「あ、お帰りなさいませ。パチュリー様」
「ご苦労様、美鈴」
前日まで、久方ぶりに外出していた図書館の主が帰ってきた。
大事そうに袋を抱えて。
お茶会を早めに抜けてきた美鈴は、すでに門番の任務に戻っていた。
「と、言うわけで貴女には3日間ここで働いてもらうわ。いいわね、ルーミア」
「うん。」
そう返事をしたのは、いつもの黒い格好ではなく、メイド服に身を包んだ宵闇妖怪・ルーミアだった。
紅魔館に連れられてきてお茶会を楽しんだが、元々招待されていないルーミアは3日間お手伝いをする事でその対価とした。
と、言うよりさせられた。
「で、何で私までこんな格好しなきゃいけないのよ?」
そこには巫女衣装ではなく、メイドの格好をした霊夢がいた。
「貴女は、お嬢様からの指示なの。(お嬢様、なんで霊夢なんかを・・・・)」
「ハァ・・・判ったわ。でも、1日だけよ?」
「・・・・・・巫女は廃業か?」
「ッ!!?」
背後からの突然の言葉にびっくりする霊夢。
魔理沙である。
パチュリーを送ったついでに、美鈴から「面白いものが見れる」と聞いて寄ったのだ。
「魔理沙、いつから?」
「つい先程よ。オモシロイモノも見れたし、お茶飲んで帰るわ。」
「誰がお茶なんて出すって言ったの?」
「そこのメイドにやってもらうぜ」
と霊夢を見る。
「な!?」
「ふふ、それはいい考えだわ。私はルーミアを連れて行くから霊夢、お願いね。」
「まったく、何でこんな事・・・ブツブツ」
と言いつつも紅茶の用意をする為に、立ち去ろうとする。
それを見ながら魔理沙は
「私は緑茶で宜しくな、メイドさん♪」
「咲夜、どこいくの?」
「図書館よ。」
長い廊下を歩いてゆく。
そして、図書館の入り口にたどり着く。
その間に咲夜は、
レミリア、フランドール、パチュリーの3人には、敬称として「様」をつける事。
仕事の内容は、図書館の掃除。
部屋に入る時は、ノックをして・・・・
など、基本的な事を教えた。
コンコン
「失礼します、パチュリー様。」
カチャっとドアノブを捻って部屋に入る。
ガタッガタガタッ
「・・・・どうしたの、咲夜?」
あからさまに「何か」を隠したようだが突っ込んではいけない。
「何隠したnングー!!」
突っ込もうとするルーミアの口を押さえて続ける。
「今日から3日間、ここの手伝いをする、ルーミアです。」
「よろし、あ、宜しくお願します、パチュリー様。」
と丁寧にお辞儀する。
「そう、細かい事はリトルに聞いて。」
「それでは、失礼します。」
「あれ、咲夜はどっかいくの?」
「食料調達よ。」
咲夜が向うのは、契約先である人間の集落である。
妖怪の侵入を防ぐ事を条件に、定期的に、血液を採取しているのだ。
妖怪が侵入すると、集落までの空間を捻じ曲げて、進んでも到達しないように罠を張ったのだ。
表向きは血液だけだが、裏では少量ながら人間の取引もしている。
この契約を結んだおかげで、紅魔館では天然物の血液を簡単に入手できるようになったのだ。
この功績によって、咲夜はメイド長の座についているのである。
「そうなのかー、いってらっしゃーい」
咲夜を見送って、早速小悪魔リトルに仕事を教えてもらう。
「よろしくお願しますね、ルーミアさん。」
「よろしく~」
「まずは、この館内の見取り図を渡しますね。」
「・・・・・広すぎ・・・・」
他のメイド達4人と共に清掃場所にきたルーミアだったが、
図書館の広さにただ、呆然としていた。
「ふふ、大丈夫ですよ。
私達の担当はこの周辺だけです。」
「そうそう、私達以外にも8組いるんだから」
そういって掃除を始める
実はルーミア、箒の正しい向きがあるのを知らなかったり、塵取りが下手だったりと、掃除の経験が余り無かったのだ。
「ん~、じゃあ、ルーミアさんには持ってきた本の返却をお願しますね。」
「はーい。」
