ。
「あら~こんなに一杯有るのね~」
「ええ、私も正直驚いたわ」
「でも、何でこんな物を?」
「あら?愚問ね。可愛い者ってより可愛く着飾ってみたくならない?」
「うふふ~解かるわ~」
もはや二人の着せ替え人形と化している妖夢。
「でも、こんなの何処で取り扱ってるの~?」
「外の世界のアキハバラと言う聖地よ」
「へ~・・・・・・外の世界にもまだ「聖地」なんて物があるのね~」
「まぁ、ちょっと歪んだ「聖地」だけどね」
「そうなの~、あ、所で藍とかには着せないの?」
「ん~・・・・・・藍は着てくれそうに無いのよね~」
「でも、藍なら短いのよりこの長いのが似合いそうよね~」
「そうねぇ・・・・・・あ、これなんて橙に似合いそうね」
「あ~、橙も短いのが似合いそうね~」
「あの門番中国ちゃんも長いのとか似合いそうだわ」
「霊夢はどっちかしら~?」
「霊夢は短いのかしらね?魔理沙はまぁ、殆どそのまんまよね」
「レミリアとかも短いの着せたら似合いそうね~」
「似合うでしょうね~、まぁ、使用人の服なんてあの娘が着るとは思えないけどね」
「残念ね~」
「本当にねぇ・・・あ、これなんてあのワーハクタクに着せたら似合いそうだわ」
幻想郷女子メイド化計画が発動しそうな気配がここにあった。
そして10日目
その後は紅魔館の方でも特に何も無く(表面上は)、妖夢が帰って来る日になった。
「やっと妖夢が帰ってくるわ~」
「やっぱ居ないと寂しい?」
「そうね~、遊べないのは寂しかったわね~」
最早オモチャである。
そして夜になり、妖夢が帰ってきた。
「幽々子様。魂魄妖夢、ただいま帰りました」
「お帰りなさい妖夢~。どう?何か掴めたかしら?」
「はい。色々良い勉強になりました」
(あら~?本当に何か感じが変わったわね~)
幽々子はちょっと予想外だったようだ。
「そ~、それは良かったわ~。あら?それは何~?」
幽々子は妖夢の持っている紙袋を指差す。
「え?あ、これは私が紅魔館で着ていた物です。何でも、向こうも使い道が無いので持って行ってくれと・・・・・・・・・」
幽々子はそれを聞いてピーンと閃く。
「そうなの~、じゃあ、これから何日か置きにそれを着て仕事をしてね~」
「えぇ!?何でそうなるんですか!?」
当然、妖夢は反発する。
「あらあら~、妖夢は今回の事で色々掴めたんでしょ?それを忘れない為にはそれを思い出す事も重要よ~?」
(うふふ~メイド妖夢~メイド妖夢~)
が、言葉とは反対に頭ではそんな事を考えていた。
「解かりました。では、三日に一度くらいはこの服を着て仕事を致します」
「あらあら~?別に毎日でも良いのよ~?」
(寧ろ、毎日着なさいな~)
「いや、それは流石に・・・・・・・・・」
(残念ね~、ま、良いわ)
「あ、それはそうと、この10日間、白玉楼はどうでしたか?」
普段は自分が掃除等をやっているので妖夢も少し気に掛かっていた。
自分が居ないのにまるで汚れていない白玉楼の様子に。
「ああ~、それなら藍が来て貴女の代わりを務めてくれたのよ~」
「藍さんが?それではお礼を言わないと・・・・・・・・・」
「藍ならあそこの部屋に居るわよ~」
そう言って幽々子は藍が居る部屋を指差した。
「解かりました」
妖夢は藍が居る部屋へと向かった
「藍さん、よろしいでしょうか?」
妖夢が襖越しに声を掛ける。
