Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙幻想曲6

2007/04/06 08:15:45
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「あー・・・あっちぃなぁ」
みーんみんみんみんみんみーん・・・
何時の間に現れ鳴き始めたのか、
今年もまた、夏の風物詩・セミが私の不快感を更に強くする。
「チルノ・・・チルノはどこだ・・・」
夏休みなのだから、呼んだ所で湖でもないのに出てくる訳が無い。
でもつい、この暑さから逃れたくてその名を呼ぶ。
「あー・・・・・・もうダメだ、死んだら化けて出てやる・・・」
もうかなり歩いた。限界だ。箒もうなだれてる。
一息、はぁ・・・と大きく息を吐くと、
一瞬視界がぐらついて、足に、箒を持つ手に、
そのまま全身に、力が入らなくなる。
ぱたり、と倒れ、
おー、これが日射病という奴か?
なんて、呑気な事を思っていた。


第六話[彼女の悲劇]


シンシンシンシンシンシンシンシンシンシン―――
妙に高くて擦り付けるような耳障りな騒音は消え、
落ち着く、夜の虫の声が聞こえるようになる。
その静かさにしばらく聴き入っていたが、
「はっ!?」
ふと暑くなくなったのに気づき、ぱっ、と眼を開き、起き上がる。
「・・・夜か。でも生きてたな。いや良かったぜ」
こんな所で日射病で死んではたまらない。

なんとなく夏休みに入って、
アリスと遊んだり霊夢と遊んだり、
輝夜をからかったりパチュリーに脅されたり本を奪ったりしながら、
気が付くと一月が経っていた。
別にそれ自体は問題ない。
楽しい日々っていうのはあっさりと過ぎていくもんだ。
―――が教えてくれた。
「うん?」
誰が教えてくれたって?
「まぁ、輝夜あたりかね」
こきこきっ
軽く首の辺りを鳴らし、立ち上がる。
うん、ばっちり動ける。
「にしても、今日は妙に暑かったなー」
それまでは梅雨だの何だので、
夏の割にはそんなに暑くなかったんだけども、
今日の暑さは尋常じゃなかった。
箒に乗っていられなくて、つい降りてしまった程だ。
「全く、夏ってのはこれだから・・・」
まぁ季節に文句を言っても仕方ない。
軽く悪態をついたらすぐに目的の場所に向かうつもりだった。
だったのだけど。
かつっ
「ん・・・?あ、お前っ」
「にや」
暗くてそれまで気づかなかったけど、
乾いた音がし、見てみたら、
少し離れた樹の枝の上に、高下駄の女が居た。
隣のクラスの射命丸(新聞部所属)だ。
「ふふふっ、
『霧雨 魔理沙、日射病でダウン。魔女も箒から墜ちる・・・?』
次の新聞はこのネタでいかせてもらいます」
しゅたっ、と私の前に降りて来る。
ていうかダウンするところからいままでずっと見てたのか?
「・・・お前、まだ新聞なんて作ってたのか?」
「ちょっ、驚くところそこじゃないでしょっ!?」
そうなのか?記事内容自体は大した事無いように感じるんだが。
「だ、大体ですねっ、新聞を作るのは私達烏天狗の使命なのですっ
部活の伝統と言いますか、
まぁ、私もたまには漫画とか描きたいなって思うんですけどっ
あっ・・・こ、この事は大天狗先輩には言わないで下さいねっ」
自分で弱みになる事言ってるんだから世話無いよな。
「ならそのけったいな記事をなしにしてくれ」
どうせ校内新聞読む奴なんてよほどの暇人位なんだけど、
それでも実名で名前が載るのはちょっと嫌だ。
レミリア辺りが見たら
『あーら、貴方でも日射病になる事なんてあるのねぇ?』
とかすごく嬉しそうに言われそうだ。
「なっ、そんなっ、なんてこと言うんですかっ!?
この夏中ずっと幻想郷を駆けずり回ってて、
ひと夏の思い出は愚か夏休みの宿題すら手をつけてなくて、
それでも頑張って飛び回ってやっと手に入れた記事なのにっ!!」
青春の無駄遣いだと思う。
「お前・・・
大体、こんな事記事に書いたって笑うのは居ても一人か二人位だぞ?」
「いっ、言わないでくださいっ
私もそう思ってますっ!!」
いっそ不憫だぜ・・・
「で、でも、天狗として生まれた以上は仕方ないんですっ
その、宿命なんですよっ」
宿命と来たか。随分大きく出たな。
「その割には読まなくても何の問題もなさそうな記事ばっかり書くよな。
まだPTAの四コマ漫画(※)付き広報の方が面白いと思うんだが」
「う・・・だ、だってっ、私字は書けるけど絵はダメですしっ」
「なら尚更、読んで面白いと思わせる記事書かないとダメだろ?」
「なっ、なら
『今週のあの子の下着は!?』
とかのコーナーどうでしょう?とりあえず今週は魔理沙さんで・・・」
「マスター・・・スパ」
「うわちょっ、やめっ、いや嘘ですって冗談ですよっ、
やめてくださいああんそんないやーんっ」
「き、聞かれたら誤解招くような声出すなっ」
一瞬で精神統一が解かれる。そりゃあんな声出されればなぁ?
「はぁ・・・はぁ・・・じ、自分でもかなり恥ずかしかったです」
「大体、そんなのやったら男子は喜ぶが女子は全く喜ばないだろっ」
女子には何の得も無いじゃないか。
あってもやらないが。
「大丈夫です、貴方のならきっと女子も喜ぶに違いな―――」
「スターダストレヴァリエッ!!」
「わわっ・・・って、その技は箒無いとできないんじゃ・・・」
「う・・・」
そう言えば無いな。
「ていうか何処に行ったんだ箒は?」
「さぁ・・・私が見たときにはもう無かったですし・・・」
じ・・・っと見るけど本当に知らないようだ。
別にずっと見てたわけじゃなかったんだな。
「はぁ・・・まぁ、とりあえず探すか。
どうせ暇そうだしお前も手伝・・・あら?」
無いと思いながらもあたりを見回してから、
さっきまで射命丸の居た場所にもう一度目を向けるも、もう居ない。
「わ、私急に記事にしたいネタが思い当たったので失礼しまーすっ」
ばさささっ
乾いた羽の音がし、次の瞬間にはもう見えなくなっていた。
・・・逃げられた。

