おにのはなしをしよう。
わたしがうまれたときは、そりゃ一族総出でいわったものだった。
希望の仔、
いのちの結晶、
すべての幸福を翠めるもの、
うるわしきはなよめとなるお姫様というのがわたしの呼び名だった。
マア、わたしの一族というか一家はいつも宴会ばかりでおいわいばかりしていたものだけど、わたしがうまれたときほど盛大だったものはここ百万年のなかでありはしなかったそうだ。
そうはいってもわたしはそのことはおぼえていない。
わたしも参加していたけどまだちいさなあかごだったわけだからあたりまえのこと。
それにここ百万年のあいだへべれけだったわけだし。
いやいつだってわたしたちはへべれけのよっぱらいの宴会をやるのがそのありざまであるわけだけども。
で、わたしははなよめでありこのおおくの年月をすごしてきた混沌の勝者であるおにのむすめであったわけだけど、けど、それもまたあきてしまったのだった。
わたしのムコさまとなるあかいおには、もどってきたら結婚しようといった。
ああそうだね。わたしはそういってたびだつことにしたわけさ。
そうはいってもおさけをのむのはやめられぬ。
やまこえたにこえおおきなうみもおおきなかわもわたりきって、わたしはたびをつづけたさ。
せかいはおもったよりもひろくて、わたしはおもったとおりにちいさすぎ、こしにすえたる瓢箪からはくめどもつきぬさけがわきでる。
ついっとのんでは三百杯。
いちにちにかたむけるにはほどほどなだけのさかずきだ。
てけてけあしをかたむけりゃ、とおくにわきでるおつきさま。
なんでこんなにきもちがよいのだろう。・・・
それでさ。
あるときわたしはさむくなってめがさめた。
やまおくのどうくつのなかだった。
わたしはすこしばかりさむくって、すこしばかりさみしくなった。
そんなわけだから、ひとざとにおりていくことにしたのさ。
で、ともだちにであった。
ともだちってのはのみなかまだ。
あいつはとってもきのいいやつで、どうやらわたしとであうまえはほかのともだちとたびしたらしい。
「つまらないやつでよう」
そいつはそういって、
「一滴もさけをのまないかたぶつなんだ。しかもかいてる詩がよう、これまたしゃちほこばったかったいやつばっかりでよう」
おおそりゃそうか。まるでわたしのムコどののようだ。
「ほう、おわかいのにもうとつぎさきがきまっておるのか」
そうさ。わたしのおっとはつよいおになのさ。
「そうかそうかそりゃのめこりゃのめ」
そういって、きのいいそいつはさけをつぎつぎ詩をつくる。
でさ、こいつの詩のことはあんまりおぼえちゃいないんだけど、けど、こいつのいったすばらしいことばだけはおぼえている。
百年三万六千日。一日に三百杯の杯をかたむけん!
これこそおにのためにささげたようなことばではあるものさ。
そいつはいつやらジイさまになってしんでしまったが、いやしかしにんげんってやつはいいねえ。
しぬまでいっしょにいてくれるんだもの。
まあ、ともだちになることができたらってことわりつきだが。
そうはいってもさ、だれもがともだちになれるってわけじゃあない。
たいていのにんげんはわたしらのことをきらってばかり。
まるでおやのカタキのように、ま、たしかにそうなんだが、わたしらのこと退治しようとまちかまえる。
とくにありゃだめだ。
勇者ってやつ。
天然からははずれた英雄ってやつ。
ああいうのはだめだ。
まるでまるでわたしらにちかすぎて、まるでまるでかわいそう。
わたしらだけがあいてしてやれる。
だからわたしは一生懸命がんばって、かわいそうなそいつらをやつざきにしてやったものだわさ。
・・・なんのはなしだっけ?
ああそうだ。
おにのはなしだ。
でさ、わたしはほら、おにじゃないですか?
そんなわけであんまりひとまえにすがたをあらわさずにいきてきたわけで。
ゆうぐれどきのあんまり、おにもひともわかりずらいときにぼんやりうっすらとあらわれてはきえてあらわれてはきえてとヒトのまえにそうやってすがたをだしたりしてたもんなんです。
え?
わかりづらい?
そりゃ申し訳ない。
すこうしよっぱらってるもんなんで。
シラフだったのはいつぐらいまえだったかなあ。
けど、これがおにってもんでしょう?