「妖夢・・・か?入ると良い・・・・・・」
妖夢はあれ?っと思った。
藍の声がやけに弱いのだ。
「失礼します。」
そう言って部屋に入る。
そこには
「藍さん!?」
布団に入って、やつれている藍が居た。
「ど、どうしたんですか!?その姿は!!」
10日間に及ぶ超広範囲の清掃業に、さしもの九尾の妖狐もダウンしてしまっていた。
が、それでも10日間耐えたのは凄い事だ。
「妖夢・・・・・・・・・私は君の事を低く見誤っていたようだ・・・・・・」
藍は妖夢にそう言う。
「え?」
「まさか・・・・・・君があれ程の事を毎日普通にこなしていたとは・・・・・・・・・」
「えぇっと・・・話が見えないのですが・・・・・・・・・」
「謙遜しなくて良い・・・・・・あんな広範囲の敷地の清掃を一人でして居たとは・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・・・・藍さん?」
「・・・何だ?」
「一人で・・・・・・やられたのですか?この白玉楼の清掃を。」
「屋敷と庭を1日ずつ交互に、だがね。君と同じ事をやっただけさ。」
「え~っと・・・・・・・・・私でも、お手伝い幽霊と一緒にやってるんですが・・・・・・・・・・・・・」
「な・・・に・・・・・・?」
「一人であんな広範囲の掃除なんて一日で出来ませんよ」
「ば・・・か・・・な・・・・・・」
藍の頭に紫の言葉が思い浮かばれる。
「今日は貴女には一人で庭掃除をして貰うわ」
「妖夢はこの程度、普通にこなしていると言うのにねぇ・・・・・・」
騙された。
また騙されたのだ。
あの愉快犯な主に。
そして
藍の頭に誰かの言葉が突如として響いた。
この世に悪が在るとすれば・・・・・・・・・・・・・・・
それは八雲紫だ・・・・・・
「うごふぅ!!」
「ら、藍さん!?」
藍は突如血を吹いた。
「え?あ!ら、藍様ぁぁぁぁぁ!!!」
藍の名前が叫ばれた事で、橙が駆け付け、そしてその様子を見て悲鳴を上げる。
「藍さん!しっかり!!藍さん!!」
「藍様ぁぁ!!死んじゃダメ!!藍様ぁぁぁ!!!」
「ちぇ、橙・・・・・・」
藍が絞り出すように声を出す。
「何!?藍様!!」
「あ、あの油揚げを紫様に届けておくれよ・・・・・・・・・あれは・・・・・・良い物だ・・・!!」
「藍様!あの油揚げって何!?藍様!!藍様ぁぁぁ!!!」
「藍さん!!しっかりして下さい!!藍さん!!!」
「パトラッシュ・・・・・・私はもう疲れたよ・・・・・・・・・」
「パトラッシュって誰!?藍様!!逝っちゃダメ!!藍様ぁぁぁぁぁ!!!」
「幽々子様!!紫様!!藍さんが!!藍さんがぁぁぁ!!!」
「紫様!!紫様ぁぁぁぁ!!!」
マヨヒガ
「う・・・・・・」
ひんやりとした感覚で藍は目を覚ます。
「あら?漸く起きたわね、藍」
「紫様・・・・・・?私は・・・・・・・・・」
「貴女、行き成り血を吹いて倒れたのよ」
「・・・・・・・・・・・・思い出しました」
紫に謀られた事で我慢していた物が血と一緒に噴き出したのだ。
「まったく・・・橙は真っ青になって取り乱すし、永遠亭に貸しは作るし。散々よ?」
「う・・・・・・いや、しかし、あれは紫様が・・・・・・・・・」
「はい、これでも食べて少しは力を取り戻しなさい。」
