Coolier - 新生・東方創想話

東方妖々夢if:I-Lost Blossom(0)-

2004/06/19 01:12:30
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<序 散華事-華の散る事>

―花は、咲き、そして散るものである。
花は、咲けば散るものである。
それが、花を花たらしめている
一つの大きなファクターであり、
それが抜け落ちたモノは、
即ち、
咲かない花も、
散らない花も、
既に、
……花ではない。
命は廻る物であり、
廻る者であり、
留まるモノではなく。


そんな一節が頭に浮かんで、一人苦笑する。
なぜなら、自分で花を咲かせておいて、
その花を花で無くしているのだから。
幽々子は、縁側に座して外を眺めている。


―時の止まった、白玉楼。
……今、死の楼閣を彩る桜に、
散る気配は、無い。


散らせてはいけない。
西行妖が、満開になるまでは。
ここまで、何かに執着した事は、今まで無かった。

「富士見の娘、西行妖満開の時、幽明境を分かつ、
 その魂、白玉楼中で安らむ様、西行妖の花を封印しこれを持って結
 界とする。願うなら、二度と苦しみを味わうことの無い様、永久に
 転生することを忘れ・・・」

この封印された亡骸に対する尽きぬ興味が、
幻想郷中の春を集める原動力となっていた。
後は、僅かの春を。
西行妖の封印を解く事が出来る、
そうである筈の僅かの春を。
誰かが、或いは妖夢が持ってきてくれるのを待つばかりとなっていた。


―時の止まった、白玉楼。
……今、風が


「……?」
違和感。
今、風が吹かなかったか。
風は、吹かないはずだ。
全体が“死”で停止している、この白玉楼に。
“動き”は、無いはずだ。


―……。


そう思っているうちに、もう一度。
今度は違和感ではなく、はっきりと。
その風は、幽々子が、最も恐れていたものだった。

……強い。

動きが、生まれている。
…否。誰かが生み出している。
と言う事は、妖夢が突破されたか。

……これでは、桜が散ってしまう。

散らせてはいけない。
西行妖が、満開になるまでは。

……守らなくては、いけない。

意志が心を支配していく。
ただ、強く。
守らねば、と。

二つの扇を、懐に。
死の唄を、胸に。
幽々子は、飛び立つ。
目指すは、風上。
守るは、集めた春。


……どこかで、瞋恚の笑いが聞こえた。
ただ、一瞬。


―相克する螺旋。

一つは生。
一つは死。

二律は複雑に絡み合うも
悲しきかな、
永遠に

交わることは


無い。

人は
その悲しみを
こう呼ぶ
踏み越えることの出来ない、
存在しており、
だがしかし見えない一線、

―“Border of life”
生死の境と。





―時の止まった、白玉楼。
……今、凍て付いた時が
風に解かれて




…………動き出す。



その動きは、春一番に似ていた。
どうも、斑鳩です。
今回は、「東方妖々夢if」と称して、妖々夢になぞらえつつ、独自の展開を加えたSSをアップして行こうと思います。
さて、今回の序章ですが、いろいろ伏線張っときました。
鍵は……俺の口からは言わないでおきます。
予告しておくと、今回も魔理沙は凄いです。

感想待ってます。
斑鳩
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