むか~しむかし、ある山里に、おじいさんとおばあさんが住んでいたそうです。
おじいさんとおばあさんは、大変に貧しく、生活は大変なものでした。
どれくらい貧乏かっていうと、正月に餅を買って食べてのんびりすることもできないくらいです。
霊夢「かわいそうなじいさんとばあさんでしたとさ。めでたし、めでたし。」
魔理沙「おい、気持ちはわかるが、勝手に完結させるな。」
そして、大晦日。
おばあさんは、おじいさんを呼びました。
霊夢「なによ~?正月ぐらい、のんびりさせてよ。」
魔理沙「いつものんびりしてるじゃないか。そんなんだから、うちは貧乏なんだよ。」
霊夢「きっと、貧乏神でも憑いているのね。」
魔理沙「いるんなら、さっさと祓ってくれ。で、本題だが。」
霊夢「ん?」
ドサ!
おばあさんは、おじいさんの目の前に、おっきな包みを出しました。
霊夢「何よ、これ。」
魔理沙「まあ、開けてみろ。」
おじいさんは、言われるままに包みを開きました。
すると、その中には・・・・・。
霊夢「・・・・・・・ちょっと。」
魔理沙「何だ?」
霊夢「この物語は、こんなのを売る物語だったかしら?」
魔理沙「あ~?」
どうやら、物語の進行上、問題となるものが入っていたらしいです。
魔理沙「『かさ』を売ってどうこうする話だろ?」
霊夢「そうね。『笠』を売ってどうこうする話ね。」
魔理沙「そういうわけで、作ったわけだが。」
霊夢「これは、『傘』ね。」
魔理沙「あ~?」
中身は、傘だったようです。
魔理沙「何がちがう?」
霊夢「『笠』は頭にかぶる物。『傘』は頭にかざす物。この程度のちがいね。」
魔理沙「つまり、あれか?」
霊夢「どれよ?」
魔理沙「『かさ』を作れと言われて『かさ』を作ったが、本当は『かさ』じゃなくて『かさ』だったってことか?」
霊夢「かさかさ五月蝿い。」
魔理沙「人を虫みたく言うな。」
もう、何がなんだかわかりません。
魔理沙「あ~、もう。どうでもいいから、さっさと売って来い。」
霊夢「どうして、こんなもんわざわざ売ってこなきゃいけないのよ?」
魔理沙「傘を売った金で、餅を買う。そして、今年の正月を豪勢に過ごそうってことだ。」
霊夢「『獲らぬ狸の皮算用』っていうのかしら?」
魔理沙「まあ、ちょっとした手違いでおかしくなってしまったが、『傘』も『笠』も大して変わらないだろ。」
霊夢「・・・兎にも角にも、私がこれを何とかしなきゃ話にならないんでしょ?」
魔理沙「わかってるじゃないか。」
霊夢「じゃ、ぱっぱと行ってきま~す。」
魔理沙「おう。遭難だけはするなよ~。」
こうしておじいさんは、『傘』を売るため、ふもとの町まで出かけることにしました。
・
・
・
外は雪。
そんな中を突き進み、おじいさんは、町にやってきました。
そして、あるお店に、傘を売りつけることにしました。
霖之助「・・・・・で?」
霊夢「そういうことよ。」
おじいさんは、お店の人に事情を説明しました。
すると、
霖之助「断る。」
あっさり断られました。
霊夢「何で?」
すかさずおじいさんは、抗議します。
霖之助「うちは客に物を売る店であって、客から物を買う店じゃあない。」
霊夢「こんな場に出てきても、自分の役割は忘れないわけね。」
霖之助「当然だ。」
霊夢「じゃあ、買ってくれるわよね?」
霖之助「何故、その答えに行き着く?」
霊夢「わからないの?」
霖之助「『傘』だろうが『笠』だろうが、そんな珍しいわけでもないだろう?」
霊夢「でも、それは貴重品よ。」
霖之助「どこがだ?どう見ても、そうには見えないが・・・?」
霊夢「うちのばあさんの手作り。」
