あまりにもその変わりようが酒の肴にしては興味を持ちすぎたと、まず言っておこう。
博麗神社での宴会は人や妖怪、ましてや吸血鬼や希少種の鬼までもが顔を出して騒ぐ宴会。
皆一人ずつ色んな理由を抱えてこの宴会に出席しているとは思うが、お酒が入ってしまえばそんな事関係なくただ騒ぎ、ただ楽しむためだけに時間が過ぎていく。
私事八雲紫もまたその一人であるはずだった。
最初は霊夢とお酒で語り合う為に顔を出したはずだった。
けれど、ふと目に入ってしまったのだ。青白のエプロンドレスを着込んだ金髪の少女、人形遣いの異名を持つアリス・マーガトロイドの代わり映えを。
それは第三者から見ても多少の違いだったかもしれない。
けれど大妖怪・・・色々な人間を観察してきた私にとってはとても異様に見えてしまったのだ。
最初に見たときは知らぬ顔の者と喋っているアリスは、表面上は穏やかな笑みを湛えて談笑をしていた。
その者と数度会話をし終えると、今度は横合いからあの黒白の魔女、霧雨魔理沙がアリスの肩を掴んでもっと酒飲もうぜ!とか言いながら杯を一気に呷っている。
これは客観的に見てもどう見たとしても酔っている。さしずめ中年オヤジの酔っ払いの行動を可愛らしい魔女がやっているというだけの違いだろう。
アリスはというとお酒臭い!とかどれだけ飲んだらこうなるのよ!とかガミガミと魔理沙にイライラと言っているように見える。
けれど、私は驚きのあまりそこでお酒が入っていた杯を藍の顔にぶちまけるという行動を起こしてしまった。勿論、わざとだ。
率直に言えばアリスの眼が魔理沙に肩を持たれた時点で生きた眼になったというべきか。
あれが本来の輝きなのかわからないがアリスと魔理沙がじゃれあって初めてアリスという存在が輝きを見せたと言うほかあるまい。
どこかの天狗ではないが、その輝きに私は興味を持った。そう、私から行動を起こさせる程の価値・・・暇つぶしがあると判断して。
「藍、ちょっと出かけてくるわ」
宴が終わりマヨヒガに戻ってきて開口一番にまた出かけてくる等の発言を藍は自身の主人がすると思わず、そのままハッ?と口を開けて固まってしまった。
そのわずかに固まったのがいけなかった。
紫は躊躇なく自身の「隙間」に潜り込む。
「ちょ・・・!?紫様!?」
慌てて止めようとする藍だが半歩足りなかった。
「ふぎゃ!」
隙間に完全に入って消えた紫をとらえられず、そのまま勢いがついて壁に顔から激突してしまった。
「ぅぅ・・・せめて行き先を言ってから出かけてください・・・・・・」
鼻を痛めて顔をしかめつつ、紫が出かける先を心配する。
藍は分かっているのだ。紫が行動するということは、またよからぬ暇つぶしを思いついたということを。
「ふぎゃ!」
そのよからぬ暇つぶしに天狗こと、射命丸文は見事に捕まってしまった。
宴がお開きになってから夜の散歩をしゃれこむように月が真上で輝いていた空を駆け回っていたら、いきなり目の前の空間が裂け、見事に加速がついたまま「隙間」にダイブ、行き着いた先は樹木のおへそに顔からぶつかったという具合である。
「丁度よく近くを飛び回っていてくれて助かったわぁ~。天狗ちゃん♪」
顔をしかめつつもその声がする方向へと振り向く。
そこには、何か企んでいるとしか思えない紫の顔が文を見下す形で立っていた。
危機感が背筋を駆け巡るが、捕まった相手が悪すぎる。
どれだけ文が最速の移動速度を持とうとも、あの「隙間」で追いかけられれば逃げ切れる筈がなく、ここはおとなしく要件を聞いて従順に従うべきと即決で判断が決まった。
「な、何のようでしょうか・・・?」
取って喰われるかもしれないと震える身体を必死に鎮めてもっともな質問を飛ばす。
「貴方、一応記者よね?この幻想卿の事情を知り尽くしている筈の」
遠まわしに言っているが、逆を言えば答えられなければ殺すとも取れるような発言を紫は邪悪な笑みを湛えたまま文に返す。
「も、勿論です」
自分は嘘吐き天狗やらゴシップ記者とか言われているがそれでも他の誰よりも幻想郷のあらゆる事情に精通していると自負している。だから迷いなく答えられた。
「じゃあ人形遣い、アリス・マーガトロイドと、恋符の白黒魔女、霧雨魔理沙の動向、過去、その他もろもろ、聞かせてくださらない?」
ここで文が口を割らなければ、この後の事件に繋がらなかったのは言うまでもない。
「~♪」
アリスは魔法の森の中をまるでワルツを踊るように歩いていた。
今日の宴はとても楽しかった。魔理沙は完全に酔いつぶれていたが宴がお開きになるまで私に絡んで・・・。
お酒のせいもあるのか、魔理沙に肩を掴まれただけで心臓が跳ね上ってしまった。
あの時赤面してなかっただろうか、いつものように言い合う魔女達を演じられただろうか?
あの日、あの時に魔理沙と出会ってから私はずっとあの白黒の魔女に心を振り回されっぱなしだ。
だが、それが心地よいと思ってしまった時点で私は人として何処かネジが外れてしまっているのかもしれない。
こんなにも他人に惹かれたのは初めてだ。
魔理沙は酔いつぶれて博霊神社で泊まっていくと聞き、私はいつもの様子で自分の家に戻ると言った。魔理沙と一緒に泊まってしまったら、自分の本当の気持ちがボロボロと出てしまいそうで。
魔理沙は私の事をどう思っているのだろうか?知り合い・・・魔法使い仲間・・・友達?
