Coolier - 新生・東方創想話

魔術夜舞踏

2004/06/14 08:44:02
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 幻想郷で年中無休とも言えるお遊戯、弾幕ごっこ。
 それは危険かつ常識的な行為。
 それはお手軽かつ命をかけた物。





 真夜中。それは普通なら静かで外にでまわるものが少なくなる時間帯。
 しかしここ幻想郷ではそんなことない。
 人間・妖怪・幽霊といった様々な種族が住む世界では、時間帯というのは特別な意味をなさない。
 なのに今日という夜中は静かなものである。
 だからみながおびえる。
 まるで自分以外に生きている者がいないと感じてしまう静けさ。
 常にのんびりで、危険な幻想郷に住んでるからこそ働くカンがある。
 この夜中になにかが起こると。
 みながそう思ったのと同時だった。
 夜を斬り、闇を裂く光が見えたのは・・・・・・

















「くらいなさい!」

 現れる弾幕。それが一人の影に向かって飛んでいく。

「おっと。この程度のスピードじゃあ当たれないな!」

 それを身を翻しただけでかわす。

「悪いけど今回のアイテムは私がもらうわよ、魔理沙!」
「それは私を倒してからいいな、アリス!」

 先に叫び、弾幕をだしたものの名は七色の人形使い、アリス・マーガトロイド。
 そして弾幕を回避したのは普通の黒魔術師、霧雨魔理沙。
 二人は同じ森に住んでいるものどうしだが犬猿の仲である。
 その理由としては二人とも蒐集家というのが大きな理由の一つである。
 何かとかぶることが多い二人が弾幕ごっこをするのは珍しくない。
 今回の発端も、求めていたアイテムがかぶったせいである。

「だったらそうさせてもらうわ!!」

 そう言って魔力をこめた人形を左右に展開させ、その一つ一つの人形から弾幕が放たれる。

「よ、このぐらいで落とされないぜ。くらえ、マジックミサイル!!」

 魔理沙の左右にだしている魔法球からミサイルが発射される。
 そのミサイルがアリスの人形をとらえ、人形が少しずつ落ちていく。

「どうしたアリス?この程度か?」
「ふん、あまり舐めないでよね。今までのはほんのデモンストレーション。勝負はこれからよ!」

 そう言って、アリスの周りに魔力が集まる。
 思わず魔理沙が身構える。

         スペルカード

 今からアリスが使おうとしているものである。
 平たく言えば必殺技のような物で、魔力などの力をこめて、ある一定時間内に大きな力をだすことができる。
 幻想郷に住むたいていの者がスペルカードをもっている。
 逆に言えば、スペルカードがなければ勝負に勝つのは難しい。
 どれほど強い力をだせるかは、本人の技力・経験・センスがとわれる。

「いけ!!」

   シャン    一回      シャン     二回

 最初の音で放たれた弾幕こそ数個だが、二回目の音と同時に最初に放たれた弾幕がはじけて
 多くの弾幕が魔理沙を襲う。

「これぐらいで・・・!」

 迫り来る弾幕の軌道を予測し最短の動きで交わす。

「まだまだだな。これでこのスペルは終わりか?」
「・・・・・・・・・」

 魔理沙の挑発にアリスは何も答えなかった。答える代わりに・・・・

   シャン    一回

 攻撃で答える。

(また同じ攻撃か?私も舐められたものだな。)

   シャン    二回

(さっきの攻撃を見るかぎり、あまり動き回らないほうがいいな。これをかわして攻撃に・・・・)





   シャン    三回!

「っっ!なっ!?」

 違う。今度は三回弾幕がはじけてさっきとは比べ物にならないほどの弾幕のスピードと量が襲いかかってくる。

「っく・・!」

 さっきよりも大きな動きで弾幕を回避していく。
 魔理沙はなんとか全てかわしきった。

「・・・一回目の攻撃は牽制、といったところか・・。」
「ええそうよ。私だってあれぐらいであなたを倒せると思っているほど楽観的じゃないわ。一回目の目的は、あなた
に簡単によけれるということを印象付けるため。そうすれば次の攻撃も同じ物がくると思い、気が緩むでしょ?」
「・・・はっ、まんまと騙されたわけか。」
「その通り。放たれた弾幕の中に魔力をつめ、その弾幕が動くことにより中の魔力が形をなしていき、おさえきれ
なくなった弾幕が破裂してより多くの弾幕が生まれる。それが私の蒼符『博愛のオルレアン人形』よ。」
「ネタをばらすとは余裕だな。」
「わかったところでかわすのは困難よ。」
「残念ながらスピードには自信があってな。それぐらいでやられたりしない!!」
「だったら耐え切ってみなさい!!」

