変化のない日常に慣れきることは、それほど困難なことではない。特にここ幻想郷においては。
しかるに人間という気まぐれな動物に生まれた以上、精神的に膿み疲れるということも時にはある。
最近回数が頻繁になってきた藤原妹紅の襲撃に、実際に相手をするのは自分ではなく主の輝夜ではあるとは
いえ、巻き添えを食うこともある八意永琳は多少うんざりしていた。
それでしばらく妹紅が行動できなくなるように、一計を案じることにしたのだ。
目下のところ、不死人二人は永遠亭の畳を焦がし、ふすまを破って楽しい弾幕勝負のまっ最中である。
「ははっ、輝夜! 今日は私の方が勝ちそうだな?」
「くうっ!」
ちょうど、妹紅が輝夜を廊下の端に追い詰めたところだ。
これまでの経験上、輝夜と妹紅の戦力を比較した場合、おそらく数値上は互角なのだが、
生い立ちの差からくる持ち前のハングリーさの違いから故か、妹紅の方がより優勢に戦うことが多い。
「姫、これをお飲みになってください! 一時的にパワーアップする増強剤です!」
助け舟を出すために、永琳は瓶詰めのドリンク剤を輝夜の方にむかって投げた。が。
「おっと、そうはさせないよ!」
「あっ、とられた!」
スピードも反射神経も今日は妹紅のほうが上だった。
「へっへー、こんな危険なものは、わたしがこうしてやる!」
「ああーっ!」
ごくりごくり。
妹紅は腰に片手を置き、栓を抜いて勢いよく薬瓶の中身を飲み干す。
「ぷはーっ、元気一発!」
そんな得意満面の不死鳥娘を見て、薬師が不敵に笑った。
「ふふふ。かかったわね」
「な、なにっ!? まさかッ!?」
「わざとパスカットさせるように投げたのよ。増強剤なんて真っ赤な嘘。
おまえが飲んだもの本当は、十日十晩、嘔吐と下痢に悩まされ続ける薬っ!
いかな蓬莱人とて肉体構造は常人と同じ以上、効かないはずがないわ。
十日限りの苦輪に苦しむがいいッ、藤原妹紅!」
永琳の方が一枚上手だった。
「おのれーーー! はかったな……うっ……。おええええええっ!」
効果てきめん、妹紅は宇宙人のごとく、口から緑色の酸鼻極まるゲル状物質を吐き出した。大量に。
「うわっ!? きたねっ! こいつ、ゲロはきやがった。今日からあだ名はゲロもこね」
「ううううううっ」
「ふふっ、吸収率も抜群みたいね。お腹の具合はいかがかしら?」
苦しそうにはいつくばる妹紅を見下ろして、永琳がしてやったりと意地悪そうな笑みを浮かべる。
「あははは、やーいこのおもらしもこたんめ!」
「まだもらしてなっ……うぐぅっ!……この卑怯者っ……」
「へえ、そうかい。ほらっ!」
そういって姫は妹紅の下腹部辺りを狙って蹴りをくりだす。
「やめっ……おなかはだめっ……ひゃらっ!!」
妹紅の顔が小気味良いくらい真っ青に変わる。
胃腸がうねりをあげる音が聞こえた気がした。
「ちくしょーー! ……うぐぐぐぐ、お、おぼえてろ……!!」
こらえきれなくなったらしく、妹紅はお腹を抱えながら一目散で永遠亭を逃げ出した。
「やったわね。凄い勢いで帰っていったわよ」
「すぐに厠に駆け込んでいるはずですよ。これでしばらくは襲撃に悩まされなくてすみそうですね」
「うっ……酸っぱい匂い……」
妹紅が粗相したものはてゐに片付けさせることにした。
多分、てゐも自分の部下に片付けさせるのだろう。
これでしばしの間、永遠亭にも平穏が訪れるはずだ。
それから十日後。
「妹紅ー、いないのかー?」
妹紅の友人である上白沢慧音が妹紅の住居を訪れた際に、
ゲロまみれ、糞尿まみれの彼女を見ることは、幸いにもなかったがその代わり
「これは……」
昼下がり。鬱蒼と茂る竹林をかきわけてやって来た慧音が、永遠亭に怒鳴り込んできた。
胸には布で包まれた小さな物体を抱えている。
「おいっ、お前らなんてことしてくれたんだ!!」
血相変えた慧音をちょうど外にでていた永琳が応対した。
「あら、人里で人間相手の寺子屋を営んでいる半人半妖の上白沢慧音じゃない。何のご用かしら?」
