「パチュリーさまー!」
「何よ、うるさいわね」
「この本を見て下さい!」
「『犬の飼い方』?」
「大発見です!」
「犬の飼い方の本のどこが大発見なのよ」
「違います、内容です!」
「音量が大きいわ。もう少し静かに出来ないの? あなた、もっと大人しくなかったかしら」
「今の気分はボクっ娘ですから!」
「ごめんなさい。その本には、呪いがかかってたのね。今解いてあげるから……」
そう言いながら、パチュリー様がボクに解呪を施しますが意味を発揮しません。
そもそも別にボク、呪われてるわけじゃなくて、今そう言う気分なだけですから。
あ、また解呪を施そうとしてる。パチュリー様は病弱な萌やしっ娘なんだから無理させちゃダメです。
パチュリー様、呪文一回貧血の素。
が図書館の標語です。みんな、パチュリー様を大切にしてます。
だからこそボクは、ボクをボクと言いパチュリー様を元気づけようとしてます。
この間読んだ書物によれば、外の世界では一人称が「ボク」の女の子は元気の象徴らしいのです。
さらに、その女の子達は魔法使いであることが多くパチュリー様も一人称をボクにすればきっと元気になってくれるはずです。
で、なんでそのことをパチュリー様に言わずに自分が使ってるかって?
決まってます、パチュリー様が病弱な萌やしっ娘で無くなっちゃったら、そんなのただの萌えカスです。
病弱萌やしっ娘こそがパチュリー様の魅力なのです。
そもそも積極的に外をうろつくビブリオマニアっていうのも想像できませんし。
さて、パチュリー様の解呪を止めないと。ホントに倒れちゃう。
病弱萌やしっ娘は倒さず、元気にさせずです。
ああ、ボクってばなんて健気なんだろう。
「パチュリー様。別にボクは呪われてるわけでもなんでもないです。むしろ、すこぶる元気です!」
「……そう。で、何を発見したの? それを言えばいつものテンションに戻るのよねそうと言ってじゃなきゃ今すぐロイヤルダイヤモンドリング」
パチュリー様が不機嫌そうに言います。何時でも不機嫌そうですが、この萌やしっ娘検定一級(友人のレミリア様でも準二級)の私にかかれば、本当に不機嫌かそうで無いかを見分けるのなんて朝飯前です。
主に息継ぎ無しに話すようになったら赤信号です。
けど、ボクは決して退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!!
つまり、ロイヤルダイヤモンドリングを喰らってでもこのテンションを維持する所存です!
ボクはボクの生きたいように生きるのです。
ボクの生きる道は超荒地です。
だって悪魔だから!
「どうでしょうか。ボク、先の事はわかんなーい」
「日&月符「ポピュラーダイヤモンドリング」……手加減はしておいたから。まぁ……死なない程度に、だけど」
「こぁきゅー」
~少女気絶中~
「はっ、私は一体!」
「で、元に戻ったかしら?」
「はっ、元に戻ったであります!」
「どこがよ」
ジト目をより一層細くして、パチュリー様が睨みつけてくる。
さっきのスペルで服がちょっと破れて横から胸が見えたりガーターがスカートからのぞいちゃったりしてます。
けど、今の私はいつも通りどこからどう見ても
「清純派ですッ!」
「どう見ても違うでしょ。パッと見……命からがらで逃げてきたところって感じよ」
「純情派ですからッ!」
「よく生きてたわね」
「頑丈ですからッ!」
「いい加減、直りなさい」
「おっけーです! けど、私の発見を聞いてくれたらです!」
「ああ……一人称は戻ったのね。けど、テンションは戻ってない、と。その文に直したら、全部にエクスクラメーションマークの付きそうな猛烈な勢い」
「ええ、今度の私は清純派ですからッ!」
「……ああ、もういいわ。うん、早くその発見とやらを言って頂戴」
「犬は飼い主に似るんですって! つまりレミリア様も犬属性だったのですよ!!」
「……あのね、小悪魔。いくら咲夜が犬っぽくってレミィがその主人だからって言っても本物の犬の傾向が当てはまるわけが……あるかも」
「ですよね! ですよね!!」
「そうね……確かに思い当たる節が無いわけでは無いわね。けどレミィが実は犬属性であることの裏付けにするには、弱すぎることばかりってことが問題ね」
「そうです! そこで私に隠蔽の魔法をかけて頂ければ私が一日すとー、もといスニーキングミッションを行ってくる所存です!」
「バレても知らないわよ?」
「好奇心、小悪魔を殺さず。むしろ、好奇心で私は出来てます」
「ああ、うん。そんな子だったわね、あなた」
ああ、そんな可哀想な子を見るような目で見ないで下さい!
