Coolier - 新生・東方創想話

ある日、突然

2007/06/14 23:01:36
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ここは博麗神社
今日はいい天気で心地よい風が境内に吹き込んでくる
その境内の中に神社の巫女が箒を持ち
シャカッシャカッ
とリズムよく掃除をしている

「いい天気。風も気持ちいいし・・・・」

さわやかな顔で天をあおる、が

「・・・これで参拝客が来てくれれば・・・グスン」

沈んだ表情になった

「まぁ考えるのもめんどうだから、いいか」

と、いつもどおりに開き直る

巫女の名前は博麗 霊夢

いつもどおりに霊夢が境内の掃除をしていると

コツコツ

と神社までの参拝階段を上がってくる靴の音がした
その音を耳にした巫女は

「!これはまさかー!」

顔が輝き始めた

しかし上って来た参拝客の姿を見て絶望の顔へと変わる

「・・・なんでアンタが・・・」





~神社:縁側~
ここは日当たりがよく、お茶を飲む所としては絶好の場所である
心地よい風が吹きぬける中、縁側に腰掛ける少女が2名

「はい、どうぞ」
霊夢はもう1人の少女(?)に湯飲みを渡す

「ありがと。」
微笑を浮かべながら受け取る少女(?)。しかしその笑顔はどこか胡散臭い

「・・で、なんで今日は珍しく階段から来たの?いつもならここらへんにスキマあけてバァーってくるくせに」
「んー?気まぐれよ。きまぐれ」

胡散臭い笑みを浮かべお茶をすするのはスキマ妖怪の八雲 紫である

「まぁいいけど。参拝客だと思って損したわ」
「ふふふ。ああ、そうだ霊夢」
「なに?また厄介事?」
「いえいえ違うわよ」
「じゃあなに?」
「当分、ここに住むから」
「・・・はい?」
眉をひそめ霊夢が聞き返す
「だから当分、この神社で暮らすっていってるのよ」
「・・・いきなりなにを・・・・」
「気まぐれよ。気まぐれ」
「迷惑な気まぐれね・・・はぁ」

大きくため息をつく霊夢だが断る雰囲気は無かった
紫の気まぐれは今日始まった事ではないから慣れているのである

「もちろんただ住むわけにもいかないから料理とかはするわよ」
「ああ、それは助かるわ・・・・・・え?」

一瞬霊夢は、それならいいかと思ったが
紫が自ら「料理とかするから」など言うはずが無い
また冗談のつもりかと思い聞き返す

「・・・明日、雪でも降るのかしら?」
「あらまだ春よ」
「・・・・それも気まぐれ?」
「そ、気まぐれ。というか暇つぶし」
「・・・胡散臭い。あと料理できるの?」
「馬鹿にしないで頂戴。今は藍にまかせっきりだけど昔は自炊してたのよ?」
「ふ~ん。で、式神はどうしたの?」
「マヨイガに留守番させてきたわ」
「あっそ・・・」
「というわけでヨロシクね霊夢」

ニッコリと笑顔で霊夢の方を見る

「はぁ、どうせ断ってもいるんでしょ?好きにしなさいよ」
「ありがと♪じゃあ早速、料理しますか。」

そういうと紫は立ち上がり一緒に持ってきた袋を持ち台所へ向かう
その姿に何か違和感を覚えつつも霊夢はお茶をすすった


~夕飯時~

珍しく神社の居間のちゃぶ台の上には夕飯らしい夕飯が並んでいる
焼鮭に味噌汁、ゴハン、漬物、冷奴、普段の霊夢には久しぶりのまともな夕飯だった

「・・・これ本当に作ったの?」
「ええ、そうよ」
「・・・スキマつかって取り寄せたとかじゃなくて?」
「そんなことするわけないじゃない。さ、食べて食べて」
「む・・・まぁ、いただきます」

