この作品は、『ゆかりん・紅魔湾に沈められて』続きです。
先に読んでいただけるとわかりやすいと思います。
<一応のあらすじ>
三人で釣りしてたら記憶喪失になったゆかりんを釣り上げた。
魔理沙を置いて香霖堂に持ち帰った。
パタパタとはたきを振る音が店内に響く、紫は嬉しそうにはたきを振って掃除している。
森近霖之助が店主をやっている、ここ香霖堂で。
「別に、今やらなくてもいいよ」
「善は急げというじゃないですか」
紫はそう言って、にっこりほほ笑む。
霖之助はやれやれと呟いてから、読みかけの本の方に目を移す。
はたきの音がやんだ後、今度は箒で床を掃く音が店内に響く。
霖之助は不思議に思った。
紫に、ここまでの生活力があるということにだ。
しばらく店内は、掃く音だけが支配した。
霖之助は、タイミングを見計らって席を立った。
そして、紫がちょうど掃除を終えるころに、お茶を持って戻ってきた。
「御苦労さま」
「あ、ありがとうございます」
紫にお茶を渡したあと、霖之助も自分のお茶を持ってカウンターにあるイスに座る。
今度は、お茶のすする音が店内を支配した。
「じゃぁまするぜ~~~~~~」
ドバン!と、入口が蹴り破られる。
その音に、紫はびくりと体を震わせ、あわてて柱の陰に隠れる。
「ん、魔理沙かい?どうしたんだいそんなに怒っ…て…いるんだい?」
魔理沙が持っている新鮮なものがはいっている網を見て、霖之助は静かに席を立った。
「自分の胸に聞いてみな」
魔理沙は懐から八封炉を取り出した。
「ああ、ものすごく心当たりがあるよ」
霖之助はというと、ゆっくり魔理沙の方へと近づいていく。
「ところで霊夢はどうしたんだ?」
さらに、今度はスペルカードを取り出す。
「ああ、たぶん神社の方へ向かったと思うよ」
一方、霖之助は魔理沙の横を通り過ぎ、蹴り倒された扉をまたぎ、外に出た。
「最後に、言っておきたいことはあるか?」
そして、外にいる霖之助の方へと八封炉を向ける。
「魔理沙、許してくれ…るわけないな」
「あったりまえだぁ!恋符『マスタースパーク』!!!!」
霖之助くん ふっとんだーーーー
一方、霊夢はというと…
「むむ!」
突如、明後日の方を向く霊夢。
「…後で香霖堂に行けば、おいしい焼き魚が食べれる」
焼き魚~♪などと歌いながら、境内に降り立つ。
「む、やっと来たか‥霊夢」
「あ、紫んとこの式じゃない?何の用?」
そこには、紫の式の狐妖怪 八雲 藍がいた。
彼女は突如、片膝をついて両手を握り、お祈りのポーズをつくった。
「霊夢様、私の罪を聞いていただけますか?」
「うちは教会じゃないから、無理よ」
さっさと神社の中に入っていく霊夢。
藍はというと、懐から銀貨を取り出し、それを賽銭箱の中に放り投げた。
ちゃりぃぃぃぃん
銅貨のような鈍い響きではなく、とても甲高い響きが境内に響き渡った。
「ああ、迷える子羊よ!汝の罪を神は許してくださるでしょう!」
「おお!ありがとうございます霊夢様!」
こうして、霊夢は藍の罪を聞くこととなった。
「で、あんたの罪ってなんなの?」
藍に、さっき香霖堂で正当報酬としていただいたお茶を渡しながら、霊夢は藍に聞く。
「実は…紫さまに…」
「ああ、それ以上言わなくてもいいわよ。罪の原因はわかったから」
「なに!?本当か!」
霊夢がお茶を啜る。
「紫を湖に沈めたことでしょ」
ズガアア~~~ン
そんな効果音が境内に響き渡る。
「で、原因は何なのよ?」
それを聞いた藍は、小さな声で語りだした。
その日は、本当に何でもない一日であるはずだった
主があの写真を持ってくるまでは。
いつものように無理難題と、家事掃除。
藍は、休まる暇なしで働いていた。
そのとき、主人は遊び心だったのだろう、自分にとっての黒歴史という写真を、どこからか持ってきたのだ。
