この日、幻想郷の夜は静かだった。
地面にうずくまっているのは紅白だった少女。
今は赤一色で息をするのがやっとの状態である。
それを見ているのは館の主とそのメイド長。
二人と対峙し、うずくまる少女の傍らに立つのは
闇に映える長い金髪と背中には4枚の漆黒の揺らめく翼を持つ女。
足元には赤いリボンが落ちているた・・・
「って訳なんで、庭借りるから。」
紅白の巫女、博麗霊夢は撃墜したばかりのルーミアを抱えて紅魔館に来ていた。
なんでも気絶している間にリボンの封印を解いてみたくなったらしい。
万が一の事を考え、紅魔館に来たようだ。
「いいわよ。」
館の主、レミリア・スカーレットは簡単に承諾した。
時間帯は夜になったばかり。
7時頃だろうか。
傍らにはメイド長の十六夜咲夜が付き添っている。
ルーミアを庭に寝かせて霊夢が愚痴る
「魔理沙もこればいいのに・・・」
「なんでもパチュリー様と一緒にアリスの屋敷で研究らしいわ」
答えたのは咲夜だった。
「よし、それじゃあ解くわよ!封印解除!!」
パリーーーーーーン!!
その瞬間、夜が一段と濃くなり
パシャっと水を撒いたような音がした。
「ふぅ・・・ありがとう、霊夢。
お礼に殺しはしないわ」
金髪の女はうずくまる巫女に優しく言った。
「な!!・・・・」
驚愕する主人の前に出るメイド長。
主の身を守るためだ。
が、レミリアはメイド長の前に出る。
「宵闇妖怪風情が・・・霊夢から離れなさい!」
「ふふ、そういう貴女は吸血鬼風情ね。」
「なっ!」
主人とルーミアのやり取りの間、咲夜は相手の力量を探っていた。
「(封印されていたのは能力だけじゃなく、知能、外見・・・)」
レミリアは右手をルーミアに向けて
「もう一度言うわ、霊夢から離れなさい。」
スペルカードを使うつもりである。
「あぁ、怖い。お嬢サマ、1つ質問するけど夜の反対は何?」
ルーミアは余裕である。
「そんなの昼に決まってるわ。」
「正解~」
「プレゼントは貴女の命で十分よ」
右手に魔力が集中する。
「プレゼントは貴女の命までは取らない事よ」
レミリアはこの一言で今までに無いプレッシャーを感じた。
パチンと指を鳴らす。
レミリアの突き出した右手の上空の夜が無くなる。
これに気づいた咲夜は咄嗟に時間を止め主人を動かすが、既に光は右腕を撫でていた。
「あっ―――――!!?」
光を浴びたレミリアの右腕が崩れていく。
さらに淡い光がレミリアに降り注ぐ。
いくら時間を止めて主人を移動させても追いつくはずも無く
レミリアは全身を光を受け、その部分がジリジリと焼かれる。
「キャァァーーーー」
その、あまりのショックに崩れこみ震えだす。
とたんに光が消え、夜が戻る。
「そんなに日光が怖かった?」
「お嬢さま!」
咲夜はもっとも傷の深いレミリアの右腕の時間を止めてその崩壊を止める。
「あと、私は宵闇の妖怪じゃないわ」
宵闇妖怪ルーミアは言う
「私は夜」
と
「貴女の能力は時間操作のようね、私の僕になりなさい。そうすればそこの吸血鬼は殺さない。」
「・・・もう一つあるわ。」
「何?」
「貴女が死ねば全て解決よ!」
すかさず時間を止めてルーミアの周囲に銀のナイフを並べる。
時間が動き出せばそれで終わる
はずだった。
「何?」
回避不可のナイフの群れはルーミアをすり抜けていった。
「言わなかったかしら?
私は夜。
霊は切れても夜は切れるかしら?」
ルーミアの前方に無数の夜の塊が浮かび咲夜を穿つ。
「ちぃ!(妹様を呼んでくるか?)」
時を止めて回避するが、こちらの攻撃が通用しない時点で敗北は確定である。
「吸血鬼は夜の眷属
夜の支配を受けるもの」
不意にルーミアが口ずさむ。
震えていたレミリアが硬直する。
「レミリア、霊夢も咲夜も助けてあげるわ」
「え?」
「?(吸血鬼は夜の眷属?・・・まさか!?)」
「咲夜を眷属にしなさい。」
「そんな!」
抗う事のできない命令がレミリアを襲う。
「あ・・・さ、くや・・・」
泣きながら立ち上がり咲夜に一歩ずつ近づく。
必死に抵抗している様が手に取るように判る。
咲夜は主を見捨てて逃げ出すか、ここで主の時間を止めて勝てない戦いをするか一瞬迷った。
「手伝ってあげるわ」
咲夜の迷いを見抜いて彼女の周囲の夜を伸ばして絡め取り、動きを封じる。
「しまった・・・」
「あぁ・・ごめんね咲夜・・ごめんね、ごめんね・・・・・」
歩を進めながら動けない従者に泣きながら謝罪する。
そして
従者の白い喉元に主人の口が触れる
その夜の内に紅魔館のパチュリーを除く住人全てはルーミアの支配下になった。
吸血鬼じゃない霊夢を縛る為に傷を塞ぐ時に夜を混入させておいた。
これで、命令に従わなければ全身に激痛が走る。
「(封印のできる霊夢、時間を止めれる咲夜、紅魔館の兵隊の確保・・・
隙間妖怪は出てこない。
あいつは眠っているはずだ。
眠っている間に夜一色にしてしまえばいい。
そうすれば昼と夜の境界は無くなる。
ならば後の脅威は、星の魔法を操る魔理沙と日、月の魔法を扱えるパチュリー位か・・)」
星と月は夜に輝く。
つまりは夜の力が強ければそれだけ強力になる。
日は夜と対を成す属性である為、お互いに打ち消しあってしまう。
霊夢がルーミアを撃墜する前日
場所はアリスの屋敷である。
研究中に解読不可能な本が出てきたアリスは魔理沙の知り合いに魔法図書館の管理者が居るのを思い出した。
霊夢がルーミアを撃墜した日
屋敷にある本を貸すという条件で管理者・パチュリー・ノーレッジを呼んでもらった。
パチュリーは行きたくないと言ったが、魔界の本が読めるという誘惑に負けてしぶしぶついて来たのである。
「だいぶ解読できたわ。
あら、そろそろ3時ね・・・紅茶でも出すわ」
と屋敷の主、アリス・マーガトロイドが指を鳴らす。
しばらくたってガチャリとドアを開け、紅茶とお菓子をもって人形が入ってきた。
「おい、なんで私の姿の人形があるんだ?」
と魔理沙は自分自身そっくりな人形に紅茶とお菓子を運んでもらいその疑問を口にする。
「貴女の髪の毛が手に入ったからよ」
「おい、呪いでもかける気か?」
「そんな事しないわ。殺る時はこの手で殺るわ♪」
それまで読書をしていたパチュリーが口を開く
「他にも人形はあるのかしら?」
「えぇ、あるわ。持ってきて」
少し嬉しそうにアリスは答えた。
そして霊夢人形が大きなガラスケースを持ってきた。
中にはレミリアや幽々子、チルノなど見知った人物の人形が置いてあった。
「霊夢まであるのかよ・・・
まさか手作りなのか?」
「あたりまえじゃない。
髪の毛が手に入らないと動かないけどね。」
「ふーん(・・・・魔理沙の人形貰えないかな・・)」
「さ、続きをしましょうか」
時間帯は夜になったばかり。
7時頃だろうか。
「あ、この部分詳しく載ってる本はないかしら?」
「あぁ、それなら・・・これね、はい」
っと空間を捻じ曲げて図書館の本棚に繋げて目的の本を取り寄せるパチュリー
「ありがと・・・ふむ、なるほど・・・」
本の解読も佳境である。
魔理沙はふとアリスに尋ねる
「なぁ、髪の毛があると何かあるのか?」
人形の話である。
「あれば、その人物がどんな状態かわかるし、本人の身代わりになったり、会話もできるわ。」
とアリスは自分そっくりな人形を膝に乗せて
「「ただし、自身の髪の毛が入った人形の存在を知ってなければ会話はできないわ。」」
と人形と同時に喋る。
その時である。
突然、霊夢人形の腹部が裂けて倒れたのである。
「「「!!?」」」
3人とも動きが一瞬止まる。
「おい、これって・・・」
最初に言葉を発したのは魔理沙である。
「霊夢が怪我をした?え・・?な、なんでルーミア人形の封印リボンが取れてるの?」
アリスは自分の人形の異変に戸惑っていた。
「落ち着けアリス、お前らしくないぜ」
「宵闇妖怪の封印リボンね・・・封印関連の本でも見てみるわ」
と本を取り寄せる。
「・・・・・・・これじゃないわ、次・・」
と本を取り寄せたが
ぬるりとする。
「何かしら?」
本を取り出すと血で濡れている
「血!!?紅魔館で何か起きてるの?」
「おい、何かおかしくないか?」
「人形を偵察に飛ばすわ。博麗神社と紅魔館でいいわね」
と人形2体を行かせた。
次の日の夜
「霊夢、レミリア」
「「はい」」
「冥界の白玉楼へ行く。霊夢はついて来て。レミリアは留守番ね。」
「「はい、ルーミア様・・・」」
「咲夜、メイド達の準備を」
「はい・・・」
そして冥界・白玉楼
「くぅッ!」
半霊半人の庭師は焦っていた。
メイド達の尋常じゃない人数にではない。
今、敵対している人物に自分の剣技が通用しない事に。
遠く、結界の方では激しいメロディが聞こえていた。
多分宴会好きな三姉妹だろう。
今、その音は止んでいる。
「フフフッどうした?その剣で私は切れないの?」
このままでは幽々子お嬢様も危ない・・・
「これで!!」
ありったけの弾幕を張り、その場から撤退する。
「そっちね・・・」
その弾幕を気にする事無く彼女は後を追う
妖怪桜・西行妖の元に冥界の姫、西行寺幽々子は居た。
「騒がしいわ、何があったの?妖夢」
と庭師の方に振り返る。
「ハァ、ハァ、ハァ・・敵襲です。お嬢様、今すぐお逃げください。」
まったく、この従者は何を言うのか・・・
「貴女が叶わない相手なら私が相手をするわ、下がっていなさい。」
と無数の死蝶を迫ってくる敵へ放つ。
生者が触れれば死を発現する幻の蝶である。
「フフッ綺麗ね。」
幻の蝶は迫り来る敵、ルーミアをすり抜け、後ろに居たメイド達を死へと誘う。
「な!馬鹿な!」
「やはり・・・すみません、お嬢様」
その様子を見て妖夢は幽々子を抱えあげるとすぐさま逃げだす。
「む!」
逃がすものか、とルーミアから黒い弾丸が放たれ、妖夢を穿つ。
「ぐぅッ」
「妖夢!」
「ふふっお終いかしら?」
漆黒の弾幕を止めとばかりに放つ!
が、
「何!!?」
横からの弾幕により、全ての弾を弾かれた。
「誰だ!?」
両者の間に意外な人物が割り込んでいだ。
「妖忌!?」
幽居し、行方を眩ませたはずの先代庭師である。
「妖夢、往けい!!」
返事もせずに一目散に逃げていく妖夢と幽々子。
「本来の得物を持たずにどうするつもりかしら?」
「ふん、今のワシの得物は、これよ・・・」
と隻腕の庭師は2本の刀を抜く。
1振りは傍らを漂う半身である幽霊が握っている。
「西行妖を斬る為に鍛えていたこの二振りの刀、「破リ刀・月蝕」と「封ジ刀・幻日」。存分に楽しんでもらおう。」
「・・・・貴方の相手は私じゃないわ」
と言い、スッと間合いを取り
パチンっと指を鳴らす。
妖忌とルーミアの間の夜が渦巻き
そこから甲冑に身を包み、戦車に乗った騎士が現れた。
「リカルド、お相手なさい。」
「御意」
ルーミアは妖忌の脇を抜けて逃げ出した二人を追う。
「・・・・・・・」
「・・・・・・」
甲冑の男が言葉を発する。
「ふむ、噂に名高い剣豪・魂魄 妖忌が相手とは・・・」
「隻腕のジジイ相手に戦車を持ち出すとは、な」
「ふん、そんな名刀を二振りも持ってて卑怯とは言わせんよ!」
といきなりの突撃である。
当たれば粉砕されるであろうその一撃を
紙一重で避けると、
すれ違いさまに「破リ刀・月蝕」を一閃させる。
ギィン!!