霊夢は手を合わせ軽く頭を下げる
そして夕飯を口にする

「!?!?」
「お味はどうかしら?」
霊夢に向かってニコニコと紫が聞く

「・・・すごくおいしい」
「でしょー。私の腕を見くびらないで頂戴」
「あーうん、ごめん」
「ふふふ、お風呂も用意してあるから入るといいわよ」
「お風呂まで?!」

霊夢は驚きを隠せない
なにせ、あの紫が夕飯からお風呂まで準備してくれたのだ
これは明日幻想郷が滅びるのではないかと思った

しかし霊夢は内心疑問にもってた
いくら気まぐれとはいえ
家に押しかけるまでは良しとしよう
しかしなぜ料理やらお風呂やらの準備もしてくれるのかと
はて、頭でも打ったのか、へんなキノコでも食べたのかと霊夢は疑問に思う
様々なケースを考える霊夢
考えているうちに時は過ぎ就寝の時間となっていた



「霊夢~、そろそろ私は寝るわね。」
「あ、うん。おやすみ」
「おやすみぃー」
「・・・・・」

そういって紫は布団に入り込んで、少しするとスースーと寝息をたてた

「考えすぎかな・・・」

霊夢も布団に潜り込み眠りについた



~深夜~
虫が鳴き、月の光が降り注ぐ境内に動く影があった
夜なのに日傘をさし、少々派手な衣装に身を包む女性

紫だった

紫は神社の裏に行くとスペルカードを取り出した
そして深呼吸をして

「スペルカード発動!弾幕結界!!」

と発動呪文を叫ぶ

カードが光をだし結界を作り上げていき無数の弾幕が辺りを覆う・・・



のが「発動すれば」みれる景色である

しかしスペルカードはうんともすんとも言わず紫の手に握られている

「・・・もう1度・・・」

紫は大きく深呼吸をして再度、発動呪文を叫ぶ

「スペルカード発動!四重結界!!」

しかし結果は変わらない、カードはピクリともせず夜風に揺られている

「・・・だめか・・・」

大きくため息をつく
そこに

「紫・・・あなた」
「あ・・・」

霊夢が立っていた

「・・・スペルカードが使えないの?」
「いやぁね。目が覚めちゃったから発動の練習していただけよ」

いつもどおりの胡散臭い笑顔で答える紫

「・・・じゃあスキマ開いてみて」
「え・・・」

霊夢の要望に紫から笑顔が消えた

「・・・私より強い結界を張ってみて」
「・・・・・」
「式神呼んでみせて」
「・・・・」
「スキマからなにか取り出してみて」
「・・・・」
「どうしたの?偉大なるスキマ妖怪のくせにできないの?」
「・・・・」
「・・・・」

月明かりが照らす境内の2人を静寂が支配した




~深夜:神社の居間~
蝋燭で明るくなっている部屋の中に2人はいた

霊夢は無言のまま紫にお茶を渡す

「夜にお茶飲むと目がさえちゃうんだけどね」
「・・・・そうね」
「・・・・」
「・・・・」

静寂を破ったのは霊夢だった

「・・・いい加減話してくれないかな。なにがあったの」
「なにもないわ、なにも」
「・・・・なにも無いのに能力が使えなくなるわけ無いでしょ」
「本当に何も無い。ただ突然、使えなくなった」

ここで霊夢が感じていた違和感の正体がわかった
紫は神社に来て、いや来るときも1度も
「スキマ」を開けていないのだ
いつもならめんどくさい事は全てスキマをあけてやってしまう紫が
あけずに物事をやっていく姿に違和感を感じていたのだ

「・・・・・なにか呪われたとかじゃなくて?」
「そう。いつもどおり、いつもどおりに過ごしてたのよ。」
「・・・・式神には言ったの?」
「言ってないわ。心配かけたくないし」
「・・・・変なところだけ人間味あるわね」
「自分で解決して帰ろうと思ったし」
「・・・・それで急に私の所に来たわけか・・・」
「そういうことよ」
「・・・・なんで素直に言わないのよ、あんたって」
「さぁなんででしょうね」

