紅魔館のお話です。オリジナルキャラが出てきます。そういうのが受け付けない方はスルーするのが良作かと。
些細な亀裂-前編-
様々な異変が起こったここ幻想郷も、平穏な風が流れ幾分落ち着いている。季節は巡り、花も咲き過ぎる事はなく、
また霧が出すぎることもない。いたって平穏である。
「師匠~」
そんな幻想郷に在って異様な紅さを放つ紅魔館。そこには新しい顔が1人増えていた。
「し~しょ~」
「あ、いたいた。またこんなところでサボ・・・休憩して。咲夜さんに起こられますよ」
「失礼な。ちょっとシエスタを実践してただけで・・・」
「ありゃ昼にやるから効果あるんです。もう夕方ですよ」
「え?もうそんな時間?・・・ま、何事も無くて、平和が一番だよね」
「・・・」
「・・・」
「・・・。で、ど、どうかしたの?」
「あぁそうだすっかり忘れてました。食事をかねて今後の方針とかスケジュールを決めたいと副長から伝言です。」
もう少ししたら代わりの者が来ますので、そいつと交代して欲しいとの事です。」
「あぁ、もうそんな時期なんだねぇ。」
紅魔館では、複数の門番がいて、それを紅 美鈴が統括している。その門番隊の守備方針や門番につくスケジュール
などを大体1~2ヶ月に1回決めるのだ。とは言うものの、バイトなどと違って人の入れ替わりはまず無いので
異変が起きない限りスケジュールが変わることはほとんど無い。守備方針も同じで、昔までは幻想郷に潜む妖怪達を
警戒していたが、最近では黒いのがよく飛来し、本を掻っ攫っていくので、図書館の方からかなり苦情が来ていて
その黒い魔法使い対策に重点が置かれている。また損害や守備の勝率(その時点でおかしいのだが)などを話しあう。
「続いて、今月の被害状況です。魔法使いの飛来が4件、門破壊が2件、怪我人6人、その他の侵入者件数は24件
黒星は魔法使いの4つだけです。門については既に修復済み、怪我人も4名が復帰しました。怪我人で空いた分の
スケジュールを組み直しておきました。確認お願いします。」
「うん。問題ありません。それにしても今回は全部抜かれたなぁ・・・。怪我した人は大丈夫?」
「はい。全然平気です、隊長!」
「どちらかというと、師匠の体がもつのか心配ですよ。オレは」
「そうですね。毎度毎度マスタースパークはお体に障るのでは?」
「あはは。まぁ、丈夫なのが取り柄だから。」
「それにしても今月は全敗かぁ。先月は1回勝てたのになぁ」
「まぁまぁ姉御。次は打ち負かしてやりましょうよ」
「それと・・・。言いにくいのですがメイド組の方から多少の苦情が。図書館から本を持ち出す際、廊下を
散らかされて困るとの事です。あと、跳ね飛ばされたメイドが何人か怪我をした模様です。」
「何だ何だ、そんくらいの怪我。こっちなんか体張って守ってるっていうのに」
「内勤は体が貧弱だからしょうがないッスよ。」
「まぁまぁ。とりあえず次こそは黒白に勝ちましょうよ。そして来月は勝ち星報告をしましょう。」
『おぉー!!』
そんなこんなで次の目標を皆で再確認しあい、一通り愚痴を聞いてその場はお開きとなった。
「・・・はぁ」
自室戻り小さくため息を漏らす美鈴。隊長という手前、皆の前では平然を装っていたが、本心はなかり落ち込んでいた。
このところの黒白に対する連敗。いずれの勝負にも美鈴が立ち会ってた。そして負けていた。
門番隊は皆、隊長の強さを知っている。皆戦いを挑みそしてその強さに感服し、付き従っているのだ。だから
だれも美鈴を責める者はいない。勝てないからと隊長を蔑んだり、疑問を抱いたりするものはいない。それこそが
門番隊の絆の強さであり、戦いにおいての強さである。
だが、時としてその優しさが辛く圧し掛かる時がある。その優しい気持ちを大切に思うがゆえにプレッシャーとなるのだ。
(・・・。ダメだ。変なことばかり考えちゃう・・・。夜風にでもあたろう)
門番隊の詰め所の裏手の木陰。ちょうど詰め所からも本館からも死角となるこの場所は美鈴のお気に入りの場所である。
昼寝をする時や外で食事を取る時、落ち込んで考え事をしたい時などはここで風にあたるのだ。
体にあたる夜風は気持ちよく、適度に体の熱を冷ましてくれる。遠くで近くで、静かに鳴いている鈴虫達の鳴き声が、
耳に心地よく気持ちをやわらかくしてくれる。
どれくらいの時間そうしていただろう。まだそんなに経ってないだろうか。ふとさっきの会議を思い出してしまう。
気にすることはないと言ってくれる彼女達。だが、隊長である彼女が止められないのであれば他の門番隊では太刀打ち
できないだろう。だから彼女達に罪は無い。ダメなのは私なのだ。私がもう少ししっかりしていれば、彼女達に肩身の
狭い思いをさせずに済む。考えれば考えるほど悪い輪廻にはまっていく。
「はぁ~・・・。どうすればいいんだろう・・・」
