Coolier - 新生・東方創想話

レティチル座ライブラリンス

2004/03/29 05:33:04
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「寒さだけなら人一倍、春夏秋冬いつでもヒンヤリ、冷え性だけが悩み種。湖上の氷精、おてんば恋々娘々・チルノでーーっす」
「冬に忘れられて幾星霜。とっくに春だけどまだまだ春い者には負けられません。咲かせて見せます最後の一花、見上げてごらんよ冬の星図。レティ・ホワイトロックです」
「ふたりそろって!!」
「『レティちゃんチルちゃん極寒コンビ~~~』」
「まーそんなわけでね。今日も頑張って行こうっていうわけなんですけど」
「はいはい」
「あたしは怒ってる!」
「また突然ね」
「最近、あたしのことを知力が低いとか、頭が悪いとか言う連中が増えてきて、すっごく業腹なの!!」
「なるほど」
「だから、頭がよく見えるようにするにはどうしたらいいか、って考えてるんだけど」
「けど?」
「いまいちいいアイデアが思いつかなくって」
「そりゃ難儀ね」
「どうしたらいいと思う?」
「ン~、そうね。知的なアイテム的なものをいつも持っていれば、他人からはインテリっぽく見られるんじゃあないかしら?」
「ふむう。具体的にいうと?」
「そうね、たとえば、本とか」
「本ねえ。確かにアレは、魔女とか何となく頭よさげな連中が持ってるけど」
「そうそう。本をいつも持っていれば、利口に見られるんじゃあないの?」
「ふーん。じゃあさっそく本をゲットしてこようーーっと!」
「ゲット、ってアテはあるの?」
「え? ぜんぜん」
「……(そんなだからおバカに見られるのよ)」
「なに?」
「いや、別に。それより、本ならあそこにいけばあるんじゃないかしら」
「と、いうと?」

 かくしてやって参りましたのは紅魔館は魔女の書斎
 大量の稀覯本がずらりと本棚を埋め尽くしていようかという
「ふへー、本がいっぱいだ」
「まぁ、手ごろなのをさっくり持っていきましょ」
 などと物色しようとしますと
「――持って行かないで」
 とやって参りましたのは書斎ずまいの小悪魔であります
 湯治に出かけた魔女に変わって書斎あらしを阻止しようという腹積もり
「しゃらくさい。あたしたち極寒コンビは知的だ!」
「それを言うなら無敵、でしょ」
「争うと、本に被害が出ます」
 と、小悪魔はなおも続けていうには
「ここはひとつ、平和的な方法で、ことを収めましょう」
「と、いうと?」
 そこで小悪魔が頭の羽をぱたつかせながらいうことには
「本というものは知識を得るための媒体ですから、これらの書物の内容を書き写せばそれでいいのではありませんか」
 冷気を撒き散らす氷精のそばとて、寒さに肌を粟立たせながら小悪魔はそう提案
「面倒くさいなぁ!」
「でも、揉め事を起こすよりはいいんじゃない?」
 さも嫌そうなチルノでしたが、レティに勧められてやむなく承諾しようかという
「しょうがない、これも知的に見られるためだもんね」
「そう、そう」
 そこでチルノ、日ごと書斎に通っては、本を筆写していこうかという
「ていうか、あたし字書けないんだけど」
「――書けなくても、書き写すことはできるでしょう」
「そりゃーそうだけどさぁ」
 ぼやきながらもチルノ、知的めざしていっぱいいっぱい、一生懸命に筆写に励もうというしだい
 やがてレティが春眠に入って娑婆から姿を消しても、なお書斎がよいは続こうという
「う~ぐ~っ、もういやだーっ、何でこんなことしなきゃならないのよっ」
「知的に見られるためでしょう?」
「ううううう」
 チルノ、ぼやき節ながらもこつこつと写し進め、ついには一冊分をまるまる書き写し終えます
「やったーーっ!」
「――ご苦労様でした」
 と小悪魔、チルノから紙の束を取り上げます
「ちょ、ちょっと!? 何するのよっ」
「本というものは、百篇読み返すより、一度書き写すほうが内容を憶えるものです。いうなら、あなたは紙に書き写しながら、同時に、自分自身の記憶にも書き写していたのです」
「い、いわれてみれば……何が書いてあったかは、読み返さなくてもはっきりと憶えてる」
「――そしてそうなれば、もはや書物に頼る必要はありません」
「…………」
「叡智とは、つねに心の中に息づいているものですから」
 小悪魔は手にしていた紙の束を整え、クリップで留めながらなおもいうには
「もし、必要ならばこれを本に仕立てても宜しいですが?」
「……うぅん」
 チルノ、首を振って飛び立とうかという
「もう、いらないや」
「――そうですか」
 氷精が去ったあと、小悪魔は羽織っていたケープを脱いで汗をひとぬぐい
 とうに、夏が訪れていたのでありました
もうめっきり春のはずなのにわりあい冷やっこかったりしてギシギシな日々です
体調はまったりと整えたいものです いままったく
STR
http://f27.aaacafe.ne.jp/~letcir/
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コメント



0.1210簡易評価
16.無評価ナナシ削除
相変わらず、テンポが良くて楽しいお話です。チルノの驚嘆すべき忍耐力に乾杯w
25.40名前が無い程度の能力削除
図書館にはスペアがひとつ増えてウッハウハ、という小悪魔の小悪魔的なモノローグがなかったのがちょいと意外でした。
27.60自転車で流鏑馬削除
そのまま小悪魔がチルノの先生になっちゃったり、それでチルノが本当に頭良くなっちゃたり。

しないか。