Coolier - 新生・東方創想話

蓬莱人と店主。その壱

2007/04/04 01:04:10
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「困ったな、完全に道に迷ってしまったぞ……」

香霖堂の店主、森近霖之助は鬱そうと生い茂る植物と竹林の中で頭を悩ませた。




つい十分前のことである。

「それじゃ行ってくるよ、魔理沙」
「あいよー、留守番は任せとけ」

茶を啜る普通の魔法使い、霧雨魔理沙を店に残し、彼はいつものように
散歩がてら珍しいものが落ちてはいないか、と香霖堂周辺の探索を始めた。
大抵の場合は何も見つからないし、特に期待という期待もしてはいなかったのだが―

「おや?」

探索を始めてすぐに、竹林の奥になにか光るものを見つけた。
近づいて行って、それがなにかを見てみる霖之助。
それは、ただの空の小さな瓶であった。
まあ、こんなことだろうとは思った………。
霖之助は来た道を引き返そうとする。……振り返る瞬間、また何かが
太陽の光に反射した、ような気がした。
行き慣れた者でも、竹林の中はよく迷う。それを彼は知っていたが、
珍しい物を優先する彼はそんなことはお構い無しにどんどん竹林の奥に進んでいった。
さっきと同じ小さい瓶。しかし今度のには中身が入っていた。
「フッ、やった」 そう思い、落ちている瓶を拾い、手にした瞬間に森近霖之助は気が付いた。
ああ、これはもう完全に竹林に入り込んでしまったな―と









幻想郷が誇る永遠のニート姫、蓬莱山輝夜。

不死鳥の如き炎を纏う蓬莱の人の形、藤原妹紅。

二人は、今日もまた激しい弾幕ごっこを繰り広げていた。
いや、『ごっこ』なんていうレベルではなく、これは『殺し合い』だった。
全力で、目の前の敵を殺しにかかっている。
しかし輝夜は永遠と須臾を操る程度の能力を持つ。
だが妹紅は蓬莱の薬の力による不老不死の力を持つ。
よって、如何なる力が作用しても、二人が死に導かれることはありえない。
『殺し合い』というよりは、『殺せない殺し合い』とでも言うべきだろうか。


そして今日も二人の疲労は、ほぼ同時に頂点に達した。
妹紅はその場に仰向けでどっと倒れこむ。
輝夜はどこからともなく現れた八意永琳に抱きかかえられ、永遠亭へと帰っていく。
両者、互いの弾幕で服が破けに破け、半裸以上全裸未満のあられもない姿になっていた。
ここまではいつもの光景であった。

肩で息をしながら地面に横たわっている妹紅に近づく者が一人居た。
何者かの気配を感じた妹紅は、唯一無二の親友である上白沢慧音が
来てくれたのだろうか、と直感した。

しかし彼女を見下ろす人物は、知識と歴史の半獣では無く、見知らぬ男であった。
少し長めの銀髪、眼鏡を掛けている着物の男。
妹紅は、その男を知らない。
そしてその男も妹紅を知らなかった。

「やあ。初めまして、僕は森近霖之助と云う。君は、大丈夫なのかい?」

男、森近霖之助はまず最初に自分の名を名乗り、妹紅に言った。
妹紅は不審に思う。
この男の発言から、私たちの殺し合いを目撃したのは間違いないだろう。
しかし、それでも尚、こうして私に干渉してくるのは何故か?

輝夜も妹紅も、そこらの妖怪とは比べ物にならない程の力を持っている。
その二人の戦いを見たにも関わらず、臆した様子も無く、
平然と話しかけてくる霖之助を不審に思うのも無理は無いだろう。
だが怖れることは無い。自分は不死なのだ。例えこいつが輝夜の送り込んだ刺客で、
自分を殺しにかかったとしても、無駄なことだ。痛いけれども………。
妹紅は自分がほとんど裸だということも忘れ、考えた。

