紫は能力が一切使えずにただの「人間のような妖怪」になっていた
原因は不明で、本人にも心当たりがないと言う
はたしてこれは神のいたずらか、運命の仕業なのか
だれにもわからない
~朝:神社~
霊夢がマヨヒガから戻るころには日が昇り始め夜明けとなっていた
いまはまぶしい日光が境内に降り注ぐ
霊夢はいつもどおりに境内の掃除から始める
「少し眠いなぁ・・・まぁこれぐらないなら何ともないし」
リズムよく箒を降りゴミを集めていく
「それにしても原因なんだろう・・・・」
掃除をしながら霊夢は考える
そこに紫の声が響く
「霊夢~、朝食できたわよ~」
「は~い」
返事をしつつ神社に向かった
~神社:居間~
居間には朝食が並ぶ
スタンダートに軽めな献立だった
「んー、まともな朝食は久しぶりだわぁ」
「ふふふ」
霊夢が少し涙目でご飯をほおばる
「そういえば紫。あんた昼間睡眠とらなくても大丈夫?」
紫は典型的なタイプの妖怪で
主な活動時間が夜であり
昼間は寝ていることが多い
「なんかね、能力使えないから寝なくても大丈夫みたいなのよ」
「力使わないから?」
「じゃないかしら。」
「ふ~ん」
まぁいいか、といつもの結論に達する霊夢
今重要なのは寝る寝ないではなく能力が戻る戻らないである
食後のお茶をすすりつつ霊夢は紫に話す
「落ち着いて考えたんだけどさ、もし完全に能力がなくなったなら幻想郷の結界やらもなくなるんじゃないかな?」
「そーいわれてみれば・・・」
「んでね、いまのところ弱まった感じはしないし、いつもどおりなのよ」
「つまり完全には能力が失われたわけじゃないと?」
「私の勘だけどね」
確かに言われてみれば、という顔でなるほどと紫は納得する
もし完全に能力が無くなれば幻想郷は存在できないのである
しかし未だ幻想郷に異変はなく、いつもどおりである
このことから完全に能力がなくなったわけじゃない、と理論付けることが出来る
「あんたがいったとおり、そのうちもどるかもね」
「かもしれないわねぇ。むしろそうあってほしいわ」
「ついでに聞くけど、通常弾幕も使えないの?」
「使えないわねぇ。」
「じゃあ完全に人間状態ね」
「あら、いつでも人間味ある妖怪のつもりよ?」
「聞き飽きた」
そんな会話をしていると空から高速で降りてくる黒い影があった
「よー霊夢!遊びに来たぜ~」
魔理沙である
「あら、おはよう」
「うを、なんでこんな時間から紫がいるんだ?」
「気まぐれよ気まぐれ」
そういって紫はお茶をすする
「ふーん、じゃあちょうどいい!弾幕ごっこしようぜ!昼間からやりあえるなんて滅多にないしな!」
「ぐ・・・今そんな気分じゃないからパス」
「あー?まぁイヤならしょうがないか。霊夢~私にもお茶くれ~」
「あーはいはい」
紫は内心あせったがうまく回避できたのでホッとした
3人で縁側に座りつつお茶をすする
「あ、そうだ。霊夢霊夢」
「なに魔理沙」
「今日、ここで宴会やろうと思って来たんだよ!すっかり忘れてた」
「また宴会?3日前やったばかりじゃない」
「宴会に過去も未来も無いぜ」
「なにその理論・・・」
「というわけで私は人集めてくるから霊夢は準備頼む!んじゃなー!」
「ああー!まったく・・・なんてすばやい」
待ってと手を伸ばしたが時すでに遅し、白黒の少女は空のかなたに消えた
「ああいったら止まらないし、準備しますかね。まったく片付ける身にもなりなさいよ」
「いいじゃない、宴会くらい。それに今回は私もいるし」
ニコニコと笑顔の紫を見て
