霧雨魔理沙は、香霖堂にあったお茶の葉で紅茶を作り、
そのお茶を飲みながら香霖堂にあった売り物である本を退屈そうにパラパラと眺めていた。
音はほとんど無い。あるとすれば、時折魔理沙が茶を啜る音と、本のページを捲る音ぐらいだ。
読んでいた物語が序章を終えた頃、外から人の叫び声が聞こえた。
その声の主は、魔理沙がよく知っている人物で、この店の店主であった。
「魔理沙ッ!! 居るなら出てきてくれ!!!
ドアを開けてる間に僕は殺されてしまうよッ!」
なんだなんだと思い魔理沙はドアを開ける。
前方30M程に、声の主である香霖が見える。全力疾走していた。
その店主を、体長が香霖の3倍はありそうな形容しがたい化け物が追い掛けていた。
どこぞの妖怪だろうか。
魔理沙は面倒臭そうに懐から札を取り出し、魔力を籠める。
「避けろよ香霖!」
「ばっ、ちょっ、まさか………」
魔理沙の行動を見て焦る霖之助。
瞬間、馬鹿でかい白い閃光が霖之助に向かった放たれた。
恋符『マスタースパーク』
彼女の代名詞とも呼べる必殺技だ。
霖之助はそれが放たれる前に避けようと、地面に横っ飛びをして、倒れこんだ。
「うっふぅ!」
「ぇはんッ!!」
両者とも実に情けない声を出した。ちなみに「うっふぅ!」の方が霖之助だ。
霖之助は地面に倒れ、妖怪は吹き飛ばされた。
もっとも、妖怪の方は魔理沙が本気を出せば吹き飛ぶ程度では済まなかったのだが、
(本気でやったら、もし香霖に当たった時冗談じゃ済まなくなるぜ)
そう思った魔理沙が威力をセーブしたのだ。
吹っ飛ばされた妖怪は、魔理沙に恐れ逃げ出した。
後に残るはうつ伏せに倒れこんでいる森近霖之助と、
心配そうな顔をしてそれに近づく霧雨魔理沙だけだった。
「お、おい………大丈夫か香霖?」
「大丈夫なわけ、ないだろ………全く、危ないことするなぁ」
寸でのところで避けることに成功したらしい。
霖之助は立ち上がり、着物に付着した土や埃を手で払う。
跳んだ時に一緒に吹っ飛んだ眼鏡も地面から拾い、それを掛ける。
「いやぁ、マジですまんかった、勢いでやってしまった、反省はしている。怪我は、無いか?」
「ああ、大丈夫だよ魔理沙。戻ろう」
顔面から飛び込んだのにも関わらず顔には擦り傷一つ出来てはいなかった。
丈夫な体だぜ。魔理沙は思った。
彼の体の半分を占める妖怪の血のおかげだろうか。
店に戻った霖之助は椅子に座り、すぐ本を読み始めた。
魔理沙はその隣に座り、霖之助に聞く。
「散々だったな香霖。それで、なにか面白いもの見つかったか?」
「珍しいものは見つけたよ。そして面白いものは見た」
「珍しいのものと面白いものか。その二つはなんだ?」
「見つけたアイテムは疲労回復のドリンク。今は持って無いけどね。
見たものは、二人の女の子同士が殺し合っている姿。
片方の女の子は不死身だったし、もう一人の子は誰かに連れられて立ち去ったから、
どちらも死んではいないけれどね」
「あー…………それってもしかして、
魔理沙はなにかを思い出すように間を開けて言う。
あそこで見たのか? ほら、永遠亭の近くの」
「そうだよ、よくわかったね。知り合いなのかい? 一人は藤原妹紅と名乗っていたが……」
「ああ、間違いなくそいつを私は知ってるぜ。もう片方の奴はきっと輝夜だな」
「なんか君から聞いたことがあるような無いような……。えーと、確か、
月がどうにかしちゃったんだっけ、その夜?」
「そうだぜ。その原因を突き止めるために、私とアリスは蟲とか夜雀とか
人間っぽい奴とか霊夢とか兎とか………沢山、いろいろな奴と弾幕ごっこ繰り広げたもんだ」
「それはそれは」
大変なものだったろうね。霖之助は言いながら立ち上がり、
お茶を淹れようとする。
「ああ、いいぜ、私がやる。さっきのお詫びだ」
「そうかい。ありがとう魔理沙」
霖之助は礼を言って座る。
「それで、さっき言ったよな、ドリンク? あれはどうしちまったんだ?」
