※この作品には、一部オリ設定が含まれています。嫌いな方はご注意ください。
ある夜の博麗神社、霊夢は一人縁側で月見酒を楽しんでいた。
「ふぅ~、今日は誰も来ないし静かでいいわ。たまにはゆっくりお酒を楽しむものね」
最近は、宴会、宴会、また宴会と毎晩騒がしい日が続いていた。
それと言うのも、私に許可もなくみんなが神社に集まって酒盛りを始めるからよ。
しかも、誰も後片付けもせずにそそくさと帰っちゃうし!
いったい誰が毎日掃除してると思ってるのよ!
せめて、賽銭を入れて行ってくれさえすれば文句はいわないのに…
そんなことを考えながら、私がお酒を飲んでいると境内から物音がした。
「ん、何かしら?まさか!賽銭泥棒!」
そこまで考えて、神社に賽銭が無いことはみんなが知っていることだ…
むしろ自分が一番分かっている。泥棒なんて来るはずも無い…
なぜか急に目から涙が零れそうになった。
きっと埃のせいだと自分に言い聞かせて、物音がした方に行ってみることにする。
***
「魔理沙…と咲夜?いったいなにしてるの?」
いざ境内に行くと、そこには酔っ払っている魔理沙と、
魔理沙に絡まれながら肩を貸して歩いてくる咲夜の姿があった。
「あっ、霊夢ちょうどよかったわ。まだ起きてたのね。
この酔っ払いの相手をしてやってよ!せっかくお嬢様が、
今日はパチェと話しをしてるからゆっくりしてなさいと言うから、
夜雀の屋台でゆっくり飲んでたのに、この酔っ払いに絡まれてね…
仕方無しに相手してたら、今度は霊夢のとこだ~とか言いだしてこの有様よ!」
「霊夢~、あたしの話しを聞いてくれよ~。こ~りんが、また口煩く言って来るんだよ~。」
どうやら、宴会が無いから一人で飲んでいたらしい魔理沙が少々、飲みすぎてしまったようだ。
「あ~、大体事情は分かったわ。なら居間に行きましょ。
さすがに、こんなとこで相手をするのは辛いわ。」
そう言うと、踵を返して居間に向かう。まったく、たまにはゆっくりさせて欲しいわ…
***
居間に着くと、三人ともコタツに入って向かい合う形になった。
「で、魔理沙。今度はどんな愚痴を言いに来たの?」
さっそく、話しを切り出す。愚痴をさっさと言って早く帰って欲しい。
「それが聞いてくれよ霊夢。今日は朝から、香霖を起こしに行って三食作ってやったんだよ。
香霖おいしいって言ってくれて笑ってくれてな、嬉しかったな~デヘヘ。」
「…」
「…」
私も咲夜も、口煩くがどうの言ってたのでてっきり愚痴かと思っていたら、
いきなり惚気話を始められた。しかし魔理沙、もしかして通い妻でもしているのかしら?
今度、霖之助さんを問い詰めて魔理沙を笑うネタにさしてもらおう。
「えっと…魔理沙その…さっき香霖が口煩いってのはどうしたの?」
さすがに瀟洒なメイド長でも、完璧に幸せそうに一人惚気話を進める魔理沙に
耐えられなかったようだ。私だって、耐えられない。
こんな後ろにお花畑が見えるほどの桃色オーラは我慢できない。
「そ~なんだよ。晩飯作ってやったらおいしいって言ってくれて笑ってくれたんだけど、
これがまた格好良くてな…」
「そこは分かったから、早く本題に入ってよ!」
これは、かなりの末期のようだ。どんなとこからでも惚気に向かう気満々だ。
早く話しを進めて欲しくて話しを途中で止める。今度、永遠亭の薬師にでも頼んで、
なんでもいい から薬を処方してもらおう。主に私の平穏のために!
「むぅ、これからいいとこなのに…それじゃ本題に入るぞ。今日な…」
(回想)
今日は、宴会も無いし朝から香霖のところに来て、一日香霖堂で過ごすことにした。
ずっと一緒にいるのは久しぶりだからかなり嬉しかったのに、晩飯の後で香霖がまた変なこと言いだしやがった。
「なぁ、魔理沙。そろそろ実家の方にも顔を出したらどうだい?