戦車を引いていた2頭の首無し馬の内、1頭の戦車と連結していた馬具を断ち切る。
首の無い馬は嘶いて彼方に走り去る。
「ほほぅ、流石、というべきですな」
剣豪は、刀を構え
「再度、試してみるか?」
と凄む。
馬車を掻き消し
「剣には剣でお相手しよう」
と大振りな剣を構える。
剣の切っ先が斧のようになっている風変わりな大剣である。
「断頭剣、か」
「ご名答。」
お互いに得物を構える。
ルーミアは、逃げた二人を追跡したが、手負いの主従は速度をさらに増し、一気に離されてしまう。
ここまで逃げに徹されると逆に気分がいい。
あの二人なら逃がしてもかまわないか・・・と呟くと散歩するように呼び出した従者の元へ帰っていった。
ギギィィン!ギャン!
火花が散る。
打ち合うこと数十合。
妖忌は二刀流を生かしての攻防隙の無い連撃を繰り出し、
リカルドは必殺の一撃を暴風雨のように振り回し、甲冑を利用した防御で凌いでいた。
「やはり、あの馬車は卑怯だと思うがな。これ程とは、恐れ入った。リカルド殿」
「何を言う、エェイ!!」
ギン!!
両者間合いを取る。
魂魄 妖忌は「破リ刀・月蝕」を鞘に収め、姿勢を低く取る。
半身の幽霊も「封ジ刀・幻日」を構える。
それを見て、
リカルドも大上段に構える。
「・・・・、ゆくぞ」
正に一足。一瞬にして必殺の間合いに入り込む妖忌。
そして一刀。
「隻腕抜刀・一ノ太刀・追閃」
隻腕で、鞘から「破リ刀・月蝕」を抜き放つ!!
同時に半身が一足の速度そのままに「封ジ刀・幻日」で刺突する。
回避不能の斬撃。
妖忌が一足で間合いに飛び込む。
断頭剣・エクスキューショナーが一閃する。
目視では絶対に間に合わない、そのタイミングを感覚だけで読み取る。
「断頭斬・断罪」
どんな強固な物体もこの一撃の前では無意味だろう。
首が飛んだ。
「封ジ刀・幻日」での刺突は甲冑に弾かれてしまったが、
「破リ刀・月蝕」の一振りは騎士・リカルドの首を綺麗に跳ねた。
「まさか、首無し騎士・デュラハンとは・・・な。」
「使わないとはいえ、右肩を犠牲にしてまでの一刀、お見事でした。」
振り下ろした断頭剣は右肩口から垂直に腰に向けて振り下ろされていた。
「ごはッ・・・半身とはいえ、苦しいな。」
拾ってきた兜を脱ぎ、素顔を見せるリカルド。
「刀が完成したら、また死合ましょうぞ。」
「ふふ、次はこうはいかんぞ・・・・」
半身である幽霊が瀕死の半身を連れてゆく。
「さすがね、リカルド。」
と呼び出した主が戻ってきた。
「いえ、噂以上の強さでした。鎧ももう役に立ちません。」
とヒビだらけの甲冑を見せる。
最後の刺突を弾いたのは幸運ともいえた。
この夜、冥界は夜の手に落ちた。
帰ってきた人形達は思わぬ人物を運んできた。
神社で傷だらけで倒れていたらしい。
少し前に事情を説明してもらい、今は眠っている。
「おいおい、あのルーミアが?」
「事実なんだから仕方ないでしょ・・・。」
聞いた話では、紅魔館にルーミアと霊夢が来た事
霊夢はルーミアの封印を解いた事が判った。
「それじゃあ、パワーアップした宵闇妖怪の対策でも練りましょう」
と本を数冊引き出すパチュリー
ちなみにアリスは、この屋敷周辺に人形部隊を巡回させている。
紅魔館の戦力が全て出てくるとしたら夜じゃなければ無理である。
それでも警戒した方がいいという事で昼間から巡回させていた。
その日できた事といえば
各人の人形の作製と操符の使用訓練
火、日、月、星符の使用訓練
などである。
闇系に対抗できそうな符とそれぞれ連絡用に3人が3人の人形を持つ事になった。
夜になりメイドやレミリアをどうするか話し合っていると
「ん?手負いの幽霊?」
屋敷の周辺を巡回していた人形が逃げてきた妖夢と幽々子を発見したのだ。
貴重な情報が得れるとの事ですぐさま招き入れ事情を聞いた。
なるほどと魔理沙達はうなずく。
1、夜突然の襲撃でしかも相手は見知らぬ妖怪
2、その妖怪の最大の特徴は弾幕、剣技など攻撃全てがすり抜けてしまう事。
この2点の情報を得られた。
1はルーミアと判っている。ただし、2から宵闇の妖怪でない可能性が高い。
あとは夜にしか襲撃していない事。
「情報はこれだけの様ね・・・」
アリスがつぶやく。
ちなみに、妖夢は人形達に手当てをうけている。
「だけど、お嬢様が敗北するんだから相手は吸血鬼より上位の力を持つ事になるわね」
あ!
と魔理沙が何かに気づく。
「もしかして夜なんじゃないか?
吸血鬼は夜の支配者。でもその支配は夜という世界の中だけ。
夜は宵闇より上位、夜しか襲撃しないのは、夜しか能力が発揮できないから・・」
他の3人が唖然として魔理沙を見る。
「貴女、頭いいわね・・・」
「なんか、ムカツク言い方だな。」
「それじゃあ、貴女達にも明日の夜は手伝ってもらうわよ」
暗い紅魔館、咲夜は思案していた。
「(お嬢様の負った心の傷は深すぎる。
どうにかしなければ・・・魔理沙達ならルーミアの力を弱めてくれるかもしれない。
そうなれば・・・・今の私なら・・・)」
レミリアも考えていた。
「(咲夜になんて事をしてしまったんだろう・・・どう詫びれば・・・)」
後悔と自責の念で潰れそうだった。
ついに3日目の夜
アリス達6人は3手に別れて待ち構えていた。
すでにメイド部隊と交戦中である。
「しっかし、メイドも多いがこちらの人形も多いな・・・まるで戦争だぜ。」
「もちろん、これが終わったら弁償してもらうからね」
「おしゃべりする暇があるなら人形達の援護して!」
「それにしても妖夢そっくりな人形ね・・・」
「お嬢様のもそっくりですよ」
と皆が各人の人形で連絡を取れるようにしてある。
最大の脅威であろうレミリア対策の水符、日符も用意してある。
ただし、霊体の2人は日符で弱体化しそうなので水符のみである。
「ふむ、3手に別れているな・・・霊夢は魔理沙、レミリアはパチュリー、咲夜はアリスを相手して。」
自分は後方で高みの見物である。
「みつけた!魔理沙!!」
「お、きやがったな、霊夢!」
と、突然弾幕の嵐である。
がお互い慣れているのか簡単に回避する。
「まったく、挨拶が弾幕っておかしいぜ」
「あなたもね」
「パチュリー・・・じゃない!あなた誰?」
「残念ね、私は西行寺幽々子よ。初めまして、幼き赤い月」
「パチェじゃないなら誰でもいいわ、消えなさい、亡霊の姫」
「あれ、羽が生えてる!?」
「仕方なくよ。そういう貴女は半分幽霊」
「今度こそ貴女を斬るわ!」
「あの、私もいるんですけど・・・」
「あぁ、悩みが無い人ね。(二人相手なら時間が掛かってもおかしくないか・・・)」
「霊符・夢想封印・集!!」「魔符・ミルキーウェイ!!」
お互いに手の内を知り尽くした相手である。
が、今回ばかりは魔理沙の方が分が悪かった。
時は夜、霊夢の体内にはルーミアが仕込んだ夜があり、そこへルーミアの力が供給されているのである。
魔理沙は何とか相手のスペルカードを打ち消している状態である。
「次で最後よ!」
「望むところだぜ!」
力が集まり、お互いの手の中にスペルカードが形成され、それを放つ!
「夢符・二重結界!!」「恋符・マスタースパーク!!」
両者のスペルカードは今度も拮抗し打ち消しあうかに思われた、が、
「(押される!?)」
「(ルーミアの奴、力送りすぎだって!抑えれないじゃないの!)」
魔理沙の放ったマスタースパークが押され始めた時、一つの影が霊夢に接近し、掌低を放つ!!
「ぐっ!?」
一瞬の隙ができ、押していたスペルが拮抗状態に戻り、打ち消しあう。
霊夢に一撃を放った人物は、その掌低に鮮やかなスペルカードを形成する。
「彩符」
「極彩颱風!!」
「その程度の死では私は殺せないわよ。」
レミリアは苛立っていた。
対峙している亡霊の姫は牽制する程度で本格的に弾幕を張ろうとしないのである。
打ち出したこちらの弾幕に対し、避けきれない弾にだけ死蝶を放ってその弾を「殺し」ている。
幽々子はレミリアの意識をこちらに向かせるのと、自分が被弾しないようにするので精一杯であった。
「(まったく、むちゃくちゃな作戦ね・・・相手もだいぶ苛立ってるようだし一応は成功の様ね)」
しかし、相手の力は供給されていて無尽蔵、対する自分は冥界じゃないので力の供給がまったく無い状態である。
今ではスペルカードの使用すら困難である。
「これで終わりにするわ。」
相手の力が十分でないのを見抜いた彼女は勝負に出る。
魔力が集まり、その手にスペルカードが形成されていく
「紅符・」
とスペルカードを唱えようとした時、
「レミィ!」
「!?」
「水符・プリンセスウンディネ!!」
一瞬声の方向に気が逸れる。
「水符・プリンセスウンディネ!!」
幽々子と声の方向から同時に水符が発動する。
「水!?」
直撃すると思った瞬間、その水流がレミリアを包み込むように広がり、レミリアを閉じ込める。
「ふぅ~・・・お嬢様、おとなしくしてくださいね」
流水の球体の中でレミリアが口を開く。
「パチェ、ね・・久しぶりにその名前で呼ばれたからビックリしたわ。」
吸血鬼は流れる水を渡れないし、触れれば力を持っていかれる。
そのため、この水の牢獄は吸血鬼にとっては結界と同じである。
これを成功させる為に、パチュリーは今まで隙を窺っていたのである。
「なんでパチュリー以外ならよかったの?」
とさっきまで戦っていた幽々子は聞く。
「何故って、死ぬなら親友の手で死にたいと思ったのよ・・・
でも、生き残った・・・親友のおかげで。」
「お嬢様・・・」
「気をつけてね、パチェあいつは夜そのものと言っていいわ」
ギィィン!