そうやってわたしはさけをのみながらあちらこちらとわたりあるいてきたわけさ。
むかしのともだちおもいだし、ときにはふとおもいだしたそいつがつくったうたをうたったもんですよ。
「いっしょにのむとやまのはながわらいだす。一杯一杯もう一杯、サカズキあけてねむくなったから、とりあえずキミはかえれ。あさになってまたくるならば、琴でももってきてくりゃさんせ」
ゆうひのなかでなんどもなんどもくちずさんで、いつのまにかなみだがながれてきたもんさ。
にくいことよ、おつきさん。
ともだちうばったあんにゃろが、わきでるそのときまでうたったもんだよ。
●
おおむかし、おにたちはひとりひとりが勇者であった。
ゆえにかれらはおおいなる退治をなしとげて、いわうことにしたのであった。
「いやーっ! おにはこのよのじゃあくにたたかい、勝った!」
「いやーっ! われらは八十禍日のタコをうちはたした!」
「いやーっ! ここのつくびのリュウであり八十を八十回かけあわせてもまだたりぬあしをもったタコに勝ったのだ!」
おにたちはこのよの悪であり、ふるい支配者でもあるおおくのあしをもったタコとも、おおくのくびをもったリュウともよばれているあのばけものを海のおくふかくにある都市に封じ込めてしまったのであった。
ばけものは封じこめられるまぎわになってこうつげたという。
『みずのみやこにすまいたるワレはまどろみつつも死にいたりたる』
そのよろこばしきできごとをいわってかれらは祝賀のうたげをもよおしたのである。
古来、ツノのはえたヒトであるおにたちは混沌の勝者であった。
かれらはおおくのばけものをうちたおす戦士であり勇者でありまものでもあった。
なんともふかしぎなことにかれらはまものをたおすものであり、まもの自身でもあったのである。
それゆえにかれらはみずからを混沌の勝者とよばわったのである。
おにたちを統べるのは【咆哮剣】とよばれたうつくしいおにであった。
【咆哮剣】はこう宣言した。
「やあみなの衆。われらはあのじゃあくでおぞましく、またこのよをうみだし、おにとまものいがいのすべてをうみだして、このよをけがしたあのおおばけものをついにうちはたしたのである。ゆえにいわおうではないか。われらはこのよのすべての悪をうちはたしたにひとしいのだし、ここらでひとやすみしようではないか」
すべてのおにはそれに賛成した。
それゆえに宴会がはじまることになったのである。
・・・んあ?
あ? ああ、ねむっちまってたかそりゃすまない。
ええとなんだったっけ?
ああっと、、、つづきだ。
つづき、。
それにしてもそうやってじっとまってたのかい?
そりゃきながなもんだな。
おまえほど惚けちゃいないって?
ああそうかい。
うんでだな、もものはなしだ。
脈絡がないって?
まあそういわないできいてくりゃさんせ、だ。
ももたろうとたたかったおにっていうのはこのわたしのことさ。
うそだとおもってるだろう? けど、これはほんと。
あのももからうまれた【天上剣】にたいじされたおにってのはわたしのことなんだ。
すごいだろう?
たいじされてえばるなって?
まあまあ。
ありゃけっこうなやつではあったよ。
まるでまるで、わたしのおとっさまのようであったよ。
で、やつはたちのわるいエテ公をつれていやがってなあ。・・・
いぬとキジはまあいいんだが、あのさるだけはどうしょうもなかった。
【天上剣】が食中毒になってはらいてえっていったら、薬草がはえているやまごともちあげてもってきちまいやがるんだもの。
わたしもそれなりにちからはあるしソラをくだいたこともあるけど、けどあのサル助もとんでもないわなあ。
しかもまもののくせにニンゲンの、まあ、あれはかみさまのうまれかわりではあったんだけど、ももたろうの味方ってのもありえんよなあ。
サルと【天上剣】、そろってかわるばんこにせめたててくるんでそこらにある岩石をちぎってはなげちぎってはなげってやりかえしちゃあいたが、たまったもんではなかったわ。
しかもエテ公は使い魔を、ああつまりいぬとキジだが、やつらをつかってせめてきやがるし、ぎゃくにエテ公にはこっちの使い魔は効かないしで、だからたいへんだったわ。
いやほんとに。
けど、ももか。
いつもおにの邪魔をするのはももなんだよなあ。
しってるか?
