初めに。
これは、咲夜と妖夢が本気で戦うバトルSSです。
一部設定や口調を”かなり”変えてあるので、そういうのが(特に妖夢ファン)嫌な人は閲覧をオススメしません。
それでも良いぜ!と言う人はどうぞご覧になって下さいませ。
「咲夜。私と手合わせ願えないか?」
幻想郷の外れにある、荒野。そこに、冥界ではお馴染みの、西行寺家お庭番である魂魄 妖夢と、いきなり妖夢にここまで連れてこられた紅魔館のメイド長である、十六夜 咲夜の二人だけが立っていた。
ちなみに、咲夜は買出しの帰りだったので、その腕の中には紅魔館の面々に出されるのであろう、料理の材料が沢山入ってる袋がある。
その顔は、露骨ではないにしろ、誰もが「機嫌が悪い」と判るものだった。
「いきなり呼ばれて、いきなり連れてこられて、そして、いきなり決闘の申し込み・・・。どういうつもり?」
とりあえず、といった感じで、咲夜は妖夢に用件を訊ねる。
「同じ、得物使いとして興味があるだけだ。」
真っ直ぐに、妖夢はそう答える。その返答に、咲夜は不機嫌な顔から、呆れ顔へと変わった。
「あのねえ・・・。今、私は見ての通り買い物をしている。そして、紅魔館にはレミリア様やパチュリー様がお腹を空かして待ってるのよ。あなたも、あの亡霊に仕える身なら分かるでしょう?私は、早く帰って夕食を作らなくてはならない。」
本当なら、「買い物をしていた、だから早く帰って夕食を作る」と言えば早いのだが、咲夜はあえて、皮肉を込めるようにそう言った。
が、妖夢にはそんな言葉など届かないようだった。
「それでも、だ。あんたの都合など知らない。私は、あんたと本気で闘いたい。・・・あの、宴会騒ぎの時、私達は本気で闘えなかった。だから、今、私が絶好調だと思う今、戦いたい。」
「あんた・・・私の体調は無視?」
「それも知った事ではないさ。・・・さあ、どうする?」
「・・・・・・・・・・・さっきから疑問だったけど、あんた、いつもより言葉が・・・いや、「あいつら」も変わらないけど。でも、いつものあんた、言葉遣いはそんなものではないでしょう?」
「・・・多分、弾幕ごっこ以外でこの二本を振れるからだろうな。・・・あの時もそうだった。」
「・・・・・・・それでも、私はあんたに付き合う義理は無いわ。悪いけど、これ以上私を「止める」なら、時を「止めて」でも帰らしてもらうわよ。
咲夜はそう言い放ち、妖夢に背を向けた。
瞬間。
「しぃぃぃぃぃぃ!!!!」
後からの奇声。咲夜は、はぁ、と溜息をつき、そのままバク宙をする。
顔が地面に向いた時、咲夜が立っていた所には、妖夢が背中に下げている大刀、「楼観剣」が横薙ぎに過ぎていく所だった。
あのまま突っ立っていたら、今頃咲夜は冥界のお嬢様とお茶と、お茶請けに桜餅を食べている所だったかもしれない。
「・・・っと。」
綺麗に妖夢の後へと、距離を置いて着地する咲夜。
袋から材料が落ちないように上から押さえつつ、咲夜はバク宙からの体勢を整える。
が、その整えた時間が問題だった。
明らかに後をとったのに、いつの間にか妖夢はこっちを向いており、今度は腰に差している「白楼剣」を抜いて斬りかかっていた。
「はぁぁぁぁ!!」
妖夢の狙いは―首―。
「!!」
瞬時に反応し、辛うじて上半身を後に傾ける咲夜。首は痛くないので、おそらく斬られてないのだろう、と彼女は思った。
上半身を傾ける勢いで、そのまま再び、バク宙を行う咲夜。今度は大分距離を置く。
今度は、妖夢は白楼剣を斬った後の体勢のまま、動いてはいなかった。
「・・・・・・く、くくく。」
妖夢は、(どうやら逆手に持っていたらしい)白楼剣をそのまま鞘に戻し、不気味に笑う。
楼観剣は、まだ、左手に持っていた。
油断は出来ないな、と咲夜は思った。
「・・・何がおかしいのよ。」
何時でも避けられる体勢のまま、咲夜は、くすくすと笑う妖夢に訊ねる。
妖夢は笑いながら、こう答えた。
「いや、あんたの首は斬れなかったが・・・、別のは斬れた。
「えっ?」
「もう、あんたの両手を塞ぐ物は無いよ。」
そう妖夢が呟くと、咲夜が持っていた袋の重みが消える。
ボトボト・・・
いや、突然消えた訳では無かった。袋の中身が・・・そう、白楼剣によって斬られて出来た袋の隙間から、咲夜が購入した物が殆ど落ちているのだ。
落とさないようにと力強く袋を押さえていた咲夜の腕は、結果的に袋の中の物を殆ど押し出す結果となってしまった。
そう、確かに妖夢の言うとおり。これで、咲夜は両手を使える状態になった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙する咲夜。
「・・・・・・・・・・・ふふっ」
それは、小さな笑い声に変わる。
「・・・・・ふふ・・・あははっ・・・。」
それはどんどん大きくなり・・・。
「あはははははははははははっ!」
爆発するような声を上げ。腹を押さえ。無防備にも顔を下に向ける。
その顔は、誰にも見えない。
「ははははははははははははははは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死ね。」
ブンッ。
妖夢の頬を何かが通り過ぎる。
が、妖夢にはそれがナイフだと判っており、尚且つ、それは「囮」だという事も分かっていた。
ガキンっ!
正面に飛んできた、妖夢の顔面を狙ったナイフを楼観剣で弾く妖夢。
ミスディレクション。
咲夜が得意とする、一種のトラップ技。
「甘い・・・。・・・!?」
楼観剣は構えたまま、目も寸分も動かさず。勿論、瞬きなんて言語道断。
相手は、”時を止める程度の能力”を持つ十六夜 咲夜なのだ。
だが・・・確かに、ナイフを弾きながらも、ずっと咲夜を見据えていたはずなのに、彼女は消えていた。
おそらく時を止め、その間に姿をくらましたのだろう。
(どこへ・・・)
「遅い。」
「!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガッ!
妖夢の立っていた場所には、何本かも分からないナイフの数々が突き刺さる。
―殺人ドール―。
時を止め、標的に対して数々のナイフを飛ばす咲夜のスペルカード。
その幾多のナイフは避けられる物ではないのだが・・・。
「・・・危なかった・・・。」
「・・・・ああ・・・あの、無駄に素早いスペルカード、ね・・・。」
ナイフの山から横の位置―咲夜からみて左側―に妖夢が地面に跪いている。
どうやら、彼女は「二百由旬の一閃 」と言う高速移動が出来るスペルカードを使い、殺人ドールから逃れたらしい。
さすがの殺人ドールも、高速する妖夢を捉えられなかったようだった。
「・・・だけど・・・次は無いわよ・・・?」
「・・くくっ。やっと本気を・・・だしたな?」
ようやく、自分の望んだ展開に、素直に喜ぶ妖夢。
が、咲夜の顔は―ようやく分かった所だが―さっき以上に不機嫌で、妖夢の事を睨んでいる。
その理由は、解りやすいものだった。
「当たり前じゃない?わざわざ人里に降りて買出しをして、折角帰ってきたというのに、二度手間じゃない。お嬢さまが待ちくたびれてしまう。それはつまり・・・」
そう言って、彼女は中身の少ない袋を置き、どこから出したのか両手にナイフを構える。
「つまり、あんたは・・・お嬢さまの夕食を邪魔する、って事ね。だから邪魔者は・・・消すわ。」
妖夢も、改めて楼観剣を構え直す。
「・・・・・さあ、掛かって来てみろ。時を止めるのもいい。ナイフを数千、数万投げてもいい!果ては私を空間に閉じ込めるか?それもいいだろう。だが、私も本気であんたにかかって・・・どれも打ち破ってやる。」
二人の間合いは・・・それ程離れているわけはない。
今の位置だと、油断をすれば妖夢は咲夜のナイフ投げの餌食になるだけだし、咲夜は、一気にかかってこられると、妖夢の楼観剣に血を吸われる事になるだろう。
つまりは、そういう微妙な間合いなのだ。
そして、ついに本気の十六夜 咲夜と、本気の魂魄 妖夢の戦いが始まる。
ダッ。
動いたのは妖夢だった。
先ほどのスペルカードに頼ってはいなかったが、それでも常人なら驚くほどの速さで咲夜に詰め寄る。
そう、常人ならこの後に待ち構えるのは三途の川の光景であろう。
だが、咲夜は違う。
彼女は、誰もが知っている通り”マジシャンで”、”時を止め”、”空間も操り”、そして”完璧で瀟洒なメイド”なのだ。
一気に間合いを詰めた妖夢はそのまま・・・咲夜へと剣を薙ぐ!