銀のナイフが太刀の一閃を阻む。
「くぅ!!」
剣を振りぬけず、まったく攻撃ができないでいる妖夢。
今の咲夜は吸血鬼化により、人外の身体能力を得た為にできる芸当である。
今回の妨害で妖夢はバランスを崩してしまう。
「しまった・・」
が、そこにすかさず7色の弾幕が張られ、追撃を阻む。
「ちぃ!」
「ふぅ(さっきから受身ばかり・・・何か企んでいる?)」
そこで人形がしゃべりだす。
「アリス、こっちはどうにかなったわ。」
「今それどころじゃなーーい!」
「咲夜は強いから、頑張ってね。」
「(ん?何か喋ってるわね・・・人形?)」
「オンパッキャラマド・・・」
呪文を唱えるとシュルシュルとロープが霊夢を縛ってゆく。
「ふぃ~」
倒れているのは2人
縛られている霊夢と零距離でスペルカードを放った紅 美鈴である。
彼女は紅魔館の門番だが、封印解除の夜レミリアの悲鳴を聞いて庭に行くと、吸血現場を目撃してしまう。
咲夜に「逃げなさい!」と言われ、一目散に逃げたが、追撃を受けて博麗神社に迷い込んで力尽きた所を人形に発見されたのだ。
「しっかし、よく生きてたな霊夢」
「ゲホッ、なんか体の中に入れられて強化されてるからかな?当分動けないけど。」
「中国も丈夫だよな~あんな無茶するなんて」
「一応鍛えてますから・・・右腕一週間は使えませんよ・・・・有給あったかな・・・ハゥゥ」
「さて、それじゃ私は行きますか。」
すっと立ち上がったとき
「魔理沙、大丈夫?」
とパチェ人形が口を開く。
「おぉ、今終わったぜ」
「私は今から進むけど、無事ならいいわ。今どこ?」
「吹っ飛んだ霊夢を追いかけたから結構進んでるな。」
「・・・・魔理沙、あんたそんな趣味が?」
「ち、違うぞ!これはアリスの趣味だ。お前の人形もあったんだからな!」
「・・・・・・はぁ、どうでもいいわ。早く終わらせてね。」
「あぁ、任されたぜ。」
「あら?」
「お?」
黒い魔女が近くで止まる。
「一つ聞くが、両手広げて「そーなのかー」って言いそうな妖怪見なかったか?」
「いいえ、見てないわ」
「そうか」
「目の前にその妖怪がいたら?」
「撃ち落すぜ」
と言い終わる前にレーザーを放つ魔理沙。
避ける間もない必殺の奇襲も、虚しく体をすり抜ける。
「霊夢を倒せたのね」
「ふむ、すり抜けたか・・・情報通りだな。」
「年上の話は聞くものよ」
と両腕を広げて漆黒の弾幕を張る。
「ヌルイぜ!」
「じゃあ、これはどうかしら?」
と揺らめく4枚の翼を羽ばたかせ、魔理沙目掛けて一気に伸ばす。
「宵闇の翼か?直線的過ぎだぜ!」
余裕でやり過ごそうとした。
「甘いわ」
直進してきた4枚の翼がカーブを描き、魔理沙を貫こうとする。
「うわ!」
多少、驚くも危なげ無くこれを回避する
伸びていた翼は掻き消えて背中に新しい翼が揺らめく。
「まるで巨大な手だな・・・」
「宴は始まったばかりよ」
本当にルーミアかよ、と悪態をつきたい気分になった。
手元に残してある戦力は、日符、恋符、魔符それぞれ1回分である。
「これもすり抜けるか?」
掲げた手に魔力が集まり、スペルカードを形成する。
「魔符・ミルキーウェイ!!」
天の川の名の通り、莫大な量の星が氾濫したかの様にルーミアに降り注ぐ。
「ちぃ!」
やはり、星の魔法は効果があるのか、舌打ちし
「夜符・ナイトバード!!」
とスペルカードで迎撃する。
「いまだ!パチュリー!!」
相殺した瞬間に魔理沙が叫ぶ。
「!!?」
すかさず振り返り、奇襲に対処しようとする。
が、
「嘘だぜ!」
間近に迫った魔理沙は両手に魔力を集中させる。
「今命名したぜ!
日&恋符・ロイヤル・スパーク!!」
日光の力を持つ極大レーザーがルーミアを襲う。
「あ゛ッ!!!」
さすがに避けきれず、右腕と胸から下全部を持っていかれるルーミア
「やったか?」
落ちていくルーミアを見てつぶやく。
弾幕を避けながら妖夢がアリスに聞く。
遠くの夜空が一瞬明るくなる。
「ルーミアの方は大丈夫なんですか?」
「今頃は魔理沙が相手をしているはずよ。パチュリーもそろそろ追いつく頃かも」
しかし、自分達は目の前の相手を倒せずにいる。
それでもアリスには秘策がある。
”ルーミアを倒す”この目的を達成する為の秘策であるが故に、妖夢を犠牲にしなければならなかった。
「反則だぜ・・・」
落ちていくルーミアに夜が集まり、体を修復する。
全てのスペルカードを使い切った一撃だった
「さすがに死んだと思ったわ」
「名前をシャイ○・スパークにしとけばよかったか?」
「かもね」
レミリア、咲夜、幽々子らが敗北、逃走したのは効果のある属性を持ち得なかったからだと思っていた。
そして、現にそうであった。
星、日、試してはいないが月符も効果はあるであろう。
しかし、夜である限り死なないとは思いもしなかった。
「ふふ、震えているわね」
「武者震いだぜ」
とルーミアの弾幕を回避する。
ルーミアも、相手が先ほどのスペルで切り札を使い切ったことが判っていた。
「ほらほら、避けないと殺すわよ」
次第に弾幕が濃くなってくる。
「パチュリー!」
「ふん、2度も引っかかると思ったの?」「火符・アグニレイディアンス」
「へ?」
と第三者がスペルカードを放ってきた。
今回も回避が遅れてしまい、両足を焼かれる。
「お待たせ、魔理沙」
「助かったぜ」
「よくも私の魔理沙を・・・」
「(何かセリフがおかしい様な・・・)」
「今度は本当だったのか・・・騙すなんて卑怯だぞー」
既に両足は再生している。
「イヤ、騙してないだろ今のは」
「夜だから再生するのかしら?本に載ってなかった事だわ・・・」
「パチェ、スペルカードの余分はあるか?」
「えぇ、火符でいいかしら?」
「サンキュー」
「もうおこったぞー
月符・サイレントセレナ!!」
「月符・サイレントセレナ!!」
またったく同じ符、同じスペルカードである。
しかし、漆黒の揺らめく翼がパチュリーを襲う。
「危ない!」
鋭い一撃がパチュリーを掠める。
すかさず
「火符・アグニシャイン!!」
「むぅ~」
今度は回避するルーミア
パチュリーはルーミアと対峙する。
喘息の調子はいいようだ。
手が開いた魔理沙はアリス人形に向かって
「聞こえるか?アリス!」
「(ん、強制力が弱まった?)」
先ほどとは威圧感が薄れたように思える。
「妖夢」
不意にアリスが口を開く。
「一人でしばらく時間を稼いでくれる?」
例の秘策を使うのだろう
「わかった」
返事の後、魔理沙人形がしゃべりだす。
「聞こえるか?アリス!」
「えぇ」
「そろそろ準備しておけよ!」
「判ってる。」
なぜか咲夜からの弾幕はゆるい。
そして、こちらの行動を窺っているようにも見える。
「(あの人形が必要ね・・・でもお嬢様は誰の所にいるのかしら)」
考えていると妖夢が弾幕を強めている。
「獄界剣・二百由旬の一閃!!」
「幻世・ザ・ワールド!!」
時間を止めてこの剣技をかいくぐる。
「アリス、行って!」
アリスの秘策とは、先日読み解いた魔術書にあった魔法で
AとBの位置を交換するという移転魔法である。
「すぐに終わらすわ、耐えてね妖夢。」
アリスが消えた後、その場所にはアリス人形が現れた。
咲夜はアリスが移動した後、時を止めて妖夢に詰め寄り、聞いた。
「お嬢様とは誰が戦ったの?」
魔理沙が人形達を投げる。
「パチュリー、アリスが来たぞ!」
反応して、周囲の気配を窺うルーミア
「(今度は・・・嘘!)」
背中の揺らめく翼が吹き上がる!
「闇符・ディマーケイション×2!!」
パチュリー、魔理沙に向けて同時にスペルカードを放ってきた。
「かかった!」
「日符+咒詛・日向の首吊り蓬莱人形」
投げた人形の内、アリス人形がアリスと交代したのである。
ルーミアの頭上から光の弾幕が広範囲にわたって降り注ぐ。
しかし、ルーミアは被弾しながらもすぐさま夜で修復していく。
そこに、
「日符・ロイヤルフレア!!」
光がルーミアを完全に捕らえた!
「・・・・解かってても萎えるな」
「えぇ。」
「こ、こんなの聞いてないわよ」
が、
夜なのですぐさま修復が始まる。
肉片が一欠けらも残らなくても、この世に夜がある限り存在し続ける。
それが夜・ルーミアの真の恐ろしさであった。
「幽々子?お嬢様に変わって!」
妖夢に事情を話し人形を使いレミリアと会話する。
「何、咲夜?」
「そろそろルーミアの強制力が弱まるはずです。
いますぐ私に力の供給をしてください。」
「わ、わかったわ。」
吸血鬼は自分の眷属から力を(この場合は吸血して得た力を)採取できるが、逆に眷属に力を送り込む事もできる。
「(これなら・・・いける!)」
「送っているけど・・・何をする気?」
そして、一気にルーミアの力が減少した。
「この、幻想郷の時間を4日分巻き戻します!!」
「あ~ぁ、暇ねェ・・・」
博麗神社の巫女、博麗霊夢はとても退屈だった。
ちょっかい出してくる魔理沙が出かけているからである。
「あ、でもそろそ時間か」
先日、咲夜にお茶をご馳走すると言われたのである。
なぜか時間は夜だったが。
紅魔館までは少し遠い。
どうせなら昼間によんでくれればいいのに・・・と愚痴をいいながら飛んでいると
「れいむー」
宵闇妖怪のルーミアだ。
相変わらず単純そうである。
「どこいくの?」
「紅魔館までお茶しにね。」
ふと、霊夢は閃いた。
「一緒にくる?」
「うん、いく~」
門番である紅 美鈴が
「あれ、何でルーミアさんが?」
聞いていた人数じゃなかったので呼び止めた。
そこへ
「いいわ、招待してあげて。それと今夜は美鈴もきなさい。」
とメイド長が現れた。
「ありがと~」
「は、はい!」
「こんばんわ、メイド長」
「(ふぅ、成功のようね。)それじゃ、案内するわ」
原因である暇すぎてルーミア撃墜を無くせばあんな事にはならない。
運命操作にも近い事をやってのけたのはレミリアの力のおかげだろうか?
「あ、メイド長」
と案内しようと歩き出した時、霊夢が
「ルーミアをメイド見習いで雇ってみない?」
と言い出した。
「はぁ?」
「招待されたのは、私だけでしょ?ルーミアはお茶代払えそうに無いから
(それを見学しにいけばだいぶ楽しめそうだしね)」
やれやれ、おかしな方に話が進んでるけど
「(それもいいかな・・・)」
と思う自分がいた。
この日も、幻想郷の夜は静かに過ぎてゆく
-終り-
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◆もう一つの結末。
吸血鬼は自分の眷属から力を(この場合は吸血して得た力を)採取できるが、逆に眷属に力を送り込む事もできる。
「(これなら・・・いける!)」
「送っているけど・・・何をする気?」
そして、一気にルーミアの力が減少した。
「この、幻想郷の時間を4日分巻き戻します!!」
吸血鬼となり力が増加し、さらにレミリアから力を供給され、できるはずの無い「時間の逆行」すら可能になった咲夜。
しかし、その「時間の逆行」を発現させる前に文字通り「光の制裁」が加えられた。
妖夢はその瞬間、何もできず、ただ
「あっ!!!?」
と一言発するだけだった。
魔女3人の攻撃で夜の力が弱まった瞬間、
皮肉にも増大した咲夜の力を感じ取ったルーミアが咲夜の周囲の夜を消し去ったのだ。
それにより、昼が発現し、陽光により咲夜は灰になった。
「けほっけほっ・・・私の日符でも無理だなんて・・・」
完全に全身を吹き飛ばしたのに、夜が集まり、ルーミアの体は元に戻ってゆく。
「パチュリー、大丈夫か?・・・ん、なんだこの魔力は?」
遥か後方で巨大な魔力を感じ取った。
「あの方角は私がいた場所ね。
となると魔力の主は、メイド長か庭師ね。」
この発言に反応したのは他ならぬ、ルーミアだった。
「裏切りには・・・制裁を!!」
復元が終わったルーミアは片手を頭上に掲げた。
「!!!」
3人は驚愕した。
魔力の発生元に陽の光が現れたのだ。
それと同時に魔力も消え去る。
パチュリーの持っている妖夢人形がしゃべりだす。
「さ、咲夜が灰に・・・」
聞こえていたのかルーミアがつぶやく。
「フフフ・・・当然の結果よ。」
そして、3人を見る。
「火符は牽制程度にしか使えないな・・・
パチュリー、アリス、日符は何回使える?」
「ん、そうね・・・符が持てば4回は撃てるわ。」
「使い慣れない符だから、後3回かな」
「相談はすんだ?」
と問答無用とばかりに漆黒の弾幕を張るルーミア。
「焦げろ!火符・アグニシャイン!!」
弾幕同士が相殺する。
しかし、判っていたのかルーミアは弾幕の後ろからレーザーを放つ。
「つっ・・・」
紙一重でそれを回避し、ルーミアの下側に潜り込もうとする。
「む!」
と後を追うようにレーザーを放とうとしたが、
「日符+操符・日出国の市松人形!!」
いつの間にか左方向に回り込んでいたアリスにスペルカードを撃たれてしまう。
呼び出された人形から、日本刀の様に曲線を描くレーザーが何発も発射される。
アリス自身からは巨大な魔力弾がばら撒かれる。
必死に回避するが、曲がるレーザーに惑わされて、結局左片腕が消し飛んでしまうが気にしない。
「その人形、邪魔。」
残った右腕を突き出して握る。
ベキィッ
と変な音と共に、人形数体が砕ける。
復元した左腕を突き出して握る。
「ちぃッ」
アリスは突然急上昇する。
夜が伸びてアリスに迫っていた。
人形もこの夜に握り潰されたのだ。
「日符・ロイヤルフレア!!」
「火符・アグニレイディアンス!!」
意識が上に向いた隙を狙って
ルーミアの前方と下方からのスペルカードによる十字砲火である。
「3人いるからって、調子にのるなァ!」
背中の漆黒の揺らめく翼が全身を覆い、全方位に向かって弾けた。
夜を照らす炎も、闇を切り裂く光も、漆黒の衝撃が相殺する。
再び漆黒の翼がルーミアの背中に燈る。
「見せてあげるわ。真に暗き夜を。」
3人と距離をとり、胸の赤いリボンをほどいて右手に持つ。
「暗剣・黄昏!!」
その右手にもったリボンに夜が集まり、一振りの剣を形作る。
背中の4枚の翼と同じく、炎のように揺らめく漆黒の剣である。
動くたびに剣から夜が舞い散る。
「まったく、接近戦だなんて・・・」
魔女3人は接近戦は不得意である。
「アリス、人形は?」
「だめ、さっき破壊されたから・・・」
「きたわ!」
弾幕を張りながらルーミアが接近してくる。
「死になさい!」
と漆黒の剣を振るい、パチュリーに対して弾幕を張る。
「やっかいね」
と言いつつ、月符で弾幕に対抗するパチュリー。
「まったくだぜ」
返事をしつつ、火符で牽制する魔理沙。
「無駄よ」
迫る炎を剣の一振りでかき消し、
「お返し!闇符・ディマーケイション」
と返す刃でスペルカードを放つ。
そこに
「隙あり!」
背後からのスペルカードがルーミアを襲う。
「日符・ロイヤルフレア!!」
人形を失ったアリスの渾身の一撃である。!