がさ
「ん?」
「・・・。ここに居ましたか、師匠」
「フォルか。」
「捜しましたよ」
「嘘。ここに居ることは一番よく知ってるくせに」
「・・・。何か・・・深く考え事をしていた様なので、その考えが一段落つくのを待ったほうが良いかと思いまして。」
「相変わらず気を使うねぇ」
「そりゃ、師匠の弟子ですから」
「なるほど。うまいね」
「・・・。」
「・・・。」
「私に何か用があったんじゃないの?」
「・・・。いえ、これといって。ただ部屋に戻られた様子が無かったもので。会議でも終始落ち込んでるように
感じられましたし」
「・・・。」
この男は、こと'気を使う'事に関しては鋭い。普段は気さくで少し子供のような無邪気さを持っている。ときおりぼぉっと
していて仲間内で[昼行灯]とささやかれていた。だが戦闘や誰かを気遣う時などはその影を微塵も感じさせない
大人びた雰囲気を持つ。
「・・・。フォルには敵わないなぁ。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。自分は何も聞きません。恐らく師匠が考えているであろう悩みは、皆共通の悩みです。それは誰かがどうこうして
解決出来る程、簡単ではありません・・・。ただ、師匠があきらめない限り、我々の先頭に立っていてくれる限り、
我々が諦める事もありません。我々はレミリアお嬢様にではなく、師匠の部下なのです。」
「・・・。でも」
「師匠が1人で悩む必要はないですよ。全員で一つの門番隊です。皆で悩みましょうよ。それでもダメなら寝て忘れましょう。
それが一番だ。」
「・・・。はは。フォルらしいよ。」
「そいつはどうも」
「・・・うん。何だか気分が少し楽になったかな。ありがとね」
「もったいないお言葉です」
風が吹き抜ける。心地よい爽やかな夜風。
「そういえば・・・初めてフォルが弟子入りを頼んだのもこの場所だったよね」
「懐かしいですなぁ。あの時は土下座までして懇願したもんです」
「あはは、そうそう。是非弟子にして下さい!って。なつかしいなぁ」
最後の異変の後、どこからか人間が流れ着いた。もともとは幻想郷を旅して回っていたという彼。幻想郷でも
異彩を放つ紅魔館はやはり惹かれるものがあるのだろう、彼は頻繁に訪れていた。
町で囁かれている噂では、恐ろしい吸血鬼や魔女が棲んでいるという。ちょっとした怖いもの見たさで紅魔館に訪れた。
だが、彼は少し拍子抜けした。そこにはお世辞にも恐ろしいとは言えない少女が居たのだ。確かに門の後ろに佇む館から
発せられる威圧感は相当なものだったが、その威圧感とは似合わぬ顔がそこにあった。最初は怪訝な顔をされたものの
旅をしていること、紅魔館を見学に来たこと、進入する気が無いことを説明すると、完全にではないが警戒を解いてくれた。
門番の名は紅 美鈴というらしい。普段暇を持て余しているのか気軽に世間話に乗ってくれた。どれくらい
時間が経っただろうか、交代の時間が来たのか代わりのものがやって来た。
その者もやはり怪訝な顔をするので、そろそろおいとましたほうがいいと判断し、その場を
後にした。
その後もほぼ毎日の様に紅魔館に訪れていた。仕事柄門から離れられぬ彼女等にとって、旅の話というのは興味が
尽きない。いろんな話を聞かせているうち他の門番隊にも少しずつ打ち解け、彼がいつも座る場所にはいつからか
座布団や小さなテーブルなどが置かれるようになっていた。
だが、その日は彼は来なかった。彼はいつも殆ど決まった時間に来ており、その時間が過ぎても現れない彼を皆疑問に
感じていた。昨日の話では明日も来ると話していたのは聞いていた。どうしたのだろうか。
きっと用事が出来て来れなくなったのだろう。皆そう話していた。
その日の番についていた美鈴もいつもの見回りを終えようとしていた。
----。
(何かいやな感じがする・・・。)
いつもと違う雰囲気。集中しなければ気付きもしない異変。見た感じではなんとも無い。
意識を集中する美鈴。気を練り、全身に行き渡らせる。
(・・・。血の・・・匂い・・・?)
微かに。だか、確かに感じた。血の匂いである。いつも彼が訪れる際に使用していたであろう真新しい獣道。
そこから血の匂いが漂ってくる。意を決して道に入る。数百メートルも進まない頃、そこに彼は居た。
辺りには争ったであろう痕跡と、数匹の妖怪の死体。そして血まみれで突っ伏す彼の無残な姿。
目の前に広がる白いモノ。シミ一つなく、埃一つなく、それが天井だと気付くのにどれだけ時間が掛かっただろう。
視界に入る体には幾重にも包帯が巻かれ、鼻に付くのはエタノールの匂い。
古典的、とまではいかないものの、医務室の様な所に寝かされていると気づくのにさらに時間がかかった。
(・・・。どこだ?)