ぶおん!
大分遠くに人が居ても聞こえるくらいの剣を振る音。しかし、それだけだった。
妖夢の斬ったその場所には咲夜はいなかったのだ。
また時を止め、一時離脱を図ったのだろう。
「後ろか!?・・・いや・・・上!?」
迅速に、周囲を確認する妖夢。だが、咲夜はいない。
(・・・どこだ・・・?)
楼観剣を構えなおし、周囲に気を配る妖夢。
彼女には分かっている。
一瞬でも気を緩めたら、その時点で勝敗は決するだろうろ。
(・・・・・・・・・・・・・・・)
一秒、二秒、三秒・・・刻々と時間は過ぎる。
咲夜は、当たり前だが、まだ出てこない。
三十秒、・・・四十秒、・・・五十秒、・・・。
もうすぐ一分になるという所で。
咲夜は妖夢の目の前に現れた。
「なっ・・・。」
妖夢は驚いた。何故なら、彼女は咲夜が後ろから奇襲してくるものだと信じていたから。
その表情は、咲夜にとって嘲笑するに値するものだったろう。
「あんたに、”こっちの私”を見せてあげる・・・。」
咲夜はそう言って、ナイフを一本握った。そして、眼が赤くなったのを妖夢は逃さない。
「!!!!!!」
妖夢は、咲夜の「それ」に気づき、急いで背中の白楼剣を抜く。
「遅いっ!インスクライブレッドソウル!!」
咲夜は剣を一閃する。それは一つ、二つ、三つと増え、咲夜が刃を返す頃には―。
ガキキキキガガキキキガキキガキッ!!!!
数十に増えていた。
しかし、妖夢は白楼剣を抜くのに間に合い、それらをすべて受け止める。
咲夜は涼しい顔でナイフを無造作に振りまくる。それだけで、剣閃はいくつも生まれ、妖夢へと襲いかかって行った。
「あら、やるわね。これを全部受け止めるなんて。」
「こんなもの・・・あの時と比べれば・・・屁でもないねえっっっ。」
そうは言っているが、実際は逆だった。もし、これ以上剣閃が増えようものなら、彼女はどこまでかは解らないが、傷つくだろう。
「それはそうよ。だって、本気じゃないもの。」
「っっっ!?何ぃっ!?」
あってはならない事を易々と言われ、妖夢は咲夜の顔を見る。
その表情は薄く笑い、目はさらに赤くなったかのように見えた。
「ふふっ・・・『ソウルスカルプチュア』。」
数十の剣閃が数百に増える。
妖夢はそれでも受け止めるが、着ている服は少しずつ斬られ、肌にも傷が付いていく。
「ッッッッくあああぁぁぁあああぁぁっっっっ!!」
獅子と思わせるような咆哮で、剣閃を捌く妖夢。しかし、まだ未成熟な子供の体である妖夢には、もう限界が近づいていた。
「あらあら、あんだけ大口叩いて、もうその程度?・・・私も、結構あんたと本気でやるの楽しみだったけど・・・駄目ね、これじゃあ。」
咲夜はまたも薄く笑う。そして、劣勢ながらも妖夢も笑った。
「・・・ああ、確かに。」
「・・・え?」
その笑みに、咲夜は少し不安を覚えた。その瞬間、切り刻んでいたはずの妖夢が薄くなる。
「なっ・・・!」
「・・・駄目だね、あんた。」
声は後ろ。咲夜は慌てて振り向くが。
「遅い。」
後ろに立っていた妖夢の楼観剣が、咲夜の右肩にめがけて袈裟懸けに振り落とされる。
ガィン!
咲夜は超反応で辛うじて楼観剣を受け止めるが、その勢いまでは止められなかった。
「!がぁああぁああぁ!!!!!!」
咲夜は妖夢を思いっきり蹴り飛ばし、その勢いのまま、後方に倒れこんだ。左手を、右肩に押さえて。
その右肩は、はっきりと分かるぐらい赤色に染まっており、咲夜のダメージの大きさが見て取れる。
「げほっがはっ・・・く、くくく・・ははは・・・。」
一方、咲夜に蹴り飛ばされた妖夢はそのまま倒れこみ、蹴られた腹を押さえるが、どうやら痛みよりも咲夜に一杯食わせたことが嬉しいらしい。一時は咳き込んでいたが、それは直ぐに笑い声へと変わった。
「ははは・・・どう?私の半身も中々の演技をするだろう?」
そう言って、妖夢はゆっくりと立ち上がる。
その体には、咲夜によって斬られたナイフの傷が、赤い筋となっていた。
「あんた・・・一体・・・そうか、何かおかしいと思った・・・。くそ・・・違和感はあったんだ・・・気づけなかった・・・『半身』が、身代わりになってたなんて・・・。」
咲夜はまだ肩を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。その顔は、悔しさと、怒りで埋め尽くされていた。
「・・・いつから?」
「あんたが、空中後転でよけた瞬間さ。あの時に私は半身を実体化・・・つまり、幽明の苦輪を発動させた。」
幽明の苦輪・・・それは、半分人間、半分幽霊である妖夢だからこそ出来るスペルカード。時間の制限はあるが、半幽部分を妖夢の姿に変え、実体化させる効果がある。そして、妖夢は今回半幽を囮としてこのスペルカードを使ったのだった。
しかし、例え幽体部分とはいえ実体を持った半身。咲夜から受けた傷は、そのまま妖夢の半人部分に影響を受けるのだ。それが、このスペルカードの短所でもあったりする。
「その後に私は二百由旬の一閃で離脱し、遠くから半幽部分を操っていたのさ。そして、あんたを優勢に立たせ、油断した所を・・・狙った。」
「・・・そう。ふふっ・・・でも、私はまだやれるわよ?」
少し痛みに慣れてきたのか、咲夜は先程よりは幾分か余裕のある表情になっていた。
「いいさ、まだやれるのなら・・・あんたがそれだけ強いという事。それに、私は・・・こんなので満足しない。」
まだまだやれる・・・といった雰囲気で妖夢は、今度は白楼剣を右手に、楼観剣を左手にと二刀流の構えをとる。
対して咲夜は、ナイフを一本。肩を怪我しているが、右手に力強く握り締めた。握り締める瞬間、力むと肩が痛むのか、顔が歪む。
「・・・もう、長くは保たないから・・・次で・・・決着つけてやる。」
「来るなら来い・・・どんな事があろうとも、あんたにこの二つをお見舞いしてやるさ。」
クスリと笑う咲夜に、にぃ、と口を曲げる妖夢。
「・・・あんた、空間に閉じ込めてもいい、って言ったわね?」
咲夜は、唐突にそんなことを言った。
妖夢は顔を変えず、「そうね。」と言った。
「なら、見せてあげるわ・・・。題目、『とんでもなく増えるナイフ』よ。」
瞬間、二人の周りには幾数十のナイフの軍団。
そして、妖夢の周りにナイフに囲まれた空間が出来る。
しかし、それらは動かない。
なぜなら、・・・、咲夜は時を止めているのだから。
