無縁塚から一人の男が歩いてきた。
小さな長方形の物体をその手に持って、とことこと歩いてくる。
たまたまそれを見つけたは三匹の妖精。
たまには人間以外もなどと騒ぎ合い、じっと男を捉え始めた。
男は妖精たちの視線に気づかずに、どんどん無縁塚から離れていった。
くすくすくすくす……
小さな子供の笑い声があたりに響く。
唐突な笑い声に、男は足を止め、きょろきょろとあたりを見渡す。
妖精たちはお互いの口を塞いで息を殺した。
男が首を傾げながら進みだすと、妖精たちは大きく息を吐きあわててお互いの口を再び塞いだ。
男はずんずん進んでいく。
ふと、辺りが妙に静かなことに違和感を覚えた。
注意深くあたりを見渡す。
そして、見渡しながらも歩を進めていく。
ぼちゃん
急に地面が消えてなくなり、男は見事に浅い川にはまる。
キャハハハハハ……
三匹の妖精は、男にも聞こえるように大きく笑った。
男は不機嫌そうに川から立ち上がった。
手に持っていた長方形の物体は、いつの間にか彼の手から消えてしまっていた。
「ひどい目にあった…」
所変わって香霖堂。
この店の主人 森近 霖之助は濡れた服を着替えながら、そう呟く。
せっかく拾ってきた取得物も、いたずら好きな三匹の妖精に盗まれてしまった。
手に入れたアイテムの名は携帯電話、用途は遠くの者と会話ができる。
似たような物はすでに何個か持っていて、用途はわかっても使い方がわからない品物のため、被害はたいしたものでなかったが今回はあれが唯一の取得物である。
苦労して手に入れたものを、他の者に取られるのは気分がいいものではない。
疲れた体を椅子に押し付ける。
そして、顔を天井に向け、手の甲を額に置いて目蓋を閉じる。
ジリリリリリリリ♪
突如、電子音が響き渡る。
その音を聞いた霖之助は椅子から転げ落ち、目を白黒させながら、さっきから騒音をまき散らしている物体に目を向けた。
どうやらガラクタの山の中から、電子音が響いてきている。
のっそりと立ち上がり、ガラクタの山を少しずつどけていく。
ジリリリリリリリ♪
音の原因は真っ黒な電話であった。
用途は携帯電話と同じ、使い方も全く分からない。
今の今までうんともすんともいわなかった物である。
なぜ突然鳴り出すのだろうと、疑問に思いながら恐る恐る触れてみる。
ジリリリリリリリ♪
触れてみても止まる気配はない。
どうすれば止まるのだろうかと、首を捻る。
ふと、電話についてる蓋のような物に目が向ける。
霖之助はおもいきって蓋の部分を持ち上げてみる。
唐突に音が消える。
静まり返る店内。
『もしもし』
手に取った蓋が喋り始めた。
霖之助は一瞬目を見開いて驚くが、すぐにこういうものだということを理解して、声が聞こえてきた所を耳に当てる。
蓋の反対側がきれいに口元にくる。
『もしもし』
再び聞こえてくる声。
霖之助は少し感動していた。
そして、あいことばを答えた。
「もしもし?」
もしかしたらあいことばではないのかもしれない、そんな疑問が頭によぎる。
だが、霖之助は気にしなかった。
気にしないほど霖之助の心は躍っていたからである。
『もしもし、私○○○』
向こうが名前を答えてきた。
あいことばが伝わったことで霖之助の心はますます躍る。
『今、里にいるの』
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
唐突に電話が切れる。
霖之助は蓋を耳にあてたまましばらく待った。
ツゥーツゥーツゥー……
一向に変わらぬ電子音。
さらにもうしばらく待ったが、結局、何ら変わることがなかった。
ついに諦めて蓋を電話に被せた。
ジリリリリリリリ♪
霖之助は再び驚く。
そして同時に、一度、蓋を置かなければならないことを理解する。
蓋を手に取り耳に当てた。
『もしもし、私○○○。今森の中にいるの』
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
再び切れてしまった。
霖之助は耳にあてていた蓋を電話に被せる。
少しだけ話がしてみたかったが、相手は用件だけ言うとすぐに切ってしまう。
残念だと思いながらも電話から視線を外すことはない。