どれでもいいと思った。これ以上を望むのは罪深い気がして。
永遠に、あんな風な楽しい日々が続けばそれでいいと。
それだけを願った。
今なら私を育ててくれた神崎様にも祈ってもいい。
魔理沙と、あんな風に、幸せにいられる日々が続きますようにと。
「・・・・・・ッハ、ハハハ、アッハッハッハッハッハ!!」
射命丸からアリスの「過去」の話を聞いた辺りから紫は心の底から笑いが止まらなくなった。
文はその笑みを見てどう思ったのか、紫と共に笑うべき所なのか。
だが内容が内容なだけに笑える話でもない。
ひとしきり笑った後だろうか、紫はお腹をさすりながら顔は涙目のまま文に更に聞く。
「そ、それで?その話本当なのでしょうね?」
本当ならば暇つぶしとしては最高の部類だ。さしずめ私は恋の・・・いゃ、破壊のキューピッドとして行動する事になるかもしれないのだから。
文は少し頬をかきながらしどろもどろに返答する。
「出所が魔界ですから・・・多分本当だと思います。私も聞いたときは半信半疑でしたが」
「確信はなしなのね・・・。ま、やるのは私じゃないわけだし・・・」
出たとこ勝負でも面白い話になりそうだと紫は思った。話が嘘だとしても今の関係は崩れる。話が本当だとしても今の関係は崩れる。
どちらにしても進むシナリオだ。
「後の問題は・・・魔理沙を育てた悪霊の話・・・」
そう、メインを叩き起こして初めてそれは実現可能なシナリオなのだから。
別に魔理沙と少し上の最強のカードは複数いるにはいるが、紅の吸血鬼しかり、閻魔しかり、幽々子しかり・・・私でもいい。
ただ、強いだけじゃ意味がない。接点がなければいけないし、なにより道化役をやってもらうのだ。今までのアリスと魔理沙の状況を見ているものでは感づかれたら面白くない。
「そちらは博霊の巫女に直に聞けば分かる事だと思いますが・・・?」
「あら、駄目それは」
文の提案をにべもなく却下する。わざわざ探して゛封印を解くのだ゛聞いたところで感づかれたら嫌だし、何よりも霊夢に嫌われたくはない。
「ま、閻魔の所に行っていなければ恐らく神社の周辺ね。ありがとう、文。いい話が聞けたわ」
私はそのまま「隙間」を出現させ、徐々に入っていく。
文はやっと解放されると安堵する。
「あ、早々」
後は顔だけ入れば完全に消えるという所で、文の虚をつくように紫は忠告をする。
「ここで会ってお喋りした話は他言無用。いいわね?」
ギロリと、冷徹な眼が文の身体を突き刺す。
文は必死に首をコクコクと頷かせ消えてくれるのを待った。
あんなにもはしゃいだ宴の夜がまさかこんな形で終わるとはつくづく運がないものである。
「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ?」
眼が覚めて途端に襲ってきた頭痛に魔理沙は顔をしかめた。
「あつつつ・・・・・・痛いぜ」
横になっていればいいものを眼が覚めてしまったせいか、ガバッと布団から跳ね起きる。
「おはよう、魔理沙」
居間でお茶をズズズと飲みながら挨拶する紅白の巫女衣装を着込んだ腐れ縁が挨拶してくる。
「おはよう・・・霊夢・・・あつつつ」
挨拶するだけでもガンガンと頭をトンカチで叩かれているような具合に顔をしかめっぱなしだ。
「昨日は飲みすぎよ。なんだってあんなにテンション高かったわけ」
心配するそぶりもなく、お茶を更にズズズと飲む霊夢。テーブルには朝食の食べ終わった後が残っている。
「・・・・・・私の朝食は?」
「あるわけないでしょ。酔いつぶれていたのを泊めてあげただけでも感謝してほしいものだわ」
自分で脱いだのか、誰かが脱がしたのか、下着姿のまま居間に来て、期待した事はあっけなく崩れた。
「・・・・・・・・・ならお茶だけでもくれ」
頭を手でおさえつつ、とりあえずお茶を催促し、後は自分の服から一昨日永淋から貰っておいた薬を探す。
霊夢は魔理沙用の湯飲みを取り、それに緑茶を注ぐ。
「ハイ」
トンっと魔理沙の前に淹れたての湯飲みを置いた。
サンキュっと鼻を手で押さえて粉末上の粉薬を口に入れ、置かれた緑茶で流し込む。
「っつ、効くぜ」
「?それ何の薬よ?」
一気に飲みきったのか、霊夢の前においてあった魔法瓶を取るとまた緑茶を自分の湯飲みに流し込む。
「ぁー。勢いが欲しかったから先に永淋の所から頭痛薬もらった」
「勢い?」
気にしたら負けだぜと訳の分からない事を言って再び緑茶を一気飲みする魔理沙。
「ぁー、ぁー、うん。やっと治まってきたぜ」
頭や手をグルグル回して体調をチェックしているのか。ヨシッと言ったと思ったらそのまま洗面所へ。
顔を洗う音、歯を磨く音がしてくる。
霊夢はズズズと2杯目になるお茶を飲んでホっと一息・・・
「・・・ん?歯を磨く音?」
歯ブラシは魔理沙のなんておいてないはずだが・・・?
「ちょ、まさか」
慌てて洗面所に向かう。
シャコシャコと歯を磨いている魔理沙がいた。霊夢の歯ブラシを使って。
「マーーーリーーサーーー!!!」
今日も神社で爆発音から日常が始まるのはこの二人だからこそだ。
「偉い目に遭ったぜ・・・」
いつもの黒白のエプロンドレスに着替え、トンガリ帽子を被り、箒にまたがって自分の家へと帰路を辿る。
自分が頭痛以外に寝ぼけていたのは完全に分かった。いつもならあんな自殺じみた事はしない。
しかしお酒の力を借りないとアリスに近づけないとは、つくづく自分は臆病者になったものである。
・・・些細なきっかけだった。いつものように弾幕ごっことしゃれこんでいたら破壊の吸血鬼フランの禁忌、「レーヴァテイン」が見事にアリスに直撃し、咄嗟に人形で防御したのか大怪我にはならなかったが意識を失っていて、落下している所を空中でアリスをキャッチした辺りからどうにもおかしい。こんなに軽かったのかとかやわらかいとか・・・。
「・・・ほんとにどうかしてるぜ」
アリスを私は友達として見ていた。魔法使い仲間とも言うかもしれないが。
それなのに、私の感情はそういったものとは違うものになっている気がしてならない。
そう、もっと簡単に言うと・・・。
思い浮かんだ考えは首を全力で左右に振る形で否定する。顔が紅潮しているのが自分でも分かる。
否定しないといけない。
この感情を認めてしまったら、どうやってもアリスの顔をまともにみられなくなってしまうから。
「・・・・・・・・・ここ、かしら?」
一度マヨヒガに戻り藍にまたでかけるけど心配しないでと一言言って、かなり経つ。
霊夢に気取られないように「隙間」を連続使用し、ようやく次元と次元の「狭間」らしきものを見つけたのだ。
中に入るとそこはあの魔理沙が住んでいる魔法の森に似たような世界が広がっていた。
「・・・誰だい?」
入ってきた紫に声をかける人物。
紫はその人物を見て、心の中で見つけたと叫びつつ笑顔で会釈をする。
「貴方を解放する者ですわ」
恋物語は動き出す。正しいか、正しくないかは別として。
「よし、出来た♪」
我ながら会心の出来と自分を褒めたくなる出来だ。
黒白のエプロンドレス、黒いトンガリ帽子、金髪の髪のお人形。
後はミニ竹箒もあれば完全に魔理沙お人形の出来上がりである。
「んふふ、私だけの魔理沙♪」
ぎゅっと抱きしめ、魔理沙人形に頬擦りをする。それだけで心が満たされるような気持ちになった。
だからその満たされた気持ちを他にわからせてあげたいと思ったのも無理がないかもしれない。
アリスは紅魔館にいるパチュリーに魔理沙人形を見せてあげようと思った。
彼女もきっと気に入る事だろう。
そう思えば行動は早かった。身支度を整え、上海人形と一緒に魔理沙人形を持って、家を出る。
「あら?」
いつからまた降り出したのか。
もう冬の季節は終わったと思ったのに、ポツポツと、そこには雪一色の地面が。
雪も私を祝福してくれているのかな?
家のドアを閉め、ポツポツと遅く降る雪の中を歩く。
アリスは浮かれていてこの「異常」に気づけなかった。
だからだろう。森の中で、出会ってはいけない存在に出会っても、すぐに戦闘の態勢に入れなかったのも。
「・・・?」
ザクザクと雪の中を歩いていたら、目の前には見慣れない、青一色のローブに緑色の髪、緑色の目をした女性が立っていた。
その格好はまるで魔法使い――――――
「こんばんは」
「こんばんは・・・?」
今はまだ昼だ。何故こんにちはじゃなくてこんばんは・・・?
「貴方がアリス・マーカトロイド?」
「そうですが・・・どちらさまで?」
「あぁ、いいのよ。私の事なんてどうでも」
そう言って、青い魔法使いは右手をアリスに向け。
「これから消える人にはどうでもね」
見慣れた光の閃光がアリスを襲った―――――――――。
それが見えたのは偶然だった。
自分が住んでいる魔法の森「だけ」雪に覆われている事から不安になってアリスの家のほうに向かう途中だった。
雪が降る中を進んでいるとその進路方向にアリスの姿が見えたのだ。
姿が見えてホっとした瞬間、その手前に・・・・・・・・・・・・ありえない人物が立っていた。
遠くからでもわかる人物、自分を鍛えてくれた人物。自分の第二の母親とまで思った人物。
なんで?と最初は思った。
その疑問は、純度の高い魔力の波が答えとなって返ってきてくれた。
「・・・!!!」
浮遊魔法を最大速度にする。箒の進路をアリスの真上を横切るように。
間に合うか・・・!?
相手は既に右手をアリスに向けている。
「間に・・・あわ・・・せる!」
空の上で弾丸のようになりつつ、魔理沙はスカートの中からミニ八卦炉を取り出す。
既に相手はエネルギーを貯め切っている。
「ミマスパーク」
「マスタースパーク!」
だが、瞬時にエネルギーを貯め、アリスとその青色の魔法使いを断絶するように、真上から十八番の恋符、マスタースパークを発動させる!
