この作品は「紫の思いつき」1,2,3の続編です。
本作品をご覧になる前に、過去の作品をご覧になる事をお勧めします。
なお、前回の初期掲載時に
小町→妖夢担当 輝夜→アリス担当 となってましたが
小町は白玉楼の代表代行の筈と言うご指摘を受け、
小町→アリス担当 輝夜→妖夢担当 と変更しました。
初期の作品をご覧になった方には混乱させる事となってしまい、この場でお詫びいたします。
では、以上の事を踏まえてご覧になってください。
対決開始
「さぁ、ついに始まりました!幻想郷料理対決!!因みに制限時間は3時間ですよ!!」
「さて、どんな料理を作るのかしらね?」
「出来た方から担当審査員と特別審査員に料理を持っていってください!」
そして、司会の文と解説の紫は選手をざっと見渡す。
「さて、それでは、まずは紅美鈴さんから見てみましょう。」
美鈴は料理台の上に大きな粘土のような塊を置いて、それをこねている。
「紫先生。美鈴選手は何を作ってるのでしょうか?」
「あの塊、彼女の系統、それらから推測できるのは・・・・・・」
「出来るのは?」
「ラーメンね。」
「らーめん?」
聞きなれない単語に文が首を捻る。
幻想郷には知れ渡っていない食べ物だから当然だ。
「そう、外の世界の中国と言う国に伝わる麺料理よ。今では結構色んな所でも出回ってるみたいだけど。」
「麺料理・・・・・・蕎麦のようなものですか?」
「感覚的には近いわね。一応、中華ソバって言われるくらいだから。でも、材料的には蕎麦よりうどんに近いわ。どちらとも別物だけどね。」
「どんな風に違うんでしょうか?」
「蕎麦やうどんは基本はしょうゆとダシだけでツユを構成するわね?」
「ええ。」
「でも、ラーメンの場合はしょうゆ以外にも塩や味噌、とんこつ等と言ったツユが存在するのよ。」
「なんと!?しかし、蕎麦をそれらのツユで食すのはちょっと美味しそうじゃありませんね・・・・・・」
確かに、蕎麦をそれらのスープで食べたらあまり美味しくはなさそうだ。
「それは大丈夫よ。なんせ見ての通り主体となる麺が違うんだから。」
「言われてみれば、色をとってみても違いますね。」
「うどんと材料が似てるって言ったけど、うどんは、小麦粉、澱粉、食塩が基本となるのに対し、ラーメンの麺は小麦粉、食塩は同じだけど他に植物油や卵白等、色々混入するの。」
「確かに、それだと麺の時点で味は違いますね。」
「それにラーメンは蕎麦と違ってザルに置くような事はしない。ツユ、スープと言うんだけど、そのスープに麺を入れたまま食すのが基本なのよ。」
「ははぁ、月見蕎麦とかの様な感じにですか?」
「ええ、そうよ。」
「成る程~。早速外の世界の料理が出ましたね~。」
「別に幻想郷でも作れるわよ?」
「え!?そうなんですか!?」
「材料は幻想郷でも出来る物だもの。ただ、作り方が広まっていないだけの話。」
「は~・・・・・・」
「それにまぁ、紅魔館は外との交流があまり無いから、彼女の持つ中華料理が広まる事が無かったんでしょう。」
「なるほど。逆に言うと紅魔館では結構普通であると?」
「普通かどうかは知らないけど、間違いなく知っていたでしょうね。だからこそ彼女を送り込んだのよ。」
紫はちらりとレミリアの方をのぞき見る。
すると、レミリアは意味ありげに笑みを浮かべた。
「な、なるほど・・・・・・」
「ラーメンはスープと麺が命と言っても良いわ。さて・・・彼女がそれを何処まで引き出せるのかが楽しみね。」
「メイド長、十六夜咲夜さんを押しのけて出て来た訳には理由があったわけですね。」
「ええ、これは手強いわよ。未知の料理に加えて彼女は一品料理。」
「一品料理ならその一品が上手くいけば高得点確実ですからね。」
「ええ。品目を多く出せば良いという物でもないわ。品目を増やせば増やすほど、何かが足を引っ張る危険性が増えるのだから。」
「逆も然りですけどね。一品だけに失敗したら即敗北決定。取り返せるものがありませんからね。」
「ええ。さて、それじゃあ次にいってみましょうか。」
「えぇっと、次は妖夢選手を見てみましょう。」
妖夢はというと何やら鉄板の上で魚を焼いている。
「魚・・・・・ですね。」
「あれは鮎ね。」
「鮎ですか。あれは腸まで食べれる美味しい魚ですよね。」
「ええ。」
「ですが、妖夢選手は何故あのような焼き方を?直火でこんがり焼いても良いのでは?」
「恐らく妖夢は頭まで食べれるように焼くつもりね。」
「頭まで?」
「頭まで美味しく焼こうと思っても直火でやると体が焦げちゃうのよ。」
「ああ、確かに。」
「だから、ああいう風に火から少し離した所に鉄板を置いて火力を弱めてる。」
「なるほど。それで全身くまなく焼くんですね?」
「ええ。時間は掛かるけど、頭も美味しいから、これは良い線行ってるわね。」
「お?妖夢選手、今度はまだ余っている鮎を捌きに掛かりましたね。」
「成る程。妖夢の料理は鮎尽くしね。」
「鮎だけで構成される料理ですか?」
「恐らくね。ごはんに今やっている鮎の塩焼き、それに鮎のあらい、そして恐らくは鮎のお吸い物ね。」
「あらい、とは?」
「あらいっていうのは魚を薄い削ぎ切りや糸切りにして、冷水や氷水につけて箸などで数分掻き混ぜる事を言うのよ。」
「ああ、だから「あらい」と言うんですね。」
「そう。ついでに冷水とかに付けるから身も引き締まって美味しくなるわ。」
「刺身のようなものですね。」
「そうね。」
「所で関係ない話ですが、何で刺身って言うんでしょうね?切ってるのに。」
「ああ、それは昔の武士達が切り身の「切る」、即ち「斬る」という言葉を嫌って「刺」身と言うそうになったそうよ。」
「何かくだらない理由ですねぇ。」
「まぁ、人間らしいと言えばそうだけどね。」
「さて、妖夢選手も期待出来そうという事で、次は・・・・・・」
「うどん娘ね。」
「うどん娘言うな!!!」
律儀に反論する鈴仙。
「だって作ってるの、うどんじゃない。流石は永遠のうどん娘。うどんGainだわ。」
「なんで私だけこんな扱いなのよ・・・・・・・・・きぃぃぃぃぃ!!!」
鈴仙はうどんの生地をバンバン叩きつけている。
「うーん・・・・・・八つ当たりながらも生地を生成するには良い方法ですね。」
「そうね。でも、冗談は抜きにして、あの娘の生地、かなり良いものよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、見れば解かるわ。あれほどの生地の素材、どうやって手に入れたのかしら?」
紫はそう言って輝夜を見るが、輝夜は視線を合わせようとすらしない。
「彼女はどんなうどんを作るんでしょうか?」
「恐らく月見うどんね。」
「月の兎だからですか?」
「さぁ?ただ、あそこにウコッケイの卵が置いてあることからそう推測したまでよ。」
「あ、適当に言ったんじゃなかったんですね?」
「失礼ね。ちゃんと推理してから言ってるわよ。」
「それは失礼しました・・・・・・では、お次は?」
「次はワーハクタクね。」
「あら?慧音さんはまだ作ってないみたいですね。」
「食材を選び中ね・・・・・・って言うか、何なの?あの量。」
慧音の前には食材が山盛り積んであった。
どれも里の者からの協力の申し出の結果である。
慧音の人望が良くわかる景色だ。
「まぁ、あれじゃまだまだ料理に取り掛から無そうね。」
「じゃあ次に行きましょう。」
「さて、次は藍ね。」
「藍さんは・・・・・・あれは豚肉ですか?」
「ええ、藍の料理はズバリ「カツ丼」よ。」
「カツ丼ですか。」
「ええ、でも藍が使っているのはかなり質の良い豚肉だわ。」
「外の世界のですか?」
「まさか。それじゃあ素材に差がつきすぎるじゃない。あくまで幻想郷で取れる食材よ。」
「へぇ・・・意外と公平なんですね。」
「あら?そんな反則みたいな真似して勝っても面白くないじゃない。勝負は接戦だから良いのよ。」
「なるほど、より面白くする為に、と言う事ですか。」
「そうよ。」
「さて、それでは主の紫先生から見て藍さんの様子はどうですか?」
「悪くないわ。素材も可能な限り良いものを揃えたし、失敗さえしなければ優勝狙えると思うわね。」
「まぁ、毎日紫先生の代わりに料理作ってたわけですから、腕前は相当なものでしょう。」
「あら?今でも藍に料理で負けはしないわよ?」
「え?紫先生は料理上手なんですか?」
「貴女だって知ってるでしょ?長生きしてる妖怪は大抵芸達者なのよ。私が料理に秀でても不思議じゃないでしょ?」
「まぁ、そうなんですが・・・・・・・・・・貴女の場合は普段のイメージが悪すぎるんですよ。」
「失礼しちゃうわね。」
「そう思われるのが嫌ならもう少し普段の行いを改善しては如何ですか?」
「お生憎様。今のままで良いと思ってるのよ。」
「始末が悪いですね。」
「残念だけど、貴女に理解できる話じゃないわ。さ、それはともかく次にいきましょう。」
「そうですね。最後はアリス選手ですか。って、うわ、凄い料理の仕方を・・・・・・」
「へぇ・・・考えてるわね。」
アリスは己では料理せずに人形に料理をさせていた。
まぁ、もっとも人形はアリスが操っているのだからアリスが作っていると言っても間違いではない。
「3、4、5・・・・・・6体の人形を同時に操ってますよ・・・・・・・・・」
その姿に観客からどよめきが起きる。
「作っている物は・・・・・・らしいと言えば、らしいわね。」
「あれは何を?私にはちょっと解からないんですが・・・・・・」
「それはそうね。あれは外の料理でフランス料理という分類に入るものよ。」
「外の料理!?なぜアリスさんが外の料理を?」