「インフレーション、スクエア・・・。」
咲夜がそう呟くと、ナイフはさも当然のように動き始める。
そして、妖夢の周りにあったナイフも、全て彼女に向かう。
「馬鹿め!同じ手が通用するか!」
妖夢は、これが殺人ドールと勘違いしているのだろう。
一部のナイフを弾き飛ばし、妖夢がナイフの空間から飛び出してくる。
しかし、彼女はナイフの空間にいたのだ。当然、「空間外」がどうなってるかは、
「なっ・・・。」
知らない。
「インスクライブレッドソウル!!!!」
ナイフの空間を抜けると、そこはまたもナイフの空間。驚いた妖夢は、怯む。そこを咲夜は見逃さない。
前よりは少ないが、幾重の剣閃が妖夢へと飛んでいく。
「!?何っ!ああっ!」
当たる瞬間、妖夢は自分に向かってくる剣閃に気づき避けてはみるが、剣閃の2、3つが妖夢の右腕と右足にかすめる。しかし、切れ味は鋭いようだった。かすっただけなのに、妖夢の右手足はどんどん血が流れていった。
「・・・ふふ、肩のお返しよ・・・!?」
「現世斬!!」
右手足の怪我はどうも思わないのか、妖夢はお得意のスペルカードで咲夜に突進する。しかし、咲夜はそれを簡単にナイフで受け止め、捌いた。
「殺人ドール!!」
咲夜の周りからナイフが何十と出て来て、そのまま妖夢にロックする。
「そんなもの!全て弾き返してやる!!!」
「誰がこれで終わりと言った!『夜霧の幻影殺人鬼』!!」
咲夜が新たにスペルカードを出す。
すると、さらにナイフが増え、最終的に数百本とも思えるぐらいの量が、全て妖夢を狙っている。
「これを全て弾けるかしら?・・・行けっ!」
咲夜の合図と共に発射される幾百のナイフの束。
しかし、妖夢の顔は慌てない。それどころか、笑ってさえもいる。
「ナイフは”それだけ”か?・・・馬鹿馬鹿しい・・・。幽明の苦輪!!」
再び、妖夢の半身が、実体化する。
「「迷津慈航斬!!」」
二人の妖夢がそう叫ぶと、二人の持つ楼観剣に霊力が宿り、それは大きな刃へと変化した。
「「せいっ!」」
そして、その二つの大太刀を思いっきり振りかぶり、思いっきり振り下ろす・
音の無い衝撃波が、空気を揺らす。
そして、その揺れが収まった頃には、ナイフは全て吹き飛んでいた。
「はあっ、はぁ・・・」
スペルカードの連発はやはりきついのか、息が荒くなる妖夢。
少々休みたい所ではあろうが、咲夜はそれを許さなかった。
「!?ぐぅぅううううう!!!」
妖夢に、疲れが出ているのを悟った咲夜は、一気に妖夢に掴みかかる。
そして、思いっきり地面に叩きつけ、そのまま馬乗りに妖夢を押さえる。
そして、
「今度こそ、右肩のお返しよ。」
「ぐぁぁあああああああああっっっっ!!」
そのまま、妖夢の右肩にナイフを深く刺した。
「ぎ・・・ぎ!」
「おっと、こんな似合わない刀は・・・。」
「ぐあぁ!」
妖夢の左腕に新たにナイフが刺され、妖夢は楼観剣を手放した。
「離さなきゃ。」
「ぐ・・・が・・・。」
「あらあら・・・?どうしたの・・・?何か言ってみなさいよ・・・?」
ブンっ。
「ぐあぁあっ。」
咲夜がおもむろに後ろに投げたナイフは、咲夜に襲い掛かろうとした「妖夢の半身」の急所から外れていたが、腹部に刺さった。そして、半身が刺さった所と同じ部分に、痛みがフィードバックされているのだろう、妖夢の顔は更に苦痛へとゆがむ。
「あんたねえ・・・同じ手は二度と通じないわよ・・・?」
咲夜はそう呟き、更にナイフを取り出して、右手で握った。そして、狙うのは・・・。
「あの幽霊がどう思うが関係無いし・・・可哀相だけど、あんたの顔を、今からズタズタにするわ。恨むなら、私に挑んだあんたを恨みなさい・・。」
ナイフを顔に近づかせ、軽く頬をなぞる。さぞ、今の妖夢の顔は悔しさで満たされている、と咲夜は思っているだろう。だが、
「・・・ぐ・・・く・・くく・・・くくく・・・。」
妖夢は、笑っていた。
「・・・何が可笑しい?」
「・・・右手を封じなかったのは失敗だったようだねえっ!」
「何っ!?がっ!」
咲夜の、「右腰」に楼観剣の峰が当たっていた。
「・・・かっ、かは・・・えほ・・・。」
右腰を押さえ、そのまま倒れる咲夜。
妖夢は痛い体に鞭を打ちながら、一気に咲夜から離れた。
・・・要するに、妖夢は嘘をついたのだ。
右手で攻撃すると見せかけ、実際は怪我をしている左手で、楼観剣を拾い、峰打ちで咲夜の右腰を狙う。
咲夜は、まさか怪我をしている左手で、まだ剣が握れるとは思っていなかっただろう。それに、勝敗が決したと思い、油断していた。
「・・・ふふっ。油断、大敵ってねェ・・・。」
「げほ、・・・がはっ・・・ふ・・・げほっ・・ふふふ・・・。本当に、その通りね・・・。」
妖夢は、満身創痍ともいえるその体で立ち上がり、楼観剣を構える。
咲夜も、腰を押さえつつ―あそこまで痛がっている所をみると、もしかして骨折したか?―、ゆっくりと、立ち上がった。
「・・・もう、私は次で終わりだ・・・これで、決まらなかったら・・・これまでということかな。」
「・・・私も、この状態じゃあ、ちょっときついわね・・・。」
荒い息をたて、二人は互いを見つめる。
そして―。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
妖夢が吼え、咲夜に突進する。
「あぁあああぁぁぁぁぁ!!」
咲夜も吼え、妖夢に突進していく。
二人の咆哮が交じり合い、そして、二人の体も交じり合う、
「やめな、咲夜!」
「やめなさい、妖夢~。」
かにみえた。
新たに割って入った、二人の声。
その声に、咲夜と妖夢はそれぞれ反応した。
そして、二人は驚く。
「お嬢様・・・。」
「幽々子さま・・・。」
声のする方向にいたのは、
咲夜の主人である、日傘を持ったレミリア・スカーレットと、妖夢の主人である西行寺 幽々子だった。
・
・
・
「咲夜が遅いから、美鈴と一緒に探しに来たのよ。まったく、主が外に出るというのに主に日傘を持たすかしら?普通。」
「・・・すいません。私が、つまらない事にムキになってしまって・・・。」
幾分、冷静さを取り戻した咲夜は、レミリアに説教されていた。・・・どうやら、傷はどうでもよくなっているらしい、今の表情はレミリアに対して申し訳ない、という表情で埋め尽くされていた。
一方、西行寺家の面々は・・・?