「ふぅ・・・掃除終了。」
「じゃ、戻ってリトルさんに報告しましょ」
掃除の終わったメイド達はリトルの元に報告に向った。
「1班、清掃終了しました。」
「はい、お疲れ様です。」
「それでは、失礼します」
報告の終わったメイド達が図書館から退室する。
「は~い」
今日入荷した本の処理、分類をしていく。
しばらくたって
「・・・・あれ?」
出て行ったメイドの人数は4人。
今日はルーミアがいたはずなので・・・・
「あらあら・・・」
「ふむむ・・・」
本の返却を終えたルーミアは、
床にぺたりと座って1冊の本と向かい合っていた。
「あぁ、良かった。」
「!!?」
と突然頭上から声をかけられた。
突然の事に心底驚いた様子で見上げるルーミア
司書のリトルだった。
「メイド達と一緒じゃなかったので心配したんですよ?」
「え?・・・あぁ!本に夢中になってて・・・ごめんなさい。」
「本を読むのはいいんですが、中には呪いの掛かっているモノもあるので気をつけてくださいね。」
「うん。」
「で、何を読んでらしたんです?」
「んーっと、これ」
と表紙を見せる。
闇の書と書かれている。
「これは、全3巻なんですが、前後の巻が見つかってないので内容が中途半端ですよ?」
と、突然本棚の中の1冊が勝手に出てくると、中空で掻き消える。
「消えた!」
「あぁ、パチュリー様が本を取り寄せたんです。」
「へぇ~」
「それじゃ、私達も戻りましょうか。」
「あなた、確か宵闇妖怪だったわね」
「うん」
本に集中している為か気の無い返事である。
「それなら、内容がわかるはずね・・・」
先ほど読んでいた本の閲覧許可をパチュリーに求めた所、
許可がおりたので読書を再開していた。
「ふぃ~」
ルーミアが、やっと顔をあげた
「お疲れ様です。」
とリトルがお茶とお茶菓子をもってきた。
「ありがと、貴女も休憩にしなさい。」
「ありがとうございます。」
と自分のお茶を用意して椅子に掛ける。
「貴女は本が好きなの?」
と
お茶菓子を食べるルーミアに尋ねる。
ごっくん、とお菓子を飲み込んでから
「うん、知らない事が一杯で面白い・・あ、面白いです」
すこし、微笑んで
「そう、あと、言葉使いは普段どおりでいいわ。咲夜の前では駄目だけど」
と言うと読んでいた本に集中した。
それを眺めていたリトルも幸せそうに微笑んだ。
次の日
「おはようございます、パチュリー様」
とリトルが挨拶をする。
「おはよう・・・」
「今日は早いんですね」
「ルーミアは?」
「ルーミアさんは・・・その前に、「ソレ」置いてきた方がいいですよ?」
とパチュリーの握っている人形を指差す。
赤面して自室に戻るパチュリー
どうやら昨日持って帰ってきた袋の中身のようだ。
ルーミアの借りている部屋に案内する。
「失礼するわ」
「あうぅぅぅう・・・」
「・・・どうしたの?」
「・・・知恵熱だそうで」
「パチュリー様、リトルさん、ごめんなさい~」
「まったく、いきなり難しい本を読むからよ」
と数冊本を取り出し、渡す。
「今日はこれでも読んでなさい。闇の書は明日。」
青ざめるルーミア
「大丈夫、簡単な本だから。」
最終日
仕事を終えて、丁度本を読み終えると
失礼します、と咲夜が現れた。
目が赤いのは気のせいだろうか
「ルーミア、3日間ありがとうね。」
と包みを渡される。
「何これ?」
「美鈴がお土産にって。手作りだから美味しいわよ。」
中には肉まんが入っていた。
「♪~」
さっそく食べようと袋に手を伸ばす
「帰りに食べなさい。」
と叱られる。
リトルに送られて紅魔館の外に出る。
「いつでも来て下さいね。」
「うん、それでは~」
と宙に浮く。
「そういえば、なんで闇の書を読んでたんです?」
遠ざかりながら
「前後の本黒の書と夜の書なら家で読んだ事あるからー」
「!!
