きがついたら
わたしはうまれていた
うまれたといっても
だれがうんだのかはしらない
わたしは
ただ わたしだった
ほかのなにものでもなく
ほかのだれでもなかった
わたしにはちからがあった
きょうかいをあやつるちから
きょうかいをあやつるちからをもつもの
それがわたしだった
わたしはきょうかいをあやつった
わたしはきょうかいをあやつるものだから
わたしはきょうかいをあやつった
きょうかいをあやつるものがわたしだから
わたしはきょうかいをあやつった
わたしはきょうかいをあやつった
わたしは
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「レティ! 行ってきたよ! 博麗神社へ! 霊夢も魔理沙も協力してくれるって!」
「そう… チルノ、ありがとう」
「…っ だ、大丈夫だよ。霊夢はレティの境界をずらした奴をとっつかまえてきてくれるし、魔理沙も凄い治療法を持ってきてくれるんだから!」
「それは頼もしいわね。 きっとチルノのお願いが良かったのね…」
「レ、レティ!!」
湖畔の洞窟では、真っ先に力の限り全速で戻ってきたチルノが、芝生に横たわったレティを精一杯介抱していた。
涙を見せまいと強がりながら、それでも涙をこぼしながら。
レティの体は、擦り傷、打撲、そして凍傷に冒されていて、一目で危険な状態にあることは明らかだった。
それでも、チルノは決してあきらめなかった。
「そうだ、レティ! 何かして欲しいことはある? 私に出来ることなら…ううん! 出来ないことでも何でもやるよ!」
「まぁ… それはありがたいわね。 雪でも降るんじゃないかしら。」
「えっ? 雪が降るの! だったら、絶対やる! やってやるんだから!」
「ふふふ… そうね、それじゃぁ…」
レティはゆっくり体を起こして
「頭、なでさせてくれる?」 と、笑顔で手招きした。
「そ、そんなんでいいの? もっと他の大変なことでも全然…」
「いいのよ。これが一番、元気になれるんですもの。だって、チルノの元気が私に入ってくるから。」
その言葉にチルノはついに堪え切れなくなり、
「レティ~~~~~~~~!!!!!」
と顔をくしゃくしゃにしてただただ思いっきりレティに抱きついた。
「よしよし、チルノは泣き虫さんね。」
「うん… うん! レティの前だったら、泣き虫でもいいもん!」
「あらあら、こんなところをあの二人に見られたら、笑われちゃうわよ。」
「そうね。」
「全くだぜ。」
「うん… うん…ってえええええええええええええええええええ???!?!!!?!?!」
心臓麻痺を起こしそうな程の絶叫が洞窟の四方八方にこだました。
「あ、あんたたち…! どうして! ていうか物凄く早すぎない?!」
もはや慌てふためくことしかできないチルノの背後には、脱力感さえ混じっている呆れた表情の霊夢と、にやけわらいがいつもの3割増に素敵な魔理沙が立っていた。
「ご挨拶ね。せっかく人が出来るだけ早くと思ってきたのに。」
「ま、おかげで貴重なものが見れたけどな。」
「ううう…」
ようやく、チルノが静かになったあと、一呼吸おいて魔理沙はレティに向き直った。
「レティ、言いにくいことなんだが、今のあんたの状態は…」
「何となくはわかっているわ。私は今は冬の妖怪ではないんでしょ。」
「…まぁ、そういうことだ。本当はもう少し複雑な状態なんだが、実は正直言って驚いてる。」
「え?」
「チルノに感謝しないといけないぜ。チルノがあんたに助かって欲しい一心で必死に看病したからこそ、今の状態でも生きていられてるんだ」