霖之助「それで?」
霊夢「稀少品(レアもの)。」
まあ、別の世界の、ある人種の人たちなら、喜んで買うでしょうが・・・・。
霊夢「要は、一個一個手作りの、ホームメイドクッキーを売る感覚ね。」
霖之助「手製の陶器を、国宝級と称して売りさばくような感じがするが。」
霊夢「失礼ね。それじゃあ、私が詐欺師みたいじゃないの。」
霖之助「詐欺師というより、ただの押し売りだよ。」
押し売り扱いされるおじいさん。
霖之助「とにかくそんなものは、うちの店には置けないな。」
霊夢「何よ。どんな物でも、二束三文くらいにはなるでしょ?」
霖之助「二束三文にもならないから、置けないと言ってるんだ。」
と、まあ、おじいさんは粘り強く交渉しましたが、結局一つも売れませんでした。
霊夢「む~、どうしたものやら。」
お店で時間を喰ってしまったので、誰にも売れないまま帰らなければならなくなりました。
霊夢「別に、その辺で妖怪を捕まえて、無理矢理・・・・、ってやってもいいんだけど。」
物騒なことをつぶやくおじいさんでした。
・
・
・
山は相変わらずの雪。
おじいさんは案外慣れているので、案外平気ですが。
霊夢「それでも、寒いものは寒いのよ。」
寒い寒いと感じながら、おじいさんは雪の山道を歩いていました。
と、そのときです。
霊夢「ん?」
おじいさんは、ふと、あるものを目にしました。
それは、
レミリア「・・・・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
紫「・・・・・・・・・。」
幽香「・・・・・・・・・。」
一列に並んだ、お地蔵さんたちでした。
お地蔵さんたちは皆、頭に雪が積もっていたりして、非常に寒そうです。
霊夢「なんて、統一性の無いというか、てんでばらばらな並び地蔵なのかしら・・・・。」
おじいさんは、お地蔵さんたちに近づきました。
レミリア「・・・・・・寒いから、早く話を進めて。」
霊夢「あんた、寒いの平気でしょ。吸血鬼なんだし。」
レミリア「吸血鬼だろうが幽霊だろうが、寒いものは寒いのよ。」
なにやら、お地蔵さんの声が聞こえてくるようです。
霊夢「じゃ、お勤めご苦労。」
そんなの気のせいということにして、おじいさんはその場を去ります。
・
・
・
おじいさんはお地蔵さんたちを見捨てて、一人山道を行きます。
しかし、
霊夢「・・・・・・・・。」
おじいさん、なにやら落ち着かない様子です。
それもそのはず、
レミリア「・・・・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
紫「・・・・・・・・・。」
幽香「・・・・・・・・・。」
さっきのお地蔵さんたちが、何故か視界からはずれようとしません。
霊夢「ちょっと、何でついてきてるのよ?」
紫「ぐ~・・・・・・・。」
幽香「すぴ~・・・・・。」
霊夢「寝たふりするな。」
幽香「でも、こっちは寝ちゃってるよ?」
紫「Zzzzzz・・・・・・・」
霊夢「冬眠・・・・・。」
おじいさんは、不思議に思います。
レミリア「雪が触れて寒かったり痛かったりなの。しくしく・・・・・。」
フランドール「晴れたら、灰になっちゃうの。しくしく・・・・・。」
幽香「愛用の傘を忘れてきちゃったの。しくしく・・・・・。」
紫「すぴ~・・・・・・。」
お地蔵さんたちの声が、おじいさんの頭に響きました。
霊夢「見逃しては、くれないわけね。」
レミリア「当たり前よ。」
観念したおじいさんは、
霊夢「霊符『夢想妙珠』!」
新技を、お地蔵さん達に放ちました。
どっか~~ん!!
