「もういいかな」
詰め所の前においた器具が甘い香りを放つ、やけた砂の中では小さな支那栗(シナグリ)がコロコロまわっている。
時計を見れば三十分が経過していた、もう少しの辛抱だ。
「ああ、早く焼けないかな~」
思わずかき混ぜる手に力が入ってしまう、でもここから重要。
門番にとって貴重な休憩時間をここまでつぎ込んだからには失敗は許されない。
焦がさずに栗の風味が一番生きているところを見極めなければならない。
気を集中して・・・・・・・・・今だ !!
「よっ !!」
一気に火からおろして粗いザルにぶちまけ、手早く砂をふるい落とし敷いておいたゴザにあける。
辺りに栗と水あめの香り広がった。
「お茶入れよ~と」
この間八雲藍さんから茶葉を頂いたので入れる事にする。
白毫烏龍茶というらしいが、あまりお茶の種類には詳しくないので気にしない。
まあ、ふつうの烏龍茶の入れ方でいいでしょ。
細かいところは具合を見ながら加減すると言うことで。
「♪~」
好きなものの為にお茶を入れる。
つい、鼻歌の1つも歌いたくなってしまうが・・・
「じゃまするぜ~ !!」
侵入者のせいで見事に台無しとなった。
休憩モードに入りかけていた精神(こころ)を引き締め、侵入者霧雨魔理沙と対面する。
「またきたわね、略奪者は入館お断りよ」
「なら気にしないでいいぜ、今の私は考古学者だ」
「考古学者もおことわりよ」
「なら道具屋の店長だぜ」
「押し売りもけっこう」
「つれないぜ」
「門番ですから」
にやっと魔理沙が不敵な笑みを浮かべたのが合図となった。
わたしは一気に距離をとり、気弾を放つ。
もちろん魔理沙もそれを予測していたかのように星型のためで迎え撃つ。
自慢ではないがわたしは鬼のように力が強いわけでもなく、どこぞの紅白巫女のような才能もない。
レミリア様やフランドール様のような規格外の能力もない。
でも私にはこの能力がある、気を使う程度の能力が。
「はぁ !!」
大気に満ちている気を取り込んで気弾を放つ。
「あまいぜ」
それらはことごとく打ち落とされるが構わない。
千が打ち落とされるなら、こちらは万を投じるのみだ。
「虹符『彩虹の風鈴』 !!」
懐からスペルカードを取り出し宣言する。
「そんなものは見飽きたぜ !!」
週二日は略奪に来ていれば見飽きもするだろう。
さすがに私もこれだけで被弾してくれるとは思ってはいない。
「このカードはこうやって避けるんだぜ」
嘲るようにわたしの周りをグルグルと回り始めた。
だが、そのにやついた顔もそこまでだ。
弾幕ごっこをするのは別に構わないが、弾幕ごっこだけで相手をするとは一言も言っていない。
わたしは無造作にそれを抜き放ち、振るった。
「ありゃ ?」
スペルを解除した瞬間に抜き払われた刃に魔理沙は驚きをあらわにした。
「珍しいもの持ってるじゃないか、それは青龍刀か ?」
「にたようなものよ、それよりいいの ?」
すっと魔理沙の後ろを指差してやる。
魔理沙はすぐに示された方を向くが、ここで不意打ちなんてことはしない。
決着は既についている。
「げっ・・・ !!」
細かいことは知らないが魔法使いは箒の先が切り落とされても飛んでいられるのだろうか ?