確かに私は魔界でも変わった子でしたけど!
けど、これでも学校では男の子にモテて大変だったんですから。
人間みたいって大人気でした!
「と、いうわけでドンと来い隠蔽魔法!」
「つまり、隠蔽魔法をかければスニーキングしに行くわけね。あ、けど私はもちろんわかるからね?」
「も、もちろんそんな事わかってますですよ!?」
「はいはい……。じゃあ、かけるわね」
めんどくさそうにですが、パチュリー様が一言呪文を呟いただけで今の私は小悪魔スニーキング仕様に。
略してこぁーきんぐ。
なんか、ちょっと偉そうです。
勘違いしちゃいそう。
「私は王様なんだぞー、偉いんだぞー」
「声は聞こえるから。発言には注意しなさい。月符「ラウドセレナ」」
サイレントセレナの連射性を高めたスペルなんて何時の間に……。
というか、これはもはや光の帯……あ、もう逃げ切れな……。
~少女再気絶中~
「いってきます」
「はい、いってらっしゃい。まぁ、あんまり期待してないけど面白いことがわかったら伝えなさいね。感覚の共有を通して私も見たいし、聞きたいから」
「はいッ! 行って、見て、触ってきます!!」
「ああ……結局、テンションそのままなのね……」
「清純派ですからッ!!」
ただいま私小悪魔はレミリア様の私室の前にいます。
なんと、私はドアを開ける方法を考えてなかったのですよ。
パチュリー様がかけてくれた魔法は姿を消すだけでなく、魔力匂い気配音全てを漏らしません。
けど、触れればわかってしまいますし、私以外のものが音を立てれば音が出ます。
もちろん、声を出すのもダメです。
そう、つまり!
ドアを自分で開けたら一発でバレる!!
なんと、すでに計画が頓挫しそうです。
えへへへっ。小悪魔ケアレスミス。
けど、私は可愛い小悪魔だから、妙案を考え付きました。
もうすぐ、レミリア様の起床時間です。
そう、つまりもう一人のターゲット咲夜様が自動的にドアを開けてくれるということです。
時を止めて入るんじゃないかって?
小悪魔に抜かりなしです。
私はなんどか咲夜様がレミリア様を起こしに来て、扉を開けるところを見た事があります。
そう、つまり私が見た事あるという事は時を止めてない証拠です。
もうそろそろ来る時間なんですけど。
ほらほら! 咲夜様が来ましたよ。
「お嬢様。起床の時間ですよ」
「ん~。ねむいー。もっと寝るの~」
「まったく。館の者が聞いたらまたカリスマを下げてしまいますよ」
「いいの~。妖精の一匹や二匹殺しちゃえばいいんだからー」
「そうですか。けれど、この時間でお目覚めにならないと午後のティータイムは無しですよ」
「えっ!?」
「少食なお嬢様はブランチになってしまうと午後のティータイムのお菓子を半分以上ムダになさるからです」
「お、起きる! 今すぐ起きるから!!」
中からドタドタッと音が聞こえた後にドアが勢い良く開き中から出てきたのは……
「咲夜ッ! 起きたわッ!!」
「……また、裸で寝たのですか」
「だって、寝るときぐらい羽根を自由にしてあげたいんだもん」
「まぁ、いいです。けど、今度からは何かをお召しになってから扉を開けてくださいね。何処で誰が見てるかわかりませんから」
「うん!」
まぁ、私が見てたわけですが。
いや、まったくいいモノを見せてもらいました。
あ、勿論中から音が聞こえた時点でパチュリー様と私は一つでした。
あ、なんかえっちな響き。
そして、そのパチュリー様は
「ふくらみかけ……これはもはや……神のりょうい……」
と呟いた後、どこか神世界を探しに旅立ったようです。
あ、ちなみに私は一連のお着替えもバッチリ記憶しておきました。
あとで、パチュリー様と協力して今の記憶を共有、永続させるためにです。
これがあれば、私はまだここで10年は軽く働けます。
「はい。今日はちょっと、レース多めのふんわり仕様です」
「わぁ……いいわね。なんか、気分もふわふわしそう」
「それにそのお召し物は、妹様と色違いのお揃いで作ってあるんですよ」
「へぇ、そうなんだ。けど、よくこんなの売ってたね」
「いえ、私が作ったんですよ。つまり、私からの贈り物です」
「……あ、ありがとう咲夜」
「うふふ、どういたしまして」
チクショー。コイツら何こんなのほほんとした会話してるんですか。
私がこうして覗いてるんですよ。
凄く見られてるんですよ。
見てます、超見てます。
これでもかってぐらい。お二人のスカートの中もしゃがめば見えるぐらいの距離で。
なのにそんな恥ずかしい会話を堂々と!