しかし、ルーミアに届く前に霧散する。
「!?」
驚愕するアリスの方を振り向き、クスッと笑い、
左手をアリスに突き出して軽く握る。
「ぐッ!?」
夜が伸びてアリスの顔、喉、両腕、胸、腹部、腰、両足に巻きつく。
「バイバイ♪」
とその左手を硬く握った。
「――――ッツ!!!!」
いやな音がして
アリスが地上に落下してゆく。
操り人形の紐を切ったように。
「幽々子さまー」
半霊の庭師が一着の服を持ってきた。
「どうしたの?妖夢」
「・・・・その服は咲夜のメイド服!?
一体どうして?」
「先ほどの光で・・・・」
水流の中でレミリアは静かに泣いた。
「あぁ、何故こんな・・・」
「レミリア・・・」
そこにもう1組がやってくる。
簀巻きになった霊夢を担いだ美鈴である。
「レミリア様!」
「今はそっとしておいて・・・」
と幽々子が言う。
「でも、どうしてこっちに?」
「光が差し込んだのを見て、紅白が騒ぐから・・・」
「だって、日光なんかに当たったら灰に・・・ってそのメイド服!?」
無言で頷く妖夢
それを見て、そう・・・と答えて霊夢は黙ってしまった。
「あと、二人」
「ア、アリス!!!!!」
「とっておきよ。
日符+月符・・・」
「遅い」
背中の揺らめく漆黒の翼を吹き上げて一気に加速して接近し、胴を凪ぐ。
避けようと身を引くが
「げほっ」
血を吐くパチュリー。
腹部からも大量に出血している。
それでも魔女の意地かスペルカードを完成させる。
「白夜に昇る満月!!」
複数の月符の大小様々な弾が低速と高速で発射され、細かい日符のレーザーが雨のように降り注ぐ。
巨大な弾に当たったそれぞれのレーザーは分裂し、角度をランダムに変え、瞬く間に周囲に光の蜘蛛の巣を張り巡らす。
予測不可能な光の弾幕を至近距離でまともに被弾してしまう。
パチュリー自身も、符の反動で吹き飛んで浮いていられないのか、
墜落しそうになるが、魔理沙に抱きとめられ、地上に降りる。
「ま・・魔理沙・・・・ごほっげふっ・・」
「パチュリー!」
「はぁ、はぁ、あ、後1回は、使えるわ・・・後・・・」
復元するまでのわずかな時間に日符を渡し、少し話しをする。
「・・・・そんな事できるか!」
「げほッそれにまだ、何かある、みたいだから・・・気をつ・・け・・・」
「お、おい、パチュ・・・リ」
まだ辛うじて息がある少女を寝かせて
渡された日符を握り締める。
「さすがに驚いたわ。日符と月符を組み合わせるなんてね。」
復元が終了したルーミアが上空から魔理沙を見る。
「パチュリーは気がついていたようだから、先ほどのスペルカードのお礼に良い事をあげるわ。」
再度構成した漆黒の剣で大きく円を描く。
夜よりも暗い黒が環状になって夜空に広がる。
「ちなみに、さっきアリスのスペルを防いだのもコレよ。
これは・・・もう、年上の話は聞くものよ」
と逃げる魔理沙にレーザーを放つ。
「っう」
丁度振り返ったので、回避行動に移ったが、左腕に掠ってしまった。
血が滴り落ちる。
「フフフ、追いかけっこ?」
と魔理沙の後を追う。
地面すれすれを高速で飛行し、蛇行したり、急に曲がったりしている。
たまに漆黒の弾丸で牽制して、この追いかけっこを楽しむ。
しかし、反撃すらせずに、ただ飛び続ける魔理沙に対して次第に興味を無くし、再度レーザーを放つ。
「きゃッ!」
箒に当たってバランスを崩して転倒する。
左腕からの出血は止まっていない。
「あはははっ、今のは面白かったわ。」
でも、と続ける
「これで、終わらせるわ。」
揺らめく4枚の翼を広げ、漆黒の剣を魔理沙に突き出す。
「黒夜・真に暗き夜!!」
ルーミアの体から黒が噴出す。
箒を構えて、防御体制をとる。
あたり一面を完全に覆ってしまう。
「何も、見えない!?」
「どうかしら?原初の夜は。」
「原初の・・・夜?」
「そうよ、最初は星なんて無い。光すら無い。
この他に存在しない夜こそが、最初。
・・・まったく、昼なんて私より後に来たくせに世界の半分を持っていくんだもの・・・
それに昼がいるから境界なんてできるのよ・・・」
「(・・・・なんか、愚痴ってるな・・)」
「さぁ、原初の夜に溺れなさい!」
と弾幕を張る。
「くぅぅぅ!!」
見えなければ防ぐしかない。
防御障壁を展開して、なんとか防ぐ。
「ふぅん、防げるのね・・・でも、この剣はどうかしら?」
と、黄昏と呼ばれる剣を構える。
魔理沙は魔力を広範囲に展開して、ルーミアの来る方向とタイミングを伺う。
「ふッ!!」
剣を構えたルーミアが接近する。
展開した魔力に反応がでる。
真正面からである。
その方向に向けて話す。
「ルーミア、なんで私の左腕の出血が止まっていないのか気にならない?」
ルーミアの動きが止まる。
「・・・何?」
「血液ってのは、それだけで力がある。
それが、力ある魔女の血ならば、高純度の魔力にも匹敵する・・・」
「それが?今の貴女には使い慣れていない日符のみ。
貴女を最後にしたのは、まったく脅威じゃないからよ」
と一歩近づく。
「日符しかないなんて誰が言った?
それに、この場所に覚えが無いのか?」
「・・・・ここは・・・追いかけっこの開始地点!?」
「そう、ここは中心。
私一人では無理な事も、ここでならできる!
聞こえたな、パチュリー!」
横たわっていたパチュリーが微かに返事をする。
「私の血で起動しなさい・・・恋符!!」
大地に血液で描いた巨大な恋符。
起動するだけで、今の魔理沙の魔力ではカラになってしまうが
パチュリーの血を使って巨大な恋符が起動する。
「ルーミア、教えてやるぜ。恋符はな、単なる増幅器なんだぜ!」
「!!!!」
「恋符+日符!!」
いくら夜があれば復元できるとはいえ、こんな巨大な恋符で増幅された日符なら
「眩き白!!」
黒一色だった世界が一瞬にして白一色の世界になる。
術者をも巻き込んで白い光は立ち昇る。
しばらくしてあたりは夜に戻る。
それと共にルーミアが復元する。
「ハァ、ハァ・・・朝が近かったら、やばかったかな・・・」
しかし、最大の脅威であった3人の魔女を葬り去った。
「さて、レミリア達を回収するか・・・」
パチンと指を鳴らす。
集まっていた5人の内、レミリアと霊夢が突如夜に包まれる。
ルーミアの左右に黒い球体が膨らむ。
中からレミリアと霊夢が現れる。
「二人とも、見ていなさい・・・これで終りよ。」
と暗剣・黄昏で円を描く。
そして、なにやら唱え、その円に剣を突き立てる。
「召喚・黒き深淵の顎!!」
先ほどまで、レミリア達が居た上空で突如、3ヶ所の夜が渦を巻く。
最初に美鈴が気がついた。
「空が!」
2ヶ所の渦の中から、巨大な「何か」が現れ、降りてくる。
真ん中の渦から何本もの黒い触手のようなものが現れ、3人を襲う。
「下がってください、幽々子様!!」
「天神剣・三魂七魄!!」
「彩符・極彩颱風!!」
現れた巨大な2つの「何か」に同時にスペルカードが叩き込まれる。
一部の触手を吹き飛ばしたが、1つの傷口から2本の触手が再生し、倍の数の触手が3人を襲う。
「キャァァアア!!」
3人を絡み取ると
その3つの「何か」が突然止まった。
その後、暫くの間動く事は無かった。
遠くそれを眺めていたルーミアは
「よし、食べていいわよ」
と一言つぶやく。
2つの「何か」が動き出す。
3人を挟み込むように・・・・・
「後は魔界ね・・・・」
最大の脅威であった魔女3を消し去ったルーミアは、魔界に対して「切り札」を使うことにした。
「レミリア、フランを屋敷の外の世界に招待するわ。」
全てを破壊する悪魔の妹も、陽光という恐怖に支配されていた。
姉に連れてこられた「切り札」に
「魔界へいってらっしゃい。」
と外出許可を出す。
ルーミアは魔界の神を倒すのではなく、フランドールの破壊衝動とその力を極限まで増幅させて
魔界そのものを破壊する策にでた。
1羽のコウモリが魔界の上空にいるフランにささやく。
「やりなさい。」
「ぅん。アハはハハハ・・・ゥふフ・・・フハハ・・ヒヒ・・・」
極限まで高められた破壊衝動により既に自我が崩壊しかけている。
それでも破壊する術は心得ている。
狂喜の表情でそれを行動に移す。
「禁忌」
所持している札に暴力的な魔力が送られ、破壊の術式が発動しその手にスペルカードが形成される。
「レーヴァテイン!!」
想像を絶する魔力量により、普段は振るうはずの炎の剣は出現せず、
フランドールの遥か上空より、巨大な炎の柱が降りてくる。
全体を見れば、一本の剣を象っているが地上からでは、燃える空が降ってくるようにしか見えない。
この一撃で魔界の中心部は消滅し、余波で全土が壊滅した。
フランドール自身も巻き込まれてしまった。
「お掃除は終了♪」
ルーミアは紅魔館でそうつぶやいた。
この幻想郷には夜しか無い。
遥か太古に昼と夜に2分された世界を取り戻したのだ。
「次は・・・人間界ね、フフフ」
夜・ルーミアは止まらない。
全てを夜で染めるまで。
―終わり―
地面にうずくまっているのは紅白だった少女。
今は赤一色で息をするのがやっとの状態である。
それを見ているのは館の主とそのメイド長。
二人と対峙し、うずくまる少女の傍らに立つのは
闇に映える長い金髪と背中には4枚の漆黒の揺らめく翼を持つ女。
足元には赤いリボンが落ちているた・・・
「って訳なんで、庭借りるから。」
紅白の巫女、博麗霊夢は撃墜したばかりのルーミアを抱えて紅魔館に来ていた。
なんでも気絶している間にリボンの封印を解いてみたくなったらしい。
万が一の事を考え、紅魔館に来たようだ。
「いいわよ。」
館の主、レミリア・スカーレットは簡単に承諾した。
時間帯は夜になったばかり。
7時頃だろうか。
傍らにはメイド長の十六夜咲夜が付き添っている。
ルーミアを庭に寝かせて霊夢が愚痴る
「魔理沙もこればいいのに・・・」
「なんでもパチュリー様と一緒にアリスの屋敷で研究らしいわ」
答えたのは咲夜だった。
「よし、それじゃあ解くわよ!封印解除!!」
パリーーーーーーン!!