「…ふふふ、それこそ他ならぬ私が一番良くわかってるわ。だって、チルノが看病してくれた間、ずっとチルノの気持ちや元気が私に伝わってきたもの。だから、こうやって生きようとする力が生まれているのよ。」
「ちぇ、まいったな。そう言われちゃ、魔女の立つ瀬がないぜ。」
そう言いながらも、ちっとも悔しそうでない魔理沙は、一旦帽子を少し目深にかぶり直してから話を続けた。
「…ただ、今のままじゃどの道解決にはならない。」
「そうね。私の中の境界を元に戻さないことには、ね。」
「レティ…」
チルノが不安そうな表情で見つめる。
レティは、そんなチルノにやさしく微笑みながら、それでも毅然とした態度で言った。
「いい、チルノ。私は決してあなたと離れたいなんて思ってはいないわ。あなたが教えてくれた春の世界はとても素敵なものだった。暖かな光、鮮やかな花、吹き出す命… すべてが生き生きとした活力に満ち溢れていた。」
「………」
「けど、私は冬とともに現れ、冬とともに生き、冬とともに去る冬の妖怪。冬の厳しさを見つめ、冬の美しさを楽しみ、冬の生命を謳歌して、冬の世界を祝福する存在。その素晴らしい冬の世界で、かけがえのないあなたと一緒にいること。それが、私、レティ=ホワイトロックの一番の幸せなの。だから、その幸せが、次の冬も、その次の冬も続くように、今はお別れしないといけないのよ。」
「…っ」
「大丈夫。あなたが私を待っててくれる限り、私はまた、冬にあなたの前に現われるわ。だって、それが私の望みなのだから。だから… ね、待っていてくれる?」
「…うん… 待ってる。絶対に待ってるから!」
「ええ、私も、絶対に会いに行くわ。」
「絶対! 絶対だよ!! レティ!」
「ええ…」
それ以上の言葉は続かなかった。
ただお互いの絆を確かめるかのように、しっかりと抱きしめ合った。
その後、魔理沙とチルノによる応急手当が終わって、レティの容態が落ち着いた頃、それまで霊夢の陰に居た八雲紫がすっとレティの前に立ち、レティに深く頭を下げた。
「こんにちは、レティ=ホワイトロック」
「…あなたは」
「私は、八雲紫といいます。…ごめんなさいね。あなたの境界をずらしてしまったのは、――私です。」
「…そうだったの。確かに、あなたにはあの少女の面影があるわ。」
「…ええ、その少女は昔の私ですから…。あの時も、まさにこのような感じでした。」
「ひとつ、いいか?」
魔理沙が二人の会話に割って入った。一度ついた好奇心を満たさずにはいられない、魔女の性だった。
「八雲紫、つまり、幼い頃のあんたは、時間の境界を抜けてこの時間に来たことがあるんだな。」
「ええ。 幼い頃、というよりほぼ生まれたばかりの頃だけど。」
「何故」
魔理沙はただそれだけを問い掛けた。それが何を指すとしても、返ってくるであろう答えはひとつだけだから。
「私は境界を操るすきまの妖怪。それが私の全てだったから。境界を操ることしか私にはなかったから。」
「…」
「そして、あの時も、そこのすきまからこちらを眺めていたわ。」
「…?!」
いち早く異変に気がついたのは霊夢だった。
今まで何も無い空間に、なにかが生じている…
そう感じた瞬間、そこに、その少女はいた。
黄金色のウェーブがかった長髪をツインテールにしたその少女は確かに紫の面影を重ねることが出来た。
少女は、感情のこもらない瞳で見つめ、抑揚のない調子で言った。
「なにをするつもりなの?」
その少女をはっきりと見据え、きっぱりとした調子で、紫は言った。
「レティ=ホワイトロックの境界を元に戻すのよ。」
「…どうして?」
「それが、レティの望むことだからよ。」
「…境界を戻したら消えてしまうのに?」