「妖夢~、あなたが居なかったからお夕食が食べれないじゃない。主人をほったらかしにして遊ぶなんて・・・従者としていけないわよ~。」
「は、はぁ・・・その、すみません。つ、つい・・・調子に乗ってしまいました・・・。」
序盤の勢いはどこへやら。幽々子には妖夢も適わないらしい。見る見るうちに声が小さくなってきている。
「まぁ、今回は仕方ないわ・・・あなただって、好きで闘いたかった訳でもないでしょうし・・・。」
その言葉を聞いて、咲夜は不思議な顔をする。
「ちょっと待って。私はいきなりそいつに誘われて、ここまで連れて来られて、それで「手合わせ」を申し込まれたのよ?どこに「好きで闘いたくなかった」って要素が付くのかしら?」
「ん~。つまりは、そこに関しては・・・そうね、今回の事は「実は妖夢の意思ではない」って事かしら。」
「まあ、お前達も気付けなかっただろうな、『そこまで』やり合ってたら。」
「・・・?どういう事ですか、お嬢様。」
「どういうことです、幽々子さま?」
「「上を見なさい」」
レミリアと幽々子、二人の声が重なる。
咲夜と妖夢は、同時に空を見上げ、そして、ああ、なるほどと納得した。
「って、出来るわけ無いでしょ!!何勝手にモノローグ付けてんのよ!!」
「酷いですよ・・・紫さま・・・。」
咲夜は私にナイフを投げ、妖夢はその場に崩れ落ちる。わたしこと、八雲 紫はナイフをひらりと避け、うふふ、と笑った。
「あら、何でよ。実際ね妖夢、あなたが彼女と本気で闘いたかったのは事実よ。わたしは、その想いのスキマを広げただけ。そして、それに抗わなかったのは貴女自身の心の弱さと言う事よ。」
「なるほど、それであの半人前は咲夜に勝負を挑んだのか。」
と、納得顔のレミリア。
「そういうこと。妖夢も満足したでしょう?あまり自分の欲望は抑えないほうがいいわ。」
「だからって・・・時と場合と言うものが・・・。」
「まあ、確かに。今回は私が暇だったからやったことだけど。」
「・・・結局、あんたが悪いんじゃない・・・。」
咲夜は頭を抱えた。
「お嬢様~。咲夜さ~ん。」
遠くから声が聞こえた。どうやら、紅魔館の門番のようだ。
「あら、美鈴が来たようね。さて、咲夜。私はこのまま帰るから、後は美鈴におぶってもらうなりして帰りなさいな。」
「し、しかし・・・お嬢様に傘を持たすわけには・・・。」
「あのねえ、あんたが途中で倒れられたりしたら、そっちが迷惑なのよ。・・・わかるわね?これは『命令』、と言っておくわ。」
「・・・はい。」
「それじゃあ、私たちも帰ろうかしら。ね、妖夢。」
「あ、は、はい。」
「じゃあね、紫。・・・今度は、こんなことはしないで頂戴ね。」
「幽々子さま・・・。」
妖夢の顔が感動、という気持ちで表される。
「せめてご飯前には帰すようにして頂戴ね。」
「・・・やっぱりそう来ますか・・・。」
がっくりと肩を落とす妖夢。
「うふふ・・・そうしておくわ。」
「私はもう勘弁ですよう・・・。」
・
・
・
~マヨヒガにて~
「って、ことがあったのよ。」
私の話を聞いていた、新聞記者である天狗、射命丸 文は満足そうな顔をした。
「ふんふん。・・・幻想郷外れでの決斗・・・と。これはいい記事になりそうですねぇ。巫女あたりは五月蝿いかもしれないですが。」
「そうかしら?私ならともかく、あの二人ごときで霊夢は動かないでしょう。」
「何気に自信家ですねえ・・・。」
「悪い?」
「いえ。実際、私も「最強の妖怪」のあなたとは戦いたくありませんし。」
「さすが、口は達者ねえ。」
「それが天狗ってものですから。」
そう言って文は立ち上がり、取材を終えようとする。
「有難う御座います。お陰で今度の号外はいいのが書けそうですよ。」
「出来たら私にも見してねえ。どう脚色されてるか見物だわ。」
「失礼な。脚色なんてしませんよ。「文文。新聞」は真実しか書きません。まあ、完成したらそちらにもお届けします。」
そして、文は飛び立っていった。
「ふああ・・・今日は珍しく昼に活動しちゃったし、今は眠りましょ。藍~、ご飯が出来たら起こしてね~。」
奥から「は~い」と聞こえたので、わたしは目を瞑り、眠りに付いた。
わたしの暇潰しから起きた、咲夜と妖夢の決斗。
文の号外では、どう書かれるか、とても楽しみだ。
終。
後日談。
『号外!幻想郷外れの決斗!!」
先日、幻想郷の外れで、十六夜 咲夜(紅魔館勤務)と、魂魄 妖夢(白玉楼お庭番)が決斗を行った。十六夜 咲夜さんの話によると、「結局、私とあの子は道化みたいなものよ。まあ、私は気にしてないけど。でも、あの子は相当落ち込んでたんじゃないかしら?」との事。
続いて、魂魄 妖夢さんに話を聞いてみた。
「酷いものですよまったく・・・■様(名前はプライバシー保護のため省略)が私の心をけしかけなければ、こんな怪我をしないですんだのに・・・うう、幽々子様も別に気にしてなかったし・・・みょん。」との事。
咲夜さんは、全身に切り傷と。右腰を骨折という重体。妖夢さんは、右肩、左手、腹部に深い傷を負っている。傷の直りが早い妖夢さんは兎も角、人間である咲夜さんは、暫くは紅魔館での仕事に影響がでるのではなかろうか、との声が出ている。
紅魔館の館主は、「別に良いんじゃない?たまには休ましてあげても。あ、でもそれだと掃除に困るかしら。ここの掃除は全て咲夜にやらせてるしねえ。」と語る。
さて、妖夢さんのインタビューで出てきた■様。本人のたっての希望の為名前は伏せてあるが、この人物が今回の決斗の張本人だと、二人は語っている。
誰にせよ、人の心のスキマに漬け込むとは、全く困った妖怪も居るものだ。今回、ターゲットにされた二人は非常に不憫でならない。
これを読んでいる皆さんも、みょん・・・違った。妙なスキマ妖怪に出会ったら、用心しておきましょう。
これは、咲夜と妖夢が本気で戦うバトルSSです。
一部設定や口調を”かなり”変えてあるので、そういうのが(特に妖夢ファン)嫌な人は閲覧をオススメしません。
それでも良いぜ!と言う人はどうぞご覧になって下さいませ。
「咲夜。私と手合わせ願えないか?」
幻想郷の外れにある、荒野。そこに、冥界ではお馴染みの、西行寺家お庭番である魂魄 妖夢と、いきなり妖夢にここまで連れてこられた紅魔館のメイド長である、十六夜 咲夜の二人だけが立っていた。
ちなみに、咲夜は買出しの帰りだったので、その腕の中には紅魔館の面々に出されるのであろう、料理の材料が沢山入ってる袋がある。
その顔は、露骨ではないにしろ、誰もが「機嫌が悪い」と判るものだった。
「いきなり呼ばれて、いきなり連れてこられて、そして、いきなり決闘の申し込み・・・。どういうつもり?」
とりあえず、といった感じで、咲夜は妖夢に用件を訊ねる。
「同じ、得物使いとして興味があるだけだ。」
真っ直ぐに、妖夢はそう答える。その返答に、咲夜は不機嫌な顔から、呆れ顔へと変わった。
「あのねえ・・・。今、私は見ての通り買い物をしている。そして、紅魔館にはレミリア様やパチュリー様がお腹を空かして待ってるのよ。あなたも、あの亡霊に仕える身なら分かるでしょう?私は、早く帰って夕食を作らなくてはならない。」
