Coolier - 新生・東方創想話

Master of Puppets

2007/01/26 09:13:02
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「ちょっと、あんた誰よ」
紅魔館の門番、紅美鈴は目の前に現れた金髪碧眼の少女に尋ねる。
美しい顔に、ゴシックロリータファッションのようなトリコロールカラーの服。どう見ても危険人物ではないが門番としての仕事の性質上、念には念を押している。
「私はあなたのところのお嬢様に呼ばれたのよ」
少々早口でさらっとしゃべる少女。不満げな表情を浮かべている。
「美鈴、その子は確かにお嬢様が呼んだわ」
門番の後ろにいつの間にかメイドが一人たっている。瀟洒で完全なメイド、十六夜咲夜だ。
「咲夜さん」
美鈴は驚いて振り返るが咲夜は全く気にしてないようだ。
「さぁ、アリス。どうぞ中へ入りなさい」


不自然な紅色が目に飛び込んでくる館内。
さも悪趣味ねといわんばかりの顔で咲夜の後ろを歩く少女、アリス・マーガトロイド。
「あら、なにか不満な点でもございました?」
咲夜はアリスの何か言いたげな表情を見て尋ねる。
というか何が言いたいのかわかっていてわざとらしく敬語で質問しているようだ。
「いえ、別に」
アリスは笑顔で答える。
「笑顔が無理してるわよ」
咲夜は鼻で笑った。
「それにしても無駄に広いわね」
「私が広くしたのよ。さぁついたわ」


事の発端はいつもの様にこの館のお嬢様、レミリア・スカーレットの我侭から始まった。
「あのアリスとか言う人形遣いに人形遊びを教えてもらいたいわ」
あの宴会異変の時から事があるごとにレミリアはメイドたちにこう言っていたようだ。
そして今日アリスを紅魔館に呼ぶことにしたのだ。


「こんにちは、レミリア」
アリスが部屋に入ると、その部屋にはレミリアとは別にもう一人少女がいた。
紫色の長い髪の少女。魔女、パチュリー・ノーレッジだ。
「あなたの人形を操る魔法に知的興味がわいたから今日はご一緒させてもらうわ」
させてもらいます口調なのに彼女は本から目を話すことなく小声でボソボソ喋っている。
「さっそく人形の操り方教えて頂戴」
レミリアは目を輝かせていた。
アリスは背筋に凍るもの感じて振り向いた。咲夜が幸せそうな顔をしている。
これが忠誠心の強い従者としてあるべき姿。...そんなわけない。
アリスはすぐにレミリアの方を向き笑顔を作りこう言った。
「さぁ始めましょう」


アリスは何体かの人形を取り出す。
「これは私からのプレゼントよ」
そのうちの一体、咲夜にそっくりな人形をレミリアに手渡す。
「なんで私なのかしら」
後ろから声がする。アリスは自慢げな顔で説明し始めた。
「それには理由があるのよ。人形というのは元々は人間自体を間接的に指すものなのよ」
「だからその人形は咲夜のことを指しているの。普段から使っているものだからレミィの手になじむって事よ」
途中からパチュリーが説明し始めた。咲夜、そして横取りされたアリスがパチュリーを睨む。
彼女はその間全く本から目を離していないがかすかに自分の説明に酔っているように見えた。
「じゃあ、私もすぐに人形を動かせるようになるのね」
レミリアはかなりわくわくしているようだ。性格も見た目どおりなのだろう。
咲夜の表情も直っている。
「じゃあ、まず実演してみるわ」
アリスが一番愛用している上海人形と蓬莱人形が机の上から立ち上がる。まるで生を受けたかのように。
そしてペアになって踊りだす。まるで生きているかのように二体は独立し複雑に踊ってみせる。
「すごいわね」
レミリアは目を丸くして人形に注目している。
「はい、レミリア。私はどうやって動かしているでしょう?」
「手から魔法の糸が出ているわ。恐らく糸の形状を取っているのはそれが操るものであり人形と操者がそれによってつながっているという意識の具現。魔法は遠隔操作であるにもかかわらず大体の魔法使いは意識の具現を補助として操作をしやすく......」
横からブツブツ声が聞こえる。この部屋にいるみながパチュリーを睨んだという。
「とりあえず、やってみましょう」