「キャ・・・!」
アリスはいきなり何が起こったかわからないでいた。
ただ光の閃光が自分に襲いかかると思った瞬間にうえからの光の閃光により遮られその相殺された爆風で雪が舞って辺りが何も見えなかった。
――――ようやく、爆風による雪が舞い散った後。アリスが見た光景は。
自分を守るように青色の魔法使いに立ち塞がる魔理沙の背中だった。
「なんでだ・・・」
それは疑問。
「なんでだよ・・・・・・」
それは憎悪。
「なんで・・・魅魔様がここにいてアリスに攻撃しているんだよ・・・!?」
それは悲しみ。
ずっと会いたかったかもしれない師が、かけがえのない存在に攻撃を仕掛けたというその行為が、魔理沙のいつもの余裕の表情をなくさせていた。
「・・・・・・・・・」
魅魔は答えない。
ただ、その表情は悲しみに満ちていた。
「質問に答えるべきだぜ・・・!魅魔様!」
それでも聞かねばならなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分の心に聞いたらどうだい?・・・・・魔理沙」
「なにを!?」
「私は・・・・・・過去はどうでもいいと思っている!」
その言葉を聞いて、ボトっと、魔理沙の背中で何かを落とした音がした。
魔理沙は後ろを振り返る。
そこには、腕に抱えていた魔理沙人形を落とした青ざめたアリスの顔が。
「アリス・マーガトロイド。貴方の過去がどんなものだったか、貴方が不死だろうと、「人形」だろうと、私には関係のない事だ」
魅魔の右手が再びアリスに向けられる。
「けれど、人形が人間に恋?冗談じゃない。あぁ、冗談じゃない!悲しみの最後しかないというのに、そんなものに魔理沙を付き合わせるな!!」
激昂と共に再びミマスパークが放たれる。
「クッ・・・!マスタースパーク!」
再び魔理沙もミニ八卦炉にエネルギーを集めて放つ。
真正面からのぶつかり合いは、二度爆風を起こし相殺される。
「・・・違う・・・違う・・・私はそんなつもりで・・・」
爆風で雪が散る中、アリスの掠れた声が魔理沙の耳に届く。
「私は・・・そんな・・・つもりで・・・魔理沙を好きになったわけじゃ・・・」
痛いほど耳に入ってきて、私の理性はここで切れた。
「アリス!!」
爆風の中叫んだ私の声に、ビクっと震えて涙を堪えているアリスの姿が「見える」
「私と一緒じゃ永遠なんてないかもしれない!私は人間だ!悲しい結末なんて絶対にあるに決まってるはずなんだぜ・・・!」
だから私が涙を流そう。
「けど、それでも好きなんだぜ!?お前の事が!心の底から!」
堪える君の代わりに私が涙を流そう。
「今を生きられればそれで充分じゃないか!過去なんて知らない!未来なんて知らない!今!アリスと一緒にいられるだけで私は充分幸せなんだぜ・・・!?」
だから、応えてくれ、私の気持ちに。
流れていた涙を拭い、「敵」を見る。
「・・・・・・・・・・・・そうか」
魅魔は左腕を上げる。
「そこまで言うならせめて・・・・・・私の手で、一緒に・・・消してあげるわ。さよなら、魔理沙」
左手を空に。
途端、魅魔の後ろに黒い・・・馬鹿でかい花が。
・・・あれはまずい・・・!!!
「魔理沙!」
背中を掴まれる形で私は空に急上昇する。
「トワイライト」
言葉と共に黒い馬鹿でかい花が金色に輝き始めて―――――――
辺り一面を閃光で包んだ。
・・・どれぐらい経ったか。
「・・・・・・?」
まばゆいばかりの閃光に目を瞑っていたが、開ける。
そこには狙いとは少し横にずれたトワイライトスパークの抉った後が。
しかし威力は・・・。
「まさか、山一つ消し飛ばすなんて、流石魔理沙のお師匠様って所かしら」
私の頭一個上から声がする。
「アリス!」
「いい加減自分で浮遊魔法使ってくれない?全く・・・あれから真っ向勝負挑もうとするなんてどうかしてるわ」
少し目が赤かったが、いつも通りのアリスの姿がそこにあった。
「あ、あぁ。ごめん」
言われてすぐに箒にまたがる。
「・・・魔理沙」
箒にまたがったのを見て、アリスは視線を下に移す。
下には、青色の魔法使いがこちらを見上げる形で悠然と立っていた。
「さっきの・・・信じてもいいのよね?」
「・・・あぁ」
力強く頷く。嘘は言った覚えはない。
「・・・なら、この話はまた後日かしらね。まずは・・・あの人をどうにかすることが最優先よ!」
いつもの独特の人形を操る構え。
アリスの周囲には七対の上海人形が、まだかまだかとご主人様の命令を待っている。
「あぁ・・・!!」
手にはミニ八卦炉。周囲にマジックミサイルを展開し、見下ろす様に、箒の進路を変える。
生命を賭けた、弾幕ごっこの始まりである。
「・・・・・・・・・」
紫は少し後悔をした。まさかあんな「化け物」だとは思っていなかったし、破壊後も全部コッチ持ちで修繕することになっているのだ。先ほどのトワイライトスパークで山一つ・・・・・・。
「これは、紅魔館の方にも手伝い要請したほうがいいかしら・・・」
空間操作と時間操作を同時に行えれば修繕はあっというまに終えられる。どうにかしてあの紅の吸血鬼を説き伏せるか・・。
「・・・それより台本通りに事が運ぶかしらねぇ・・・」
今のところAシナリオで事が運んでいる、後はあの化け物を消滅出来る程の火力と策があるかどうか・・・。
「・・・・・・・・・・・・アリスと魔理沙が負けたら面白くないわねぇ」
今回は遊びじゃない。本気で命がかかっている。もしあの二人が死んでしまったら、紅白の巫女はどんな顔をして死に際に立つのか。
「・・・それはそれでみたいきがするわねぇ」
やはりどちらに転んでも面白くなりそうだと思う紫であった。
・・・何千とマジックミサイルを撃っただろうか。
こちらの弾幕はアリスとの連携で倍以上の数で押しているはずである。
なのに、なのにだ。
「恋符」
また゜2筋゛の光の閃光で全て消し飛ばされる。
左右同時に挑んでも、両手で左右にミマスパークを撃たれるのである。
「・・・・・・」
重ねてきた年月が違いすぎる。資本となるステータスが違いすぎる。
今の自分の状況を再確認。
怪我、右肩に裂傷。魔力、まだまだいける。スペルカード、奥の手が二つ。
しかし奥の手はどちらとも理論上できるだけであってやった試しがない。
おまけに魔力が基本的に足りない。まだまだいけると言ったが、一個目を使えば多分すっからかん。二個目を使う方法があるとしたら・・・・・・
チラリと横目でアリスを見る。
上海人形は7体から5体になっている。連続で放射されるミマスパークに巻き込まれたのだ。
「アリス」
やっぱり・・・何かで掛け算しなければ勝てるはずがない。
「私に必勝の作戦があるんだが乗るか?」
「ん・・・?」
アリスが魔理沙の後ろに隠れるようにして上海人形を構えている。
魔理沙の手にはマスタースパークを放つ為のミニ八卦炉がこちらに向けられている。
「・・・まさか、今更私にマスタースパークが効くと思っていないだろうね・・・?」
左手を空に上げる。
途端、再び自身の後ろには黒い花が。
「来るわよ!魔理沙!」
「あぁ・・・」
ミニ八卦炉に全神経を集中させる。
イメージはあの黒い花と一緒だ。
ただ放出を極限まで高めるだけ。
「・・・行くぜ。魅魔様!」
魅魔の後ろにある黒い花が再び金色へと変化する・・・!
