夜。しばらく世話になっていた里を離れて、私はその近くに広がっている竹林を歩いていた。妖怪が住み着いていることもあって、ここには里の人間も滅多なことでは近付かない。せいぜい無謀な連中が怖いもの見たさに入り込むくらいだ。
確かに妖怪の気配はする。といっても、好んで人を襲うような奴はそういないだろう。
ほとんどが縄張りを犯されることを嫌う類の妖怪や妖精だ。飛べない人間はよほど運が悪くない限り生きて出られるだろう……他人の心配はいいか。今の私は宿無しなのだから。
私は改めて辺りを見回した。
人目に付かず、見通しが悪く、ある程度の力さえあれば安全は約束された場所。考えてみれば隠れ住むにはもってこい。奥の方に庵でも建てれば長いこと住んでいられるかもしれない。
私はさらに奥へと歩を進めた。
あれからずいぶんと永い年月が経った。
月は変わらず天にあり私を照らしている。私もあの頃から少しも変わらない姿で月の光を浴びている。
変わっていくのは人間たち。小さかった子供はやがて成長し、大人になり、夫婦の契りを交わして、子を儲けてやがて死んでいく。
目的を見失った今では、そんな彼らを羨ましいと思う。
老いることも死ぬこともなく、永遠に生き続けなければならないこの体。
他の人間が知ればさぞ羨ましがることだろう。この地獄を知らないのならそれも仕方ない。
欲しいというなら只でいい。熨斗を付けてくれてやる。
だから――
「……ん、またこんなこと考えてる」
いかんなぁと頭を掻く。人間、どれだけ年を重ねても忘れられないことがあるらしい。私の場合は一人きりになるとついつい考えてしまうこの体のことだろうか。
大切なのは今だ。いちいち過去を振り返ってなんになる。どんなに憎くてもあいつは、輝夜はもういないのだ。月に帰ってしまった奴のことを考えても意味はない。
それに、考えるだけでは腹は膨れないし乾きも癒せない。住む場所だって見つからないのだ。現状では時間の無駄と言っていい。時間は無限にあるけれど。
まず住居を確保することから始めよう。食材と水はいくらか持ってきているから、後回しでも構わないだろう。それに人間、いざとなれば何だって食べられるのだ。
「おや……?」
適当に歩いていたら庵を建てるのにちょうどいいくらいの開けた場所を見つけた。おまけに妖怪の気配もしない。なんとも幸先のいいことだ。
ここに簡単な庵を作れば当面は凌げるだろう。竹だけは腐るほどあるけど……他の物は少し遠出する必要があるかな。
そんなことを考えながら手頃な太さの竹を両手で掴んで炎を出す。
火事にでもなったら大事だ、慎重に。
ほどよく火が通って脆くなったところで力を込めてへし折る。これでまずは一本。
半刻も過ぎる頃には二十本くらいの竹が足元に転がっていた。
「……ふむ、まだ足りないかな」
欲を言えばこの倍は欲しいところだ。
まぁ取りすぎて困ることもないだろうと、次の竹に触れたその時、風を切る音が聞こえて……。
◇
(ちょっと! 人間を勝手に殺しちゃだめだって言われたでしょ!)
(知らないわよそんなこと。あんな奴の言うことなんて誰が聞くもんか)
(――っ、あんたねぇ、そんなだからいつも痛い目みるのよ!)
靄のかかった意識がだんだんはっきりしてくる。体の隅々にまで血が通い、熱を取り戻していく。
同時に感じる痛み。久しくなかったことだからすっかり忘れていたけど……この感覚、どうやら私は殺されたらしい。
(それに、「殺すな」って言われたのは『普通の人間』でしょ。手から火出したりするなんて普通じゃないわ)
(だからって人間には変わりないでしょ! どう言い訳するつもりよ!)