「別に難しいことじゃないでしょう。あの娘はあの紅魔館の図書館から本を借りてるんだから。」
「何!?初耳だぞ、パチュリー!!」
審判員席の魔理沙が叫ぶ。
「まぁ、魔理沙の場合は強奪だけど、アリスの場合はちゃんとした貸出だからよ。」
パチュリーに代わって紫が答える。
「どういう事だ?」
代わって答えた紫に魔理沙が尋ねる。
「貴女の場合は強奪に加えて自分の寿命まで「借りる」と言う始末。こんなの誰だって貸したくなくなるわよ。」
紫の説明にパチュリーがうんうんと頷く。
「対してアリスの場合は期限を決めて借りる上に、貸出許可が下りないものは借りないわ。その上、利用料代わりに手土産も持ってきてる。これなら別に貸したって悪くは無いでしょう。」
またもやパチュリーがうんうんと頷いている。
「で、なんで貴女がそれを知ってるのよ?」
人形を動かすのを止めずにアリスが尋ねる。
「企業秘密よ♪」
「どうせ隙間から覗いてたんだろうぜ。」
バレバレだぜ、と加えて魔理沙が言う。
「本当、良い趣味してるわ。」
ジト目でアリスが言う。
「あら?誉めても何もでないわよ?」
「誉めてないと思いますよ?紫先生。」
文も呆れながら言う。
「ま、それはともかく、そう言う理由でアリスは図書館に転がり込んでくる外の世界の本の知識も持ってるのよ。全部とは言えないでしょうけど。」
「なるほど、それで外の世界の料理を知ってるのですか。」
「もちろん、この幻想郷に存在しない食材の料理は作れないけど、あれば当然作れるわ。」
「と言うことは、今アリスさんが作っているのは幻想郷内でも作れる「ふらんす料理」と言う事ですね?」
「ええ。でも、本来はフランス料理は順を追って出すものなのよ。」
「順を追う?」
「ええ。良くあるのは最初にスープ、次にサラダ、その次に魚料理、そしてメインの肉料理、最後にデザート。」
「一品終わったら次の、と言う事ですか?」
「そうよ。でも、この大会でそんな事をすれば、担当審査員はともかく、特別審査員の幽々子の場合は他の選手の料理が間に入ってしまう確率が高いわ。」
「それだと不都合が?」
「当然でしょ?意味も無く並べて出してるんじゃないのよ。前の料理が次の料理を生かすためのステップになっている。そこに横槍が入れば?」
「ああ、その前準備が無意味になってしまいますね。」
「そう。だからアリスはああやって人形を駆使して本来一品ずつ作るのを一気に作ってしまおうとしてるのよ。」
「なるほど・・・・・しかし、人形使いのアリスさんならではですね。」
「そうね。自分の能力を良く生かした方法だと思うわ。」
「さて、それではまだ時間が掛かりそうなので私は一旦撮影してきますね。」
「行ってらっしゃい。こっちの仕事も忘れないでね?」
「解かってますよ。」
そう言って文は料理風景の撮影に行った。
それから時間が経って
「ただいま帰りました。」
「良い所ね、そろそろ美鈴の料理が出来上がりそうよ。」
「おお?では見てみましょうか。」
美鈴は既にスープを作り終え、麺を茹で始めていた。
すると
「出来ました!!」
別の所から声が上がった。
最初に完成させたのは
「あら?うどん娘の方が早かったわね。」
鈴仙が最初に料理を完成させた。
「鈴仙選手は紫先生の予想通り月見うどんのようですね。」
「ええ。さて、どういう評価が出るかしらね?」
鈴仙お盆にうどんを二つ乗せて、それぞれ魔理沙と幽々子に差し出す。
「それでは、審査員の先生方。ご賞味してくださいな。」
紫の台詞と共に魔理沙、幽々子共にうどんを食べ始める。
「担当審査員の方は食べ終えたら評価をお願いします。特別審査員の幽々子先生は全員分食べ終わるまで評価はお待ちください。」
文がそう告げる。
「む!!」
魔理沙が唸る。
「この麺の歯ごたえ・・・・・・良くダシが効いているツユ・・・・・・・・・」
言いながらも魔理沙は箸を止めない。
そして、ツユが少なくなったところでツツッと卵を丸呑みする。
通だ。
「そしてこの卵の濃厚な味わい。」
ドンッ!と空になった丼を机に置く。
なんか食べ方まで男らしい。
「それでは魔理沙先生。評価をどうぞ!!」
「私は満足だ!50点!!」
観客から大きな歓声が上がる。
「よしっ!!!」
鈴仙も小さくガッツポーズをとる。
ひとまず最初の難関は越えた。
「じゃあ、幽々子先生も評価はともかく、感想をお聞きしましょうか。」
紫が幽々子に話を振る。
「そうね~。まず麺だけど、コシがあって歯ごたえも良かったわ。そしてツユ。これは昆布を茹でた後、更に鰹節を加えてるわね~?」
「はい。」
幽々子の問いに鈴仙が答える。
「鰹節の量も適量よ。そして、最後にウコッケイの卵。どれをとっても文句が無かったわ。私も満足よ~。ご馳走様~」
幽々子のその言葉に再び歓声が起こる。
そして鈴仙も再び小さなガッツポーズ。
その歓声が鳴り止まぬうちに
「出来ました!!」
またもや誰かが完成させた。
「おおっと、鈴仙選手に続いて美鈴選手も料理を完成させました。」
「どうやら美鈴は醤油で来た様ね。」
「ツユ・・・スープの事ですか?」
「ええ。無難な選択ね。豚骨や味噌は人によっては敬遠するのよ。」
「なるほど。さて、お味の方は如何でしょうかね?」
美鈴は盆に載せた醤油ラーメンを阿求と幽々子の前に置く。
「さぁ、それじゃ続いて紅美鈴選手の料理をご賞味ください。」
文の言葉と共に阿求と幽々子が箸を付ける。
両名共に無言。
が、幽々子はともかく、阿求の方は段々と箸の進みが速くなる。
ややして阿求はラーメンを食べ終えた。
「さて、阿求先生食べ終えたようです。」
流石にスープは残っているが、子供の阿求にスープまで完食は酷だろう。
「それでは阿求先生、評価をどうぞ!」
文が阿求に評価を求める。
「食べた事のない料理だったので、正当な評価は出来ないかもしれません。」
阿求のその言葉に観客はざわめき、美鈴の表情が少し硬くなる。
「ですが、それほど食の太くない私でも、せめて麺だけでも完食したいと思わせたこの料理が不出来などとは決して思っていません。」
観客からざわめきが大きくなる。
「美味しかったです。私の評価は満点の50点です。」
大きな歓声が巻き起こる。
美鈴はホッとしたように胸をなでおろす。
「さて、それじゃ続いて幽々子、お願いね。」
紫が幽々子に感想を尋ねる。
「まず最初に。美味しい料理だったわ~。麺も蕎麦やうどんと違った味で新鮮だったし、他にも具沢山なのも良かったわね~」
美鈴のラーメンにはメンマ、チャーシュー、葱、そして海苔が乗せてあった。
「そしてスープ。一見只の醤油のツユかと思ったけど・・・・・・これ、鶏がら使ってるわね~?」
「驚きました。よく解かりましたね。」
美鈴が驚きながら答える。
「ふふ・・・・・・私を侮っちゃダメよ~?その鶏がらがよりこの「らーめん」全体を美味しい物にしてたわ。美味しかったわよ、ご馳走様~」
再び歓声が起こる。
「おおっと!これも高評価が期待できそうだ!!早くも激戦の予感です!!」
「出来たぞ!!」
「あら?藍も完成したみたいね。」
次いで藍の料理が完成した。
「藍選手はカツ丼ですね。おや?カツ丼の上に卵が?」
「ああ、卵とじね。」
「卵とじ?」
「カツ丼のカツの上に掻き混ぜた卵を乗せて軽く蒸すの。そうすると上手い具合に卵が固まって蓋をしたようになるのよ。」
「ああ、それで閉じなんですね。」
「そう。そうすることで中の熱気も閉じ込められるから、熱さと旨みも逃がさないの。」
「なるほど。では、レミリア先生と幽々子先生、どうぞ!」
「ふん・・・まさか私が貴女の料理の担当とはね。」
「口に合わなければ捨ててくれれば良いさ。それは所詮、私の料理がその程度だっただけの事だからな。」
「不味かったら遠慮なくそうしてやるわ。」
藍はレミリアに渡した後、幽々子にも渡し、そして下がる。
「では、お二方とも食べてください。」
レミリアがまず箸を付ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言のまま箸を進める。
が、顔に飯粒が付く度に横で日傘を差して居る咲夜が顔を拭いてる姿は何か微笑ましい。
ややもしてレミリアも幽々子も完食する。
「さて、それじゃあレミリア先生に評価をお尋ねしようかしら?」
紫が意味ありげに微笑みながら言う。
「最初に言ったはずよ。不味かったら遠慮なく捨てると。」
ふん、と憮然としながらレミリアは言う。
「文句など無かったわ。50点よ。」
そしてそう続けた。
歓声が巻き起こる。
藍も少しほっとした様子だ。
「あら?意外ね。藍の料理だから評価落すと思ったのに。」
やはり意味ありげに笑いながら紫が言う。
「私を馬鹿にしてるの?そんな事して勝ってもただの道化だわ。評価は正当にするわよ。」
「それは失礼したわ。じゃあ、続いて幽々子お願いね。」
全員の視線が幽々子に移る。
「美味しかったわよ~。お肉は美味しいし、衣はツユが染み込んでいたけど、染み込みすぎず、少なすぎず。」
やはり会場内がざわめき始める。
「卵もあれはウコッケイね~?それがトンカツと合わさってとても美味しかったわ~。ご飯もちゃんと炊けてたし・・・良かったわよ、ご馳走様~」
やはり大歓声が起こる。
「またもや担当審査員満点に続いて特別審査員の印象も良さそうです!これは本当に誰が勝つかわかりません!!」
「さて、後の三人はまだ料理中みたいね。」
「おや、妖夢選手が完成しましたか?」
「あら?そのようね。後はお吸い物を加えて終わりね。」
紫の言うとおり、妖夢は最後のお吸い物を盆に乗せ終わり、
「出来ました!!」
完成を告げた。
「妖夢選手も完成した模様です。料理は紫先生の予想通りの鮎尽くし。」