思考の全てを使い現状を理解しようとする。勤めて冷静に、疑問を一つ一つ潰していく。
その時---。
ガラッ
扉の開く音。足音はこちらに近づいている。
(敵か、味方か?いや、味方などいないか・・・)
いろいろ考えているうち、足音はカーテンを隔てた向こう側でとまる。うっすらと映るシルエットにはメイドを
思わせる姿。
シャー
カーテンが開けられる。
「あら、目を覚ました見たいね。」
「・・・。」
体の自由は未だ効かない。出来る限りの警戒をする。
「ふふ。そんなに身構えなくてもいいわよ。とって食おうなんてしないわ。」
「・・・。」
「随分と警戒するのね」
「生憎、1人もんなんで、味方がいないんですよ。」
「なるほどね」
納得。と言わんばかりに頷く彼女。見た目は若く年齢は彼とそんなに離れてはいないだろう。また、妖怪独特の気配も無い。
彼女もまた人間なのだろうか。
「ここは?」
「そういえばまた説明してなかったわね。」
そう言うと彼女は両手でスカートを少し持ち上げる仕草をして
「紅魔館へようこそ、お客様。私はメイド長をしております十六夜 咲夜と申します。以後お見知りおきを」
「・・・。」
空いた口が塞がらなかった。悪魔の棲む館と恐れられる紅魔館。その中にいることも驚いたし、何より自分と
いくつも変わらないし人間の少女が居たことにも驚かされた。それもメイド長である。
「やっぱり驚いているみたいね」
「そりゃぁ悪魔の棲む館となれば緊張の一つもしますよ」
「言ったでしょう。今はお客様として迎えているのよ。今はね。」
「今は」という言葉が気になったがあえて聞き流すことにした。こういう疑問は聞いて良かった試しはない。
何よりどうしてここに居るのか。どうして生きているのかが気になった。
「オレはどうしてここに?いや、何で生きてるんだ?」
この頃には記憶はすっかり戻っていた。いつもと同じように紅魔館へ向かっていたこと。紅魔館を狙う妖怪に
待ち伏せされたこと。脅迫に抗い戦ったこと。死を悟り覚悟を決めたこと・・・
「門番隊が貴方を連れてきたのよ。理由は後で話すから今は助けて欲しいって」
「・・・。」
「流石に驚いたわよ?普通じゃ死んでたっておかしくない傷だもの。美鈴に感謝するのね。」
「めい・・・りん?」
たしか門番隊の隊長の名前だったと記憶している。
「そうよ。彼女が一晩中付きっ切りで気を与え続けたから生きてられるのよ」
彼女の能力は気を使う程度の能力。気とは身体を流れる生命の源である。気を正しくすれば身体は健康になり
気を乱せば身体は蝕まれる。また、真に極めし者が気を使うと、気で傷口を包み出血を止め、身体の自然治癒力を高め
怪我を素早く治療することも可能だといわれている。ただし、そのためには膨大な集中力と体力を消耗する。
「彼女はいまどこに」
「・・・。」
息を吐く程度に小さくため息をつき、隣を指差す。そこにはベットに気持ちよさそうに眠っている、紅い髪をした少女が
1人居た。
「お嬢様にも許可は得ているから今はゆっくりやすみなさい。いくら一命を取り留めたといっても、まだ動ける身体じゃ
ないでしょう?」
全くその通りだ。こうして話をするだけでも体に痛みが走る。歩けるようになるまでまだしばらく時間がかかるだろう。
「では・・・。お言葉に甘えさせてもらいます」
「そうすることね。余計なことして、仕事を増やさないでよ?」
軽く釘をさすと彼女は出て行った。その後も今起こっている状況を理解する事に勤めたが、襲い来る眠気には勝てず
徐々に意識が遠退いった。
次に目を覚ましたときは痛みは軽くなり、ちょっと走る程度なら問題はなくなっていた。あれからたいした時間が
経った訳でもないのに何故だろうか。まるで自分の周りだけ時間が早くなったような気分だ。
体に余裕が出てきたせいか、小腹が空いてきた。
(これだけデカい館なら、食堂の一つや二つあるだろう)
特にたいした事も考えず適当に歩き始めた。どれだけの距離を歩いただろうか。かれこれ40分以上歩いている。
外から見たとき確かに広そうに見えたが、ここまで広いものなのだろうか?行けども行けどもそれらしい
部屋は見つからない。それどころか元居た部屋さえわからない。
(う~む、困った。確実に迷ったな)
自分は旅人である。道に迷わぬ自信はあった。数分前までは。今では脆くもその自信は崩れ去っている。
(どうしよう。とゆうか、コレだけ広くてどうしてメイドの1人も見当たらないんだ?)