言葉を遮って差し出されたのは、高級な油揚げを使った料理の数々。
「・・・・・・ありがとうございます。あ、橙は?」
「隣見てみなさい」
言われて隣を見ると、布団で寝ている橙が居た。
「貴女が起きるまで看病するって聞かなくてね・・・・・・でも、その娘に看病させると貴女の症状が悪化しそうだしねぇ」
つまりは実質、紫が看病していたと言う事だ。
「ご迷惑をお掛けしました」
元はと言えば紫の所為なのだが、それでも藍はそう言う。
「貴女に倒れられると私がグータラ出来ないのよ。さっさと回復しなさい」
「・・・・・・・・・はい」
そう言って紫は去って行った。
「やれやれ・・・・・・結局また誤魔化されたか・・・・・・・・・・・・」
紫の所為で倒れたとは言え、看病に加えてここまで手を尽くした料理を出されては何も言う気も起きない。
「何時になっても・・・上手い事乗せられているな・・・・・・私は」
軽く笑みを浮かべながら、藍はそう呟く。
口に入れた料理は何処までも美味しかった。
-了-
本編の方を先に呼んでから読む事をお勧めします
料理対決のあった日の晩
「紫~紫~」
そろそろ寝ようかと思っていた紫は、突然呼び付けられる。
無論、そんじょそこらの奴らの呼び声になら紫は応えない。
だが、この声の主は彼女の親友、西行寺幽々子の物だった。
「何か用かしら?幽々子。私そろそろ寝るんだけど」
隙間を抜けて白玉楼の幽々子の前に姿を現す紫。
「あ、ごめんね~。ちょっと頼みたい事があってね~」
「頼みたい事?何かしら?」
なんだかんだと言うが、基本的に紫は親友である幽々子の頼みを断らない。
余程無茶な頼みや、下らないのは断るのだろうが。
案外、義理堅い性格なのかもしれない。
まぁ、その対象はごく一部に限られるのだが。
「さっきね~妖夢に明日から紅魔館に行くように命じたのよ~」
「さしずめ、今日の結果の罰と言ったところかしら?」
「そうなのよ~」
「酷い話ねぇ・・・・・・」
「あら?何が~?」
「別段、妖夢の配慮はそこまで悪くは無かったでしょうに。度が外れて貴女贔屓にしてたんじゃないんだから」
「やっぱりバレてた~?」
「バレバレよ。大方ちょっとしたミスに言いがかり付けて、後で妖夢をいじめようって魂胆だったんでしょう?」
「流石紫ね~、その通りよ~」
本当に酷い話である。
「それで?頼みと言うのは?」
「そうそう、それで妖夢が紅魔館に行くんだけど・・・・・・・・・あそこって従者って言うより、メイドじゃない?」
その一言で紫はピーンと来る。
「なるほどね・・・・・・妖夢にメイド服を着せたいのね?」
「流石ね~、頼めるかしら?」
「メイド妖夢・・・・・・・・・ね」
紫はメイド服を着た妖夢を思い浮かべる。
「・・・・・・・・・イイわね」
「でしょ~?」
紫も幽々子もニヤリとした口元を扇子で隠す。
「でも、どうやって着て貰おうか悩んでたのよ~。持って行かせても着ないでしょうしね~」
「そう言う事なら任せなさい」
「あら~?妙案でもあるの~?」
「ええ、あるわ。それじゃ、さっそく準備に取り掛からないとね」
「お願いね~」
「任せなさい。それにしても、幽々子。良く報せてくれたわね」
「ふふふ~、こう言うのは一緒に楽しまないと~♪」
「ふふふ・・・貴女が親友でよかったわ」
「あらあら、私もよ~♪」
そして紫は隙間を開けて出て行った。