「フルネームでの丁寧な紹介ありがとう!? そしてこの馬鹿野郎! お前らだろ、これ!」
慧音が差し出したのは、きれいな白髪の赤ん坊だった。輝夜も呼んできて見せることにした。
「あら、可愛い赤ん坊ね…ほっぺがもこもこしてるわ。っていうか妹紅にそっくり」
と、姫。
「まあ。女同士で赤ちゃんまで作るなんて。相当がんばったのね。あんまり自然の摂理を無視しちゃだめよ?」
と、薬師。
「私の子じゃないよっ!? 多分このもこもこが、その妹紅だよ!!」
「え、どういうこと? このもこもこがもこもこうなの?」
「微妙だよ、早口言葉としては微妙だよっ!」
「ははあ、なるほど」
「永琳、何か心当たりがあるの?」
「先日妹紅に下剤を一服盛ったじゃないですか。きっとそれが原因です」
「なるほど、それで」
姫は手をつきました。
「十日十晩出すだけで、何も食べられなかったから目方が減って赤ん坊になっちゃったのね」
「それにしても骨格まで変わるなんて……」
それはもはや下剤というレベルじゃなく、肉体改造薬の部類であった。
永琳は意識しないうちにそんな薬を作っていたことに、自分でも驚いた。
まあどうせ不死身の妹紅に飲ませる薬だからということで適当に作ったので、下剤効果以外についての
バグフィックスはしていなかったのだが。
「もこたん、こんなんなっちゃいましたよ!? どうすんだよ、これ!」
「うーん、どうするといわれても……」
「うわあーん!」
「ほら、泣き出しちゃったじゃないか!」
「あんたが騒いでるからじゃないの? 永琳、元に戻す薬はないの?」
「体を急激に大きくする薬なんてありません。過度な治療を施せば、人体に悪影響があるし、
自然に成長するのを待つのが一番だと思います」
「なるほど。もっともな意見ね」
「なるほどじゃないよ! 成長するまで誰が面倒みるんだよ!」
本当は体を大きくする薬も作ることはできるのだが、蓬莱の薬程度に時間がかかって面倒だし、
状況を利用する妙案を思いついたので真実は伏せておくことにした。
薬の製法にうとい輝夜たちにはわかるまい。
「大丈夫、薬の作用でこうなったんだから、元に戻るのもそれほど時間はかからないはずよ。
たぶん順調に栄養を取れば一ヶ月ほどで元のサイズに戻るはず」
「一ヶ月も面倒見れないよ。寺子屋や里の警護の仕事もあるし」
「うーん」
姫は腕を抱えて考え込む。
「わかりました。このもこん坊は、責任もって姫が育てます!」
「そうそう、責任もって私が……え゛っ!? ちょっ、なに勝手に決めてんの!?」
「了承した! 名案だ!」
「ハァ!? こら牛女、あんたもなに二つ返事でオーケーしてんのよ!?」
「だって、三人の中で暇そうなのは姫だけですし」
「うううう……もともとえいりんの薬でこうなったんでしょ!?」
「いいアイデアだな」
「ええ。子育てをすれば情が移るのは必然! これを機会に、姫と妹紅の関係が修復されれば、
われわれの苦労も減るかもしれないわ」
お互い、要注意人物の面倒を見る立場同士ということで、慧音と永琳は意見が合うことが多い。
在りし日のタッグパートナーのように二人はお互いの腕を組んで見せた。
多分、一千万パワーぐらいはあるだろう。
「おい、そこっ! 人の話をきけっ!」
姫の意見は終始黙殺された。
こうしててるよは、おおよそ一ヶ月の間、もこん坊の里親を勤めることになったのでした。
成長の記録
―― 一日目。零歳児。
「うわわわーん!」
「おーよちよち、もう。どうしたら泣き止んでくれるの? えいりん、子育てのコツとか書いてある本は
ないの?」
「そういうのは持っていないですね。今度、紅魔館に寄った時に借りてきます。それはそうと、
姫は抱き方がよくありません。かしてみてください」
「ふえっ……」
永琳が代わって抱くと、赤ん坊はうそのように泣き喚くのをやめた。
「あ……泣き止んだ」