君が実家を飛び出してからずいぶん経つし、両親もとても心配してるよ。
たまには、親孝行ってのをしてみるもんだよ?」
香霖が言いたいことは分かるが、
あたしが家を出たのは香霖が大人になったら、私を好きになるかもね。と言ったからだ。
だからあたしは、家を出て一人で生活できるように頑張った。
最近は、自炊もそれなりに美味くなったし、掃除以外は大抵のことはできる自信がある。
なのに、香霖はあたしの方をずっと見ていてくれない。
だから、あたしは香霖が好きだと言ってくれるまで家に帰るつもりは無い。
親に甘えているといかにも子供っぽいからだ。
「いやだね。あたしは一人で十分生活できてるし、実家だと魔法の研究ができないじゃないか。」
「そんなこと言わずに、顔を出すだけでいいんだから。親にあまり心配をかけるものじゃないよ。」
そんなことを言われても、さすがに本音を言うわけにもいかず、
仕方ないから適当に言って誤魔化してさっさと退散することにすることにした。
もう少し香霖と一緒に居たかったけど、これが始まると長いから逃げた方がいいことは経験上わかってる。
「別にいつでも会えるんだから、どうだっていいだろ。
あたしは自由に生きるんだよ。香霖がとやかく言うことじゃないさ。
それじゃ、あたしはもう帰るからな。さっさと風呂に入って寝ろよ!それじゃあな香霖。」
「あっ、魔理沙まだ話しは終わってな…」
まだ文句を言おうとしている香霖を無視して、さっさと箒にまたがって飛び出していく。
せっかくいい気分だったのに、まったく香霖は…
仕方ない、気分直しに屋台にでも行くか!
(回想終わり)
「というわけで、今にいたるってわけだ。いつも香霖は私に両親に顔を見せろだ、
家に帰れだ、煩いったらありゃしない。別に、親にはいつだって会えるんだし
別にいいよな。二人だってそう思うだろ?」
「…」
「…」
魔理沙の話しを聞いていた私と咲夜は、なんとコメントしていいかわからなかった。
普段、魔理沙がこんなことを考えているなんてまったく予想外だったこともある。
なんと言うか、魔理沙のあまりの乙女っぷりに脳の回路がショート寸前だったが、
コメントできない理由は別にあった。
「えっと、魔理沙。あなたの言いたいことは分かるんだけど、たまに会うくらいいいじゃない。
霖之助さんだってあなたのことを考えて言ってくれてるのよ。
それに両親だっていつまでも生きてるわけじゃないんだし、会えるときに会っておくのが一番よ。」
「そうよ、世の中には会いたくても会えない人達だっているんだから、
親が生きているうちに親孝行は、しっかりとしておくべきよ。
あんまりそんなこと言うものではないわ。」
私は、博麗の巫女としてこの神社で育ってきた。物心がつく頃にはもう一人で、たまに神社に参拝に来る
人に食べ物などを貰ったり、生きる知恵を教えて貰ったりしながら生きてきた。
しかし何度か、風邪で寝込んでいる時に、いつのまにかお粥や薬が置いてあって、不思議なことがあった。
今思い出すと、あれはきっと紫の奴がやってくれたんだろう。博麗の巫女が成長するのを
見守るのも大切だったんだと思う。けど、さすがに紫を育ての親なんて思いたくもない。
それに、どうせほとんど藍に命令してただけに決まっている。
あんな、昼行灯が親だなんてこっちから願い下げだ!
咲夜も、レミリアの所にいる時点でまともな生き方をしていたとは思えない。
今のセリフから、咲夜にも親がもういないことがなんとなくわかった。
しかし、自分を養ってくれているものを親だとするなら、
紅魔館で咲夜を住まわしているレミリアが親になるのかしら?
(~少女想像中~)
だめだ…いくら想像しても、咲夜が保護者にしか思えない。
あんまりしつこく、私に抱き付こうとしてくるので、陰陽球で拳骨をしたら、
咲夜にしがみ付いてれいむが、れいむが~と半泣きでこっちを指差すレミリアを見ているので
しょうがないことだと思って、思考を元に戻す。
「んなっ!二人までそんなことを。あたしに味方はいないっていうのか?
なんだよ、どうせなら話しを合わせてくれたっていいだろ。
いつもならもう少し…」
そこまで言って、魔理沙が口を濁していく。
大方、酔いが覚めてきて私達が言ったことがいつもに比べて、不自然なことに気付いたんだろう。
「…あ~、すまんかったな、ちょっと飲みすぎてそこまで気が回らんかった…
二人にこんなこと、愚痴るんじゃなかったな…魔理沙様一生の不覚だぜ。あっはっはっはっ…」
流石の魔理沙でも、この場の雰囲気に気付いたようだ。
あんまり、この空気は重いので少し話題を変えてやることにしよう。
「ところで、魔理沙の両親ってどんな人なの?貴方みたいに、自由奔放に生きてるの?」
私が話題を考えている間に、咲夜が話しを切り出した。
さすが、完全で瀟洒な従者だ。こんなことにまで気が利いている。
「ん?家の両親か?小さい時に、家を飛び出して会ってないから今はどうだか分からないけど
里の方で、霧雨店って道具屋をしてるな。咲夜も、今度里に行ったら見てみろよ。けっこう流行ってるはずだぞ。
二人とも、あたしに対して過保護でな。木登りとか、ちょっとでも危ないことをしようとしたら、
すぐに説教をはじめるんだよ。まぁ、心配なのは分かるけど、もっと好きにさして欲しかったよ。
今は、森の方で暮らしてるからそんなことはないけどな。」
どうやら、魔理沙の両親は魔理沙と違ってずいぶんまともな人間らしい。
まぁ、霧雨店は香霖堂と違って大手の店なので、閑古鳥が鳴いてることは無い。
そもそも香霖堂は、店主が商売をする気がないので、人が来ないのもしかたがないだろう。
「香霖の話しだと、ずいぶんあたしのこと心配してるらしいからな。
気にしてるっちゃしてるんだが、どうにも会いづらくてな…
ずっと会ってなかったから、今会ったとしても、なんて言えばいいかわかんないんだよ。」
そりゃいきなり、自分の子供が家出したらどこの親でも心配するだろう。
どうやら魔理沙は、一応両親に会う気はあるようだ。
「なら、霖之助さんに着いて来てもらったら?