「まぁいっか・・・・サボらないでよ?」
「はいはい」
霊夢はクギを刺すがやっぱ胡散臭い笑顔でニコニコしてる
「じゃあ私は料理の買出しにいってきますか」
紫はヨッと縁側から立ち上がる
「準備手伝ってくれるんじゃないの?」
「あら?料理材料仕入れるのも準備の一環よ。ということでヨロシク~」
そういうと紫はいつもの日傘をさし鼻歌を歌いながら階段を下りていく
「・・・・まぁいっか」
~人里へ向かう道~
紫は不思議な感触を身に感じていた
いつもは浮いて移動するため靴底が地面につく事は少ない
しかしいまは2本の足でしっかりと地面を踏みしめ歩いている
いままでスキマ1本あればどこでもいけたのに、いざ使えないと結構不便だなぁ
と、思っていた紫だが歩いているうちに
ああ、この感じも悪くない
と思っていた。
「それにしても神社から人里まで結構距離あるわね、これじゃ参拝客が少ないわ」
確かに神社から人里までの道のりは若干長い。
だがそれだけが参拝客が少ない原因ではない
もちろんもう1つの理由も紫は重々知っている
「・・・・ふふふ」
何を思ったか笑みがこぼれる紫
こういう暮らしも悪くない
みんなと騒がし楽しくできれば
そして笑顔でいられれば
そう思いつつ、宴会に出す献立を考える
ガサッガサッ
「?!」
紫は音がする方を睨みつける
ちょうどここは森に近い場所にある道
ここを抜ければすぐ人里につくのだが
「・・・ちょっと時間かかりそうね」
さらに音の数は増える
ガサガサガサガサ
「まぁ低級妖怪なら相手に・・・・しまった」
そう紫は一瞬忘れていた
自分が今
人間のような妖怪だということを
弾幕すら張れない妖怪ということを
ほんの一瞬忘れていた
「・・・・どうしましょう」
徐々に音との距離が縮まる
このまま人里に逃げてもいいが
それでは人里に害が及ぶ
まして今の状態の紫では逃げ切れるかすら怪しい
「万事休す、てこのことかしらね」
大妖怪たるものが少し不安な表情をしている
そして
ガサリ
森の草むらから出てきたのは案の定低級妖怪
「ィタゾォ、人間ダァ」
「飯ダァ」
「低級な餓鬼ね・・・」
しかし弾1発すら撃てない
ここは1つ・・・
「あらあなた達、私を誰だと思って?偉大なるスキマ妖怪の八雲紫よ。
死にたく無かったらお逃げなさい。今なら見逃すわよ」
ハッタリをかけてみる
もちろん誰もが紫の強大さを知っている
人間も妖怪も
たいていは脅せば皆逃げ惑う
「(一か八かだけどね」
顔は余裕の笑みを浮かべているが
内心は冷や汗をかいている
そして1匹の餓鬼が
「ォデ、知ッテル 今 コィッ能力ッカエナィ」
「?!」
ばれてた
紫の賭けは失敗だった
どこでどうバレたかわからないが
これによりピンチになったことは変わらない
「ナラ食ベレル」
「クエル」
「クエルゥウウウウ」
徐々に紫と距離を詰めて行く
「くっ・・・・」
弾は撃てない、スペルも使えない、式神も仕えない
まさに1人の人間女性が妖怪に襲われるときと同じだ
「クエルゥウウウウウ!!!」
1匹の餓鬼が紫に飛びかかる
「?!」
紫は目を瞑り両手で頭をガードする
しかし痛みもなにもない
恐る恐る目を開けると
そこには美しい蝶を従え
優雅に美しく扇子を振り
青白い衣装に身を包んだ女性がいた
「だいじょうぶ?紫」
「幽々子・・・」
「もうだいじょうぶよぉ。あとはヨロシクね、妖夢」
「おまかせを・・・・ハァァ!!!」
妖夢の一振りで餓鬼が消滅する
「低級妖怪ごときが・・・」
チンッと刀を鞘に収める
「お怪我はありませんか紫様」
