Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙幻想曲1

2007/03/28 06:20:02
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「いってくるぜ~」
誰も居ないのに、玄関口でそう言って、家を出る。
そんなのはもう、慣れた日常だ。
大好きな茸の生える森にある小さな家。
朝なんかはちょっと霧深くてアレだけど、
まぁ、通学時は空を飛んでしまえば森の環境はあまり気にならない。
「よ・・・っと」
いつものように魔法箒に跨り、軽く念じる。
ファ―――サァ
風の流れる音。少しだけ揺れて、箒は空へと舞う。


第一話[季節はずれの転校生]


「ふぅ・・・・・・今日もいい天気だなぁ~」
「あら魔理沙じゃない、おはよ」
まだ少し早いからって、いつもと違うコースを飛んでいると、
赤い派手な巫女装束を着て、幼馴染の巫女が現れる。
私と違って、箒も無いのに飛んでるんだから反則だ。
「よっ、相変わらず赤いな」
「別に・・・いいじゃない、可愛ければ」
「可愛いっていうのは前提なんだな」
当たり前の様に言うから、つい苦笑してしまう。
自分で言ってりゃ世話ないぜ、と。
「そういう魔理沙こそ、その黒いの、日向だと暑くない?
制服あるんだから着れば良いのに」
「私服可なんだからいいだろ別に。
それに暑くなったらチルノで冷やすから問題ないぜ」
「後輩を冷房器具みたいに扱わないの」
そうは言うけど、それ位にしか役に立たなさそうだしなぁ・・あいつ。
夏場限りの便利グッズだよな。
「それはそうとあんたがこっちのコース飛ぶなんて珍しいわね」
神社から学校までと魔法の森から学校までの道のりでは、
全くと言っていいほどかち合うことが無い。
だからこうやって通学途中に霊夢と会う事も稀だ。
「まだ時間早いし、
たまには散歩がてらこっちの方もどうかな、ってね」
「・・・余裕ね、五分前よ?」
「え・・・・?」
そういえばさっきから腕時計が全然進んでない気がする。
いや、あまりにも私が早く飛びすぎてて時空を越えたのかな、
なんて・・・思う程莫迦じゃないぞ私は?
「時間。予鈴五分前」
「・・・・なんで霊夢はそんなゆったりと飛んでるんだよ」
だ、だまされないぞ、これは罠に違いない。
私を思いっきり急がせて、後から悠々と現れて

「あらどうしたのそんなに汗ばんじゃって。
チルノでも使って冷やしたらぁ?」

とか言うに違いない。霊夢、怖い子っ
「や、私教師だし」
「納得いかねぇぇぇぇぇぇっ!!」
私服にしちゃ赤すぎると思ったけど教師だったのかっ!?
確かに生徒だなんて一言も聞いてないし、
会うのも休み時間とか食事の時位で、
教室で会う事は滅多に無かったけど、
それにしても唐突過ぎる。
「や、だって私巫女だし」
理由になってないぞ!?
「ち、因みに科目は?」
「社会一般」
「・・・案外、普通なんだな」
「なんで学校きてまで普通じゃない事教えなきゃいけないのよ」
「それはそうだな・・・って時間時間時間~~~っ」
「大丈夫よ、あんたのトップスピードで行けばあっという・・・あら?
もう居ないなんて、せっかちだなぁ」

その頃――
「らんらんら~ん、上海、新しい学校はどんなのかしらね?
打ち解けられるかしら?友達、一杯できると良いなぁ」
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!」
「え・・・・?」
ドゴォォォォ―――ッッッッッッ!!!
あ、何かすごい音聞こえるなぁ、何かなこれ・・
え・・・?私が・・・・・吹き飛ばされる音?
ズザザザザァァァァァァァァァァッッッッッ
あー・・・・うん、解・・・るよ?これ・・・私が地面に・・・転がってる音だよね。
何・・・か・・・解らないけど・・・私・・・・何かした・・・・?
「ア、 アリス~」
遠くで上海の声が聞こえるよ・・・
いきなりゲームオーバーって・・・・ありなのかな・・・・