ごはんに鮎の塩焼き、鮎のあらい、そして鮎のお吸い物、そして漬物少々だった。
妖夢は料理を輝夜と幽々子に差し出し、そして下がる。
「では、両先生。ご賞味ください。」
文の言葉で輝夜と幽々子が箸を付ける。
輝夜は上品に食べている為、進みが遅い。
漸く半分は食べ終えたかと言う頃
「出来たわよ!!」
アリスが料理を完成させた。
観客の視線もアリスの方へ移る。
「おぉっと!妖夢選手の評価の前にアリス選手が完成させました!」
アリスが料理を小町と幽々子、それぞれに持っていく。
皿が多いためか、一つずつ持っていく。
「しかし、あれはなんと言う料理なんでしょうか?名前が今一解かりませんね。」
外の世界の料理なのだから仕方が無い。
「説明するわ。まずはスープだけど、あれはかぼちゃのスープね。」
「ほほぅ・・・かぼちゃの?」
「かぼちゃを薄く切ってから煮とかしたスープに、更にかぼちゃの実とベーコンを入れて軽く生クリームを掛けた物ね。」
「サラダは何でしょうか?」
「あれは山羊のチーズと生ハムを軽く暖めて、菜っ葉の上に置いた物よ。名前はほぼそのまんまと思って良いわ。」
「なるほどなるほど。お次は肉・・・・・・鶏肉ですかね?」
「そうね。あぶった鶏肉に白ワインを入れて沸騰させ、煮詰めてから生クリームを入れて、更にまた少し煮た物よ。」
「飾るように付いているのはトマトとインゲン、それから玉ねぎですね。」
「そう、名付けてチキンのクリーム煮ね。最後のデザートはレモンのシャーベットだわ。」
ついでにライスも付いている。
「なんと言うか、見た目も色鮮やかですね。」
「ええ、幻想郷にある料理とは一線を画すわね。」
紫の解説の間にアリスは両審査員に料理を配り終えた。
「それでは両先生、ご賞味ください!」
小町と幽々子が箸・・・と言うよりスプーンをつけ始めた。
因みに幽々子の方は一足早く妖夢の料理を完食済みである。
そして、ややしてから
「ごちそうさま。」
綺麗に口元を拭きながら、輝夜が妖夢の料理を完食した。
「輝夜先生、妖夢選手の料理を完食しました!それでは、評価をどうぞ!!」
今度は視線が輝夜に注目する。
「良い物だったわ。素材も新鮮だったし、調理も良くされてる。ちょっと味が濃かった気がしないでもないけど・・・・・・それでも十分美味しかったわ。」
薄く笑いながら輝夜はそう告げ
「私の評価は50点満点よ。」
そして、そう評価を下した。
途端、歓声が巻き起こる。
「またまた50点満点だ!!」
「まぁ、担当審査から50点未満でたらその時点で終わりといっても良い訳だしね。」
「そうですねぇ・・・それでは、幽々子先生はアリス選手の料理を食べている最中なのでもう少し待ちましょう。」
その頃、小町は
「小町、スープは音を立てて飲んではいけません。スプーンもカチャカチャ鳴らしてはいけません。」
「え、映姫様・・・好きに食べさせてくださいよ・・・・・・」
閻魔様に説教されていた。
「はいはい、閻魔様こっち来て下さいね~。」
「な!?何をするのですか、八雲紫。」
映姫は紫に隙間から紫の側まで引っこ抜かれた。
「ダメじゃない、食事中にお説教なんてしちゃ。ご飯が不味くなっちゃうでしょ?」
「う・・・・・・」
「それとも、まさか閻魔様ともあろうお方が選手を貶めようと?」
「うぅ・・・・・・つい、何時もの癖が出ました。確かにこの状況では不適切でしたね。」
「さ、小町先生。気にせずお食べくださいな。」
「悪いね、感謝するよ。」
そう言って再び小町は食事を続けた。
それから暫くして小町と幽々子も料理を食べ終えた。
「では、まずは小町先生の評価をどうぞ!」
文に促されて小町が口を開く。
「そうだねぇ、普段の料理と違うからちょっと食べ難い感も否めなかったねぇ。」
その言葉にアリスの表情がやや曇る。
「けど、そんな事を帳消しに出来るくらい美味かったよ。あたいの評価は50点さね。」
その言葉にまたもや歓声が起こる。
「ふん、当然ね。」
後ろ髪をファサッとかき上げながらも、内心ホッとしているアリスだった。
「さて、それでは幽々子先生も食べ終わったようなので、まずは妖夢選手の感想からお願いします。」
幽々子が完食し終えたのを見て文が幽々子に言う。
「まず最初に、妖夢。」
「はい。」
名前を呼ばれて返答をする妖夢。
「私も蓬莱山輝夜も同じ味付けの物を出したのよね?」
「はい。お二人とも同じ味付けの料理をお出ししました。」
「解かったわ。それじゃ感想だけど・・・頭まで食べれるように焼いた鮎、良く身の締まったあらい、そして私の好みに合った味付けのお吸い物。どれも美味しかったわ。」
やはり歓声が起こる。
「流石は普段幽々子先生の料理を担当しているだけはあります!これはもしかするのでしょうか!?」
「ふふふ・・・・・・さて、どうかしらねぇ?」
紫は意味ありげに笑った。
「じゃあ、続いてアリスの料理ね~」
そのまま幽々子が続ける。
「私もちょっと食べ辛い感はあったけど、味はどれも良かったわ。保温と保冷の魔法もかけてあったから美味しさも保てたしね~」
普段順に出す物を一遍に出す際のデメリットは、アリスは魔法で補完していた。
「最初にスープを飲んで、その後にあっさりしたサラダで一旦口直し、そしてその後に味の濃い肉料理。順に食べると美味しさがまた違うのね~」
アリスは勝ち誇ったように笑みを浮かべている。
「そして最後にデザートで口に残った濃い味を消し去る。完璧だったわ~」
かなりの高評価な言葉に観客からも大きな歓声が上がる。
「全員が全員高評価の嵐!やはり各集落の代表は伊達ではないようです!!」
「さて、残るはあのワーハクタクね。」
慧音は食材選びに手間取った為に他の5人より遅くなってしまっていた。
「しかし・・・・・・慧音選手の料理は・・・・・・」
「見たところ、ごはんに白身魚の塩焼き、野菜炒め、味噌汁・・・・・・朝の普通の食卓ねぇ。」
「はぁ・・・・・・慧音選手は勝負を投げてるんでしょうか?」
「さて?もしかしたら何か思惑があるかもしれないわね。」
「完成したぞ。」
そして最後の慧音も料理が完成する。
「やはり慧音選手はあれだけのようです。」
「さて・・・何を考えてるのかしら?」
慧音は霊夢と幽々子に料理を差し出す。
「ちょっと、慧音。なんでこんなに普通のなのよ。」
豪勢なものが食べれると期待していた霊夢が不服を漏らす。
「すまんな、博麗の巫女。私は皆の様な物は作れない。私の担当になった時点で諦めてくれ。」
「なんなのよそれ~」
霊夢はとても不満そうだ。
「しかし、博麗の巫女。お前は最近殆どまともな食事をしてないそうじゃないか。」
「う、うるさいわね。ウチの食事情は厳しいのよ。」
「だから、今回は勝負云々よりもお前の健康を考えて作らせて貰ったよ。」
「え?」
霊夢がきょとんとする。
「栄養のバランスが崩れると体調を崩すからな。それでは巫女の仕事も出来まい。」
慧音は続ける。
「まぁ、味の方は悪いかも知れんが、その分量を多くしておいた。質より量で我慢してくれ。」
慧音は少し罰が悪そうな笑みを浮かべる。
つまり慧音は、審査員博麗霊夢に作ったのではなく、博麗霊夢個人の為に料理を作ったと言う事だ。
「幽々子嬢も、こんな三文芝居に付き合わせてすまないな。」
「あらあら、食べてみないと解からないわ~」
「あまり期待しないでくれ。」
困ったように笑う慧音。
「う・・・・・・」
「ん?」
霊夢から声がこぼれて慧音がそちらを見る。
「うあああぁぁぁぁぁぁん!!!!」
霊夢が泣いた。
「ど、どうした!?博麗の巫女!?す、すまん!!そんなに嫌だったか!?」
慧音が突然泣き出した霊夢に驚いてあたふたする。
「ぢがう・・・ぢがうのよぉ・・・・・・」
が、霊夢はそれを否定する。
「だっで・・・こんなに優しくしてもらっだ事なんて無がっだから・・・・・・うああぁぁぁぁぁぁん!!!」
意外
霊夢は優しさに弱かったようだ。
と言うか、普段が普段なのであまり優しくされるような事も無かった為だろう。
泣きながらの為か、言葉が美味く発音できていない。
「うわ、鬼すらぶっ飛ばす博麗の巫女がマジ泣きです。」
「ぐずっ・・・・・・余計な事言うとぶっ飛ばすわよ、鴉天狗。」
涙を拭いながら霊夢は文を睨む。
「失礼しました。それでは、両先生、ご賞味なさってください。」
霊夢は泣きながらも凄い勢いで料理をかき込んでいる。
味など解からなそうな食べ方だが、恐らく今の霊夢には最高の料理に感じられている事だろう。
霊夢、幽々子共に早くも料理を食べ終えた。
「早い、二人ともあっという間に食べてしまいました!」
「凄かったわねぇ・・・・・・それじゃ、まずは霊夢の評価から。」
紫が霊夢に評価を尋ねる。
「ぐずっ・・・・・・美味しかったに決まってるじゃないの!50点よ!!うああぁぁぁぁん!!!」
また泣いてしまった。
「おぉっと!あの料理からこの得点!しかし、良いんですか?紫先生。」
「あら?有りに決まってるじゃない。料理とは如何に美味しく食べて貰うかがポイントよ。それは料理の過程然り、食べる時の雰囲気然り、ね。」
「なるほど。慧音選手は見事に霊夢先生の心を掴んだ、と。」
「そうね。それにさっきの死神の時みたいにお説教なんてされながら食事して、貴女美味しいと感じれるかしら?」
「無理ですね。」
「でしょ?まぁ、あのワーハクタクは意図なんてしてないだろうけど、結果的に霊夢の心を掴んだ。」
「それが先ほどの食べる時の雰囲気と言う奴ですね?」
「ええ、所謂愛情と言う名のスパイスと言う奴ね。天然とは言え、見事だったわ。」
会場から大きな歓声が巻き起こる。
どさくさに紛れて「結婚してくれー!!」等と言う声まで聞こえてくる始末だ。