「ちょうど、忙しくていっぱいいっぱいだった私は、『あなたもこんな時があったのねぇ』ああ、と言って振り向いた時に、近くにあった角材で思わず殴ってしまったのだよ」
「ふぅん」
「しかしさすが紫様、一発じゃ昏倒しない。怒りの表情を浮かべて私を睨んできたのだよ」
「そりゃ怖いわね~」
「ああ、私もいっぱいいっぱいだったのだろう、何を思ったのか私は紫様をまた殴りつけたのだよ。何度も」
「まぁ、人って切羽詰まると思いもよらぬ行動を起こすからねぇ」
「悪霊退散、記憶よ消えろ、ここからいなくなれぇ!とか叫びながら」
「本といっちゃってるわね」
「それも笑いながら、いやぁ~あの時は楽しかった~~」
「思いっきり正気かよ!てか、怖いって!」
思わず突っ込む霊夢。
しかし藍は止まらない。
「しかもその時紫様、『やめて!藍!おねがい!やめて!』って泣きながら言ってた気がするけどな」
よっぽど見られたくない写真だったのだろう。
霊夢は微妙に気になるが、まだ死にたくないので忘れることにした。
まぁ、きっと写真だけが原因じゃないだろうとも思ったが、それも忘れることにした。
「そして、後で正気を取り戻したらやばいとか思って、ぐるぐる巻きにして、足に鉄球付けて、そして紅魔湖に落としたのね」
「そうだ、ってなぜそこまで知っている!」
「釣り上げたからよ、ちなみに生きてるわ」
霊夢は、そこまで言ってからお茶を啜る。
藍はというと、口をパクパクさせながら固まっていた。
「…で、会って許してもらいたいの?」
一応聞いてみる。
それを聞いて、ようやく石化が終わったのか口を開く。
「ああ、式は落ちていないし生きているとは思っていたが…会って謝って許してもらいたい、私の主人だし大切な存在だからな…」
霊夢は、思わぬ答えが返ってきたことに驚く。
てっきり、生きているならとどめを刺す!と、いうと思っていたからだ。
「…今、失礼なことを思わなかったか?」
「そんなわけないじゃない」
ジト眼で睨んでくる藍の視線を、さらりとかわし霊夢は立ち上がった。
「んじゃあ、紫に会いに行きますか!」
そして、藍に向かってそう答えたのであった。
場面は香霖堂に戻りまして…
「ふ~~~ん、紫がねぇ」
魔理沙は、まじまじと紫を見る。
紫は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「はい、すみません」
「なんで君がそこで謝るんだい?」
霖之助は、いつものようにカウンターにあるイスに座りながら本を読んでいる。
「だから…」
溜息をひとつ。
「にしても、こんなにも性格が変わるなんてなぁ、香霖」
「なんだい、魔理沙」
「ここぞとばかりに復讐されそうだと思わないか?」
沈黙があたりを支配する。
紫だけは、えっえっ、と泣きそうになりながら二人を交互に見回している。
「わ、私…私…」
「わ、わ、安心してくれ、もしそういうのが来たら‥」
「ほぉ~~、香霖は紫を守ってやるのか…ほぉ~~」
魔理沙は霖之助を半眼で見つめる。
それにたいして、霖之助は困った顔をする。
何か悪いことでも言ったか?などと思って、霖之助は首を捻る。
「いえ…ぐす…助けてくれるのはうれしいんですけど…ぐす…違うんです」
「うん?じゃ、いったい何なんだ?」
「前の私が、いろんな人に迷惑かけたのが…ぐす」
魔理沙が目で、霖之助に助けを求める。
霖之助はというと、魔理沙も苦手なのか…と、妙にほほえましい気分になっていた。
よって助け船を出すことにした。
「大丈夫だよ、これからの君がみんなを助けてあげればいいんだよ」
ねと、霖之助は微笑みかける。
「ほ、本当ですかぁ?」
「ああ、だから泣きやんでくれ」
「…はい!」
そして、輝きスマイル!