「あ、ええ。だいじょうぶよ」
「も~心配したんだから~」
幽々子が紫に抱きつく
「あ、ごめんなさい。・・・誰から私の事を?」
「あの子が知らせてくれたのよ~」
そういうと幽々子は空を指差す
そこには白くかわいらしい衣装に身を包み絶え間ない笑顔で飛翔する妖精がいた
「・・・・なんであの子が冥界に・・・・?」
「・・・・すみません、幽々子様の命令で捕獲したんです」
妖夢が恥ずかしそうに説明を続ける
「捕まえたのは今朝で連れて行ったら必死でなにか喋っているもので」
「で、聞いてみたら紫が能力使えないってことがわかってね~、心配でこっちきちゃったのよー」
「まさに棚から牡丹餅。そしてあなたを探していたところ先ほどの場面に遭遇したわけです」
少し涙目で抱きついてくる幽々子と
申し分けなさそうにしている妖夢が頼もしく紫の目に映る
「・・・ありがとう。」
「いいのよぉ~。大事な友達でしょ」
「ふふ・・・あなたも災難だったわね」
紫は空を飛んでいる白い妖精リリー・ホワイトに目線を向ける
リリーは何事も無かったように笑顔で
『春ですよ~』
と口パクをして飛び去った
「・・・不幸中の幸い、てこのことね」
「ところで紫はなんでこんなところに?」
体を離しつつ幽々子が聞く
「今日、神社で宴会あるっていうから、料理の材料の買出しに人里に下りるところだったのよ」
「なるほどぉ~・・・・宴会・・・・」
「あ、目の色が変わった」
「・・・・降りてきて良かった~」
「あは、あはははは・・・・」
妖夢は頬を指でこすりながら苦笑した
「じゃあ妖夢に買い出しまかせて私達は神社にいきましょう~」
「いえ、最後まで自分でやるわ」
「でもさっきみたいに襲われたらどうするのよ~」
「そうですよ、買い出しは自分がしますから幽々子様と紫様は神社へお戻りください」
「お心遣い感謝するわ。でもやっぱここまで来たから最後まで『歩いて』やるわ」
「そぅー?そこまでいうなら止めないわ~。じゃあ一緒に行きましょう~」
「一緒?」
「そうよー、たまにはいいじゃない一緒に買い物。ねぇ~妖夢」
「御心配なく、2人は命に代えて御守りしますから」
「・・・・そうね、いいかもねこういうのも」
「それじゃー出発~」
「(幸せ者ね、わたしって」
危機を回避し賑やかに人里に向かった
~神社:境内宴会場~
ちょうどよい具合に桜が散る
その境内の中は今や大騒ぎの真っ最中である
姉妹は音楽を奏で、数人は霊夢を我の物とするために霊夢に押しかけ
あるものは静かに酒を飲み、あるものは飲まされ過ぎて沈んでいたり
あるものは料理に夢中で、あるものはいじられ続けている
そんな大騒ぎの中、紫は離れた場所で静かに飲んでいた
「・・・能力が使えなくても、いいかもね」
そこに魔理沙がやってきた
「なに雰囲気に浸ってるんだ?らしくないなぁ」
「あら、私はいつもこんなかんじよ?」
「そうか?・・・・ま、何があったか知らないが、紫は紫らしく生きて行けばいいとおもうぜ?」
「そうね、ふふふ」
「例え、能力が使えなくなったりしてもな~」
「むぐ・・」
「まぁまずないだろうけど!んじゃ飲みなおしてくるわー」
「・・・・びっくりしたわ」
一瞬ばれたかとおもったが、おそらく魔理沙が例えの一種として言っただけのようである
魔理沙がなにを感じて言ったかは不明だが彼女なりの励ましだったのだろう
「私らしく、か」
「紫様」
「あら、藍。おひさしぶり」
「お元気そうで・・・・といってもまだ1日くらいじゃないですか」
「ふふふ、そうね。迷惑かけたわね」