その館はただ広く、そして窓も極端に少なかった。やっと見つけた窓から、今が夜も遅い時間だということが
見て取れた。
(今夜は満月か・・・。)
ふと、考え事から頭を戻すと窓のまったく無い、真っ直ぐな廊下を
歩いていた。先ほどまでの廊下とはどこか違う、何か異様な感じがした。
「・・・。」
引き返すことも出来たが、何かに呼ばれているような感じがした。不思議と恐怖や疑問はなく、ただ長い廊下を歩み続けた。
しばらく行くと突き当たりに一つの扉があった。今まで見てきた扉と違い、威厳に溢れ、異常なほどの威圧感を放っていた。
(・・・どうしよう)
どう見ても上流の扉である。ましてや通路の突き当りなど、間違いなくこの館のトップクラスの者の部屋だろう。
怪我人である、いち人間風情が勝手に入っていいものか。しばらく扉の前で考える。
「・・・。何をしているの?」
突然声が聞こえる。恐らく扉の向こうからしたのだろうか。その声は頭に響き、まるで脳内に直接話しかけられている
錯覚さえ覚える。その声と同時に伝わる威圧感。どう抗っても勝てぬ事を一瞬で理解させるそのプレッシャーは
蛇に睨まれた蛙の如く身動きが出来ない。
「そんな所に立っていないで、お入りなさい。」
入ることを酷くためらう。だが、入れといわれた以上入らなければとても後悔することになるのだろう。覚悟を決めて
扉を開く。
「・・・。」
またもや開いた口が塞がらない。広いその部屋には、紅い絨毯が一直線にひかれており、その奥には階段状に上がっている
フロア。その奥には大きな窓が一つ。紅い満月が顔を覗かせていた。その頂点にこの館の主であろう少女が佇んでいた。
その一歩後ろには先ほどのメイド。先ほどの笑みは無く、静かにこちらを見つめている。
「貴方、名前は?」
唐突に話しかけられ、混乱する。見た目の幼さとは似つかない威厳。全てを見透かすような瞳に嘘はつけないと悟る。
「ア、アルバート フォルトナーといいます。親しいものからはフォルと呼ばれています。」
「ふーん。フォルね。ところでフォル、貴方は何故ここに来たのかしら?」
「ここと、いいますと?」
「この館には数多くの部屋があるわ。それらをまったく見ずにどうしてここに来たのかしら?」
意味有りげに微笑む少女。メイドはただ静かに見つめている。
「何故でしょうね。もともと小腹が空いたので部屋を出たのですが、途中で帰り道が分からなくなりまして。
どうしようか迷っている時に何かに惹かれて・・・いや、そう、誰かに呼ばれた気がしました。こっちだよ、と。」
「・・・。」
「その声の方に歩いて、気が付いたらこの真っ直ぐな廊下を歩いていました。」
「・・・。なかなか素質があるみたいね」
「その様ですね」
「・・・?」
「ところで・・・貴方は怖くはないのかしら?」
そう言葉を吐くと少女は睨みつける。その眼に睨まれたものは死をイメージさせられ、その場から動くことも許されぬ、
そんな強大な威圧感を放つ眼だった。だが、
「・・・。恐怖を感じないと言えば嘘になります。扉の向こう側で声をかけられた時、恐怖で手足が震えたのを覚えています。
ですが、今は何も。何と言うか、死を超越した感じです。」
「今、私に殺されるかもしれないのに?」
「・・・。そうですね。その可能性はずっと頭の中にありました。悪魔の館と噂される主が、
自分を生かしておくハズがないと。だだ、」
「ただ?」
「ただ、もとは一度死んだ身。助けては頂きましたが、今ここで再度殺されてもプラマイゼロなんじゃないかと。」
「・・・。ぷぷ、あはははははは」
「・・・?」
幼い少女の姿をした悪魔は高らかに笑った。メイドも静かに微笑んでいる。
一しきり笑い終えると悪魔は再びこちらを見る。
「貴方、中々面白いわ。いいでしょう、貴方は殺さないでいてあげるわ。」
「ありがとう、ございます?」
状況が理解できなかったがとりあえず助かった命に礼を言っておく。
「それで、命の助かった貴方はこれからどうするのかしら?」
「・・・。それについてお願いがあります。」
「・・・?」
それについては既に決めていた。死を覚悟し、再び目を覚ますことの出来たその時に。
おかしいと思われるだろう。気でも触れたかといわれるだろう、それでも構わない。
それが今の自分に出来るせめてもの恩返し。
「自分を門番として、紅魔館に雇ってください。」
少女を照らす月明かりは紅く紅く輝いていた。
些細な亀裂-前編-
様々な異変が起こったここ幻想郷も、平穏な風が流れ幾分落ち着いている。季節は巡り、花も咲き過ぎる事はなく、
また霧が出すぎることもない。いたって平穏である。
「師匠~」