少女練習中


「なかなかうまくいかないわね」
レミリアが操る人形はまるで生まれたての小鹿のような動きをしている。
「いや、初めてでそんなにうまく動かせる人は普通いないのよ」
人形を魔力で遠隔操作で動かすという動作には並外れた魔力がいるということはアリスが一番知っている。
彼女は努力でその魔力を手に入れたからだ。アリスは今笑顔を作っているが内心その魔力を羨望しているだろう。
「この程度じゃあまり楽しくないわ」
「お嬢様、何事も努力が大切ですわ」
レミリアはもうすでに飽き始めている。
「人間だったらもっと簡単に動かせるのに」
レミリアはほっぺをふくらます。
「それは、ただ脅しているだけですわ」
「じゃあ咲夜は私が怖いから従者をやっているの?」
「私はお嬢様のことを愛し...、いえ慕っているからそばにいるのですよ」
咲夜は爆弾発言をうまくごまかした。

「人形と人間、響きが似ているのにね」
レミリアはため息をつく。
「何で人形はうまく操れないのかしら。人間は運命の糸でうまく操れるのにね」
「運命の糸?」
アリスが尋ねる。
「人間なんて所詮、運命に動かされているのよ」
「私は運命になんか動かされてないわ」
アリスは紅茶を飲みながら反論する。
「あなたは運命の糸を断ち切って人間以外になったから運命に操られることはないわ」
「捨食の魔法を使った時点でね」
よこからパチュリーが口を挟む。
「私は運命の糸を少々いじれるのよ。人間が変な人生を歩むようにね」
レミリアが悪魔のような笑みを浮かべる。
「被害者は私ですか?」
咲夜笑いながら口を開く。
「まさにそうね」
アリスも笑う。
「実は私は咲夜の運命はいじれないわ。咲夜は実は人間じゃないからね」
「まぁ、ひどいですわ。私は人間ですわ」
「どうでしょうね」
レミリアは笑みを浮かべているのでアリスにはそれが本当のことかどうかわからなかった。
「じゃあ、また始めましょうか」
アリスはレミリアの方を見る。
「えぇ」
元気のない返事が返ってくる。アリスはその元気のなさに少し不安な表情を浮かべる。咲夜はそんなアリスを見てこう言った。
「心配することはないわ、アリス。飽きてしまっただけよ、お嬢様はまだ子供だから」
「子供?」
レミリアは微笑んだ。悪魔のように。



その後、咲夜が紅魔館に来たばかりのころにしでかした恥ずかしい話をレミリアは話し始めた。
今の瀟洒な彼女からは想像できないぐらいの恥ずかしい話は一時間にも及んだ。
アリスはその話に耐えかねて何度も笑ってしまった。
だがその話の間、咲夜は一瞬たりとも瀟洒な笑みを崩さなかった。



アリスは家に帰って一人で思い出し笑いをしていた。
「アリス。なんだか気持ち悪いぜ」
窓の外にはほうきにまたがった霧雨魔理沙がいた。
「なによ、勝手に見ないでよね」
アリスは顔を赤らめる。



アリスはふと気づく。咲夜の恥ずかしさは今の何十倍にも及ぶだろう。
そしてアリスはこう結論づけた。
あの時瀟洒な笑みを崩さなかった咲夜は人間じゃない。
次の日、咲夜人形はフランドールに贈呈されたらしい。
当然のように一瞬で壊れてしまった。それを知った咲夜はレミリアが人形をいらないと思ったこと、そしてフランドールによって破壊されたことにショックを受け二日間寝込んだといわれている。

今回はさっくり読めるハートフル紅魔館です。
わくわくと目を輝かせる少女ってかわいいですよね?
スカーレットな迷彩
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コメント



0.860簡易評価
11.80名前が無い程度の能力削除
その後、咲夜『か』紅魔館に来たばかりのころにしでかした恥ずかしい話

『が』という誤字だと思う。
13.50名前が無い程度の能力削除
いいですね、ほんとさっくりと読めます。前二作と比べて明らかに上達してると思います。
この読みやすさに一部感情を強調し過ぎるぐらいのところを混ぜてメリハリをつけたら完璧かと。
14.無評価スカーレットな迷彩削除
>01/27の名前がない程度の能力さん
ありがとうございます。修正しました。

>01/28の名前がない程度の能力さん
レミリア様以外は少し感情抑え目にしてあります。
レミリア様の子供的かわいさを表現しようとしたのですが。
もっとがんばります。
15.80名前が無い程度の能力削除
うん、すらすら読めたし面白い。

しかし後書きがさっぱりハートフルぢゃねぇー!w
24.80名前が無い程度の能力削除
題名がメタリカだwww