(別に。「普通じゃない人間がいたので殺しておきました」それでいいじゃない)
声の主は少女のようだった。だが、この時間に子供がうろついている場所ではない。妖怪か妖精かそのどちらかだろう。
語気の荒いのと奇妙なくらい落ち着いているのと。気配は他にも二つ三つある。全部で四、五人(匹?)といったところ。
人を殺すなと言ったり、殺した人間を食べようとしなかったり、一般的な妖怪の定義からはずいぶんと外れている連中だ。彼女らの行動に興味はあるが、所詮妖怪は妖怪。いつ気が変わるとも思えない。
さて、どうしようか。目を閉じたまま考える。
状況は五対一。正直な話、まともに遣り合えば負けるとは思えないが、各地を転々としていた私はここ百年以上戦いとは無縁の生活を送ってきた。不老不死に成りたての、力の使い方を知ろうと躍起になっていた頃と比べてずいぶん腕も落ちているはず。奇襲の一撃をまともに受けてあっさり死んでしまったのが何よりの証拠だろう。
故にここは慎重にならざるを得ないのだが……これ以上仲間が来ると厄介だ。幸い、彼女らは私が蘇生したことに気付いていない。
仕掛けるなら今しかないか――?
久しぶりの実戦を思って、全身に緊張が走った。
(それとも何、あんたたちあの女が怖いの?)
(――っ!!)
その一言がよほど腹に据えかねたのか、ざわ、と一人を除いた皆が殺気立つのを感じた。
周囲に意識が一点に集中する。
好機到来。私は勢いよく跳ね起きた。
「アンタねえ……少しくらい腕が立つからって調子に乗ると――」
「どうなるんだい?」
私の何気ない一言に、場にいた少女たちが一斉に振り返った。
その顔から怒りが消えて、代わりに驚きと得体の知れないものに対する恐怖が浮かぶ。時間にしてわずか一、二秒――彼女らは状況を完全に見失っていた。
そして、私にはそれだけの時間があれば十分だった。
背中の不死鳥が翼を大きく広げ、羽ばたいた瞬間、全ては終わっていた。
立ち込める熱気の中、立っているのは私一人だけ。
迫る無数の炎を見て彼女らは最後に何を思ったのか。消し炭になってしまった今となってはもうわからない。
しかし、地面に穴を穿つほどの高温だ。痛みを感じる間もなくあの世へ逝けただろう。
「ま、せめてもの情けってやつさ……にしても、また派手にやっちゃったな」
加減したつもりなのに、生い茂っていた竹林がごっそりと焼けてしまっている。さっきはあれだけ慎重にやっていたというのに。私の力は強力なのだが、その分、周りに及ぼす被害も大きくなってしまうのが難点だ。
とは言え、火はほとんど消えかかっていて、これ以上被害が広がることはなさそうだった。
それが救いと言えば救いだが、ここに住むことは諦めたほうがよさそうだ。
こんな時間にこれだけの騒ぎを起こしたのだ。近いうち必ず、事の真相を調べようとする人間が出てくるだろう。
そうなればもう隠れ住むという話ではなくなる。人と妖怪は表裏一体、片方が動けばもう片方も動く。事情を知らぬまま互いに顔を合わせれば、果てに待っているのは争いだ。
私が原因であることは事実だが、進んでそんなものに巻き込まれたくはない。三十六計逃げるにしかず。早いところ退散するとしよう。
「……と、その前にさ。いい加減、出てきな――」
先の教訓を生かし、威力を調節した炎で周りを薙ぎ払う。焼け残った草木は灰になり、辺りは完全な更地になった。
その隅に、焼けてぼろぼろになった白いワンピースを着た少女が倒れている。明らかに人のものではない長い耳……兎の妖怪だった。
死んでいるのかとも思ったが、近寄ってみるとまだ息があった。
改めて見ると彼女は人間とほとんど変わらない姿をしていた。しかも時折、苦しそうにうめく。あちこちに火傷を負っているのだから当たり前か。
(何とも運の良い……いや、悪いのかな?)