ジリリリリリリリ♪
やはりと思いながら電話に出る。
今度こそ会話をしようと思い、蓋を持つ手に力を込める。
『もしもし、私○○○。今あなたの後ろにいるの』
すっと、背中に何かの気配が生まれる。
霖之助は一息をついた。
そして、すぅと大きく息を吸い込んむ。
「出きれば電話越しで話がしたいんだけれど」
興奮を抑えずに、うきうきとした口調でそう答える。
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
電話が切れた。
それと同時に背中の気配も消えてしまっていた。
霖之助が振り向くと、そこにはいつもの香霖堂の店内の風景だけが残っていた。
「なんだ。最初と同じで結局、妖精の悪戯か?」
魔理沙は商品の壺に座りながら、そんな疑問を口にした。
「いいや、たぶん違うよ」
霖之助はそれを曖昧に否定する。
そして口元に小さな微笑を浮かべる。
魔理沙はそれが気に入らないのか、それとも電話の主の正体がわからないのが嫌なのか口を尖らす。
「きっと、妖怪の仕業だよ」
「妖怪?じゃあ、あの隙間の仕業か」
「残念ながらそれも違うよ」
魔理沙はどんどん不機嫌になっていく。
どうやら霖之助がわかっているのに、自分がわからないということが気に食わないらしい。
魔理沙はしばらくそのまま考え込む。
「だぁ~、もう降参だ!降参したからさっさと教えろ!」
霖之助は、ワーワーと騒ぐ魔理沙をちらりと見る。
近くにある読みかけの本を手にとってから答えを教えてあげる。
「答えは外の妖怪だよ」
「…外の妖怪だってぇ?」
口調が嘘を吐くなと言っているようである。
霖之助はそれが妙におかしかったのか小さく笑う。
小さく笑いながら最後の疑問に答えてやる。
「外の世界の妖怪は、順応しながらも新たに生まれて進化しているということだよ」
そういって、今は倉庫にしまってある黒い電話を脳裏に思い浮かべた。
小さな長方形の物体をその手に持って、とことこと歩いてくる。
たまたまそれを見つけたは三匹の妖精。
たまには人間以外もなどと騒ぎ合い、じっと男を捉え始めた。
男は妖精たちの視線に気づかずに、どんどん無縁塚から離れていった。
くすくすくすくす……
小さな子供の笑い声があたりに響く。
唐突な笑い声に、男は足を止め、きょろきょろとあたりを見渡す。
妖精たちはお互いの口を塞いで息を殺した。
男が首を傾げながら進みだすと、妖精たちは大きく息を吐きあわててお互いの口を再び塞いだ。
男はずんずん進んでいく。
ふと、辺りが妙に静かなことに違和感を覚えた。
注意深くあたりを見渡す。
そして、見渡しながらも歩を進めていく。
ぼちゃん
急に地面が消えてなくなり、男は見事に浅い川にはまる。
キャハハハハハ……
三匹の妖精は、男にも聞こえるように大きく笑った。
男は不機嫌そうに川から立ち上がった。
手に持っていた長方形の物体は、いつの間にか彼の手から消えてしまっていた。
「ひどい目にあった…」
所変わって香霖堂。
この店の主人 森近 霖之助は濡れた服を着替えながら、そう呟く。
せっかく拾ってきた取得物も、いたずら好きな三匹の妖精に盗まれてしまった。
手に入れたアイテムの名は携帯電話、用途は遠くの者と会話ができる。
似たような物はすでに何個か持っていて、用途はわかっても使い方がわからない品物のため、被害はたいしたものでなかったが今回はあれが唯一の取得物である。
苦労して手に入れたものを、他の者に取られるのは気分がいいものではない。
疲れた体を椅子に押し付ける。
そして、顔を天井に向け、手の甲を額に置いて目蓋を閉じる。
ジリリリリリリリ♪
突如、電子音が響き渡る。
その音を聞いた霖之助は椅子から転げ落ち、目を白黒させながら、さっきから騒音をまき散らしている物体に目を向けた。
どうやらガラクタの山の中から、電子音が響いてきている。
のっそりと立ち上がり、ガラクタの山を少しずつどけていく。
ジリリリリリリリ♪
音の原因は真っ黒な電話であった。
用途は携帯電話と同じ、使い方も全く分からない。
今の今までうんともすんともいわなかった物である。
なぜ突然鳴り出すのだろうと、疑問に思いながら恐る恐る触れてみる。