お地蔵さん達が居た場所は、雪が散り、地肌が現れました。
そして、お地蔵さんたちは、
レミリア「危ないわね~。」
フランドール「何よ、やる気なの?」
幽香「も~、いきなりなにするのよ~。」
紫「ぐ~すかぴ~・・・・・・・。」
無傷です。
霊夢「・・・・・ボム無効か。」
幽香「そのと~り!ラスボスクラスの特権よ。」
レミリア「さあさあ、観念しなさい。」
霊夢「う~ん・・・・・。」
新技も封じられたおじいさんは、
霊夢「仕方ないわね、まったく。」
仕方が無いので、
霊夢「はい、傘。」
お地蔵さん達に、傘を差してあげました。
レミリア「あ~、これで雪に触れなくて済むわ。」
霊夢「もっと厚着しなさいよ。」
フランドール「あ~、これで晴れても大丈夫。」
霊夢「あんたは、あんまり外に出ないように。」
幽香「あ~、これでゆっくり昼寝ができるわね。」
霊夢「家で寝なさい。」
紫「がぴ~・・・・・・。」
霊夢「いい加減、寝てるのを表現するのが難しくなってきたみたいね・・・。」
こころなしか、お地蔵さんたちがよろこんでいるように見えました。
そしておじいさんは、無事家に帰ることが出来ました。
霊夢「・・・・・と、いうわけで。」
魔理沙「あ~?つまり、強盗に遭って、かさを盗られたと。」
霊夢「そうよ。」
魔理沙「ったく、そんなんだから、うちは貧乏なんだよ。」
霊夢「仕方ないじゃない。もう寝る。」
魔理沙「ああ、とっとと寝ろ。」
おじいさんとおばあさんは、お話をしたあと、さっさと寝ることにしました。
魔理沙「空腹は、寝て紛らわせ。」
そして、その夜、
こんこん・・・
霊夢「・・・・う~・・・・?」
誰かが、戸を叩いてるようです。
こんこん・・・
魔理沙「・・・・・・ぐ~・・・・・。」
しかし、おじいさんもおばあさんも、寝たまんまです。
こんこん・・・
霊夢「・・・・・・す~・・・・・・。」
一向に、起きる気配がありません。
こんこん・・・
魔理沙「・・・・・・・・。」
ドガァ!!
なにやら、物騒な音がしました。
霊夢「あ~!?何よ、こんな時間に!」
魔理沙「あ~!?なんだなんだ!」
あわてて飛び起きるおじいさんとおばあさん。
二人は、玄関に向かいます。
すると、
レミリア「ちょっと!どういうことよ!」
フランドール「ふざけないで頂戴。」
さきほどのお地蔵さんが、玄関の前に立っていました。
ずいぶんと、怒っているようですが・・・・。
霊夢「あんたたちこそ、ふざけないでよ!」
魔理沙「今何時だと思ってるんだ。人間様は寝る時間だぜ、まったく・・・・。」
夜遅くに起こされた二人も、随分と怒っているようです。
レミリア「とにかく、この傘!」
お地蔵さんは、傘を見せます。
レミリア「穴が開いてるわ。こんなんじゃ、雪を防げないじゃない。どうしてくれるのよ!」
魔理沙「あ~!?そんなん、私のまごころが、がっちり防いでくれるだろうが!」
レミリア「『魔心』?」
霊夢「間違いないわね。」
フランドール「こっちのは、すぐに折れたわ。こんな不良品渡すなんて・・・・・。」
霊夢「そりゃあ、あんたが壊したんじゃないの?」
魔理沙「もっと、優しく扱えよ。デリケートなんだからな。」
なんて、2体のお地蔵さんと抗議していると・・・。
どか~ん!!
霊夢「うわ!?」
魔理沙「なんだ?」
空の上から、弾が飛んできました。
見ると、
幽香「ちょっと~!?のんびりお昼寝できないじゃないの。どうしてくれるのよ~?」
お地蔵さんがもう一体、現れました。
霊夢「それって、私らと関係ないじゃないの!」
幽香「問答無用よ!」
どか~ん!!
天罰と言わんばかりに、お地蔵さんは、空から弾を降らせます。
霊夢「くそ~・・・。そっちがその気なら・・・。」
と、おじいさんが言ったそのとき、
どがぁ!!
と、家の壁を破る音が。
魔理沙「あ~もう!次から次へと、何だ!?」
そっちを見てみると、
藍「こらぁ!どういうことだ、これは!?」
紫「ぐががががが・・・・・・。」
お地蔵さんを持った、狐がおりました。
霊夢「何の用?」
藍「紫様から、大いびきと歯軋りが発生し始めたんだよ!」
紫「ギリギリギリ・・・・・。」
魔理沙「それとこれと、何の関わりがある!?」
どか~ん!