魔理沙は思わず顔をそむけた。
霖之助には効果なかった。
「あ、そういえば魔理沙さん」
「さんはよせ、お前にさんづけされると気持ち悪い」
「はい、わかりました」
魔理沙が顔を歪めるのを見て、霖之助は苦笑した。
「で、魔理沙がなんだって?」
「い、いえ、お魚を使ってもよろしいですかってことなんですけど」
そう言ってから、紫はちらりと魔理沙の方を見る。
「どうせここで食べるつもりだったんだ、いくらでも使えよ」
「あ、ありがとうございます!」
紫は、ぺこりとお辞儀をする。
魔理沙はというと、恥ずかしそうに明後日の方を向いていた。
「ごめんくださ~い、ってなんで入口が壊れてるの!?」
月のウサギがご来店した。
「いらっしゃい、え~~~と」
霖之助は、少し脳をフル回転させる。
「曇華院・イナバさん、頼まれたものは用意されてるよ」
「変なところで思い出さないでください!」
ウサギは、へにょり耳を揺らしながら抗議する。
「そうだぜ香霖!さすがに失礼だぞ」
「いやぁ、かたじけない」
「名前もいれなきゃいかんだろ!な、零戦!}
「イントネーションがちがぁ~~う!」
わざわざ顔を真っ赤にして怒る月のウサギ。
「はぁ、零戦・曇華院・イナバさんですか。はじめまして」
ぺこりと、紫がお辞儀する。
「だから違うって言って‥る‥でしょう…」
途中で違和感に気づいたのか、語尾につれ声が小さくなる。
そして、魔理沙に近づいて耳打ちする。
「ちょっとあれ、変な薬でも飲ましたの?」
それに対して、魔理沙は大声で答える。
「別に普通だぜ!そんなことも分からないのか、鈴仙・優曇華院・イナバは?」
鈴仙はこの野郎と思ったが、近くで霖之助がポンと手を打つのと、それがほんとの名前ですかと聞いてくる紫がいたため、口には出さなかった。
魔理沙がニヤニヤしているのが、余計腹立たしい。
「で、どういうことよ?」
「それについては僕が説明するよ」
そう言って、霖之助が説明を始めた。
青年説明中…
少女理解中…
「記憶喪失かぁ…」
鈴仙は、へにょった耳を動かしながら何度もうなずく。
「そういうことだよ、はい、頼まれた薬草だよ」
「あ、すみません」
袋を受け取りながら、お代を渡す鈴仙。
「だから君の師匠に治してもらえないかな?まいど」
う~んと、考えるしぐさをする鈴仙。
「できるかどうだかわかりませんが…一応、師匠に話してみますね」
「ああ、頼むよ」
そこまで言ったとき、急に鈴仙が顔を近づけてくる。
思わず、霖之助は身を引いてしまう。
「でも、戻さない方がいいような気もしますけど…」
言ってはいけない一言を言ってくる鈴仙。
霖之助は黙るしかない。
「では、私はこれで」
そう言って、早々に飛び去っていく鈴仙。
霖之助の悩みはさらに大きくなった。
「では、もうそろそろ夜ですし、晩御飯の調理を始めますね!」
そして、紫はエプロンと三角巾を着用する。
それに気づいて、霖之助は注文を加えた。
「それなら、四人分も頼むよ」
「え、何でですか」
ごく当然な反応が返ってくる。
それに対して霖之助は。
「霊夢が来るからだよ」
「え、霊夢がまた来るんですか」
「ああ、だからだから頼んだよ」
「はい!」
紫は嬉しそうにほほ笑むと、台所の中へと消えて行った。
霖之助は、思わずため息が出る。
魔理沙はというと、商品の本を勝手に読みふけっている。
霖之助はだいぶ前に入れたお茶を啜りながら、カウンターの端にあった読みかけの本を再び読み始めた。
晩御飯までまだ時間がある。
「おい、香霖!もうすぐ晩御飯らしいぜ」
霖之助はハッとする。
窓はすでに暗くなっており、星星が既に空で輝いていた。
「それならば、もうそろそろ来るだろう」
いつの間にか直っている、扉に目を向けぽつりと呟く。
扉は魔理沙が直したのだろう。
「ふぅ~~~霖之助さん、晩御飯食べに来たわよ~~~」