「そうよ。でも、それで終わりじゃない。新しい冬にここに戻って、そこの氷精や皆とまた楽しく過ごすために、今はお別れしないといけないの。」
「でも、境界を動かせるのはわたしだけよ。」
紫はそこで、一旦目を閉じ、一呼吸置いた後、覚悟を決めたように言った。
「…貴方は、気が付いていない。」
「え?」
「貴方は気が付いていない。境界を動かせるのはあなただけではないということに。」
「どういう、こと?」
少女の目に明かりが灯る。
それは、初めて宿る、感情の炎。
「…私にも境界は動かせるの。」
「うそ…」
炎のゆらめきが大きくなる。
少女の心の温度が上がる。
「それにね、誰もが動かせる境界もあるのよ。」
「うそだ… そんなの、うそだ!」
なんで、こんなに熱いのか
どうして、こんなに苦しいのか
「うそじゃないの。それはね、幸せの境界よ。」
「…しあわせの、きょうかい?」
「ええ、みんながそれぞれ自分の中に築く大切な境界。
そしてそれは、まわりの人達によって動かすことの出来るものなの。」
少女の体が震える
少女の心が揺さぶられる
「レティの幸せの境界は、レティとその仲間たちによって築かれたの。
あなたは、確かにレティの旅立ちの境界を動かした。けれど、幸せの境界を動かすことはできなかった。
だって、レティが望む幸せは、全く変わらなかったのだから。」
「…っ じゃぁ! わたしはいったいなんなの?! なんのために、わたしは!」
それは、悲痛なまでの少女の叫び。
それに込められたのは、少女の持つ思いの全て。
紫はそれを静かに受け止め、
そして、少女に問うた。
「…あなたは、なぜレティの境界を動かそうとしたの?」
「… それは… 」
「…それは、レティが喜んでくれると思ったからではないの?」
「…あ!」
「だから、レティの事が気になって、今また様子を見に来たのでしょう?」
「…!!」
「あなたは、境界を操るモノだから境界を動かそうとしたんじゃない。あなたは、レティを助けたかったから境界を動かそうとしたのよ。」
「……わたし…が……レティを……」
紫の言葉が、少女を形つくっていく。
少女は、自分を形つくっていく。
そして、紫は、大切なものを慈しむように、そっと、少女のほほに手をふれて、言った。
「…あなたは、やさしい娘ね。」
「っ… あ、ああ…」
少女の目から涙が溢れる。
暖かい涙が、次から次から、止めどなく。
「う、うわ、うわあああああ! わたし、わたし!!!!」
「…うん、うん… よしよし」
少女は、初めて自分を見てくれた人の中に崩れ落ちて、
溢れ出る涙を、感情を、心のままに流し続けた。
―――しばらくして、少女が落ち着いたのを見計らって、紫はやさしく少女に諭した。
「いい、あなたは確かに他の人にはない力を持っている。けど、それがあなたの全てではないの。他人を思う気持ち、その暖かい涙を流す心、そういうものを全てあわせたものがあなたなのよ。」
「う、うん…」
「大丈夫、あなたはこれからかけがえのないお友達や家族とともにいっぱい幸せの境界を築いていくのよ。
それが、あなた… 八雲 紫なの。」
「やくも ゆかり?」
「そう、それがあなたを表す名前。 ほかの何物でもない、あなた自身の名前よ。」
「あ、う、うわ… わ、わた、しの名前 やくも ゆか…り」
「…気に入ってもらえたかしら」
「う、うん! あ、あ… あり、ありが…とう!」
少女は紫を抱きしめる。
自分の存在を確かめるかのように…
紫は少女を抱きしめる。
自分の誕生を祝うかのように…
こうして、いままで他の何物でもなかった少女は、
他の何物にも代え難い存在、 やくも ゆかり になった。
