Coolier - 新生・東方創想話

東方神魔譚(00)

2004/06/06 09:04:43
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注意)オリキャラなんぞがメインです。気に入らなければ、お戻りくださいませ。









 いつもの様に、この身は拘束される。
 いつもの様に、この身は投薬される。
 いつもの様に、この身は酷使される。
 いつもの様に、この身は悲鳴を上げる。

 そして・・・いつもの様に悪夢を迎える。
 何時果てるとも知れない、永遠の悪夢を・・・・・

 だから、自由が欲しかった
 苦痛に塗れた生ではなく
 自由の下で迎える死を望んだ・・・・

 もう、居場所など無いのだから



 東方シリーズ二次創作
 『東方神魔譚』
 シナリオ0   『苦しみと、鮮血と、微かな希望と・・・』



「今日の実験はこれにて終了とする。結果をまとめた後、私の所へ持ってきてくれ。それと、被験体は地下牢に放り込んでおけ。」

 人口の光に支配された暗闇の中に、一人の男性の声が響く。その声は何処と無く人を蔑み、見下すような感がある。

・・・ああ、この声、聞き覚えがある

「解りました。所長、投薬の方はどうしましょう?」
「普段の倍の量をくれてやれ。今日の結果を見る限りでは何とかなるだろ」
「しかし、被験体の体は限界に来ています。これ以上の投薬は、危険では・・・」
「コレが死んでも次の被験体を造ればいいだけだ。それとも、俺の指示が聞けないとでも?」

 所長に意見した研究者は、首を大きく横に振り、否定した。

・・・また、あの地獄が始まるのか

「それでいい。俺は先に部屋に戻るぞ。」

 所長は、そう言い残し、研究室を後にした。

・・・もう嫌だ。

「お疲れ様でした。・・・・・ふう。しかし、所長も無茶するよな。これ以上薬の量を増やしたら間違い無く死ぬってのに・・・」
「あの人には、そんなこと関係ないのよ。あの人にあるのは、薄汚い出世欲だけ」

 先ほどまで黙ったままだった女性職員は、侮蔑するように吐き捨てる。

・・・自由が欲しい

「俺らもあんまり人の事は言えないさ。結局、この子はただの被害者。家族も当然の様に居たんだろうな・・・・・」
「この子の家族には、事故死って事で伝わっているらしいわ。もっとも、この子は家族の事を覚えてはいないんでしょうけどね」
「度重なる投薬による記憶障害・・・いや、脳障害と言った方がいいのかな」

 男性職員は、目の前のカプセルに触れる。冷たい緑色の溶液が詰まったそれには、一人の少年が入っている。年は17前後。色素を失った髪を持った全裸の少年は、体中にコードを繋げられ、あらゆるデータを取られていた。それこそ、様々な苦痛を与えるなどをして・・・。

・・・僕には力がある

「あら?」
「どうかしたのか?」
「変ね。カプセル内の内圧が上がっているわ。何処も弄くっていない筈なのに・・・」
「ふーん・・・・ひっ!!」

 カプセルに視線を戻した男性社員が見たものは、禍々しい紫瞳を開けた被験体の少年だった。

・・・こいつ等が与えた力が

「お、おい!何で動いてんだよ!?眠ってるんじゃないのかよ!?」
「知らないわよ!今すぐ鎮静剤を注入す・・・」

バァン!!

「きゃ!」

 大きな音を立てて、操作パネルが吹き飛んだ。そしてそれが飛び火したかの様に、全ての計器がはじけ飛ぶ。

・・・もっとも神に近い力が

バァン!!
バァン!!

「きゃあ!!」
「うわっ!!」

 二人の職員は怯えたようにカプセルの方に目をやる。
 すると青年は、それを待っていたかの様に右手を上げる。
 そしてカプセルの壁面に手を押し当てると、ゆっくり力を込めていく

・・・僕は、僕は

ピシッ!!
バァン!!!!