霖之助は苦笑しつつ、扉へ向かう。
扉を開ければ霊夢がそこにいた。
その後ろに、思わぬ人物を従えて。
「香霖堂殿、お邪魔させていただく」
九つの黄金色に輝く尻尾をもった狐の妖怪が…
先に読んでいただけるとわかりやすいと思います。
<一応のあらすじ>
三人で釣りしてたら記憶喪失になったゆかりんを釣り上げた。
魔理沙を置いて香霖堂に持ち帰った。
パタパタとはたきを振る音が店内に響く、紫は嬉しそうにはたきを振って掃除している。
森近霖之助が店主をやっている、ここ香霖堂で。
「別に、今やらなくてもいいよ」
「善は急げというじゃないですか」
紫はそう言って、にっこりほほ笑む。
霖之助はやれやれと呟いてから、読みかけの本の方に目を移す。
はたきの音がやんだ後、今度は箒で床を掃く音が店内に響く。
霖之助は不思議に思った。
紫に、ここまでの生活力があるということにだ。
しばらく店内は、掃く音だけが支配した。
霖之助は、タイミングを見計らって席を立った。
そして、紫がちょうど掃除を終えるころに、お茶を持って戻ってきた。
「御苦労さま」
「あ、ありがとうございます」
紫にお茶を渡したあと、霖之助も自分のお茶を持ってカウンターにあるイスに座る。
今度は、お茶のすする音が店内を支配した。
「じゃぁまするぜ~~~~~~」
ドバン!と、入口が蹴り破られる。
その音に、紫はびくりと体を震わせ、あわてて柱の陰に隠れる。
「ん、魔理沙かい?どうしたんだいそんなに怒っ…て…いるんだい?」
魔理沙が持っている新鮮なものがはいっている網を見て、霖之助は静かに席を立った。
「自分の胸に聞いてみな」
魔理沙は懐から八封炉を取り出した。
「ああ、ものすごく心当たりがあるよ」
霖之助はというと、ゆっくり魔理沙の方へと近づいていく。
「ところで霊夢はどうしたんだ?」
さらに、今度はスペルカードを取り出す。
「ああ、たぶん神社の方へ向かったと思うよ」
一方、霖之助は魔理沙の横を通り過ぎ、蹴り倒された扉をまたぎ、外に出た。
「最後に、言っておきたいことはあるか?」
そして、外にいる霖之助の方へと八封炉を向ける。
「魔理沙、許してくれ…るわけないな」
「あったりまえだぁ!恋符『マスタースパーク』!!!!」
霖之助くん ふっとんだーーーー
一方、霊夢はというと…
「むむ!」
突如、明後日の方を向く霊夢。
「…後で香霖堂に行けば、おいしい焼き魚が食べれる」
焼き魚~♪などと歌いながら、境内に降り立つ。
「む、やっと来たか‥霊夢」
「あ、紫んとこの式じゃない?何の用?」
そこには、紫の式の狐妖怪 八雲 藍がいた。
彼女は突如、片膝をついて両手を握り、お祈りのポーズをつくった。
「霊夢様、私の罪を聞いていただけますか?」
「うちは教会じゃないから、無理よ」
さっさと神社の中に入っていく霊夢。
藍はというと、懐から銀貨を取り出し、それを賽銭箱の中に放り投げた。
ちゃりぃぃぃぃん
銅貨のような鈍い響きではなく、とても甲高い響きが境内に響き渡った。
「ああ、迷える子羊よ!汝の罪を神は許してくださるでしょう!」
「おお!ありがとうございます霊夢様!」
こうして、霊夢は藍の罪を聞くこととなった。
「で、あんたの罪ってなんなの?」
藍に、さっき香霖堂で正当報酬としていただいたお茶を渡しながら、霊夢は藍に聞く。
「実は…紫さまに…」
「ああ、それ以上言わなくてもいいわよ。罪の原因はわかったから」
「なに!?本当か!」
霊夢がお茶を啜る。
「紫を湖に沈めたことでしょ」
ズガアア~~~ン
そんな効果音が境内に響き渡る。
「で、原因は何なのよ?」
それを聞いた藍は、小さな声で語りだした。
その日は、本当に何でもない一日であるはずだった
主があの写真を持ってくるまでは。
いつものように無理難題と、家事掃除。
藍は、休まる暇なしで働いていた。