数時間後
「ただいま、幽々子」
「あら~、お帰りなさい、紫。どうだった?」
「勿論、上手く行ったわ。ついでだから明日から一緒に来るうどん娘のも用意してあげたわ」
「あら?あの娘も?それは良いわね~」
「所で幽々子。妖夢が居ない間どうするのよ?」
「あ、それなんだけど、紫の所にお世話になろうかな~って」
「私は構わないけど、白玉楼がそれじゃまずいでしょ。良いわ、私達がこっちに来てあげるわ」
「そう~?わるいわね~」
「あら?別に良いのよ。白玉楼って割と好きだしね、私も」
「それは良かったわ~」
「じゃあ、明日になったら藍と橙を連れてくるわね」
「橙も?」
「本当は藍だけで十分なんだけど・・・・・・橙をマヨヒガに一人残すわけにも行かないし、かと言って式神剥がしたら大変な事になるのよねぇ・・・・・・」
大変な事とは、橙は式神から妖怪に戻ってしまうと野生の方が強く表に出てしまうので、野良妖怪の如く暴れるのだ。
元々、そんなに力は強い訳ではないが、その所為で人の里に迷惑をかけると後々面倒になる。藍が。
「なるほどね~」
「ま、そう言う事だから明日からよろしくね、幽々子」
「こちらこそお願いね~」
幽々子の「お願い」とは面倒を見てもらう事でなく、別の事である。
そして、それは当然紫も承知している。
「任せておきなさい。妖夢にうどん娘。隙間妖怪の恐怖、とくと味わうが良いわ。」
カメラを何処からとも無く取り出してそう言う紫。
確かに、恐怖だ。
今ここに、幻想郷最強にとどまらず、最凶の妖怪が誕生しようとしていた。
色んな意味で。
翌日
「おはよう、幽々子」
「あら、おはよう紫」
紫は昨晩の言葉どおり、藍と橙を連れてきた。
「主ともども、10日間お世話になります」
「なります~」
藍が礼をし、橙がそれに倣う。
「ええ、こちらこそよろしくね~」
「さて、それじゃ藍には妖夢と同じ仕事をして貰うわよ。まずは朝ご飯作ってきて」
「はい」
紫にそう言われ、藍は朝食の準備に向かった。
朝食を終え、藍は紫に呼ばれた。
「じゃあ、藍。私から仕事の方を説明するわ」
「はい」
「今日は貴女には一人で庭掃除をして貰うわ」
「庭掃除・・・・・・ですか」
普通なら、なんだその程度か、と思うが、それは甘い考えである。
何故なら白玉楼の庭はとんでもなく広い。
どれくらいかというと、向こう側が見えないくらい。
広さの幅の単位がメートルでなくキロで表される広さだ。
「あの・・・・・・どの辺りまでですか?」
「何寝ぼけたこと言ってるの?庭掃除といったら庭掃除。全部よ」
「えぇぇ!?」
驚くのは当然だ。
こんな文字通り果てが見えない庭を一人でなんて無理がある。
「え~っと・・・・・・今日はどの辺りまでやれれば良いんでしょうか?」
取り敢えず、今日分のノルマを尋ねてみる藍。
「何度も同じ事言わせないで頂戴。全部よ」
「いや、あの・・・・・・」
「あら?出来ないの?」
「普通に無理かと・・・・・・・・・」
「藍・・・貴女には失望したわ」
ふぅ、と溜め息を吐きながら紫は言う。
「いや、しかし、この距離は・・・・・・・・・」
「妖夢はこの程度、普通にこなしていると言うのにねぇ・・・・・・貴女、妖夢以下だったのね」
藍は頭をハンマーでガンッ!!と殴られた様な衝撃を受けた。
(私が・・・・・・妖夢以下!?)