まぁ、奥様。聞きまして?
って、近所のおばちゃん達が雑談する距離よりも近い所で堂々と。
まぁ、パチュリー様。聞きまして?
って、あ。私、スニーキング中だったんだっけ。
危ない危ない。危うく、叫ぶトコでした。
流石は私。
魔理沙さん防衛戦で培った危機回避能力はピカイチですね。
資格は何にもなくてもピカイチですよ。
魔界にはライバルの天パゲジ眉がいるぐらいのピカイチっぷりです。
眉さんは天気が予測できるようなんですが、私のほうが的中率が高いです。
ほら、こんなところまでピカイチ。
ちなみに、天が名前でパゲジがミドルネーム、眉が苗字です。
魔界ではかなり有名な人です。凄く濃いキャラなんですよね、彼。
むしろ、顔から濃……なんでもないです。まぁ、一つ言えば、名は体を表す。
ナルト等の練り物が好きらしくよくそのままかじってるんですよ。
さらにラーメンの食べ方も独特でレンゲに取ってからお酢を大量にかけて冷まして食べます。
彼曰く「ラーメンは全部同じ。だって、お酢の味しかしないよ?」
むしろ、こんなへんじ……おほん。面白い人が有名にならないわけありません。
そもそも結構な名家の息子ですしね。有名にならないはずがありません。
魔界は面白い人に総じて寛容です。
創造神からして実に逞しいですし。
まぁ、私のピカイチっぷりと眉さんのことはどうでもいいですよね。
話を戻します。
見方を変えれば普通じゃ見れないような、貴重なシーンをこんなに近くで見れるっていうことですし。
うわ、よく考えたら、これって所謂事実は小説より奇なりってヤツですよね!?
ああん、もうパチュリー様! 起きてー!!
「それに、咲夜はいつもお嬢様の喜ぶ事を考えてるのです。だから、お礼なんていいんですよ」
「うん……けど、私の妙なプライドの所為で外では結構咲夜にキツいこと言ってるし」
「それもお嬢様ですし、今のお嬢様もやっぱりお嬢様です。どちらも私の大切なご主人様ですよ」
(あ、ちょっと! パチュリー様起きたほうがいいですって)
さっきからずっとパチュリー様を呼んでいるんですが一向に神世界探しから帰ってくる様子がありません。
(ちょっと、パチュリー様起きてくださいよ!!
今、なんか凄くそれっぽい雰囲気なんですって!!
これを見逃したら一生むきゅーって言い続けることになりますよ!!
もし、起きなくてずっとむきゅーって言う事になっても私は知りませんからね!!
ほらほら、今なんかレミリア様の咲夜様に対する好感度がさらに上がって行ってますよ!!
れみりあ、うー☆)
(うー☆)
(はい、おはようございます。目覚めましたか? これを見逃すということは、神世界を喪失することと同義ですよ!?)
(……目が覚めたわ。まだ、私は神秘の入り口を覗いたに過ぎないのを失念してたわ)
(そうですよ! まだまだ、今日の私のスニーキングは終わってないんですよ?)
(そうね。それに私もこんなレミィ知らなかったわ。たまに出る犬っぽさの方が素だなんて流石の私も思いもよらなかったわ)
(そうでうね。私もここまで犬っぽいとは思いませんでしたよ)
(外の世界の人間は怖いわね。犬と人間どころか人間と吸血鬼の関係にまで汎用性のある見解を持つなんて)
(あ、そんなこと言ってる場合じゃないですよ。今はこっちの光景の方を見ないと!)