本当なら、「買い物をしていた、だから早く帰って夕食を作る」と言えば早いのだが、咲夜はあえて、皮肉を込めるようにそう言った。
が、妖夢にはそんな言葉など届かないようだった。
「それでも、だ。あんたの都合など知らない。私は、あんたと本気で闘いたい。・・・あの、宴会騒ぎの時、私達は本気で闘えなかった。だから、今、私が絶好調だと思う今、戦いたい。」
「あんた・・・私の体調は無視?」
「それも知った事ではないさ。・・・さあ、どうする?」
「・・・・・・・・・・・さっきから疑問だったけど、あんた、いつもより言葉が・・・いや、「あいつら」も変わらないけど。でも、いつものあんた、言葉遣いはそんなものではないでしょう?」
「・・・多分、弾幕ごっこ以外でこの二本を振れるからだろうな。・・・あの時もそうだった。」
「・・・・・・・それでも、私はあんたに付き合う義理は無いわ。悪いけど、これ以上私を「止める」なら、時を「止めて」でも帰らしてもらうわよ。
咲夜はそう言い放ち、妖夢に背を向けた。
瞬間。
「しぃぃぃぃぃぃ!!!!」
後からの奇声。咲夜は、はぁ、と溜息をつき、そのままバク宙をする。
顔が地面に向いた時、咲夜が立っていた所には、妖夢が背中に下げている大刀、「楼観剣」が横薙ぎに過ぎていく所だった。
あのまま突っ立っていたら、今頃咲夜は冥界のお嬢様とお茶と、お茶請けに桜餅を食べている所だったかもしれない。
「・・・っと。」
綺麗に妖夢の後へと、距離を置いて着地する咲夜。
袋から材料が落ちないように上から押さえつつ、咲夜はバク宙からの体勢を整える。
が、その整えた時間が問題だった。
明らかに後をとったのに、いつの間にか妖夢はこっちを向いており、今度は腰に差している「白楼剣」を抜いて斬りかかっていた。
「はぁぁぁぁ!!」
妖夢の狙いは―首―。
「!!」
瞬時に反応し、辛うじて上半身を後に傾ける咲夜。首は痛くないので、おそらく斬られてないのだろう、と彼女は思った。
上半身を傾ける勢いで、そのまま再び、バク宙を行う咲夜。今度は大分距離を置く。
今度は、妖夢は白楼剣を斬った後の体勢のまま、動いてはいなかった。
「・・・・・・く、くくく。」
妖夢は、(どうやら逆手に持っていたらしい)白楼剣をそのまま鞘に戻し、不気味に笑う。
楼観剣は、まだ、左手に持っていた。
油断は出来ないな、と咲夜は思った。
「・・・何がおかしいのよ。」
何時でも避けられる体勢のまま、咲夜は、くすくすと笑う妖夢に訊ねる。
妖夢は笑いながら、こう答えた。
「いや、あんたの首は斬れなかったが・・・、別のは斬れた。
「えっ?」
「もう、あんたの両手を塞ぐ物は無いよ。」
そう妖夢が呟くと、咲夜が持っていた袋の重みが消える。
ボトボト・・・
いや、突然消えた訳では無かった。袋の中身が・・・そう、白楼剣によって斬られて出来た袋の隙間から、咲夜が購入した物が殆ど落ちているのだ。
落とさないようにと力強く袋を押さえていた咲夜の腕は、結果的に袋の中の物を殆ど押し出す結果となってしまった。
そう、確かに妖夢の言うとおり。これで、咲夜は両手を使える状態になった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙する咲夜。
「・・・・・・・・・・・ふふっ」
それは、小さな笑い声に変わる。
「・・・・・ふふ・・・あははっ・・・。」
それはどんどん大きくなり・・・。
「あはははははははははははっ!」
爆発するような声を上げ。腹を押さえ。無防備にも顔を下に向ける。
その顔は、誰にも見えない。
「ははははははははははははははは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・死ね。」
ブンッ。
妖夢の頬を何かが通り過ぎる。
が、妖夢にはそれがナイフだと判っており、尚且つ、それは「囮」だという事も分かっていた。
ガキンっ!
正面に飛んできた、妖夢の顔面を狙ったナイフを楼観剣で弾く妖夢。
ミスディレクション。
咲夜が得意とする、一種のトラップ技。
「甘い・・・。・・・!?」
楼観剣は構えたまま、目も寸分も動かさず。勿論、瞬きなんて言語道断。
相手は、”時を止める程度の能力”を持つ十六夜 咲夜なのだ。
だが・・・確かに、ナイフを弾きながらも、ずっと咲夜を見据えていたはずなのに、彼女は消えていた。
おそらく時を止め、その間に姿をくらましたのだろう。
(どこへ・・・)
「遅い。」
「!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガッ!
妖夢の立っていた場所には、何本かも分からないナイフの数々が突き刺さる。
―殺人ドール―。
時を止め、標的に対して数々のナイフを飛ばす咲夜のスペルカード。
その幾多のナイフは避けられる物ではないのだが・・・。
「・・・危なかった・・・。」
「・・・・ああ・・・あの、無駄に素早いスペルカード、ね・・・。」
ナイフの山から横の位置―咲夜からみて左側―に妖夢が地面に跪いている。
どうやら、彼女は「二百由旬の一閃 」と言う高速移動が出来るスペルカードを使い、殺人ドールから逃れたらしい。
さすがの殺人ドールも、高速する妖夢を捉えられなかったようだった。
「・・・だけど・・・次は無いわよ・・・?」
「・・くくっ。やっと本気を・・・だしたな?」
ようやく、自分の望んだ展開に、素直に喜ぶ妖夢。
が、咲夜の顔は―ようやく分かった所だが―さっき以上に不機嫌で、妖夢の事を睨んでいる。
その理由は、解りやすいものだった。
「当たり前じゃない?わざわざ人里に降りて買出しをして、折角帰ってきたというのに、二度手間じゃない。お嬢さまが待ちくたびれてしまう。それはつまり・・・」
そう言って、彼女は中身の少ない袋を置き、どこから出したのか両手にナイフを構える。
「つまり、あんたは・・・お嬢さまの夕食を邪魔する、って事ね。だから邪魔者は・・・消すわ。」
妖夢も、改めて楼観剣を構え直す。
「・・・・・さあ、掛かって来てみろ。時を止めるのもいい。ナイフを数千、数万投げてもいい!果ては私を空間に閉じ込めるか?それもいいだろう。だが、私も本気であんたにかかって・・・どれも打ち破ってやる。」
二人の間合いは・・・それ程離れているわけはない。
今の位置だと、油断をすれば妖夢は咲夜のナイフ投げの餌食になるだけだし、咲夜は、一気にかかってこられると、妖夢の楼観剣に血を吸われる事になるだろう。
つまりは、そういう微妙な間合いなのだ。
そして、ついに本気の十六夜 咲夜と、本気の魂魄 妖夢の戦いが始まる。
ダッ。
動いたのは妖夢だった。
先ほどのスペルカードに頼ってはいなかったが、それでも常人なら驚くほどの速さで咲夜に詰め寄る。
そう、常人ならこの後に待ち構えるのは三途の川の光景であろう。
だが、咲夜は違う。
彼女は、誰もが知っている通り”マジシャンで”、”時を止め”、”空間も操り”、そして”完璧で瀟洒なメイド”なのだ。
一気に間合いを詰めた妖夢はそのまま・・・咲夜へと剣を薙ぐ!
ぶおん!