別段、藍も妖夢の能力が低いと思っているわけではない。
だが、それでも妖夢よりも自分の方が長く生き、その上、地力や己を使っている主の能力も自分の方が上だ。
その妖夢より下と見られるのは正直プライドが許さない。
「解かりました・・・・・・・・・八雲紫が式、八雲藍。その力をお見せいたしましょう」
怒っている様な目つきになって藍はそう言う。
「ふふふ・・・・・・それじゃあ、見せて貰おうかしら」
「ええ、存分に」
そう言って藍は庭掃除に取り掛かった。
「ああ、そうそう。お昼ご飯と晩御飯はちゃんと作りなさいね」
「承知!」
勢い良くそう返答して、藍は掃除をする。
「さて、私も「お仕事」しに行きましょうかね~。もう、折角今日からグータラしようと思ってたのに♪」
そう言う紫の顔は、何処までも楽しそうだった。
その日の夕方
「ただいま~」
紫は「お仕事」から帰還した。
「お・・・おかえりなさいませ、紫様」
息をゼィゼィ切らせながら藍が出迎えた。
「あら?藍。掃除は終わったの?」
「さ、先程終わらせました・・・・・・・・・・・・・」
「良く頑張ったわね。それじゃ、晩御飯の準備もよろしくね」
「ぎょ、御意・・・・・・」
ぐったりしながらも返答し、晩御飯の準備に取り掛かる藍。
当然、その晩は藍は食事に箸を付けるどころか、作り終えた瞬間、布団に入って泥のように眠った。
翌日
思いっきり寝たお陰で、藍も大分回復している。
しかし、寝なくても平気なはずの妖怪をここまで疲弊させるとは・・・・・・
白玉楼の庭掃除とはかくも大変な物なのか。
「じゃあ、藍。今日の仕事を言い渡すわ」
朝食後、再び紫は藍を呼び寄せてそう告げる。
「はい」
「今日はこの屋敷の掃除よ。無論、一人で全部」
「は・・・はい・・・・・・」
反論したかったが、どうせまた同じ事を言われるのだろう。
それに、恐らくは妖夢が一人で出来ている仕事。
自分に出来ない訳は無い。
そう言い聞かせて藍は今日も働く。
5日目
藍の仕事は庭掃除と屋敷掃除を一日おきに交互にやっていた。
因みに橙は気ままに遊んでいた。
まぁ、紫に藍の手伝いはするなと言われているのだが。
そしてその晩
「藍も頑張るわね~」
既に布団の中でばたんきゅ~してる藍の事を褒める幽々子
「まぁ、私の式だもの」
「そうね~」
「それより、幽々子。ちょっと妖夢がまずそうよ」
「まずい?」
「失敗がかさんだ所為ね。結構落ち込んでたわ」
「しょうがない娘ね~。紫、私を連れてってくれる?」
「ええ、そのつもりだわ」
そう言って紫は隙間を広げる。
そして、幽々子と一緒にその中へと入って言った。
紅魔館・妖夢の借り部屋
「うぅ・・・・・・死ぬほど恥ずかしかった・・・・・・・・・」
妖夢は頭を抱えていた。
「いくら何でもこんな短いスカートで・・・いや、でも、だからこそ・・・・・・いや、しかし・・・・・・・・・」
「妖夢~頑張ってる~?」
幽々子は隙間から抜け出て妖夢に声を掛けた。
「幽々子様!?」
妖夢は驚いて幽々子の方を振り向く。
(ああ・・・・・・メイドな妖夢・・・凄くイイわ。想像してたよりずっとイイわ・・・・・・・・)
幽々子は妖夢を見てそんな事を考えていた。
「あら~?どうしたの妖夢~。元気が無いわよ~?」
幽々子がそう言うと
「う・・・・・・幽々子様・・・・・・・・・ゆゆござまぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢は泣きながら幽々子の胸に飛び込んできた。
「あらあら、どうしたの~?妖夢」
(ああ、ダメよ、妖夢。今の貴女は可愛すぎるわ・・・・・・)
が、当の幽々子の頭の中はこうだった。
「うぅぅ・・・・・・メイド長が・・・スカートが・・・・・・ナイフが・・・スカートが・・・・・・黒い悪魔が・・・スカートがぁぁぁ・・・・・・・・・」
(とっても似合ってるのに、その短いスカート)
妖夢の心、幽々子知らず。
「あらあらあら、顔を上げなさい妖夢」
「ゆゆござまぁぁぁぁ・・・・・・」
言われて妖夢は顔を上げた。
「あらあら、ダメよ妖夢。そんな顔しちゃ」
(凄くイジメたくなっちゃうでしょう・・・・・ああ、凄いわこの娘。可愛すぎるわ・・・・・・もうお持ち帰りしたいくらい)
幽々子の頭は半分以上暴走しかかっていた。
と言うか、お持ち帰りしなくても5日後には帰ってくるだろうに。
「私は信じてるわよ~妖夢。貴女が成長して帰ってきてくれる事を」
(もっと可愛く成長してくる事をね~♪だから、今はお持ち帰りを我慢するわ)
誰か止めた方が良いのではなかろうか?