「うわあああぁぁぁaaaaaaaaa !!!」
どうやら答えは否のようだ。
「はい、わたしの勝ち」
重力に身を任せながら重力に捕らわれた魔法使いに微笑む。
「どうでもいいからなんとかしろ !!!」
確かにこのまま地面と正面衝突されるのはいただけない。
くっと宙を蹴り更に加速して地上に降りた。
「じゃあ・・・歯食いしばって」
ぐっと拳に力を込めて、
「まて !! それはあんまりだ !!」
待ちません(はぁと
「紅砲」
振り上げた拳が自由落下してきた魔法使いにクリーンヒットする。
「ぐげぎゃあ !!」
カエルがつぶれたような声を出して魔理沙は湖に向かって飛んで行った。
これなら当分は来れないだろうから、仕事がけっこう楽になる。
あっでも、入れかけのお茶は駄目になっただろうな~。
魔理沙との一戦交えた後、わたしは遅れてしまったお茶の時間を満喫することにした。
ちょうど栗も食べごろに冷めていたので器に移して、出すぎてしまったお茶をどうにか飲みきり新しいお茶を入れた。
「いい香り」
安物に注ぐにはもったいないくらいの甘い香りとともに湯のみが満たされてゆく。
いや、おおよそ百年は使っている湯のみだ。
ある意味ではこれ以上にふさわしい器はない。
さっそく一口。
「・・・おいしい」
味としては紅茶に近いが少し青さが残る、口に含んだ時の甘い香りとさっぱりとした喉越しがいい。
これは本当に烏龍茶なんだろうか?
「何飲んでるの ?」
床の板を押し上げてにゅうっと出てきたのはフランドール様だ。
「あ、また抜け出していらしたんですか ?」
「うん、秘密トンネル使って」
秘密トンネルとはフランドール様の部屋の床から門番の詰め所までの直通のトンネルで毎回対魔壁を破壊
して出てくると騒ぎになるのでどうしようかと思案していた時に、
「あんた馬鹿じゃないの ? 上も横も駄目なら穴掘って進むっきゃないでしょ」
定例行事として門に突貫してきた氷精の言葉を真に受けてしまってツルハシ片手にヘルメットをかぶった
フランドール様が昼夜を徹した突貫工事で作ってしまったものだ。
お願いですから本当に実行しないでください。
床に突然穴が開いてフランドール様が出てきたときには何かの冗談かと思いました。
「う~ん、紅茶のようなそうでないような」
「あ、すぐに入れますから」
戸棚から一番綺麗な湯のみをだしてヤカンからお湯をそそいで温めつつ、二煎目の準備をする。
「それ紅茶なの ?」
「いえ、おすそ分けしてもらった烏龍茶です」
「ふ~ん、これは」
「これは採ってきた栗です」
「ふ~ん」
つんつんと小さな栗をもてあそびながら、ぱくっと・・・あ!!
「う~、ガリガリしてて苦い」
「フランドール様、まず殻を取るんです」
なんともいえないといった顔をしているフランドール様に殻をむいた栗を渡す。
「あま~い」
食べたらすぐに笑顔になってくれた。
「こうやって殻を取るんですよ」
ゆっくりと栗に爪で割れ目を付けて両方から押すと渋皮が取れて中身が出てくる。
「あぐっもぐもぐ、あま~い」
お茶を入れなおし、戸棚の中のお茶菓子のなかで良い物を探す。
「う~んお煎餅は食べちゃったし、酢昆布はあわないだろうなぁ、うん ? 佐藤君と鈴木君ってこれ一体いつのよ?」
どうも自分の身の回りの事になると疎かになってしまう、これは内密に処分しないと。
悩んだ結果、夜食用に取っておいた饅頭を出したがフランドール様は栗に忙しいようでそれどころではないようだ。
「え~と」
ぴしっ、ぱり、ころん、もぐもぐ。
コツを掴んだようで手早く殻をむいて中身を取り出してゆく。
わたしも入れたお茶を飲んで休憩に精を出す事にした。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
半分くらい残った栗はそのまま戸棚へしまっておこう、少なくとも三日はお茶請けとして活躍してくれる。
「美鈴、後休憩時間はあとどれくらい ?」
「すみません、もうそろそろ日が落ちますから」
夜は妖怪が最も活発になる時間、館がもっとも危険に晒される。
門番にとっては最も気の抜けない時間だ。
「そっか、じゃあ帰るね。ばいば・・・」
ばいばーい、と言い終わる前にフランドール様は床下に消えた。
「さてと」
手早く茶器を片付けお菓子を戸棚へと放り込む。
「さあ、夜も長いけど張り切っていこう」
気合を入れなおしてわたしは詰め所を後にした。
おわり
詰め所の前においた器具が甘い香りを放つ、やけた砂の中では小さな支那栗(シナグリ)がコロコロまわっている。
時計を見れば三十分が経過していた、もう少しの辛抱だ。
「ああ、早く焼けないかな~」
思わずかき混ぜる手に力が入ってしまう、でもここから重要。
門番にとって貴重な休憩時間をここまでつぎ込んだからには失敗は許されない。
焦がさずに栗の風味が一番生きているところを見極めなければならない。
気を集中して・・・・・・・・・今だ !!
