この作品は、『ゆかりん・紅魔湾に沈められて』と『ゆかりん・香霖堂にいって』の続きです。
そちらから先に、お読みになったほうがよろしいと思います。
<簡単すぎるあらすじ>
ゆかりんが記憶喪失になった。
夜と昼の境界が混じり合った幻想郷、その空をかける烏天狗。
伝統の幻想ブン屋 射命丸 文だ。
彼女は今日も、空を漂う。
彼女は突如、明後日の方を向く。
「あややんレーダーに反応あり!あっちの方ですね!」
その姿を見て、肩に止まっているカラスがため息のする仕草をする。
対する文は、空をかける。
レーダーが反応した、香霖堂に向かって…
狐がはぁはぁ悶えてる。
霖之助と霊夢と魔理沙は黙々と箸を進めている。
紫は霖之助の陰に隠れながら、料理を上品に口に運ぶ。
「うん、焼き加減もいいしとってもおいしいよ、この焼き魚」
「ええ、こんなにおいしいご飯を食べたの久しぶりだわ」
「ああ、これは最高だ」
「あ、ありがとうございます」
もくもくと口を動かしながら、顔を赤らめて下を向く。
「ぬをぉおおぉぉぉ~~~」
そして、それを見た狐が雄叫びを上げる。
それを見た紫は、びくりと体を震わせて泣きそうになる。
「うるさい」
陰陽玉が狐の鳩尾に入って、そのまま開いている窓に吹っ飛ばした。
そして、ようやく静かな夕食が始まった。
数刻前…
「香霖堂殿、お邪魔させていただく」
九つの黄金色に輝く尻尾をもった狐の妖怪 八雲 藍が立っていた
「…霊夢…これはどういうつもりだい?」
霖之助は警戒心むき出しで霊夢に聞く。
「どういうって、こういう意味よ」
霊夢は、事も無げに答える。
「違うそういう意味じゃない!」
霖之助はいったん切ってから続ける。
「もう一人来るなら言っといてくれ!晩御飯が足りないじゃないか!」
「いや、香霖…そこじゃないだろ」
突っ込む魔理沙。
「大丈夫よ、こいつもう済ませてきたらしいから」
「なんだ、それならそうと言ってくれればいいのに」
「だからこういう意味って言ったでしょ」
「いや、だから、お前らなぁ‥」
魔理沙の突っ込みはむなしく、場の空気に流されてしまった。
「香霖堂殿、つまらないものですがどうぞ」
「あ、どうも」
そう言って、藍は近くの村の名物『白沢まんじゅう』を霖之助に渡す。
「で、家に何の用ですか?」
「紫様がここにいらっしゃると聞いてやってきた」
ようやく本題に入ったらしい。
「わかった、呼んでくるよ」
霖之助はくるりと後ろに向き、手を口元に持ってきて…
「紫~、君にお客様だよ~」
「え、は~い、わかりました~」
ぱたぱたという足音が近づいてくる。
そして、ひょこっと満面の笑顔が顔を出した。
藍は、その笑顔を真正面から受けた。
鼻から一筋の赤い線が引かれる。
そして次の瞬間、紫は蒼い顔をして霖之助の後ろに隠れた。
「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!」
現在…
「「「ごちそうさまでした」」」
「はい、お粗末さまでした」
食事を食べ終えた四人は、それぞれ自分たちが汚した皿を片づける。
紫は本当にうれしそうに、空っぽになった容器を台所へ持っていく。
窓には、赤い筋を引いている狐がへばりついているが気にしないでおいた。
気にすると紫が怯えるからだ。
「さて、布団でも敷くか」
そう言って、霖之助は立ち上がる。
「おう、手伝うぜ」
「自分の分は自分でって、どこかの誰かが言ってた気がするわ」
「え、それはどういう意味だい」
霖之助は二人の言っている意味を測りかねた。
答えは簡単だというのに
「だから、私たちも泊まるってことだぜ。香霖」
「そういうことよ」
たとえ反論しようが、彼女たちは必ず泊まるだろう」
霖之助はあきらめて、溜息をつくだけだった。
「なんですとぉぉぉぉぉ~~」
どっがしゃぁぁぁぁん
店の入り口で、主に扉が吹き飛んだような音が響いた。
まぁ、おそらく吹き飛んでいるのだろうが。
「伝統の幻想ブン屋 射命丸 文、参上!」
びっしぃぃぃぃぃ!