「赤ん坊は敏感なんですよ。姿勢が悪いとすぐ泣き出すんです」
「妙に手馴れているわね? 経験者みたい」
「ぎくっ! ま、まあ私も医者の端くれですから。赤ん坊を看る時だってあります」
「ふーん?」
落ち着いたらしく、赤ん坊はそのまま寝入ってしまった。
「あ、寝ちゃった……」
「それじゃあ、私は研究に戻ります」
「うん。ありがと。後は私が見ておくわ」
「姫……」
「なに?」
「いえ、なんでもありません」
輝夜は感慨深げに妹紅の寝顔を見つめていた。
「うふふ。こうしてみると妹紅も結構かわいいわね。赤ん坊になったら、もう罪はないしね。
もし求婚を断っていなかったら、私も自分の子供をこうやって、育てていたのかな……」
そんなことを考えていたので、輝夜は妹紅にかかわりのある人物を思い出した。
藤原の……某。下の名前がしばらく思い出せなかった。
自分に求婚してきた人物。妹紅の父親。態度は真摯だった記憶がある。私たちの因果を作ったきっかけ。
「考えてみると、おまえとも数奇な縁ね」
そういって、輝夜は妹紅の初雪のような直毛を指先にくるくると巻きつけてみる。
かすかな寝息を立てる安らいだ表情、その白い肌に浮かぶ薔薇色の頬にぼうっと見いる。
赤子はその小さな頭の中で、どんな夢を見るのだろうか。
知ることのかなわなかった母のぬくもりだろうか。
そんな風にしていると、時間が経つのも忘れる。
気が付くと日が落ちていた。
輝夜はゆっくりと赤ん坊の頭をなでつづけていた。
そのうち気になって目覚めたのか、妹紅が体をよじる。
「あら? ごめん。起こしちゃった?」
むっくりと体を起こした妹紅はしきりに両手を輝夜の方に差し出す。その小さな楓のような手が中を切る。
「え……なに?」
赤ん坊の手は輝夜の胸の辺りをかすめる。
「もしかして、おっぱいが欲しいの?」
か細い首が少しうなずいた気がした。
「ごめんね、お姉ちゃん、こども生んでないからおっぱいはでないの……」
「そうそう、かわりにミルクをあげるからね……慧音おばちゃんが持ってきてくれた新鮮な牛乳ですよー。
慧音おばちゃん牛だから、自分で出したのかもしれませんねー。よしよし」
そろそろ永琳たちの夕食の準備をする時間だというのに。
どうしてか、赤ん坊から目を離そうという気が起きない。
仕様がないので、背中におぶって台所に立つことにした。
まかない手伝いの兎たちが、興味津々で輝夜の背中をのぞいていた。
「あぶ、あぶ!」
夕餉の準備をしている間中、妹紅は輝夜の背中に背負われてもぞもぞと動いていた。
とても小さくて、そしてたしかな命のぬくもりを感じ、輝夜はたとえようのない感情に襲われる。
「やれやれ……こうなったら、仕方ないわね。あなたは今日から蓬莱山妹紅よ。
私が立派な淑女に育ててあげるわ。永遠亭の英才教育も施してあげる。
そしていずれは幻想郷を制する英傑になるの! そう、108星のひとつに!」
そう言って輝夜はさっきまで惣菜用の大根を切っていた包丁をかかげ、どこぞにあるやも知れぬ
妹の宿星を指して夜空に誓うのだった。
願わくは我が子の前途に幸多からんことを。
部屋の中だったから実は星は見えなかったが。
その夜、輝夜は赤子の夜泣きというもののすさまじさに、生まれて初めて悩まされることになるのだった。
―― 二日目。零歳半。
「ふえええーん!」
「困ったわねえ、何が原因かしら。あっ! おしめ!!」
「あらー、やっちゃってるわ。でも元気いい証拠よね」
「……。これ、イナバにあげたら食べるかしら……?」
イナバは食べなかった。生意気な。自分たちの糞は食べるくせに。
―― 三日目。一歳半。
昼過ぎに、慧音が牛乳や野菜などを持参して永遠亭にやって来た。
「よう、様子を見に来たよ」
「あら慧音。今姫が妹紅を寝かしつけているわ」
「今でどれくらい?」
「普通の赤ん坊でいう、1歳半ぐらいね。ちょっと予定より遅れているけど、ちゃんと育っているわ。
私が調合した栄養剤も与えているし」