大分遠くに人が居ても聞こえるくらいの剣を振る音。しかし、それだけだった。
妖夢の斬ったその場所には咲夜はいなかったのだ。
また時を止め、一時離脱を図ったのだろう。
「後ろか!?・・・いや・・・上!?」
迅速に、周囲を確認する妖夢。だが、咲夜はいない。
(・・・どこだ・・・?)
楼観剣を構えなおし、周囲に気を配る妖夢。
彼女には分かっている。
一瞬でも気を緩めたら、その時点で勝敗は決するだろうろ。
(・・・・・・・・・・・・・・・)
一秒、二秒、三秒・・・刻々と時間は過ぎる。
咲夜は、当たり前だが、まだ出てこない。
三十秒、・・・四十秒、・・・五十秒、・・・。
もうすぐ一分になるという所で。
咲夜は妖夢の目の前に現れた。
「なっ・・・。」
妖夢は驚いた。何故なら、彼女は咲夜が後ろから奇襲してくるものだと信じていたから。
その表情は、咲夜にとって嘲笑するに値するものだったろう。
「あんたに、”こっちの私”を見せてあげる・・・。」
咲夜はそう言って、ナイフを一本握った。そして、眼が赤くなったのを妖夢は逃さない。
「!!!!!!」
妖夢は、咲夜の「それ」に気づき、急いで背中の白楼剣を抜く。
「遅いっ!インスクライブレッドソウル!!」
咲夜は剣を一閃する。それは一つ、二つ、三つと増え、咲夜が刃を返す頃には―。
ガキキキキガガキキキガキキガキッ!!!!
数十に増えていた。
しかし、妖夢は白楼剣を抜くのに間に合い、それらをすべて受け止める。
咲夜は涼しい顔でナイフを無造作に振りまくる。それだけで、剣閃はいくつも生まれ、妖夢へと襲いかかって行った。
「あら、やるわね。これを全部受け止めるなんて。」
「こんなもの・・・あの時と比べれば・・・屁でもないねえっっっ。」
そうは言っているが、実際は逆だった。もし、これ以上剣閃が増えようものなら、彼女はどこまでかは解らないが、傷つくだろう。
「それはそうよ。だって、本気じゃないもの。」
「っっっ!?何ぃっ!?」
あってはならない事を易々と言われ、妖夢は咲夜の顔を見る。
その表情は薄く笑い、目はさらに赤くなったかのように見えた。
「ふふっ・・・『ソウルスカルプチュア』。」
数十の剣閃が数百に増える。
妖夢はそれでも受け止めるが、着ている服は少しずつ斬られ、肌にも傷が付いていく。
「ッッッッくあああぁぁぁあああぁぁっっっっ!!」
獅子と思わせるような咆哮で、剣閃を捌く妖夢。しかし、まだ未成熟な子供の体である妖夢には、もう限界が近づいていた。
「あらあら、あんだけ大口叩いて、もうその程度?・・・私も、結構あんたと本気でやるの楽しみだったけど・・・駄目ね、これじゃあ。」
咲夜はまたも薄く笑う。そして、劣勢ながらも妖夢も笑った。
「・・・ああ、確かに。」
「・・・え?」
その笑みに、咲夜は少し不安を覚えた。その瞬間、切り刻んでいたはずの妖夢が薄くなる。
「なっ・・・!」
「・・・駄目だね、あんた。」
声は後ろ。咲夜は慌てて振り向くが。
「遅い。」
後ろに立っていた妖夢の楼観剣が、咲夜の右肩にめがけて袈裟懸けに振り落とされる。
ガィン!
咲夜は超反応で辛うじて楼観剣を受け止めるが、その勢いまでは止められなかった。
「!がぁああぁああぁ!!!!!!」
咲夜は妖夢を思いっきり蹴り飛ばし、その勢いのまま、後方に倒れこんだ。左手を、右肩に押さえて。
その右肩は、はっきりと分かるぐらい赤色に染まっており、咲夜のダメージの大きさが見て取れる。
「げほっがはっ・・・く、くくく・・ははは・・・。」
一方、咲夜に蹴り飛ばされた妖夢はそのまま倒れこみ、蹴られた腹を押さえるが、どうやら痛みよりも咲夜に一杯食わせたことが嬉しいらしい。一時は咳き込んでいたが、それは直ぐに笑い声へと変わった。
「ははは・・・どう?私の半身も中々の演技をするだろう?」
そう言って、妖夢はゆっくりと立ち上がる。
その体には、咲夜によって斬られたナイフの傷が、赤い筋となっていた。
「あんた・・・一体・・・そうか、何かおかしいと思った・・・。くそ・・・違和感はあったんだ・・・気づけなかった・・・『半身』が、身代わりになってたなんて・・・。」
咲夜はまだ肩を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。その顔は、悔しさと、怒りで埋め尽くされていた。
「・・・いつから?」
「あんたが、空中後転でよけた瞬間さ。あの時に私は半身を実体化・・・つまり、幽明の苦輪を発動させた。」
幽明の苦輪・・・それは、半分人間、半分幽霊である妖夢だからこそ出来るスペルカード。時間の制限はあるが、半幽部分を妖夢の姿に変え、実体化させる効果がある。そして、妖夢は今回半幽を囮としてこのスペルカードを使ったのだった。
しかし、例え幽体部分とはいえ実体を持った半身。咲夜から受けた傷は、そのまま妖夢の半人部分に影響を受けるのだ。それが、このスペルカードの短所でもあったりする。
「その後に私は二百由旬の一閃で離脱し、遠くから半幽部分を操っていたのさ。そして、あんたを優勢に立たせ、油断した所を・・・狙った。」
「・・・そう。ふふっ・・・でも、私はまだやれるわよ?」
少し痛みに慣れてきたのか、咲夜は先程よりは幾分か余裕のある表情になっていた。
「いいさ、まだやれるのなら・・・あんたがそれだけ強いという事。それに、私は・・・こんなので満足しない。」
まだまだやれる・・・といった雰囲気で妖夢は、今度は白楼剣を右手に、楼観剣を左手にと二刀流の構えをとる。
対して咲夜は、ナイフを一本。肩を怪我しているが、右手に力強く握り締めた。握り締める瞬間、力むと肩が痛むのか、顔が歪む。
「・・・もう、長くは保たないから・・・次で・・・決着つけてやる。」
「来るなら来い・・・どんな事があろうとも、あんたにこの二つをお見舞いしてやるさ。」
クスリと笑う咲夜に、にぃ、と口を曲げる妖夢。
「・・・あんた、空間に閉じ込めてもいい、って言ったわね?」
咲夜は、唐突にそんなことを言った。
妖夢は顔を変えず、「そうね。」と言った。
「なら、見せてあげるわ・・・。題目、『とんでもなく増えるナイフ』よ。」
瞬間、二人の周りには幾数十のナイフの軍団。
そして、妖夢の周りにナイフに囲まれた空間が出来る。
しかし、それらは動かない。
なぜなら、・・・、咲夜は時を止めているのだから。