 アリスが攻撃を再開する。

「ちっ!こうも多いと・・・」

 魔理沙は回避のみに専念する。そうでなければくらってしまう。

「ねばるわね。でもそれが何時までもつかしら!?」

 そう言ってさらに弾幕を増やしていく。そしてそれが辺り一面を覆いつくしたとき・・・・

「・・・・・・!」

 アリスは一つの過ちにきづいた。

「魔理沙の姿が見えない!?」

 あたり一面に満たした弾幕が視覚となり、魔理沙の姿を消してしまったのだ。

(しまった。これじゃあ魔理沙が倒れたのか無事なのかわからない。それに私はさっきから一歩も動いていない。
もし今攻撃されたら・・・・!?)

    魔力の波動!

 それを確認したときにはすでにマジックミサイルがこちらに向けて飛ばされていた。真後ろからきたために感知
するのが遅れてしまった。

「――くっ・・!」

 それをすんでのところでかわす。しかしそのせいで集中力が途絶えて、スペルの力が失われていく。
 スペルの解除とともに、今まで辺りを満たしていた弾幕も消える。
 マジックミサイルが飛んできた方向には擦り傷一つない魔理沙がいた。

「ちょっと調子にのりすぎたな。まあ、さすがにあれをかわしきるのはしんどかったぜ。」
「そのわりには随分元気そうね。」

 歯がぎりっという音をたてる。
 それは魔理沙が傷一つないことに腹をたてているのか、それとも自分の馬鹿さかげんになのか。
 プライドがひどく傷ついた。
 なら次は・・・・・

「あれを全部かわしたのは褒めてあげるわ。だけどね―――これはどうかしら!」

 かけ声とともに出されたのは普通の弾幕だった。
 四方八方に等間隔でだされた弾幕がアリスを中心に時計回りに襲ってくる。

「これぐらいならさっきのほうが幾分ましだな。」

 自分の近くにきた弾幕をすこし動いてかわす・・・・・・・・・はずだった。

「な、なに!?」

 目の前でおこった現象を見るまでは。

「弾幕が・・・消えた・・?」

 なぜ?自分の魔力を消費してまでやるメリットはないはずである。
 魔理沙がそのことで頭が一杯になったとき

「白符『白亜の露西亜人形 』!!」

 アリスの第二のスペルカードが唱えられた。

「!!?」

 魔理沙が驚く。それは無理もない話だ。
 なぜなら今まで何もなかった空間に、急に人形がでてきたのだから。しかも一つだけでなくかなりの数の人形が。
 その人形から弾幕が放たれる。

「くそっ!なんだってんだいったい!!」

 わからない。だが今はこの状況を脱出するのが先決。弾幕との距離をいっきに離し

「マジックミサイル!」

 とりあえず人形を落とそうと放ったマジックミサイル。しかしそれは

「なっ、」

 今まであった人形が弾幕だけ残して突然消え、空振りに終わった。
 思わず呆然としてしまい、それが一瞬の隙を作ってしまった。
 そのため、きづかなかった。後ろから

「う・・うわああああぁぁぁ!!!」

 人形が現れ弾幕を展開した事に。
 すぐに方向転換するも、魔理沙の前後左右から襲ってくる弾幕によって逃げ道をふさがれる。

(くそ、さっきから何なんだよ!人形が現れたり消えたりしやがって!人形はアリスが遠距離操作してるんだろ
う。だがなぜ人形が消えたりする?いや、消したり出現させたりするなら魔術でできないこともない。だがこれ
だけの人形を遠距離操作するだけでも莫大な魔力を使うはず。消したり出現させたりするのにもそうとうの魔力
を使う。両方とも高等魔術だから、両方をいっぺんにするのは、いくらアリスといえども無理なはず。そしても
う一つの疑問は何時アリスが人形を配置したのか。ずっとアリスを見てたがそんな素振りはなかった・・・・・
・・っぐ・・!?)