そんな効果音とともに、新聞記者が殴りこんできた。
正直、夜にこんな効果音とともに来られたら近所迷惑になる。
近所と言っても、魔理沙と人形遣いのアリスしかいないのだが…
「いらっしゃい、今日は何の用だい?」
とりあえず後で直してもらおうと思いながら、彼は文にそう聞いた。
文はというと、びしぃぃ!と霖之助に指を突き付ける。
「やはり今回のあややんレーダーに狂いはなかったですね」
普段は狂ったりするんだろうか、などと誰ともなく思ったものがいたが、文の新聞発行率とネタを見てみればおのずと予想が付いたので、誰も何も言わなかった。
「で、本当に何の用だい?」
霖之助は改めて聞く。
「しらばっくれても無駄です!私はしかとこの耳で聞きました!」
「ふ~ん、それはいったいなんだい?」
ぐぐっと文が霖之助の眼前まで詰め寄った。
「お泊りですよ!お泊り!」
「ええっと、文さんもお泊りしたいんですか?」
「違います!夜!ひとつ屋根の下で女の子と…!これ以上は言えません!」
そこで言葉を切った文は、さっき途中で声をかけてきた者の方を向く。
そこで固まる。
「ええっと…よくわかりませんが文さんも一緒に泊まりたいんですね!」
にこりと輝きスマイル。
窓の外で盛大に赤い噴水が上がる。
文は動くことができない。
霖之助は固まった文を引っ張って、外に出る。
数回、頬をぺしぺし叩く。
やがて、正気に戻った文は第一声に叫びをあげる。
「なんなんですか~~~~~!?あれは~~~~~~!?」
「まぁ、それは」
霖之助説明中~~
少女理解中~~
「なるほど、あ、あの素晴らしい笑顔はそれが理由ですか」
カリカリとメモを取る文。
「でも、それじゃあ私の名前がわかっていたのは何でですか?」
「それは君が最初に名乗っていたからだろ…」
「…あれ?そうでしたっけ?」
霖之助と文のカラスは、同時にため息をつく。
「まぁ、それで色々あってのお泊り会だよ」
「なるほど、やはり私のあややんレーダーはに間違いはなかったようですね」
「まぁそうかもしれないね、じゃぁ」
霖之助は、天狗の技術は世界一―!などと叫んでる文を無視して、さっさと店に戻った。
「ただいま」
「おかえりなさい、霖之助さん」
最初に出迎えてくれたのは紫だった。
さっきの間にお風呂でもはいったのだろう、少し髪に湿り気がある。
「お、香霖、布団敷いといたぜ」
「あ、あとお風呂に入ってないのは霖之助さんだけよ」
「わかった、今日はお風呂は止めておくよ」
そう言って、箪笥から掛け布団を取り出してそれを持って、カウンターの椅子に座り込んだ。
「おい、香霖!布団はそっちじゃないぜ」
「ああ、でも四人じゃさすがに狭いだろ?だから僕はここで寝るよ」
そして、霖之助は目を瞑る。
「霖之助さん、そんなところで寝たら風邪を引いちゃいますよ!」
少し怒ったように紫が言う。
それに便乗するかのように魔理沙が続ける。
「ああ、風邪をひいたら大変だぞ、さっさとこっちにこいよ」
「いや、それよりも静かにした方がいいみたいだよ」
霖之助はそのまま霊夢を指さす。
霊夢は布団にもぐってすやすやと寝息を立てていた。
「というわけで、明かりを消すよ」
言うが早いが、霖之助はさっさと明かりを消した。
とたん、周りは漆黒の闇に飲み込まれる。
「ちぃ、しかたがないな」
そして、香霖堂は静寂に包まれた。
「ところがどっこい、実は起きてるんだぜ」
のそりと、魔理沙に布団が動く。
「こういうのって、なんだかドキドキして眠れませんね」
「お、お前も起きてたのか」
暗くて見えないが、紫おそらく笑顔でそう言った。
「もう、あんたたち五月蠅いわよ」
「霊夢も起きてたか」
「まぁね」
それを聞いて、魔理沙はにやりと笑う。
「まぁいいか、それよりも紫!ちょっとこっち来い!」
「はい?なんですか?」
のそりのそりと、紫が近づいてくる。
「お前の境界の能力を使って、香霖の夢の中をのぞいてこいよ」
「ええ!?」
案の定、驚く紫。
そして反論。
「だめですよ!人の夢を勝手に見るなんて!」
「いいじゃない面白そうだし」
そこで一端切る霊夢、紫が口を開く前にすかさず一言。
「あんただって霖之助さんの考えていること知りたいんじゃない?」
ぎくりと体を強張らせる。