「別に箒無くても飛べると思うんだけど・・・なんか不便だよな」
結局きた道をとぼとぼと歩く。
明確に記憶に残ってるわけじゃなくて、なんとなくこっちだろう、
っていう直感だ。
ほんとはこういうのは霊夢の方が得意なんだろうけど、
いつも必要な時に限ってあいつは近くに居ない。
「全く、役に立たない奴だぜ」
何の為の友人なんだか。
がさがさがさ―――
「ん?」
と、すぐ近くの草むらが揺れ、何かの存在感を示す。
「ふむ・・・」
動物なら手を出す必要は無いし、
少し様子を見ようか、と、そのまま然程気にしない素振りで歩く。
たく、たく、たく、たく
がさ、がさ、がさ、がさ
・・・・・・ついてきている。
たったったったっ
がささささささっ
ご丁寧に走っても追いかけてくる。
「ま、まさか・・・ストーカーかっ!?
先手必勝っ、マスター・・・すぱぁぁぁぁぁっっっっくっっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁっ」
ぼぅんっ
流石に一瞬で出したから最大出力とは行かなかったけど、
きっと倒せたはずだ、うん。
「う・・・うー・・・げほっ」
「げ・・・なんで生きてるんだよっ、くそっ、もう一発っ!!」
「まっ、待ってくださいっ、ちがっ、私敵と違いますっ」
「敵は皆そう言うんだぜ?」
「み、みょんなこといわないで下さいよっ」
その口調は・・・まさか。
「中学一年生っ!?」
「高等部ですっ!!」
「・・・で、何でこんな所に居るんだよ、妖夢」
一年後輩の魂魄 妖夢だった。
心なしか髪の毛とか服とかがぷすぷすと煙を上げてるが、
私は気にしない。
「幽々子様におつかいを頼まれて、
帰りにこの近辺を飛んでいたら、日射病で落下してしまって・・・」
良く無事だな?
「それで、目が覚めたら周りが真っ暗で。
何か変なの出たら嫌だし、早く帰りたいんですけど道がわからなくて・・・」
「飛べばいいだろ?」
「だ、だって、夜の空ってお化けとか飛んでそうじゃないですかっ」
お前が仕えてる相手は何なのさ?
「それで、なんで私をつけまわしたんだよ?」
「見知った顔があったのでつい嬉しくなって追いかけてみました」
せめて声くらい掛ければあんなことにはならなかったのにな。
「大体お前、お遣い頼まれたんなら早く帰らないとまずいんじゃないか?」
「それはそうなんですけど・・・道が」
「こっちと逆方向に進んで、
突き当たりを右折して風呂屋の男湯に入って窓から出た先が出口だ。
私は箒探さないといけないから、一人で帰れよ」
適当な事を言ってみる。
「わっ、ありがとうございますっ
この恩は一生返しませんっ」
返せよ、私の親切心。嘘だけど。
たったったったったっ
言うが否や、あっという間に見えなくなる。
「・・・・・・さ、箒ほうきっと」
五月蝿いのも居なくなった事だし、早く探さないと。