 弾幕の一つが魔理沙の体をかすめた。その痛みに思わず顔をしかめる。
 考え事をしていたせいで、弾幕がすでに自分のすぐそこまで来ているのにきづかなかった。

「ち。しゃあねえ、魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 スペルを唱えると魔理沙を中心に四方八方に、魔力で作られた星が広がっていく。
 その星が周りの弾幕を消していく。
 そしてその一つがアリスへと向かいわずかにかすめた。

「・・っ、よくあの状況で一番確実かつ、利口的な方法を瞬時に選べたわね。」

・・・・・おかしい。魔理沙はアリスのセリフを聞いて最初に感じた物だ。
『スターダストレヴァリエ』は、広範囲で使われるのを目的として作られたスペルだ。
 そのためあまり一つの星にこめられる魔力がすくなくなり、おのずと威力も下がる。
 なのに、その一つの星をくらっただけで、なぜあんなにも苦しそうなのか?
 それにアリスの顔には汗がくっきり見えている。

・・・・

・・・

・・



(そうか!やっとわかったぜ、このカラクリが!!)

「でもそれも一度かぎりよ。次で沈めてあげるわ!」

 アリスが再び攻撃を開始する。
 だが魔理沙はうっすら笑みを浮かべて

「それはこっちのセリフだぜ!!」

魔理沙の左右に出していた魔法球を今度は前に持ってくる。

「いくぜ、マジックナパーム!」

 さきほどのマジックミサイルよりも巨大なミサイルが発射される。

「っつ!!」

 アリスがそれをよける。しかし体がなぜかぐらりと揺らいでいる。

(やっぱりだ。このスペルを破れる!)

 魔理沙は迫り来る弾幕を最小限でかわし攻撃に専念する。
 完璧によけきれない弾幕が魔理沙の肌に傷をつけるが、そんなこと今はどうでもいい。
 速攻勝負。今の魔理沙はそれしか考えてない。

「く・・っ、この・・!」

 アリスも必死によけるが、どうも動きに繊細さが欠けている。

 魔理沙に襲い掛かる弾幕が、彼女を飲み込もうとしている。

 アリスは少しずつ魔理沙の弾幕にとらえられそうになる。

 両者ともにまさに時間との勝負。
 そして魔理沙の体に弾幕が当たろうとした瞬間

「きゃあああ!!」

 ついに魔理沙の弾幕がアリスをとらえた。
 そして悲鳴とともにスペルが解除され、弾幕が消えてなくなる。










 







 わずかな静寂。
 お互い荒い息をしながら見つめあう。

「ハア・・ハア・・やられたわ。」

 先に口を開いたのはアリスだ。

「・・ハア・・よくきづいたわね。このスペルの最大の穴が私自身であることに・・・。」
「・・・ハア・・まあ・・ハア・・・な。」

 魔理沙が息を整えてしゃべりだす。

「最初は正直さっぱりわからなかった。だが、『スターダストレヴァリエ』とおまえの動きを見てわかったんだ。
多くの人形に遠距離操作と姿を消す術という複合高等魔術。これだけの魔力をだす力は普通に考えればおまえには
ない。だがそれは普通の状態での話だ。」

 アリスは何も答えない。

「捨て身。ほんらい自分が弾幕を受けてもダメージを抑えるために自分に魔力で防御幕をはっている。そのため
攻撃にフルパワーを使うことができない。しかし、防御幕にまわしている魔力を限りなく0に近づけることにより、
その分強力な力をだすことができる。それにより、さっきの複合高等魔術を可能にした。しかし、それでもわずか
に足りず、無理に使った代償として動きが鈍くなった。『スターダストレヴァリエ』にかすったぐらいでそこそこ
のダメージをくらったのは防御ががた落ちしてたから。攻撃がきまれば強力だが、逆に攻撃を受けたら一撃でやら
れる危険性があるいわば諸刃の剣。そして人形を設置したのはおそらく『博愛のオルレアン人形』後の通常弾幕!」