いつもおにの邪魔をするのはももだって・・・
わたしがうまれたときは、そりゃ一族総出でいわったものだった。
希望の仔、
いのちの結晶、
すべての幸福を翠めるもの、
うるわしきはなよめとなるお姫様というのがわたしの呼び名だった。
マア、わたしの一族というか一家はいつも宴会ばかりでおいわいばかりしていたものだけど、わたしがうまれたときほど盛大だったものはここ百万年のなかでありはしなかったそうだ。
そうはいってもわたしはそのことはおぼえていない。
わたしも参加していたけどまだちいさなあかごだったわけだからあたりまえのこと。
それにここ百万年のあいだへべれけだったわけだし。
いやいつだってわたしたちはへべれけのよっぱらいの宴会をやるのがそのありざまであるわけだけども。
で、わたしははなよめでありこのおおくの年月をすごしてきた混沌の勝者であるおにのむすめであったわけだけど、けど、それもまたあきてしまったのだった。
わたしのムコさまとなるあかいおには、もどってきたら結婚しようといった。
ああそうだね。わたしはそういってたびだつことにしたわけさ。
そうはいってもおさけをのむのはやめられぬ。
やまこえたにこえおおきなうみもおおきなかわもわたりきって、わたしはたびをつづけたさ。
せかいはおもったよりもひろくて、わたしはおもったとおりにちいさすぎ、こしにすえたる瓢箪からはくめどもつきぬさけがわきでる。
ついっとのんでは三百杯。
いちにちにかたむけるにはほどほどなだけのさかずきだ。
てけてけあしをかたむけりゃ、とおくにわきでるおつきさま。
なんでこんなにきもちがよいのだろう。・・・
それでさ。
あるときわたしはさむくなってめがさめた。
やまおくのどうくつのなかだった。
わたしはすこしばかりさむくって、すこしばかりさみしくなった。
そんなわけだから、ひとざとにおりていくことにしたのさ。
で、ともだちにであった。
ともだちってのはのみなかまだ。
あいつはとってもきのいいやつで、どうやらわたしとであうまえはほかのともだちとたびしたらしい。
「つまらないやつでよう」
そいつはそういって、
「一滴もさけをのまないかたぶつなんだ。しかもかいてる詩がよう、これまたしゃちほこばったかったいやつばっかりでよう」
おおそりゃそうか。まるでわたしのムコどののようだ。
「ほう、おわかいのにもうとつぎさきがきまっておるのか」
そうさ。わたしのおっとはつよいおになのさ。
「そうかそうかそりゃのめこりゃのめ」
そういって、きのいいそいつはさけをつぎつぎ詩をつくる。
でさ、こいつの詩のことはあんまりおぼえちゃいないんだけど、けど、こいつのいったすばらしいことばだけはおぼえている。
百年三万六千日。一日に三百杯の杯をかたむけん!
これこそおにのためにささげたようなことばではあるものさ。
そいつはいつやらジイさまになってしんでしまったが、いやしかしにんげんってやつはいいねえ。
しぬまでいっしょにいてくれるんだもの。
まあ、ともだちになることができたらってことわりつきだが。
そうはいってもさ、だれもがともだちになれるってわけじゃあない。
たいていのにんげんはわたしらのことをきらってばかり。
まるでおやのカタキのように、ま、たしかにそうなんだが、わたしらのこと退治しようとまちかまえる。
とくにありゃだめだ。
勇者ってやつ。
天然からははずれた英雄ってやつ。
ああいうのはだめだ。
まるでまるでわたしらにちかすぎて、まるでまるでかわいそう。
わたしらだけがあいてしてやれる。
だからわたしは一生懸命がんばって、かわいそうなそいつらをやつざきにしてやったものだわさ。
・・・なんのはなしだっけ?
ああそうだ。
おにのはなしだ。
でさ、わたしはほら、おにじゃないですか?
そんなわけであんまりひとまえにすがたをあらわさずにいきてきたわけで。
ゆうぐれどきのあんまり、おにもひともわかりずらいときにぼんやりうっすらとあらわれてはきえてあらわれてはきえてとヒトのまえにそうやってすがたをだしたりしてたもんなんです。
え?
わかりづらい?
そりゃ申し訳ない。
すこうしよっぱらってるもんなんで。
シラフだったのはいつぐらいまえだったかなあ。
けど、これがおにってもんでしょう?