その瞬間、夜が一段と濃くなり
パシャっと水を撒いたような音がした。
「ふぅ・・・ありがとう、霊夢。
お礼に殺しはしないわ」
金髪の女はうずくまる巫女に優しく言った。
「な!!・・・・」
驚愕する主人の前に出るメイド長。
主の身を守るためだ。
が、レミリアはメイド長の前に出る。
「宵闇妖怪風情が・・・霊夢から離れなさい!」
「ふふ、そういう貴女は吸血鬼風情ね。」
「なっ!」
主人とルーミアのやり取りの間、咲夜は相手の力量を探っていた。
「(封印されていたのは能力だけじゃなく、知能、外見・・・)」
レミリアは右手をルーミアに向けて
「もう一度言うわ、霊夢から離れなさい。」
スペルカードを使うつもりである。
「あぁ、怖い。お嬢サマ、1つ質問するけど夜の反対は何?」
ルーミアは余裕である。
「そんなの昼に決まってるわ。」
「正解~」
「プレゼントは貴女の命で十分よ」
右手に魔力が集中する。
「プレゼントは貴女の命までは取らない事よ」
レミリアはこの一言で今までに無いプレッシャーを感じた。
パチンと指を鳴らす。
レミリアの突き出した右手の上空の夜が無くなる。
これに気づいた咲夜は咄嗟に時間を止め主人を動かすが、既に光は右腕を撫でていた。
「あっ―――――!!?」
光を浴びたレミリアの右腕が崩れていく。
さらに淡い光がレミリアに降り注ぐ。
いくら時間を止めて主人を移動させても追いつくはずも無く
レミリアは全身を光を受け、その部分がジリジリと焼かれる。
「キャァァーーーー」
その、あまりのショックに崩れこみ震えだす。
とたんに光が消え、夜が戻る。
「そんなに日光が怖かった?」
「お嬢さま!」
咲夜はもっとも傷の深いレミリアの右腕の時間を止めてその崩壊を止める。
「あと、私は宵闇の妖怪じゃないわ」
宵闇妖怪ルーミアは言う
「私は夜」
と
「貴女の能力は時間操作のようね、私の僕になりなさい。そうすればそこの吸血鬼は殺さない。」
「・・・もう一つあるわ。」
「何?」
「貴女が死ねば全て解決よ!」
すかさず時間を止めてルーミアの周囲に銀のナイフを並べる。
時間が動き出せばそれで終わる
はずだった。
「何?」
回避不可のナイフの群れはルーミアをすり抜けていった。
「言わなかったかしら?
私は夜。
霊は切れても夜は切れるかしら?」
ルーミアの前方に無数の夜の塊が浮かび咲夜を穿つ。
「ちぃ!(妹様を呼んでくるか?)」
時を止めて回避するが、こちらの攻撃が通用しない時点で敗北は確定である。
「吸血鬼は夜の眷属
夜の支配を受けるもの」
不意にルーミアが口ずさむ。
震えていたレミリアが硬直する。
「レミリア、霊夢も咲夜も助けてあげるわ」
「え?」
「?(吸血鬼は夜の眷属?・・・まさか!?)」
「咲夜を眷属にしなさい。」
「そんな!」
抗う事のできない命令がレミリアを襲う。
「あ・・・さ、くや・・・」
泣きながら立ち上がり咲夜に一歩ずつ近づく。
必死に抵抗している様が手に取るように判る。
咲夜は主を見捨てて逃げ出すか、ここで主の時間を止めて勝てない戦いをするか一瞬迷った。
「手伝ってあげるわ」
咲夜の迷いを見抜いて彼女の周囲の夜を伸ばして絡め取り、動きを封じる。
「しまった・・・」
「あぁ・・ごめんね咲夜・・ごめんね、ごめんね・・・・・」
歩を進めながら動けない従者に泣きながら謝罪する。
そして
従者の白い喉元に主人の口が触れる
その夜の内に紅魔館のパチュリーを除く住人全てはルーミアの支配下になった。
吸血鬼じゃない霊夢を縛る為に傷を塞ぐ時に夜を混入させておいた。
これで、命令に従わなければ全身に激痛が走る。
「(封印のできる霊夢、時間を止めれる咲夜、紅魔館の兵隊の確保・・・
隙間妖怪は出てこない。
あいつは眠っているはずだ。
眠っている間に夜一色にしてしまえばいい。
そうすれば昼と夜の境界は無くなる。
ならば後の脅威は、星の魔法を操る魔理沙と日、月の魔法を扱えるパチュリー位か・・)」
星と月は夜に輝く。
つまりは夜の力が強ければそれだけ強力になる。
日は夜と対を成す属性である為、お互いに打ち消しあってしまう。
霊夢がルーミアを撃墜する前日
場所はアリスの屋敷である。
研究中に解読不可能な本が出てきたアリスは魔理沙の知り合いに魔法図書館の管理者が居るのを思い出した。
霊夢がルーミアを撃墜した日
屋敷にある本を貸すという条件で管理者・パチュリー・ノーレッジを呼んでもらった。
パチュリーは行きたくないと言ったが、魔界の本が読めるという誘惑に負けてしぶしぶついて来たのである。
「だいぶ解読できたわ。
あら、そろそろ3時ね・・・紅茶でも出すわ」
と屋敷の主、アリス・マーガトロイドが指を鳴らす。
しばらくたってガチャリとドアを開け、紅茶とお菓子をもって人形が入ってきた。
「おい、なんで私の姿の人形があるんだ?」
と魔理沙は自分自身そっくりな人形に紅茶とお菓子を運んでもらいその疑問を口にする。
「貴女の髪の毛が手に入ったからよ」
「おい、呪いでもかける気か?」
「そんな事しないわ。殺る時はこの手で殺るわ♪」
それまで読書をしていたパチュリーが口を開く
「他にも人形はあるのかしら?」
「えぇ、あるわ。持ってきて」
少し嬉しそうにアリスは答えた。
そして霊夢人形が大きなガラスケースを持ってきた。
中にはレミリアや幽々子、チルノなど見知った人物の人形が置いてあった。
「霊夢まであるのかよ・・・
まさか手作りなのか?」
「あたりまえじゃない。
髪の毛が手に入らないと動かないけどね。」
「ふーん(・・・・魔理沙の人形貰えないかな・・)」
「さ、続きをしましょうか」
時間帯は夜になったばかり。
7時頃だろうか。
「あ、この部分詳しく載ってる本はないかしら?」
「あぁ、それなら・・・これね、はい」
っと空間を捻じ曲げて図書館の本棚に繋げて目的の本を取り寄せるパチュリー
「ありがと・・・ふむ、なるほど・・・」
本の解読も佳境である。
魔理沙はふとアリスに尋ねる
「なぁ、髪の毛があると何かあるのか?」
人形の話である。
「あれば、その人物がどんな状態かわかるし、本人の身代わりになったり、会話もできるわ。」
とアリスは自分そっくりな人形を膝に乗せて
「「ただし、自身の髪の毛が入った人形の存在を知ってなければ会話はできないわ。」」
と人形と同時に喋る。
その時である。
突然、霊夢人形の腹部が裂けて倒れたのである。
「「「!!?」」」
3人とも動きが一瞬止まる。
「おい、これって・・・」
最初に言葉を発したのは魔理沙である。
「霊夢が怪我をした?え・・?な、なんでルーミア人形の封印リボンが取れてるの?」
アリスは自分の人形の異変に戸惑っていた。
「落ち着けアリス、お前らしくないぜ」
「宵闇妖怪の封印リボンね・・・封印関連の本でも見てみるわ」
と本を取り寄せる。
「・・・・・・・これじゃないわ、次・・」
と本を取り寄せたが
ぬるりとする。
「何かしら?」
本を取り出すと血で濡れている
「血!!?紅魔館で何か起きてるの?」
「おい、何かおかしくないか?」
「人形を偵察に飛ばすわ。博麗神社と紅魔館でいいわね」
と人形2体を行かせた。
次の日の夜
「霊夢、レミリア」
「「はい」」
「冥界の白玉楼へ行く。霊夢はついて来て。レミリアは留守番ね。」
「「はい、ルーミア様・・・」」
「咲夜、メイド達の準備を」
「はい・・・」
そして冥界・白玉楼
「くぅッ!」
半霊半人の庭師は焦っていた。
メイド達の尋常じゃない人数にではない。
今、敵対している人物に自分の剣技が通用しない事に。
遠く、結界の方では激しいメロディが聞こえていた。
多分宴会好きな三姉妹だろう。
今、その音は止んでいる。
「フフフッどうした?その剣で私は切れないの?」
このままでは幽々子お嬢様も危ない・・・
「これで!!」
ありったけの弾幕を張り、その場から撤退する。
「そっちね・・・」
その弾幕を気にする事無く彼女は後を追う
妖怪桜・西行妖の元に冥界の姫、西行寺幽々子は居た。
「騒がしいわ、何があったの?妖夢」
と庭師の方に振り返る。
「ハァ、ハァ、ハァ・・敵襲です。お嬢様、今すぐお逃げください。」
まったく、この従者は何を言うのか・・・
「貴女が叶わない相手なら私が相手をするわ、下がっていなさい。」
と無数の死蝶を迫ってくる敵へ放つ。
生者が触れれば死を発現する幻の蝶である。
「フフッ綺麗ね。」
幻の蝶は迫り来る敵、ルーミアをすり抜け、後ろに居たメイド達を死へと誘う。
「な!馬鹿な!」
「やはり・・・すみません、お嬢様」
その様子を見て妖夢は幽々子を抱えあげるとすぐさま逃げだす。
「む!」
逃がすものか、とルーミアから黒い弾丸が放たれ、妖夢を穿つ。
「ぐぅッ」
「妖夢!」
「ふふっお終いかしら?」
漆黒の弾幕を止めとばかりに放つ!
が、
「何!!?」
横からの弾幕により、全ての弾を弾かれた。
「誰だ!?」
両者の間に意外な人物が割り込んでいだ。
「妖忌!?」
幽居し、行方を眩ませたはずの先代庭師である。
「妖夢、往けい!!」
返事もせずに一目散に逃げていく妖夢と幽々子。
「本来の得物を持たずにどうするつもりかしら?」
「ふん、今のワシの得物は、これよ・・・」
と隻腕の庭師は2本の刀を抜く。
1振りは傍らを漂う半身である幽霊が握っている。
「西行妖を斬る為に鍛えていたこの二振りの刀、「破リ刀・月蝕」と「封ジ刀・幻日」。存分に楽しんでもらおう。」
「・・・・貴方の相手は私じゃないわ」
と言い、スッと間合いを取り
パチンっと指を鳴らす。
妖忌とルーミアの間の夜が渦巻き
そこから甲冑に身を包み、戦車に乗った騎士が現れた。
「リカルド、お相手なさい。」
「御意」
ルーミアは妖忌の脇を抜けて逃げ出した二人を追う。
「・・・・・・・」
「・・・・・・」
甲冑の男が言葉を発する。
「ふむ、噂に名高い剣豪・魂魄 妖忌が相手とは・・・」
「隻腕のジジイ相手に戦車を持ち出すとは、な」
「ふん、そんな名刀を二振りも持ってて卑怯とは言わせんよ!」
といきなりの突撃である。
当たれば粉砕されるであろうその一撃を
紙一重で避けると、
すれ違いさまに「破リ刀・月蝕」を一閃させる。
ギィン!!