 ビシッとアリスに指を刺す。

「そのとおりよ。通常弾幕の中に人形を隠して放つ。そして頃合を見て弾幕と一緒に人形を消す。そうすればまず
精神的なダメージをあたえられる。そこに弾幕を放つことにより、より多くのダメージをあたえる二重の罠だった
んだけど・・・・、あなたにはつうじなかった。」

 アリスが悔しそうに吐く。

「そう落ち込むな。つうじなかったと言うより耐えしのいだと言ったほうが正しい。正直、マジやばかったぜ。」
「お褒めの言葉として受け取っとくわ。」
「で、これでネタはつきたのか?まあ、何がこようとおまえにやられる気がしないがな。」

 ムカ。その一言にかなりきれた。

「ゆってくれるじゃない。だったら次いくわよ。」
「また騙しでも使ってくるか?」
「いいえ。もう小細工じみたことはしない。真っ向勝負よ、魔理沙!!」
「おもしれえ。そうこなくっちゃな!!」

「舞え!雅符『春の京人形』!!」

 アリスを中心に、囲むように人形が設置される。
 その人形がアリスの周りをくるくると円形に舞を舞う。
 それは思わず見惚れてしまうような動きだった。
 だが見惚れている暇はない。

「こんどはマジみたいだな。さっきより魔力の波動がきついぜ。」

 あたり一面に円状に放たれた弾幕がわずかな隙間しか作らない。
 一瞬の隙間を見逃さずによけるのはかなりの集中力がいる。
 しかしアリスは攻撃の手を緩めない。
 人形の舞が少しずつ激しくなり、舞った軌跡からさらなる細かい円形の弾幕を放つ。

「くそ、隙間が見つけにくい!」

 そう言ってわずかにできた隙間に自慢のスピードでもぐりこむ。

―――――――しかしそこは

「!!しまった!」

 目の前にはすでに弾幕が迫っていた。弾幕どうしが重なり合い、そのせいで一部見落としてた弾幕があった。
 しかも無理な体勢でかわしてしまったために、その場から動くことすら難しい。

「終わりかしら?」
「舐めるな!!そっちがその気ならこっちも真っ向勝負だぜ!!」

 懐から一枚の符を取り出す。

「いくぜ!魔符『ミルキーウェイ』!」

 放たれる星の弾幕。
 しかし今度はさっきのとは違い、全弾アリスに向かって飛んでいく。
 星が集団流星となりアリスを襲う。

「く、これぐらいで・・・・!」

 アリスも負けじと応戦する。
 両者の魔力がぶつかり合う。
 両者の威力はほぼ互角。そのため二人の中心で魔力の渦ができ、一向に勝敗が見えてこない。

「くっ!」
「つっ!」

 お互い苦悶の表情を出す。だがここで負けるわけにはいかない!

「「さっさと・・・・・・」」

 両者が叫ぶ。

「落ちろぉー!!」
「落ちなさい!!」

 ありったけの魔力を注ぎ込む。・・・・・・・・・そして

           パン

 と大きな音をたてて魔力がはじけた。
 相打ち。
 お互いの魔力が互角だったため、耐え切れなくなり魔力が相殺してしまったのだ。

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

 お互い何もしゃべらない。
 今のはどちらも勝負に出た一撃だったはず。
 だが結果は引き分け。また振り出しに戻っただけだ。

「・・・だいぶ、・・へばったようね、魔理沙。」
「・・・はっ、・・お前ほどじゃあねえぜ、アリス。それにな、この勝負私の勝ちだぜ。」
「あら、なぜかしら。」
「お前は少々はしゃぎすぎたんだよ。さっきから巨大な魔力を立て続けに使っているおまえは、もうまともにスペル
を唱えるだけの力はない。」

 笑みを浮かべる魔理沙。
 しかし魔理沙は魔力こそ残っていても、さっきから回避などに専念しているために体力のほうがつきかけていた。
 もしここでさきほどのようなスペルがきたら回避しきるのは不可能に近い。魔力で相殺しようにも、反動で魔理沙
の体力がもつかはわからない。
 だが、魔力がつきかけているアリスには強力なスペルを唱えられないと判断したために、こちらが攻撃に転じれば
勝てると思ったのだが・・・・・・・・

「・・・・・・・そう」

 それはたんなる自惚れだった。

       ゾクッ

 魔理沙はアリスの冷笑に悪寒が走った。
 周りの気温が10℃下がったほどの寒気。

――――――――――――――――――そして

(なんなんだよ、この殺気!?体が金縛りにあったみたいに動けない!)