息の根を止めてやろうと伸ばした手は迷った挙げ句に宙を掴んだ。
私だって少なからず道徳や倫理を持ち合わせている人間だ。無抵抗な怪我人を殺そうなんて思わない。人の姿をしていれば余計に気持ちが鈍る。
放っておけば死ぬだろうが、それもまた見捨てたようで後味が悪い。
「――仕方ない」
指を切って、流れた血を一滴、少女の口に垂らしてやる。
蓬莱人の血肉は特効薬。これを飲めば助かるだろう。
血を飲み込んだことを確認してから、私は少女を背負って歩き出した。
しばらく歩くと雨が降り出した。
私は別に雨くらいどうということはない。構わず進もうかとも思ったけど背中の怪我人のことを考えるとそうもいかなかった。
次第に雨は強くなっていく。体温を奪われたのか、少女の体が小刻みに震えだした。
「……まったく世話のかかる」
この娘をこれ以上雨に濡らすのはまずい。
少女を胸に抱えて小走りに雨宿りできそうな所を探していると、少しもしないうちに小さな庵を見つけた。
戸を叩いてみても返事はない。
他人の家に勝手に上がるのは善くないことだ。しかし今の私に悠長に待っている時間はなかった。心の中で謝って、私は戸を開けた。
眠っているのかとも思ったが、誰も出て来る気配はない。少女を抱えたまま部屋に上がり、囲炉裏のそばに寝かせてから火を起こした。
しばらくすると、私の血が効いたらしく顔色がだいぶ良くなっていた。呼吸も落ち着いている。
これで一安心だが……困ったこともある。もちろん少女をどうするか、ということだ。
火箸で灰をがさがさやりながら考える。
放っておけば目を覚ますだろうけど問題はその後だ。
彼女にとって私は仲間の仇。
話を聞いていた限りでは、それほど良い関係ではなかったように思う。
ただ、それでも仲間は仲間だ。いなくなって初めてその大切さに気づくこともある。
――もし少女が目を覚まして襲いかかって来たなら私はどうするべきだろうか?
せっかく助けた命をこの手で刈り取るのも馬鹿馬鹿しい話だと思う。どうせ死なない体だ。大人しく殺されてやるのが一番いいのかもしれない。痛いのは嫌だけど。
「こいつ置き去りするとここの人に迷惑がかかるかもしれないからな。結局は出たとこ勝負――」
とん、と背中に手が触れる。断っておくが私の手ではない。
ということは……。
「ここ、どこ?」
少女は意外と落ち着いていた。すぐに私を殺さないことからもそれが窺える。
振り返ろうとすると背中の手に力が入るのを感じた。動くなということか。
「もう一度聞くわよ。ここはどこ?」
「知らない」
言葉の代わりに細く、鋭く尖った殺気が心臓に狙いを定める。
「本当だよ。お前さんを担いで適当に走っただけだからね。帰り道も覚えてない」
「……」
おどけて言ってみせると、少女は背中から手を離して静かになった。何か考えているようだった。
こっちも特に話すことがないので黙っていると、不意に少女が言った。
「アンタ、なんで私を殺さなかったのよ?」
「なんでって言われてもね……」
まさか「人間みたいな格好してたから」と答えるわけにもいかない。馬鹿にしているのかと逆上されても困る。
少しの間、考えることにした。
………………
…………
……あ、そういえば。
「私はこの近くの里に住んでいたんだけど」
「……」
露骨に疑いの視線を感じる。思いっきり考えていたのだから仕方がないか。
気にせず続けることにしよう。
「わか――」
「若?」
「……いや、物好きな連中がね」
危ない危ない。私も外見は十代半ば、迂濶なことを言うべきではない。
「夏になると肝試しにここに入って行くんだ。私たちはやめろって言うんだけどね、血の気の多い奴は聞かなくてさ……」
――夏といえば肝試し。
里の男共は決まってそう言う。実際やるのは暇と体力の有り余った若い連中なわけだけど。
日は十五夜の満月、時刻は草木も眠る丑三刻。
世の理が逆転し妖怪たちが幅を利かせる時間に、彼らはその身一つで竹林へと入っていく。
そこは月の光を浴びて狂った妖怪たちが群れ成す狂気の世界。
私もこっそりついて行ったことがあったけど、あれはまともな人間の行く所じゃない。
何せ普段は悪戯しかしない妖精まで襲いかかってくるのだ。よほどの腕と運がなければ半刻生き残るのも難しい。おかげで逃げ回ってるうちに男達を見失ってしまったのを覚えている。