そのとき、主人は遊び心だったのだろう、自分にとっての黒歴史という写真を、どこからか持ってきたのだ。
「ちょうど、忙しくていっぱいいっぱいだった私は、『あなたもこんな時があったのねぇ』ああ、と言って振り向いた時に、近くにあった角材で思わず殴ってしまったのだよ」
「ふぅん」
「しかしさすが紫様、一発じゃ昏倒しない。怒りの表情を浮かべて私を睨んできたのだよ」
「そりゃ怖いわね~」
「ああ、私もいっぱいいっぱいだったのだろう、何を思ったのか私は紫様をまた殴りつけたのだよ。何度も」
「まぁ、人って切羽詰まると思いもよらぬ行動を起こすからねぇ」
「悪霊退散、記憶よ消えろ、ここからいなくなれぇ!とか叫びながら」
「本といっちゃってるわね」
「それも笑いながら、いやぁ~あの時は楽しかった~~」
「思いっきり正気かよ!てか、怖いって!」
思わず突っ込む霊夢。
しかし藍は止まらない。
「しかもその時紫様、『やめて!藍!おねがい!やめて!』って泣きながら言ってた気がするけどな」
よっぽど見られたくない写真だったのだろう。
霊夢は微妙に気になるが、まだ死にたくないので忘れることにした。
まぁ、きっと写真だけが原因じゃないだろうとも思ったが、それも忘れることにした。
「そして、後で正気を取り戻したらやばいとか思って、ぐるぐる巻きにして、足に鉄球付けて、そして紅魔湖に落としたのね」
「そうだ、ってなぜそこまで知っている!」
「釣り上げたからよ、ちなみに生きてるわ」
霊夢は、そこまで言ってからお茶を啜る。
藍はというと、口をパクパクさせながら固まっていた。
「…で、会って許してもらいたいの?」
一応聞いてみる。
それを聞いて、ようやく石化が終わったのか口を開く。
「ああ、式は落ちていないし生きているとは思っていたが…会って謝って許してもらいたい、私の主人だし大切な存在だからな…」
霊夢は、思わぬ答えが返ってきたことに驚く。
てっきり、生きているならとどめを刺す!と、いうと思っていたからだ。
「…今、失礼なことを思わなかったか?」
「そんなわけないじゃない」
ジト眼で睨んでくる藍の視線を、さらりとかわし霊夢は立ち上がった。
「んじゃあ、紫に会いに行きますか!」
そして、藍に向かってそう答えたのであった。
場面は香霖堂に戻りまして…
「ふ~~~ん、紫がねぇ」
魔理沙は、まじまじと紫を見る。
紫は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「はい、すみません」
「なんで君がそこで謝るんだい?」
霖之助は、いつものようにカウンターにあるイスに座りながら本を読んでいる。
「だから…」
溜息をひとつ。
「にしても、こんなにも性格が変わるなんてなぁ、香霖」
「なんだい、魔理沙」
「ここぞとばかりに復讐されそうだと思わないか?」
沈黙があたりを支配する。
紫だけは、えっえっ、と泣きそうになりながら二人を交互に見回している。
「わ、私…私…」
「わ、わ、安心してくれ、もしそういうのが来たら‥」
「ほぉ~~、香霖は紫を守ってやるのか…ほぉ~~」
魔理沙は霖之助を半眼で見つめる。
それにたいして、霖之助は困った顔をする。
何か悪いことでも言ったか?などと思って、霖之助は首を捻る。
「いえ…ぐす…助けてくれるのはうれしいんですけど…ぐす…違うんです」
「うん?じゃ、いったい何なんだ?」
「前の私が、いろんな人に迷惑かけたのが…ぐす」
魔理沙が目で、霖之助に助けを求める。
霖之助はというと、魔理沙も苦手なのか…と、妙にほほえましい気分になっていた。
よって助け船を出すことにした。
「大丈夫だよ、これからの君がみんなを助けてあげればいいんだよ」
ねと、霖之助は微笑みかける。
「ほ、本当ですかぁ?」
「ああ、だから泣きやんでくれ」
「…はい!」
そして、輝きスマイル!