奥の間を覗くと、何故か小袿姿の輝夜が見事な美声で子守唄を歌っていた。
おまけに御簾を立てて、香炉も炊いてある。
両の袖の間には心地よさそうに眠る赤子の姿があった。
「ねんねんころりよおころりよ♪ああ、らうたし、らうたし」
「驚いた。あの輝夜がすっかり母親じゃないか」
「ええ。私も驚いているわ。もこん坊効果様様ね」
「ああしてみると、輝夜って意外と家庭的なんだな」
「姫はもともと家庭的なのよ。竹取の翁の家で暮らしていたときは、家事全般やっていたらしいし。
料理も上手だし。たぶん主婦が一番性にあっているんじゃないかしら?」
「ふーん。今度里の子守の仕事でもお願いしてみようかな」
「あら、いいわね」
「ところで、なんであんな古めかしい衣装を着ているんだ?」
「昔の気分に浸りたいんですって」
「へえ。そりゃまた凝った趣向だな」
「姫と妹紅が最初に出会ったのって、平安時代だから。多分そういう意味じゃないかしら」
「なるほどな……」
輝夜にとっては、妹紅は永琳の次に古い知り合いである。
出会いの形がもっと円満であったなら。
そういう夢想をしなかった日がないとはいえないだろう。
二人は親と子という新しい関係で、歩んできた道をもう一度たどり直している。
「そんな風に考えるのは、勘繰りすぎかな……」
くすっ、と笑って慧音は永遠亭を後にした。
ひとつ、気がかりなことがあるにはあるのだが、輝夜と妹紅のほほえましい姿を見ていると、
そんな気分も忘れてしまっていた。
―― 六日目。二歳児。
輝夜がとたとたと永遠亭の廊下をかけてくる。
「えーりん、えーりん! もこちゃんが私のこと『おかあちゃま』って呼んだのよ!」
「あらあら。姫もすっかり子煩悩ですね」
―― 九日目。二歳半。
輝夜が和紙を片手に持って永遠亭の廊下を走る。
「えーりん、えーりん! もこちゃん字が書けるようになったのよ! あの子、天才よきっと!!」
「あらあら。姫はもうもこちゃんにめろめろですね」
―― 十一日目。三歳児。
「もこちゃん、手を洗ってらっしゃい」
「あ、そっか。ごめんね。手洗いに背が届かないのね。かあさまが抱っこしてあげる」
―― 十三日目。三歳半。
「もこちゃん、夕飯ですよ。いただきますのご挨拶してからおあがりなさいね」
―― 十四日目。四歳児。
「もこちゃん、竹でぶらんこを作ったの。乗ってみる?」
「ほら、あそこにいるうさぎさんが作ってくれたのよ。かあさまが押してあげるわね」
「え、なあに? ひとりでやってみたいの?」
「あ……」
「も、もこちゃん!!」
「ああ、ごめんね、もこちゃん。かあさまがちゃんと見ていなかったから……膝小僧すりむいちゃったね」
「痛いの痛いの飛んでいけー。えいしゃー、えいしゃー!」
―― 十六日目。四歳半。
「おかあちゃま……いっしょにねてもいい?」
「あらあらどうしたの? もこちゃん。そう、さびしかったのね。わかったわ。きょうはかあさまが
寝る前にお話を聞かせてあげる」
輝夜は妹紅といっしょの布団に入って、月明かりとランプの灯を頼りに、紅魔館から借りてきた
竹取物語の絵本を読んであげた。
淡い暖色の光が、うっすらと母と娘の姿を照らす。
…………
「そうして、かぐや姫様は、月に帰っていってしまったのでした」
「……ねえ、おかあちゃま、かぐやひめさまはどうしてけっこんしなかったの?」
「うん?」
「あいてのひとがきらいだったの?」
「ううん。そうじゃないわ。好きだった人もいたのよ……だけどね、かぐや姫は月のお姫様だから、
ふつうの人とは寿命が違っていたの。きっと……こわかったのね。それ以上好きになって、いつか
別れがくることが……相手が先に死んじゃって置いていかれることが……だから結婚を断ったの」
「かぐやひめさま、かわいそう……」
「うん?」
「すきなひとといっしょにくらせないのは、さみしいからかわいそう……」