「片方の………妹紅さんにあげたよ。酷く疲れていたようだしね」
「へえ、親切なことをするもんだな。ケチなお前がなぁ………。
ところでさっきお前を追いかけていた妖怪、もしかしたら輝夜の刺客って奴だったのかもな」
「ケチは余計だよ。刺客って………輝夜さんは殺したい人でも居るの?」
「殺したいのは妹紅だよ。だから戦ってたんだぜ?」
「輝夜さんって、妹紅さんが不老不死だということを知らないのかい?」
「知ってるぜ。多分」
なんだそれは、と思い霖之助は考える。
殺せないのを知っていて何故殺そうとする? わざわざ刺客まで送りつけるなんて……。
「どうかしてる」
「私もちょっとはそう思うぜ」
霖之助は正直に言葉を吐き、魔理沙は二人分の紅茶を
ティーカップ二つに注ぎ込む。
湯気と共に心地良い香りがする。
「これは……ハーブティーだね? しかも売り物の」
「ああ、売り物だったのか? 知らなかったが、そうだろうと思っていたぜ」
「いやはや、君のそういうところ、ちょっと羨ましいよ」
「『いやはや』なんて言葉はもう死語だぜ。それに親父臭い」
「僕はもう人間で言うと、親父どころの歳じゃないような気がするけど………」
そう言って店主は自分の店のハーブティーを啜る。
全力疾走して疲れた体が少しほぐれたような気がした。
「ああ、それにしても疲れた……。これを飲んだら、僕は眠らせてもらうとするよ」
「そうか、じゃあ私もこれを飲んだら家に帰ることにするぜ」
後の会話は他愛も無い世間話だった。
ハーブティーを先に飲み終えたのは魔理沙で、「また来るぜ」
とだけ言い残し、箒で飛んでいった。
香霖堂に残ったのは店主の霖之助だけだ。
「それにしてもあの娘………」
一人になった店主が、呟く
「もし妖怪に食べられたら、一体どうやって復活するのだろうか」
そのお茶を飲みながら香霖堂にあった売り物である本を退屈そうにパラパラと眺めていた。
音はほとんど無い。あるとすれば、時折魔理沙が茶を啜る音と、本のページを捲る音ぐらいだ。
読んでいた物語が序章を終えた頃、外から人の叫び声が聞こえた。
その声の主は、魔理沙がよく知っている人物で、この店の店主であった。
「魔理沙ッ!! 居るなら出てきてくれ!!!
ドアを開けてる間に僕は殺されてしまうよッ!」
なんだなんだと思い魔理沙はドアを開ける。
前方30M程に、声の主である香霖が見える。全力疾走していた。
その店主を、体長が香霖の3倍はありそうな形容しがたい化け物が追い掛けていた。
どこぞの妖怪だろうか。
魔理沙は面倒臭そうに懐から札を取り出し、魔力を籠める。
「避けろよ香霖!」
「ばっ、ちょっ、まさか………」
魔理沙の行動を見て焦る霖之助。
瞬間、馬鹿でかい白い閃光が霖之助に向かった放たれた。
恋符『マスタースパーク』
彼女の代名詞とも呼べる必殺技だ。
霖之助はそれが放たれる前に避けようと、地面に横っ飛びをして、倒れこんだ。
「うっふぅ!」
「ぇはんッ!!」
両者とも実に情けない声を出した。ちなみに「うっふぅ!」の方が霖之助だ。
霖之助は地面に倒れ、妖怪は吹き飛ばされた。
もっとも、妖怪の方は魔理沙が本気を出せば吹き飛ぶ程度では済まなかったのだが、
(本気でやったら、もし香霖に当たった時冗談じゃ済まなくなるぜ)
そう思った魔理沙が威力をセーブしたのだ。
吹っ飛ばされた妖怪は、魔理沙に恐れ逃げ出した。
後に残るはうつ伏せに倒れこんでいる森近霖之助と、
心配そうな顔をしてそれに近づく霧雨魔理沙だけだった。
「お、おい………大丈夫か香霖?」
「大丈夫なわけ、ないだろ………全く、危ないことするなぁ」
寸でのところで避けることに成功したらしい。
霖之助は立ち上がり、着物に付着した土や埃を手で払う。
跳んだ時に一緒に吹っ飛んだ眼鏡も地面から拾い、それを掛ける。