「「トワイライト!!!」」
驚きの声はどっちから上がったか。
金色の花から放出されるトワイライトスパーク。
同じく、ミニ八卦炉が悲鳴を上げるようにピシピシと言いながら放たれるトワイライトスパーク。
ここにきて、両方の火力は互角になった。
「グゥ・・・!」
魔理沙は全力でミニ八卦炉に力を注ぐ。
無茶を通り越して無謀なスペルカードをあみこんでトワイライトを発現させているせいもあり。魔力だけじゃなく、ミニ八卦炉自体も壊れる一歩手前で踏ん張るような状態だ。
まだか・・・・・・!?
一秒が長く感じる。数秒の攻防のはずなのに何時間も打ち放ち続けているようなそんな感触。
その拮抗状態を崩すために。
魔理沙の後ろにいたはずのアリスが左右同時残りの上海人形を魅魔に突撃させる・・・!
「取った!」
「なにを?」
上海人形に放たれる閃光。
「な・・・!?」
来るはずのない閃光が来てアリスは驚愕する。
そう、魅魔はトワイライトを撃ちつつも、「花」自体が撃っていたので両手は空いていたのである。
「悪いけれど、私はその程度の方法では倒せはしないわ」
臨界点が来たのか、拮抗から収縮してトワイライト同士の爆風が起こった。
「そろそろおとなしく消えてもらうわ。もう、手段はないでしょ?」
ミマスパークを撃ち終えた魅魔は両腕を下げる。
瞬間、爆風に穴が開く。
「!?」
「これが私の奥の手だぜ!」
血だらけの右手を添える形で箒を持ち、大上段に構え、落ちるように魅魔に振り下ろす。
「マスター・・・・・・ブレイドォ!!!」
箒の先端から一筋の金色の光が魅魔を消滅せんと襲い掛かる。
「ク・・・!!」
咄嗟に左腕に魔力を集中させそのまま拳を叩きつけるようにマスターブレイドとぶつかりあう!
終わりを告げる爆発が魔法の森で轟いた。
「ごほ・・・ごほっ!」
爆発に巻き込まれるかどうかというぐらいでアリスは離脱出来た。
上空から爆発が収まるのを待つ。
「・・・・・・」
アリスは魔理沙があんな奥の手があるなんて知らされていなかった。
(騙すならまず味方からって言うだろ?)
問い詰めたらこんな事言いそうだが、あれは完璧に決まっていたはずだ。
爆発が収まり、煙がはれていく。
そこには、前のめりで倒れている魔理沙と、片腕が消滅している魅魔がいた。
「・・・え?」
嘘だ・・・あれは完璧に・・・。
浮遊の魔法で高速に魔理沙の元に降り立って、その身体を抱き起こそうと前のめりに倒れている身体を肩から起こす。
「魔理沙・・・?」
抱き起こして、私は横に魅魔がいる事さえ忘れて、呆然となる。
「なによ・・・なによコレ・・・」
魔理沙の身体はボロボロだった。右手から肩にかけての裂傷、腹部からの出血・・・・・・黒白のエプロンドレスは、真っ赤に染まっていた。
「魔理沙・・・起きてよ、魔理沙・・・・・・!」
頭の中では分っていることなのに必死に、必死に身体を揺らす。呼びかける。
「ねぇってば・・・!起きなさいよ!起きてよ・・・・・・」
魔理沙は命を賭けて最後のスペルカードを切ったのだ。
こうなるから言わなかったのだ。最後の一手を、アリスを生かす為にと。自らを犠牲に。
「・・・・・・起きてよ………」
涙が、堪えた涙が、ここにきて、魔理沙を濡らしながら流れていった。
「・・・アリス・マーガトロイド」
片腕が消滅しても微動だにしていなかった魅魔が口を開く。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・これだけ言わせてくれ」
「・・・・・・・・・・・・何よ」
涙がようやく止まり、憎悪を込めてアリスは魅魔を見る。
「あぁ、あんたら二人の勝利よ」
その言葉と共に、魅魔を構成していたものは全て魔理沙に注がれていった。
「え・・・!?」
「まさか・・・ここまで計算尽くしているとは、師が弟子を超える時かしらね・・・」
徐々に直っていく傷、出血も時間が巻き戻されていくかのように魔理沙の体内に戻っていく。
「吸血鬼の真似事の魔法とは・・・私も考えられない領域だったわ・・・」
そう、魔理沙の奥の手、マスターブレイド。
あれの元のモチーフとなったのはフランドールスカーレットの禁忌、「レーヴァテイン」なのである。
魔理沙はガンナーとしては優秀だが、レミリアを消滅する術や霊夢のような天才的な実力もない。
故に、接近戦の完全吸収消滅魔法という発想を考えたのである。
だが、試す相手がいなくあくまで「理論上」でしか成りえなかった事からもし完成していなければ死んでいてもおかしくない博打だったのも確かだ。
そして魔理沙は見事その博打に勝った。
「負かされちゃしょうがない・・・幸せにおやり、人形遣い」
それが魅魔の幻想卿での最後の言葉だった。
残ったのは傷も服さえも完全に治りすやすやと寝息を立てる魔理沙と、呆然としながら消滅していった魅魔を見守ったアリス。
そしてあっちこっちのクレーターに。上空で「隙間」から顔を覗かせてハッピーエンド♪と
言い切った八雲紫であった
終幕
いつぞやのように博霊神社で宴があり、皆が騒ぎ、楽しみ、そしてお開きとなった静かな夜中。
宴が終わり、酔いつぶれるなんて事がなかった魔理沙と、皆の前ではいつものようにツンツンな態度はどこへやら、魔理沙の手を握って一緒に歩きながら帰るアリスが天狗に目撃させられ熱愛発覚!?と騒がれるのは、また別のお話―――――――。
博麗神社での宴会は人や妖怪、ましてや吸血鬼や希少種の鬼までもが顔を出して騒ぐ宴会。
皆一人ずつ色んな理由を抱えてこの宴会に出席しているとは思うが、お酒が入ってしまえばそんな事関係なくただ騒ぎ、ただ楽しむためだけに時間が過ぎていく。
私事八雲紫もまたその一人であるはずだった。
最初は霊夢とお酒で語り合う為に顔を出したはずだった。
けれど、ふと目に入ってしまったのだ。青白のエプロンドレスを着込んだ金髪の少女、人形遣いの異名を持つアリス・マーガトロイドの代わり映えを。
それは第三者から見ても多少の違いだったかもしれない。
けれど大妖怪・・・色々な人間を観察してきた私にとってはとても異様に見えてしまったのだ。
最初に見たときは知らぬ顔の者と喋っているアリスは、表面上は穏やかな笑みを湛えて談笑をしていた。
その者と数度会話をし終えると、今度は横合いからあの黒白の魔女、霧雨魔理沙がアリスの肩を掴んでもっと酒飲もうぜ!とか言いながら杯を一気に呷っている。
これは客観的に見てもどう見たとしても酔っている。さしずめ中年オヤジの酔っ払いの行動を可愛らしい魔女がやっているというだけの違いだろう。
アリスはというとお酒臭い!とかどれだけ飲んだらこうなるのよ!とかガミガミと魔理沙にイライラと言っているように見える。
けれど、私は驚きのあまりそこでお酒が入っていた杯を藍の顔にぶちまけるという行動を起こしてしまった。勿論、わざとだ。
率直に言えばアリスの眼が魔理沙に肩を持たれた時点で生きた眼になったというべきか。
あれが本来の輝きなのかわからないがアリスと魔理沙がじゃれあって初めてアリスという存在が輝きを見せたと言うほかあるまい。
どこかの天狗ではないが、その輝きに私は興味を持った。そう、私から行動を起こさせる程の価値・・・暇つぶしがあると判断して。
「藍、ちょっと出かけてくるわ」
宴が終わりマヨヒガに戻ってきて開口一番にまた出かけてくる等の発言を藍は自身の主人がすると思わず、そのままハッ?と口を開けて固まってしまった。
そのわずかに固まったのがいけなかった。
紫は躊躇なく自身の「隙間」に潜り込む。
「ちょ・・・!?紫様!?」
慌てて止めようとする藍だが半歩足りなかった。
「ふぎゃ!」
隙間に完全に入って消えた紫をとらえられず、そのまま勢いがついて壁に顔から激突してしまった。