「いえ、紫様こそ大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ。落ち込んでいたりしたら私らしくないわ。」
「さすがです。」
「明日くらいにマヨヒガ帰るから、お迎えお願いね」
「喜んで!」
「ふふふ、頼りにしてるわ」
「しかし原因はなんでしょうね」
「さぁねぇ。でももうどうでも良くなって来た感じ。幻想郷は壊れてないし、結界も維持できてるし」
「そうですね、不思議な事があるものですね」
「だって幻想郷ですもの」
「なるほど」
そこに料理を抱えた幽々子がやってきた
「紫の料理おいしいわー」
「なんと紫様の料理?食べてみたい・・・」
「ふふふ、まだあるから食べてらっしゃい」
「本当ですか?いただいてきます!」
そういうと藍は宴会場へ向かう
「いい式神さんねぇ」
「そうね」
「ね~紫」
「なに?」
「また困ったら私の所にもきてもいいわよ~」
「ふふふ冥界に住めと?」
「うふふふ~」
「ふふ、考えておくわ」
「そうだ紫、そろそろ能力治っているか確かめたら~?」
「そういえば料理とかで忙しくて全然試してなかったわ」
「はい扇子貸してあげる、やってみて~」
「ありがと。でもまだ戻ってないかもね」
苦笑いしつつ扇子の先で空中をなぞる
すると
ビィィィィイイイイイイ
空間が避けてスキマが現れた
「!!」
「あらぁ、やったじゃないー。治ってるじゃない~」
「昨日は何も起きなかったのに・・・・」
「今日、いいことしたからかもね~」
「あら、私は常に善行してるわよ」
いつもどおりの笑顔で言葉を返す
その笑顔の中では表現できない感情があった
嬉しく泣き出しそうな気持ちを抑え
「じゃぁさらなる善行してきましょうかね」
「ほどほどにねー」
紫は立ち上がり宴会場に赴く
その姿を笑顔で幽々子が見送る
宴会場はまさに修羅場やら分けわからないことになっていた
その光景をみて
うふふふ
と怪しく胡散臭い笑顔をする紫
そう以前の彼女に戻ったのだ
笑顔で扇子をククッイと操る
すると霊夢を取り囲んでいた者達がいっせいにスキマに消えて別の場所にほっポリ出された
その光景を見て霊夢は紫をに視線を送る
「・・・・また騒がしくなるわね」
「退屈させないわよ?ふふふ」
「・・・・後片付け手伝ってよね」
「さぁどうしましょう」
扇子で口元を隠す紫
それを見て霊夢も少し微笑む
「こらー!スキマ妖怪!よくも霊夢から距離離したわね!覚悟しなさい!!」
スキマからほっポリ出された吸血鬼が叫ぶ
「あらあら、霊夢は私のおもちゃなんだからダメよ」
「だれがおもちゃか!」
「こうなったら霊夢をかけて勝負よ!スキマ妖怪!」
「私に挑むなんて・・・・いいわ、遊んであげる」
フフフフと万遍の笑みで紫はカードを取り出す
そして紫は深呼吸をして
「スペルカード発動!!四重弾幕結界!!!」
手にしたカードがまぶしく光を放ち、当たりに美しい弾幕を作り上げていった
突如、能力が使えなくなった原因はわからない
本人にも他人にもわからない
だけどそれはもうどうでもいいこと
現に彼女は幸せそうな顔をしているから
~朝:神社~
昨日の宴会の後始末に追われる巫女が1人いた
巫女はぶつぶつと愚痴をこぼしつつ片付けを進めている
コツコツ
そこに参拝階段を登ってくる音がする
その音を聞き巫女は階段へ視線を向ける
そして上って来た人物を確認すると
2人で微笑んだ
閉幕
原因は不明で、本人にも心当たりがないと言う
はたしてこれは神のいたずらか、運命の仕業なのか