 かつてないほどの恐怖が魔理沙の体を支配する。
 アリスからの殺気はもはや弾幕ごっこのレベルではない。
 もはや「殺す!」といったところだ。

(それになんだ、この膨大な魔力は!?なんでアリスにこれほどの魔力が?!!?」

 アリスに魔力があまり残されていないというのは真実である。
 ならなぜこれほどの魔力が生成されるのか?

(これは、魔力だけじゃあない。あの力は・・・・念!)

 魔理沙が答えを見つけたときにはすでにとてつもないほどの力がアリスを取り巻いていた。

「怨念・無念・祈念・観念・執念・信念・雑念・残念。ありとあらゆる念よ、その思いはたさんとするために我が人形
に宿り、見せしめとしてかの者の首を魔吊り上げよ!!」

 アリスの周りの力が人形に宿っていく。

「『首吊り・・・・・・・

 アリスが唱える。

・・・・・・・蓬莱人形』!!!」

 スペルの真名が展開されたとたん

「こ、これは!?」

 あたり一面が暗転した。
 黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒、黒一色。
 他に見えるのはアリスとその周りに発狂した人形だけ。

     ケラケラ         ケラケラ         ケラケラ

「!・・っ・・ぐっ・・。」

 声が聞こえてくる。なんともいえない気持ち悪さだ。
 子供のような無邪気な笑い声を出して、魔理沙を殺すことを非常に楽しんでいる♪
 耳をふさいでも直接頭に響いてくる、最高の不快感がさらなる危なさを求められるようだ♪
 すごく気持ち悪いのに、それを上回る気持ちよさ、たまんない~♪
 さかりのついたメス犬のようにもっと快感を求めちゃう♪
 ほら、後少しでとてつもない絶頂がやってくるよ、早く逝っちゃいなよ♪


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










「・・・・止めろーーーーー!!!」

 魔理沙に残っていたわずかな理性でマインドコントロールを振り切る。
 よく見れば、自分自身の手で自分の首を締め付けていた。
 声に負けるということは死を意味していたようだ。

「アリス、テメェいくらなんでもやりすぎ・・・・!?」

 自分を殺そうとしたアリスに怒りを覚え、怒鳴ろうとしてアリスを見上げたとき、アリスはなおも冷笑えを口元に
 浮かべていた。
 しかしそんなことどうでもいい、目だ。アリスの目はまるで生気がないようだった。
 虚ろで、焦点があっていない。

「まさかあの馬鹿、体乗っ取られたのか!?」

 限界に近かったアリスには念を操る力は残されていなかった。
 それを無理に使おうとしたせいで弱ったアリスに念が入り込み、逆にアリスを支配した。

「くそ!無理に念の力を使おうとするからこんなことになんだよ!!」

 しかし何を言おうとアリスからの返事はない。

(しかしどうする?この状況はシャレになってないぞ。このスペルを解くためには二つある。まず第一にアリス自身
の意思でこのスペルを解く。しかし体を乗っ取られている以上それはできない。ならやはりもう一つの方法、アリス
の意識を断つしかない。そのためには攻撃を叩き込む必要があるが、今の私一人にできるか?
・・いや、やるしかない!)

 はっきりいって、魔理沙が残りの力全てを使えば、この空間を破ることぐらいはできるかもしれない。だができた
としてもそれが精一杯。その後助けを求めに行く前に追いつかれてしまう危険性が高い。なにより・・・・・

(アリスをこのままにして逃げるほど私だって落ちちゃあいない!)