「あっ、こんな所にあったのか・・・」
森林の出口。神社の入り口近くに、私の箒は転がっていた。
「全く、誰の悪戯か知らないけど、迷惑な話だぜ」
多分犯人は妖精か何かだと思うが、
この箒一本なければ使えなくなるスペカもあるから、結構重大だ。
「ま、見つかったから良いか」
人間ならともかく、妖精が犯人なら、
もうここにその姿が見えない時点で、
明確に誰がやったのかなんてわかりっこない。
ちょっと悔しいが、まぁ結果的に戻ってきたし、
よしとするしかない。
「あーあ、せめて名前呼んだら自分から飛んでくるようになったりしないかな」
そうなったらとても便利だ。
それを利用したスペカとかも編み出せるかもしれない。
「よし、試しに実験してみるか」
特に心当たりもなく、部屋の掃除魔法と同じ感覚で、
作れたらしめたものと思いながら、
また一つ、する事ができてうきうきと帰る。


「妖夢?門限はきちんと決めてあったわよね?」
「そ、それはっ、だ、だって魔理沙が嘘を・・・」
「人の所為にしたらダメよ?
良い?あなたは仮にもこの白玉楼の庭師兼警護役なのよ?
そのあなたが、頼まれたものも持ち帰れずに、
しかも門限を3刻も回って帰宅だなんて・・・
お母さん悲しいわ。おまけに今日のお味噌汁は味噌なしなのよっ!?」
「やっ、で、でも幽々子様は私の母ではっ」
「そうよねっ、どちらかと言うとお姉さんよねっ」
「いや、それほど近くも・・・」
「そこに直りなさいっ!!」
「みょん・・・」

(続いて欲しい今日この頃)
※隣の山田様。作者は妖忌


初めましての方、初めまして。小悪亭・斎田という者です。
ここまで読んでもらえてありがとうございました。
そろそろ同じ台詞ばかり冒頭に言うのはダメかななんて思い始めてます。はい。

なんか行き当たりばったりに書いててもう6話です。
1話と2話は同じ日で、
3話はその一週間後で、
4、5はともかく、6話でとうとう一月も時間が飛んでしまっています。
次辺りいきなり秋になっててもおかしくないですが、
どうか気にしないでやってください(´・ω・`)

ではとりあえずこの辺りで。ではでは。
小悪亭・斎田
http://www.geocities.jp/b3hwexeq/mein0.html
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コメント



0.270簡易評価
1.50名前が無い程度の能力削除
うーん。読んでて正直単調に感じました。
せっかく学生生活を題材に選んだのだから、学校でしか起きないような
エピソードを盛り込んでみたりしてみてはいかがでしょうか
例えば良くある例ですけど、生徒会とか学園祭とか
3.無評価名前が無い程度の能力削除
そろそろ、今までの作品の点数・評価数を省みて、あなたの作品が創想話読者にどう思われているかを考えてみてはいかがでしょう? このままあなたの気の向くままに書き続けたところで、何一つ変わることはなく、あなた自身にも創想話にもさほどの益はありません。
連載という形式に甘えるのではなく、一つの作品に力を入れて書くことをお勧めします。あるいは、この学園物のラストまでを書きためて投下するというのもいいかもしれません。
何様かと思われるような発言ではありますが、このままいつまで続くのだろうと考えると言わずにはおれませんでしたので失礼します。
6.70名前が無い程度の能力削除
いつも楽しく読ませていただかせております。
斎田さんの作品の雰囲気・キャラクターの描写が自分、大好きなのですが、
ちょっと、こう、あっさり感というかさっぱり感というか。
もう少しお腹に溜まるボリュームが欲しいところです。
前お二方の意見を拝借させていただくなら、
「文化祭・運動会等の特別行事などで1話書いてみる。」
等はいかがでしょうか。

こんなことを書いておきながら、斎田さんの作品は本当に好きです。
そこで、非常に失礼ながらこう書かせていただきました。
次回作にも、勝手ながら期待して待ってます。
7.無評価小悪亭・斎田削除
いや、なんというか、その。


こんなに真面目に感想言ってくれたのはここのサイトの人達が初めてだ(つД`;)
ありがとうございます。
確かにちょっと調子に乗って思いついたまま書いてました。
話的に一話一話で終わらせようとして、
ボリュームはあんまり多くないし、
学園設定もあんまり活かせてないなと今の自分なら思います。
折角のご指摘なのだからそれも活かさなければいけないと思います。
とりあえず一話。
もうちょっと時間をかけて書いてみようかと思います。

小心者な作者ですが、どうか今後もよろしくお願いします。
10.100名前が無い程度の能力削除
俺は好きですよ。こういうほのぼのした日常は。
東方はそれ自体が非日常的で起伏の激しいものですから,新鮮かつまったりと楽しませて頂いております。
「ハリウッドや香港映画もいいけど,たまにはフランス物や小津作品を見たくなる」心境と似たところがあります。