そんな幻想郷に在って異様な紅さを放つ紅魔館。そこには新しい顔が1人増えていた。
「し~しょ~」
「あ、いたいた。またこんなところでサボ・・・休憩して。咲夜さんに起こられますよ」
「失礼な。ちょっとシエスタを実践してただけで・・・」
「ありゃ昼にやるから効果あるんです。もう夕方ですよ」
「え?もうそんな時間?・・・ま、何事も無くて、平和が一番だよね」
「・・・」
「・・・」
「・・・。で、ど、どうかしたの?」
「あぁそうだすっかり忘れてました。食事をかねて今後の方針とかスケジュールを決めたいと副長から伝言です。」
もう少ししたら代わりの者が来ますので、そいつと交代して欲しいとの事です。」
「あぁ、もうそんな時期なんだねぇ。」
紅魔館では、複数の門番がいて、それを紅 美鈴が統括している。その門番隊の守備方針や門番につくスケジュール
などを大体1~2ヶ月に1回決めるのだ。とは言うものの、バイトなどと違って人の入れ替わりはまず無いので
異変が起きない限りスケジュールが変わることはほとんど無い。守備方針も同じで、昔までは幻想郷に潜む妖怪達を
警戒していたが、最近では黒いのがよく飛来し、本を掻っ攫っていくので、図書館の方からかなり苦情が来ていて
その黒い魔法使い対策に重点が置かれている。また損害や守備の勝率(その時点でおかしいのだが)などを話しあう。
「続いて、今月の被害状況です。魔法使いの飛来が4件、門破壊が2件、怪我人6人、その他の侵入者件数は24件
黒星は魔法使いの4つだけです。門については既に修復済み、怪我人も4名が復帰しました。怪我人で空いた分の
スケジュールを組み直しておきました。確認お願いします。」
「うん。問題ありません。それにしても今回は全部抜かれたなぁ・・・。怪我した人は大丈夫?」
「はい。全然平気です、隊長!」
「どちらかというと、師匠の体がもつのか心配ですよ。オレは」
「そうですね。毎度毎度マスタースパークはお体に障るのでは?」
「あはは。まぁ、丈夫なのが取り柄だから。」
「それにしても今月は全敗かぁ。先月は1回勝てたのになぁ」
「まぁまぁ姉御。次は打ち負かしてやりましょうよ」
「それと・・・。言いにくいのですがメイド組の方から多少の苦情が。図書館から本を持ち出す際、廊下を
散らかされて困るとの事です。あと、跳ね飛ばされたメイドが何人か怪我をした模様です。」
「何だ何だ、そんくらいの怪我。こっちなんか体張って守ってるっていうのに」
「内勤は体が貧弱だからしょうがないッスよ。」
「まぁまぁ。とりあえず次こそは黒白に勝ちましょうよ。そして来月は勝ち星報告をしましょう。」
『おぉー!!』
そんなこんなで次の目標を皆で再確認しあい、一通り愚痴を聞いてその場はお開きとなった。
「・・・はぁ」
自室戻り小さくため息を漏らす美鈴。隊長という手前、皆の前では平然を装っていたが、本心はなかり落ち込んでいた。
このところの黒白に対する連敗。いずれの勝負にも美鈴が立ち会ってた。そして負けていた。
門番隊は皆、隊長の強さを知っている。皆戦いを挑みそしてその強さに感服し、付き従っているのだ。だから
だれも美鈴を責める者はいない。勝てないからと隊長を蔑んだり、疑問を抱いたりするものはいない。それこそが
門番隊の絆の強さであり、戦いにおいての強さである。
だが、時としてその優しさが辛く圧し掛かる時がある。その優しい気持ちを大切に思うがゆえにプレッシャーとなるのだ。
(・・・。ダメだ。変なことばかり考えちゃう・・・。夜風にでもあたろう)
門番隊の詰め所の裏手の木陰。ちょうど詰め所からも本館からも死角となるこの場所は美鈴のお気に入りの場所である。
昼寝をする時や外で食事を取る時、落ち込んで考え事をしたい時などはここで風にあたるのだ。
体にあたる夜風は気持ちよく、適度に体の熱を冷ましてくれる。遠くで近くで、静かに鳴いている鈴虫達の鳴き声が、
耳に心地よく気持ちをやわらかくしてくれる。
どれくらいの時間そうしていただろう。まだそんなに経ってないだろうか。ふとさっきの会議を思い出してしまう。
気にすることはないと言ってくれる彼女達。だが、隊長である彼女が止められないのであれば他の門番隊では太刀打ち
できないだろう。だから彼女達に罪は無い。ダメなのは私なのだ。私がもう少ししっかりしていれば、彼女達に肩身の
狭い思いをさせずに済む。考えれば考えるほど悪い輪廻にはまっていく。
「はぁ~・・・。どうすればいいんだろう・・・」
がさ
「ん?」
「・・・。ここに居ましたか、師匠」
「フォルか。」
「捜しましたよ」
「嘘。ここに居ることは一番よく知ってるくせに」