「ぐずっ・・・・・・すみません、みっともない所を・・・・・・・・・」
「良いのよ~、偶には甘えても~」
(と言うより、もっと甘えなさい。それはもう愛で回したくなる位に)
幽々子の目が怪しくなりつつあるが、妖夢は気付いていない。
「いえ、もう大丈夫です。」
(あら~?残念ね~)
「そぉ~?じゃあ、そろそろ私は帰るわね~」
(あまり居すぎると、歯止めが利かなくなりそうだしね~)
一応、自分でセーブは出来ていたようである。
現状は、であるが。
そして幽々子は隙間へと入り、帰って行った。
白玉楼
「お帰りなさい、幽々子」
「ただいま、紫」
「どうだった?」
「よかったわ~。あそこまで良いとは思わなかったわ~」
「そう?でもこれを見るともっとイイわよ?」
「どれどれ~?」
そう言って紫が差し出したのは、その日に魔理沙が来てスカートが捲れ上がった二人の写真。
横から、下着も懸命な顔でスカートを抑えている妖夢の表情も見える角度で撮ってある。
因みに鈴仙Verもある。
天狗よりも遥かに凄い撮影技術を持っているのではなかろうか?
それにしても、境界を操る能力を無駄な方面に使い過ぎである。
「ああ・・・・・・やっぱり妖夢はイイわ~」
その写真を見ながらうっとりする幽々子。
「それなんだけど、幽々子」
「何~?」
「今度こんなの着せて見ない?」
そう言って紫が出したのはメイド服のカタログ。
「あら~こんなに一杯有るのね~」
「ええ、私も正直驚いたわ」
「でも、何でこんな物を?」
「あら?愚問ね。可愛い者ってより可愛く着飾ってみたくならない?」
「うふふ~解かるわ~」
もはや二人の着せ替え人形と化している妖夢。
「でも、こんなの何処で取り扱ってるの~?」
「外の世界のアキハバラと言う聖地よ」
「へ~・・・・・・外の世界にもまだ「聖地」なんて物があるのね~」
「まぁ、ちょっと歪んだ「聖地」だけどね」
「そうなの~、あ、所で藍とかには着せないの?」
「ん~・・・・・・藍は着てくれそうに無いのよね~」
「でも、藍なら短いのよりこの長いのが似合いそうよね~」
「そうねぇ・・・・・・あ、これなんて橙に似合いそうね」
「あ~、橙も短いのが似合いそうね~」
「あの門番中国ちゃんも長いのとか似合いそうだわ」
「霊夢はどっちかしら~?」
「霊夢は短いのかしらね?魔理沙はまぁ、殆どそのまんまよね」
「レミリアとかも短いの着せたら似合いそうね~」
「似合うでしょうね~、まぁ、使用人の服なんてあの娘が着るとは思えないけどね」
「残念ね~」
「本当にねぇ・・・あ、これなんてあのワーハクタクに着せたら似合いそうだわ」
幻想郷女子メイド化計画が発動しそうな気配がここにあった。
そして10日目
その後は紅魔館の方でも特に何も無く(表面上は)、妖夢が帰って来る日になった。
「やっと妖夢が帰ってくるわ~」
「やっぱ居ないと寂しい?」
「そうね~、遊べないのは寂しかったわね~」
最早オモチャである。
そして夜になり、妖夢が帰ってきた。
「幽々子様。魂魄妖夢、ただいま帰りました」
「お帰りなさい妖夢~。どう?何か掴めたかしら?」
「はい。色々良い勉強になりました」
(あら~?本当に何か感じが変わったわね~)
幽々子はちょっと予想外だったようだ。
「そ~、それは良かったわ~。あら?それは何~?」
幽々子は妖夢の持っている紙袋を指差す。
「え?あ、これは私が紅魔館で着ていた物です。何でも、向こうも使い道が無いので持って行ってくれと・・・・・・・・・」