藍「うおう!?」
霊夢「わ!?」
幽香「来ないの?なら、こっちから・・・。」
霊夢「ちょっと待ってなさい!で、何よ!?」
藍「それもこれも、皆この傘がいかんに決まっている!」
魔理沙「そりゃあ、言いがかりじゃねえか!」
藍「ええい、うるさい!ここで天罰を与えてやるわ!!」
紫「ぐががががががが・・・・・・。」
狐が、二人を襲います。
霊夢「ああああああ、もう!!まとめて片付けてやるわ!!ばあさん!」
魔理沙「お~、がんばれ。」
霊夢「あんたも戦うの!!」
魔理沙「やれやれ。まあ、私の睡眠を邪魔した罪は大きい。」
おじいさんとおばあさんは、戦闘態勢をとります。
魔理沙「ここで、まとめておしおきしてやるぜ!」
レミリア「やる気ね。私に不良品を渡した罪は、そんなものの十倍は大きいわ。」
フランドール「覚悟!」
紫「ギリギリギリ・・・・・・。」
藍「あ~、もう。紫様、うるさい。」
どか~ん!!
幽香「あははははは~!」
藍「あなたは敵なのか?味方なのか?」
幽香「どっちでもいいじゃん。」
藍「よくない!」
魔理沙「仲間割れか?なら、くらえ!」
どど~ん!
藍「ぬう!」
霊夢「こっちも!」
ど~ん!
レミリア「く・・・・。やるわね。」
紫「ぐがあ~~~~~~~~~~・・・・・・。ぐがぁ~~~~~~~~~・・・・・・・。」
フランドール「うおおおおおお!!」
魔理沙「うお!妹君が発狂した!」
と、まあ、こんな感じで、弾幕ごっこは明け方まで続いたそうな。
こうして、正月を豪勢にというおじいさんとおばあさんの目論見は露と消え、
代わりにお地蔵さんたちと弾幕ごっこをするはめになってしまいましたとさ。
霊夢「正月ぐらい、のんびりしたい・・・・・・。」
魔理沙「だから、いつものんびりしてるんじゃないのか?」
おしまい
キャスト
おじいさん 博麗 霊夢
おばあさん 霧雨 魔理沙
お店の人 森近 霖之助
お地蔵さんたち レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、幽香、八雲 紫
狐 八雲 藍
おじいさんとおばあさんは、大変に貧しく、生活は大変なものでした。
どれくらい貧乏かっていうと、正月に餅を買って食べてのんびりすることもできないくらいです。
霊夢「かわいそうなじいさんとばあさんでしたとさ。めでたし、めでたし。」
魔理沙「おい、気持ちはわかるが、勝手に完結させるな。」
そして、大晦日。
おばあさんは、おじいさんを呼びました。
霊夢「なによ~?正月ぐらい、のんびりさせてよ。」
魔理沙「いつものんびりしてるじゃないか。そんなんだから、うちは貧乏なんだよ。」
霊夢「きっと、貧乏神でも憑いているのね。」
魔理沙「いるんなら、さっさと祓ってくれ。で、本題だが。」
霊夢「ん?」
ドサ!
おばあさんは、おじいさんの目の前に、おっきな包みを出しました。
霊夢「何よ、これ。」
魔理沙「まあ、開けてみろ。」
おじいさんは、言われるままに包みを開きました。
すると、その中には・・・・・。
霊夢「・・・・・・・ちょっと。」
魔理沙「何だ?」
霊夢「この物語は、こんなのを売る物語だったかしら?」
魔理沙「あ~?」
どうやら、物語の進行上、問題となるものが入っていたらしいです。
魔理沙「『かさ』を売ってどうこうする話だろ?」
霊夢「そうね。『笠』を売ってどうこうする話ね。」
魔理沙「そういうわけで、作ったわけだが。」
霊夢「これは、『傘』ね。」
魔理沙「あ~?」
中身は、傘だったようです。
魔理沙「何がちがう?」
霊夢「『笠』は頭にかぶる物。『傘』は頭にかざす物。この程度のちがいね。」
魔理沙「つまり、あれか?」
霊夢「どれよ?」
魔理沙「『かさ』を作れと言われて『かさ』を作ったが、本当は『かさ』じゃなくて『かさ』だったってことか?」
霊夢「かさかさ五月蝿い。」
魔理沙「人を虫みたく言うな。」
もう、何がなんだかわかりません。
魔理沙「あ~、もう。どうでもいいから、さっさと売って来い。」
霊夢「どうして、こんなもんわざわざ売ってこなきゃいけないのよ?」
魔理沙「傘を売った金で、餅を買う。そして、今年の正月を豪勢に過ごそうってことだ。」
霊夢「『獲らぬ狸の皮算用』っていうのかしら?」
魔理沙「まあ、ちょっとした手違いでおかしくなってしまったが、『傘』も『笠』も大して変わらないだろ。」
霊夢「・・・兎にも角にも、私がこれを何とかしなきゃ話にならないんでしょ?」
魔理沙「わかってるじゃないか。」
霊夢「じゃ、ぱっぱと行ってきま~す。」
魔理沙「おう。遭難だけはするなよ~。」
こうしておじいさんは、『傘』を売るため、ふもとの町まで出かけることにしました。
・
・