戦車を引いていた2頭の首無し馬の内、1頭の戦車と連結していた馬具を断ち切る。
首の無い馬は嘶いて彼方に走り去る。
「ほほぅ、流石、というべきですな」
剣豪は、刀を構え
「再度、試してみるか?」
と凄む。
馬車を掻き消し
「剣には剣でお相手しよう」
と大振りな剣を構える。
剣の切っ先が斧のようになっている風変わりな大剣である。
「断頭剣、か」
「ご名答。」
お互いに得物を構える。
ルーミアは、逃げた二人を追跡したが、手負いの主従は速度をさらに増し、一気に離されてしまう。
ここまで逃げに徹されると逆に気分がいい。
あの二人なら逃がしてもかまわないか・・・と呟くと散歩するように呼び出した従者の元へ帰っていった。
ギギィィン!ギャン!
火花が散る。
打ち合うこと数十合。
妖忌は二刀流を生かしての攻防隙の無い連撃を繰り出し、
リカルドは必殺の一撃を暴風雨のように振り回し、甲冑を利用した防御で凌いでいた。
「やはり、あの馬車は卑怯だと思うがな。これ程とは、恐れ入った。リカルド殿」
「何を言う、エェイ!!」
ギン!!
両者間合いを取る。
魂魄 妖忌は「破リ刀・月蝕」を鞘に収め、姿勢を低く取る。
半身の幽霊も「封ジ刀・幻日」を構える。
それを見て、
リカルドも大上段に構える。
「・・・・、ゆくぞ」
正に一足。一瞬にして必殺の間合いに入り込む妖忌。
そして一刀。
「隻腕抜刀・一ノ太刀・追閃」
隻腕で、鞘から「破リ刀・月蝕」を抜き放つ!!
同時に半身が一足の速度そのままに「封ジ刀・幻日」で刺突する。
回避不能の斬撃。
妖忌が一足で間合いに飛び込む。
断頭剣・エクスキューショナーが一閃する。
目視では絶対に間に合わない、そのタイミングを感覚だけで読み取る。
「断頭斬・断罪」
どんな強固な物体もこの一撃の前では無意味だろう。
首が飛んだ。
「封ジ刀・幻日」での刺突は甲冑に弾かれてしまったが、
「破リ刀・月蝕」の一振りは騎士・リカルドの首を綺麗に跳ねた。
「まさか、首無し騎士・デュラハンとは・・・な。」
「使わないとはいえ、右肩を犠牲にしてまでの一刀、お見事でした。」
振り下ろした断頭剣は右肩口から垂直に腰に向けて振り下ろされていた。
「ごはッ・・・半身とはいえ、苦しいな。」
拾ってきた兜を脱ぎ、素顔を見せるリカルド。
「刀が完成したら、また死合ましょうぞ。」
「ふふ、次はこうはいかんぞ・・・・」
半身である幽霊が瀕死の半身を連れてゆく。
「さすがね、リカルド。」
と呼び出した主が戻ってきた。
「いえ、噂以上の強さでした。鎧ももう役に立ちません。」
とヒビだらけの甲冑を見せる。
最後の刺突を弾いたのは幸運ともいえた。
この夜、冥界は夜の手に落ちた。
帰ってきた人形達は思わぬ人物を運んできた。
神社で傷だらけで倒れていたらしい。
少し前に事情を説明してもらい、今は眠っている。
「おいおい、あのルーミアが?」
「事実なんだから仕方ないでしょ・・・。」
聞いた話では、紅魔館にルーミアと霊夢が来た事
霊夢はルーミアの封印を解いた事が判った。
「それじゃあ、パワーアップした宵闇妖怪の対策でも練りましょう」
と本を数冊引き出すパチュリー
ちなみにアリスは、この屋敷周辺に人形部隊を巡回させている。
紅魔館の戦力が全て出てくるとしたら夜じゃなければ無理である。
それでも警戒した方がいいという事で昼間から巡回させていた。
その日できた事といえば
各人の人形の作製と操符の使用訓練
火、日、月、星符の使用訓練
などである。
闇系に対抗できそうな符とそれぞれ連絡用に3人が3人の人形を持つ事になった。
夜になりメイドやレミリアをどうするか話し合っていると
「ん?手負いの幽霊?」
屋敷の周辺を巡回していた人形が逃げてきた妖夢と幽々子を発見したのだ。
貴重な情報が得れるとの事ですぐさま招き入れ事情を聞いた。
なるほどと魔理沙達はうなずく。
1、夜突然の襲撃でしかも相手は見知らぬ妖怪
2、その妖怪の最大の特徴は弾幕、剣技など攻撃全てがすり抜けてしまう事。
この2点の情報を得られた。
1はルーミアと判っている。ただし、2から宵闇の妖怪でない可能性が高い。
あとは夜にしか襲撃していない事。
「情報はこれだけの様ね・・・」
アリスがつぶやく。
ちなみに、妖夢は人形達に手当てをうけている。
「だけど、お嬢様が敗北するんだから相手は吸血鬼より上位の力を持つ事になるわね」
あ!
と魔理沙が何かに気づく。
「もしかして夜なんじゃないか?
吸血鬼は夜の支配者。でもその支配は夜という世界の中だけ。
夜は宵闇より上位、夜しか襲撃しないのは、夜しか能力が発揮できないから・・」
他の3人が唖然として魔理沙を見る。
「貴女、頭いいわね・・・」
「なんか、ムカツク言い方だな。」
「それじゃあ、貴女達にも明日の夜は手伝ってもらうわよ」
暗い紅魔館、咲夜は思案していた。
「(お嬢様の負った心の傷は深すぎる。
どうにかしなければ・・・魔理沙達ならルーミアの力を弱めてくれるかもしれない。
そうなれば・・・・今の私なら・・・)」
レミリアも考えていた。
「(咲夜になんて事をしてしまったんだろう・・・どう詫びれば・・・)」
後悔と自責の念で潰れそうだった。
ついに3日目の夜
アリス達6人は3手に別れて待ち構えていた。
すでにメイド部隊と交戦中である。
「しっかし、メイドも多いがこちらの人形も多いな・・・まるで戦争だぜ。」
「もちろん、これが終わったら弁償してもらうからね」
「おしゃべりする暇があるなら人形達の援護して!」
「それにしても妖夢そっくりな人形ね・・・」
「お嬢様のもそっくりですよ」
と皆が各人の人形で連絡を取れるようにしてある。
最大の脅威であろうレミリア対策の水符、日符も用意してある。
ただし、霊体の2人は日符で弱体化しそうなので水符のみである。
「ふむ、3手に別れているな・・・霊夢は魔理沙、レミリアはパチュリー、咲夜はアリスを相手して。」
自分は後方で高みの見物である。
「みつけた!魔理沙!!」
「お、きやがったな、霊夢!」
と、突然弾幕の嵐である。
がお互い慣れているのか簡単に回避する。
「まったく、挨拶が弾幕っておかしいぜ」
「あなたもね」
「パチュリー・・・じゃない!あなた誰?」
「残念ね、私は西行寺幽々子よ。初めまして、幼き赤い月」
「パチェじゃないなら誰でもいいわ、消えなさい、亡霊の姫」
「あれ、羽が生えてる!?」
「仕方なくよ。そういう貴女は半分幽霊」
「今度こそ貴女を斬るわ!」
「あの、私もいるんですけど・・・」
「あぁ、悩みが無い人ね。(二人相手なら時間が掛かってもおかしくないか・・・)」
「霊符・夢想封印・集!!」「魔符・ミルキーウェイ!!」
お互いに手の内を知り尽くした相手である。
が、今回ばかりは魔理沙の方が分が悪かった。
時は夜、霊夢の体内にはルーミアが仕込んだ夜があり、そこへルーミアの力が供給されているのである。
魔理沙は何とか相手のスペルカードを打ち消している状態である。
「次で最後よ!」
「望むところだぜ!」
力が集まり、お互いの手の中にスペルカードが形成され、それを放つ!
「夢符・二重結界!!」「恋符・マスタースパーク!!」
両者のスペルカードは今度も拮抗し打ち消しあうかに思われた、が、
「(押される!?)」
「(ルーミアの奴、力送りすぎだって!抑えれないじゃないの!)」
魔理沙の放ったマスタースパークが押され始めた時、一つの影が霊夢に接近し、掌低を放つ!!
「ぐっ!?」
一瞬の隙ができ、押していたスペルが拮抗状態に戻り、打ち消しあう。
霊夢に一撃を放った人物は、その掌低に鮮やかなスペルカードを形成する。
「彩符」
「極彩颱風!!」
「その程度の死では私は殺せないわよ。」
レミリアは苛立っていた。
対峙している亡霊の姫は牽制する程度で本格的に弾幕を張ろうとしないのである。
打ち出したこちらの弾幕に対し、避けきれない弾にだけ死蝶を放ってその弾を「殺し」ている。
幽々子はレミリアの意識をこちらに向かせるのと、自分が被弾しないようにするので精一杯であった。
「(まったく、むちゃくちゃな作戦ね・・・相手もだいぶ苛立ってるようだし一応は成功の様ね)」
しかし、相手の力は供給されていて無尽蔵、対する自分は冥界じゃないので力の供給がまったく無い状態である。
今ではスペルカードの使用すら困難である。
「これで終わりにするわ。」
相手の力が十分でないのを見抜いた彼女は勝負に出る。
魔力が集まり、その手にスペルカードが形成されていく
「紅符・」
とスペルカードを唱えようとした時、
「レミィ!」
「!?」
「水符・プリンセスウンディネ!!」
一瞬声の方向に気が逸れる。
「水符・プリンセスウンディネ!!」
幽々子と声の方向から同時に水符が発動する。
「水!?」
直撃すると思った瞬間、その水流がレミリアを包み込むように広がり、レミリアを閉じ込める。
「ふぅ~・・・お嬢様、おとなしくしてくださいね」
流水の球体の中でレミリアが口を開く。
「パチェ、ね・・久しぶりにその名前で呼ばれたからビックリしたわ。」
吸血鬼は流れる水を渡れないし、触れれば力を持っていかれる。
そのため、この水の牢獄は吸血鬼にとっては結界と同じである。
これを成功させる為に、パチュリーは今まで隙を窺っていたのである。
「なんでパチュリー以外ならよかったの?」
とさっきまで戦っていた幽々子は聞く。
「何故って、死ぬなら親友の手で死にたいと思ったのよ・・・
でも、生き残った・・・親友のおかげで。」
「お嬢様・・・」
「気をつけてね、パチェあいつは夜そのものと言っていいわ」
ギィィン!