幽々子はそれを聞いてピーンと閃く。
「そうなの~、じゃあ、これから何日か置きにそれを着て仕事をしてね~」
「えぇ!?何でそうなるんですか!?」
当然、妖夢は反発する。
「あらあら~、妖夢は今回の事で色々掴めたんでしょ?それを忘れない為にはそれを思い出す事も重要よ~?」
(うふふ~メイド妖夢~メイド妖夢~)
が、言葉とは反対に頭ではそんな事を考えていた。
「解かりました。では、三日に一度くらいはこの服を着て仕事を致します」
「あらあら~?別に毎日でも良いのよ~?」
(寧ろ、毎日着なさいな~)
「いや、それは流石に・・・・・・・・・」
(残念ね~、ま、良いわ)
「あ、それはそうと、この10日間、白玉楼はどうでしたか?」
普段は自分が掃除等をやっているので妖夢も少し気に掛かっていた。
自分が居ないのにまるで汚れていない白玉楼の様子に。
「ああ~、それなら藍が来て貴女の代わりを務めてくれたのよ~」
「藍さんが?それではお礼を言わないと・・・・・・・・・」
「藍ならあそこの部屋に居るわよ~」
そう言って幽々子は藍が居る部屋を指差した。
「解かりました」
妖夢は藍が居る部屋へと向かった
「藍さん、よろしいでしょうか?」
妖夢が襖越しに声を掛ける。
「妖夢・・・か?入ると良い・・・・・・」
妖夢はあれ?っと思った。
藍の声がやけに弱いのだ。
「失礼します。」
そう言って部屋に入る。
そこには
「藍さん!?」
布団に入って、やつれている藍が居た。
「ど、どうしたんですか!?その姿は!!」
10日間に及ぶ超広範囲の清掃業に、さしもの九尾の妖狐もダウンしてしまっていた。
が、それでも10日間耐えたのは凄い事だ。
「妖夢・・・・・・・・・私は君の事を低く見誤っていたようだ・・・・・・」
藍は妖夢にそう言う。
「え?」
「まさか・・・・・・君があれ程の事を毎日普通にこなしていたとは・・・・・・・・・」
「えぇっと・・・話が見えないのですが・・・・・・・・・」
「謙遜しなくて良い・・・・・・あんな広範囲の敷地の清掃を一人でして居たとは・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・・・・・・・藍さん?」
「・・・何だ?」
「一人で・・・・・・やられたのですか?この白玉楼の清掃を。」
「屋敷と庭を1日ずつ交互に、だがね。君と同じ事をやっただけさ。」
「え~っと・・・・・・・・・私でも、お手伝い幽霊と一緒にやってるんですが・・・・・・・・・・・・・」
「な・・・に・・・・・・?」
「一人であんな広範囲の掃除なんて一日で出来ませんよ」
「ば・・・か・・・な・・・・・・」
藍の頭に紫の言葉が思い浮かばれる。
「今日は貴女には一人で庭掃除をして貰うわ」
「妖夢はこの程度、普通にこなしていると言うのにねぇ・・・・・・」
騙された。
また騙されたのだ。
あの愉快犯な主に。
そして
藍の頭に誰かの言葉が突如として響いた。
この世に悪が在るとすれば・・・・・・・・・・・・・・・
それは八雲紫だ・・・・・・
「うごふぅ!!」
「ら、藍さん!?」
藍は突如血を吹いた。
「え?あ!ら、藍様ぁぁぁぁぁ!!!」
藍の名前が叫ばれた事で、橙が駆け付け、そしてその様子を見て悲鳴を上げる。
「藍さん!しっかり!!藍さん!!」
「藍様ぁぁ!!死んじゃダメ!!藍様ぁぁぁ!!!」
「ちぇ、橙・・・・・・」
藍が絞り出すように声を出す。
「何!?藍様!!」