・
外は雪。
そんな中を突き進み、おじいさんは、町にやってきました。
そして、あるお店に、傘を売りつけることにしました。
霖之助「・・・・・で?」
霊夢「そういうことよ。」
おじいさんは、お店の人に事情を説明しました。
すると、
霖之助「断る。」
あっさり断られました。
霊夢「何で?」
すかさずおじいさんは、抗議します。
霖之助「うちは客に物を売る店であって、客から物を買う店じゃあない。」
霊夢「こんな場に出てきても、自分の役割は忘れないわけね。」
霖之助「当然だ。」
霊夢「じゃあ、買ってくれるわよね?」
霖之助「何故、その答えに行き着く?」
霊夢「わからないの?」
霖之助「『傘』だろうが『笠』だろうが、そんな珍しいわけでもないだろう?」
霊夢「でも、それは貴重品よ。」
霖之助「どこがだ?どう見ても、そうには見えないが・・・?」
霊夢「うちのばあさんの手作り。」
霖之助「それで?」
霊夢「稀少品(レアもの)。」
まあ、別の世界の、ある人種の人たちなら、喜んで買うでしょうが・・・・。
霊夢「要は、一個一個手作りの、ホームメイドクッキーを売る感覚ね。」
霖之助「手製の陶器を、国宝級と称して売りさばくような感じがするが。」
霊夢「失礼ね。それじゃあ、私が詐欺師みたいじゃないの。」
霖之助「詐欺師というより、ただの押し売りだよ。」
押し売り扱いされるおじいさん。
霖之助「とにかくそんなものは、うちの店には置けないな。」
霊夢「何よ。どんな物でも、二束三文くらいにはなるでしょ?」
霖之助「二束三文にもならないから、置けないと言ってるんだ。」
と、まあ、おじいさんは粘り強く交渉しましたが、結局一つも売れませんでした。
霊夢「む~、どうしたものやら。」
お店で時間を喰ってしまったので、誰にも売れないまま帰らなければならなくなりました。
霊夢「別に、その辺で妖怪を捕まえて、無理矢理・・・・、ってやってもいいんだけど。」
物騒なことをつぶやくおじいさんでした。
・
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山は相変わらずの雪。
おじいさんは案外慣れているので、案外平気ですが。
霊夢「それでも、寒いものは寒いのよ。」
寒い寒いと感じながら、おじいさんは雪の山道を歩いていました。
と、そのときです。
霊夢「ん?」
おじいさんは、ふと、あるものを目にしました。
それは、
レミリア「・・・・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
紫「・・・・・・・・・。」
幽香「・・・・・・・・・。」
一列に並んだ、お地蔵さんたちでした。
お地蔵さんたちは皆、頭に雪が積もっていたりして、非常に寒そうです。
霊夢「なんて、統一性の無いというか、てんでばらばらな並び地蔵なのかしら・・・・。」
おじいさんは、お地蔵さんたちに近づきました。
レミリア「・・・・・・寒いから、早く話を進めて。」
霊夢「あんた、寒いの平気でしょ。吸血鬼なんだし。」
レミリア「吸血鬼だろうが幽霊だろうが、寒いものは寒いのよ。」
なにやら、お地蔵さんの声が聞こえてくるようです。
霊夢「じゃ、お勤めご苦労。」
そんなの気のせいということにして、おじいさんはその場を去ります。
・
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おじいさんはお地蔵さんたちを見捨てて、一人山道を行きます。
しかし、
霊夢「・・・・・・・・。」
おじいさん、なにやら落ち着かない様子です。
それもそのはず、
レミリア「・・・・・・・・・。」
フランドール「・・・・・・・・・。」
紫「・・・・・・・・・。」
幽香「・・・・・・・・・。」
さっきのお地蔵さんたちが、何故か視界からはずれようとしません。
霊夢「ちょっと、何でついてきてるのよ?」
紫「ぐ~・・・・・・・。」
幽香「すぴ~・・・・・。」
霊夢「寝たふりするな。」
幽香「でも、こっちは寝ちゃってるよ?」
紫「Zzzzzz・・・・・・・」
霊夢「冬眠・・・・・。」
おじいさんは、不思議に思います。
レミリア「雪が触れて寒かったり痛かったりなの。しくしく・・・・・。」
フランドール「晴れたら、灰になっちゃうの。しくしく・・・・・。」
幽香「愛用の傘を忘れてきちゃったの。しくしく・・・・・。」
紫「すぴ~・・・・・・。」
お地蔵さんたちの声が、おじいさんの頭に響きました。
霊夢「見逃しては、くれないわけね。」
レミリア「当たり前よ。」
観念したおじいさんは、
霊夢「霊符『夢想妙珠』!」
新技を、お地蔵さん達に放ちました。
どっか~~ん!!