銀のナイフが太刀の一閃を阻む。
「くぅ!!」
剣を振りぬけず、まったく攻撃ができないでいる妖夢。
今の咲夜は吸血鬼化により、人外の身体能力を得た為にできる芸当である。
今回の妨害で妖夢はバランスを崩してしまう。
「しまった・・」
が、そこにすかさず7色の弾幕が張られ、追撃を阻む。
「ちぃ!」
「ふぅ(さっきから受身ばかり・・・何か企んでいる?)」
そこで人形がしゃべりだす。
「アリス、こっちはどうにかなったわ。」
「今それどころじゃなーーい!」
「咲夜は強いから、頑張ってね。」
「(ん?何か喋ってるわね・・・人形?)」
「オンパッキャラマド・・・」
呪文を唱えるとシュルシュルとロープが霊夢を縛ってゆく。
「ふぃ~」
倒れているのは2人
縛られている霊夢と零距離でスペルカードを放った紅 美鈴である。
彼女は紅魔館の門番だが、封印解除の夜レミリアの悲鳴を聞いて庭に行くと、吸血現場を目撃してしまう。
咲夜に「逃げなさい!」と言われ、一目散に逃げたが、追撃を受けて博麗神社に迷い込んで力尽きた所を人形に発見されたのだ。
「しっかし、よく生きてたな霊夢」
「ゲホッ、なんか体の中に入れられて強化されてるからかな?当分動けないけど。」
「中国も丈夫だよな~あんな無茶するなんて」
「一応鍛えてますから・・・右腕一週間は使えませんよ・・・・有給あったかな・・・ハゥゥ」
「さて、それじゃ私は行きますか。」
すっと立ち上がったとき
「魔理沙、大丈夫?」
とパチェ人形が口を開く。
「おぉ、今終わったぜ」
「私は今から進むけど、無事ならいいわ。今どこ?」
「吹っ飛んだ霊夢を追いかけたから結構進んでるな。」
「・・・・魔理沙、あんたそんな趣味が?」
「ち、違うぞ!これはアリスの趣味だ。お前の人形もあったんだからな!」
「・・・・・・はぁ、どうでもいいわ。早く終わらせてね。」
「あぁ、任されたぜ。」
「あら?」
「お?」
黒い魔女が近くで止まる。
「一つ聞くが、両手広げて「そーなのかー」って言いそうな妖怪見なかったか?」
「いいえ、見てないわ」
「そうか」
「目の前にその妖怪がいたら?」
「撃ち落すぜ」
と言い終わる前にレーザーを放つ魔理沙。
避ける間もない必殺の奇襲も、虚しく体をすり抜ける。
「霊夢を倒せたのね」
「ふむ、すり抜けたか・・・情報通りだな。」
「年上の話は聞くものよ」
と両腕を広げて漆黒の弾幕を張る。
「ヌルイぜ!」
「じゃあ、これはどうかしら?」
と揺らめく4枚の翼を羽ばたかせ、魔理沙目掛けて一気に伸ばす。
「宵闇の翼か?直線的過ぎだぜ!」
余裕でやり過ごそうとした。
「甘いわ」
直進してきた4枚の翼がカーブを描き、魔理沙を貫こうとする。
「うわ!」
多少、驚くも危なげ無くこれを回避する
伸びていた翼は掻き消えて背中に新しい翼が揺らめく。
「まるで巨大な手だな・・・」
「宴は始まったばかりよ」
本当にルーミアかよ、と悪態をつきたい気分になった。
手元に残してある戦力は、日符、恋符、魔符それぞれ1回分である。
「これもすり抜けるか?」
掲げた手に魔力が集まり、スペルカードを形成する。
「魔符・ミルキーウェイ!!」
天の川の名の通り、莫大な量の星が氾濫したかの様にルーミアに降り注ぐ。
「ちぃ!」
やはり、星の魔法は効果があるのか、舌打ちし
「夜符・ナイトバード!!」
とスペルカードで迎撃する。
「いまだ!パチュリー!!」
相殺した瞬間に魔理沙が叫ぶ。
「!!?」
すかさず振り返り、奇襲に対処しようとする。
が、
「嘘だぜ!」
間近に迫った魔理沙は両手に魔力を集中させる。
「今命名したぜ!
日&恋符・ロイヤル・スパーク!!」
日光の力を持つ極大レーザーがルーミアを襲う。
「あ゛ッ!!!」
さすがに避けきれず、右腕と胸から下全部を持っていかれるルーミア
「やったか?」
落ちていくルーミアを見てつぶやく。
弾幕を避けながら妖夢がアリスに聞く。
遠くの夜空が一瞬明るくなる。
「ルーミアの方は大丈夫なんですか?」
「今頃は魔理沙が相手をしているはずよ。パチュリーもそろそろ追いつく頃かも」
しかし、自分達は目の前の相手を倒せずにいる。
それでもアリスには秘策がある。
”ルーミアを倒す”この目的を達成する為の秘策であるが故に、妖夢を犠牲にしなければならなかった。
「反則だぜ・・・」
落ちていくルーミアに夜が集まり、体を修復する。
全てのスペルカードを使い切った一撃だった
「さすがに死んだと思ったわ」
「名前をシャイ○・スパークにしとけばよかったか?」
「かもね」
レミリア、咲夜、幽々子らが敗北、逃走したのは効果のある属性を持ち得なかったからだと思っていた。
そして、現にそうであった。
星、日、試してはいないが月符も効果はあるであろう。
しかし、夜である限り死なないとは思いもしなかった。
「ふふ、震えているわね」
「武者震いだぜ」
とルーミアの弾幕を回避する。
ルーミアも、相手が先ほどのスペルで切り札を使い切ったことが判っていた。
「ほらほら、避けないと殺すわよ」
次第に弾幕が濃くなってくる。
「パチュリー!」
「ふん、2度も引っかかると思ったの?」「火符・アグニレイディアンス」
「へ?」
と第三者がスペルカードを放ってきた。
今回も回避が遅れてしまい、両足を焼かれる。
「お待たせ、魔理沙」
「助かったぜ」
「よくも私の魔理沙を・・・」
「(何かセリフがおかしい様な・・・)」
「今度は本当だったのか・・・騙すなんて卑怯だぞー」
既に両足は再生している。
「イヤ、騙してないだろ今のは」
「夜だから再生するのかしら?本に載ってなかった事だわ・・・」
「パチェ、スペルカードの余分はあるか?」
「えぇ、火符でいいかしら?」
「サンキュー」
「もうおこったぞー
月符・サイレントセレナ!!」
「月符・サイレントセレナ!!」
またったく同じ符、同じスペルカードである。
しかし、漆黒の揺らめく翼がパチュリーを襲う。
「危ない!」
鋭い一撃がパチュリーを掠める。
すかさず
「火符・アグニシャイン!!」
「むぅ~」
今度は回避するルーミア
パチュリーはルーミアと対峙する。
喘息の調子はいいようだ。
手が開いた魔理沙はアリス人形に向かって
「聞こえるか?アリス!」
「(ん、強制力が弱まった?)」
先ほどとは威圧感が薄れたように思える。
「妖夢」
不意にアリスが口を開く。
「一人でしばらく時間を稼いでくれる?」
例の秘策を使うのだろう
「わかった」
返事の後、魔理沙人形がしゃべりだす。
「聞こえるか?アリス!」
「えぇ」
「そろそろ準備しておけよ!」
「判ってる。」
なぜか咲夜からの弾幕はゆるい。
そして、こちらの行動を窺っているようにも見える。
「(あの人形が必要ね・・・でもお嬢様は誰の所にいるのかしら)」
考えていると妖夢が弾幕を強めている。
「獄界剣・二百由旬の一閃!!」
「幻世・ザ・ワールド!!」
時間を止めてこの剣技をかいくぐる。
「アリス、行って!」
アリスの秘策とは、先日読み解いた魔術書にあった魔法で
AとBの位置を交換するという移転魔法である。
「すぐに終わらすわ、耐えてね妖夢。」
アリスが消えた後、その場所にはアリス人形が現れた。
咲夜はアリスが移動した後、時を止めて妖夢に詰め寄り、聞いた。
「お嬢様とは誰が戦ったの?」
魔理沙が人形達を投げる。
「パチュリー、アリスが来たぞ!」
反応して、周囲の気配を窺うルーミア
「(今度は・・・嘘!)」
背中の揺らめく翼が吹き上がる!
「闇符・ディマーケイション×2!!」
パチュリー、魔理沙に向けて同時にスペルカードを放ってきた。
「かかった!」
「日符+咒詛・日向の首吊り蓬莱人形」
投げた人形の内、アリス人形がアリスと交代したのである。
ルーミアの頭上から光の弾幕が広範囲にわたって降り注ぐ。
しかし、ルーミアは被弾しながらもすぐさま夜で修復していく。
そこに、
「日符・ロイヤルフレア!!」
光がルーミアを完全に捕らえた!
「・・・・解かってても萎えるな」
「えぇ。」
「こ、こんなの聞いてないわよ」
が、
夜なのですぐさま修復が始まる。
肉片が一欠けらも残らなくても、この世に夜がある限り存在し続ける。
それが夜・ルーミアの真の恐ろしさであった。
「幽々子?お嬢様に変わって!」
妖夢に事情を話し人形を使いレミリアと会話する。
「何、咲夜?」
「そろそろルーミアの強制力が弱まるはずです。
いますぐ私に力の供給をしてください。」
「わ、わかったわ。」
吸血鬼は自分の眷属から力を(この場合は吸血して得た力を)採取できるが、逆に眷属に力を送り込む事もできる。
「(これなら・・・いける!)」
「送っているけど・・・何をする気?」
そして、一気にルーミアの力が減少した。
「この、幻想郷の時間を4日分巻き戻します!!」
「あ~ぁ、暇ねェ・・・」
博麗神社の巫女、博麗霊夢はとても退屈だった。
ちょっかい出してくる魔理沙が出かけているからである。
「あ、でもそろそ時間か」
先日、咲夜にお茶をご馳走すると言われたのである。
なぜか時間は夜だったが。
紅魔館までは少し遠い。
どうせなら昼間によんでくれればいいのに・・・と愚痴をいいながら飛んでいると
「れいむー」
宵闇妖怪のルーミアだ。
相変わらず単純そうである。
「どこいくの?」
「紅魔館までお茶しにね。」
ふと、霊夢は閃いた。
「一緒にくる?」
「うん、いく~」
門番である紅 美鈴が
「あれ、何でルーミアさんが?」
聞いていた人数じゃなかったので呼び止めた。
そこへ
「いいわ、招待してあげて。それと今夜は美鈴もきなさい。」
とメイド長が現れた。
「ありがと~」
「は、はい!」
「こんばんわ、メイド長」
「(ふぅ、成功のようね。)それじゃ、案内するわ」
原因である暇すぎてルーミア撃墜を無くせばあんな事にはならない。
運命操作にも近い事をやってのけたのはレミリアの力のおかげだろうか?
「あ、メイド長」
と案内しようと歩き出した時、霊夢が
「ルーミアをメイド見習いで雇ってみない?」
と言い出した。
「はぁ?」
「招待されたのは、私だけでしょ?ルーミアはお茶代払えそうに無いから
(それを見学しにいけばだいぶ楽しめそうだしね)」
やれやれ、おかしな方に話が進んでるけど
「(それもいいかな・・・)」
と思う自分がいた。
この日も、幻想郷の夜は静かに過ぎてゆく
-終り-
------------------------------------------------------
◆もう一つの結末。
吸血鬼は自分の眷属から力を(この場合は吸血して得た力を)採取できるが、逆に眷属に力を送り込む事もできる。
「(これなら・・・いける!)」
「送っているけど・・・何をする気?」
そして、一気にルーミアの力が減少した。
「この、幻想郷の時間を4日分巻き戻します!!」
吸血鬼となり力が増加し、さらにレミリアから力を供給され、できるはずの無い「時間の逆行」すら可能になった咲夜。
しかし、その「時間の逆行」を発現させる前に文字通り「光の制裁」が加えられた。
妖夢はその瞬間、何もできず、ただ
「あっ!!!?」
と一言発するだけだった。
魔女3人の攻撃で夜の力が弱まった瞬間、
皮肉にも増大した咲夜の力を感じ取ったルーミアが咲夜の周囲の夜を消し去ったのだ。
それにより、昼が発現し、陽光により咲夜は灰になった。
「けほっけほっ・・・私の日符でも無理だなんて・・・」
完全に全身を吹き飛ばしたのに、夜が集まり、ルーミアの体は元に戻ってゆく。
「パチュリー、大丈夫か?・・・ん、なんだこの魔力は?」
遥か後方で巨大な魔力を感じ取った。
「あの方角は私がいた場所ね。
となると魔力の主は、メイド長か庭師ね。」
この発言に反応したのは他ならぬ、ルーミアだった。
「裏切りには・・・制裁を!!」
復元が終わったルーミアは片手を頭上に掲げた。
「!!!」
3人は驚愕した。
魔力の発生元に陽の光が現れたのだ。
それと同時に魔力も消え去る。
パチュリーの持っている妖夢人形がしゃべりだす。
「さ、咲夜が灰に・・・」
聞こえていたのかルーミアがつぶやく。
「フフフ・・・当然の結果よ。」
そして、3人を見る。
「火符は牽制程度にしか使えないな・・・
パチュリー、アリス、日符は何回使える?」
「ん、そうね・・・符が持てば4回は撃てるわ。」
「使い慣れない符だから、後3回かな」
「相談はすんだ?」
と問答無用とばかりに漆黒の弾幕を張るルーミア。
「焦げろ!火符・アグニシャイン!!」
弾幕同士が相殺する。
しかし、判っていたのかルーミアは弾幕の後ろからレーザーを放つ。
「つっ・・・」
紙一重でそれを回避し、ルーミアの下側に潜り込もうとする。
「む!」
と後を追うようにレーザーを放とうとしたが、
「日符+操符・日出国の市松人形!!」
いつの間にか左方向に回り込んでいたアリスにスペルカードを撃たれてしまう。
呼び出された人形から、日本刀の様に曲線を描くレーザーが何発も発射される。
アリス自身からは巨大な魔力弾がばら撒かれる。
必死に回避するが、曲がるレーザーに惑わされて、結局左片腕が消し飛んでしまうが気にしない。
「その人形、邪魔。」
残った右腕を突き出して握る。
ベキィッ
と変な音と共に、人形数体が砕ける。
復元した左腕を突き出して握る。
「ちぃッ」
アリスは突然急上昇する。
夜が伸びてアリスに迫っていた。
人形もこの夜に握り潰されたのだ。
「日符・ロイヤルフレア!!」
「火符・アグニレイディアンス!!」
意識が上に向いた隙を狙って
ルーミアの前方と下方からのスペルカードによる十字砲火である。
「3人いるからって、調子にのるなァ!」
背中の漆黒の揺らめく翼が全身を覆い、全方位に向かって弾けた。
夜を照らす炎も、闇を切り裂く光も、漆黒の衝撃が相殺する。
再び漆黒の翼がルーミアの背中に燈る。
「見せてあげるわ。真に暗き夜を。」
3人と距離をとり、胸の赤いリボンをほどいて右手に持つ。
「暗剣・黄昏!!」
その右手にもったリボンに夜が集まり、一振りの剣を形作る。
背中の4枚の翼と同じく、炎のように揺らめく漆黒の剣である。
動くたびに剣から夜が舞い散る。
「まったく、接近戦だなんて・・・」
魔女3人は接近戦は不得意である。
「アリス、人形は?」
「だめ、さっき破壊されたから・・・」
「きたわ!」
弾幕を張りながらルーミアが接近してくる。
「死になさい!」
と漆黒の剣を振るい、パチュリーに対して弾幕を張る。
「やっかいね」
と言いつつ、月符で弾幕に対抗するパチュリー。
「まったくだぜ」
返事をしつつ、火符で牽制する魔理沙。
「無駄よ」
迫る炎を剣の一振りでかき消し、
「お返し!闇符・ディマーケイション」
と返す刃でスペルカードを放つ。
そこに
「隙あり!」
背後からのスペルカードがルーミアを襲う。
「日符・ロイヤルフレア!!」
人形を失ったアリスの渾身の一撃である。!
