見回り以外は皆、寝静まってしまい、昼間の弾幕音が完全に消え、ゾッとするほど静まりかえった紅魔館。
コッ… コッ…
その中に一人分、ギリギリまで押し殺された足音が廊下に響いた。
そしてその足音は、とある階段の前で止まった。
地下室へと続く狂気の階段で。
「・・・ここだぜ」
魔法で携えた微かな光で、階段の向こうを照らす。
案の定、特に変わった物は見えない。
見えないが……甘い鉄の臭いがしてくるのは気のせいだろうか。
しかし、
「見回りが来ないうちに行くか。ああ、楽しみだぜ楽しみだぜ」
と、この場の雰囲気と外見年齢に会わない不敵な笑みを浮かべ、その者…霧雨 魔理沙は階段を下っていった。
階段を下り終えると、長い廊下があった。
この廊下の途中には、あのマッドな吸血鬼の部屋がある。
しかし、魔理沙は今日はそんな所に用は無かった。
魔理沙はズレている帽子を被りなおすと、
「さて、と。こっからが正念場だぜ…。なんだか忍になった気分だぜ」
と、光を消し、壁にピッタリとくっつき、少しの物音を立てないことに体中の70%の神経を使い、進んでいった。
今までのは紅魔館のメイドだったのだが、この廊下では話が違う。
何しろ相手は破壊の力を持つ妹様だ。見つかったら「死んだ」と過去形にしてもいい。
光を消すのは、ほんの小さな魔力も悟られないためだ。
魔理沙にとって、この時は1秒が何秒にも何十秒にも感じられた。
一歩一歩。慎重に慎重に。
特にフランの部屋を通る時は、心臓が胸から飛び出すかと思うほど鼓動していた。
そして、魔理沙にとっての1時間。現実は15分ほどが経過しただろうか。
ようやく、廊下の突き当たりにあるお目当ての部屋のドアに到着した。
(長かったぜ… ここが紅魔館の倉庫か!)
そう、魔理沙は蒐集家のサガとしてかどうかは知らないが、倉庫に盗みに入りに来たのだ。
紅魔館なら珍しいモノも沢山あるだろうと踏んだのだろう。
ちなみに、倉庫の場所はパチュリーから聞き出したのだが、その時のパチュリーは、
「…ショックを受けるわよ」
と意味深なセリフを残していた。
しかし、試練を全て超えたと思ってしまっている魔理沙は、そんな一行のセリフなぞとうに忘れてしまっていた。
重要な事だが、何で昼に来なかったんだ、と言うツッコミは却下する。
(さて、どんなアイテムがあるのかな~)
と、震える手でドアノブを握ろうとする魔理沙。しかし
バチッ!
「!?」
魔理沙の指がドアノブに触れた途端、電撃のような衝撃が走った。
魔理沙は指の痛みよりも、電撃の発生音でフランが来ないだろうか、と言う事を恐れた。
…が、誰も来ない。魔理沙は胸を撫で下ろした。
「…全く、結界か…。どうするかな…?」
魔理沙は右の壁を見た。
そこにはオレンジ色の光を放つ、
123
456
789
札が9枚張られていた。
パスワードロック式なのだろう。
「あー?なるほど。これを正しい順番でやればこの結界が消えると言う訳だな。おお、流石私だぜ」
とりあえず魔理沙は一つ目の札を押してみた。
するとそれは青く光った。
二つ目も押した。緑に光った。三つ目も押した。紅く光った。…四つ目で札の色が全部元に戻ってしまった。
「なるほど。つまりこれは暗証番号は4ケタってことになるな」
今度は左の壁を見た。
そこには、ちょっと血のようなモノがついたメモが貼られていた。
「あー?なるほど。先が見えるぜ。恐らくコレがパスワードのヒントだな。全く、盗人にヒント残してくれるとは、気が利くぜ」
と、魔理沙はメモに目を通した。
『メイド長のメモ』
「私のこの思いを知ったら、
お嬢様はどう思うでしょうか
ただ何も言わず微笑んでくれるでしょうか
お嬢様の口からなら罵る言葉さえ、
真珠のように美しいでしょう
あ、鼻血が…
お嬢様の顔のかわいいこと!
まるで…例え様がありませんわ
お嬢様の無垢な顔を、私の物にしたい!
顔が駄目なら、一部分だけでも欲しい!