「ぅぅ・・・せめて行き先を言ってから出かけてください・・・・・・」
鼻を痛めて顔をしかめつつ、紫が出かける先を心配する。
藍は分かっているのだ。紫が行動するということは、またよからぬ暇つぶしを思いついたということを。
「ふぎゃ!」
そのよからぬ暇つぶしに天狗こと、射命丸文は見事に捕まってしまった。
宴がお開きになってから夜の散歩をしゃれこむように月が真上で輝いていた空を駆け回っていたら、いきなり目の前の空間が裂け、見事に加速がついたまま「隙間」にダイブ、行き着いた先は樹木のおへそに顔からぶつかったという具合である。
「丁度よく近くを飛び回っていてくれて助かったわぁ~。天狗ちゃん♪」
顔をしかめつつもその声がする方向へと振り向く。
そこには、何か企んでいるとしか思えない紫の顔が文を見下す形で立っていた。
危機感が背筋を駆け巡るが、捕まった相手が悪すぎる。
どれだけ文が最速の移動速度を持とうとも、あの「隙間」で追いかけられれば逃げ切れる筈がなく、ここはおとなしく要件を聞いて従順に従うべきと即決で判断が決まった。
「な、何のようでしょうか・・・?」
取って喰われるかもしれないと震える身体を必死に鎮めてもっともな質問を飛ばす。
「貴方、一応記者よね?この幻想卿の事情を知り尽くしている筈の」
遠まわしに言っているが、逆を言えば答えられなければ殺すとも取れるような発言を紫は邪悪な笑みを湛えたまま文に返す。
「も、勿論です」
自分は嘘吐き天狗やらゴシップ記者とか言われているがそれでも他の誰よりも幻想郷のあらゆる事情に精通していると自負している。だから迷いなく答えられた。
「じゃあ人形遣い、アリス・マーガトロイドと、恋符の白黒魔女、霧雨魔理沙の動向、過去、その他もろもろ、聞かせてくださらない?」
ここで文が口を割らなければ、この後の事件に繋がらなかったのは言うまでもない。
「~♪」
アリスは魔法の森の中をまるでワルツを踊るように歩いていた。
今日の宴はとても楽しかった。魔理沙は完全に酔いつぶれていたが宴がお開きになるまで私に絡んで・・・。
お酒のせいもあるのか、魔理沙に肩を掴まれただけで心臓が跳ね上ってしまった。
あの時赤面してなかっただろうか、いつものように言い合う魔女達を演じられただろうか?
あの日、あの時に魔理沙と出会ってから私はずっとあの白黒の魔女に心を振り回されっぱなしだ。
だが、それが心地よいと思ってしまった時点で私は人として何処かネジが外れてしまっているのかもしれない。
こんなにも他人に惹かれたのは初めてだ。
魔理沙は酔いつぶれて博霊神社で泊まっていくと聞き、私はいつもの様子で自分の家に戻ると言った。魔理沙と一緒に泊まってしまったら、自分の本当の気持ちがボロボロと出てしまいそうで。
魔理沙は私の事をどう思っているのだろうか?知り合い・・・魔法使い仲間・・・友達?
どれでもいいと思った。これ以上を望むのは罪深い気がして。
永遠に、あんな風な楽しい日々が続けばそれでいいと。
それだけを願った。
今なら私を育ててくれた神崎様にも祈ってもいい。
魔理沙と、あんな風に、幸せにいられる日々が続きますようにと。
「・・・・・・ッハ、ハハハ、アッハッハッハッハッハ!!」
射命丸からアリスの「過去」の話を聞いた辺りから紫は心の底から笑いが止まらなくなった。
文はその笑みを見てどう思ったのか、紫と共に笑うべき所なのか。
だが内容が内容なだけに笑える話でもない。
ひとしきり笑った後だろうか、紫はお腹をさすりながら顔は涙目のまま文に更に聞く。
「そ、それで?その話本当なのでしょうね?」
本当ならば暇つぶしとしては最高の部類だ。さしずめ私は恋の・・・いゃ、破壊のキューピッドとして行動する事になるかもしれないのだから。
文は少し頬をかきながらしどろもどろに返答する。
「出所が魔界ですから・・・多分本当だと思います。私も聞いたときは半信半疑でしたが」
「確信はなしなのね・・・。ま、やるのは私じゃないわけだし・・・」
出たとこ勝負でも面白い話になりそうだと紫は思った。話が嘘だとしても今の関係は崩れる。話が本当だとしても今の関係は崩れる。
どちらにしても進むシナリオだ。
「後の問題は・・・魔理沙を育てた悪霊の話・・・」
そう、メインを叩き起こして初めてそれは実現可能なシナリオなのだから。
別に魔理沙と少し上の最強のカードは複数いるにはいるが、紅の吸血鬼しかり、閻魔しかり、幽々子しかり・・・私でもいい。
ただ、強いだけじゃ意味がない。接点がなければいけないし、なにより道化役をやってもらうのだ。今までのアリスと魔理沙の状況を見ているものでは感づかれたら面白くない。
「そちらは博霊の巫女に直に聞けば分かる事だと思いますが・・・?」
「あら、駄目それは」
文の提案をにべもなく却下する。わざわざ探して゛封印を解くのだ゛聞いたところで感づかれたら嫌だし、何よりも霊夢に嫌われたくはない。
「ま、閻魔の所に行っていなければ恐らく神社の周辺ね。ありがとう、文。いい話が聞けたわ」
私はそのまま「隙間」を出現させ、徐々に入っていく。
文はやっと解放されると安堵する。
「あ、早々」
後は顔だけ入れば完全に消えるという所で、文の虚をつくように紫は忠告をする。
「ここで会ってお喋りした話は他言無用。いいわね?」
ギロリと、冷徹な眼が文の身体を突き刺す。
文は必死に首をコクコクと頷かせ消えてくれるのを待った。
あんなにもはしゃいだ宴の夜がまさかこんな形で終わるとはつくづく運がないものである。
「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ?」
眼が覚めて途端に襲ってきた頭痛に魔理沙は顔をしかめた。
「あつつつ・・・・・・痛いぜ」
横になっていればいいものを眼が覚めてしまったせいか、ガバッと布団から跳ね起きる。
「おはよう、魔理沙」
居間でお茶をズズズと飲みながら挨拶する紅白の巫女衣装を着込んだ腐れ縁が挨拶してくる。
「おはよう・・・霊夢・・・あつつつ」
挨拶するだけでもガンガンと頭をトンカチで叩かれているような具合に顔をしかめっぱなしだ。
「昨日は飲みすぎよ。なんだってあんなにテンション高かったわけ」
心配するそぶりもなく、お茶を更にズズズと飲む霊夢。テーブルには朝食の食べ終わった後が残っている。
「・・・・・・私の朝食は?」
「あるわけないでしょ。酔いつぶれていたのを泊めてあげただけでも感謝してほしいものだわ」
自分で脱いだのか、誰かが脱がしたのか、下着姿のまま居間に来て、期待した事はあっけなく崩れた。
「・・・・・・・・・ならお茶だけでもくれ」
頭を手でおさえつつ、とりあえずお茶を催促し、後は自分の服から一昨日永淋から貰っておいた薬を探す。
霊夢は魔理沙用の湯飲みを取り、それに緑茶を注ぐ。
「ハイ」
トンっと魔理沙の前に淹れたての湯飲みを置いた。
サンキュっと鼻を手で押さえて粉末上の粉薬を口に入れ、置かれた緑茶で流し込む。
「っつ、効くぜ」
「?それ何の薬よ?」
一気に飲みきったのか、霊夢の前においてあった魔法瓶を取るとまた緑茶を自分の湯飲みに流し込む。
「ぁー。勢いが欲しかったから先に永淋の所から頭痛薬もらった」
「勢い?」
気にしたら負けだぜと訳の分からない事を言って再び緑茶を一気飲みする魔理沙。
「ぁー、ぁー、うん。やっと治まってきたぜ」
頭や手をグルグル回して体調をチェックしているのか。ヨシッと言ったと思ったらそのまま洗面所へ。
顔を洗う音、歯を磨く音がしてくる。
霊夢はズズズと2杯目になるお茶を飲んでホっと一息・・・
「・・・ん?歯を磨く音?」
歯ブラシは魔理沙のなんておいてないはずだが・・・?