だれにもわからない
~朝:神社~
霊夢がマヨヒガから戻るころには日が昇り始め夜明けとなっていた
いまはまぶしい日光が境内に降り注ぐ
霊夢はいつもどおりに境内の掃除から始める
「少し眠いなぁ・・・まぁこれぐらないなら何ともないし」
リズムよく箒を降りゴミを集めていく
「それにしても原因なんだろう・・・・」
掃除をしながら霊夢は考える
そこに紫の声が響く
「霊夢~、朝食できたわよ~」
「は~い」
返事をしつつ神社に向かった
~神社:居間~
居間には朝食が並ぶ
スタンダートに軽めな献立だった
「んー、まともな朝食は久しぶりだわぁ」
「ふふふ」
霊夢が少し涙目でご飯をほおばる
「そういえば紫。あんた昼間睡眠とらなくても大丈夫?」
紫は典型的なタイプの妖怪で
主な活動時間が夜であり
昼間は寝ていることが多い
「なんかね、能力使えないから寝なくても大丈夫みたいなのよ」
「力使わないから?」
「じゃないかしら。」
「ふ~ん」
まぁいいか、といつもの結論に達する霊夢
今重要なのは寝る寝ないではなく能力が戻る戻らないである
食後のお茶をすすりつつ霊夢は紫に話す
「落ち着いて考えたんだけどさ、もし完全に能力がなくなったなら幻想郷の結界やらもなくなるんじゃないかな?」
「そーいわれてみれば・・・」
「んでね、いまのところ弱まった感じはしないし、いつもどおりなのよ」
「つまり完全には能力が失われたわけじゃないと?」
「私の勘だけどね」
確かに言われてみれば、という顔でなるほどと紫は納得する
もし完全に能力が無くなれば幻想郷は存在できないのである
しかし未だ幻想郷に異変はなく、いつもどおりである
このことから完全に能力がなくなったわけじゃない、と理論付けることが出来る
「あんたがいったとおり、そのうちもどるかもね」
「かもしれないわねぇ。むしろそうあってほしいわ」
「ついでに聞くけど、通常弾幕も使えないの?」
「使えないわねぇ。」
「じゃあ完全に人間状態ね」
「あら、いつでも人間味ある妖怪のつもりよ?」
「聞き飽きた」
そんな会話をしていると空から高速で降りてくる黒い影があった
「よー霊夢!遊びに来たぜ~」
魔理沙である
「あら、おはよう」
「うを、なんでこんな時間から紫がいるんだ?」
「気まぐれよ気まぐれ」
そういって紫はお茶をすする
「ふーん、じゃあちょうどいい!弾幕ごっこしようぜ!昼間からやりあえるなんて滅多にないしな!」
「ぐ・・・今そんな気分じゃないからパス」
「あー?まぁイヤならしょうがないか。霊夢~私にもお茶くれ~」
「あーはいはい」
紫は内心あせったがうまく回避できたのでホッとした
3人で縁側に座りつつお茶をすする
「あ、そうだ。霊夢霊夢」
「なに魔理沙」
「今日、ここで宴会やろうと思って来たんだよ!すっかり忘れてた」
「また宴会?3日前やったばかりじゃない」
「宴会に過去も未来も無いぜ」
「なにその理論・・・」
「というわけで私は人集めてくるから霊夢は準備頼む!んじゃなー!」
「ああー!まったく・・・なんてすばやい」
待ってと手を伸ばしたが時すでに遅し、白黒の少女は空のかなたに消えた
「ああいったら止まらないし、準備しますかね。まったく片付ける身にもなりなさいよ」
「いいじゃない、宴会くらい。それに今回は私もいるし」
ニコニコと笑顔の紫を見て
「まぁいっか・・・・サボらないでよ?」
「はいはい」
霊夢はクギを刺すがやっぱ胡散臭い笑顔でニコニコしてる
「じゃあ私は料理の買出しにいってきますか」