とてもわかりやすい反応。
「で、でも…」
「でももへちまもないぜ。ほら、やったやった!」
いつの間にか周りのペースに乗せられて、紫は霖之助の夢を覗くことにした。
霖之助はいつものように店番をしていた。
そう、いつものように…
「…誰もいない」
誰も来ない、霊夢も来なければ魔理沙も来ない、永遠の閑古鳥。
「今月の生活費…大丈夫かなぁ…」
財布を覗いたが、財布は穴が開いたまま補修すらされてない。
家の食糧備蓄庫を覗くが、そこも空っぽ。
なけなしの食糧も、昨日ネズミに持ってかれたばっかりだ。
「あ、れ…なんだか涙が…」
そう言いながら、カウンターの椅子にどっしりと座りこむ。
「今日も水だけか…」
もはやため息すら出ない…
絶望とはこのことだろう。
「う、うううう・・・・」
「お、おい!いきなりどうしたんだ!?」
突如泣き出す紫、魔理沙はいきなり泣き出す紫を見て慌てる。
「い、いえ、り、霖之助さんが…」
「なんだ、香霖が夢の中でなんかやってきたのか」
「いえ、あまりにも、悲惨で…」
再び泣き出す紫。
そこで悟る。
ああ、霖之助は夢の中まで苦労しているのだと。
魔理沙は、少し盗むのは控えようと思ったのである。本当に少しだけだが。
一方霊夢は、いつの間にか完全に眠っていたのであった。
薄い輝きの中、雀の鳴き声が聞こえる。
「ん、朝か…」
伸びをして体をしっかりほぐしてから立ち上がる。
隣の部屋を覗くと、三人がすやすやとぐっすり眠っている。
霖之助は、そこで壁の時計を見た。
まだ5時であった。
「少し早すぎたかな」
霖之助はタオルを持って、音を立てずに外に出た。
近くの井戸まで行き、持ってきたタオルを井戸の水に濡らしてから体をふいた。
昨日、お風呂に入ってないためこれで済ますつもりだ。
かさり
そんな音が近くの草むらから響いた。
霖之助はひょいっとその草むらを覗いた。
そこには鼻血を流した、狐の半死体があった。
すべての時がしばらく止まった。
「いやぁ、今日もいい朝だ!」
霖之助は無かったことにするのであった。
そちらから先に、お読みになったほうがよろしいと思います。
<簡単すぎるあらすじ>
ゆかりんが記憶喪失になった。
夜と昼の境界が混じり合った幻想郷、その空をかける烏天狗。
伝統の幻想ブン屋 射命丸 文だ。
彼女は今日も、空を漂う。
彼女は突如、明後日の方を向く。
「あややんレーダーに反応あり!あっちの方ですね!」
その姿を見て、肩に止まっているカラスがため息のする仕草をする。
対する文は、空をかける。
レーダーが反応した、香霖堂に向かって…
狐がはぁはぁ悶えてる。
霖之助と霊夢と魔理沙は黙々と箸を進めている。
紫は霖之助の陰に隠れながら、料理を上品に口に運ぶ。
「うん、焼き加減もいいしとってもおいしいよ、この焼き魚」
「ええ、こんなにおいしいご飯を食べたの久しぶりだわ」
「ああ、これは最高だ」
「あ、ありがとうございます」
もくもくと口を動かしながら、顔を赤らめて下を向く。
「ぬをぉおおぉぉぉ~~~」
そして、それを見た狐が雄叫びを上げる。
それを見た紫は、びくりと体を震わせて泣きそうになる。
「うるさい」
陰陽玉が狐の鳩尾に入って、そのまま開いている窓に吹っ飛ばした。
そして、ようやく静かな夕食が始まった。
数刻前…
「香霖堂殿、お邪魔させていただく」
九つの黄金色に輝く尻尾をもった狐の妖怪 八雲 藍が立っていた
「…霊夢…これはどういうつもりだい?」
霖之助は警戒心むき出しで霊夢に聞く。
「どういうって、こういう意味よ」
霊夢は、事も無げに答える。
「違うそういう意味じゃない!」
霖之助はいったん切ってから続ける。
「もう一人来るなら言っといてくれ!晩御飯が足りないじゃないか!」
「いや、香霖…そこじゃないだろ」
突っ込む魔理沙。
「大丈夫よ、こいつもう済ませてきたらしいから」
「なんだ、それならそうと言ってくれればいいのに」
「だからこういう意味って言ったでしょ」
「いや、だから、お前らなぁ‥」
魔理沙の突っ込みはむなしく、場の空気に流されてしまった。
「香霖堂殿、つまらないものですがどうぞ」
「あ、どうも」
そう言って、藍は近くの村の名物『白沢まんじゅう』を霖之助に渡す。
「で、家に何の用ですか?」