 このままではアリスがとり殺されてしまう。
 犬猿の仲とはいえ同じ蒐集家仲間。アリスが死ぬところを見るのは絶対嫌だった。

「いくぜ!絶対アリスを返してもらう!!」

 そう言って、アリスに突っ込んでいく。

「クク・・・区苦ク・・・コロス、コロスコロスコロス!コイツモオマエモミンナコロス!!!」

 するとまるでロープのような弾幕が展開され、それが円形になり魔理沙を襲う。
 それを何回も繰り返し、弾幕が増えていく。

(多いな・・。だがスピードが遅い。これなら自分のところにきた弾幕を少しずつ避けていけばいい!)

 魔理沙はこの時そう判断した。しかしそれは間違いだった。
 かわしていくたんびに弾幕は増え続けている。
 そして魔理沙の周りは・・・・・

「逃げ場がない!?」

 迂闊だった。スピードが遅いからゆっくり見定めてかわすことができると思ったが、それが大きな間違いだった。
 遅いのは相手にたいしたことないという安心感を与えるため。
 しかしそう思っていると自分の周は弾幕に囲まれてしまい逃げ場を無くされてしまう。
 そして最後にそれが自分の首を吊り上げようとゆっくり収束してくる。
 それがさらなる恐怖感を感じさせる。

「くそ!このままじゃ・・・」

(殺られる。だが私が殺られればアリスも・・・。なら!)

 懐からだした符。
 それは魔理沙が持つ中でも最強のスペルカードと言われているもの。その名は・・・・

「恋符『マスタースパーク』!!」

 巨大なエネルギー砲がアリスに撃たれる。

「!!」

 それを見たアリスから冷笑が消える。

「フフ、アハハ、アーッハッハッハッ!!」

 変わりにとんでもない愉快な声を上げる。

「オロカナ。コノテイドデワレノネンニカツコトナドデキン!」

 魔理沙のマスタースパークをより巨大な力で押さえつける。

「ぐ、くっくそが!!」

 勝てない。
 たとえ万全の状態でも今のとりつかれたアリスには勝てない。
 念というのは、いい物もあれば悪い物もある。だがそこには一つの共通点がある。
 それは欲である。
 欲を満たすために何でもする者だっている。
 そのために、空間に残された欲は簡単に力に共鳴する。
 美しく、そしてなにより醜く無尽蔵であるがためにとんでもない力が生まれる。
 
      だから

「う、う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」

 だからその力にかなう道理はない。












「ククク、ホロビタカ・・・・。」

 なのに心がまったく満ち足りていない。
 確かに敵を滅ぼしたはずなのに、自分の欲は満たされたはずなのに・・・

      ポタ

 自分の目から涙が流れるのか?

「!マサカコノムスメ、マダココロガノコッテイタトイウノ・・・カ!?」

 その時だった、自分の背後に気配を感じたのは。

「残念だったな。お前の負けだ!!」
「キサマ、ナ・・ナゼ!?」

 そう言って弾幕を張ろうと力を出す。
 しかし今度ばかりは・・・・・・・・・

「ンナ・・・!」

 魔理沙のほうが早かった。
 手首を捕まれ放とうとした魔力が不発に終わる。

「へ、私たちの勝ちだぜ。ちょっと痛いかもしれないが、それぐらい勘弁しろよアリス!恋符『ノンディレクショナル
レーザー』!!!」
「ギ・・・ギヤアアァァァ!」

 この世の物とは思えない叫びを上げ、アリスの体が光に飲み込まれていく。

 その光が夜を斬り、闇を裂いた。

















「・・・・う・・ん。」

 痛い。頭の芯までズキズキ痛む。

(こ・・こ・は・・?)

 意識が少しずつ覚醒していく。
 目を覚ますとそこは

「私の・・家?」

 アリス邸だった。

(・・・えーと確か、私がスペルを使おうとして、でも制御しきれえずに乗っ取られちゃって、それから確か魔理沙
が乗っ取られた私と戦って、え~とその後・・・・・・ん?)