紫はヨッと縁側から立ち上がる
「準備手伝ってくれるんじゃないの?」
「あら?料理材料仕入れるのも準備の一環よ。ということでヨロシク~」
そういうと紫はいつもの日傘をさし鼻歌を歌いながら階段を下りていく
「・・・・まぁいっか」
~人里へ向かう道~
紫は不思議な感触を身に感じていた
いつもは浮いて移動するため靴底が地面につく事は少ない
しかしいまは2本の足でしっかりと地面を踏みしめ歩いている
いままでスキマ1本あればどこでもいけたのに、いざ使えないと結構不便だなぁ
と、思っていた紫だが歩いているうちに
ああ、この感じも悪くない
と思っていた。
「それにしても神社から人里まで結構距離あるわね、これじゃ参拝客が少ないわ」
確かに神社から人里までの道のりは若干長い。
だがそれだけが参拝客が少ない原因ではない
もちろんもう1つの理由も紫は重々知っている
「・・・・ふふふ」
何を思ったか笑みがこぼれる紫
こういう暮らしも悪くない
みんなと騒がし楽しくできれば
そして笑顔でいられれば
そう思いつつ、宴会に出す献立を考える
ガサッガサッ
「?!」
紫は音がする方を睨みつける
ちょうどここは森に近い場所にある道
ここを抜ければすぐ人里につくのだが
「・・・ちょっと時間かかりそうね」
さらに音の数は増える
ガサガサガサガサ
「まぁ低級妖怪なら相手に・・・・しまった」
そう紫は一瞬忘れていた
自分が今
人間のような妖怪だということを
弾幕すら張れない妖怪ということを
ほんの一瞬忘れていた
「・・・・どうしましょう」
徐々に音との距離が縮まる
このまま人里に逃げてもいいが
それでは人里に害が及ぶ
まして今の状態の紫では逃げ切れるかすら怪しい
「万事休す、てこのことかしらね」
大妖怪たるものが少し不安な表情をしている
そして
ガサリ
森の草むらから出てきたのは案の定低級妖怪
「ィタゾォ、人間ダァ」
「飯ダァ」
「低級な餓鬼ね・・・」
しかし弾1発すら撃てない
ここは1つ・・・
「あらあなた達、私を誰だと思って?偉大なるスキマ妖怪の八雲紫よ。
死にたく無かったらお逃げなさい。今なら見逃すわよ」
ハッタリをかけてみる
もちろん誰もが紫の強大さを知っている
人間も妖怪も
たいていは脅せば皆逃げ惑う
「(一か八かだけどね」
顔は余裕の笑みを浮かべているが
内心は冷や汗をかいている
そして1匹の餓鬼が
「ォデ、知ッテル 今 コィッ能力ッカエナィ」
「?!」
ばれてた
紫の賭けは失敗だった
どこでどうバレたかわからないが
これによりピンチになったことは変わらない
「ナラ食ベレル」
「クエル」
「クエルゥウウウウ」
徐々に紫と距離を詰めて行く
「くっ・・・・」
弾は撃てない、スペルも使えない、式神も仕えない
まさに1人の人間女性が妖怪に襲われるときと同じだ
「クエルゥウウウウウ!!!」
1匹の餓鬼が紫に飛びかかる
「?!」
紫は目を瞑り両手で頭をガードする
しかし痛みもなにもない
恐る恐る目を開けると
そこには美しい蝶を従え
優雅に美しく扇子を振り
青白い衣装に身を包んだ女性がいた
「だいじょうぶ?紫」
「幽々子・・・」
「もうだいじょうぶよぉ。あとはヨロシクね、妖夢」
「おまかせを・・・・ハァァ!!!」
妖夢の一振りで餓鬼が消滅する
「低級妖怪ごときが・・・」
チンッと刀を鞘に収める
「お怪我はありませんか紫様」
「あ、ええ。だいじょうぶよ」
「も~心配したんだから~」
幽々子が紫に抱きつく
「あ、ごめんなさい。・・・誰から私の事を?」