ジリリリリリリリ♪
触れてみても止まる気配はない。
どうすれば止まるのだろうかと、首を捻る。
ふと、電話についてる蓋のような物に目が向ける。
霖之助はおもいきって蓋の部分を持ち上げてみる。
唐突に音が消える。
静まり返る店内。
『もしもし』
手に取った蓋が喋り始めた。
霖之助は一瞬目を見開いて驚くが、すぐにこういうものだということを理解して、声が聞こえてきた所を耳に当てる。
蓋の反対側がきれいに口元にくる。
『もしもし』
再び聞こえてくる声。
霖之助は少し感動していた。
そして、あいことばを答えた。
「もしもし?」
もしかしたらあいことばではないのかもしれない、そんな疑問が頭によぎる。
だが、霖之助は気にしなかった。
気にしないほど霖之助の心は躍っていたからである。
『もしもし、私○○○』
向こうが名前を答えてきた。
あいことばが伝わったことで霖之助の心はますます躍る。
『今、里にいるの』
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
唐突に電話が切れる。
霖之助は蓋を耳にあてたまましばらく待った。
ツゥーツゥーツゥー……
一向に変わらぬ電子音。
さらにもうしばらく待ったが、結局、何ら変わることがなかった。
ついに諦めて蓋を電話に被せた。
ジリリリリリリリ♪
霖之助は再び驚く。
そして同時に、一度、蓋を置かなければならないことを理解する。
蓋を手に取り耳に当てた。
『もしもし、私○○○。今森の中にいるの』
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
再び切れてしまった。
霖之助は耳にあてていた蓋を電話に被せる。
少しだけ話がしてみたかったが、相手は用件だけ言うとすぐに切ってしまう。
残念だと思いながらも電話から視線を外すことはない。
ジリリリリリリリ♪
やはりと思いながら電話に出る。
今度こそ会話をしようと思い、蓋を持つ手に力を込める。
『もしもし、私○○○。今あなたの後ろにいるの』
すっと、背中に何かの気配が生まれる。
霖之助は一息をついた。
そして、すぅと大きく息を吸い込んむ。
「出きれば電話越しで話がしたいんだけれど」
興奮を抑えずに、うきうきとした口調でそう答える。
プツッ
ツゥーツゥーツゥー……
電話が切れた。
それと同時に背中の気配も消えてしまっていた。
霖之助が振り向くと、そこにはいつもの香霖堂の店内の風景だけが残っていた。
「なんだ。最初と同じで結局、妖精の悪戯か?」
魔理沙は商品の壺に座りながら、そんな疑問を口にした。
「いいや、たぶん違うよ」
霖之助はそれを曖昧に否定する。
そして口元に小さな微笑を浮かべる。
魔理沙はそれが気に入らないのか、それとも電話の主の正体がわからないのが嫌なのか口を尖らす。
「きっと、妖怪の仕業だよ」
「妖怪?じゃあ、あの隙間の仕業か」
「残念ながらそれも違うよ」
魔理沙はどんどん不機嫌になっていく。
どうやら霖之助がわかっているのに、自分がわからないということが気に食わないらしい。
魔理沙はしばらくそのまま考え込む。
「だぁ~、もう降参だ!降参したからさっさと教えろ!」
霖之助は、ワーワーと騒ぐ魔理沙をちらりと見る。
近くにある読みかけの本を手にとってから答えを教えてあげる。
「答えは外の妖怪だよ」
「…外の妖怪だってぇ?」
口調が嘘を吐くなと言っているようである。
霖之助はそれが妙におかしかったのか小さく笑う。
小さく笑いながら最後の疑問に答えてやる。
「外の世界の妖怪は、順応しながらも新たに生まれて進化しているということだよ」
そういって、今は倉庫にしまってある黒い電話を脳裏に思い浮かべた。
あの人なら悪戯でやりかねんが
今のはほんの序章にすぎず、これから色んな恐怖が待ち構えている・・・
なんてあったらおもしろいですね。w
あれ・・・・・・・・・??
最後はどんな展開になるか思い出せない・・・・・・(汗
でもこのパターンで○○け女とか○○○の○○さんとか見てみたい気分
昔は夏になるとそういう本がやたら出回ってたな。
廃れてついに幻想入りか。