魔理沙は思わず顔をそむけた。
霖之助には効果なかった。
「あ、そういえば魔理沙さん」
「さんはよせ、お前にさんづけされると気持ち悪い」
「はい、わかりました」
魔理沙が顔を歪めるのを見て、霖之助は苦笑した。
「で、魔理沙がなんだって?」
「い、いえ、お魚を使ってもよろしいですかってことなんですけど」
そう言ってから、紫はちらりと魔理沙の方を見る。
「どうせここで食べるつもりだったんだ、いくらでも使えよ」
「あ、ありがとうございます!」
紫は、ぺこりとお辞儀をする。
魔理沙はというと、恥ずかしそうに明後日の方を向いていた。
「ごめんくださ~い、ってなんで入口が壊れてるの!?」
月のウサギがご来店した。
「いらっしゃい、え~~~と」
霖之助は、少し脳をフル回転させる。
「曇華院・イナバさん、頼まれたものは用意されてるよ」
「変なところで思い出さないでください!」
ウサギは、へにょり耳を揺らしながら抗議する。
「そうだぜ香霖!さすがに失礼だぞ」
「いやぁ、かたじけない」
「名前もいれなきゃいかんだろ!な、零戦!}
「イントネーションがちがぁ~~う!」
わざわざ顔を真っ赤にして怒る月のウサギ。
「はぁ、零戦・曇華院・イナバさんですか。はじめまして」
ぺこりと、紫がお辞儀する。
「だから違うって言って‥る‥でしょう…」
途中で違和感に気づいたのか、語尾につれ声が小さくなる。
そして、魔理沙に近づいて耳打ちする。
「ちょっとあれ、変な薬でも飲ましたの?」
それに対して、魔理沙は大声で答える。
「別に普通だぜ!そんなことも分からないのか、鈴仙・優曇華院・イナバは?」
鈴仙はこの野郎と思ったが、近くで霖之助がポンと手を打つのと、それがほんとの名前ですかと聞いてくる紫がいたため、口には出さなかった。
魔理沙がニヤニヤしているのが、余計腹立たしい。
「で、どういうことよ?」
「それについては僕が説明するよ」
そう言って、霖之助が説明を始めた。
青年説明中…
少女理解中…
「記憶喪失かぁ…」
鈴仙は、へにょった耳を動かしながら何度もうなずく。
「そういうことだよ、はい、頼まれた薬草だよ」
「あ、すみません」
袋を受け取りながら、お代を渡す鈴仙。
「だから君の師匠に治してもらえないかな?まいど」
う~んと、考えるしぐさをする鈴仙。
「できるかどうだかわかりませんが…一応、師匠に話してみますね」
「ああ、頼むよ」
そこまで言ったとき、急に鈴仙が顔を近づけてくる。
思わず、霖之助は身を引いてしまう。
「でも、戻さない方がいいような気もしますけど…」
言ってはいけない一言を言ってくる鈴仙。
霖之助は黙るしかない。
「では、私はこれで」
そう言って、早々に飛び去っていく鈴仙。
霖之助の悩みはさらに大きくなった。
「では、もうそろそろ夜ですし、晩御飯の調理を始めますね!」
そして、紫はエプロンと三角巾を着用する。
それに気づいて、霖之助は注文を加えた。
「それなら、四人分も頼むよ」
「え、何でですか」
ごく当然な反応が返ってくる。
それに対して霖之助は。
「霊夢が来るからだよ」
「え、霊夢がまた来るんですか」
「ああ、だからだから頼んだよ」
「はい!」
紫は嬉しそうにほほ笑むと、台所の中へと消えて行った。
霖之助は、思わずため息が出る。
魔理沙はというと、商品の本を勝手に読みふけっている。
霖之助はだいぶ前に入れたお茶を啜りながら、カウンターの端にあった読みかけの本を再び読み始めた。
晩御飯までまだ時間がある。
「おい、香霖!もうすぐ晩御飯らしいぜ」
霖之助はハッとする。
窓はすでに暗くなっており、星星が既に空で輝いていた。
「それならば、もうそろそろ来るだろう」
いつの間にか直っている、扉に目を向けぽつりと呟く。
扉は魔理沙が直したのだろう。
「ふぅ~~~霖之助さん、晩御飯食べに来たわよ~~~」
霖之助は苦笑しつつ、扉へ向かう。
扉を開ければ霊夢がそこにいた。
その後ろに、思わぬ人物を従えて。
「香霖堂殿、お邪魔させていただく」
九つの黄金色に輝く尻尾をもった狐の妖怪が…
>へにょり耳を揺らしながら公議
抗議かと。
>「霊夢が来るからだよ」
>「それならば、もうそろそろくるだろう」
地の文だけでなく、同一人物の台詞中でも表記は統一した方がいいと思います。
まあ瞬間的にフル回転した って事なんだろうけど<分かってるジャン
零戦は良かったですw
すいませんこれも追加で。
用で良いです~~、
羨ましいぞ・・・・・・・こ~りん。
「本といっちゃってるわね」は「ほんといっちゃってるわね」でしょう。
「ああ、だからだから頼んだよ」は「ああ、だから頼んだよ」の方が良い気がします。
前作に比べて大分読みやすくなっていますね。
おかげでゆかりんの可愛らしさを楽しむことができた。