「あの子が知らせてくれたのよ~」
そういうと幽々子は空を指差す
そこには白くかわいらしい衣装に身を包み絶え間ない笑顔で飛翔する妖精がいた
「・・・・なんであの子が冥界に・・・・?」
「・・・・すみません、幽々子様の命令で捕獲したんです」
妖夢が恥ずかしそうに説明を続ける
「捕まえたのは今朝で連れて行ったら必死でなにか喋っているもので」
「で、聞いてみたら紫が能力使えないってことがわかってね~、心配でこっちきちゃったのよー」
「まさに棚から牡丹餅。そしてあなたを探していたところ先ほどの場面に遭遇したわけです」
少し涙目で抱きついてくる幽々子と
申し分けなさそうにしている妖夢が頼もしく紫の目に映る
「・・・ありがとう。」
「いいのよぉ~。大事な友達でしょ」
「ふふ・・・あなたも災難だったわね」
紫は空を飛んでいる白い妖精リリー・ホワイトに目線を向ける
リリーは何事も無かったように笑顔で
『春ですよ~』
と口パクをして飛び去った
「・・・不幸中の幸い、てこのことね」
「ところで紫はなんでこんなところに?」
体を離しつつ幽々子が聞く
「今日、神社で宴会あるっていうから、料理の材料の買出しに人里に下りるところだったのよ」
「なるほどぉ~・・・・宴会・・・・」
「あ、目の色が変わった」
「・・・・降りてきて良かった~」
「あは、あはははは・・・・」
妖夢は頬を指でこすりながら苦笑した
「じゃあ妖夢に買い出しまかせて私達は神社にいきましょう~」
「いえ、最後まで自分でやるわ」
「でもさっきみたいに襲われたらどうするのよ~」
「そうですよ、買い出しは自分がしますから幽々子様と紫様は神社へお戻りください」
「お心遣い感謝するわ。でもやっぱここまで来たから最後まで『歩いて』やるわ」
「そぅー?そこまでいうなら止めないわ~。じゃあ一緒に行きましょう~」
「一緒?」
「そうよー、たまにはいいじゃない一緒に買い物。ねぇ~妖夢」
「御心配なく、2人は命に代えて御守りしますから」
「・・・・そうね、いいかもねこういうのも」
「それじゃー出発~」
「(幸せ者ね、わたしって」
危機を回避し賑やかに人里に向かった
~神社:境内宴会場~
ちょうどよい具合に桜が散る
その境内の中は今や大騒ぎの真っ最中である
姉妹は音楽を奏で、数人は霊夢を我の物とするために霊夢に押しかけ
あるものは静かに酒を飲み、あるものは飲まされ過ぎて沈んでいたり
あるものは料理に夢中で、あるものはいじられ続けている
そんな大騒ぎの中、紫は離れた場所で静かに飲んでいた
「・・・能力が使えなくても、いいかもね」
そこに魔理沙がやってきた
「なに雰囲気に浸ってるんだ?らしくないなぁ」
「あら、私はいつもこんなかんじよ?」
「そうか?・・・・ま、何があったか知らないが、紫は紫らしく生きて行けばいいとおもうぜ?」
「そうね、ふふふ」
「例え、能力が使えなくなったりしてもな~」
「むぐ・・」
「まぁまずないだろうけど!んじゃ飲みなおしてくるわー」
「・・・・びっくりしたわ」
一瞬ばれたかとおもったが、おそらく魔理沙が例えの一種として言っただけのようである
魔理沙がなにを感じて言ったかは不明だが彼女なりの励ましだったのだろう
「私らしく、か」
「紫様」
「あら、藍。おひさしぶり」
「お元気そうで・・・・といってもまだ1日くらいじゃないですか」
「ふふふ、そうね。迷惑かけたわね」
「いえ、紫様こそ大丈夫ですか?」
「もう大丈夫よ。落ち込んでいたりしたら私らしくないわ。」
「さすがです。」