「ちょ、まさか」
慌てて洗面所に向かう。
シャコシャコと歯を磨いている魔理沙がいた。霊夢の歯ブラシを使って。
「マーーーリーーサーーー!!!」
今日も神社で爆発音から日常が始まるのはこの二人だからこそだ。
「偉い目に遭ったぜ・・・」
いつもの黒白のエプロンドレスに着替え、トンガリ帽子を被り、箒にまたがって自分の家へと帰路を辿る。
自分が頭痛以外に寝ぼけていたのは完全に分かった。いつもならあんな自殺じみた事はしない。
しかしお酒の力を借りないとアリスに近づけないとは、つくづく自分は臆病者になったものである。
・・・些細なきっかけだった。いつものように弾幕ごっことしゃれこんでいたら破壊の吸血鬼フランの禁忌、「レーヴァテイン」が見事にアリスに直撃し、咄嗟に人形で防御したのか大怪我にはならなかったが意識を失っていて、落下している所を空中でアリスをキャッチした辺りからどうにもおかしい。こんなに軽かったのかとかやわらかいとか・・・。
「・・・ほんとにどうかしてるぜ」
アリスを私は友達として見ていた。魔法使い仲間とも言うかもしれないが。
それなのに、私の感情はそういったものとは違うものになっている気がしてならない。
そう、もっと簡単に言うと・・・。
思い浮かんだ考えは首を全力で左右に振る形で否定する。顔が紅潮しているのが自分でも分かる。
否定しないといけない。
この感情を認めてしまったら、どうやってもアリスの顔をまともにみられなくなってしまうから。
「・・・・・・・・・ここ、かしら?」
一度マヨヒガに戻り藍にまたでかけるけど心配しないでと一言言って、かなり経つ。
霊夢に気取られないように「隙間」を連続使用し、ようやく次元と次元の「狭間」らしきものを見つけたのだ。
中に入るとそこはあの魔理沙が住んでいる魔法の森に似たような世界が広がっていた。
「・・・誰だい?」
入ってきた紫に声をかける人物。
紫はその人物を見て、心の中で見つけたと叫びつつ笑顔で会釈をする。
「貴方を解放する者ですわ」
恋物語は動き出す。正しいか、正しくないかは別として。
「よし、出来た♪」
我ながら会心の出来と自分を褒めたくなる出来だ。
黒白のエプロンドレス、黒いトンガリ帽子、金髪の髪のお人形。
後はミニ竹箒もあれば完全に魔理沙お人形の出来上がりである。
「んふふ、私だけの魔理沙♪」
ぎゅっと抱きしめ、魔理沙人形に頬擦りをする。それだけで心が満たされるような気持ちになった。
だからその満たされた気持ちを他にわからせてあげたいと思ったのも無理がないかもしれない。
アリスは紅魔館にいるパチュリーに魔理沙人形を見せてあげようと思った。
彼女もきっと気に入る事だろう。
そう思えば行動は早かった。身支度を整え、上海人形と一緒に魔理沙人形を持って、家を出る。
「あら?」
いつからまた降り出したのか。
もう冬の季節は終わったと思ったのに、ポツポツと、そこには雪一色の地面が。
雪も私を祝福してくれているのかな?
家のドアを閉め、ポツポツと遅く降る雪の中を歩く。
アリスは浮かれていてこの「異常」に気づけなかった。
だからだろう。森の中で、出会ってはいけない存在に出会っても、すぐに戦闘の態勢に入れなかったのも。
「・・・?」
ザクザクと雪の中を歩いていたら、目の前には見慣れない、青一色のローブに緑色の髪、緑色の目をした女性が立っていた。
その格好はまるで魔法使い――――――
「こんばんは」
「こんばんは・・・?」
今はまだ昼だ。何故こんにちはじゃなくてこんばんは・・・?
「貴方がアリス・マーカトロイド?」
「そうですが・・・どちらさまで?」
「あぁ、いいのよ。私の事なんてどうでも」
そう言って、青い魔法使いは右手をアリスに向け。
「これから消える人にはどうでもね」
見慣れた光の閃光がアリスを襲った―――――――――。
それが見えたのは偶然だった。
自分が住んでいる魔法の森「だけ」雪に覆われている事から不安になってアリスの家のほうに向かう途中だった。
雪が降る中を進んでいるとその進路方向にアリスの姿が見えたのだ。
姿が見えてホっとした瞬間、その手前に・・・・・・・・・・・・ありえない人物が立っていた。
遠くからでもわかる人物、自分を鍛えてくれた人物。自分の第二の母親とまで思った人物。
なんで?と最初は思った。
その疑問は、純度の高い魔力の波が答えとなって返ってきてくれた。
「・・・!!!」
浮遊魔法を最大速度にする。箒の進路をアリスの真上を横切るように。
間に合うか・・・!?
相手は既に右手をアリスに向けている。
「間に・・・あわ・・・せる!」
空の上で弾丸のようになりつつ、魔理沙はスカートの中からミニ八卦炉を取り出す。
既に相手はエネルギーを貯め切っている。
「ミマスパーク」
「マスタースパーク!」
だが、瞬時にエネルギーを貯め、アリスとその青色の魔法使いを断絶するように、真上から十八番の恋符、マスタースパークを発動させる!
「キャ・・・!」
アリスはいきなり何が起こったかわからないでいた。
ただ光の閃光が自分に襲いかかると思った瞬間にうえからの光の閃光により遮られその相殺された爆風で雪が舞って辺りが何も見えなかった。
――――ようやく、爆風による雪が舞い散った後。アリスが見た光景は。
自分を守るように青色の魔法使いに立ち塞がる魔理沙の背中だった。
「なんでだ・・・」
それは疑問。
「なんでだよ・・・・・・」
それは憎悪。
「なんで・・・魅魔様がここにいてアリスに攻撃しているんだよ・・・!?」
それは悲しみ。
ずっと会いたかったかもしれない師が、かけがえのない存在に攻撃を仕掛けたというその行為が、魔理沙のいつもの余裕の表情をなくさせていた。
「・・・・・・・・・」
魅魔は答えない。
ただ、その表情は悲しみに満ちていた。
「質問に答えるべきだぜ・・・!魅魔様!」
それでも聞かねばならなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分の心に聞いたらどうだい?・・・・・魔理沙」
「なにを!?」
「私は・・・・・・過去はどうでもいいと思っている!」
その言葉を聞いて、ボトっと、魔理沙の背中で何かを落とした音がした。
魔理沙は後ろを振り返る。
そこには、腕に抱えていた魔理沙人形を落とした青ざめたアリスの顔が。
「アリス・マーガトロイド。貴方の過去がどんなものだったか、貴方が不死だろうと、「人形」だろうと、私には関係のない事だ」
魅魔の右手が再びアリスに向けられる。
「けれど、人形が人間に恋?冗談じゃない。あぁ、冗談じゃない!悲しみの最後しかないというのに、そんなものに魔理沙を付き合わせるな!!」
激昂と共に再びミマスパークが放たれる。
「クッ・・・!マスタースパーク!」
再び魔理沙もミニ八卦炉にエネルギーを集めて放つ。
真正面からのぶつかり合いは、二度爆風を起こし相殺される。
「・・・違う・・・違う・・・私はそんなつもりで・・・」
爆風で雪が散る中、アリスの掠れた声が魔理沙の耳に届く。
「私は・・・そんな・・・つもりで・・・魔理沙を好きになったわけじゃ・・・」
痛いほど耳に入ってきて、私の理性はここで切れた。
「アリス!!」
爆風の中叫んだ私の声に、ビクっと震えて涙を堪えているアリスの姿が「見える」
「私と一緒じゃ永遠なんてないかもしれない!私は人間だ!悲しい結末なんて絶対にあるに決まってるはずなんだぜ・・・!」
だから私が涙を流そう。
「けど、それでも好きなんだぜ!?お前の事が!心の底から!」
堪える君の代わりに私が涙を流そう。
「今を生きられればそれで充分じゃないか!過去なんて知らない!未来なんて知らない!今!アリスと一緒にいられるだけで私は充分幸せなんだぜ・・・!?」
だから、応えてくれ、私の気持ちに。
流れていた涙を拭い、「敵」を見る。
「・・・・・・・・・・・・そうか」
魅魔は左腕を上げる。
「そこまで言うならせめて・・・・・・私の手で、一緒に・・・消してあげるわ。さよなら、魔理沙」
左手を空に。
途端、魅魔の後ろに黒い・・・馬鹿でかい花が。
・・・あれはまずい・・・!!!