 カプセルは、内側から完膚なきまでに破壊された。
 カプセルから出てきた青年は、怯える二人の職員に近づくと、こう囁いた。

「・・・・・さよなら」




「毎回毎回、本当に気持ち悪いガキだな。」

 所長は自分の部屋に着くなり、悪態をついた。
 冷蔵庫から無造作にワインを取り出し、慣れた手つきでグラスに注ぐ。

「しかし、あのバケモノが完成すれば、俺の地位は更に上がる。本当にボロイ商売だな」

コンコン

「・・・入れ」

 おそらく実験の資料だろう。
 そう判断した所長は、警戒もせずに入室を許可する。

「こんばんわ、所長さん」

 そこには、血のついた服を着たバケモノが立っていた。服には見覚えがある。あの場にいた男性職員の物だ。白衣などは真っ赤に染まり、清潔さより禍々しさを強調している。

「貴様、どうしてここに!!他の職員はどうした!?」

 怯える自分を否定するように、大声で少年に怒鳴りつける。
 しかし、少年はそれに同ずる事無く、悠然と立っている。

「所長さん。一つ聞きたいんですけど・・・答えていただけますか?」
「な、何をだ・・・」

 声が自然と震える。それは仕方の無いことだ。
 目の前のバケモノの恐ろしさは、自分が一番良く知っている。なにしろ、とんでもないモノの血を流し込んだんだ。しかも、薬の所為で理性が弱くなっている。何時気まぐれに殺戮を始めるかも解らない。

「僕は・・・誰なんです?」
「・・・は?」
「僕の名は・・・僕の家族は・・・僕の居場所は・・・・・僕は一体誰なんですか?」
「そ、そんなこと俺が知るか!お前はただ無作為に選ばれただけの被検体だ!!俺がそんな奴の事を、一々気にとめる必要は無いだろ!!」

 普通の思考ならば、その言葉が少年を逆撫でするだけだと気付いただろう。だが、男はそれに気付きもしなかったし、少年も別に気にしてはいなかった。

「そう、ですか・・・じゃあ、もういいです。死んでください」
「ひっ・・・・・」

ぐちゃ!!

 悲鳴を上げる暇も無く、男の頭が弾け飛んだ。
 まるで、何かに強打されたかの様に・・・。

「どうしましょう・・・僕は誰なんでしょうか」

 少年は、一人で考え始めた。自分がこれから何をすべきか。おそらく人間に聞いても答えは出ないだろう。だったら、人間以外の生物に聞けば良いのではないだろうか?
 ふと、自分の知識の中に『幻想郷』と言う単語がある事に気がついた。記憶が曖昧な為、何でそんな単語を知っているか解らない。でも、自分の知識を信じるなら、そこには人間以外の生き物が沢山住んでいるらしい。

「そこなら、答えが見つかるかもしれませんね。となれば、まずは先立つものを・・・」

 少年は、部屋の一角に置かれている金庫の方へと、歩を進めた。そして、金庫の鍵穴に掌を当てる。指先でゆっくりと撫でると、不思議と金庫の扉は綺麗に切断された。まるでバターでも切るかの様にあっさりと・・・。

「よくもまあ、こんなに溜めたものですね・・・・・」

 中にはいくつもの札束が、綺麗に入っていた。少年は無造作にそれを掴むと、真っ赤な血に染まった白衣のポケットに放り込んだ。

「悪銭身につかず、か・・・・・そういえば、名前はどうしましょうか。せっかくですから自分で決めますか」

 自分で自分に名前を付けるという奇妙な体験をしている少年は、いつか職員が言っていた言葉を思い出す。
 あれは確か実験室に連れて行かれる時だったか・・・

「たしか・・・『羅刹の泣き声が響く』・・・でしたっけ?」

 その言葉から考えるに、羅刹と言うのは自分の事だろう。泣き声は、投薬の苦しみに耐え切れずに上げている悲鳴。それが、研究所中に響いていると言ったところだろうか。

「うーん・・・羅刹・・響・・・・・よし。これからは『響 羅刹』と名乗りましょう」

 少年は、自分の名前に納得したのか、一人で頷いている。
 そして徐に右手をかざして、所長室の窓を溶解させる。

「まずは、服の調達ですね。向こうへ行く道は・・・よし、扉の場所は解るようですし、閉じる気配も無いですからのんびり行きましょう」

 その言葉を最後に、少年は夜闇の中へと飛び立っていった。
 初投稿させていただきます。それゆえにいくつかご了承願いたい点があります。今回は、プロローグゆえに霊夢などは出てきませんが、次回にはしっかり登場させます。でも、東方歴が短いので、キャラの特徴を上手く掴みきれていないのではないかと思います。どうかご了承ください。
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