「明日くらいにマヨヒガ帰るから、お迎えお願いね」
「喜んで!」
「ふふふ、頼りにしてるわ」
「しかし原因はなんでしょうね」
「さぁねぇ。でももうどうでも良くなって来た感じ。幻想郷は壊れてないし、結界も維持できてるし」
「そうですね、不思議な事があるものですね」
「だって幻想郷ですもの」
「なるほど」
そこに料理を抱えた幽々子がやってきた
「紫の料理おいしいわー」
「なんと紫様の料理?食べてみたい・・・」
「ふふふ、まだあるから食べてらっしゃい」
「本当ですか?いただいてきます!」
そういうと藍は宴会場へ向かう
「いい式神さんねぇ」
「そうね」
「ね~紫」
「なに?」
「また困ったら私の所にもきてもいいわよ~」
「ふふふ冥界に住めと?」
「うふふふ~」
「ふふ、考えておくわ」
「そうだ紫、そろそろ能力治っているか確かめたら~?」
「そういえば料理とかで忙しくて全然試してなかったわ」
「はい扇子貸してあげる、やってみて~」
「ありがと。でもまだ戻ってないかもね」
苦笑いしつつ扇子の先で空中をなぞる
すると
ビィィィィイイイイイイ
空間が避けてスキマが現れた
「!!」
「あらぁ、やったじゃないー。治ってるじゃない~」
「昨日は何も起きなかったのに・・・・」
「今日、いいことしたからかもね~」
「あら、私は常に善行してるわよ」
いつもどおりの笑顔で言葉を返す
その笑顔の中では表現できない感情があった
嬉しく泣き出しそうな気持ちを抑え
「じゃぁさらなる善行してきましょうかね」
「ほどほどにねー」
紫は立ち上がり宴会場に赴く
その姿を笑顔で幽々子が見送る
宴会場はまさに修羅場やら分けわからないことになっていた
その光景をみて
うふふふ
と怪しく胡散臭い笑顔をする紫
そう以前の彼女に戻ったのだ
笑顔で扇子をククッイと操る
すると霊夢を取り囲んでいた者達がいっせいにスキマに消えて別の場所にほっポリ出された
その光景を見て霊夢は紫をに視線を送る
「・・・・また騒がしくなるわね」
「退屈させないわよ?ふふふ」
「・・・・後片付け手伝ってよね」
「さぁどうしましょう」
扇子で口元を隠す紫
それを見て霊夢も少し微笑む
「こらー!スキマ妖怪!よくも霊夢から距離離したわね!覚悟しなさい!!」
スキマからほっポリ出された吸血鬼が叫ぶ
「あらあら、霊夢は私のおもちゃなんだからダメよ」
「だれがおもちゃか!」
「こうなったら霊夢をかけて勝負よ!スキマ妖怪!」
「私に挑むなんて・・・・いいわ、遊んであげる」
フフフフと万遍の笑みで紫はカードを取り出す
そして紫は深呼吸をして
「スペルカード発動!!四重弾幕結界!!!」
手にしたカードがまぶしく光を放ち、当たりに美しい弾幕を作り上げていった
突如、能力が使えなくなった原因はわからない
本人にも他人にもわからない
だけどそれはもうどうでもいいこと
現に彼女は幸せそうな顔をしているから
~朝:神社~
昨日の宴会の後始末に追われる巫女が1人いた
巫女はぶつぶつと愚痴をこぼしつつ片付けを進めている
コツコツ
そこに参拝階段を登ってくる音がする
その音を聞き巫女は階段へ視線を向ける
そして上って来た人物を確認すると
2人で微笑んだ
閉幕
普段なら昼間は寝て、夜に活動するタイプだ
別に妖怪は昼間は寝て夜に起きる、とは決まってないでしょう。
紫は普段なら昼間は寝て、夜に活動するタイプだ
でよかったのでは?
無理に理由付けをするよりは、このSSのように心情描写を掘り下げる方が面白いのかもしれません。
皆が楽しそうで何より。