そして永遠に飾って…とか考えたら鼻血が出てきた。
お嬢様が熱っぽい時。
私はお嬢様のおでこを触る。
お嬢様が風邪をこじらしたりなんかしたら大変だ。
メイド長の役目として、お嬢様の健康管理には気をつけなくてはならない。
と、同時にこれはお嬢様に触れることの出来るチャンスでもある。
おでこ同士をくっつけることで、お嬢様の顔がよりよく近づき、よりよく見える。
か、カワイイ…
…うっ!鼻血が止まらなくなってきた。
新しいティッシュを詰めなくては。
お嬢様のほっぺたをつねりたい。
あのプニプニしたほっぺたをつねって伸ばしてみたい!
お嬢様はきっとかわいい声を出してくれるだろう。
どちらの頬が気持ち良いだろうか。
それを検証するために、門番の両頬を交互に軽くつねってみた。
ふむふむ、門番が言うには右頬の方が若干痛くないようだ。
ならば私は左頬をつねることにしよう。
サボッてばっかの門番の言う事は信用しない。
…いけない。ティッシュが落ちてしまった。
そういえば、最近お嬢様の耳掃除をしていない。
さぞかし沢山溜まっているのだろう。
今度耳掃除をさせてもらうように言ってみよう。
お嬢様の右耳に私の棒が入っていく…ああなんと素敵なんだろう。
…しかし、お嬢様はいつも嫌がる。
そんなに私の耳掃除は痛いのだろうか?
でも、お嬢様が嫌がる姿もかわいいので良しとする。
う、一瞬目まいがした。結構ヤバいかも知れない。
もうこれ以上書けそうにないので、最後に自分の一番したいことを書いて寝るとする。
願わくば… 願わくば…
お嬢様のかわいいお口に…キ、キキ…キスを…!(後は血だらけで読めない)」
「…なっ、なななななっ…」
魔理沙の声が思わず震える。
そして、
「なんじゃこりゃーっ!?」
廊下に響く魔理沙の悲鳴。
ドガッ バキッ!
…ズガーン!
―――遠くの方で、何かの扉が壊された。
近づいてくる足音。
それに気づかない、放心状態の魔理沙――
「うるさい」
翌日
「…何かしら、これ」
朝の掃除をしているメイド長が見つけた物は、
「公害」と書かれた紙を貼られた雑巾状態の魔理沙であった。
教訓
盗みは駄目だよ!
コッ… コッ…
その中に一人分、ギリギリまで押し殺された足音が廊下に響いた。
そしてその足音は、とある階段の前で止まった。
地下室へと続く狂気の階段で。
「・・・ここだぜ」
魔法で携えた微かな光で、階段の向こうを照らす。
案の定、特に変わった物は見えない。
見えないが……甘い鉄の臭いがしてくるのは気のせいだろうか。
しかし、
「見回りが来ないうちに行くか。ああ、楽しみだぜ楽しみだぜ」
と、この場の雰囲気と外見年齢に会わない不敵な笑みを浮かべ、その者…霧雨 魔理沙は階段を下っていった。
階段を下り終えると、長い廊下があった。
この廊下の途中には、あのマッドな吸血鬼の部屋がある。
しかし、魔理沙は今日はそんな所に用は無かった。
魔理沙はズレている帽子を被りなおすと、
「さて、と。こっからが正念場だぜ…。なんだか忍になった気分だぜ」
と、光を消し、壁にピッタリとくっつき、少しの物音を立てないことに体中の70%の神経を使い、進んでいった。
今までのは紅魔館のメイドだったのだが、この廊下では話が違う。
何しろ相手は破壊の力を持つ妹様だ。見つかったら「死んだ」と過去形にしてもいい。
光を消すのは、ほんの小さな魔力も悟られないためだ。
魔理沙にとって、この時は1秒が何秒にも何十秒にも感じられた。
一歩一歩。慎重に慎重に。
特にフランの部屋を通る時は、心臓が胸から飛び出すかと思うほど鼓動していた。
そして、魔理沙にとっての1時間。現実は15分ほどが経過しただろうか。
ようやく、廊下の突き当たりにあるお目当ての部屋のドアに到着した。
(長かったぜ… ここが紅魔館の倉庫か!)
そう、魔理沙は蒐集家のサガとしてかどうかは知らないが、倉庫に盗みに入りに来たのだ。
紅魔館なら珍しいモノも沢山あるだろうと踏んだのだろう。
ちなみに、倉庫の場所はパチュリーから聞き出したのだが、その時のパチュリーは、
「…ショックを受けるわよ」
と意味深なセリフを残していた。
しかし、試練を全て超えたと思ってしまっている魔理沙は、そんな一行のセリフなぞとうに忘れてしまっていた。
重要な事だが、何で昼に来なかったんだ、と言うツッコミは却下する。
(さて、どんなアイテムがあるのかな~)
と、震える手でドアノブを握ろうとする魔理沙。しかし
バチッ!