……にも関わらず。
この里では肝試しをした晩に死人を出したことはないという。
実際、私が暮らしていた頃も、肝試しをして怪我をした者はいたが命を落とした者はいなかった。それに、怪我と言ってもせいぜいが骨を一、二本折った程度。命に別状は無い。
行方がわからなくなった者も、数日の内にひょっこり帰ってくるそうだ。
人間が来ると妖怪や妖精が姿を消す……これはどう考えてもおかしい。普通なら逆のはずだ。
何故、満月の夜に武器も何も持っていない一般人が妖怪に襲われないのか。そもそも彼らは妖怪を見ているのか。
参加した男共に聞いてみると、大きく分けて二通りの答えが返ってきた。
――妖精は見たけど、妖怪は見ていない。
「――で、もう一つ。道に迷った奴らは揃ってこう言うんだ。『兎の格好をした、小さな女の子を見た。そうしたら出られた』ってね」
「そ、そぅ……」
声が上擦っている。
こいつもしかして照れてるのかな?
「ところで、もう後ろを向いてもいいかな?」
畳み掛けるように言うと返事は返って来なかった。
ややあって、背中に当てられていた手が離れる。
「ん、ありがと」
「お礼なんていいわよ。元々仕掛けたのはこっちだし、怪我の治療もしてもらったみたいだしね」
少女はひょいと飛んで後ろに下がる。振り向くと少女と目が合った。少女はほんの一瞬、驚いたようだった。
「あんた、一応は人間だよね。だったらここにいれば物好きな半妖に面倒見てもらえるはずだよ」
戸を開けながら少女は言った。
どうやら、彼女なりに私の身を案じてくれているらしい。
「そうか。でも、私もすぐに出る予定なんだ」
「里に戻るの?」
「いいや。ちょっと訳ありでね、あそこには当分近寄れない」
「そう。じゃあ、良いことがあるといいね」
残念そうな顔をして少女はよくわからないことを言う。どういう意味か聞こうとすると元気よく外へ飛び出していった。
追おうとしたけれど、外に出た時にはもう後ろ姿さえ見えなくなっていた。
「……やれやれ。名前くらい教えてくれてもいいじゃないか」
火に灰を被せてから外に出る。雨はやんでいた。
さて、これからどこに行こうかと、里とは反対方向に歩きながら考える。
少女を抱えて走ったからはっきりした位置はわからないけど、月と星を見れば大体の方角はわかる。間違えて里に出ることはない。数百年の間、地図も持たずに各地を転々としながら培った技術……と言えば聞えはいいが、他にすることがなかったというのが本当のところ。
料理に凝った時期もあった。
火傷をしない代わりに指に切り傷をいくつも作って、本職顔負けの腕前にはなった。せっかくの手料理も食べる相手がいないのでは意味がないと気付いたのはその後だけど。
あの時はわりと本気で泣いたかな、うん。
他には裁縫、掃除、洗濯など生活するために必要なことは一通りこなせる。
あとは小屋を建てたり護身術とか。
人目を避けて暮らすためには自力で住み家を作る必要があったし、女の一人暮らしは危険が多い。
せめて野盗くらい能力を使わずに追い払えるくらいになっておかないとな。と、山一つを丸ごと焼いてから決心したのだった。
「それにしても……何か変よね」
明かりは竹の間からわずかに差し込む月の光だけ。当然見通しは悪い。夜目が利くわけではないので、先の様子は満足に見えない。
そんな中で自分がどれだけ進んだかなんてわかるはずもない。
だから、これは私の勘。
その勘に従って空を見上げる。見上げたまま、一歩前へ進む。
カサリという、落ちた葉を踏んだ音。
『前』に進んだらしい。
しかし、私の目に映る月も、月を隠すように葉を茂らせる竹も、全く動いていなかった。
顔を下に向ける。前に出したはずの足はもう片方の足の隣、ちょうど踏み出した時と同じ場所にあった。
(……やっぱり)
これは結界だ。しかもかなり巧妙に仕掛けられたやつ。この結界のせいで私は前に進んだと思いながらその実、同じ場所で足踏みをしていたのだ。
普通の人間なら果ての見えない竹林を気味悪がって引き返すのだろう。結界に気づいたとしても同じ事に違いない。
それならばと、今度は横に歩いてみる。
(……?)