「いやぁ、マジですまんかった、勢いでやってしまった、反省はしている。怪我は、無いか?」
「ああ、大丈夫だよ魔理沙。戻ろう」
顔面から飛び込んだのにも関わらず顔には擦り傷一つ出来てはいなかった。
丈夫な体だぜ。魔理沙は思った。
彼の体の半分を占める妖怪の血のおかげだろうか。
店に戻った霖之助は椅子に座り、すぐ本を読み始めた。
魔理沙はその隣に座り、霖之助に聞く。
「散々だったな香霖。それで、なにか面白いもの見つかったか?」
「珍しいものは見つけたよ。そして面白いものは見た」
「珍しいのものと面白いものか。その二つはなんだ?」
「見つけたアイテムは疲労回復のドリンク。今は持って無いけどね。
見たものは、二人の女の子同士が殺し合っている姿。
片方の女の子は不死身だったし、もう一人の子は誰かに連れられて立ち去ったから、
どちらも死んではいないけれどね」
「あー…………それってもしかして、
魔理沙はなにかを思い出すように間を開けて言う。
あそこで見たのか? ほら、永遠亭の近くの」
「そうだよ、よくわかったね。知り合いなのかい? 一人は藤原妹紅と名乗っていたが……」
「ああ、間違いなくそいつを私は知ってるぜ。もう片方の奴はきっと輝夜だな」
「なんか君から聞いたことがあるような無いような……。えーと、確か、
月がどうにかしちゃったんだっけ、その夜?」
「そうだぜ。その原因を突き止めるために、私とアリスは蟲とか夜雀とか
人間っぽい奴とか霊夢とか兎とか………沢山、いろいろな奴と弾幕ごっこ繰り広げたもんだ」
「それはそれは」
大変なものだったろうね。霖之助は言いながら立ち上がり、
お茶を淹れようとする。
「ああ、いいぜ、私がやる。さっきのお詫びだ」
「そうかい。ありがとう魔理沙」
霖之助は礼を言って座る。
「それで、さっき言ったよな、ドリンク? あれはどうしちまったんだ?」
「片方の………妹紅さんにあげたよ。酷く疲れていたようだしね」
「へえ、親切なことをするもんだな。ケチなお前がなぁ………。
ところでさっきお前を追いかけていた妖怪、もしかしたら輝夜の刺客って奴だったのかもな」
「ケチは余計だよ。刺客って………輝夜さんは殺したい人でも居るの?」
「殺したいのは妹紅だよ。だから戦ってたんだぜ?」
「輝夜さんって、妹紅さんが不老不死だということを知らないのかい?」
「知ってるぜ。多分」
なんだそれは、と思い霖之助は考える。
殺せないのを知っていて何故殺そうとする? わざわざ刺客まで送りつけるなんて……。
「どうかしてる」
「私もちょっとはそう思うぜ」
霖之助は正直に言葉を吐き、魔理沙は二人分の紅茶を
ティーカップ二つに注ぎ込む。
湯気と共に心地良い香りがする。
「これは……ハーブティーだね? しかも売り物の」
「ああ、売り物だったのか? 知らなかったが、そうだろうと思っていたぜ」
「いやはや、君のそういうところ、ちょっと羨ましいよ」
「『いやはや』なんて言葉はもう死語だぜ。それに親父臭い」
「僕はもう人間で言うと、親父どころの歳じゃないような気がするけど………」
そう言って店主は自分の店のハーブティーを啜る。
全力疾走して疲れた体が少しほぐれたような気がした。
「ああ、それにしても疲れた……。これを飲んだら、僕は眠らせてもらうとするよ」
「そうか、じゃあ私もこれを飲んだら家に帰ることにするぜ」
後の会話は他愛も無い世間話だった。
ハーブティーを先に飲み終えたのは魔理沙で、「また来るぜ」
とだけ言い残し、箒で飛んでいった。
香霖堂に残ったのは店主の霖之助だけだ。
「それにしてもあの娘………」
一人になった店主が、呟く
「もし妖怪に食べられたら、一体どうやって復活するのだろうか」
うん。確かに。
エイ○アンよろしく腹の…いや、なんでもありません。
誤字を一つ。
もっとも、妖怪の方は魔理沙が気を出せば…
→「気」ではなくて「本気」では。
次回お待ちししてます。頑張ってください。