キーンコーンカーンコーン―――
ぎりぎり、辛うじて、なんとか、先生が来るまでには間に合った。
「ま、マジで焦ったぜ・・・」
飛んでいたのは箒だったんだけど、
とばしまくったから結構体力も使った。
朝からクタクタだ。
途中色々と何かにぶつかった気がするけど、
速度が早すぎて何なのかまでは気が回らなかった。
まぁ、きっと通りすがりの妖精とかだよな。
「はいはーい、皆席に着いて~」
チャイムが鳴ってから少し経って、
担任の八雲先生が天井から湧き出てくる。
この先生が普通にドアから入ってくることって見たことないよな。
「ゆかりんせんせ~い、パンチラしてますよ~(はぁと」
「うふふ、あらいやだ、いけない生徒ね(はぁと」
冗談半分でからかう男子。
「いきなさい、藍」
「許せ、名も無き生徒よ。
お前は存在そのものが罪だと我が主が判断した」
冗談で済ませない八雲先生。
「えっ・・・?あっ・・・
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
先生が笑顔で呟くと、その式だという狐が現れて、
パンチラをからかった生徒に弾幕を展開した。
必至にかわすも、男子はあっという間に一機失ってしまう。
ただ、先生が境界を操って、
弾幕自体は壁とか天井とかに当たる前に別の空間に消えたらしい。
全く、はた迷惑な奴らだぜ。

「さてと・・・朝一の教育的指導も終えたことだし、
今日は新しいお友達を紹介しますね」
笑顔のまま済ませるのが怖い。
「「えー、この時期に転校生ですか~?」」
流石に二学期も終わろうかと言うこの時期に転校生っていうのはちょっと珍しい。
どんな奴だろう。
「ちょっと個人的な事情でこちらに来たのよ。
さぁ出番よっ、ずずっと入って」
先生の言葉に反応してか、がららら、と扉が開く。
そこには、人形サイズの・・・いや、そのまま人形が居た。
「あら・・・?ちょっと会わない間に随分と縮んだわね」
「きゃ~、かわい~」
ずず・・ずずずずず
後ろに何か引きずっているけど、荷物か何かだろうか。
ちょっと私の席からは良く見えない。
「アリス、アリス~、ツイタヨ、目覚マシテ?」
「きゃ~、人形が喋った~」
既に女子の心はゲットしたらしい。
やるな、新人。
「えーっと、新しく入ったアリス=マーガトロイドちゃんよ。
皆仲良くね~」
「「は~い」」
中々挨拶しようとしないアリスのかわりに、先生が紹介する。
アリスはちっちゃくて可愛いから、
きっとこれから女子の人気者になるんだろうな。
くそ、私もきゃっきゃっうふふしたいぜ。
「ア、 アノ・・・」
「うふふ、緊張しなくても大丈夫よ。
(女子は)皆とってもいい子だから。担任の私が保証するわ」
事実の半分が隠された気がしたぞ。
「デ、デモ・・・」
まだ何か言おうとしているアリスに、
担任はノンノン、と指を振る。
「さ、それ以上は席に着いてから話しましょうね。
貴方の席はあそこ・・・右の一番後ろの魔理沙ちゃんの隣でいいわね」
指定通りだと、
先ほど先生のパンチラがどうとか言ってた生徒の席がそこにあたる。
「おぅ、こっちだぜ」
まぁ、気にしない。
てらてらと手を振って私が魔理沙だと言う事をアリスに主張する。
「ハァ・・・」
何故かしぶしぶ、と言った感じだ。
私、何か悪い事したか?
その時、ずずず、と、アリスがひきずっている物がようやっと目に入る。
何なのかと思ったけど、これは・・・
「って、人じゃないかっ!?」
「あら本当」
ざわざわざわざわ
他のクラスメイトも騒ぎ出す。
というか誰も気づかなかったのかよ。
「むむむ、大事件ね。
私の推理によると、じっちゃんはこの中にいるわ」
先生は黙ってた方が良いと思う。
「ワシの事かのぅ」
魂魄 妖忌。
生涯勉強を掲げて年配ながらも中途入学してきた爺さん。
いや、あんたもいいから。
「アノ・・・・・」
「なるほど、可愛い外見に見えて実は超強力な妖怪だったんだな」
危なく油断するところだった。
アリス怖い子。
「う・・・・ん――――うるさい・・・・」
死体が目を覚ました。
普通なら驚くかもしれないけど、
吸血鬼が生徒会長だったり、亡霊がPTA会長だったりするから、
何だかもうどうでもいい気もする。
「あ、ここ教室?上海、運んでくれてたのね、ありがとう」
「アリス、タイヘン」
「え・・・?」
一同、アリス(?)と女の子とを凝視している。
「え・・・?
え・・・・・?えええ!?」
混乱してる。想定外の事には弱いタイプなのかもしれないな。うん。
「あ、あの、えーっと、は、初めまして、私あの・・・アリスって言います」
とりあえず自己紹介をする女の子。
うーん、律儀だなぁ。
「アリスが二人に!?」
「おいおいやばいよ、俺どっちに萌えたら良いんだ!?」
「これは・・・アリスゲームを展開して、
誰が真のアリスとなれるかを競う話なんですねっ」
いいから黙れ、男子。
「え・・・あの・・・・あぅ・・・」
混乱した挙句どうしたら良いか解らず心を閉ざしそうになっていた。
うちの男子濃いからなぁ。
流石にただ見てるのは可哀相だな・・・・
こういう時に限って担任は・・・うはもう居眠りしてるよ。
流石だな八雲先生。
「ほら、ここだぜ、ここ」
そう言ってぽんぽん、と隣の席の椅子をたたく。
「え・・・・?あ、はいっ」
ちょっとだけ呆けたけど、すぐに察したのか、
席につく。
「あ、あの、私、アリス=マーガトロイド。
人形使いの魔法使い。貴方は?」
「私は霧雨 魔理沙。魔法使いで、校内一の恋泥棒だぜ」
「恋泥棒・・・・?」
「何故か女の子にばかりモテる」
「ぷっ・・・何それ。女の子なのに」
あ、笑った。
うん、仲良くなれそうだ。
「良かった、笑ってくれた」
「くすくす・・・だって、変な事自称するんだもの」
爆笑じゃないけど、小さく押さえるように笑うのしぐさは、
十分可愛い笑顔だと思った。