異常なし。問題なく進むことができた。
さて、横に進めて前に進むことはできない。
それはつまり、この先に何かがあるということだろうか。例えば他人に見られたくない何か、とか。
そう思うと俄然、興味がわいてきた。自然と顔がにやついてしまう。
永く生きていると毎日が平坦で、退屈なものに感じるようになる。同じ事の繰り返しを苦とも思わないのは初めの数十年だけ――だから、私はこういう面白そうなことに目がないのだ。
考えてみれば、料理やらに凝ったのもその退屈をまぎらわすためだったかもしれない。
(……まあそれは置いといて)
結界に惑わされないように、今度は『前に進む』ことを強く意識して踏み出してみる。
ずぶずぶと、泥沼の中に足を突っ込むような感覚。
これでは駄目だ。妖怪のいる場所でこんな無防備な姿をさらすわけにもいかない。私はさっさと足を引っ込めた。
残念なことに、意思の力でどうにかなる類の結界ではなかったらしい。
そっち方面に疎い私では、正攻法でこの結界を越えることはできないということだ。
でも、私はここで引き下がるつもりはこれっぽっちもない。
そもそもこんな普通じゃない所に正攻法で入ろうとすることが間違いの始まりなのだ。
目には目を、歯には歯を。非常識には非常識でぶつかるのが常識。
「というわけで、お次は力押しで行こうかね――」
掌にありったけの力を込めて。
生み出した炎は紅く、大きく。
それを握り凝縮して――
「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……」
――悪いけど。そんなもの此処には住んでいないわ。
今まさに炎を放とうと突き出した腕が、結界の内側から飛び出してきた光の牙に喰い千切られる。
――だいたい貴方、こんな夜中に私の家に何しに来たのよ?
女の声は結界の向こう側から聞こえてきた。
年の頃は私とあまり変わらないくらい。顔も知らないのにどこか惹き付けられる不思議な感じがする。
腕を落とされたにも関わらず私はそんなことを考えていた。
――答えないの? まぁ例えどんな理由があろうと、入るなって結界を破って入ろうとするんだから、殺されても文句は言えないわね?
女は笑いながらとても残酷なことを言う。
その合間に私は両足を落とされて地面に転がっていた。
――月からの追っ手じゃないみたいだから見逃してもよかったんだけど……恨むなら自分の運の無さを恨みなさい。
月の追っ手とはなんだろう。そんな疑問を抱いた瞬間、背中から胸に衝撃が突き抜ける。
それで終わり。ただでさえ出血多量で失いかけていた意識が完全に途切れて――私は死んだ。
でも。
私は笑っていた。嬉しくて嬉しくて、声は出ないけれど笑っていた。
ずっと昔に生まれて眠っていた感情が再び目を覚ましたのだ。
理屈はわからないけど顔を見なくてもわかる。私は今、あいつの存在をはっきりと感じた。
どういう経緯かは知らないが、あいつは月に帰らずこんな所に隠れ住んでいた。
なんという巡り会わせ。
もう会うことも捜すことも諦めて、ただ生きているだけの毎日にこんな形で終わりがやって来ようとは。
待っていろ輝夜。次に目を覚ましたら真っ先にお前を――
こんな幸運の使い方でいいのか妹紅
緊迫感があって楽しめました
楽しんでいただけて、こちらとしても嬉しい限りです。
>こんな幸運の使い方でいいのか妹紅
…まあ、生き甲斐(?)もらったわけですからいいんじゃないかなと。
ふと思ったのですが、定期的にてゐと会うと幸運って続くんでしょうか?