(そうだったわね、今はこの萌えるレミィをこの眼に耳に脳にしっかりと刻み付けて、きょうは……もとい、平和な雑談のネタにすることを考えないと)
(やっぱり悪女ですねぇ)
(魔女には褒め言葉よ)
(ハハァっ! 御見それ致しました)
(それのどこが清純派なのよ)
(清純派じゃないですかぁ、ぷんぷん!)
(さ。鑑賞、鑑賞)
(あ、ひどぉーい!)
(自分でぷんぷんなんて言う清純派なんて知らないわ)
(感覚の共有をシャットダウンしますよ)
(出来るものならやってみなさい。私の方が上位なんだから)
(簡単です。私が気絶すればいいだけです。それですぐ気絶から覚めればいいだけです)
(ごめんなさい。是非ともこの素晴らしいシーンを鑑賞させてください、小悪魔様)
(よろしい)
「咲夜……」
「お嬢様……」
お二人は互いに瞳を潤ませ距離を近づけていきます。
(きたきたきたきたきたあああああああ!!!!)
(うるさいですね。もっと静かに見れないんですか?)
(あなたね、これが落ち着いてられると思う!? レミィと咲夜よ!
あの、普段はいかにもビジネスライクな関係っぽいレミィと咲夜がこんないい雰囲気を出してるのよ!?
これに、興奮しないことがあるの!? いえ、無いわ!! この私が断言するんだもの!!)
(ああ、もうッ!! 私だって、興奮してるんです!! けど、もう声に出そうなところまでキてるんです!!
出したら、バレます。つまり死亡フラグ確定です!!
さらに、言えばこのシーンも台無しですッ!! それでもいいんですかッ!?)
(ご、ごめんなさい。私が悪かったわ。なるべく大人しくするわ、ハァハァ)
(そうです、そうやって大人しくしてればいいんです、ハァハァ)
(ハァハァしてるヤツのどこが清純派なのよ)
(清純派ですからッ!)
(意味分からないわよ)
(だって、清純な私はこんな刺激的なシーンに出会ったらハァハァすることしか出来ないんですよ!?)
(ああ、なるほど)
(そういうことです。さぁ、鑑賞しましょう)
(無論よ)
「さく……あたっ!?」
「あぅっ!?」
「て……てへっ」
「「……」」
「その……ごめんなさい」
「いいですよ、お嬢様。それは大切になさらないと」
あー、惜しい! なんて惜しい!!
けど、いくらウブだからって、おでことおでこがごっすん☆なんてベタすぎです!
朝登校中に転校生の女の子とぶつかるぐらいベタです。
しかし、王道って素晴らしい。額をぶつけるという行為、それだけでこんなに盛り上がるなんて。
小悪魔、また大発見!
それに、そのおでこを押さえて場を誤魔化そうと咄嗟にした「てへっ」のポイントは実に高いです。
小悪魔的にはそれだけでご飯が3杯はいけます。
そして、咲夜様。
キスをしようとして失敗したレミリア様の唇に人差し指を当てて、あの台詞です。
ああ、もうッ。瀟洒にかっこよすぎです! マジ惚れます!!
ベタでキザな台詞をこうもバッチリに最高のタイミングで言えるなんて素敵すぎです!
略奪愛!? 略奪愛なのッ、私ッ!?
いえ、そんなことないッ!!
だって、私にはパチュリー様って人がいるのよッ!!
そうよ、小悪魔! 私はパチュリー様一筋!!
L・O・V・Eパチュリー!
いえーい、パチュリー様ぁー!! 生まれる前から愛してましたー!!
けど、正面向かってこんな事は言いません。
だって、言ってしまったらパチュリー様はしばらく口をきいてくれなくなります。
嫌われるとかじゃなくて、気恥ずかしいからっていうのはわかるんですが以前に似たようなことをした時は一週間、姿も見せてくれませんでした。
そんなにパチュリー様とのスキンシップがない期間を今、過したら間違いなく私は孤独死します。
だから、敢えて私は言いません。
小悪魔は策士なのです。じっくりと外堀から埋めて行って徐々に陥落させるっていうのも寿命って概念のない悪魔の為せる業。
ああ、私ってばなんて罪作りなオ・ン・ナ。
あ、そんなことやってる場合じゃないんでした。
続きを鑑賞しないと!!