「―――いい? ゆかりは、レティの中の境界を元に戻してね。私は一時的にレティの周りの空間の冬と春の境界を動かすわ。」
「うん!」
別れの時が迫っていた。
洞窟の中の最も広い場所で、紫とゆかりはレティの左右に挟み込むようにして立ち、そのレティの正面には、チルノが立っていた。
「レティ、お別れだね。」
「ええ、チルノ。今年は本当に楽しかったわ。
それと、ゆかりちゃん。」
「え、あ、ごめん…なさい。わたしのせいで、あなたを…」
「ううん。そうじゃないの。私、あなたに一つ言い忘れたことがあるわ。」
「え?」
「あなたの気持ち、とても嬉しかった。私、あなたと会えて、幸せよ。」
「あっ! レ、レティ! わたしも! わたしも幸せよ!」
「ふふ、これであなたにも、幸せの境界が出来たわね。」
「あ…! うん! レティ! わたし、この境界をずっと、ずっと大切にするよ!」
「ええ。私もあなたと築いたこの境界、ずっと大切にするわ。」
「…っ! あ、ありがとう!」
ゆかりは、顔をくしゃくしゃにさせて、泣きながら、わらった。
「いくわよ、ゆかり」
「うん!」
紫とゆかりが精神を集中させる。
すると、レティの体にはちきれんばかりの寒気がみなぎり、その周りの空間にも冬の気配が溢れ出した。
冬の妖怪に戻っていくレティ=ホワイトロックをしっかりと目に焼き付けながら、チルノはできうる限りの気丈さをもって言った。
「レティ…、また、会えるよね」
「ええ、もちろんよ。」
「遅れてきたら承知しないんだから」
「ええ、遅れたりしたら、また泣かせちゃうもんね。」
「な…! ふ、ふんだ! そんなことないもん!」
「ふふ、そうね、それじゃあ、また新しい冬に会いましょう」
「うん! 待ってるからね!」
「ええ」
もう、チルノに涙はなかった。
すがすがしいくらいの爽やかな別れだった。
「それじゃあ、冬と春の境界を戻します。本当に、ありがとう、レティ」
「ありがとう!」
「…レティ!」
レティはそれらに応えるようにやさしく微笑んで、そして、いなくなった。
光の粒が、舞った。
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全てが終わった後、一同は湖畔の大木の木陰で、すこし西に傾いた太陽を眺めながら
思い思いの姿勢で休息を取っていた。
「頭のなかで現在と過去の境界がごちゃごちゃになっている気分ね。さっきの言葉が、新しさと懐かしさの二重奏を奏でているわ。」
「そうだよな、あんたも…」
「ええ、私も昔同じ事を私から言われたのよ。けど、今言った言葉は決して昔言われた言葉を繰り返したものじゃないわ。今の私が、今の自分の中から紡ぎ出した言葉なのよ。」
「確かにな。だからこそ、あのゆかりがあそこまで泣いたんだもんな。」
「…何かひっかかる気がしますわ。」
「気のせいだぜ。」
誰もしゃべらない時間がゆったりと過ぎ、いつしか湖畔にゆるやかな風が吹き始めた頃、紫はのそりと立ちあがって言った。
「よいしょっと、それじゃ、私はこれで帰りますわ。本当にお騒がせしてごめんなさいね。」
霊夢と魔理沙に軽く会釈してそういうと、紫はいつもの移動用スキマをだして、帰る準備をし始めた。
そして、そばに座っていたゆかりに向かってしゃがみこみ、にっこり微笑んで、頭を軽くなでると、
「じゃあいきましょうか、ゆかり。今日は家に来てゆっくり休みなさい。おいしいお食事も用意してあるわ。」
とやさしい声でいった。
ゆかりは、一瞬キョトンとしたあと、すぐに顔を思いっきり輝かせて、
「う、うん! ありがとう、おばちゃウグゥ?!」
ゆかりは一瞬にして消えてしまった!