「あ、あの油揚げを紫様に届けておくれよ・・・・・・・・・あれは・・・・・・良い物だ・・・!!」
「藍様!あの油揚げって何!?藍様!!藍様ぁぁぁ!!!」
「藍さん!!しっかりして下さい!!藍さん!!!」
「パトラッシュ・・・・・・私はもう疲れたよ・・・・・・・・・」
「パトラッシュって誰!?藍様!!逝っちゃダメ!!藍様ぁぁぁぁぁ!!!」
「幽々子様!!紫様!!藍さんが!!藍さんがぁぁぁ!!!」
「紫様!!紫様ぁぁぁぁ!!!」
マヨヒガ
「う・・・・・・」
ひんやりとした感覚で藍は目を覚ます。
「あら?漸く起きたわね、藍」
「紫様・・・・・・?私は・・・・・・・・・」
「貴女、行き成り血を吹いて倒れたのよ」
「・・・・・・・・・・・・思い出しました」
紫に謀られた事で我慢していた物が血と一緒に噴き出したのだ。
「まったく・・・橙は真っ青になって取り乱すし、永遠亭に貸しは作るし。散々よ?」
「う・・・・・・いや、しかし、あれは紫様が・・・・・・・・・」
「はい、これでも食べて少しは力を取り戻しなさい。」
言葉を遮って差し出されたのは、高級な油揚げを使った料理の数々。
「・・・・・・ありがとうございます。あ、橙は?」
「隣見てみなさい」
言われて隣を見ると、布団で寝ている橙が居た。
「貴女が起きるまで看病するって聞かなくてね・・・・・・でも、その娘に看病させると貴女の症状が悪化しそうだしねぇ」
つまりは実質、紫が看病していたと言う事だ。
「ご迷惑をお掛けしました」
元はと言えば紫の所為なのだが、それでも藍はそう言う。
「貴女に倒れられると私がグータラ出来ないのよ。さっさと回復しなさい」
「・・・・・・・・・はい」
そう言って紫は去って行った。
「やれやれ・・・・・・結局また誤魔化されたか・・・・・・・・・・・・」
紫の所為で倒れたとは言え、看病に加えてここまで手を尽くした料理を出されては何も言う気も起きない。
「何時になっても・・・上手い事乗せられているな・・・・・・私は」
軽く笑みを浮かべながら、藍はそう呟く。
口に入れた料理は何処までも美味しかった。
-了-
妖夢と藍は、今後も苦労しつつ頑張っていくんだろうなぁ…涙が出そう。
>幻想郷女子メイド化計画
発動日はいつですかwww
妖夢はゆゆ様におもちゃにされてこそだと思うんですよw最高w
一連の作品、どれもなかなかにおもしろく、楽しく読ませていただきした。
ただ、一つ気になったことがあるのでそれをちょいと。
ゆゆ様の口調なんですが、語尾にほぼ常に「~」がついてますよね。
のんびりとした感じを表すにはたしかにいい表現だと思うのですが、そればかりだと何だか物足りない、というか、もう少し工夫してもいいかな、と。
例えば「……よ~」だけでなく「……よぉ」や「……よぅ」なんかも混ぜてみるとか。
それだけでも結構表現の幅が広がるかと思います。
まあ、所詮しがない木っ端物書きの言うことなので、軽くスルーしてくださっても結構です。
一応こんな意見もありますよ、ってなぐらいです。気分を害されたのであれば謝ります。
それでは、次の作品も楽しみにしております。
なるほど、大変参考になります。
自分でもどうしようかと悩んでた所なので助かりました^^
だが、そこが良い。
メイド服に着替えてみては・・・
絶対に似合うから。
順番に読んでいたことで
非常に楽しめました。
ありがとうございました。
それは八雲紫だ・・・・・・
テイル○オブファンタジ○もすきだからこれでめっちゃ吹いたわ