ここは冥土の白玉楼 今日も今日とて無事平和
掃除に余念がないのは庭師 そこへ通りがかるは幽姫
「ときに妖」
「半分だけ呼ぶのはおやめください」
「じゃあ妖々」
「半分を二倍にしておっしゃられましても」
「まぁいいわ。あなたの言葉あそびに付き合っているひまはないから」
「……。で、何の御用でしょう」
「そこの、障子なのだけどね」
と亡霊少女が指したのは 縁側の障子いちめん
「そろそろ張りかえたほうがいいんじゃない?」
「たしかに、めっぽう穴だらけですね。何度も上からつくろってはいますが」
「見栄えがよくないわね。どうしてこんなに穴だらけになるのかしら」
「きっと、幽々子様がひんぱんに穴を空けて中を覗くからでしょう」
「そうだったかしら」
「そうです」
「そうなの?」
「そうなのです」
「ほんとに?」
「事実です」
「しつこいわね」
「幽々子様がね」
「…………」
「…………」
「で障子なのだけど。障子紙の控えはあったかしら」
「どうでしょう。なければ用立ててきますが」
「そうね。お願いしようかしら」
………………
「幽々子様、手に入れて参りましたよ」
「あらご苦労様……って、何、その太刀みたいに長い筒は」
「何って。障子紙ですけれど」
「ええ? 障子紙って、一枚一枚切って貼るものでしょう」
「ああ、巻紙型のものはそうですね。最近は、こういう種類もあるのです。こう、くるくるぺたんと張るだけでおしまいっていう」
「無粋ね」
「おまけに、糊もいらないんですよ」
「じゃあ、せっかくたっぷり用意したこの糊をどうしろというの」
「どうと申されましても」
「…………」
「…………」
「ときに魂魄妖夢」
「なぜ急に姓名で」
「あなた、糊風呂は好きかしら」
「大嫌いです」
「ものはためし、と言うじゃない?」
「ご免です」
「じゃあ、糊行水と言うのは」
「金輪際お断りいたします」
「糊鍋」
「……鍋!?」
けっきょくのところ 主従仲良く障子を張りかえ 風呂をつかって 鍋を囲んで しまいに枕を並べて寝たのだとか
糊がいったいどうなったのか それは閻魔様でも知るところではない
「糊はなくても主従の仲は密、というわけね」
「うまくまとめようとしないでください」
掃除に余念がないのは庭師 そこへ通りがかるは幽姫
「ときに妖」
「半分だけ呼ぶのはおやめください」
「じゃあ妖々」
「半分を二倍にしておっしゃられましても」
「まぁいいわ。あなたの言葉あそびに付き合っているひまはないから」
「……。で、何の御用でしょう」
「そこの、障子なのだけどね」
と亡霊少女が指したのは 縁側の障子いちめん
「そろそろ張りかえたほうがいいんじゃない?」
「たしかに、めっぽう穴だらけですね。何度も上からつくろってはいますが」
「見栄えがよくないわね。どうしてこんなに穴だらけになるのかしら」
「きっと、幽々子様がひんぱんに穴を空けて中を覗くからでしょう」
「そうだったかしら」
「そうです」
「そうなの?」
「そうなのです」
「ほんとに?」
「事実です」
「しつこいわね」
「幽々子様がね」
「…………」
「…………」
「で障子なのだけど。障子紙の控えはあったかしら」
「どうでしょう。なければ用立ててきますが」
「そうね。お願いしようかしら」
………………
「幽々子様、手に入れて参りましたよ」
「あらご苦労様……って、何、その太刀みたいに長い筒は」
「何って。障子紙ですけれど」
「ええ? 障子紙って、一枚一枚切って貼るものでしょう」
「ああ、巻紙型のものはそうですね。最近は、こういう種類もあるのです。こう、くるくるぺたんと張るだけでおしまいっていう」
「無粋ね」
「おまけに、糊もいらないんですよ」
「じゃあ、せっかくたっぷり用意したこの糊をどうしろというの」
「どうと申されましても」
「…………」
「…………」
「ときに魂魄妖夢」
「なぜ急に姓名で」
「あなた、糊風呂は好きかしら」
「大嫌いです」
「ものはためし、と言うじゃない?」
「ご免です」
「じゃあ、糊行水と言うのは」
「金輪際お断りいたします」
「糊鍋」
「……鍋!?」
けっきょくのところ 主従仲良く障子を張りかえ 風呂をつかって 鍋を囲んで しまいに枕を並べて寝たのだとか
糊がいったいどうなったのか それは閻魔様でも知るところではない
「糊はなくても主従の仲は密、というわけね」
「うまくまとめようとしないでください」
相変わらずの良い言葉遊び、楽しませてもらいました。
ひどい味だけど(←むかし食った馬鹿