「…大丈夫よ。先にマヨヒガに送っただけだから。」
「…」
「…」
「では、あななたちもお気をつけて」
何に?とは言えない二人を置いて、紫も隙間の中に消えていった。
「…こういうのも自業自得っていうのかしら?」
「…どうだかな。」
「で、あれはどうするの」
霊夢が指差した木陰の下には、疲れ果てた氷精が健やかな顔で眠っていた。
「連れて帰る?」
「ここまできてほっとくのも寝覚めが悪いしな。」
「あの娘はベッドが好きだと思うんだけど」
「ふとんのふわふわ感もなかなか捨てがたいと思うぜ」
「…」
「…」
「じゃんけんはどう?」
「異存はないぜ。」
勝負は一瞬で決まった。
「…やっぱり縁起悪いわね」
「なあに、運ぶくらいなら手伝ってやるぜ。ふたりの縁起をあわせれば、差し引きゼロだ」
「そういうものかしら」
「そういうものだぜ」
そうして、最後まで残っていた三人も、湖から飛び去っていった。
あとには、ただ穏やかな水面が広がっていた。
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夕方の朱の光が博麗神社を茜色に染め上げていた。
西の空は澄み渡っており、明日の晴天を予感させた。
「う、ううん… ここは?」
「目が覚めた?」
「?! なんであんたがここにいるのよ?」
「ここは私の神社だから私がいても不思議じゃないと思うけど。」
「え?」
チルノは言われて上半身を起こし、あたりをきょろきょろ見回す。
それで、ようやくここが博麗神社の社務所の中だということに気づいた。
霊夢は調理場に向かってかまどを炊いていて、その後ろの居間のふとんにチルノは寝かされていた。
「あたし、確か、湖の洞窟で… あ…!」
チルノの脳裏に、先ほどのレティとの別れが浮かび上がった。
「レティ…」
「ま、無理も無いわね。あれだけのことがあったんですもの。」
「…」
俯いたチルノを柔らかい眼差しで眺めていた霊夢は、チルノのそばにそっと近寄り、背後から肩に手を伸ばすと、
「大丈夫よ。」
と、チルノの上半身を自分の上半身に寄せた。
「う、うわあああああああん…」
背後から抱き寄せられたのが引き金となり、チルノは安堵した子供のようにただ一心に泣き続けた。
しばらくして、外の軒下で待っていた魔理沙のところに、チルノを再び寝かせつけた霊夢が軽く溜息をつきながら出て来た。
「よ、ご苦労様。」
「まあね。なれないことはするもんじゃないわ。」
「その割には、中々の保護者ぶりだったぜ。」
そんな魔理沙に横目でちらっと視線を向けたあと、霊夢はまっすぐ向き直り、空を遠めに見遣りながら
「…冗談。」
と、わずかに口をほころばせて言った。
「そうそう。実は、レティが最後に消えた場所で、こんなのを見つけたんだんだが。」
と、魔理沙は、ポケットのなかから、銀色に輝く結晶状の宝石を取り出した。
「へえ、綺麗な宝石ね。」
「ああ、この宝石、どうやら夏でも溶けない絶対凍度の雪の結晶なんだそうだ。」
「つまり、それ、レティの置き土産ってこと?」
「そうだな、おそらく、あの泣き虫恋娘が泣かないように、自分の分身を置いていったんだろうぜ」
「過保護妖怪ね。」
「違いないぜ。」
そこまで言うと、霊夢と魔理沙はお互い自然に笑いがふきこぼれた。
「あ~~~~! 何か綺麗な物持ってる~~~! 私にも見せなさいよ~!」
いつのまに目が覚めたのか、軒下の入り口から出てきたチルノが二人に向かって大声で叫んだ。
「別に隠しやしないわよ。」
「あ! こ、これ… 雪の結晶!!」
「よかったな。レティが残してくれたんだ。これでもう泣かなくてすむぜ。」
「う、うるさい! わぁ、綺麗…」
「これでやっとめでたしめでたし、てとこかしら。」
「そうだな。世は全て事も無し、だぜ。」
「レティ、ありがとう…」
寄り添う三人の影が夕暮れの博麗神社に長く伸び
その側を、一陣の風が通り過ぎて、遥か山の方へと吹き抜けていった。
こうして、長かった幻想郷の冬は、ようやく、終わりを迎えた。
(了)
しかしいい話ですな。
まさか東方でそれを表されるとは。