パチュリー様にあれだけ注意したのに、肝心の自分が見逃したんじゃ何にもならないですよね。
幸いな事に、レミリア様は咲夜様の指が触れてる事に気を取られてそれどころじゃなかったみたいですし。
「それにそれは、将来を誓い合う人とするべきものですよ。人間である私とお嬢様の時間は違いすぎます。だから、私にはそれを受ける資格がありませんわ」
「それでも……それでも私は……ッ、咲夜と誓いたいの!!」
「お、おじょうさ……ッ!?」
(ほ、ホンマにしやがったああああああ!?)
(パチュリー様、なんで関西弁なんですか!!)
(だ、だって本当にしたのよ!? レミィは咲夜の言葉を聞いてもしたのよ!?
しかも、猛烈な愛の告白もそえて!! レミィが……そう、あのレミィがよ!?
信じられる!? しかも、あんな乙女チックな状況でよ!?
ああ、もうこれは言葉にできない!!)
(きゃあああ!! 今、私たちは書物の限界を超えたんですね!?)
(え、ええ! これは凄いわ!! 小説だとこれより凄い展開もいくつかあったけど……
実際に自分の目で見て、肌で感じるのとはやっぱり違うわね)
(い、言われてみれば確かに! これは凄すぎる!! なんか、ずっと目の前で見てたせいか感覚が麻痺してました!! まさに、目から鱗!! わ、私達凄いものを!!)
(あ、水の精で作った瞳に付けるメガネが……)
(ほ、ホントになんか目から落ちてますよー!?)
(うるさいわね。ちょっと興奮しすぎて、魔法の制御が手から離れちゃっただけよ)
(パチュリー様が普段意識しないでも使えてるような魔法ですら制御を離れさせる興奮!
いえ、むしろ当たり前です!! 私たちは幻想郷の歴史が動いた瞬間を目撃したのですから!!)
(え、ええ……私たちは今、運命の瞬間を見たわ!!)
(あれ? 運命?)
(運命?)
(……運命?)
「あ、ああーーーーー!!」
「な、なに!?」
「お嬢様少々お待ちを」
「あ、ああー!? 気付けば透明なまま縛られてますよ!? 斬新なプレイですね!」
「あら? そんな冗談を言ってる余裕があって?」
「うふふ……あはは……ぐすっ、うう……」
「あ、レミリア様がお泣きになってますね。これぞ、正に鬼の目にも涙……なーんちゃって」
「それが遺言かしら?」
次の瞬間、私の前にはナイフが膜のように広がります。
ああ、段々ナイフが近付いてくる……。
私は時を操るような力が無いのにとってもゆっくり近付いてくるようにみえる。
けど、身体は少しも動かなくって……。
ああ、私どうなっちゃうんだろう……。
あ、刺さ……………………こぁきゅ~。
×月○日
文々。新聞号外
『巨大な十字架が紅魔館に!?』
吸血鬼の館であるはずの、紅魔館から何故か巨大な紅い十字架が出現。
紅魔館の住人はこう証言する。
レミリア・スカーレット嬢の発言「ああ、アレ? アレは私がやったのよ。たまには館のイメージチェンジでもしようかと思ってね」
メイド長の十六夜咲夜氏の発言「何時も通りのお嬢様の気まぐれですわ。おそらく、十字架が効かないことを誇示しようとでも思ったんじゃないですかね」
地下室のフランドール・スカーレット氏「ああ。なんかそんなことがあったらしいわね。けど、私はずっとここに居たから知らないわ」
図書館にいたパチュリー・ノウレッジ氏の発言「まぁ、レミィは気まぐれだからね。友人とはいえわからないことも結構あるわ。それよりもあなた、しばらくここの司書やってくれない? 今、小悪魔が怪我して療養中なのよ」
療養中だった小悪魔氏「ああ。そのことですか。ボクはこの通り怪我をしてたのでよくは知りませんがレミリア様のきまぐれらしいですよ」
と、本人を含む全員が口を揃えてレミリア・スカーレット嬢の気まぐれであると証言した。
しかし、彼女らから証言をとっているときどこかうわの空であり、何かを隠しているようだった。
筆者はこれからもこの事件に関する追跡調査を行うつもりである。
だが、そんなパチュも大好きだ