昔、霧雨店で働いてたって聞いてるから、着いて来て貰ってもなんにも違和感がないでしょ。
何年も会ってないんだから、たまには気まぐれでもいいから会ってあげなさいよ。
一回、会えば霖之助さんだって口癖のように、催促しないと思うわ。」
「香霖か…たしかにそういう手もあるな。今度、頼んでみるかな。」
魔理沙も乗り気になってきたようだ。あと一押しが欲しいので、
咲夜の方に、目で合図をする。
「魔理沙、一度そう思ったら何事も早めにした方がいいわよ。
あなたは唯でさえ、適当に済ますんだから。
ちょうど、香霖さんに言われたばかりでしょ。明日にでも頼みに行きなさい。」
「そ、そうか。なら明日にでも行ってみることにするよ。」
どうやら、本格的に乗ってくれたようだ。
これなら、明日の昼過ぎくらいには、親に会いに行くだろう。
「なら、今日はもう帰って明日の準備でもしなさいよ。
久しぶりなんだから、手土産くらい持ってってあげなさい。」
「それもそうだな。なら今日はもう帰るよ。
愚痴ばっかでわるかったな。それじゃな霊夢、咲夜。」
そう言うと、さっさと箒にまたがって帰っていった。
「やっぱり、いつ来ても騒がしい奴ね。おちおちゆっくりする暇もないわ。
まぁ、今日は勘弁してやろうかしらね。」
「そうね。魔理沙も帰ったし私もそろそろ帰らなきゃ、時間は十分潰れたから
お嬢様のお世話に戻らなきゃね。それじゃあ霊夢、今度お嬢様が来る時はよろしくね。」
「わかったわ。それじゃあね。ついでに賽銭入れてく気はない?」
次の瞬間、咲夜の姿が消えていた。くそっ、また逃げられた。
こんなことなら先に催促しとくんだった。
咲夜も、帰って行ったので神社に静寂が戻ってきた。
「さて、私も寝る前にすることしてから寝ましょうか。
やっぱり、魔理沙が来るとゆっくりできないわね。」
そう言って、縁側に向かう。そういえばお酒を置いたままにしてることを思い出した。
***
次の日、小鳥が囀る声とともに、香霖堂に朝から人影があった。
「こ~り~ん!起きてるか!」
魔理沙は、昨晩霊夢たちに言われたように、香霖に両親へのあいさつに
行くのに、着いて来て貰おうと香霖堂を訪れていた。
「魔理沙。今日も来たのかい?昨日怒って帰ったから、
二、三日来ないもんだと思ってたよ。今日は、どんな用事だい?」
「あ~、ちょっとな。朝飯まだなんだろ?作ってやるから、そんときに話すよ。」
魔理沙が、こんなに躊躇するなんてどんな話しだろうと思いながら、
不思議そうな顔で、香霖が魔理沙を家の中に招き入れた。
同じ頃、森の方から一羽の鳥が飛び立っていった。
魔理沙は、昨日の霊夢たちとの話しを掻い摘んで話し、
両親に会いに行ってもいいが、気恥ずかしいから香霖についてきて欲しいことを伝えた。
そうすると、香霖は喜んでそれを承知し、お店が人段落する正午過ぎに行くことを進めると、
魔理沙も承知し、その間に色々と準備をすることにした。
***
そうして、正午過ぎに香霖と一緒に魔理沙は、霧雨店の前に来ていた。
「なぁ、香霖。この格好変じゃないか?やっぱりいつもの服で良かったんじゃないか?」
そう言う魔理沙は、いつもの白黒エプロンじゃなく、
白い清楚な印象のあるワンピース姿で、ここまで来ていた。
「だめだよ魔理沙。久しぶりの再会なんだから、きちんとした格好じゃないとね。
それに、魔理沙。その格好もとっても似合ってるよ。」
「そ、そうか///」
魔理沙は、真っ赤になって返事をする。
「それじゃ行こうか。」
「お、おう。」
そう言って、二人は霧雨店の中に向かって行った。
店の中には、両親の姿は無かった。どうやら奥に入っているようだ。
香霖は、魔理沙を促がして先に進める。
「ほら魔理沙、帰ってきたんだからいうことがあるだろ?」
「わ、わかってるよ。た、ただいま~。帰ってきたぞ~。」
魔理沙が、そう言うと慌てたように奥から二人の男女が出てきた。
「ただいま、親父、お袋。」
「魔理沙、帰ってきたの?本当に魔理沙なの?」
そう言うと、魔理沙の母親は、魔理沙に抱きつく。
「やめてくれよ、お袋。香霖も見てるんだ恥ずかしいよ。」
「魔理沙、帰ってきてくれたのね。本当に嬉しいわ。」
そうして、より一層強く抱きしめる。
「魔理沙…」
「親父…」
魔理沙の父親は、威厳のある声で話し始めた。
「魔理沙…まだ、嫁にはいかさんぞ!」
「へっ?」
父親が、いきなり変なことを言い始めたので、魔理沙は一瞬呆けたあと、
焦って、理由を問いただした。
「お、親父。いきなりなに言ってんだよ!私はまだ、結婚なんてする気ないぞ!