「・・・。何か・・・深く考え事をしていた様なので、その考えが一段落つくのを待ったほうが良いかと思いまして。」
「相変わらず気を使うねぇ」
「そりゃ、師匠の弟子ですから」
「なるほど。うまいね」
「・・・。」
「・・・。」
「私に何か用があったんじゃないの?」
「・・・。いえ、これといって。ただ部屋に戻られた様子が無かったもので。会議でも終始落ち込んでるように
感じられましたし」
「・・・。」
この男は、こと'気を使う'事に関しては鋭い。普段は気さくで少し子供のような無邪気さを持っている。ときおりぼぉっと
していて仲間内で[昼行灯]とささやかれていた。だが戦闘や誰かを気遣う時などはその影を微塵も感じさせない
大人びた雰囲気を持つ。
「・・・。フォルには敵わないなぁ。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。自分は何も聞きません。恐らく師匠が考えているであろう悩みは、皆共通の悩みです。それは誰かがどうこうして
解決出来る程、簡単ではありません・・・。ただ、師匠があきらめない限り、我々の先頭に立っていてくれる限り、
我々が諦める事もありません。我々はレミリアお嬢様にではなく、師匠の部下なのです。」
「・・・。でも」
「師匠が1人で悩む必要はないですよ。全員で一つの門番隊です。皆で悩みましょうよ。それでもダメなら寝て忘れましょう。
それが一番だ。」
「・・・。はは。フォルらしいよ。」
「そいつはどうも」
「・・・うん。何だか気分が少し楽になったかな。ありがとね」
「もったいないお言葉です」
風が吹き抜ける。心地よい爽やかな夜風。
「そういえば・・・初めてフォルが弟子入りを頼んだのもこの場所だったよね」
「懐かしいですなぁ。あの時は土下座までして懇願したもんです」
「あはは、そうそう。是非弟子にして下さい!って。なつかしいなぁ」
最後の異変の後、どこからか人間が流れ着いた。もともとは幻想郷を旅して回っていたという彼。幻想郷でも
異彩を放つ紅魔館はやはり惹かれるものがあるのだろう、彼は頻繁に訪れていた。
町で囁かれている噂では、恐ろしい吸血鬼や魔女が棲んでいるという。ちょっとした怖いもの見たさで紅魔館に訪れた。
だが、彼は少し拍子抜けした。そこにはお世辞にも恐ろしいとは言えない少女が居たのだ。確かに門の後ろに佇む館から
発せられる威圧感は相当なものだったが、その威圧感とは似合わぬ顔がそこにあった。最初は怪訝な顔をされたものの
旅をしていること、紅魔館を見学に来たこと、進入する気が無いことを説明すると、完全にではないが警戒を解いてくれた。
門番の名は紅 美鈴というらしい。普段暇を持て余しているのか気軽に世間話に乗ってくれた。どれくらい
時間が経っただろうか、交代の時間が来たのか代わりのものがやって来た。
その者もやはり怪訝な顔をするので、そろそろおいとましたほうがいいと判断し、その場を
後にした。
その後もほぼ毎日の様に紅魔館に訪れていた。仕事柄門から離れられぬ彼女等にとって、旅の話というのは興味が
尽きない。いろんな話を聞かせているうち他の門番隊にも少しずつ打ち解け、彼がいつも座る場所にはいつからか
座布団や小さなテーブルなどが置かれるようになっていた。
だが、その日は彼は来なかった。彼はいつも殆ど決まった時間に来ており、その時間が過ぎても現れない彼を皆疑問に
感じていた。昨日の話では明日も来ると話していたのは聞いていた。どうしたのだろうか。
きっと用事が出来て来れなくなったのだろう。皆そう話していた。
その日の番についていた美鈴もいつもの見回りを終えようとしていた。
----。
(何かいやな感じがする・・・。)
いつもと違う雰囲気。集中しなければ気付きもしない異変。見た感じではなんとも無い。
意識を集中する美鈴。気を練り、全身に行き渡らせる。
(・・・。血の・・・匂い・・・?)
微かに。だか、確かに感じた。血の匂いである。いつも彼が訪れる際に使用していたであろう真新しい獣道。
そこから血の匂いが漂ってくる。意を決して道に入る。数百メートルも進まない頃、そこに彼は居た。
辺りには争ったであろう痕跡と、数匹の妖怪の死体。そして血まみれで突っ伏す彼の無残な姿。
目の前に広がる白いモノ。シミ一つなく、埃一つなく、それが天井だと気付くのにどれだけ時間が掛かっただろう。
視界に入る体には幾重にも包帯が巻かれ、鼻に付くのはエタノールの匂い。
古典的、とまではいかないものの、医務室の様な所に寝かされていると気づくのにさらに時間がかかった。
(・・・。どこだ?)