「インフレーション、スクエア・・・。」
咲夜がそう呟くと、ナイフはさも当然のように動き始める。
そして、妖夢の周りにあったナイフも、全て彼女に向かう。
「馬鹿め!同じ手が通用するか!」
妖夢は、これが殺人ドールと勘違いしているのだろう。
一部のナイフを弾き飛ばし、妖夢がナイフの空間から飛び出してくる。
しかし、彼女はナイフの空間にいたのだ。当然、「空間外」がどうなってるかは、
「なっ・・・。」
知らない。
「インスクライブレッドソウル!!!!」
ナイフの空間を抜けると、そこはまたもナイフの空間。驚いた妖夢は、怯む。そこを咲夜は見逃さない。
前よりは少ないが、幾重の剣閃が妖夢へと飛んでいく。
「!?何っ!ああっ!」
当たる瞬間、妖夢は自分に向かってくる剣閃に気づき避けてはみるが、剣閃の2、3つが妖夢の右腕と右足にかすめる。しかし、切れ味は鋭いようだった。かすっただけなのに、妖夢の右手足はどんどん血が流れていった。
「・・・ふふ、肩のお返しよ・・・!?」
「現世斬!!」
右手足の怪我はどうも思わないのか、妖夢はお得意のスペルカードで咲夜に突進する。しかし、咲夜はそれを簡単にナイフで受け止め、捌いた。
「殺人ドール!!」
咲夜の周りからナイフが何十と出て来て、そのまま妖夢にロックする。
「そんなもの!全て弾き返してやる!!!」
「誰がこれで終わりと言った!『夜霧の幻影殺人鬼』!!」
咲夜が新たにスペルカードを出す。
すると、さらにナイフが増え、最終的に数百本とも思えるぐらいの量が、全て妖夢を狙っている。
「これを全て弾けるかしら?・・・行けっ!」
咲夜の合図と共に発射される幾百のナイフの束。
しかし、妖夢の顔は慌てない。それどころか、笑ってさえもいる。
「ナイフは”それだけ”か?・・・馬鹿馬鹿しい・・・。幽明の苦輪!!」
再び、妖夢の半身が、実体化する。
「「迷津慈航斬!!」」
二人の妖夢がそう叫ぶと、二人の持つ楼観剣に霊力が宿り、それは大きな刃へと変化した。
「「せいっ!」」
そして、その二つの大太刀を思いっきり振りかぶり、思いっきり振り下ろす・
音の無い衝撃波が、空気を揺らす。
そして、その揺れが収まった頃には、ナイフは全て吹き飛んでいた。
「はあっ、はぁ・・・」
スペルカードの連発はやはりきついのか、息が荒くなる妖夢。
少々休みたい所ではあろうが、咲夜はそれを許さなかった。
「!?ぐぅぅううううう!!!」
妖夢に、疲れが出ているのを悟った咲夜は、一気に妖夢に掴みかかる。
そして、思いっきり地面に叩きつけ、そのまま馬乗りに妖夢を押さえる。
そして、
「今度こそ、右肩のお返しよ。」
「ぐぁぁあああああああああっっっっ!!」
そのまま、妖夢の右肩にナイフを深く刺した。
「ぎ・・・ぎ!」
「おっと、こんな似合わない刀は・・・。」
「ぐあぁ!」
妖夢の左腕に新たにナイフが刺され、妖夢は楼観剣を手放した。
「離さなきゃ。」
「ぐ・・・が・・・。」
「あらあら・・・?どうしたの・・・?何か言ってみなさいよ・・・?」
ブンっ。
「ぐあぁあっ。」
咲夜がおもむろに後ろに投げたナイフは、咲夜に襲い掛かろうとした「妖夢の半身」の急所から外れていたが、腹部に刺さった。そして、半身が刺さった所と同じ部分に、痛みがフィードバックされているのだろう、妖夢の顔は更に苦痛へとゆがむ。
「あんたねえ・・・同じ手は二度と通じないわよ・・・?」
咲夜はそう呟き、更にナイフを取り出して、右手で握った。そして、狙うのは・・・。
「あの幽霊がどう思うが関係無いし・・・可哀相だけど、あんたの顔を、今からズタズタにするわ。恨むなら、私に挑んだあんたを恨みなさい・・。」
ナイフを顔に近づかせ、軽く頬をなぞる。さぞ、今の妖夢の顔は悔しさで満たされている、と咲夜は思っているだろう。だが、
「・・・ぐ・・・く・・くく・・・くくく・・・。」
妖夢は、笑っていた。
「・・・何が可笑しい?」
「・・・右手を封じなかったのは失敗だったようだねえっ!」
「何っ!?がっ!」
咲夜の、「右腰」に楼観剣の峰が当たっていた。
「・・・かっ、かは・・・えほ・・・。」
右腰を押さえ、そのまま倒れる咲夜。
妖夢は痛い体に鞭を打ちながら、一気に咲夜から離れた。
・・・要するに、妖夢は嘘をついたのだ。
右手で攻撃すると見せかけ、実際は怪我をしている左手で、楼観剣を拾い、峰打ちで咲夜の右腰を狙う。
咲夜は、まさか怪我をしている左手で、まだ剣が握れるとは思っていなかっただろう。それに、勝敗が決したと思い、油断していた。
「・・・ふふっ。油断、大敵ってねェ・・・。」
「げほ、・・・がはっ・・・ふ・・・げほっ・・ふふふ・・・。本当に、その通りね・・・。」
妖夢は、満身創痍ともいえるその体で立ち上がり、楼観剣を構える。
咲夜も、腰を押さえつつ―あそこまで痛がっている所をみると、もしかして骨折したか?―、ゆっくりと、立ち上がった。
「・・・もう、私は次で終わりだ・・・これで、決まらなかったら・・・これまでということかな。」
「・・・私も、この状態じゃあ、ちょっときついわね・・・。」
荒い息をたて、二人は互いを見つめる。
そして―。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
妖夢が吼え、咲夜に突進する。
「あぁあああぁぁぁぁぁ!!」
咲夜も吼え、妖夢に突進していく。
二人の咆哮が交じり合い、そして、二人の体も交じり合う、
「やめな、咲夜!」
「やめなさい、妖夢~。」
かにみえた。
新たに割って入った、二人の声。
その声に、咲夜と妖夢はそれぞれ反応した。
そして、二人は驚く。
「お嬢様・・・。」
「幽々子さま・・・。」
声のする方向にいたのは、
咲夜の主人である、日傘を持ったレミリア・スカーレットと、妖夢の主人である西行寺 幽々子だった。
・
・
・
「咲夜が遅いから、美鈴と一緒に探しに来たのよ。まったく、主が外に出るというのに主に日傘を持たすかしら?普通。」
「・・・すいません。私が、つまらない事にムキになってしまって・・・。」
幾分、冷静さを取り戻した咲夜は、レミリアに説教されていた。・・・どうやら、傷はどうでもよくなっているらしい、今の表情はレミリアに対して申し訳ない、という表情で埋め尽くされていた。
一方、西行寺家の面々は・・・?