「なんか凄い歓声も聞こえますが・・・・・・では、幽々子先生はどうでしょうか?」
「幽々子にあのスパイスは効いて無いものね・・・・・・さて、どうなるかしらね?」
会場の注目が幽々子に集まる。
「何か勘違いしているようだけど、彼女の料理は素晴らしかったわよ~」
意外な幽々子の発言に会場がどよめく。
「ご飯の炊き方は完璧。これは他にご飯を出した4人の中で誰よりも上手だったわ~」
どよめきが大きくなる。
「さらに料理の味付け。ちょっとだけ見てたけど、貴女、私と霊夢で味付け変えたわね?」
「ああ、若い霊夢には少し濃い目の味付けを。幽々子嬢は解からないので、済まんが平均的な濃さにさせてもらった。」
「その気遣いも素晴らしいわ~。それに普段使い慣れている食材なのでしょうね。素材の引き出し方も完璧だったわ~」
「おぉっと!意外や意外!あの一般家庭料理が高評価を得ています!恐るべし、上白沢慧音!!」
会場から大きな歓声が巻き起こる。
「そこまで大した物ではないのだがな・・・・・・」
慧音は照れくさそうにポリポリと頬をかく。
「さぁ、これで全員の料理が出終わりました!!」
「幽々子、もう点数は決まってるの?」
「ええ、今出したわ~」
「どうやら早くも評価が出ているようです!!」
会場が大きくざわめく。
「では、料理を出した順に評価していただきましょう!」
「因みに得点は相対評価だから、一番を100点として、その料理から相対的に評価されるようになってるわ。」
紫が得点説明をする。
「皆さん担当審査員の評価は50点を取っていますから、幽々子先生の評価で全てが決まります。」
そして、幽々子が評価を読み上げる為、立ち上がる。
会場が静まり返った。
「では、最初に永遠亭代表の評価。」
ゴクリ・・・と鈴仙が唾を飲み込む。
「鈴仙・優曇華院・イナバの点数は・・・・・・・・・・・・」
「90点!!!」
歓声が上がると同時に鈴仙がガックリと膝を突く。
「あ~っと、鈴仙選手!惜しくも10点届かず!!敗北決定してしまいましたぁぁ!!!」
「あらら、早くもお持ち帰り決定ね。」
「とても美味しかったわ。でも、もう少しインパクトのある物を加えて欲しかったわね~。その点で他の人のに見劣っちゃったのよ。」
幽々子の解説も耳に届かず、鈴仙はどこかのボクサーのごとく真っ白に燃え尽きている。
「じゃ、続いて紅魔館代表ね~」
またもや場内が静まり返る。
「紅美鈴の点数は・・・・・・・・・・・・」
「100点!!!」
「ぃやったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
歓声で大きく揺れる場内に負けんばかりの声を上げる美鈴。
「おぉっとぉ!!早くも100点が出ましたぁぁぁ!!!」
「文句の付け様が無いほど美味しかったわ。スープ、麺、具が一体になって素晴らしい料理だったわよ~」
幽々子がそう加える。
「でも、勝負はまだよ。同点一位が複数居ないわけではないのだから。」
「それは確かに。では、次の評価をどうぞ!!」
「それじゃあ次はマヨヒガ代表ね~」
藍は目を瞑ったまま立っている。
「八雲藍の点数は・・・・・・・・・・・・」
「100点!!!」
またもや大きく揺れる会場。
藍はホッと溜め息をついて目を開く。
「またまた100点が出ましたぁぁぁぁ!!!」
「藍の料理もとても良かったわ。素材も良かったし、その生かし方も良かったわ。これも文句なしの100点だったわね~」
「ふふ・・・・・・やるじゃない、藍。」
「これで勝負の行方はわからなくなりました!!」
「じゃあ、次お願いね。」
「次は妖夢ね~」
会場が静まり返る。
「妖夢の点数は・・・・・・・・・・・・」
「50点。」
「え・・・・・・?」
会場が大きくどよめく。
「うわあぁぁぁぁっと!!なんと!!意外にも妖夢選手が凄まじい低評価!!!」
「な、何故なんですか!?幽々子様!!!」
妖夢は幽々子に叫んで問いかける。
「貴女、私の事を考えて料理を作ったでしょう?」
「は、はい!私は幽々子様の事だけを考えて・・・・・・」
「それが悪いと何で気付かないのかしら?」
「え?」
幽々子の言葉に妖夢は呆けてしまう。
「今回貴女の料理を食べるのは誰?私だけ?違うわね?蓬莱山輝夜も食べるわよね?」
「あ・・・・・・」
妖夢も漸く気付く。
「貴女は私の事だけ考えて料理をし、もう一人の審査員である蓬莱山輝夜をないがしろにした。それは料理人として許せる事じゃないわ。」
「そ、それは・・・・・・」
「確かに蓬莱山輝夜は貴女に高評価を出した。でも、それは素材が良く、偶々彼女の好みから逸脱しなかったから。」
幽々子の評価は続く。
「他の皆は平均的な味付け、後は上白沢慧音のような相手に合わせた味付けだった。でも、貴女は私のことしか考えてなかった!」
「ま、それじゃあ特別審査員の幽々子におべっか使ってる様な感じになるものね。」
紫が幽々子の言葉に付け足す。
「普段から私の事だけ考えてくれるのは嬉しいわ。でも、こう言う場では他の人の事も考えなければいけない。貴女はそれが欠如していた。それ故の評価よ。」
「う・・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢は頭を抱えてうずくまってしまった。
「なんと・・・・・・普段から幽々子先生の好みを知っていることが、逆に仇となってしまいました!!」
「あのお姫様には、別に普通の味付けで出していれば、もっと良い評価が出たのに・・・・・・妖夢もまだまだね。」
「有利と思われた妖夢選手、まさかの大敗です。」
「幽々子はこう言う所は厳しいのよ。」
「よく解かりました。では、次の評価を。」
「次は第六勢力の評価ね~」
ざわついていた会場が静まる。
「アリス・マーガトロイドの点数は・・・・・・・」
「100点!!!」
「またまた100点です!!!」
会場が歓声に包まれる。
「ま、当然よね。」
アリスはそう言うが、内心ヒヤヒヤしまくっていた。
「このお料理も良かったわね~。普通なら冷めたり解けたりしちゃう料理も魔法で保温されていたお陰でとっても美味しくいただけたわ。」
幽々子は続ける。
「何より、さっきも言ったけど、食べる順番を守ることで美味しい料理が尚美味しくなるのには感動したわ~」
「さぁ、これで100点が3人も揃いました!!」
「じゃあ、次で最後ね。」
「最後に人の里の代表者の評価ね~」
水を打ったように場内が静まる。
「上白沢慧音の点数は・・・・・・・・・・・」
「80点!!!」
人の里から大きな溜め息が漏れる。
「あぁ~っとぉ!上白沢選手、僅かに及ばず敗退してしまいました!!!」
「彼女の名誉の為に言うと、けっして悪かったわけではないわ~。ただ、やっぱり今回本気で作っていた人との相対評価になるとこうなっちゃうのよ~」
幽々子がそう説明する。
「もし、彼女が本気で勝負にこだわってたら・・・・・・どうなってたかしらね~?」
「惜しかった!いや、しかし勝負を捨ててまで他人を思うその姿はとても美しかったです!!私は上白沢選手に敬意を払いたいと思います!!」
場内からも割れんばかりの拍手が注がれる。
「そんな大した事をしたつもりは無いんだがな・・・・・・」
慧音は照れている。
「さて、100点が3人も出揃っちゃったわね。」
「ええ、それでは特別審判の四季映姫・ヤマザナドゥ先生、お願いします。」
「解かりました。」
映姫は背がちっちゃいので台の上に載っている。
「まず、気になるであろう勝負を決めた点を教えましょう。」
会場内が静まる。
「私が勝負の点に決めたのは・・・・・・・・・食材です。」
会場がどよめく。
「この食材こそが、今回の勝負の決め手になりました。」
そこで一息つき、
「それでは審判を下します。」
(裁判じゃないだろう。)
皆心の中で思ったが口には出さなかった。
「優勝者・・・・・・・・・・・・」
「紅美鈴!!!」
「ぃぃぃやっっっったああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
凄まじい大歓声と共に美鈴が跳ね上がって喜ぶ。
「決まったぁぁぁぁぁぁ!!!優勝は紅美鈴選手です!!!!」
「待って!」
アリスが叫ぶ。
場内も一旦静まる。
「私の素材は厳選したものよ!?食材が勝敗の分け目と言うなら、何で!?」
「解かりませんか?」
映姫が静かに尋ねる。
藍は抗議をする様子すらない。
解かっているのか、はたまた決定に従っているのか。
「紅美鈴さんの素材はそれほど高級なものじゃないんですよ。」
「え?」
「ええ、私の素材は恐らく一般の方でも簡単に手に入る様な物です。」
美鈴がアリスにそう言う。
「な、なら尚更解からないわ!」
「良いですか?この評価は相対評価です。ならば、素材の良い貴女方は自然、彼女より上でなくてはいけないのですよ。」
「あ!」
アリスも漸く気付いた。
素材が上なら自然、点数は上を行かなければならない。
「同点、と言う時点で貴女方は「料理の腕」で彼女に敗れたと言うことです。それが判決の理由です。」
「く・・・・・・・・・・・・」
アリスもそこまで言われてはもう反論は出来なかった。
「それでは、改めて・・・・・・・・・・・・優勝者、紅魔館代表。紅美鈴選手です!!!」
再び大きな歓声が巻き起こる。
その後、景品の贈呈などが行われ、料理対決は大盛況の内に幕を下ろした。
本作品をご覧になる前に、過去の作品をご覧になる事をお勧めします。
なお、前回の初期掲載時に
小町→妖夢担当 輝夜→アリス担当 となってましたが
小町は白玉楼の代表代行の筈と言うご指摘を受け、
