レミリアは私の腕の中で、ずっと心地よさそうにしている。
はっきり言おう。心臓に悪い。
せっかくさっき覚悟を決めたと言うのに。
こうやって時間が過ぎていくごとに、心臓の鼓動がまた早くなっていくのがわかる。
胸に顔をうずめている彼女には聞こえているかもしれない。
それとも、わかってやってるんだろうか。
そうだとしたら……なんて意地悪なやつだ。
ねぇ、レミリア?
あ、うん。ごめん。すごく…気持ちよかったから。
…左様ですか。まったく、光栄なことだわ。
じゃあ、いくよ。
彼女が口を開ける。犬歯がのぞく。
私はためらいながらも手を差し出す。
差し出した手は見てわかるほど震えている。
怖いの…?
そりゃあね。
大丈夫、痛くないよ。
……ポイントが違う。けど、言ってもわからないんだろうな。
それじゃ、あらためて…。
こんどこそ、彼女は私の指を口に含んだ。
あたたかいような、冷たいような、
やわらかいような、硬いような、
そんな不思議な感覚。
それとは別に、今まで以上に動悸が激しくなる。
これ以上は、耐えられないかも。
歯を立てる場所を探しているのだろう。少しずつ彼女の口が動いていく。
そして…。
んっ。
刺すような -というか実際刺している- 小さな痛み。
痛かった?
彼女が目で問うた。ような気がした。
ちょっとだけ。
目で答えてみる。
ごめんね。
そういっているのがわかった。驚いた。私は彼女と目で会話ができるらしい。
彼女は目を瞑り、体を寄せた。
と同時に、指から何かが抜けていくような感覚。
まあ何かっていっても血しかないけど。
あ、でも吸血鬼の場合血といっしょに生命力とか吸うのかな。
まあいいや。どうせわかんないし。
やはり指からでは吸いづらいのか、彼女はもう一言も話さない。
『一生懸命』とか、『一心不乱』といった言葉は今の彼女のためにあるのだろう。
赤ちゃんみたいよね。
唐突にそう思った。
もちろん自分に子供などいないし、本物の赤ちゃんを見たことも無い。
ついでに言えば、彼女は御年500歳であり、見た目だって赤ちゃんというには大きい。
けど…。
お母さんと赤ちゃんって、こんな感じなのかしらね……って、
何考えてるの私。
自分で突っ込みを入れる。
いつのまにか動悸は治まっていて、不思議と落ち着いた穏やかな気持ちになっていた。
空いている方の手で彼女の頭をなでる。優しく、ただ優しく。
何でそんな事をしたのかわからない。
ただやってみたかった。それだけ。
彼女は驚いたように目を開いて、私を見上げた。一時、吸血が止まる。
もういいの?
目で問う。
ダメっ!
彼女はそういって -もちろん目で- また血を吸い始めた。
やはり、目で会話ができる。なんてこと。私も人外の仲間入りね。
いや、それよりなんであんなこと聞いたのかしら…。
まあいいか、と思う。今はまあ、いいや。
忘れていた記憶。
いや、実際あるかどうかさえ怪しい、心の奥底にしまわれた記憶。
お母さん…か……。
私は彼女を抱き寄せた。
理由は、ただそうしたかったから。
それで十分だと思った。
はっきり言おう。心臓に悪い。
せっかくさっき覚悟を決めたと言うのに。
こうやって時間が過ぎていくごとに、心臓の鼓動がまた早くなっていくのがわかる。
胸に顔をうずめている彼女には聞こえているかもしれない。
それとも、わかってやってるんだろうか。
そうだとしたら……なんて意地悪なやつだ。
ねぇ、レミリア?
あ、うん。ごめん。すごく…気持ちよかったから。
…左様ですか。まったく、光栄なことだわ。
じゃあ、いくよ。
彼女が口を開ける。犬歯がのぞく。
私はためらいながらも手を差し出す。
差し出した手は見てわかるほど震えている。
怖いの…?
そりゃあね。
大丈夫、痛くないよ。
……ポイントが違う。けど、言ってもわからないんだろうな。
それじゃ、あらためて…。
こんどこそ、彼女は私の指を口に含んだ。
あたたかいような、冷たいような、
やわらかいような、硬いような、
そんな不思議な感覚。
それとは別に、今まで以上に動悸が激しくなる。
これ以上は、耐えられないかも。
歯を立てる場所を探しているのだろう。少しずつ彼女の口が動いていく。
そして…。
んっ。
刺すような -というか実際刺している- 小さな痛み。
痛かった?
彼女が目で問うた。ような気がした。
ちょっとだけ。
目で答えてみる。
ごめんね。
そういっているのがわかった。驚いた。私は彼女と目で会話ができるらしい。
彼女は目を瞑り、体を寄せた。
と同時に、指から何かが抜けていくような感覚。
まあ何かっていっても血しかないけど。
あ、でも吸血鬼の場合血といっしょに生命力とか吸うのかな。
まあいいや。どうせわかんないし。
やはり指からでは吸いづらいのか、彼女はもう一言も話さない。
『一生懸命』とか、『一心不乱』といった言葉は今の彼女のためにあるのだろう。
赤ちゃんみたいよね。
唐突にそう思った。
もちろん自分に子供などいないし、本物の赤ちゃんを見たことも無い。
ついでに言えば、彼女は御年500歳であり、見た目だって赤ちゃんというには大きい。
けど…。
お母さんと赤ちゃんって、こんな感じなのかしらね……って、
何考えてるの私。
自分で突っ込みを入れる。
いつのまにか動悸は治まっていて、不思議と落ち着いた穏やかな気持ちになっていた。
空いている方の手で彼女の頭をなでる。優しく、ただ優しく。
何でそんな事をしたのかわからない。
ただやってみたかった。それだけ。
彼女は驚いたように目を開いて、私を見上げた。一時、吸血が止まる。
もういいの?
目で問う。
ダメっ!
彼女はそういって -もちろん目で- また血を吸い始めた。
やはり、目で会話ができる。なんてこと。私も人外の仲間入りね。
いや、それよりなんであんなこと聞いたのかしら…。
まあいいか、と思う。今はまあ、いいや。
忘れていた記憶。
いや、実際あるかどうかさえ怪しい、心の奥底にしまわれた記憶。
お母さん…か……。
私は彼女を抱き寄せた。
理由は、ただそうしたかったから。
それで十分だと思った。