「あらあら、そんなことないのよ。かぐや姫様には一緒に遊んでくれるおともだちがちゃんといたんだから」
「かぐやひめさま、さみしくない?」
「さみしくなんか、全然ないのよ。毎日が幸せだった……。後悔していない……もこちゃんは今は幸せ?」
「しわよせ」
「しあわせね」
「おかあしゃま、だいすき……」
「わたしももこちゃんのこと、大好きよ……さあ、もうおやすみなさい……」
―― 十八日目。五歳児。
「もこちゃん、今日はお母さん、もこちゃんにプレゼント買ってきたのよ。ほら、かあさまとおそろいの
リボン。お札もいいけど、こっちもいいでしょう? 襟元につけておきましょうね。あらあ、かわいいわあ」
「うん、おかあちゃま、ありがとう!」
「いいこ、いいこ」
「えへへ。おかあちゃまとおそろいー」
―― 二十二日目。五歳半。
「もこちゃん、もうおきる時間ですよ。朝ごはんできてますよ。今日はもこちゃんの好きな鮎の塩焼きに
しましたからね。卵焼きもついてますよ」
「もう、ゆっくり食べないと大きくなれませんよ」
―― 二十五日目。六歳児。
太陽が照りつけるよく晴れた朝。
輝夜が庭で洗濯物を干していると、先ほど兎と遊びにいくと告げて出かけて行った妹紅が、
縁側に立っているのを見止めた。
うつむいたまま、何かを考え込んでいるような様子だ。
「あら、もこちゃん。今お帰り? お外は楽しかった?」
「…………」
呼びかけられても、妹紅は返事をしなかった。
かたく握り結んだ両のこぶしが震えている。
「どうしたの? ずっと立ったままで」
そのうち、何かを決意したかのように、妹紅は顔あげて輝夜の瞳を真剣な表情でみつめた後、
目をつぶって声を張り上げた。
「やい、かぐや! きょうこそはながねんのけっちゃくをつけてやる!」
「も、もこちゃん? いったいどうしたの?」
「うるちゃい!」
「きゃあ!?」
―― 二十六日目。
「いたたたた、やめて、髪引っ張らないで! どうして大きくなったら記憶まで戻るのよ!?」
「まあ脳みそは昔のままですから。成長するにつれて、記憶も戻ってきていたのでしょうね」
輝夜が自分の半分くらいの背丈の妹紅に馬乗りにされているのを横目で見ながら、
茶の間の座卓に座っている永琳は、のんきな声で答えを返した。
その隣では、慧音が煎餅をかじっている。
この半妖も妹紅の意識が元に戻ることは知っていたのだろう。
「それにしてもいつごろから自覚があったんだろう?」
「多分物心付くころからじゃないかしら。三歳ぐらい?」
「それって……」
「ええ。妹紅もまんざらじゃなかったんじゃない?」
「やれやれ。素直じゃないんだな、どっちも」
「本当に」
そう二人が話している間にも、輝夜は妹紅に廊下の端に追い詰められていた。
「も、もこちゃん、弾幕なんて、危ない遊びはやめましょう? そうだ、かあさまとお手玉して
遊びましょうか?」
「うるちゃい、うるちゃい! だれがかあちゃまだ!」
そう言って宣言したるカードは凱風快晴。
「きゃあ、小さくても強いわ! こ、これが反抗期……。えーりん、何とかして!?」
「あー、そこは母親の愛の力で何とかしてあげてください。」
「意味わからないわよ!? や、やめて、もこちゃん! それは育ての親に向けるスペルカードではないわ!」
「もー、もこちゃんいうなっ!!」
結局、妹紅が執拗に姫を襲うので、二人の関係はまた元に戻った。
妹紅も体が完全に元のサイズに戻るころには、永遠亭を離れて自分の庵で暮らし始めた。
紅白の巫女と白黒魔法使いが野暮用で竹林に立ち寄ったときも、二人は弾幕ごっこに興じていたのだ。
「またやってるぜ」
「あきないわねえ」
「……。なあ、あいつらが襟につけているリボン、二人とも同じものじゃないか?」
「あー、本当だ。単なる偶然じゃないの?」
「そんなことがあるかなあ?」
それでも少し変わった事といえば、
「ねえ、もこちゃん、話をきいて。おしめ変えてあげたり、夜寝るときにお話読んであげたりしたじゃない?