「妖夢~、あなたが居なかったからお夕食が食べれないじゃない。主人をほったらかしにして遊ぶなんて・・・従者としていけないわよ~。」
「は、はぁ・・・その、すみません。つ、つい・・・調子に乗ってしまいました・・・。」
序盤の勢いはどこへやら。幽々子には妖夢も適わないらしい。見る見るうちに声が小さくなってきている。
「まぁ、今回は仕方ないわ・・・あなただって、好きで闘いたかった訳でもないでしょうし・・・。」
その言葉を聞いて、咲夜は不思議な顔をする。
「ちょっと待って。私はいきなりそいつに誘われて、ここまで連れて来られて、それで「手合わせ」を申し込まれたのよ?どこに「好きで闘いたくなかった」って要素が付くのかしら?」
「ん~。つまりは、そこに関しては・・・そうね、今回の事は「実は妖夢の意思ではない」って事かしら。」
「まあ、お前達も気付けなかっただろうな、『そこまで』やり合ってたら。」
「・・・?どういう事ですか、お嬢様。」
「どういうことです、幽々子さま?」
「「上を見なさい」」
レミリアと幽々子、二人の声が重なる。
咲夜と妖夢は、同時に空を見上げ、そして、ああ、なるほどと納得した。
「って、出来るわけ無いでしょ!!何勝手にモノローグ付けてんのよ!!」
「酷いですよ・・・紫さま・・・。」
咲夜は私にナイフを投げ、妖夢はその場に崩れ落ちる。わたしこと、八雲 紫はナイフをひらりと避け、うふふ、と笑った。
「あら、何でよ。実際ね妖夢、あなたが彼女と本気で闘いたかったのは事実よ。わたしは、その想いのスキマを広げただけ。そして、それに抗わなかったのは貴女自身の心の弱さと言う事よ。」
「なるほど、それであの半人前は咲夜に勝負を挑んだのか。」
と、納得顔のレミリア。
「そういうこと。妖夢も満足したでしょう?あまり自分の欲望は抑えないほうがいいわ。」
「だからって・・・時と場合と言うものが・・・。」
「まあ、確かに。今回は私が暇だったからやったことだけど。」
「・・・結局、あんたが悪いんじゃない・・・。」
咲夜は頭を抱えた。
「お嬢様~。咲夜さ~ん。」
遠くから声が聞こえた。どうやら、紅魔館の門番のようだ。
「あら、美鈴が来たようね。さて、咲夜。私はこのまま帰るから、後は美鈴におぶってもらうなりして帰りなさいな。」
「し、しかし・・・お嬢様に傘を持たすわけには・・・。」
「あのねえ、あんたが途中で倒れられたりしたら、そっちが迷惑なのよ。・・・わかるわね?これは『命令』、と言っておくわ。」
「・・・はい。」
「それじゃあ、私たちも帰ろうかしら。ね、妖夢。」
「あ、は、はい。」
「じゃあね、紫。・・・今度は、こんなことはしないで頂戴ね。」
「幽々子さま・・・。」
妖夢の顔が感動、という気持ちで表される。
「せめてご飯前には帰すようにして頂戴ね。」
「・・・やっぱりそう来ますか・・・。」
がっくりと肩を落とす妖夢。
「うふふ・・・そうしておくわ。」
「私はもう勘弁ですよう・・・。」
・
・
・
~マヨヒガにて~
「って、ことがあったのよ。」
私の話を聞いていた、新聞記者である天狗、射命丸 文は満足そうな顔をした。
「ふんふん。・・・幻想郷外れでの決斗・・・と。これはいい記事になりそうですねぇ。巫女あたりは五月蝿いかもしれないですが。」
「そうかしら?私ならともかく、あの二人ごときで霊夢は動かないでしょう。」
「何気に自信家ですねえ・・・。」
「悪い?」
「いえ。実際、私も「最強の妖怪」のあなたとは戦いたくありませんし。」
「さすが、口は達者ねえ。」
「それが天狗ってものですから。」
そう言って文は立ち上がり、取材を終えようとする。
「有難う御座います。お陰で今度の号外はいいのが書けそうですよ。」
「出来たら私にも見してねえ。どう脚色されてるか見物だわ。」
「失礼な。脚色なんてしませんよ。「文文。新聞」は真実しか書きません。まあ、完成したらそちらにもお届けします。」
そして、文は飛び立っていった。
「ふああ・・・今日は珍しく昼に活動しちゃったし、今は眠りましょ。藍~、ご飯が出来たら起こしてね~。」
奥から「は~い」と聞こえたので、わたしは目を瞑り、眠りに付いた。
わたしの暇潰しから起きた、咲夜と妖夢の決斗。
文の号外では、どう書かれるか、とても楽しみだ。
終。
後日談。
『号外!幻想郷外れの決斗!!」
先日、幻想郷の外れで、十六夜 咲夜(紅魔館勤務)と、魂魄 妖夢(白玉楼お庭番)が決斗を行った。十六夜 咲夜さんの話によると、「結局、私とあの子は道化みたいなものよ。まあ、私は気にしてないけど。でも、あの子は相当落ち込んでたんじゃないかしら?」との事。
続いて、魂魄 妖夢さんに話を聞いてみた。
「酷いものですよまったく・・・■様(名前はプライバシー保護のため省略)が私の心をけしかけなければ、こんな怪我をしないですんだのに・・・うう、幽々子様も別に気にしてなかったし・・・みょん。」との事。
咲夜さんは、全身に切り傷と。右腰を骨折という重体。妖夢さんは、右肩、左手、腹部に深い傷を負っている。傷の直りが早い妖夢さんは兎も角、人間である咲夜さんは、暫くは紅魔館での仕事に影響がでるのではなかろうか、との声が出ている。
紅魔館の館主は、「別に良いんじゃない?たまには休ましてあげても。あ、でもそれだと掃除に困るかしら。ここの掃除は全て咲夜にやらせてるしねえ。」と語る。
さて、妖夢さんのインタビューで出てきた■様。本人のたっての希望の為名前は伏せてあるが、この人物が今回の決斗の張本人だと、二人は語っている。
誰にせよ、人の心のスキマに漬け込むとは、全く困った妖怪も居るものだ。今回、ターゲットにされた二人は非常に不憫でならない。
これを読んでいる皆さんも、みょん・・・違った。妙なスキマ妖怪に出会ったら、用心しておきましょう。
とりあえず文頭の字下げ、三点リーダの使用(・・・ではなく……)、!や?の後にはスペースを入れましょう。
それと・・・を使いすぎて溜めどころがはっきりしない。ここぞという時に使うのが映えます。それと読点が多すぎてリズムが悪いです。
細かい部分ですが、基本的な文章技術を疎かにしているとそれだけで読むのを止めてしまう読者もいます。ちょっと注意すれば出来る事ですので、それだけでも大分変わりますよ。
さて内容に関してですが、妖夢と咲夜のガチバトル。IFとしては興味がありますが、最後に紫を出した事で余りにも安直でご都合主義に感じます。
二人が戦うなら戦う理由をきちんと設定していれば、もう少し納得も出来るんでしょうけど。
それに妖夢にせよ咲夜にせよ、同じ話だとしても無理に口調を変える必要はないかと。こういうIFは可能な限り原作に従う事で、面白さを増すと思います。注意書きでいきなり口調が違いますと宣言されては、中々読んでみようという気になりませんし。
描写、心理、戦略、戦術等、バトル物としては正直色々足りませんが、昔自分が書きたかったものを思い出したりもしました。熱い話は読むのも書くのも好きですしw
口煩い事を言いましたが、期待の表れだとでも思って頂ければ。
それではこれからも頑張って下さいw
床間さんのコメントを見て、三点リーダ云々の事を当時友人に注意されていたのを思い出しました。いやはや忘れているとはorz
他のコメントに関しても、正直覚悟の上なのでそんなに気にしてませんw
むしろ書いて下さったアドバイスを参考にして、今よりもう少しマシなSSを書いて行こうと思います!
本当に有り難うございました!
また最後に紫が出てくるのも私は予定調和の様式美を感じましたし、境界を操作されたせいで口調が変になったというのもごく自然に受け入れられました。というのは、キャラそのものの全く違う解釈により徹頭徹尾書かれたものではなく、同じキャラが一時的に違う口調になりまた元に戻る話だったからです。したがってIFですらないと解釈しています。
それから、この口調にした理由もなんとなく推察できます。そうしたら面白そうだからやってみたかった、ではないですか?もしそうなら、実際面白かったです。
口調に関してですが、色々書いたら言い訳がましいので詳しくは書きませんw
ただ、書いていたら出来は兎も角、面白かったのは事実です。
そして、それを楽しんでくれたのなら本望ですよ!
わざわざコメントをしていただいて本当に有り難うございました!
>>いつものあんた、言葉遣いはそんなものではないでしょう?
東方キャラは口調は変わることはあっても
別の東方キャラがそれにツッコミを入れることは絶対にありません。
少なくとも当時では。