「!?」
魔理沙の指がドアノブに触れた途端、電撃のような衝撃が走った。
魔理沙は指の痛みよりも、電撃の発生音でフランが来ないだろうか、と言う事を恐れた。
…が、誰も来ない。魔理沙は胸を撫で下ろした。
「…全く、結界か…。どうするかな…?」
魔理沙は右の壁を見た。
そこにはオレンジ色の光を放つ、
123
456
789
札が9枚張られていた。
パスワードロック式なのだろう。
「あー?なるほど。これを正しい順番でやればこの結界が消えると言う訳だな。おお、流石私だぜ」
とりあえず魔理沙は一つ目の札を押してみた。
するとそれは青く光った。
二つ目も押した。緑に光った。三つ目も押した。紅く光った。…四つ目で札の色が全部元に戻ってしまった。
「なるほど。つまりこれは暗証番号は4ケタってことになるな」
今度は左の壁を見た。
そこには、ちょっと血のようなモノがついたメモが貼られていた。
「あー?なるほど。先が見えるぜ。恐らくコレがパスワードのヒントだな。全く、盗人にヒント残してくれるとは、気が利くぜ」
と、魔理沙はメモに目を通した。
『メイド長のメモ』
「私のこの思いを知ったら、
お嬢様はどう思うでしょうか
ただ何も言わず微笑んでくれるでしょうか
お嬢様の口からなら罵る言葉さえ、
真珠のように美しいでしょう
あ、鼻血が…
お嬢様の顔のかわいいこと!
まるで…例え様がありませんわ
お嬢様の無垢な顔を、私の物にしたい!
顔が駄目なら、一部分だけでも欲しい!
そして永遠に飾って…とか考えたら鼻血が出てきた。
お嬢様が熱っぽい時。
私はお嬢様のおでこを触る。
お嬢様が風邪をこじらしたりなんかしたら大変だ。
メイド長の役目として、お嬢様の健康管理には気をつけなくてはならない。
と、同時にこれはお嬢様に触れることの出来るチャンスでもある。
おでこ同士をくっつけることで、お嬢様の顔がよりよく近づき、よりよく見える。
か、カワイイ…
…うっ!鼻血が止まらなくなってきた。
新しいティッシュを詰めなくては。
お嬢様のほっぺたをつねりたい。
あのプニプニしたほっぺたをつねって伸ばしてみたい!
お嬢様はきっとかわいい声を出してくれるだろう。
どちらの頬が気持ち良いだろうか。
それを検証するために、門番の両頬を交互に軽くつねってみた。
ふむふむ、門番が言うには右頬の方が若干痛くないようだ。
ならば私は左頬をつねることにしよう。
サボッてばっかの門番の言う事は信用しない。
…いけない。ティッシュが落ちてしまった。
そういえば、最近お嬢様の耳掃除をしていない。
さぞかし沢山溜まっているのだろう。
今度耳掃除をさせてもらうように言ってみよう。
お嬢様の右耳に私の棒が入っていく…ああなんと素敵なんだろう。
…しかし、お嬢様はいつも嫌がる。
そんなに私の耳掃除は痛いのだろうか?
でも、お嬢様が嫌がる姿もかわいいので良しとする。
う、一瞬目まいがした。結構ヤバいかも知れない。
もうこれ以上書けそうにないので、最後に自分の一番したいことを書いて寝るとする。
願わくば… 願わくば…
お嬢様のかわいいお口に…キ、キキ…キスを…!(後は血だらけで読めない)」
「…なっ、なななななっ…」
魔理沙の声が思わず震える。
そして、
「なんじゃこりゃーっ!?」
廊下に響く魔理沙の悲鳴。
ドガッ バキッ!
…ズガーン!
―――遠くの方で、何かの扉が壊された。
近づいてくる足音。
それに気づかない、放心状態の魔理沙――
「うるさい」
翌日
「…何かしら、これ」
朝の掃除をしているメイド長が見つけた物は、
「公害」と書かれた紙を貼られた雑巾状態の魔理沙であった。
教訓
盗みは駄目だよ!
…とにかく、こういうアホなのは好きです。個人的には
>…いけない。ティッシュが落ちてしまった。
のくだりが何故かツボ。
内容で少し指摘をするならば、前半の雰囲気が中途半端かも。シリアスで引っ張って妄想メモでひっくり返すか、最初からギャグ的なノリ(作品中で例を挙げると『重要な事だが、何で昼に来なかったんだ、と言うツッコミは却下する。』みたいなノリ)にするかした方が良かったかと思います。
ちなみにパスワード、分からないので、8742(はなじぶ~)にしときます(笑)。
元ネタ書いた方がいいと思いますよ~。