紫は扇子で口元を隠す

「・・・・で戻る見込みは?」
「なし。まぁそのうち・・・・かな」
「あんたらしくない発言ね。」
「そうね」
「・・・・まぁあんたには色々借りあるし・・・・協力するわ」
「・・・霊夢」
「だからその沈んだ顔やめてもらえる?あんたらしくない」
「ええ・・・・ありがと」
「とりあえずここにいて、マヨヒガ行って来る」
「え?」
「どうせ能力が使えないから式神に念話もできないでしょ?適当に理由付けて神社にいるって伝えてくるだけよ」
「そう、助かるわ」
「んじゃ、いってくる」

霊夢は居間から外に出るとスゥーと飛び出していった
そのとき紫の目からは涙が出てた事に霊夢が気がつかなかった


~マヨヒガ~
迷った人が来るとされているマヨヒガ
辺りは暗く普通なら寝静まる時なのだがマヨヒガの一軒家は未だに明かりがついていた

「こんばんわー」
「はーい、いらっしゃいー・・・って巫女だー」

出迎えてくれたのは橙だった

「巫女じゃなくて霊夢よ。もう1人の式神いる?」
「藍様だね、いるよー。藍様~!」

橙は藍の名前を叫びつつ奥へと走って行く

少しすると藍が橙とやってきた

「夜遅くにごめんなさいね」
「いや、構わない。何用できたか知らぬが今忙しくてな、勝負ならまた今度にしてくれ」
「忙しいか、紫探すのに?」
「・・・なぜわかった」
「だって紫、私の神社に泊まっているもの」
「泊まって・・・・そうか、いや無事ならそれでいい。どうせ気まぐれか何かだろう」
「そういうことにしておいて」

む?とその霊夢の発言に藍は目を鋭くする

「まぁ宿泊費等々はあとでいただくから、当分神社にいるって言ってたわ。」
「・・・そうか」

何かを悟ったのか藍の表情が心配顔になっていた

「じゃあ伝えに来ただけだから」
「ああ、ちょっと待ってくれ」

藍はそういうとバタバタと家の奥に走っていく
戻ってくると手には風呂敷包みを持っていた

            
「ちょうどいいからこれを『ある妖怪』に渡してくれ」
「・・・わかった、渡しておくわ」
「あと、紫様に結界の見回りはお任せくださいと伝えておいてくれ」
「伝えておくわ。じゃあまたね。」

そういうと霊夢はスゥーと飛び立った

「藍様~、霊夢に何持たせたの~?」
「ん?ああ、あれはある妖怪の服さ。ちょうどいいからもたせたのさ」
「ふ~ん。紫様、無事でよかったねー!」
「そうだね。さぁ橙、明日から少し忙しくなるぞ。今日はもう休もう」
「あ、はーい」

こうしてマヨヒガの家の明かりも消えた




~神社~
もうすでに夜明けが迫っており境内が徐々に明るくなっていく

「あら、おかえり」
「ただいま。時間かかったわぁ」

縁側で待っていた紫はお茶をいれオツカレサマと霊夢に渡す

「ああ、これあんたの式神から」
「あら?藍が?なにかしら」

霊夢から風呂敷包みを受け取り中身を確認する

「ふふふ、心配性なんだから。これじゃあバレてるわねぇ」
「バレないように言ってきたんだけどね、勘がいい式神ね」

風呂敷包みの中身は紫の衣服であった

「あと伝言、『結界の見回りはお任せください』だって」
「・・・そう」
「あなたにはもったいない、いい式神ね」
「そうかもね、ふふ」

紫はどこか悲しげに微笑んでいた

「じゃあその式神のためにも早く解決しなきゃね」
「出来る限りは協力するわ、あんたがいないと幻想郷危なくなるし」
「愛してるわー霊夢ー」
「やめい」

いつの間にか紫の笑顔はいつもの胡散臭い笑顔になっていた
胡散臭いがどこか暖かく幸せそうな笑顔だった




第1部 閉幕
かわいいよユカリン
傀儡子
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コメント



0.660簡易評価
3.80名前が無い程度の能力削除
続きが気になるな
15.503削除
>「スキマあけてバァーってくるくせに」
なんかすごくその時の顔やら仕草やらもろもろが簡単に想像できます。