「よっ !!」
一気に火からおろして粗いザルにぶちまけ、手早く砂をふるい落とし敷いておいたゴザにあける。
辺りに栗と水あめの香り広がった。
「お茶入れよ~と」
この間八雲藍さんから茶葉を頂いたので入れる事にする。
白毫烏龍茶というらしいが、あまりお茶の種類には詳しくないので気にしない。
まあ、ふつうの烏龍茶の入れ方でいいでしょ。
細かいところは具合を見ながら加減すると言うことで。
「♪~」
好きなものの為にお茶を入れる。
つい、鼻歌の1つも歌いたくなってしまうが・・・
「じゃまするぜ~ !!」
侵入者のせいで見事に台無しとなった。
休憩モードに入りかけていた精神(こころ)を引き締め、侵入者霧雨魔理沙と対面する。
「またきたわね、略奪者は入館お断りよ」
「なら気にしないでいいぜ、今の私は考古学者だ」
「考古学者もおことわりよ」
「なら道具屋の店長だぜ」
「押し売りもけっこう」
「つれないぜ」
「門番ですから」
にやっと魔理沙が不敵な笑みを浮かべたのが合図となった。
わたしは一気に距離をとり、気弾を放つ。
もちろん魔理沙もそれを予測していたかのように星型のためで迎え撃つ。
自慢ではないがわたしは鬼のように力が強いわけでもなく、どこぞの紅白巫女のような才能もない。
レミリア様やフランドール様のような規格外の能力もない。
でも私にはこの能力がある、気を使う程度の能力が。
「はぁ !!」
大気に満ちている気を取り込んで気弾を放つ。
「あまいぜ」
それらはことごとく打ち落とされるが構わない。
千が打ち落とされるなら、こちらは万を投じるのみだ。
「虹符『彩虹の風鈴』 !!」
懐からスペルカードを取り出し宣言する。
「そんなものは見飽きたぜ !!」
週二日は略奪に来ていれば見飽きもするだろう。
さすがに私もこれだけで被弾してくれるとは思ってはいない。
「このカードはこうやって避けるんだぜ」
嘲るようにわたしの周りをグルグルと回り始めた。
だが、そのにやついた顔もそこまでだ。
弾幕ごっこをするのは別に構わないが、弾幕ごっこだけで相手をするとは一言も言っていない。
わたしは無造作にそれを抜き放ち、振るった。
「ありゃ ?」
スペルを解除した瞬間に抜き払われた刃に魔理沙は驚きをあらわにした。
「珍しいもの持ってるじゃないか、それは青龍刀か ?」
「にたようなものよ、それよりいいの ?」
すっと魔理沙の後ろを指差してやる。
魔理沙はすぐに示された方を向くが、ここで不意打ちなんてことはしない。
決着は既についている。
「げっ・・・ !!」
細かいことは知らないが魔法使いは箒の先が切り落とされても飛んでいられるのだろうか ?
「うわあああぁぁぁaaaaaaaaa !!!」
どうやら答えは否のようだ。
「はい、わたしの勝ち」
重力に身を任せながら重力に捕らわれた魔法使いに微笑む。
「どうでもいいからなんとかしろ !!!」
確かにこのまま地面と正面衝突されるのはいただけない。
くっと宙を蹴り更に加速して地上に降りた。
「じゃあ・・・歯食いしばって」
ぐっと拳に力を込めて、
「まて !! それはあんまりだ !!」
待ちません(はぁと
「紅砲」
振り上げた拳が自由落下してきた魔法使いにクリーンヒットする。
「ぐげぎゃあ !!」
カエルがつぶれたような声を出して魔理沙は湖に向かって飛んで行った。
これなら当分は来れないだろうから、仕事がけっこう楽になる。
あっでも、入れかけのお茶は駄目になっただろうな~。
魔理沙との一戦交えた後、わたしは遅れてしまったお茶の時間を満喫することにした。
ちょうど栗も食べごろに冷めていたので器に移して、出すぎてしまったお茶をどうにか飲みきり新しいお茶を入れた。
「いい香り」
安物に注ぐにはもったいないくらいの甘い香りとともに湯のみが満たされてゆく。
いや、おおよそ百年は使っている湯のみだ。
ある意味ではこれ以上にふさわしい器はない。
さっそく一口。
「・・・おいしい」
味としては紅茶に近いが少し青さが残る、口に含んだ時の甘い香りとさっぱりとした喉越しがいい。
これは本当に烏龍茶なんだろうか?