是非、今度持ってきてくださいねー」
手を振って答えるルーミア。
久しぶりに驚いたリトルだった。
この事を主に教えたらどんなリアクションをするんだろう?
そんな事を考えながら図書館に帰っていった。
肉まんを頬張りながら飛んでいると、不意に前方の空間が歪む。
その歪みから魔力が溢れて門を作り出す。
その門から現れたのは初老の紳士だった。
人じゃないと判るのは首を抱えているからだった。
「ルーミア様、3日間もどこにいってたんですか?心配しましたぞ」
「リカルド、はい。」
と肉まんの入った包みを渡す。
「ささ、帰りますぞ。」
「マリー泣いてる?」
「もちろん」
門を開きルーミアを潜らせてから自分も潜る。
この白髪の老紳士、首無し騎士デュラハンなのだ。
指定した人物の付近に現れる程度の能力と、戦車、剣術を操る程度の能力を持つ。
帰ってきた場所は、深い谷底である。
大昔には山の断崖に建っていた城が、山崩れで谷底にそのまま落下したのである。
「ぐすっ、お帰りなさいませルーミア様。スン・・・」
泣きながらルーミアを出迎えたのは泣き妖怪バンシーのマリーツィアである。
常に泣いていて、長い髪と緑と灰色のメイド服が特徴である。
泣いて危険を知らせる程度の能力を持つ。
「ルーミア様、一体何をしていたのですか?」
「ん~・・・メイド体験したり、本を読んだり・・・」
「そ、そんな、ルーミア様がメイドだなんて、グスッぅぅう・・・」
ぐしぐしと涙を拭うマリーツィア
「あ、思い出した。黒と夜の本持ってきて」
「どうするのです?」
と厳重に保管してある3冊の本の内、2冊を取り出す。
「ヴワル魔法図書館に持ってく」
「な!あそこには本狂いの魔女がいるのですよ?駄目です。」
「リカルドのケチー」
「それよりも、書斎から封印の解除について書かれた本を探してはどうですか?」
「半分崩れてて探せないよ・・・」
「ぅぅ・・お手伝いします。・・・」
2人の先祖は、封印される前からルーミアに使えていて、現在は封印解除の方法を探して奔走したり
(封印前より)幼くなったルーミアの世話をしているのである。
ちなみに、1日目にレミリアの部屋に呼ばれた霊夢は
「・・・ほら、こんなにも・・・」
「凄いわ、霊夢・・・糸、引いてるわ・・・・」
「レミリアもやってみて・・・」
クチュ、っと妙な音がする。
「こ、こんな感じかしら?」
「そう、もっと激しく・・・」
食料調達を手早くすませた咲夜は
レミリアの部屋の前で聞き耳をたてていた。
「(・・・・あんの紅白め、私のお嬢様に何て(羨ましい)事を!!!!)
紅白ー!何をやっているーーーー!!!」
鼻血を抑えながら、勢いよく扉を開ける咲夜
うるさい侵入者を見る二人
「・・・・何って」
「・・・・見て判らないの?咲夜」
二人を見る咲夜
レミリアと霊夢の間には
卵の殻と
納豆が
それはともかく、ルーミアにメイドは務まらんだろーなぁ。偏見ですけど(笑)。
あと、作品の真ん中あたりに「で」の重複があります。
最後が納豆オチかい!
騙された・・・w
誤字発見、ルーミアに「使」えていて、になってますね。