「ふん、こ、これぐらい平気だよ……私は、不老、不死…なんだからね………」
「成る程、便利なことだそれは。しかし疲労までは回復し切れてはいないようだね」

息が切れ切れの妹紅の痩せ我慢を、さらりと受け流す霖之助。
彼は何かを思い出したかのような顔を浮かべ、自らの懐から一本の瓶を取り出す。

【リポビタンD】

「これは、飲むと疲労が回復する……らしい。だからあげるよ。君は大層疲れているようだし、
周りに仲間も居ないようだ。お代はいらない、サービスだよ。たまの店主の親切心さ」
「らしいっ、て……そんな怪しい、もの……飲めるか。第一、何者、だ? お前は………」
「そうかそうか、そういうこと言っちゃうんだ。人が折角親切にしてあげてるのに」

妹紅の問いには答えず。
霖之助は不満そうに言い、妹紅の露出した肩に手を延ばす。

「何をっ! してるんだ、この、へんたたい!! 気安くっ、触るな!」
「いたたた! ちょっ、ちょっと落ち着きなよ。藤原妹紅さん」
「えっ……」

妹紅はひとしきり騒いだ後、驚いたようにポツリと一文字だけ言葉を漏らす。
自分の名前は教えた覚えは無い。
私はこの男―森近霖之助といったか、この男を知らない。
妹紅の短絡な思考にイナズマが走る。

「僕は触れたものの名前と用途がわかる程度の…
「ス、ストーカーかッ!!!」
「……もう知らない」

たまには親切なことをしたくなった霖之助。
拾ったばかりの珍しい薬を無償であげようとしたのに、
変態、そして言葉を遮られるほどの大声でストーカー!ときたもんだ。
呆れて霖之助はその場を立ち去り、スタスタと密林の奥に消えていく。

「えっ、ちょ、ちょっとおい!」

半身だけ起き上がる気力が戻った妹紅は、霖之助の背中に叫ぶ。

「その薬、置いておくから。飲む飲まないは好きにして。
もし飲まないなら、返しに来てくれればいい」

言い残し、霖之助は妹紅の視界から完全に姿を消した。
なんだったのだろう、あの男は。
返しにきてといわれても、わたしゃあんたのことなんて知らないぞ。

妹紅は霖之助の置いていったビンをじっと見る。
手に取って見てみる。
なんだかよくわからない文字が沢山書いてあった。無視。
とりあえず開けようとする。
しかし蓋をどれだけ引っ張っても開かない。
頭にきた妹紅は、瓶の口を噛み砕き、その勢いで中にある液体を全て飲み干す。

「うっ、まずい……。って、飲んでしまった! こんな得体の知れない液体を………」

後悔先に立たず。飲んでしまったのなら仕方が無い、妹紅は考えた。
どうせどんな毒が盛ってあったところで私には効かないのだし。

いや、それどころか、むしろ快調になった気がする。
あくまで『気がする』程度なので、薬の効果がテキメンであったとは思えないが。

「しかしあの男………」

見たところ普通の人間だったが、この竹林から無事に帰ることは出来るのだろうか―?
投稿するのも初めて、東方の小説を書くのも初めて。
そんな僕が初めまして。
いきなり連載みたいな風にさせる気ですが、皆さん、
生暖かい目で見守っててください。

佐々木慧
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コメント



0.1050簡易評価
1.70名前が無い程度の能力削除
へんたたい→へんたい、でしょうか。

珍しい組み合わせなのでこの先の展開を期待してます。
3.無評価佐々木慧削除
すいません、判りにくかったですね。
あれは一応妹紅が焦りまくってるという表現です。
なにはともあれ、見ていただきありがとうございました。
4.80猫の転がる頃に削除
フラグを!店主がフラグを立ておった!?続きに期待!
5.70名前が無い程度の能力削除
妹霖なのか!?そうなのか!?
10.90長靴はいた黒猫削除
これはすごい。続きが物凄く気になります!! 
次も頑張ってください!
11.80名前が無い程度の能力削除
もこたんのおっぱい見たとな?よし、殺す
21.80時空や空間を翔る程度の能力削除
続きを読んできます。
30.100名前が無い程度の能力削除
いいね。続き読みます。