「何飲んでるの ?」
床の板を押し上げてにゅうっと出てきたのはフランドール様だ。
「あ、また抜け出していらしたんですか ?」
「うん、秘密トンネル使って」
秘密トンネルとはフランドール様の部屋の床から門番の詰め所までの直通のトンネルで毎回対魔壁を破壊
して出てくると騒ぎになるのでどうしようかと思案していた時に、
「あんた馬鹿じゃないの ? 上も横も駄目なら穴掘って進むっきゃないでしょ」
定例行事として門に突貫してきた氷精の言葉を真に受けてしまってツルハシ片手にヘルメットをかぶった
フランドール様が昼夜を徹した突貫工事で作ってしまったものだ。
お願いですから本当に実行しないでください。
床に突然穴が開いてフランドール様が出てきたときには何かの冗談かと思いました。
「う~ん、紅茶のようなそうでないような」
「あ、すぐに入れますから」
戸棚から一番綺麗な湯のみをだしてヤカンからお湯をそそいで温めつつ、二煎目の準備をする。
「それ紅茶なの ?」
「いえ、おすそ分けしてもらった烏龍茶です」
「ふ~ん、これは」
「これは採ってきた栗です」
「ふ~ん」
つんつんと小さな栗をもてあそびながら、ぱくっと・・・あ!!
「う~、ガリガリしてて苦い」
「フランドール様、まず殻を取るんです」
なんともいえないといった顔をしているフランドール様に殻をむいた栗を渡す。
「あま~い」
食べたらすぐに笑顔になってくれた。
「こうやって殻を取るんですよ」
ゆっくりと栗に爪で割れ目を付けて両方から押すと渋皮が取れて中身が出てくる。
「あぐっもぐもぐ、あま~い」
お茶を入れなおし、戸棚の中のお茶菓子のなかで良い物を探す。
「う~んお煎餅は食べちゃったし、酢昆布はあわないだろうなぁ、うん ? 佐藤君と鈴木君ってこれ一体いつのよ?」
どうも自分の身の回りの事になると疎かになってしまう、これは内密に処分しないと。
悩んだ結果、夜食用に取っておいた饅頭を出したがフランドール様は栗に忙しいようでそれどころではないようだ。
「え~と」
ぴしっ、ぱり、ころん、もぐもぐ。
コツを掴んだようで手早く殻をむいて中身を取り出してゆく。
わたしも入れたお茶を飲んで休憩に精を出す事にした。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
半分くらい残った栗はそのまま戸棚へしまっておこう、少なくとも三日はお茶請けとして活躍してくれる。
「美鈴、後休憩時間はあとどれくらい ?」
「すみません、もうそろそろ日が落ちますから」
夜は妖怪が最も活発になる時間、館がもっとも危険に晒される。
門番にとっては最も気の抜けない時間だ。
「そっか、じゃあ帰るね。ばいば・・・」
ばいばーい、と言い終わる前にフランドール様は床下に消えた。
「さてと」
手早く茶器を片付けお菓子を戸棚へと放り込む。
「さあ、夜も長いけど張り切っていこう」
気合を入れなおしてわたしは詰め所を後にした。
おわり
今後も期待してまーす。
あ、フランたんインしたお!(AAry
何だかそのうち紅魔湖隧道とか霧雨隧道とか掘り始めそうな妹様ですな。
読みやすいしすんなりと内容に
打ち解けていきました。