 そうだ、魔理沙はどうなった?
 覚えているのは魔理沙がマスタースパークを撃ったところまで。
 その後は記憶がごっちゃまぜになっていて思い出せない。

「!!魔理沙!」

 どうなったのか?まさか私のせいで・・・・
 考えたくない。そんなの嘘だ。
 だから探さなくては。
 なのに体のほうはまったくゆうことをきかない。
 もしかしたら魔理沙が死んでしまった・・・・

「なんだアリス?呼んだか?」

・・・んじゃないかという疑問はあっさり砕かれた。

「目が覚めたようだな。体のほうはどうだ?」

 とんだアポをしてしまった。
 そうだ、常識的に考えれば私が自分の家に運ばれているということは誰かが運んでくれたということ。
 私の家を知っている人は少ないし、もし魔理沙が死んでいるなら、私だってとっくにあの念によって死
 んでいるはずである。
 仮に助かったとしても他の妖怪に捕って食われているはずだ。

「別になんでもないわ。体は全身疲労でしばらく動けなさそうだけど。あんた無事だったのね。」
「助けてやったのに酷い言われようだな、おい。」
「それもそうね。助けてくれてありがと魔理沙。で、さっそくだけどどうなったか教えてくれる?」
「たしかに唐突だな。えーと、どこから話したらいいんだか・・・・・」
「最後だけでいいわ。マスタースパーク撃ったとこまでは覚えてるし。その後は光が見えてきづいたらここにいた。」
「ん?なんだ、意識あったのか?」
「ぎりぎりでね。閉じ込められてたといったほうが正しいわ。・・・・ずっと自分の中であなたが戦うのを見てた。」
「・・・そか。やっぱお前も戦ってたんだな。」
「そんなことない。私は何もできなかった。もしかしたら私のせいであなたが死ぬんじゃないかって。怖かった。
私が無理したせいであなたが死ぬのを見るのが!何かしようと思っても何もできず、結局あなたにまかせっきりで
私だけがなにも、なにもできなかった・・・・・・・!!」
「違う!!」

 魔理沙の怒鳴り声に思わず体がビクッとしてしまう。

「もし本当に私一人で戦ってたなら絶対勝てなかった。真っ向勝負じゃあ絶対殺られるから、私が勝つためには一つ
しか方法が残されてなかった。」
「・・・・何よ、その方法って?」
「油断させることさ。相手が私を殺したと思った瞬間、力が弱まると睨んだんだ。そしてその時に強力な一撃を喰
らわせれば念を消し去ることができると思ってな。だから『マスタースパーク』を撃ったんだからな。」
「『マスタースパーク』を?おかしいじゃない。あなたの中で最高の威力があるのは『マスタースパーク』でしょ?」
「確かにな。だがな、私には隠しだまがあってな。それがこの、恋符『ノンディレクショナルレーザー』だ。」
「これが?」
「ああ。簡単に言えば、『マスタースパーク』を三方にわけた拡散型レーザーだな。一発一発は『マスタースパーク』
より弱い。だが、魔術の中心となっている私には三方の魔力が中心となって集まっている場所。その私が直接体当たり
してやれば・・・・・・」
「『マスタースパーク』より威力があるってわけね。」
「その通りだぜ。だから『マスタースパーク』を目くらましに使ったんだ。」

なかなかの策略である。アリスは少なくともそう思った。

「だがな、念の威力が強すぎて『マスタースパーク』ごと私は消されそうになったんだ。
『ノンディレクショナルレーザー』を撃つために魔力を残しとかなきゃならなかったから、全力をだすわけにはいか
なかった。そんなときに助けてくれたのがアリス、おまえだ。」
「私が?」

(なぜ?私はなにもできなかったはずなのに。)

「私がもう少しで完璧に押し負けるときだった、なぜか一瞬力が弱まったんだ。おまえだってこんなの嫌だったんだ
ろ?その気持ちが一瞬でも念の力を上回ったんだ。だからそのおかげで私も魔力から逃げることができた。だから、
私たちは勝ったんだ。勝つことができたんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「私たち」その言葉が深くアリスの心に刺さった。
 なんで魔理沙は私を憎まないのか。
 その言葉に嬉しくもあったが、その分辛かった。
 これなら、憎まれ口調をたたかれたほうがずっと楽である。
 私は魔理沙を殺そうとしてしまったのだから。

「まあ、誰にでもミスすることはあるんだし、これにこりたらもうあんな無茶するなよな。」
「・・・わかってるわよ。頼まれてもしないわ、こんなこと・・・・。
ありがと魔理沙、そしてごめんなさい・・・。」
「へ、おまえにそんなこと言われると変な気分だな。」