あ、相手だってまだ…」
「そんなこと言ったって、証拠は十分に出てるんだぞ!
これを見ろ!今朝、天狗の号外で配られた新聞だ!」
懐から出した新聞を、魔理沙に向けて怒鳴り散らす。
そう言われ、魔理沙は新聞を見てみる。
そこには、一面に大きく魔理沙が香霖に連れられ、香霖堂に入る写真が載っていた。
文々。新聞号外「あの、霧雨魔理沙に熱愛相手発覚!相手は香霖堂の店主、森近霖之助
である。この事実は、昨晩勇気ある情報提供者からの情報を元に作成されたものである。
その事実をふまえ、証拠写真の作成に勤しんだところ、早朝香霖堂にて写真の作成に成功。
情報提供者のR・Hさんは、魔理沙はまるで通い妻のように霖之助さんのところに、行って
甲斐甲斐しく世話をしていると証言。その事実を裏付けるように、S・Iさんからも
同様の証言が得られた。このことから、二人の熱愛が事実であるということがわかった。
「な、なんだよこれ、あたし達は別にそんな…」
「そ、そうですよ。きっとなにかの間違い…」
魔理沙も、香霖もいきなりの情報に、頭の中がパニックを起こしていた。
「そんなこと言っても、こうして証拠や、証言も出ているんだ。
霖之助君、これはいったいどういうことかね?」
「いや、これは、その…」
父親に、香霖が問いただされている間に、魔理沙はなんでこんなことになったか考えてみる。
そこまで、考えなくても情報提供者のイニシャルで犯人は丸分かりだった。
「れ、霊夢~、あのやろう。よくもこんなことを!!!」
「魔理沙、聞いてるのか!」
魔理沙は、急いで霊夢たちに仕返しに行こうとしたが、
父親に、肩を掴まれ無理矢理、説教が始まった。
***
そのころ霊夢は、今朝の号外を見ながらうっすらと笑みを浮かべていた。
「ふふ、魔理沙今ごろ大慌てでしょうね。私のひと時の至福を邪魔するからこうなるのよ。
昨日は弄るのを勘弁してあげたんだから、今日は思いっきり困るがいいわ。」
そう言って、縁側でお茶を啜る。
どうせもうすぐ、騒がしくなるのだから今のうちに、ゆっくりしておこうと。
やっぱり、日々平穏が一番だ。
***
余談だが、紅魔館では号外を読んだパチュリーが、喘息を拗らせ、妹様が癇癪を起こし、
メイド長や、門番が慌てて対処するはめになっていた。
両親に会いに行くことを勧めておきながらいざこざを起こす霊夢と咲夜がひでぇ。
以下ツッコミです。的外れだったらごめんなさい。
>ゆう
発音は「ゆう」でも表記は「いう」の方がいいかと思います。
>話し
名詞で用いている所は「話」、送り仮名は不要のはずです。
>きっとなにかにの間違い
「なにかの」ですね。
間違ってたところ修正しておきました。
しかし、間違って削除してしまう前にも「話し」の使い方を指摘されてました…
どうにも、自分の頭では理解し辛いので、もっと勉強してそこの所を注意していきたいと思います。
なので、今回はどうぞお見逃し下さい。
…よし、こーりん殺(ry
ところで、魔理沙の一人称は基本的に「私」だったと思います。
いや、乙女チックな性格が良くはまってたので、そんなに気になりませんけど。