「魔理沙!」
背中を掴まれる形で私は空に急上昇する。
「トワイライト」
言葉と共に黒い馬鹿でかい花が金色に輝き始めて―――――――
辺り一面を閃光で包んだ。
・・・どれぐらい経ったか。
「・・・・・・?」
まばゆいばかりの閃光に目を瞑っていたが、開ける。
そこには狙いとは少し横にずれたトワイライトスパークの抉った後が。
しかし威力は・・・。
「まさか、山一つ消し飛ばすなんて、流石魔理沙のお師匠様って所かしら」
私の頭一個上から声がする。
「アリス!」
「いい加減自分で浮遊魔法使ってくれない?全く・・・あれから真っ向勝負挑もうとするなんてどうかしてるわ」
少し目が赤かったが、いつも通りのアリスの姿がそこにあった。
「あ、あぁ。ごめん」
言われてすぐに箒にまたがる。
「・・・魔理沙」
箒にまたがったのを見て、アリスは視線を下に移す。
下には、青色の魔法使いがこちらを見上げる形で悠然と立っていた。
「さっきの・・・信じてもいいのよね?」
「・・・あぁ」
力強く頷く。嘘は言った覚えはない。
「・・・なら、この話はまた後日かしらね。まずは・・・あの人をどうにかすることが最優先よ!」
いつもの独特の人形を操る構え。
アリスの周囲には七対の上海人形が、まだかまだかとご主人様の命令を待っている。
「あぁ・・・!!」
手にはミニ八卦炉。周囲にマジックミサイルを展開し、見下ろす様に、箒の進路を変える。
生命を賭けた、弾幕ごっこの始まりである。
「・・・・・・・・・」
紫は少し後悔をした。まさかあんな「化け物」だとは思っていなかったし、破壊後も全部コッチ持ちで修繕することになっているのだ。先ほどのトワイライトスパークで山一つ・・・・・・。
「これは、紅魔館の方にも手伝い要請したほうがいいかしら・・・」
空間操作と時間操作を同時に行えれば修繕はあっというまに終えられる。どうにかしてあの紅の吸血鬼を説き伏せるか・・。
「・・・それより台本通りに事が運ぶかしらねぇ・・・」
今のところAシナリオで事が運んでいる、後はあの化け物を消滅出来る程の火力と策があるかどうか・・・。
「・・・・・・・・・・・・アリスと魔理沙が負けたら面白くないわねぇ」
今回は遊びじゃない。本気で命がかかっている。もしあの二人が死んでしまったら、紅白の巫女はどんな顔をして死に際に立つのか。
「・・・それはそれでみたいきがするわねぇ」
やはりどちらに転んでも面白くなりそうだと思う紫であった。
・・・何千とマジックミサイルを撃っただろうか。
こちらの弾幕はアリスとの連携で倍以上の数で押しているはずである。
なのに、なのにだ。
「恋符」
また゜2筋゛の光の閃光で全て消し飛ばされる。
左右同時に挑んでも、両手で左右にミマスパークを撃たれるのである。
「・・・・・・」
重ねてきた年月が違いすぎる。資本となるステータスが違いすぎる。
今の自分の状況を再確認。
怪我、右肩に裂傷。魔力、まだまだいける。スペルカード、奥の手が二つ。
しかし奥の手はどちらとも理論上できるだけであってやった試しがない。
おまけに魔力が基本的に足りない。まだまだいけると言ったが、一個目を使えば多分すっからかん。二個目を使う方法があるとしたら・・・・・・
チラリと横目でアリスを見る。
上海人形は7体から5体になっている。連続で放射されるミマスパークに巻き込まれたのだ。
「アリス」
やっぱり・・・何かで掛け算しなければ勝てるはずがない。
「私に必勝の作戦があるんだが乗るか?」
「ん・・・?」
アリスが魔理沙の後ろに隠れるようにして上海人形を構えている。
魔理沙の手にはマスタースパークを放つ為のミニ八卦炉がこちらに向けられている。
「・・・まさか、今更私にマスタースパークが効くと思っていないだろうね・・・?」
左手を空に上げる。
途端、再び自身の後ろには黒い花が。
「来るわよ!魔理沙!」
「あぁ・・・」
ミニ八卦炉に全神経を集中させる。
イメージはあの黒い花と一緒だ。
ただ放出を極限まで高めるだけ。
「・・・行くぜ。魅魔様!」
魅魔の後ろにある黒い花が再び金色へと変化する・・・!
「「トワイライト!!!」」
驚きの声はどっちから上がったか。
金色の花から放出されるトワイライトスパーク。
同じく、ミニ八卦炉が悲鳴を上げるようにピシピシと言いながら放たれるトワイライトスパーク。
ここにきて、両方の火力は互角になった。
「グゥ・・・!」
魔理沙は全力でミニ八卦炉に力を注ぐ。
無茶を通り越して無謀なスペルカードをあみこんでトワイライトを発現させているせいもあり。魔力だけじゃなく、ミニ八卦炉自体も壊れる一歩手前で踏ん張るような状態だ。
まだか・・・・・・!?
一秒が長く感じる。数秒の攻防のはずなのに何時間も打ち放ち続けているようなそんな感触。
その拮抗状態を崩すために。
魔理沙の後ろにいたはずのアリスが左右同時残りの上海人形を魅魔に突撃させる・・・!
「取った!」
「なにを?」
上海人形に放たれる閃光。
「な・・・!?」
来るはずのない閃光が来てアリスは驚愕する。
そう、魅魔はトワイライトを撃ちつつも、「花」自体が撃っていたので両手は空いていたのである。
「悪いけれど、私はその程度の方法では倒せはしないわ」
臨界点が来たのか、拮抗から収縮してトワイライト同士の爆風が起こった。
「そろそろおとなしく消えてもらうわ。もう、手段はないでしょ?」
ミマスパークを撃ち終えた魅魔は両腕を下げる。
瞬間、爆風に穴が開く。
「!?」
「これが私の奥の手だぜ!」
血だらけの右手を添える形で箒を持ち、大上段に構え、落ちるように魅魔に振り下ろす。
「マスター・・・・・・ブレイドォ!!!」
箒の先端から一筋の金色の光が魅魔を消滅せんと襲い掛かる。
「ク・・・!!」
咄嗟に左腕に魔力を集中させそのまま拳を叩きつけるようにマスターブレイドとぶつかりあう!
終わりを告げる爆発が魔法の森で轟いた。
「ごほ・・・ごほっ!」
爆発に巻き込まれるかどうかというぐらいでアリスは離脱出来た。
上空から爆発が収まるのを待つ。
「・・・・・・」
アリスは魔理沙があんな奥の手があるなんて知らされていなかった。
(騙すならまず味方からって言うだろ?)