小町→アリス担当 輝夜→妖夢担当 と変更しました。
初期の作品をご覧になった方には混乱させる事となってしまい、この場でお詫びいたします。
では、以上の事を踏まえてご覧になってください。
対決開始
「さぁ、ついに始まりました!幻想郷料理対決!!因みに制限時間は3時間ですよ!!」
「さて、どんな料理を作るのかしらね?」
「出来た方から担当審査員と特別審査員に料理を持っていってください!」
そして、司会の文と解説の紫は選手をざっと見渡す。
「さて、それでは、まずは紅美鈴さんから見てみましょう。」
美鈴は料理台の上に大きな粘土のような塊を置いて、それをこねている。
「紫先生。美鈴選手は何を作ってるのでしょうか?」
「あの塊、彼女の系統、それらから推測できるのは・・・・・・」
「出来るのは?」
「ラーメンね。」
「らーめん?」
聞きなれない単語に文が首を捻る。
幻想郷には知れ渡っていない食べ物だから当然だ。
「そう、外の世界の中国と言う国に伝わる麺料理よ。今では結構色んな所でも出回ってるみたいだけど。」
「麺料理・・・・・・蕎麦のようなものですか?」
「感覚的には近いわね。一応、中華ソバって言われるくらいだから。でも、材料的には蕎麦よりうどんに近いわ。どちらとも別物だけどね。」
「どんな風に違うんでしょうか?」
「蕎麦やうどんは基本はしょうゆとダシだけでツユを構成するわね?」
「ええ。」
「でも、ラーメンの場合はしょうゆ以外にも塩や味噌、とんこつ等と言ったツユが存在するのよ。」
「なんと!?しかし、蕎麦をそれらのツユで食すのはちょっと美味しそうじゃありませんね・・・・・・」
確かに、蕎麦をそれらのスープで食べたらあまり美味しくはなさそうだ。
「それは大丈夫よ。なんせ見ての通り主体となる麺が違うんだから。」
「言われてみれば、色をとってみても違いますね。」
「うどんと材料が似てるって言ったけど、うどんは、小麦粉、澱粉、食塩が基本となるのに対し、ラーメンの麺は小麦粉、食塩は同じだけど他に植物油や卵白等、色々混入するの。」
「確かに、それだと麺の時点で味は違いますね。」
「それにラーメンは蕎麦と違ってザルに置くような事はしない。ツユ、スープと言うんだけど、そのスープに麺を入れたまま食すのが基本なのよ。」
「ははぁ、月見蕎麦とかの様な感じにですか?」
「ええ、そうよ。」
「成る程~。早速外の世界の料理が出ましたね~。」
「別に幻想郷でも作れるわよ?」
「え!?そうなんですか!?」
「材料は幻想郷でも出来る物だもの。ただ、作り方が広まっていないだけの話。」
「は~・・・・・・」
「それにまぁ、紅魔館は外との交流があまり無いから、彼女の持つ中華料理が広まる事が無かったんでしょう。」
「なるほど。逆に言うと紅魔館では結構普通であると?」
「普通かどうかは知らないけど、間違いなく知っていたでしょうね。だからこそ彼女を送り込んだのよ。」
紫はちらりとレミリアの方をのぞき見る。
すると、レミリアは意味ありげに笑みを浮かべた。
「な、なるほど・・・・・・」
「ラーメンはスープと麺が命と言っても良いわ。さて・・・彼女がそれを何処まで引き出せるのかが楽しみね。」
「メイド長、十六夜咲夜さんを押しのけて出て来た訳には理由があったわけですね。」
「ええ、これは手強いわよ。未知の料理に加えて彼女は一品料理。」
「一品料理ならその一品が上手くいけば高得点確実ですからね。」
「ええ。品目を多く出せば良いという物でもないわ。品目を増やせば増やすほど、何かが足を引っ張る危険性が増えるのだから。」
「逆も然りですけどね。一品だけに失敗したら即敗北決定。取り返せるものがありませんからね。」
「ええ。さて、それじゃあ次にいってみましょうか。」
「えぇっと、次は妖夢選手を見てみましょう。」
妖夢はというと何やら鉄板の上で魚を焼いている。
「魚・・・・・ですね。」
「あれは鮎ね。」
「鮎ですか。あれは腸まで食べれる美味しい魚ですよね。」
「ええ。」
「ですが、妖夢選手は何故あのような焼き方を?直火でこんがり焼いても良いのでは?」
「恐らく妖夢は頭まで食べれるように焼くつもりね。」
「頭まで?」
「頭まで美味しく焼こうと思っても直火でやると体が焦げちゃうのよ。」
「ああ、確かに。」
「だから、ああいう風に火から少し離した所に鉄板を置いて火力を弱めてる。」
「なるほど。それで全身くまなく焼くんですね?」
「ええ。時間は掛かるけど、頭も美味しいから、これは良い線行ってるわね。」
「お?妖夢選手、今度はまだ余っている鮎を捌きに掛かりましたね。」
「成る程。妖夢の料理は鮎尽くしね。」
「鮎だけで構成される料理ですか?」
「恐らくね。ごはんに今やっている鮎の塩焼き、それに鮎のあらい、そして恐らくは鮎のお吸い物ね。」
「あらい、とは?」
「あらいっていうのは魚を薄い削ぎ切りや糸切りにして、冷水や氷水につけて箸などで数分掻き混ぜる事を言うのよ。」
「ああ、だから「あらい」と言うんですね。」
「そう。ついでに冷水とかに付けるから身も引き締まって美味しくなるわ。」
「刺身のようなものですね。」
「そうね。」
「所で関係ない話ですが、何で刺身って言うんでしょうね?切ってるのに。」
「ああ、それは昔の武士達が切り身の「切る」、即ち「斬る」という言葉を嫌って「刺」身と言うそうになったそうよ。」
「何かくだらない理由ですねぇ。」
「まぁ、人間らしいと言えばそうだけどね。」
「さて、妖夢選手も期待出来そうという事で、次は・・・・・・」
「うどん娘ね。」
「うどん娘言うな!!!」
律儀に反論する鈴仙。
「だって作ってるの、うどんじゃない。流石は永遠のうどん娘。うどんGainだわ。」
「なんで私だけこんな扱いなのよ・・・・・・・・・きぃぃぃぃぃ!!!」
鈴仙はうどんの生地をバンバン叩きつけている。
「うーん・・・・・・八つ当たりながらも生地を生成するには良い方法ですね。」
「そうね。でも、冗談は抜きにして、あの娘の生地、かなり良いものよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、見れば解かるわ。あれほどの生地の素材、どうやって手に入れたのかしら?」
紫はそう言って輝夜を見るが、輝夜は視線を合わせようとすらしない。
「彼女はどんなうどんを作るんでしょうか?」
「恐らく月見うどんね。」
「月の兎だからですか?」
「さぁ?ただ、あそこにウコッケイの卵が置いてあることからそう推測したまでよ。」
「あ、適当に言ったんじゃなかったんですね?」
「失礼ね。ちゃんと推理してから言ってるわよ。」
「それは失礼しました・・・・・・では、お次は?」
「次はワーハクタクね。」
「あら?慧音さんはまだ作ってないみたいですね。」
「食材を選び中ね・・・・・・って言うか、何なの?あの量。」
慧音の前には食材が山盛り積んであった。
どれも里の者からの協力の申し出の結果である。
慧音の人望が良くわかる景色だ。
「まぁ、あれじゃまだまだ料理に取り掛から無そうね。」
「じゃあ次に行きましょう。」
「さて、次は藍ね。」
「藍さんは・・・・・・あれは豚肉ですか?」
「ええ、藍の料理はズバリ「カツ丼」よ。」
「カツ丼ですか。」
「ええ、でも藍が使っているのはかなり質の良い豚肉だわ。」
「外の世界のですか?」
「まさか。それじゃあ素材に差がつきすぎるじゃない。あくまで幻想郷で取れる食材よ。」
「へぇ・・・意外と公平なんですね。」
「あら?そんな反則みたいな真似して勝っても面白くないじゃない。勝負は接戦だから良いのよ。」
「なるほど、より面白くする為に、と言う事ですか。」
「そうよ。」
「さて、それでは主の紫先生から見て藍さんの様子はどうですか?」
「悪くないわ。素材も可能な限り良いものを揃えたし、失敗さえしなければ優勝狙えると思うわね。」
「まぁ、毎日紫先生の代わりに料理作ってたわけですから、腕前は相当なものでしょう。」
「あら?今でも藍に料理で負けはしないわよ?」
「え?紫先生は料理上手なんですか?」
「貴女だって知ってるでしょ?長生きしてる妖怪は大抵芸達者なのよ。私が料理に秀でても不思議じゃないでしょ?」
「まぁ、そうなんですが・・・・・・・・・・貴女の場合は普段のイメージが悪すぎるんですよ。」
「失礼しちゃうわね。」
「そう思われるのが嫌ならもう少し普段の行いを改善しては如何ですか?」
「お生憎様。今のままで良いと思ってるのよ。」
「始末が悪いですね。」
「残念だけど、貴女に理解できる話じゃないわ。さ、それはともかく次にいきましょう。」
「そうですね。最後はアリス選手ですか。って、うわ、凄い料理の仕方を・・・・・・」
「へぇ・・・考えてるわね。」
アリスは己では料理せずに人形に料理をさせていた。
まぁ、もっとも人形はアリスが操っているのだからアリスが作っていると言っても間違いではない。
「3、4、5・・・・・・6体の人形を同時に操ってますよ・・・・・・・・・」
その姿に観客からどよめきが起きる。
「作っている物は・・・・・・らしいと言えば、らしいわね。」
「あれは何を?私にはちょっと解からないんですが・・・・・・」
「それはそうね。あれは外の料理でフランス料理という分類に入るものよ。」
「外の料理!?なぜアリスさんが外の料理を?」
「別に難しいことじゃないでしょう。あの娘はあの紅魔館の図書館から本を借りてるんだから。」
「何!?初耳だぞ、パチュリー!!」
審判員席の魔理沙が叫ぶ。
「まぁ、魔理沙の場合は強奪だけど、アリスの場合はちゃんとした貸出だからよ。」
パチュリーに代わって紫が答える。
「どういう事だ?」