もう一度、あの仲良かったころの親娘に戻りましょう?」
「う……おしめとか言うなっ! この卑怯者ッ!!」
「ねえ、また永遠亭で一緒に暮らしましょうよ? もこちゃんがいなくなってからお母さん、寂しいの」
「うるさい、うるさい! なにぶりっ子してるんだっ、ふじやまっ! ヴォルケイノ!」
「うっ! いたいっ…………」
「あっ……ご、ごめっ……本気でやるつもりは……」
「……」
「何わらってんだよっ!?」
「嬉しいわ……。やっぱりもこちゃん、お母さんのこと心配してくれるのね」
「もー、もこちゃんいうなっ! 私とお前は永遠の宿敵なんだっ!!」
二人の間に微妙な新しい絆が出来たことぐらいだろうか。
「これからも、ずっと、私はお前を襲いつづけるんだからなっ!!」
「ええ? だめよ、もこちゃん……親子でそんな……禁断の愛……ぽっ」
「ムキーーー!!」
その後の輝夜は
「私、今度は妹がほしいわあ」
「霊夢の黒髪、素敵だと思わない? 二人で並んだら似合うと思うのよねえ。いとおかし、って感じね」
「ねえ、あの薬、効果を半分に薄めたものを作れないかしら?」
またよからぬことをたくらんでいる。
永琳はといえば
「あら薬屋さん。また本を借りに来たんですか? 集金ですか?」
「え、メイド長に御用? この薬を渡すんですか。何ですかこれ」
「豊胸剤? うわあ、それ喜びますよ。さっそく渡してきます」
目下のところ、作戦進行中だったりする。
ほほえましいお話って、好きなんですよね。
子供妹紅に語り聞かせる思いに、しみじみときたり。
しかし永琳外道。いろんな意味で。そして咲夜さんはEカップだtt(ry
さておき物語を『造る』部分は良いとは思うのですが『魅せる』部分、表現技法や文章作法のほうで課題があるかな、というのが技術的な感想です。
地の文の冒頭は1文字空ける、感嘆符や疑問符の後に文章を続けるならやはり1文字空ける。また、「A! B! C!」という具合に文章を綴るなら、感嘆符をくくって「A、B、C!」というようにするとくどさが減るかもしれません。
それから誤字をひとつ。『不適に』ではなくて、『不敵に』ですね。
長文の感想失礼しました。良作をありがとう。
ベビーもこたん&輝夜ママがこんなに良いとは。
続きが気になります。
輝夜お母さんは良い母ですねー。
って咲夜さんになにしていr(アポロ13
ほとんど初投稿だったので、不安でしょうがありませんでしたが、
よく見直すと至らないところばっかりで申し訳ないです。
読んでいただいて本当にありがとうございました。
>銀の夢さま
ご指摘頂き感謝です。全部、書いているうちには、自分で気づかなかったことですので、こういった指摘をいただくと大変ありがたいです。精進します。
つーか輝夜、108星って何だ一体wwwwww
そして最後のオチのせいで、続きが凄く気になります。
咲夜さんverも読んでみたいです
妹紅もっと素直になって妹紅。
皆さんもおっしゃるように咲夜さんVerがみたいですね。ただ、霊夢の場合はスキマ妖怪八雲紫が立ちふさがる!がんばれ輝夜かあさま!
あと、108星ですが水滸伝の星の加護(もしくは星に選ばれた)108人の人間のことと思います。もしくは『人間がもつ108の煩悩』の星を目指すんだー!的なものでは?個人的な推測でしかありませんが、108の星は後者が有力かな?
いや良いけどね!
で、咲夜が“永琳の薬”ということで怪しんで、美鈴に飲ませるシナリオはまだですk(ry
もこちゃんッッ!!!!!!もこちゃんッッ!!!!!!
どこまでツンデレなんだいもこん坊。もこん坊が妙にツボに入っちまったぜトン畜生!
簡潔にまとめると、お見事でした。背後の騒動は見なかったことにして、心が温まりました。
まったくです
ええ まったくです
他意などない それが えーりん
和やかな幸せをありがとう
2人ともほどほどに・・・・・・
ママ輝夜の親バカぶりがたまりませぬ!
母性本能全開の輝夜ともこん坊がかわいい
永琳なにしてるよw
もっこもこ!