「それで、アリスはなんでそんなボロボロなんだ?」
ひきずられてたからなのかと思ったけど、
それ以外の部分も結構ボロっとしてる。
まぁ破れたりはそんなにしてないから良いんだけど、
まさかこういうのが趣味っていう訳でもないだろうし、
気になったから聞いてみた。
「うーん・・・私も解らないんだけど・・・
校門前で、これからどうなるのかなって上海と
――あ、この子の名前ね――
話してたら『どけぇぇぇっ』っていう声と一緒にすごい衝撃が走って・・・
それから覚えが無いの。多分何かにぶつかられて、それでこんなに」
アリスと誤認していた人形を片手に、ふにふにとその手を動かしながら言う。
が、そんな可愛い仕草なんて気にならない位、焦る。
そうか、さっき何かに当たったと思ったのはアリスだったのか。
「うっ・・・そ、それは・・・
そうっ、それは門前に巣食う妖怪『ほんみりん』の仕業だっ」
咄嗟に他人の所為にした。
「ほ、ほんみりん・・・?」
「そうそう、
門の近くに居る奴を誰彼構わず殴り倒していく、恐怖の妖怪だ。
弱いけど」
「よ、弱いの?」
「まぁ、弱いって言ったって妖怪だから、服位は破かれるかもしれないぜ」
ごめん紅魔館の門番。私の為に変態になってくれ。
「そうなの・・・物騒なのね、幻想郷って」
大丈夫だ、そんなの居ないから。
「アリスは幻想郷の外から着たのか?」
「ええ、魔界っていう所から―――」
「魔界かぁ、結構遠いんだろうなぁ」
幻想郷の中なら箒でどこにでもいけるけど、
その外には滅多にいけない。精々冥界くらいだ。
いや、正確には違う。
行く事はできるけど、用も無いのにそんな遠出する気があんまりない。
「まぁ、仲良くやろうぜ」
「うん、よろしくね、魔理沙」
にこやかに微笑むアリスに、少しだけ目を奪われる。
不覚、恋泥棒がそっちに目覚めてたら世話ないぜ。


その頃どこかの館では――
「・・・っくちゅんっ
何かしら・・・どこかでまた誰かに蔑まれたような気がするわ」
門番が一人、心の底に憤りを貯めていた。

(続く)
初めましての方初めまして。小悪亭・斎田という者です。
前作とはうって変わって学園物が書きたくなったので書いてみました。
結構ありがちなネタなので、他とかぶらないように気をつけたつもりなんですが・・
魔理沙が主人公という時点で手遅れな気がしますね。はい(倒
なんか急に気が向いて勢いで書いたので二話以降が書けるかどうかびみょいです。

とりあえず今日はこの辺りで。ではでは。
小悪亭・斎田
http://www.geocities.jp/b3hwexeq/mein0.html
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コメント



0.320簡易評価
2.40そんなssが好き削除
冗談で済ませない八雲ゆかりん先生に噴いたw
5.60時空や空間を翔る程度の能力削除
おっ、学園SSですか~~
新学期が始まる時期ですしね。

続き楽しみにしてます。
6.無評価小悪亭・斎田削除
ゆかりん先生~>
ゆうりんファンタジアという動画を見て頭に浮かんだネタです

続き~>
続きが中々浮かばNEEEEE(つД`;)
7.無評価小悪亭・斎田削除
ゆかりんファンタジアだった(´・ω・`)
多重失礼。
10.無評価名前が無い程度の能力削除
マリアリですか!これは興奮せざるを得ない。
学園ものなら
東方聖ZUN女学院かと思いましたが、これはこれで。