しかし、ルーミアに届く前に霧散する。
「!?」
驚愕するアリスの方を振り向き、クスッと笑い、
左手をアリスに突き出して軽く握る。
「ぐッ!?」
夜が伸びてアリスの顔、喉、両腕、胸、腹部、腰、両足に巻きつく。
「バイバイ♪」
とその左手を硬く握った。
「――――ッツ!!!!」
いやな音がして
アリスが地上に落下してゆく。
操り人形の紐を切ったように。
「幽々子さまー」
半霊の庭師が一着の服を持ってきた。
「どうしたの?妖夢」
「・・・・その服は咲夜のメイド服!?
一体どうして?」
「先ほどの光で・・・・」
水流の中でレミリアは静かに泣いた。
「あぁ、何故こんな・・・」
「レミリア・・・」
そこにもう1組がやってくる。
簀巻きになった霊夢を担いだ美鈴である。
「レミリア様!」
「今はそっとしておいて・・・」
と幽々子が言う。
「でも、どうしてこっちに?」
「光が差し込んだのを見て、紅白が騒ぐから・・・」
「だって、日光なんかに当たったら灰に・・・ってそのメイド服!?」
無言で頷く妖夢
それを見て、そう・・・と答えて霊夢は黙ってしまった。
「あと、二人」
「ア、アリス!!!!!」
「とっておきよ。
日符+月符・・・」
「遅い」
背中の揺らめく漆黒の翼を吹き上げて一気に加速して接近し、胴を凪ぐ。
避けようと身を引くが
「げほっ」
血を吐くパチュリー。
腹部からも大量に出血している。
それでも魔女の意地かスペルカードを完成させる。
「白夜に昇る満月!!」
複数の月符の大小様々な弾が低速と高速で発射され、細かい日符のレーザーが雨のように降り注ぐ。
巨大な弾に当たったそれぞれのレーザーは分裂し、角度をランダムに変え、瞬く間に周囲に光の蜘蛛の巣を張り巡らす。
予測不可能な光の弾幕を至近距離でまともに被弾してしまう。
パチュリー自身も、符の反動で吹き飛んで浮いていられないのか、
墜落しそうになるが、魔理沙に抱きとめられ、地上に降りる。
「ま・・魔理沙・・・・ごほっげふっ・・」
「パチュリー!」
「はぁ、はぁ、あ、後1回は、使えるわ・・・後・・・」
復元するまでのわずかな時間に日符を渡し、少し話しをする。
「・・・・そんな事できるか!」
「げほッそれにまだ、何かある、みたいだから・・・気をつ・・け・・・」
「お、おい、パチュ・・・リ」
まだ辛うじて息がある少女を寝かせて
渡された日符を握り締める。
「さすがに驚いたわ。日符と月符を組み合わせるなんてね。」
復元が終了したルーミアが上空から魔理沙を見る。
「パチュリーは気がついていたようだから、先ほどのスペルカードのお礼に良い事をあげるわ。」
再度構成した漆黒の剣で大きく円を描く。
夜よりも暗い黒が環状になって夜空に広がる。
「ちなみに、さっきアリスのスペルを防いだのもコレよ。
これは・・・もう、年上の話は聞くものよ」
と逃げる魔理沙にレーザーを放つ。
「っう」
丁度振り返ったので、回避行動に移ったが、左腕に掠ってしまった。
血が滴り落ちる。
「フフフ、追いかけっこ?」
と魔理沙の後を追う。
地面すれすれを高速で飛行し、蛇行したり、急に曲がったりしている。
たまに漆黒の弾丸で牽制して、この追いかけっこを楽しむ。
しかし、反撃すらせずに、ただ飛び続ける魔理沙に対して次第に興味を無くし、再度レーザーを放つ。
「きゃッ!」
箒に当たってバランスを崩して転倒する。
左腕からの出血は止まっていない。
「あはははっ、今のは面白かったわ。」
でも、と続ける
「これで、終わらせるわ。」
揺らめく4枚の翼を広げ、漆黒の剣を魔理沙に突き出す。
「黒夜・真に暗き夜!!」
ルーミアの体から黒が噴出す。
箒を構えて、防御体制をとる。
あたり一面を完全に覆ってしまう。
「何も、見えない!?」
「どうかしら?原初の夜は。」
「原初の・・・夜?」
「そうよ、最初は星なんて無い。光すら無い。
この他に存在しない夜こそが、最初。
・・・まったく、昼なんて私より後に来たくせに世界の半分を持っていくんだもの・・・
それに昼がいるから境界なんてできるのよ・・・」
「(・・・・なんか、愚痴ってるな・・)」
「さぁ、原初の夜に溺れなさい!」
と弾幕を張る。
「くぅぅぅ!!」
見えなければ防ぐしかない。
防御障壁を展開して、なんとか防ぐ。
「ふぅん、防げるのね・・・でも、この剣はどうかしら?」
と、黄昏と呼ばれる剣を構える。
魔理沙は魔力を広範囲に展開して、ルーミアの来る方向とタイミングを伺う。
「ふッ!!」
剣を構えたルーミアが接近する。
展開した魔力に反応がでる。
真正面からである。
その方向に向けて話す。
「ルーミア、なんで私の左腕の出血が止まっていないのか気にならない?」
ルーミアの動きが止まる。
「・・・何?」
「血液ってのは、それだけで力がある。
それが、力ある魔女の血ならば、高純度の魔力にも匹敵する・・・」
「それが?今の貴女には使い慣れていない日符のみ。
貴女を最後にしたのは、まったく脅威じゃないからよ」
と一歩近づく。
「日符しかないなんて誰が言った?
それに、この場所に覚えが無いのか?」
「・・・・ここは・・・追いかけっこの開始地点!?」
「そう、ここは中心。
私一人では無理な事も、ここでならできる!
聞こえたな、パチュリー!」
横たわっていたパチュリーが微かに返事をする。
「私の血で起動しなさい・・・恋符!!」
大地に血液で描いた巨大な恋符。
起動するだけで、今の魔理沙の魔力ではカラになってしまうが
パチュリーの血を使って巨大な恋符が起動する。
「ルーミア、教えてやるぜ。恋符はな、単なる増幅器なんだぜ!」
「!!!!」
「恋符+日符!!」
いくら夜があれば復元できるとはいえ、こんな巨大な恋符で増幅された日符なら
「眩き白!!」
黒一色だった世界が一瞬にして白一色の世界になる。
術者をも巻き込んで白い光は立ち昇る。
しばらくしてあたりは夜に戻る。
それと共にルーミアが復元する。
「ハァ、ハァ・・・朝が近かったら、やばかったかな・・・」
しかし、最大の脅威であった3人の魔女を葬り去った。
「さて、レミリア達を回収するか・・・」
パチンと指を鳴らす。
集まっていた5人の内、レミリアと霊夢が突如夜に包まれる。
ルーミアの左右に黒い球体が膨らむ。
中からレミリアと霊夢が現れる。
「二人とも、見ていなさい・・・これで終りよ。」
と暗剣・黄昏で円を描く。
そして、なにやら唱え、その円に剣を突き立てる。
「召喚・黒き深淵の顎!!」
先ほどまで、レミリア達が居た上空で突如、3ヶ所の夜が渦を巻く。
最初に美鈴が気がついた。
「空が!」
2ヶ所の渦の中から、巨大な「何か」が現れ、降りてくる。
真ん中の渦から何本もの黒い触手のようなものが現れ、3人を襲う。
「下がってください、幽々子様!!」
「天神剣・三魂七魄!!」
「彩符・極彩颱風!!」
現れた巨大な2つの「何か」に同時にスペルカードが叩き込まれる。
一部の触手を吹き飛ばしたが、1つの傷口から2本の触手が再生し、倍の数の触手が3人を襲う。
「キャァァアア!!」
3人を絡み取ると
その3つの「何か」が突然止まった。
その後、暫くの間動く事は無かった。
遠くそれを眺めていたルーミアは
「よし、食べていいわよ」
と一言つぶやく。
2つの「何か」が動き出す。
3人を挟み込むように・・・・・
「後は魔界ね・・・・」
最大の脅威であった魔女3を消し去ったルーミアは、魔界に対して「切り札」を使うことにした。
「レミリア、フランを屋敷の外の世界に招待するわ。」
全てを破壊する悪魔の妹も、陽光という恐怖に支配されていた。
姉に連れてこられた「切り札」に
「魔界へいってらっしゃい。」
と外出許可を出す。
ルーミアは魔界の神を倒すのではなく、フランドールの破壊衝動とその力を極限まで増幅させて
魔界そのものを破壊する策にでた。
1羽のコウモリが魔界の上空にいるフランにささやく。
「やりなさい。」
「ぅん。アハはハハハ・・・ゥふフ・・・フハハ・・ヒヒ・・・」
極限まで高められた破壊衝動により既に自我が崩壊しかけている。
それでも破壊する術は心得ている。
狂喜の表情でそれを行動に移す。
「禁忌」
所持している札に暴力的な魔力が送られ、破壊の術式が発動しその手にスペルカードが形成される。
「レーヴァテイン!!」
想像を絶する魔力量により、普段は振るうはずの炎の剣は出現せず、
フランドールの遥か上空より、巨大な炎の柱が降りてくる。
全体を見れば、一本の剣を象っているが地上からでは、燃える空が降ってくるようにしか見えない。
この一撃で魔界の中心部は消滅し、余波で全土が壊滅した。
フランドール自身も巻き込まれてしまった。
「お掃除は終了♪」
ルーミアは紅魔館でそうつぶやいた。
この幻想郷には夜しか無い。
遥か太古に昼と夜に2分された世界を取り戻したのだ。
「次は・・・人間界ね、フフフ」
夜・ルーミアは止まらない。
全てを夜で染めるまで。
―終わり―
度肝を抜かれました
書いてほしかったかな。魔理沙達がどのようにしてやられたか
など。
了解です。
何とかして書いてみます。
音速遅いですが、誤字どこか教えてください_| ̄|○
一体全体どうやってこんな化け物を封印したのかって。