思考の全てを使い現状を理解しようとする。勤めて冷静に、疑問を一つ一つ潰していく。
その時---。
ガラッ
扉の開く音。足音はこちらに近づいている。
(敵か、味方か?いや、味方などいないか・・・)
いろいろ考えているうち、足音はカーテンを隔てた向こう側でとまる。うっすらと映るシルエットにはメイドを
思わせる姿。
シャー
カーテンが開けられる。
「あら、目を覚ました見たいね。」
「・・・。」
体の自由は未だ効かない。出来る限りの警戒をする。
「ふふ。そんなに身構えなくてもいいわよ。とって食おうなんてしないわ。」
「・・・。」
「随分と警戒するのね」
「生憎、1人もんなんで、味方がいないんですよ。」
「なるほどね」
納得。と言わんばかりに頷く彼女。見た目は若く年齢は彼とそんなに離れてはいないだろう。また、妖怪独特の気配も無い。
彼女もまた人間なのだろうか。
「ここは?」
「そういえばまた説明してなかったわね。」
そう言うと彼女は両手でスカートを少し持ち上げる仕草をして
「紅魔館へようこそ、お客様。私はメイド長をしております十六夜 咲夜と申します。以後お見知りおきを」
「・・・。」
空いた口が塞がらなかった。悪魔の棲む館と恐れられる紅魔館。その中にいることも驚いたし、何より自分と
いくつも変わらないし人間の少女が居たことにも驚かされた。それもメイド長である。
「やっぱり驚いているみたいね」
「そりゃぁ悪魔の棲む館となれば緊張の一つもしますよ」
「言ったでしょう。今はお客様として迎えているのよ。今はね。」
「今は」という言葉が気になったがあえて聞き流すことにした。こういう疑問は聞いて良かった試しはない。
何よりどうしてここに居るのか。どうして生きているのかが気になった。
「オレはどうしてここに?いや、何で生きてるんだ?」
この頃には記憶はすっかり戻っていた。いつもと同じように紅魔館へ向かっていたこと。紅魔館を狙う妖怪に
待ち伏せされたこと。脅迫に抗い戦ったこと。死を悟り覚悟を決めたこと・・・
「門番隊が貴方を連れてきたのよ。理由は後で話すから今は助けて欲しいって」
「・・・。」
「流石に驚いたわよ?普通じゃ死んでたっておかしくない傷だもの。美鈴に感謝するのね。」
「めい・・・りん?」
たしか門番隊の隊長の名前だったと記憶している。
「そうよ。彼女が一晩中付きっ切りで気を与え続けたから生きてられるのよ」
彼女の能力は気を使う程度の能力。気とは身体を流れる生命の源である。気を正しくすれば身体は健康になり
気を乱せば身体は蝕まれる。また、真に極めし者が気を使うと、気で傷口を包み出血を止め、身体の自然治癒力を高め
怪我を素早く治療することも可能だといわれている。ただし、そのためには膨大な集中力と体力を消耗する。
「彼女はいまどこに」
「・・・。」
息を吐く程度に小さくため息をつき、隣を指差す。そこにはベットに気持ちよさそうに眠っている、紅い髪をした少女が
1人居た。
「お嬢様にも許可は得ているから今はゆっくりやすみなさい。いくら一命を取り留めたといっても、まだ動ける身体じゃ
ないでしょう?」
全くその通りだ。こうして話をするだけでも体に痛みが走る。歩けるようになるまでまだしばらく時間がかかるだろう。
「では・・・。お言葉に甘えさせてもらいます」
「そうすることね。余計なことして、仕事を増やさないでよ?」
軽く釘をさすと彼女は出て行った。その後も今起こっている状況を理解する事に勤めたが、襲い来る眠気には勝てず
徐々に意識が遠退いった。
次に目を覚ましたときは痛みは軽くなり、ちょっと走る程度なら問題はなくなっていた。あれからたいした時間が
経った訳でもないのに何故だろうか。まるで自分の周りだけ時間が早くなったような気分だ。
体に余裕が出てきたせいか、小腹が空いてきた。
(これだけデカい館なら、食堂の一つや二つあるだろう)
特にたいした事も考えず適当に歩き始めた。どれだけの距離を歩いただろうか。かれこれ40分以上歩いている。
外から見たとき確かに広そうに見えたが、ここまで広いものなのだろうか?行けども行けどもそれらしい
部屋は見つからない。それどころか元居た部屋さえわからない。
(う~む、困った。確実に迷ったな)
自分は旅人である。道に迷わぬ自信はあった。数分前までは。今では脆くもその自信は崩れ去っている。
(どうしよう。とゆうか、コレだけ広くてどうしてメイドの1人も見当たらないんだ?)