「紫様がここにいらっしゃると聞いてやってきた」
ようやく本題に入ったらしい。
「わかった、呼んでくるよ」
霖之助はくるりと後ろに向き、手を口元に持ってきて…
「紫~、君にお客様だよ~」
「え、は~い、わかりました~」
ぱたぱたという足音が近づいてくる。
そして、ひょこっと満面の笑顔が顔を出した。
藍は、その笑顔を真正面から受けた。
鼻から一筋の赤い線が引かれる。
そして次の瞬間、紫は蒼い顔をして霖之助の後ろに隠れた。
「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!!」
現在…
「「「ごちそうさまでした」」」
「はい、お粗末さまでした」
食事を食べ終えた四人は、それぞれ自分たちが汚した皿を片づける。
紫は本当にうれしそうに、空っぽになった容器を台所へ持っていく。
窓には、赤い筋を引いている狐がへばりついているが気にしないでおいた。
気にすると紫が怯えるからだ。
「さて、布団でも敷くか」
そう言って、霖之助は立ち上がる。
「おう、手伝うぜ」
「自分の分は自分でって、どこかの誰かが言ってた気がするわ」
「え、それはどういう意味だい」
霖之助は二人の言っている意味を測りかねた。
答えは簡単だというのに
「だから、私たちも泊まるってことだぜ。香霖」
「そういうことよ」
たとえ反論しようが、彼女たちは必ず泊まるだろう」
霖之助はあきらめて、溜息をつくだけだった。
「なんですとぉぉぉぉぉ~~」
どっがしゃぁぁぁぁん
店の入り口で、主に扉が吹き飛んだような音が響いた。
まぁ、おそらく吹き飛んでいるのだろうが。
「伝統の幻想ブン屋 射命丸 文、参上!」
びっしぃぃぃぃぃ!
そんな効果音とともに、新聞記者が殴りこんできた。
正直、夜にこんな効果音とともに来られたら近所迷惑になる。
近所と言っても、魔理沙と人形遣いのアリスしかいないのだが…
「いらっしゃい、今日は何の用だい?」
とりあえず後で直してもらおうと思いながら、彼は文にそう聞いた。
文はというと、びしぃぃ!と霖之助に指を突き付ける。
「やはり今回のあややんレーダーに狂いはなかったですね」
普段は狂ったりするんだろうか、などと誰ともなく思ったものがいたが、文の新聞発行率とネタを見てみればおのずと予想が付いたので、誰も何も言わなかった。
「で、本当に何の用だい?」
霖之助は改めて聞く。
「しらばっくれても無駄です!私はしかとこの耳で聞きました!」
「ふ~ん、それはいったいなんだい?」
ぐぐっと文が霖之助の眼前まで詰め寄った。
「お泊りですよ!お泊り!」
「ええっと、文さんもお泊りしたいんですか?」
「違います!夜!ひとつ屋根の下で女の子と…!これ以上は言えません!」
そこで言葉を切った文は、さっき途中で声をかけてきた者の方を向く。
そこで固まる。
「ええっと…よくわかりませんが文さんも一緒に泊まりたいんですね!」
にこりと輝きスマイル。
窓の外で盛大に赤い噴水が上がる。
文は動くことができない。
霖之助は固まった文を引っ張って、外に出る。
数回、頬をぺしぺし叩く。
やがて、正気に戻った文は第一声に叫びをあげる。
「なんなんですか~~~~~!?あれは~~~~~~!?」
「まぁ、それは」
霖之助説明中~~
少女理解中~~
「なるほど、あ、あの素晴らしい笑顔はそれが理由ですか」
カリカリとメモを取る文。
「でも、それじゃあ私の名前がわかっていたのは何でですか?」
「それは君が最初に名乗っていたからだろ…」
「…あれ?そうでしたっけ?」
霖之助と文のカラスは、同時にため息をつく。
「まぁ、それで色々あってのお泊り会だよ」
「なるほど、やはり私のあややんレーダーはに間違いはなかったようですね」
「まぁそうかもしれないね、じゃぁ」
霖之助は、天狗の技術は世界一―!などと叫んでる文を無視して、さっさと店に戻った。
「ただいま」
「おかえりなさい、霖之助さん」
最初に出迎えてくれたのは紫だった。
さっきの間にお風呂でもはいったのだろう、少し髪に湿り気がある。
「お、香霖、布団敷いといたぜ」
「あ、あとお風呂に入ってないのは霖之助さんだけよ」
「わかった、今日はお風呂は止めておくよ」
そう言って、箪笥から掛け布団を取り出してそれを持って、カウンターの椅子に座り込んだ。