代わって答えた紫に魔理沙が尋ねる。
「貴女の場合は強奪に加えて自分の寿命まで「借りる」と言う始末。こんなの誰だって貸したくなくなるわよ。」
紫の説明にパチュリーがうんうんと頷く。
「対してアリスの場合は期限を決めて借りる上に、貸出許可が下りないものは借りないわ。その上、利用料代わりに手土産も持ってきてる。これなら別に貸したって悪くは無いでしょう。」
またもやパチュリーがうんうんと頷いている。
「で、なんで貴女がそれを知ってるのよ?」
人形を動かすのを止めずにアリスが尋ねる。
「企業秘密よ♪」
「どうせ隙間から覗いてたんだろうぜ。」
バレバレだぜ、と加えて魔理沙が言う。
「本当、良い趣味してるわ。」
ジト目でアリスが言う。
「あら?誉めても何もでないわよ?」
「誉めてないと思いますよ?紫先生。」
文も呆れながら言う。
「ま、それはともかく、そう言う理由でアリスは図書館に転がり込んでくる外の世界の本の知識も持ってるのよ。全部とは言えないでしょうけど。」
「なるほど、それで外の世界の料理を知ってるのですか。」
「もちろん、この幻想郷に存在しない食材の料理は作れないけど、あれば当然作れるわ。」
「と言うことは、今アリスさんが作っているのは幻想郷内でも作れる「ふらんす料理」と言う事ですね?」
「ええ。でも、本来はフランス料理は順を追って出すものなのよ。」
「順を追う?」
「ええ。良くあるのは最初にスープ、次にサラダ、その次に魚料理、そしてメインの肉料理、最後にデザート。」
「一品終わったら次の、と言う事ですか?」
「そうよ。でも、この大会でそんな事をすれば、担当審査員はともかく、特別審査員の幽々子の場合は他の選手の料理が間に入ってしまう確率が高いわ。」
「それだと不都合が?」
「当然でしょ?意味も無く並べて出してるんじゃないのよ。前の料理が次の料理を生かすためのステップになっている。そこに横槍が入れば?」
「ああ、その前準備が無意味になってしまいますね。」
「そう。だからアリスはああやって人形を駆使して本来一品ずつ作るのを一気に作ってしまおうとしてるのよ。」
「なるほど・・・・・しかし、人形使いのアリスさんならではですね。」
「そうね。自分の能力を良く生かした方法だと思うわ。」
「さて、それではまだ時間が掛かりそうなので私は一旦撮影してきますね。」
「行ってらっしゃい。こっちの仕事も忘れないでね?」
「解かってますよ。」
そう言って文は料理風景の撮影に行った。
それから時間が経って
「ただいま帰りました。」
「良い所ね、そろそろ美鈴の料理が出来上がりそうよ。」
「おお?では見てみましょうか。」
美鈴は既にスープを作り終え、麺を茹で始めていた。
すると
「出来ました!!」
別の所から声が上がった。
最初に完成させたのは
「あら?うどん娘の方が早かったわね。」
鈴仙が最初に料理を完成させた。
「鈴仙選手は紫先生の予想通り月見うどんのようですね。」
「ええ。さて、どういう評価が出るかしらね?」
鈴仙お盆にうどんを二つ乗せて、それぞれ魔理沙と幽々子に差し出す。
「それでは、審査員の先生方。ご賞味してくださいな。」
紫の台詞と共に魔理沙、幽々子共にうどんを食べ始める。
「担当審査員の方は食べ終えたら評価をお願いします。特別審査員の幽々子先生は全員分食べ終わるまで評価はお待ちください。」
文がそう告げる。
「む!!」
魔理沙が唸る。
「この麺の歯ごたえ・・・・・・良くダシが効いているツユ・・・・・・・・・」
言いながらも魔理沙は箸を止めない。
そして、ツユが少なくなったところでツツッと卵を丸呑みする。
通だ。
「そしてこの卵の濃厚な味わい。」
ドンッ!と空になった丼を机に置く。
なんか食べ方まで男らしい。
「それでは魔理沙先生。評価をどうぞ!!」
「私は満足だ!50点!!」
観客から大きな歓声が上がる。
「よしっ!!!」
鈴仙も小さくガッツポーズをとる。
ひとまず最初の難関は越えた。
「じゃあ、幽々子先生も評価はともかく、感想をお聞きしましょうか。」
紫が幽々子に話を振る。
「そうね~。まず麺だけど、コシがあって歯ごたえも良かったわ。そしてツユ。これは昆布を茹でた後、更に鰹節を加えてるわね~?」
「はい。」
幽々子の問いに鈴仙が答える。
「鰹節の量も適量よ。そして、最後にウコッケイの卵。どれをとっても文句が無かったわ。私も満足よ~。ご馳走様~」
幽々子のその言葉に再び歓声が起こる。
そして鈴仙も再び小さなガッツポーズ。
その歓声が鳴り止まぬうちに
「出来ました!!」
またもや誰かが完成させた。
「おおっと、鈴仙選手に続いて美鈴選手も料理を完成させました。」
「どうやら美鈴は醤油で来た様ね。」
「ツユ・・・スープの事ですか?」
「ええ。無難な選択ね。豚骨や味噌は人によっては敬遠するのよ。」
「なるほど。さて、お味の方は如何でしょうかね?」
美鈴は盆に載せた醤油ラーメンを阿求と幽々子の前に置く。
「さぁ、それじゃ続いて紅美鈴選手の料理をご賞味ください。」
文の言葉と共に阿求と幽々子が箸を付ける。
両名共に無言。
が、幽々子はともかく、阿求の方は段々と箸の進みが速くなる。
ややして阿求はラーメンを食べ終えた。
「さて、阿求先生食べ終えたようです。」
流石にスープは残っているが、子供の阿求にスープまで完食は酷だろう。
「それでは阿求先生、評価をどうぞ!」
文が阿求に評価を求める。
「食べた事のない料理だったので、正当な評価は出来ないかもしれません。」
阿求のその言葉に観客はざわめき、美鈴の表情が少し硬くなる。
「ですが、それほど食の太くない私でも、せめて麺だけでも完食したいと思わせたこの料理が不出来などとは決して思っていません。」
観客からざわめきが大きくなる。
「美味しかったです。私の評価は満点の50点です。」
大きな歓声が巻き起こる。
美鈴はホッとしたように胸をなでおろす。
「さて、それじゃ続いて幽々子、お願いね。」
紫が幽々子に感想を尋ねる。
「まず最初に。美味しい料理だったわ~。麺も蕎麦やうどんと違った味で新鮮だったし、他にも具沢山なのも良かったわね~」
美鈴のラーメンにはメンマ、チャーシュー、葱、そして海苔が乗せてあった。
「そしてスープ。一見只の醤油のツユかと思ったけど・・・・・・これ、鶏がら使ってるわね~?」
「驚きました。よく解かりましたね。」
美鈴が驚きながら答える。
「ふふ・・・・・・私を侮っちゃダメよ~?その鶏がらがよりこの「らーめん」全体を美味しい物にしてたわ。美味しかったわよ、ご馳走様~」
再び歓声が起こる。
「おおっと!これも高評価が期待できそうだ!!早くも激戦の予感です!!」
「出来たぞ!!」
「あら?藍も完成したみたいね。」
次いで藍の料理が完成した。
「藍選手はカツ丼ですね。おや?カツ丼の上に卵が?」
「ああ、卵とじね。」
「卵とじ?」
「カツ丼のカツの上に掻き混ぜた卵を乗せて軽く蒸すの。そうすると上手い具合に卵が固まって蓋をしたようになるのよ。」
「ああ、それで閉じなんですね。」
「そう。そうすることで中の熱気も閉じ込められるから、熱さと旨みも逃がさないの。」
「なるほど。では、レミリア先生と幽々子先生、どうぞ!」
「ふん・・・まさか私が貴女の料理の担当とはね。」
「口に合わなければ捨ててくれれば良いさ。それは所詮、私の料理がその程度だっただけの事だからな。」
「不味かったら遠慮なくそうしてやるわ。」
藍はレミリアに渡した後、幽々子にも渡し、そして下がる。
「では、お二方とも食べてください。」
レミリアがまず箸を付ける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言のまま箸を進める。
が、顔に飯粒が付く度に横で日傘を差して居る咲夜が顔を拭いてる姿は何か微笑ましい。
ややもしてレミリアも幽々子も完食する。
「さて、それじゃあレミリア先生に評価をお尋ねしようかしら?」
紫が意味ありげに微笑みながら言う。
「最初に言ったはずよ。不味かったら遠慮なく捨てると。」
ふん、と憮然としながらレミリアは言う。
「文句など無かったわ。50点よ。」
そしてそう続けた。
歓声が巻き起こる。
藍も少しほっとした様子だ。
「あら?意外ね。藍の料理だから評価落すと思ったのに。」
やはり意味ありげに笑いながら紫が言う。
「私を馬鹿にしてるの?そんな事して勝ってもただの道化だわ。評価は正当にするわよ。」
「それは失礼したわ。じゃあ、続いて幽々子お願いね。」
全員の視線が幽々子に移る。
「美味しかったわよ~。お肉は美味しいし、衣はツユが染み込んでいたけど、染み込みすぎず、少なすぎず。」
やはり会場内がざわめき始める。
「卵もあれはウコッケイね~?それがトンカツと合わさってとても美味しかったわ~。ご飯もちゃんと炊けてたし・・・良かったわよ、ご馳走様~」
やはり大歓声が起こる。
「またもや担当審査員満点に続いて特別審査員の印象も良さそうです!これは本当に誰が勝つかわかりません!!」
「さて、後の三人はまだ料理中みたいね。」
「おや、妖夢選手が完成しましたか?」
「あら?そのようね。後はお吸い物を加えて終わりね。」
紫の言うとおり、妖夢は最後のお吸い物を盆に乗せ終わり、
「出来ました!!」
完成を告げた。
「妖夢選手も完成した模様です。料理は紫先生の予想通りの鮎尽くし。」
ごはんに鮎の塩焼き、鮎のあらい、そして鮎のお吸い物、そして漬物少々だった。
妖夢は料理を輝夜と幽々子に差し出し、そして下がる。
「では、両先生。ご賞味ください。」
文の言葉で輝夜と幽々子が箸を付ける。
輝夜は上品に食べている為、進みが遅い。