そうやってわたしはさけをのみながらあちらこちらとわたりあるいてきたわけさ。
むかしのともだちおもいだし、ときにはふとおもいだしたそいつがつくったうたをうたったもんですよ。
「いっしょにのむとやまのはながわらいだす。一杯一杯もう一杯、サカズキあけてねむくなったから、とりあえずキミはかえれ。あさになってまたくるならば、琴でももってきてくりゃさんせ」
ゆうひのなかでなんどもなんどもくちずさんで、いつのまにかなみだがながれてきたもんさ。
にくいことよ、おつきさん。
ともだちうばったあんにゃろが、わきでるそのときまでうたったもんだよ。
●
おおむかし、おにたちはひとりひとりが勇者であった。
ゆえにかれらはおおいなる退治をなしとげて、いわうことにしたのであった。
「いやーっ! おにはこのよのじゃあくにたたかい、勝った!」
「いやーっ! われらは八十禍日のタコをうちはたした!」
「いやーっ! ここのつくびのリュウであり八十を八十回かけあわせてもまだたりぬあしをもったタコに勝ったのだ!」
おにたちはこのよの悪であり、ふるい支配者でもあるおおくのあしをもったタコとも、おおくのくびをもったリュウともよばれているあのばけものを海のおくふかくにある都市に封じ込めてしまったのであった。
ばけものは封じこめられるまぎわになってこうつげたという。
『みずのみやこにすまいたるワレはまどろみつつも死にいたりたる』
そのよろこばしきできごとをいわってかれらは祝賀のうたげをもよおしたのである。
古来、ツノのはえたヒトであるおにたちは混沌の勝者であった。
かれらはおおくのばけものをうちたおす戦士であり勇者でありまものでもあった。
なんともふかしぎなことにかれらはまものをたおすものであり、まもの自身でもあったのである。
それゆえにかれらはみずからを混沌の勝者とよばわったのである。
おにたちを統べるのは【咆哮剣】とよばれたうつくしいおにであった。
【咆哮剣】はこう宣言した。
「やあみなの衆。われらはあのじゃあくでおぞましく、またこのよをうみだし、おにとまものいがいのすべてをうみだして、このよをけがしたあのおおばけものをついにうちはたしたのである。ゆえにいわおうではないか。われらはこのよのすべての悪をうちはたしたにひとしいのだし、ここらでひとやすみしようではないか」
すべてのおにはそれに賛成した。
それゆえに宴会がはじまることになったのである。
・・・んあ?
あ? ああ、ねむっちまってたかそりゃすまない。
ええとなんだったっけ?
ああっと、、、つづきだ。
つづき、。
それにしてもそうやってじっとまってたのかい?
そりゃきながなもんだな。
おまえほど惚けちゃいないって?
ああそうかい。
うんでだな、もものはなしだ。
脈絡がないって?
まあそういわないできいてくりゃさんせ、だ。
ももたろうとたたかったおにっていうのはこのわたしのことさ。
うそだとおもってるだろう? けど、これはほんと。
あのももからうまれた【天上剣】にたいじされたおにってのはわたしのことなんだ。
すごいだろう?
たいじされてえばるなって?
まあまあ。
ありゃけっこうなやつではあったよ。
まるでまるで、わたしのおとっさまのようであったよ。
で、やつはたちのわるいエテ公をつれていやがってなあ。・・・
いぬとキジはまあいいんだが、あのさるだけはどうしょうもなかった。
【天上剣】が食中毒になってはらいてえっていったら、薬草がはえているやまごともちあげてもってきちまいやがるんだもの。
わたしもそれなりにちからはあるしソラをくだいたこともあるけど、けどあのサル助もとんでもないわなあ。
しかもまもののくせにニンゲンの、まあ、あれはかみさまのうまれかわりではあったんだけど、ももたろうの味方ってのもありえんよなあ。
サルと【天上剣】、そろってかわるばんこにせめたててくるんでそこらにある岩石をちぎってはなげちぎってはなげってやりかえしちゃあいたが、たまったもんではなかったわ。
しかもエテ公は使い魔を、ああつまりいぬとキジだが、やつらをつかってせめてきやがるし、ぎゃくにエテ公にはこっちの使い魔は効かないしで、だからたいへんだったわ。
いやほんとに。
けど、ももか。
いつもおにの邪魔をするのはももなんだよなあ。
しってるか?
いつもおにの邪魔をするのはももだって・・・
途中の詩はテンポが良くて酔っ払いが歌う詩に見えて良い感じに感じますが、
全体的に見難くてちょっと目が疲れますな。
後天空剣と猿が今一わからんかったとです(´・ω・`)
つかみがよわいのに(自覚アリ)コメントがついたよ?
> 小悪亭・斎田さま
出てくる固有名詞ですが、多分、おには他の事件と混同してるのでしょう。
(どっかべつのところで退治された記憶かと)
多分、ヘッドバンキングしながら格闘戦をしているうちに良い感じでアタマをぶつけて(多分、マスタースパークかなんかで)、脳みその配線がずれてるのでは。・・・
あと、やっぱヒラガナがよみにくいか。・・・とりあえずこのままいきますですたい。(もうはじめちゃったし。(^^;)
見る(聴く)のならば、ひらかな表記はむしろ効果的ではないかと。
わたしは文章から音を感じました。
だからこそ、流し読みには不向きでしょうけど。