 こんなときくらい素直に気持ちを受け取ってもらいたいものである。

「それじゃあ、私はそろそろ帰るぜ。今回のアイテムもってな。」
「そういえばすっかり忘れてたわ。別にかまわないわよ。今回は私の負けってことにしといてあげる。」
「へいへい。じゃあな、しばらくは家で休養でもとってろよ。」

 魔理沙が家を出てこうとする。
 そんな背中に私は・・・

「まちなさい、魔理沙。」

 魔理沙がこちらに向きなおる。
 なんでとめたのかはよくわからなかった。

「今日は泊まってきなさい。今日はもう遅いし、隣の部屋自由に使っていいわ。」
「おまえにしちゃ、気前がいいな。」
「勘違いしないで。そんなふらふらの状態で外に出て、他の妖怪にでも襲われたら危険でしょ。そんなんで死なれ
たら私が仕返しできなくなるわ。・・・・それに私が殺したみたいに感じるし。」
「へへ、そうか。ならせっかくのアリスのご好意を無駄にするわけにはいかないな。」
「!!っな、何言ってんの!!言っとくけど朝になったらすぐに出て行きなさいよ!私が気分悪くしたくないだけ
なんだから!」
「そうゆうことにしておくぜ。」

笑って返事を返す魔理沙にちょっと怒りを覚える。

「じゃあお休みアリス。おまえもゆっくり休めよ。」

 そう言って魔理沙は私の部屋を出て行った。
 まあ今回は我慢しよう。
 私には何も言い返す権利はない。
 そう思ってアリスはベットに体を預けた。
 それと同時に心地よい眠りがやってくる。
 とりあえず今は休む。それが一番賢い考えである。

 

 






 

 同じ森に住む二人の魔女。
 犬猿の仲でありながら、どこか似ているそんな二人。
 その二人が力を合わせて儚い幻想郷の夜の命運を救うのは、もうちょっと先の話である。
 初作品が自分の思っていた点数よりめっちゃ高くてうれしいMSCです。
 それ以前に読んでくれただけどもうれしいです。

 ようやくできあがった二作品目。
 ぶっちゃけまた文字の間違いが腐るほど多いと思います。
 俺は理数系なんだ。そんなのしるか~!!←(最悪のいいわけ)
 ・・・まあこれぐらいにしといて、やっぱへたれですね~。
 今回、永夜抄にちょとつなげてみました。
 発売が楽しみです。(^▽^)  かなりへたくそですが。(汗)

 誤字とかあったら教えてくれると助かります。
 読んでくれた人、ありがとうございます。
MSC
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コメント



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きずいた→きづいた ありがちなミスですがいっぱいあります。
利口的な方法→利口な方法? 
繊細が欠けている→繊細さが欠けている、または、精彩(生彩)を欠いている 
はっきりいって、魔理沙が残りの力全てを使えば~追いつかれてしまう危険性が高い。→文意が矛盾しているような気がします。

その他、多少気になるところもありますが、それよりも気にかかることが。
意図的にやっているのなら申し訳ないのですが、変換すべき漢字を変換していないものが多いように思われます。もちろん、ひらがなのままというのも表現方法としては有りなのですが、それにしても、やりすぎると読みづらくなります。

とりあえず気付いたのはこんな感じです。慣れと少しの注意で、ある程度は防げるはずなので、これからもがんばって下さい。

12.無評価いち読者削除
確かに、漢字にした方が良いものがいくらか見受けられますね。常用漢字であれば、読み手としては漢字の方が読みやすいので。まあ、そのへんは好みとかも出るものですが。
私が見つけた範囲での誤字は、「念みよって」の一点。
あと、あまりに長い心理描写や台詞回しが一部にあって、これは作品の流れを悪くしてるかな、と。文の合間に、弾を避ける描写やアリスの反応を挿入すれば、いい感じに分割されるかも知れません。

内容に関しては…、アリスが念に乗っ取られてしまった事について、もう少し何らかの理由付けが欲しかったかも。
最後を永夜抄につないだのは、作品のシメとしては良かったと思います。