漸く半分は食べ終えたかと言う頃
「出来たわよ!!」
アリスが料理を完成させた。
観客の視線もアリスの方へ移る。
「おぉっと!妖夢選手の評価の前にアリス選手が完成させました!」
アリスが料理を小町と幽々子、それぞれに持っていく。
皿が多いためか、一つずつ持っていく。
「しかし、あれはなんと言う料理なんでしょうか?名前が今一解かりませんね。」
外の世界の料理なのだから仕方が無い。
「説明するわ。まずはスープだけど、あれはかぼちゃのスープね。」
「ほほぅ・・・かぼちゃの?」
「かぼちゃを薄く切ってから煮とかしたスープに、更にかぼちゃの実とベーコンを入れて軽く生クリームを掛けた物ね。」
「サラダは何でしょうか?」
「あれは山羊のチーズと生ハムを軽く暖めて、菜っ葉の上に置いた物よ。名前はほぼそのまんまと思って良いわ。」
「なるほどなるほど。お次は肉・・・・・・鶏肉ですかね?」
「そうね。あぶった鶏肉に白ワインを入れて沸騰させ、煮詰めてから生クリームを入れて、更にまた少し煮た物よ。」
「飾るように付いているのはトマトとインゲン、それから玉ねぎですね。」
「そう、名付けてチキンのクリーム煮ね。最後のデザートはレモンのシャーベットだわ。」
ついでにライスも付いている。
「なんと言うか、見た目も色鮮やかですね。」
「ええ、幻想郷にある料理とは一線を画すわね。」
紫の解説の間にアリスは両審査員に料理を配り終えた。
「それでは両先生、ご賞味ください!」
小町と幽々子が箸・・・と言うよりスプーンをつけ始めた。
因みに幽々子の方は一足早く妖夢の料理を完食済みである。
そして、ややしてから
「ごちそうさま。」
綺麗に口元を拭きながら、輝夜が妖夢の料理を完食した。
「輝夜先生、妖夢選手の料理を完食しました!それでは、評価をどうぞ!!」
今度は視線が輝夜に注目する。
「良い物だったわ。素材も新鮮だったし、調理も良くされてる。ちょっと味が濃かった気がしないでもないけど・・・・・・それでも十分美味しかったわ。」
薄く笑いながら輝夜はそう告げ
「私の評価は50点満点よ。」
そして、そう評価を下した。
途端、歓声が巻き起こる。
「またまた50点満点だ!!」
「まぁ、担当審査から50点未満でたらその時点で終わりといっても良い訳だしね。」
「そうですねぇ・・・それでは、幽々子先生はアリス選手の料理を食べている最中なのでもう少し待ちましょう。」
その頃、小町は
「小町、スープは音を立てて飲んではいけません。スプーンもカチャカチャ鳴らしてはいけません。」
「え、映姫様・・・好きに食べさせてくださいよ・・・・・・」
閻魔様に説教されていた。
「はいはい、閻魔様こっち来て下さいね~。」
「な!?何をするのですか、八雲紫。」
映姫は紫に隙間から紫の側まで引っこ抜かれた。
「ダメじゃない、食事中にお説教なんてしちゃ。ご飯が不味くなっちゃうでしょ?」
「う・・・・・・」
「それとも、まさか閻魔様ともあろうお方が選手を貶めようと?」
「うぅ・・・・・・つい、何時もの癖が出ました。確かにこの状況では不適切でしたね。」
「さ、小町先生。気にせずお食べくださいな。」
「悪いね、感謝するよ。」
そう言って再び小町は食事を続けた。
それから暫くして小町と幽々子も料理を食べ終えた。
「では、まずは小町先生の評価をどうぞ!」
文に促されて小町が口を開く。
「そうだねぇ、普段の料理と違うからちょっと食べ難い感も否めなかったねぇ。」
その言葉にアリスの表情がやや曇る。
「けど、そんな事を帳消しに出来るくらい美味かったよ。あたいの評価は50点さね。」
その言葉にまたもや歓声が起こる。
「ふん、当然ね。」
後ろ髪をファサッとかき上げながらも、内心ホッとしているアリスだった。
「さて、それでは幽々子先生も食べ終わったようなので、まずは妖夢選手の感想からお願いします。」
幽々子が完食し終えたのを見て文が幽々子に言う。
「まず最初に、妖夢。」
「はい。」
名前を呼ばれて返答をする妖夢。
「私も蓬莱山輝夜も同じ味付けの物を出したのよね?」
「はい。お二人とも同じ味付けの料理をお出ししました。」
「解かったわ。それじゃ感想だけど・・・頭まで食べれるように焼いた鮎、良く身の締まったあらい、そして私の好みに合った味付けのお吸い物。どれも美味しかったわ。」
やはり歓声が起こる。
「流石は普段幽々子先生の料理を担当しているだけはあります!これはもしかするのでしょうか!?」
「ふふふ・・・・・・さて、どうかしらねぇ?」
紫は意味ありげに笑った。
「じゃあ、続いてアリスの料理ね~」
そのまま幽々子が続ける。
「私もちょっと食べ辛い感はあったけど、味はどれも良かったわ。保温と保冷の魔法もかけてあったから美味しさも保てたしね~」
普段順に出す物を一遍に出す際のデメリットは、アリスは魔法で補完していた。
「最初にスープを飲んで、その後にあっさりしたサラダで一旦口直し、そしてその後に味の濃い肉料理。順に食べると美味しさがまた違うのね~」
アリスは勝ち誇ったように笑みを浮かべている。
「そして最後にデザートで口に残った濃い味を消し去る。完璧だったわ~」
かなりの高評価な言葉に観客からも大きな歓声が上がる。
「全員が全員高評価の嵐!やはり各集落の代表は伊達ではないようです!!」
「さて、残るはあのワーハクタクね。」
慧音は食材選びに手間取った為に他の5人より遅くなってしまっていた。
「しかし・・・・・・慧音選手の料理は・・・・・・」
「見たところ、ごはんに白身魚の塩焼き、野菜炒め、味噌汁・・・・・・朝の普通の食卓ねぇ。」
「はぁ・・・・・・慧音選手は勝負を投げてるんでしょうか?」
「さて?もしかしたら何か思惑があるかもしれないわね。」
「完成したぞ。」
そして最後の慧音も料理が完成する。
「やはり慧音選手はあれだけのようです。」
「さて・・・何を考えてるのかしら?」
慧音は霊夢と幽々子に料理を差し出す。
「ちょっと、慧音。なんでこんなに普通のなのよ。」
豪勢なものが食べれると期待していた霊夢が不服を漏らす。
「すまんな、博麗の巫女。私は皆の様な物は作れない。私の担当になった時点で諦めてくれ。」
「なんなのよそれ~」
霊夢はとても不満そうだ。
「しかし、博麗の巫女。お前は最近殆どまともな食事をしてないそうじゃないか。」
「う、うるさいわね。ウチの食事情は厳しいのよ。」
「だから、今回は勝負云々よりもお前の健康を考えて作らせて貰ったよ。」
「え?」
霊夢がきょとんとする。
「栄養のバランスが崩れると体調を崩すからな。それでは巫女の仕事も出来まい。」
慧音は続ける。
「まぁ、味の方は悪いかも知れんが、その分量を多くしておいた。質より量で我慢してくれ。」
慧音は少し罰が悪そうな笑みを浮かべる。
つまり慧音は、審査員博麗霊夢に作ったのではなく、博麗霊夢個人の為に料理を作ったと言う事だ。
「幽々子嬢も、こんな三文芝居に付き合わせてすまないな。」
「あらあら、食べてみないと解からないわ~」
「あまり期待しないでくれ。」
困ったように笑う慧音。
「う・・・・・・」
「ん?」
霊夢から声がこぼれて慧音がそちらを見る。
「うあああぁぁぁぁぁぁん!!!!」
霊夢が泣いた。
「ど、どうした!?博麗の巫女!?す、すまん!!そんなに嫌だったか!?」
慧音が突然泣き出した霊夢に驚いてあたふたする。
「ぢがう・・・ぢがうのよぉ・・・・・・」
が、霊夢はそれを否定する。
「だっで・・・こんなに優しくしてもらっだ事なんて無がっだから・・・・・・うああぁぁぁぁぁぁん!!!」
意外
霊夢は優しさに弱かったようだ。
と言うか、普段が普段なのであまり優しくされるような事も無かった為だろう。
泣きながらの為か、言葉が美味く発音できていない。
「うわ、鬼すらぶっ飛ばす博麗の巫女がマジ泣きです。」
「ぐずっ・・・・・・余計な事言うとぶっ飛ばすわよ、鴉天狗。」
涙を拭いながら霊夢は文を睨む。
「失礼しました。それでは、両先生、ご賞味なさってください。」
霊夢は泣きながらも凄い勢いで料理をかき込んでいる。
味など解からなそうな食べ方だが、恐らく今の霊夢には最高の料理に感じられている事だろう。
霊夢、幽々子共に早くも料理を食べ終えた。
「早い、二人ともあっという間に食べてしまいました!」
「凄かったわねぇ・・・・・・それじゃ、まずは霊夢の評価から。」
紫が霊夢に評価を尋ねる。
「ぐずっ・・・・・・美味しかったに決まってるじゃないの!50点よ!!うああぁぁぁぁん!!!」
また泣いてしまった。
「おぉっと!あの料理からこの得点!しかし、良いんですか?紫先生。」
「あら?有りに決まってるじゃない。料理とは如何に美味しく食べて貰うかがポイントよ。それは料理の過程然り、食べる時の雰囲気然り、ね。」
「なるほど。慧音選手は見事に霊夢先生の心を掴んだ、と。」
「そうね。それにさっきの死神の時みたいにお説教なんてされながら食事して、貴女美味しいと感じれるかしら?」
「無理ですね。」
「でしょ?まぁ、あのワーハクタクは意図なんてしてないだろうけど、結果的に霊夢の心を掴んだ。」
「それが先ほどの食べる時の雰囲気と言う奴ですね?」
「ええ、所謂愛情と言う名のスパイスと言う奴ね。天然とは言え、見事だったわ。」
会場から大きな歓声が巻き起こる。
どさくさに紛れて「結婚してくれー!!」等と言う声まで聞こえてくる始末だ。
「なんか凄い歓声も聞こえますが・・・・・・では、幽々子先生はどうでしょうか?」
「幽々子にあのスパイスは効いて無いものね・・・・・・さて、どうなるかしらね?」
会場の注目が幽々子に集まる。
「何か勘違いしているようだけど、彼女の料理は素晴らしかったわよ~」