お地蔵さん達が居た場所は、雪が散り、地肌が現れました。
そして、お地蔵さんたちは、
レミリア「危ないわね~。」
フランドール「何よ、やる気なの?」
幽香「も~、いきなりなにするのよ~。」
紫「ぐ~すかぴ~・・・・・・・。」
無傷です。
霊夢「・・・・・ボム無効か。」
幽香「そのと~り!ラスボスクラスの特権よ。」
レミリア「さあさあ、観念しなさい。」
霊夢「う~ん・・・・・。」
新技も封じられたおじいさんは、
霊夢「仕方ないわね、まったく。」
仕方が無いので、
霊夢「はい、傘。」
お地蔵さん達に、傘を差してあげました。
レミリア「あ~、これで雪に触れなくて済むわ。」
霊夢「もっと厚着しなさいよ。」
フランドール「あ~、これで晴れても大丈夫。」
霊夢「あんたは、あんまり外に出ないように。」
幽香「あ~、これでゆっくり昼寝ができるわね。」
霊夢「家で寝なさい。」
紫「がぴ~・・・・・・。」
霊夢「いい加減、寝てるのを表現するのが難しくなってきたみたいね・・・。」
こころなしか、お地蔵さんたちがよろこんでいるように見えました。
そしておじいさんは、無事家に帰ることが出来ました。
霊夢「・・・・・と、いうわけで。」
魔理沙「あ~?つまり、強盗に遭って、かさを盗られたと。」
霊夢「そうよ。」
魔理沙「ったく、そんなんだから、うちは貧乏なんだよ。」
霊夢「仕方ないじゃない。もう寝る。」
魔理沙「ああ、とっとと寝ろ。」
おじいさんとおばあさんは、お話をしたあと、さっさと寝ることにしました。
魔理沙「空腹は、寝て紛らわせ。」
そして、その夜、
こんこん・・・
霊夢「・・・・う~・・・・?」
誰かが、戸を叩いてるようです。
こんこん・・・
魔理沙「・・・・・・ぐ~・・・・・。」
しかし、おじいさんもおばあさんも、寝たまんまです。
こんこん・・・
霊夢「・・・・・・す~・・・・・・。」
一向に、起きる気配がありません。
こんこん・・・
魔理沙「・・・・・・・・。」
ドガァ!!
なにやら、物騒な音がしました。
霊夢「あ~!?何よ、こんな時間に!」
魔理沙「あ~!?なんだなんだ!」
あわてて飛び起きるおじいさんとおばあさん。
二人は、玄関に向かいます。
すると、
レミリア「ちょっと!どういうことよ!」
フランドール「ふざけないで頂戴。」
さきほどのお地蔵さんが、玄関の前に立っていました。
ずいぶんと、怒っているようですが・・・・。
霊夢「あんたたちこそ、ふざけないでよ!」
魔理沙「今何時だと思ってるんだ。人間様は寝る時間だぜ、まったく・・・・。」
夜遅くに起こされた二人も、随分と怒っているようです。
レミリア「とにかく、この傘!」
お地蔵さんは、傘を見せます。
レミリア「穴が開いてるわ。こんなんじゃ、雪を防げないじゃない。どうしてくれるのよ!」
魔理沙「あ~!?そんなん、私のまごころが、がっちり防いでくれるだろうが!」
レミリア「『魔心』?」
霊夢「間違いないわね。」
フランドール「こっちのは、すぐに折れたわ。こんな不良品渡すなんて・・・・・。」
霊夢「そりゃあ、あんたが壊したんじゃないの?」
魔理沙「もっと、優しく扱えよ。デリケートなんだからな。」
なんて、2体のお地蔵さんと抗議していると・・・。
どか~ん!!
