彼女は、ただ、美しかっただけ。
彼女はそれ故に愛された。
ただ、それに答えただけであった。
彼女を愛した男達は、言葉通り全てを捧げた。
人々を統べる立場にありながら、彼らは全よりも個を選んだ。
美しいものに全てを捧げた。
ただ、それだけ。
大陸、天竺、再び大陸、そして、極東へ。
彼女は愛され、そして、追われた。
傾国の者として。
極東の地で、彼女は遂に討たれた。
ヒトの体を保てなくなり、狐の姿すら維持できなくなって
石となり、その意思を維持する為に力を吸った。
そして遂には砕かれる。
破砕の瞬間
「生きたい?」
と声を聞いた。
声を発する事の出来ない自分。
頷く事の出来ない自分。
それでも、懸命に願った。
「消えたくない」
と。
次の瞬間、石が砕ける様子を目撃した。
「さすがね、残った「念」だけで九に分かれたわ・・・」
呆然とその様子を見る私は、ただ、助かった事しか判らなかった。
「貴女には、私の「式」になってもらうわ。」
「式」?この女性は、私に向かって言っているのか?
「式」、使役される存在になれと!?
私は「 」なんだぞ!
・・・・・私は
誰だ?
目の前の女性が言う。
「貴女から記憶を頂いたわ。当然の対価ね。寧ろ少ない位ね。」
私はようやく言葉を発する。
「貴女は・・・誰?」
と
「ねぇ~、ねぇ~、藍さまー」
「ぅん、おぉ、すまんな橙、眠ってしまったようだ。どうした?」
「見ててくださいね、さっき成功したんですよ!スペルカード」
と庭先に嬉しそうに出て行く「式」を眺める。
あぁ、失敗したな・・・駄目だな、橙は。
橙は悔しそうに立ち上がると、
「みーてーてーくーだーさーいーねー」
と再度挑戦しはじめた。
私は常に忙しい。
私の主が仕事を山積みにしてくれるからだ。
たぶん、昔を思い出す暇を与えない為なのだろうが、
私は既に、ぼんやりとだが思い出せていた。
しかし、今の私には過去には無い喜びがある。
橙が抱きついてくる。
バフッっと
胸に顔を埋めてから、見上げて言う。
「どう?どう?見ててくれました?できましたよ、藍さまー」
「あぁ、ちゃんと見てたぞ。上達したな、橙」
その頭を撫ぜてやる。
「んふ~♪」
今の私は、幸せだ。
彼女はそれ故に愛された。
ただ、それに答えただけであった。
彼女を愛した男達は、言葉通り全てを捧げた。
人々を統べる立場にありながら、彼らは全よりも個を選んだ。
美しいものに全てを捧げた。
ただ、それだけ。
大陸、天竺、再び大陸、そして、極東へ。
彼女は愛され、そして、追われた。
傾国の者として。
極東の地で、彼女は遂に討たれた。
ヒトの体を保てなくなり、狐の姿すら維持できなくなって
石となり、その意思を維持する為に力を吸った。
そして遂には砕かれる。
破砕の瞬間
「生きたい?」
と声を聞いた。
声を発する事の出来ない自分。
頷く事の出来ない自分。
それでも、懸命に願った。
「消えたくない」
と。
次の瞬間、石が砕ける様子を目撃した。
「さすがね、残った「念」だけで九に分かれたわ・・・」
呆然とその様子を見る私は、ただ、助かった事しか判らなかった。
「貴女には、私の「式」になってもらうわ。」
「式」?この女性は、私に向かって言っているのか?
「式」、使役される存在になれと!?
私は「 」なんだぞ!
・・・・・私は
誰だ?
目の前の女性が言う。
「貴女から記憶を頂いたわ。当然の対価ね。寧ろ少ない位ね。」
私はようやく言葉を発する。
「貴女は・・・誰?」
と
「ねぇ~、ねぇ~、藍さまー」
「ぅん、おぉ、すまんな橙、眠ってしまったようだ。どうした?」
「見ててくださいね、さっき成功したんですよ!スペルカード」
と庭先に嬉しそうに出て行く「式」を眺める。
あぁ、失敗したな・・・駄目だな、橙は。
橙は悔しそうに立ち上がると、
「みーてーてーくーだーさーいーねー」
と再度挑戦しはじめた。
私は常に忙しい。
私の主が仕事を山積みにしてくれるからだ。
たぶん、昔を思い出す暇を与えない為なのだろうが、
私は既に、ぼんやりとだが思い出せていた。
しかし、今の私には過去には無い喜びがある。
橙が抱きついてくる。
バフッっと
胸に顔を埋めてから、見上げて言う。
「どう?どう?見ててくれました?できましたよ、藍さまー」
「あぁ、ちゃんと見てたぞ。上達したな、橙」
その頭を撫ぜてやる。
「んふ~♪」
今の私は、幸せだ。