意外な幽々子の発言に会場がどよめく。
「ご飯の炊き方は完璧。これは他にご飯を出した4人の中で誰よりも上手だったわ~」
どよめきが大きくなる。
「さらに料理の味付け。ちょっとだけ見てたけど、貴女、私と霊夢で味付け変えたわね?」
「ああ、若い霊夢には少し濃い目の味付けを。幽々子嬢は解からないので、済まんが平均的な濃さにさせてもらった。」
「その気遣いも素晴らしいわ~。それに普段使い慣れている食材なのでしょうね。素材の引き出し方も完璧だったわ~」
「おぉっと!意外や意外!あの一般家庭料理が高評価を得ています!恐るべし、上白沢慧音!!」
会場から大きな歓声が巻き起こる。
「そこまで大した物ではないのだがな・・・・・・」
慧音は照れくさそうにポリポリと頬をかく。
「さぁ、これで全員の料理が出終わりました!!」
「幽々子、もう点数は決まってるの?」
「ええ、今出したわ~」
「どうやら早くも評価が出ているようです!!」
会場が大きくざわめく。
「では、料理を出した順に評価していただきましょう!」
「因みに得点は相対評価だから、一番を100点として、その料理から相対的に評価されるようになってるわ。」
紫が得点説明をする。
「皆さん担当審査員の評価は50点を取っていますから、幽々子先生の評価で全てが決まります。」
そして、幽々子が評価を読み上げる為、立ち上がる。
会場が静まり返った。
「では、最初に永遠亭代表の評価。」
ゴクリ・・・と鈴仙が唾を飲み込む。
「鈴仙・優曇華院・イナバの点数は・・・・・・・・・・・・」
「90点!!!」
歓声が上がると同時に鈴仙がガックリと膝を突く。
「あ~っと、鈴仙選手!惜しくも10点届かず!!敗北決定してしまいましたぁぁ!!!」
「あらら、早くもお持ち帰り決定ね。」
「とても美味しかったわ。でも、もう少しインパクトのある物を加えて欲しかったわね~。その点で他の人のに見劣っちゃったのよ。」
幽々子の解説も耳に届かず、鈴仙はどこかのボクサーのごとく真っ白に燃え尽きている。
「じゃ、続いて紅魔館代表ね~」
またもや場内が静まり返る。
「紅美鈴の点数は・・・・・・・・・・・・」
「100点!!!」
「ぃやったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
歓声で大きく揺れる場内に負けんばかりの声を上げる美鈴。
「おぉっとぉ!!早くも100点が出ましたぁぁぁ!!!」
「文句の付け様が無いほど美味しかったわ。スープ、麺、具が一体になって素晴らしい料理だったわよ~」
幽々子がそう加える。
「でも、勝負はまだよ。同点一位が複数居ないわけではないのだから。」
「それは確かに。では、次の評価をどうぞ!!」
「それじゃあ次はマヨヒガ代表ね~」
藍は目を瞑ったまま立っている。
「八雲藍の点数は・・・・・・・・・・・・」
「100点!!!」
またもや大きく揺れる会場。
藍はホッと溜め息をついて目を開く。
「またまた100点が出ましたぁぁぁぁ!!!」
「藍の料理もとても良かったわ。素材も良かったし、その生かし方も良かったわ。これも文句なしの100点だったわね~」
「ふふ・・・・・・やるじゃない、藍。」
「これで勝負の行方はわからなくなりました!!」
「じゃあ、次お願いね。」
「次は妖夢ね~」
会場が静まり返る。
「妖夢の点数は・・・・・・・・・・・・」
「50点。」
「え・・・・・・?」
会場が大きくどよめく。
「うわあぁぁぁぁっと!!なんと!!意外にも妖夢選手が凄まじい低評価!!!」
「な、何故なんですか!?幽々子様!!!」
妖夢は幽々子に叫んで問いかける。
「貴女、私の事を考えて料理を作ったでしょう?」
「は、はい!私は幽々子様の事だけを考えて・・・・・・」
「それが悪いと何で気付かないのかしら?」
「え?」
幽々子の言葉に妖夢は呆けてしまう。
「今回貴女の料理を食べるのは誰?私だけ?違うわね?蓬莱山輝夜も食べるわよね?」
「あ・・・・・・」
妖夢も漸く気付く。
「貴女は私の事だけ考えて料理をし、もう一人の審査員である蓬莱山輝夜をないがしろにした。それは料理人として許せる事じゃないわ。」
「そ、それは・・・・・・」
「確かに蓬莱山輝夜は貴女に高評価を出した。でも、それは素材が良く、偶々彼女の好みから逸脱しなかったから。」
幽々子の評価は続く。
「他の皆は平均的な味付け、後は上白沢慧音のような相手に合わせた味付けだった。でも、貴女は私のことしか考えてなかった!」
「ま、それじゃあ特別審査員の幽々子におべっか使ってる様な感じになるものね。」
紫が幽々子の言葉に付け足す。
「普段から私の事だけ考えてくれるのは嬉しいわ。でも、こう言う場では他の人の事も考えなければいけない。貴女はそれが欠如していた。それ故の評価よ。」
「う・・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
妖夢は頭を抱えてうずくまってしまった。
「なんと・・・・・・普段から幽々子先生の好みを知っていることが、逆に仇となってしまいました!!」
「あのお姫様には、別に普通の味付けで出していれば、もっと良い評価が出たのに・・・・・・妖夢もまだまだね。」
「有利と思われた妖夢選手、まさかの大敗です。」
「幽々子はこう言う所は厳しいのよ。」
「よく解かりました。では、次の評価を。」
「次は第六勢力の評価ね~」
ざわついていた会場が静まる。
「アリス・マーガトロイドの点数は・・・・・・・」
「100点!!!」
「またまた100点です!!!」
会場が歓声に包まれる。
「ま、当然よね。」
アリスはそう言うが、内心ヒヤヒヤしまくっていた。
「このお料理も良かったわね~。普通なら冷めたり解けたりしちゃう料理も魔法で保温されていたお陰でとっても美味しくいただけたわ。」
幽々子は続ける。
「何より、さっきも言ったけど、食べる順番を守ることで美味しい料理が尚美味しくなるのには感動したわ~」
「さぁ、これで100点が3人も揃いました!!」
「じゃあ、次で最後ね。」
「最後に人の里の代表者の評価ね~」
水を打ったように場内が静まる。
「上白沢慧音の点数は・・・・・・・・・・・」
「80点!!!」
人の里から大きな溜め息が漏れる。
「あぁ~っとぉ!上白沢選手、僅かに及ばず敗退してしまいました!!!」
「彼女の名誉の為に言うと、けっして悪かったわけではないわ~。ただ、やっぱり今回本気で作っていた人との相対評価になるとこうなっちゃうのよ~」
幽々子がそう説明する。
「もし、彼女が本気で勝負にこだわってたら・・・・・・どうなってたかしらね~?」
「惜しかった!いや、しかし勝負を捨ててまで他人を思うその姿はとても美しかったです!!私は上白沢選手に敬意を払いたいと思います!!」
場内からも割れんばかりの拍手が注がれる。
「そんな大した事をしたつもりは無いんだがな・・・・・・」
慧音は照れている。
「さて、100点が3人も出揃っちゃったわね。」
「ええ、それでは特別審判の四季映姫・ヤマザナドゥ先生、お願いします。」
「解かりました。」
映姫は背がちっちゃいので台の上に載っている。
「まず、気になるであろう勝負を決めた点を教えましょう。」
会場内が静まる。
「私が勝負の点に決めたのは・・・・・・・・・食材です。」
会場がどよめく。
「この食材こそが、今回の勝負の決め手になりました。」
そこで一息つき、
「それでは審判を下します。」
(裁判じゃないだろう。)
皆心の中で思ったが口には出さなかった。
「優勝者・・・・・・・・・・・・」
「紅美鈴!!!」
「ぃぃぃやっっっったああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
凄まじい大歓声と共に美鈴が跳ね上がって喜ぶ。
「決まったぁぁぁぁぁぁ!!!優勝は紅美鈴選手です!!!!」
「待って!」
アリスが叫ぶ。
場内も一旦静まる。
「私の素材は厳選したものよ!?食材が勝敗の分け目と言うなら、何で!?」
「解かりませんか?」
映姫が静かに尋ねる。
藍は抗議をする様子すらない。
解かっているのか、はたまた決定に従っているのか。
「紅美鈴さんの素材はそれほど高級なものじゃないんですよ。」
「え?」
「ええ、私の素材は恐らく一般の方でも簡単に手に入る様な物です。」
美鈴がアリスにそう言う。
「な、なら尚更解からないわ!」
「良いですか?この評価は相対評価です。ならば、素材の良い貴女方は自然、彼女より上でなくてはいけないのですよ。」
「あ!」
アリスも漸く気付いた。
素材が上なら自然、点数は上を行かなければならない。
「同点、と言う時点で貴女方は「料理の腕」で彼女に敗れたと言うことです。それが判決の理由です。」
「く・・・・・・・・・・・・」
アリスもそこまで言われてはもう反論は出来なかった。
「それでは、改めて・・・・・・・・・・・・優勝者、紅魔館代表。紅美鈴選手です!!!」
再び大きな歓声が巻き起こる。
その後、景品の贈呈などが行われ、料理対決は大盛況の内に幕を下ろした。
各審査員が50点オールっていうのも緊張感に欠けた気がします。
そうですねぇ・・・・・・ここは悩んだんですが、点を下げた場合にどのような理由で取り返させるかが上手く考え付かず、こうなってしまいました。
もっと精進します。
後、カツ丼は紫と幽々子が説明しているとおり、良質の肉とウコッケイの卵使ってるので、素材が優秀と言う理由で敗北と言うことです。
明日は昼飯はちょっと奮発しようかな
100点!
腹が減ったぁ~!w
あと、マヂ泣き霊夢最高w