問い詰めたらこんな事言いそうだが、あれは完璧に決まっていたはずだ。
爆発が収まり、煙がはれていく。
そこには、前のめりで倒れている魔理沙と、片腕が消滅している魅魔がいた。
「・・・え?」
嘘だ・・・あれは完璧に・・・。
浮遊の魔法で高速に魔理沙の元に降り立って、その身体を抱き起こそうと前のめりに倒れている身体を肩から起こす。
「魔理沙・・・?」
抱き起こして、私は横に魅魔がいる事さえ忘れて、呆然となる。
「なによ・・・なによコレ・・・」
魔理沙の身体はボロボロだった。右手から肩にかけての裂傷、腹部からの出血・・・・・・黒白のエプロンドレスは、真っ赤に染まっていた。
「魔理沙・・・起きてよ、魔理沙・・・・・・!」
頭の中では分っていることなのに必死に、必死に身体を揺らす。呼びかける。
「ねぇってば・・・!起きなさいよ!起きてよ・・・・・・」
魔理沙は命を賭けて最後のスペルカードを切ったのだ。
こうなるから言わなかったのだ。最後の一手を、アリスを生かす為にと。自らを犠牲に。
「・・・・・・起きてよ………」
涙が、堪えた涙が、ここにきて、魔理沙を濡らしながら流れていった。
「・・・アリス・マーガトロイド」
片腕が消滅しても微動だにしていなかった魅魔が口を開く。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・これだけ言わせてくれ」
「・・・・・・・・・・・・何よ」
涙がようやく止まり、憎悪を込めてアリスは魅魔を見る。
「あぁ、あんたら二人の勝利よ」
その言葉と共に、魅魔を構成していたものは全て魔理沙に注がれていった。
「え・・・!?」
「まさか・・・ここまで計算尽くしているとは、師が弟子を超える時かしらね・・・」
徐々に直っていく傷、出血も時間が巻き戻されていくかのように魔理沙の体内に戻っていく。
「吸血鬼の真似事の魔法とは・・・私も考えられない領域だったわ・・・」
そう、魔理沙の奥の手、マスターブレイド。
あれの元のモチーフとなったのはフランドールスカーレットの禁忌、「レーヴァテイン」なのである。
魔理沙はガンナーとしては優秀だが、レミリアを消滅する術や霊夢のような天才的な実力もない。
故に、接近戦の完全吸収消滅魔法という発想を考えたのである。
だが、試す相手がいなくあくまで「理論上」でしか成りえなかった事からもし完成していなければ死んでいてもおかしくない博打だったのも確かだ。
そして魔理沙は見事その博打に勝った。
「負かされちゃしょうがない・・・幸せにおやり、人形遣い」
それが魅魔の幻想卿での最後の言葉だった。
残ったのは傷も服さえも完全に治りすやすやと寝息を立てる魔理沙と、呆然としながら消滅していった魅魔を見守ったアリス。
そしてあっちこっちのクレーターに。上空で「隙間」から顔を覗かせてハッピーエンド♪と
言い切った八雲紫であった
終幕
いつぞやのように博霊神社で宴があり、皆が騒ぎ、楽しみ、そしてお開きとなった静かな夜中。
宴が終わり、酔いつぶれるなんて事がなかった魔理沙と、皆の前ではいつものようにツンツンな態度はどこへやら、魔理沙の手を握って一緒に歩きながら帰るアリスが天狗に目撃させられ熱愛発覚!?と騒がれるのは、また別のお話―――――――。
最後らへんに幻想卿がいます
うーん、私には大味
・・・自己満足のオナニーショーが一人でやっとれアホ
あとがきを気をつけなよ
きっかけは他人でも、自分が書くことを選択し、そして投稿したものなのですから、
もっと正面から受け止めてください。
意味が無いです。こういう言葉は「批判読めてたなら回避努力しろよ」という感想を引き出すだけです。
内容は(自分的にはまあ)許容範囲でしたが、あとがきで凄いマイナス修正が。
ごまかしにしかなってないよね。
しかも、同じことやった前例が沢山居る。
冒頭に「※俺様設定使ってます」とか一文入れていたら良かったかも。
あと、後書きは気をつけたほうが。
>今なら私を育ててくれた神崎様にも祈ってもいい。
ダウト。神綺様です。神崎は公明党の元党首です。
>「あ、早々」
これもダウト。ひらがなで書きましょう。あえて漢字で書くならば「あ、然う然う」です。
>「偉い目に遭ったぜ・・・」
これもダウト。大変なという意味で「えらい」を使う時はひらがなで書きましょう。
>それが魅魔の幻想卿での最後の言葉だった。
またダウト。幻想郷です。
>あまりにもその変わりようが酒の肴にしては興味を持ちすぎたと、まず言っておこう。
なんというかなあ、この文章はまずい。上手く言葉に出来ませんが、まずい。なにを言いたいか判らない。
あまりにも変わっていて強い興味を持った。
で良いと思いますよ。
>最初に見たときは知らぬ顔の者と喋っているアリスは、表面上は穏やかな笑みを湛えて談笑をしていた。
この文章もまずい。言葉の並びが悪い。俺イズムを押し付けるならば、
知らぬ顔の者と喋っているアリスは、最初に見たときは表面上穏やかな笑みを湛えて談笑をしていた。
のほうが自然だと思います。
>アリスはというとお酒臭い!とかどれだけ飲んだらこうなるのよ!とかガミガミと魔理沙にイライラと言っているように見える。
ここもくどい。ガミガミかイライラかどっちか一つだけで良いと思います。
>けれど、私は驚きのあまりそこでお酒が入っていた杯を藍の顔にぶちまけるという行動を起こしてしまった。
これもくどい。
けれど、私は驚きのあまりお酒が入っていた杯を藍の顔にぶちまけてしまった。
のほうが良いと思います。
>「藍、ちょっと出かけてくるわ」
宴が終わりマヨヒガに戻ってきて開口一番にまた出かけてくる等の発言を藍は自身の主人がすると思わず、そのままハッ?と口を開けて固まってしまった。
ここもくどいなあ。あまりにくどい。一文が無駄に長すぎる。
>私はそのまま「隙間」を出現させ、徐々に入っていく。
文はやっと解放されると安堵する。
「あ、早々」
後は顔だけ入れば完全に消えるという所で、文の虚をつくように紫は忠告をする。
なんで、一人称と三人称が混ざっているのですか? ちゃんと一人称なら一人称で、三人称なら三人称で書きましょう。
>また゜2筋゛の光の閃光で全て消し飛ばされる。
文章の変な所に濁点を打つのは止めましょう。ギャグ漫画じゃあるまいし。
俺イズム満開ですな、私。あまり俺イズムを押し付けるのはわやなので、これで終わりにします。くどい文章を読むのに疲れたとも言いますが。ただ、一言言わせて頂くならば、貴方の文章は前作よりも退化している。
さて、内容に関してですが、
>「ミマスパーク」
ちょwwおまwwうぇwwwww
れみりゃ並みにセンス無い魅魔様にまじ涙が止まらない。旧作のキャラを出すならば、魅魔様が旧作でどんな技を使ったのかぐらい調べてから書きましょう。ここは例えばイビルフィールドや幽幻乱舞を使う所でしょう。知らないとは言わせませんよ。
別に貴方が東方をやった事がないということに関して私はなんとも思いません。作品さえ面白ければ。しかし、この作品は面白くない。読者に読みづらい文章を読ませるだけの力を、この作品は持たない。折角の魅魔様と魔理沙の師匠対決だというのに全然熱さを感じない。無粋な後書きも不愉快です。文章を書くときにはまず自分が楽しむのはもちろん重要ですが、それ以上に読者を楽しませることが重要です。お願いです。私を楽しませてください。
あとがきで-10
あとがきの追記で更に-10
ぶっちゃけ痛すぎる
これでは面白いとは言いがたいですね。弾幕対決の割にはミマスパーク一筋
ってなんだかおかしいと思う。東方サッカーやった程度で小説書くぐらいなら
Wikiでも何でもいいから情報集めてから内容をまとめてほしいです。
批判等考慮しても、普通に楽しめたので高めで点入れときます。
改めて調べてみると想像以上にたくさんの、ありとあらゆるタイプの作品が存在することを知った。
世の中もっと酷い小説がごろごろしているのかと思うと目眩がする。