その館はただ広く、そして窓も極端に少なかった。やっと見つけた窓から、今が夜も遅い時間だということが
見て取れた。
(今夜は満月か・・・。)
ふと、考え事から頭を戻すと窓のまったく無い、真っ直ぐな廊下を
歩いていた。先ほどまでの廊下とはどこか違う、何か異様な感じがした。
「・・・。」
引き返すことも出来たが、何かに呼ばれているような感じがした。不思議と恐怖や疑問はなく、ただ長い廊下を歩み続けた。
しばらく行くと突き当たりに一つの扉があった。今まで見てきた扉と違い、威厳に溢れ、異常なほどの威圧感を放っていた。
(・・・どうしよう)
どう見ても上流の扉である。ましてや通路の突き当りなど、間違いなくこの館のトップクラスの者の部屋だろう。
怪我人である、いち人間風情が勝手に入っていいものか。しばらく扉の前で考える。
「・・・。何をしているの?」
突然声が聞こえる。恐らく扉の向こうからしたのだろうか。その声は頭に響き、まるで脳内に直接話しかけられている
錯覚さえ覚える。その声と同時に伝わる威圧感。どう抗っても勝てぬ事を一瞬で理解させるそのプレッシャーは
蛇に睨まれた蛙の如く身動きが出来ない。
「そんな所に立っていないで、お入りなさい。」
入ることを酷くためらう。だが、入れといわれた以上入らなければとても後悔することになるのだろう。覚悟を決めて
扉を開く。
「・・・。」
またもや開いた口が塞がらない。広いその部屋には、紅い絨毯が一直線にひかれており、その奥には階段状に上がっている
フロア。その奥には大きな窓が一つ。紅い満月が顔を覗かせていた。その頂点にこの館の主であろう少女が佇んでいた。
その一歩後ろには先ほどのメイド。先ほどの笑みは無く、静かにこちらを見つめている。
「貴方、名前は?」
唐突に話しかけられ、混乱する。見た目の幼さとは似つかない威厳。全てを見透かすような瞳に嘘はつけないと悟る。
「ア、アルバート フォルトナーといいます。親しいものからはフォルと呼ばれています。」
「ふーん。フォルね。ところでフォル、貴方は何故ここに来たのかしら?」
「ここと、いいますと?」
「この館には数多くの部屋があるわ。それらをまったく見ずにどうしてここに来たのかしら?」
意味有りげに微笑む少女。メイドはただ静かに見つめている。
「何故でしょうね。もともと小腹が空いたので部屋を出たのですが、途中で帰り道が分からなくなりまして。
どうしようか迷っている時に何かに惹かれて・・・いや、そう、誰かに呼ばれた気がしました。こっちだよ、と。」
「・・・。」
「その声の方に歩いて、気が付いたらこの真っ直ぐな廊下を歩いていました。」
「・・・。なかなか素質があるみたいね」
「その様ですね」
「・・・?」
「ところで・・・貴方は怖くはないのかしら?」
そう言葉を吐くと少女は睨みつける。その眼に睨まれたものは死をイメージさせられ、その場から動くことも許されぬ、
そんな強大な威圧感を放つ眼だった。だが、
「・・・。恐怖を感じないと言えば嘘になります。扉の向こう側で声をかけられた時、恐怖で手足が震えたのを覚えています。
ですが、今は何も。何と言うか、死を超越した感じです。」
「今、私に殺されるかもしれないのに?」
「・・・。そうですね。その可能性はずっと頭の中にありました。悪魔の館と噂される主が、
自分を生かしておくハズがないと。だだ、」
「ただ?」
「ただ、もとは一度死んだ身。助けては頂きましたが、今ここで再度殺されてもプラマイゼロなんじゃないかと。」
「・・・。ぷぷ、あはははははは」
「・・・?」
幼い少女の姿をした悪魔は高らかに笑った。メイドも静かに微笑んでいる。
一しきり笑い終えると悪魔は再びこちらを見る。
「貴方、中々面白いわ。いいでしょう、貴方は殺さないでいてあげるわ。」
「ありがとう、ございます?」
状況が理解できなかったがとりあえず助かった命に礼を言っておく。
「それで、命の助かった貴方はこれからどうするのかしら?」
「・・・。それについてお願いがあります。」
「・・・?」
それについては既に決めていた。死を覚悟し、再び目を覚ますことの出来たその時に。
おかしいと思われるだろう。気でも触れたかといわれるだろう、それでも構わない。
それが今の自分に出来るせめてもの恩返し。
「自分を門番として、紅魔館に雇ってください。」
少女を照らす月明かりは紅く紅く輝いていた。
>「あ、いたいた。またこんなところでサボ・・・休憩して。咲夜さんに起こられますよ」
ここは「怒られる」でしょう。
>昔までは幻想郷に潜む妖怪達を警戒していたが、
ここも「今までは」もしくは「昔は」でしょう。
>あら、目を覚ました見たいね。
ええっと「みたいね」はひらがなで書くものじゃありませんでしたっけ?
>「ア、アルバート フォルトナーといいます。親しいものからはフォルと呼ばれています。」
ううん、どうにも違和感。欧米系の名前ですよね。ならば親しいものは、いや、親しくない物もファーストネームでよぶもんじゃないでしょうか。
この作品に対する評価は後編でまとめてさせていただきます。