霊夢「うわ!?」
魔理沙「なんだ?」
空の上から、弾が飛んできました。
見ると、
幽香「ちょっと~!?のんびりお昼寝できないじゃないの。どうしてくれるのよ~?」
お地蔵さんがもう一体、現れました。
霊夢「それって、私らと関係ないじゃないの!」
幽香「問答無用よ!」
どか~ん!!
天罰と言わんばかりに、お地蔵さんは、空から弾を降らせます。
霊夢「くそ~・・・。そっちがその気なら・・・。」
と、おじいさんが言ったそのとき、
どがぁ!!
と、家の壁を破る音が。
魔理沙「あ~もう!次から次へと、何だ!?」
そっちを見てみると、
藍「こらぁ!どういうことだ、これは!?」
紫「ぐががががが・・・・・・。」
お地蔵さんを持った、狐がおりました。
霊夢「何の用?」
藍「紫様から、大いびきと歯軋りが発生し始めたんだよ!」
紫「ギリギリギリ・・・・・。」
魔理沙「それとこれと、何の関わりがある!?」
どか~ん!
藍「うおう!?」
霊夢「わ!?」
幽香「来ないの?なら、こっちから・・・。」
霊夢「ちょっと待ってなさい!で、何よ!?」
藍「それもこれも、皆この傘がいかんに決まっている!」
魔理沙「そりゃあ、言いがかりじゃねえか!」
藍「ええい、うるさい!ここで天罰を与えてやるわ!!」
紫「ぐががががががが・・・・・・。」
狐が、二人を襲います。
霊夢「ああああああ、もう!!まとめて片付けてやるわ!!ばあさん!」
魔理沙「お~、がんばれ。」
霊夢「あんたも戦うの!!」
魔理沙「やれやれ。まあ、私の睡眠を邪魔した罪は大きい。」
おじいさんとおばあさんは、戦闘態勢をとります。
魔理沙「ここで、まとめておしおきしてやるぜ!」
レミリア「やる気ね。私に不良品を渡した罪は、そんなものの十倍は大きいわ。」
フランドール「覚悟!」
紫「ギリギリギリ・・・・・・。」
藍「あ~、もう。紫様、うるさい。」
どか~ん!!
幽香「あははははは~!」
藍「あなたは敵なのか?味方なのか?」
幽香「どっちでもいいじゃん。」
藍「よくない!」
魔理沙「仲間割れか?なら、くらえ!」
どど~ん!
藍「ぬう!」
霊夢「こっちも!」
ど~ん!
レミリア「く・・・・。やるわね。」
紫「ぐがあ~~~~~~~~~~・・・・・・。ぐがぁ~~~~~~~~~・・・・・・・。」
フランドール「うおおおおおお!!」
魔理沙「うお!妹君が発狂した!」
と、まあ、こんな感じで、弾幕ごっこは明け方まで続いたそうな。
こうして、正月を豪勢にというおじいさんとおばあさんの目論見は露と消え、
代わりにお地蔵さんたちと弾幕ごっこをするはめになってしまいましたとさ。
霊夢「正月ぐらい、のんびりしたい・・・・・・。」
魔理沙「だから、いつものんびりしてるんじゃないのか?」
おしまい
キャスト
おじいさん 博麗 霊夢
おばあさん 霧雨 魔理沙
お店の人 森近 霖之助
お地蔵さんたち レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット、幽香、八雲 紫
狐 八雲 藍
投下してすぐだけど次回作期待。
ところで、「水戸黄門 実験編」の形式をお借りできないでしょうか?
なんとなく考えているのがあるんですが、書いていいものやら…。
どうぞどうぞ。遠慮なくやっちゃってください。
どんなのになるのか、楽しみです。