「おい、香霖!布団はそっちじゃないぜ」
「ああ、でも四人じゃさすがに狭いだろ?だから僕はここで寝るよ」
そして、霖之助は目を瞑る。
「霖之助さん、そんなところで寝たら風邪を引いちゃいますよ!」
少し怒ったように紫が言う。
それに便乗するかのように魔理沙が続ける。
「ああ、風邪をひいたら大変だぞ、さっさとこっちにこいよ」
「いや、それよりも静かにした方がいいみたいだよ」
霖之助はそのまま霊夢を指さす。
霊夢は布団にもぐってすやすやと寝息を立てていた。
「というわけで、明かりを消すよ」
言うが早いが、霖之助はさっさと明かりを消した。
とたん、周りは漆黒の闇に飲み込まれる。
「ちぃ、しかたがないな」
そして、香霖堂は静寂に包まれた。
「ところがどっこい、実は起きてるんだぜ」
のそりと、魔理沙に布団が動く。
「こういうのって、なんだかドキドキして眠れませんね」
「お、お前も起きてたのか」
暗くて見えないが、紫おそらく笑顔でそう言った。
「もう、あんたたち五月蠅いわよ」
「霊夢も起きてたか」
「まぁね」
それを聞いて、魔理沙はにやりと笑う。
「まぁいいか、それよりも紫!ちょっとこっち来い!」
「はい?なんですか?」
のそりのそりと、紫が近づいてくる。
「お前の境界の能力を使って、香霖の夢の中をのぞいてこいよ」
「ええ!?」
案の定、驚く紫。
そして反論。
「だめですよ!人の夢を勝手に見るなんて!」
「いいじゃない面白そうだし」
そこで一端切る霊夢、紫が口を開く前にすかさず一言。
「あんただって霖之助さんの考えていること知りたいんじゃない?」
ぎくりと体を強張らせる。
とてもわかりやすい反応。
「で、でも…」
「でももへちまもないぜ。ほら、やったやった!」
いつの間にか周りのペースに乗せられて、紫は霖之助の夢を覗くことにした。
霖之助はいつものように店番をしていた。
そう、いつものように…
「…誰もいない」
誰も来ない、霊夢も来なければ魔理沙も来ない、永遠の閑古鳥。
「今月の生活費…大丈夫かなぁ…」
財布を覗いたが、財布は穴が開いたまま補修すらされてない。
家の食糧備蓄庫を覗くが、そこも空っぽ。
なけなしの食糧も、昨日ネズミに持ってかれたばっかりだ。
「あ、れ…なんだか涙が…」
そう言いながら、カウンターの椅子にどっしりと座りこむ。
「今日も水だけか…」
もはやため息すら出ない…
絶望とはこのことだろう。
「う、うううう・・・・」
「お、おい!いきなりどうしたんだ!?」
突如泣き出す紫、魔理沙はいきなり泣き出す紫を見て慌てる。
「い、いえ、り、霖之助さんが…」
「なんだ、香霖が夢の中でなんかやってきたのか」
「いえ、あまりにも、悲惨で…」
再び泣き出す紫。
そこで悟る。
ああ、霖之助は夢の中まで苦労しているのだと。
魔理沙は、少し盗むのは控えようと思ったのである。本当に少しだけだが。
一方霊夢は、いつの間にか完全に眠っていたのであった。
薄い輝きの中、雀の鳴き声が聞こえる。
「ん、朝か…」
伸びをして体をしっかりほぐしてから立ち上がる。
隣の部屋を覗くと、三人がすやすやとぐっすり眠っている。
霖之助は、そこで壁の時計を見た。
まだ5時であった。
「少し早すぎたかな」
霖之助はタオルを持って、音を立てずに外に出た。
近くの井戸まで行き、持ってきたタオルを井戸の水に濡らしてから体をふいた。
昨日、お風呂に入ってないためこれで済ますつもりだ。
かさり
そんな音が近くの草むらから響いた。
霖之助はひょいっとその草むらを覗いた。
そこには鼻血を流した、狐の半死体があった。
すべての時がしばらく止まった。
「いやぁ、今日もいい朝だ!」
霖之助は無かったことにするのであった。
>開いてある窓
いる、の方がより良い気がします
>文ぼ新聞発行率
文の、でしょうか
>お前の協会の能力
これは境界ですよね
次の話が楽しみです。
>「今秋の生活費…大丈夫かなぁ…」
多分「今週」なのではと思います。
新婚生活ですよ、
やってることはこれなんて修学旅行? って感じであんなことやそんなことをすることもできるのにしていない。もったいない。
読みづらさが足を引っ張ってこんな評価になりましたが、ご了承願いたい。